隔世遺伝 不気味なほど父にそっくりな娘
私は、娘をアフリカで出産し、その3ヶ月後にパリに引っ越してきて、それ以来、ずっと、フランスに住んでいるので、彼女は、フランスで育ちました。
毎年、夏休みには、娘を日本語に触れさせたくて、そして、私の両親や親戚にも会わせたくて、日本へ行っていました。日本滞在時には、実家に寝泊まりはしていたものの、それも、せいぜい2〜3週間のことで、娘は、一度も日本に住んだことはなく、当然、私の両親とも一緒に暮らしたことは、ないのです。
しかし、娘は、驚くほど、父に似ているのです。顔かたちではありません。
まず、人並みはずれて、食い意地が張っていること。ケチなところ。そして、味覚がとても鋭いこと。食べ物の好み。辛辣な口の利き方。愛想のないところ。妙に手先が器用なところ。異様に耳がいいところ。
私の父は、どちらかというと、気むづかしいタイプで、私が子供の頃は、私は、どちらかというと、父を敬遠しており、あまり好きではありませんでした。
それが、まあ、孫は特別に可愛いと思うものなのでしょうか? それとも、同じ匂いがしたのでしょうか? 娘とは、すぐに打ち解け、父と娘は言いたいことを言い合い、娘の方も皆が敬遠する父を他の人と分け隔てなく? 無邪気に周りの人と同じように接して、パピー!パピー!(フランス語ではおじいさんのことをパピーと言います)と言って、懐いていました。
父も娘には、至極、甘く、例えば、一時、DSが流行った時も、私は、”そう言うものは、絶対買いません!” と宣言し、頑として、娘に買い与えることは、ありませんでした。
すると、娘は、ちゃっかり、父に自分でメールを送っていて、DSを買ってもらう約束を取り付けていて、日本に着くやいなや、二人でいそいそと、DSを買いに出かけたりしていました。
パリで、娘と一緒に買い物に言って、私がダメ!と言っても、娘は駄々をこねるでもなく、” じゃあ、今度、日本に行った時に買おうか!” と言って、すぐに気持ちを切り替え、ちゃっかり日本で手に入れていました。
いくら、こうして、父が娘を手なづけようとしていたとはいえ、普段は一緒に生活しているわけでもないので、言動や、食の好みまでは、父の真似をしているということも考えづらく、嫌味なことを言う、その言い方まで、そっくりなのには、本当にいつまでも父に取り憑かれているようで、気味が悪いほどです。
例えば、仕事終わりに娘を迎えに行って、もう今日は、疲れちゃったから、何か、すぐ食べられるものを買って帰ろうかな〜? とお店の前につい、立ち止まって考えていたりすると、背後から娘が、ボソッと、” まずいよ! " と言うのです。
それは、いかにも父が言いそうなことで、その言い方までがそっくりなのです。
また、食べ物の好み、そして、その味覚の鋭さ、厳しさもまったく同じなのです。
例えば、あるお料理を食べると、これに何が入っているか、二人は見事に言い当てます。
水の好みまで同じです。
また、まずいもの、嫌いなものに遭遇した時にも一緒です。
父は、よく言っていました。” まずけりゃ、食わない。”と。
本当に嫌な言い方です。
それが、同じようなことを娘も言うのです。
面と向かっては、さすがに私にはそうは、言えなくても、ちゃんと顔に書いてあるのです。” まずけりゃ、食わない。” と。
そして、とにかく、二人は、食べ物に関しては、決して妥協しないのです。
普通の人は、” まあ、あまり好きじゃないけど、一応、食べよう・・" となることもあるでしょう。しかし、二人は、決して、そうは、ならないのです。
娘はコロニー(合宿)に行ったりして、フランス料理嫌いの彼女の口に合うものがなかったりすると、どんなにお腹が空いても、水を飲んででも、嫌いなものは食べずに、空腹を満たしてしまうのです。おかげで、コロニーから帰ってくると、いつも、3〜4キロは減ってしまっています。
また、ある時、冷やし中華を作ったら、娘が、”冷やし中華” にトマトは入れないで!と言うので、ビックリしてしまいました。父も以前、同じことを言ったからです。そんな、ピンポイントなことまで、一緒のことを言うのです。
ずっと、一緒に暮らしてきたならともかく、娘は父の好みなど知る由もないのです。
だから、怖いのです。これが、DNAというものなのでしょうか?
だとしたら、まったく、嫌なDNAを引き継いでしまったものです。
父は、数年前に他界しましたが、今でも娘の言動の端々から、父の存在を感じ、まるで、私は、父の死後も姿を変えた父に呪われるように生きているのであります。
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