2023年6月27日火曜日

麻薬及び薬物使用に課せられる罰金65%が未回収の現状 徴収はその場で現金かカード払いへ

  

 

 マクロン大統領が仏紙のインタビューで、麻薬や薬物使用に対する罰金の回収率の低さを嘆き、「夏の終わりに向けて法令を整備しなおし、即時、現金かクレジットカードで支払うことを求めるように準備を開始している」と話したことが話題になっています。

 フランスはヨーロッパ最大の麻薬消費国と言われていますが、もはや、この麻薬が違法であるという認識がフランス人には薄いのではないかと思います。

 現在、これらの罰金に対して、実際に回収できているのは、わずか35%ほどなのだそうで、逆に言えば、65%の人は払っていないということになります。

 なかなかな割合です。

 なぜ、こんなことになっているのかというと、この罰金回収の手続きから、実際の徴収までの手続きが煩雑で、時間がかかり過ぎていることが原因の一端であると見られ、手続きを簡素化し、警察がその場で罰金を徴収する権限を持つということになります。

 そうなったらなったで、この警察を装った詐欺師などが出没しそうな気もしますが、まずは、この罰金を支払わせるということを優先にするということだと思います。しかし、これには、当の取り締まりを行う警察官組合(SGP)(や裁判官)は納得していないという声もあがっています。

 フランス人はもともとルールを守らないという印象があります。罰金といえば、最近で思い浮かぶのは、パンデミックでマスク着用が義務化されたときのマスク不着用の場合の135ユーロの罰金135でしたが、これに関しては、あまり回収できなかったという話を聞かなかったので、必ずしも全ての人が罰金を支払わないというわけでもないのだとは思います。

 私には麻薬や薬物をやっている知り合いがいないので、それがどのような人々なのかはわかりませんが、おそらく、これらの人々の間では、「払わなくても逃げ切れる・・」というあたまがあるのではないかと思われます。実際に65%の人は払っていないのですから・・。

 また、この罰金についてのフランス政府のサイトを見てみると、最初に「薬物使用のリスクは?」というタイトルから、健康面の実害等が書いてあるのかと思いきや、「大麻、エクスタシー、コカイン、LSD... は犯罪です。法律で禁止されている行為であり、薬物の種類、量、加害者の犯罪歴などの状況に応じて異なる罰則が課せられ、懲役刑および罰金、または定額の罰金で処罰される場合があります」とあります。

 リスクは罰則、罰金というのも、なんだかしっくりこない気がしないでもありませんが、ダイレクトな感じもします。

 また、現行では、麻薬・薬物に対しての罰金は、定額200ユーロということになっており、15日以内に支払われた場合は、150ユーロ、逆に45日以内に支払われない場合は、450ユーロに増額されるとなっています。

 早く支払えば、減額され、滞納?すれば450ユーロに跳ね上がるということになっていても、支払われていないということは、これがあるから、早く払わなければ・・というふうにはなっておらず、ハナから支払うつもりがないということで、この減額、増額システムは、あまり機能していないことになります。

 だからこそ、取り逃がしのないように、その場で現金なり、クレジットカード払いででも取り立てができるようにするのでしょうが、すでにそのための決済端末5,000台は発注済なのだそうです。

 この罰金の取り立てについては、一部の政治家たちからは、「法廷の混雑」を回避する「麻薬使用犯罪に対するより効果的な対応」として賞賛されていますが、フランス薬物・薬物中毒監視局(OFDT)は「経済的ペナルティのこの力関係の増大は、個別の健康面での対策に損害を与えている」と複雑な見解も示しています。 

 マクロン大統領は、この話を「マルセイユ・アン・グランド」計画の一環としてマルセイユを訪問する前にこの計画を公にしています。(マルセイユでは、この罰金徴収率35%をさらに下回っている)

 マクロン大統領はこのインタビューの中で、「利用者がいる限り、麻薬密売を嘆くわけにはいかない」、「娯楽だと思って麻薬や薬物を使用する手段を持っている人々は、自分たちがネットワークを育て、麻薬密売を行っていることを理解する必要がある。結果的には密売組織との事実上の共謀だ」と述べています。

 

麻薬・薬物使用罰金 現金 クレジットカード払い


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2023年6月26日月曜日

ずっと食べてみたかったバター Au Bon Beurre オー・ボン・ブール

  


 「エシレバターを超える美味しいバター!」とか、「ボルディエなんて目じゃない!」とか、絶賛する人がいるバターがあって、美味しいものと言えば、食べてみたくなる私は、このバターをずっと探していました。

 そもそも、私は子供の頃はバターというものは、あまり好きではなく、特に嫌いと避けるほどでもないにせよ、パンを食べるときでも、「バターはあってもなくてもいいもの・・」くらいの存在でした。もっとも、私が子供の頃の日本のバターは、今から思えば、そんなに美味しいものでもなかったかもしれません。

 それが、バターが美味しいと思うようになったのは、やはりフランスに来てからのことで、もっとも簡単に美味しいものを・・と思えば、焼き立てのバゲットにエシレバターでもあれば、なかなか満足してしまうほどに、私の中でバターの位置づけは確実にランクアップしました。

 とはいっても、今でも、我が家ではそんなに大量にバターを消費する家ではありませんが、やはり、パンを食べるときには、バターは不可欠になりました。スーパーマーケットに行けば、バターだけでも、かなりのスペースをとっているフランスでは、ごくごくふつうのスーパーでも、常時、数十種類のバターがあります。


ぜ~んぶ、バター


 私はふだんは、このたくさんのバターを食べ比べする・・というほどの情熱はなく、日本でも有名なエシレバターの他にボルディエなども試してみましたが、結局、私にはエシレバターの方が私の好みにはあっているので、これまで、わざわざ別のものに手を出すことはしてきませんでした。

 もっとも、エシレバターは少々、高いので、お料理用には、もう少しお手軽価格のものを使っていますが、そもそも私はあまりバターを使うお料理というものをしないので、そんなには減りません。

 それでも、「このバターを一度食べたら、もう他のバターは食べられない!」などという話を聞けば、「ぜひ、機会があれば一度は食べてみたい!」と思っていたのが、「Au Bon Beuure(オー・ボン・ブール)」というバターで、パリの街を歩いていて、乳製品を扱っているお店があれば、必ず覗いて、そのバターをずっと探していました。

 ラファイエットグルメに行けば、あるかな?と思いつつも、あるかないかもわからないバターだけのために、わざわざラファイエットグルメに行くのもためらわれ、まあ、偶然、見つけたら、嬉しいくらいの感じで、このところずっと、気にかけていたところ、思いがけずに家からわりと近いマルシェにあったのです!




 「灯台下暗しとはまさにこれだわ!」と思いつつも、探して歩いた果てにようやく見つけた喜びは大きく、その日はバゲットもふつうのバゲットではなく、バゲットトラディショナルを買って帰り、このバターをお迎えしました。

 包みを開けると、ふわっと香るバターの香り、色はふつうのバターよりも黄色くて、牛の形のスタンプ?がバターの中央におされています。まず、バターの端っこをちょこっと削って、口に含むと、「味が濃厚・・」というよりも、「とにかく味が濃い・・」ドゥミ・セルという有塩の方を選んだので、すごく細かい塩の粒が時々、舌に触りますが、とても、まろやかで、なめらかです。



 エシレバターがさっぱり感じられるくらい、これは、なかなか濃厚ですが、決して、しつこい感じにならないところが不思議で後味もすっきりしています。

 このバターは、生バターで、長期間の保存ができないので、賞味期限内に食べられるだろうか?と思っていましたが、どうやら、恐ろしいことに、全く問題なさそうです。

 「バターの小さな塊を口に含んで味わいたい・・」、「バターのかけらを口に入れると思わず目を閉じて味わいたくなる」、バターを塗るというよりも「食べたいバター」です。

 これには、圧倒的にバゲットやハード系のパンが合うと思いますが、おかげで、買ってきたバゲットトラディショナルもあっという間になくなり、家にあった食パンを焼いて、このバターをつけて食べたところ、これとて、まずいはずはありません。

 健康のためには、あまりバターはよろしくないと思いつつ、また、危険なものを見つけてしまい、あんなに、あちこち探していたのに、よりによって、このバターを売っていたのが、家の近所のマルシェだったとは・・まるで、これからもこのバターを買うように運命づけられていた?と、嬉しいような、後ろめたいような複雑な気持ちです。

 しかし、美味しいものに出会うことは楽しいことです。

 美味しいものといえば、あっという間に火がつく日本、このバターはどうかな?と思ったら、なんと、楽天やアマゾンでも買えるようです(高いけど・・)。

 すごいな日本の市場!


Au Bon Beurre オー・ボン・ブール


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2023年6月25日日曜日

パリ オリンピック組織委員会本部に汚職疑惑で警察の強制捜査にAFA(汚職防止国家機関)の存在

  

 

 パリ オリンピック開催まで、あと1年余りと近付いてきた今、フランス国家警察がパリオリンピック組織委員会本部に強制捜査に入ったというニュースはなかなかおだやかではありません。

 捜査関係者がAFP(Agence France Presse)に伝えた話によると、検察(PNF)は進行中の2件の別々の捜査に関連して家宅捜索を許可、強制捜査対象はオリンピック組織委員会本部とオリンピック建設現場担当部署だということです。

 検察報道官によると、この捜査は、「違法な利益相反、公的資金の悪用、賄賂」に関するもので、すでに最初の捜査は2017年に始まっています。

 これはオリンピック組織委員会の前身のオリンピック招致委員会の段階からオリンピックに関する有力な意思決定者の署名が入った一連の契約書に端を発しており、すでに今回の強制捜査に入るまでに昨年から極秘裏に捜査が進んでおり、今回は、警察の中でも、その財務部隊であるBRDE(金融警察)が担当しています。

 ということは、お金絡みのなんらかの不正の疑いがかなり濃厚であるということで、スポーツ、オリンピックにまつわる汚職は例外なくついて回る話のようです。

 フランスには、AFA(L’Agence française anticorruption)という汚職防止のための国家機関(2016年制定の法律により制定)が存在しており、企業、政府、地方自治体が実施する汚職防止コンプライアンスメカニズムの現実と有効性を検証できる管理権限を持ち、以前存在していた中央汚職防止局(SCPC)に代わり、その権限が強化されています。

 今回のオリンピック組織委員会の強制捜査についても、このAFAが「信義に影響を与えるリスク」と「利益相反」に関する2つの報告書を提出したことから、検察~金融警察が動いたようです。

 AFA(汚職防止国家機関)によれば、「オリンピックのための買収手続きの一部に、不適切な点があり、正しく管理・監督されていない潜在的な利益相反が随所に存在している」と指摘しています。

 オリンピックのみならず、フランスのスポーツ連盟は、このところスキャンダル続きで、フランス国家オリンピック・スポーツ委員会会長は内部論争?を理由に今年5月に辞任、ランスサッカー連盟の会長は、セクハラおよびパワハラの告発を受けて2月に辞任、元スポーツ大臣でフランスのラグビー監督も、汚職で有罪判決を受け、1月にフランスラグビー連盟会長の職を辞任しています。

 オリンピックが始まる前から金融警察が強制捜査・・とは、始まる前からなに?と思ってしまいそうでもありますが、実のところは、オリンピックは大会が始まる前から大きなお金が動き、その一つ一つに利権が存在するのですから、当然といえば、当然のこと、少なくとも、警察が機能しているという意味においては、健全といえば、健全なのかもしれません。

 しかし、このBRDE(金融警察)というのは、一度、たまたま出くわしたことがありますが、ふつうの警察官とは緊張感が違って、突入に際しては、かなりの大人数のうえ、ライフルを持った警察官まで混ざっていて、威圧感がハンパありません。

 日本にもフランスのAFA(汚職防止国家機関)のような機関があり、それが機能していれば、摘発すべきところは、たくさんありそうなのに・・と思います。


パリ オリンピック組織委員会強制捜査


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2023年6月24日土曜日

ガス爆発事故現場は想像以上に悲惨だった・・

 


 たまたま近くに用があって、「そういえば、あの爆発事故はこの辺りだった!」と思い立って、野次馬根性で事故現場をのぞきに行きました。爆発事故のあった辺りはパンテオンからも遠くなく、近くには、リュクサンブール公園や多くの有名な大学や高等教育機関もある高台の、パリらしい優雅な街並みの中にあります。

 事故からまだ日が経っておらず、事故現場の周囲はかなり広い範囲が立ち入り禁止になっており、ごくごく周辺の住民以外は入ることはできません。



 しかし、パリらしい入り組んだ小路の向こうには、爆発現場となった見るも無残な建物の残骸と焼けただれた壁が見え、あらためて、今回の爆発事故がいかに暴力的なものであったかが、直に目にしてみると、かなり衝撃的です。

 ほぼ、隙間なく立ち並んでいる建物の中にぽっかり空間ができていて、周囲の建物の補強と事故現場に設けられているバリアとが、事故からまだ1日半くらいしかたっていないのに、こんなに出来上がっていることに、驚かされます。しかし、このような補強工事を行ってはいるものの隣接している建物の倒壊の危険は残っているそうです。

 現在のところ、原因はガス漏れという説が強く、地域のガスは全て止められているそうで、さぞかし不便なこととは思いますが、この現場を見れば、この二の舞になることを考えれば、苦情も出そうにありません。

 日常的には、フランスの工事は遅くて、時間がかかり、工事現場などに貼られている施工期間などはあまりあてになるものではなく、たいていは期日どおりに仕上がらないことがふつうなのに、さすがにこのような危機的状況の場合は、昼夜を通して工事が続けられているのか、1日でこれだけ進んだの?と驚きです。

 負傷者数は事故当日には、37名と報じられていましたが、2日経った現在では、負傷者は54名に増えており、また依然として行方不明とされている女性が1人存在しています。彼女はこの爆発事故現場の中にあったアメリカン・アカデミーの教師だそうで、事故が起こった時間にその建物にいたことが確認されていますが、彼女は2日経った現在も発見されていません。

 瓦礫の山を取り除く作業は想像以上に難航している模様で、大変、不謹慎な疑問ではありますが、建物をこれだけ崩壊させる現場に人がいた場合、人間というものはかたちを留めているものなのかなどとも考えてしまいます。

 聞くと見るとは大違いというか、映像で見ていた事故現場も、実際に目の当たりにしてみると、その衝撃度はかなり違います。

 事故の起こったパリ5区の市庁舎には、被災者の精神的なケアーサポートセンターに加えて、被災者の宿泊施設の手配、具体的な法的側面や保険の手続きなどにも寄り添って支援していくことを呼び掛けています。


近所のレストランには来週月曜日には再開しますとの張り紙


 当然のことながら、ごくごく近隣の店舗、レストラン、カフェ等も当面、とりあえず、今週いっぱいは休業とのことで、これもまた大きな損害です。

 現場には、私のような野次馬がけっこうやってきていて、ちょっとあり得ない惨事に皆、呆然としています。

 現場に通じる道は数本あるとはいえ、それほど大通りに面している場所でもなく、これだけの建物が一瞬の爆発により崩壊してしまうということが、どれだけの混乱状態であったか?また、付近の人々がどんなパニック状態で避難したか? それが、どんな恐怖であったのか?を現場を見て、あらためて、痛感させられました。

 まだまだ復興どころか、現場検証すら、手をつけられる状態ではなく、いかに昼夜を徹して作業を行ったとしても、この17世紀後半に建てられたという建物はもと通りになるということはないし、この旧建が立ち並ぶ界隈にどのような建物を建て直すのかは、常に美しいパリの建物を残し、パリの景観を保ち続けることを大事にしているパリ市としても、周辺の建物とのバランスをとって、どんな建物を建てるのかは注目したいです。


パリ5区ガス爆発


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2023年6月23日金曜日

ヨーロッパの地球温暖化は世界の他の地域の2倍の速さで進んでいる

 


 年々、夏の暑さが厳しくなっていることは、身をもって感じています。しかも、夏のような猛暑が始まる時期も、年々、早まってきて5月の後半から6月にかけて、もう真夏並みの気温の上昇が見られ、また、秋が訪れたと思ったら、また夏日になったり、おのずと、暑い期間が長くなっています。(冬もまた気温は高く、昨年は20日連続の10℃超えという暖冬で150年ぶりの記録を更新しています)

 以前は、日本への一時帰国は子供の学校の休みに合わせてということになり、しかも、娘が小学生の頃は、日本の小学校に短期間でも体験入学させたくて、フランスの学校がお休みになってから、日本の学校の夏休みに入るまでのわずかなタイミングを狙っていくことになり、その時期は、日本もちょうど梅雨明けするかしないかの最悪のタイミング(梅雨があけない場合は雨で、梅雨あけした場合は夏の暑さが爆発する時期)、しかも、航空券は一年で一番高い季節と、この時期の日本行きは最悪のタイミングでした。

 娘が小学生だった頃は、逆にフランスの夏は楽勝な感じで、エアコンなしでも全然、乗り切れる感じで、けっこう暑い日があっても、それは数日から、せいぜい1週間程度のことで、それ以外は、夏で暑くなるとはいえ、湿度がないので、日陰に入ればすっと涼しかったり、また、夏のバカンス期間はむしろ、パリの住民がパリからいなくなるため、街中も空いていて、こんな時に日本に行くなんて、なんてバカらしいんだろう・・と思っていました。

 あっという間に過ぎてしまった、この15年くらいを考えると、いったい、いつからこんなにパリの夏が暑くなってしまったんだろうか?と思うと、その変化がかなり急速であったことを思い知らされます。

 最近の世界気象機関(国連の機関)とコペルニクス・ネットワーク(欧州連合の地球観測プログラム)の発表によると、「1980 年代以降、ヨーロッパ大陸では地球温暖化が世界の他の地域の 2 倍の速さで進んでいる」とのことで、わかってはいたものの、あらためて、特にヨーロッパが世界の他の地域の2倍の速さで・・などと言われると、脅威と恐怖を感じます。

 昨年は、6月の段階で、フランス国内で40℃を超える地域が出たり、今年も6月というのに30℃超えの日が10日以上も続く異常な暑さで、6月からこれでは、7月、8月は一体、どうなってしまうんだろうか?と不安がよぎります。

 もう夏に日本に行かなくなって、ずいぶん経つので、長いこと日本の夏を経験していませんが、日本の場合は暑さとともに、飛行機を降りた瞬間に感じる、呼吸を一瞬ためらうような湿度の高さがあります。その代わりにというのもなんですが、日本は清潔でどこに行っても冷房完備で、パリのように「やった!冷房車にあたった!」なんていうこともなく、全線、全車両、冷房完備です。

 フランスの場合、暑くなってくると、問題は暑さだけでなく、たちまち「臭い」の問題も発生してくるわけで、先日も家のアパートのエレベーターに乗ったら、強烈な体臭の人が乗ってきて、「ボンジュール!」と明るく挨拶しつつも、あまりに強烈な臭いが衝撃的で軽いめまいがしたほどです。

 また、地域によっては、街中でさえも臭いが酷い地域もあり、先日、たまたまそんな地域を通って、これは大変な場所だ・・街中の空気中に臭いが漂うというのはただ事ではないわけで、(もちろん、パリ市内といっても場所によりますが・・)以前、弟がパリに来た時に、街中がDUTY FREE SHOPの匂いがする(香水の匂いということらしい・・)と言っていたのを思い出し、香水の匂いの方がどれだけマシか?などと1人思いながら、なんともいえない臭いの中を耐えながら歩いたのでした。

 そもそもフランスで香水が発達したのは、体臭がきついため・・などという話も聞いたことがあるような気がしますが、最近は、香水を使用する人も減ったのかな?などとも思います。

 今では子供の学校のお休みも関係なくなったので、日本に行こうと思えばいつでも構わないのですが、パリも夏が暑くなったからといって、さすがに夏の間を選ぶ理由はまるでなく、航空券に関して言えば、相変わらず高いどころか、以前と比べたら、それこそ2倍近いので、いくら冷房完備とはいえ、日本に行く気にはならないのです。

 しかし、ヨーロッパ大陸の温暖化は、やはり深刻なようで、この暑さが干ばつ、山火事等の災害を引き起こし、昨年は、16,365人が熱波のために死亡しているそうです。

 とはいえ、フランス人は太陽が大好きで、ビーチでもなく、パラソルもない街中の炎天下のテラス席でも食事を楽しめる人々で、私が感じているほどには、この暑さにもへこたれていないような気もします。


ヨーロッパの地球温暖化は世界基準の2倍


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2023年6月22日木曜日

パリ5区でのガス大爆発の大惨事で吹っ飛んだのは17世紀後半に建てられた歴史ある建物

  


 本来ならば、この日はフェット・ド・ラ・ミュージック(音楽祭)の日で、パリのあちこちで、音楽祭が開かれ、最も日が長い夜にみんなが音楽を楽しみ、浮かれている日のはずでした。

 ところが、夕方、16時54分、パリ5区サンジャック通りで大爆発が起こり、建物1棟はほぼ全壊、爆発により、周辺に引火し大火災が起こり、音楽祭気分も爆発とともに吹き飛んでしまった感じになりました。

 パリの建築物には、旧建(旧建築)、新建(新建築)という区別の仕方をすることがありますが、この爆発の起こった建物は、旧建も旧建、ルイ14世の時代、17世紀の後半に建てられた建物だとかで、大変に古い歴史的建造物と呼ばれる建物だったそうです。

 パリの美しい街並みは、この旧建を可能な限り残し、外観はできるだけ崩さないように、とはいっても、内装や設備等は整備し続けられているのがふつうです。

 今回の大規模なガス爆発の原因は現在のところ解明されてはいませんが、警察は事故と事件の両方の可能性を踏まえて捜査を開始しているそうです。

 ガス爆発による建物が崩壊し、瓦礫の山となり、炎が上がっている光景は、パリの真ん中で戦争が起こったかと思えてしまうほどの衝撃的な映像です。


 このような災害にありがちな負傷者、犠牲者の数が少しずつ増えていくのも心が痛むところですが、現段階では、負傷者37名(うち4名は生命に危険の及ぶ重症状態)、行方不明者2名を瓦礫の中を捜索している状態で、夜を通しての捜索が行われるそうです。

 爆発による負傷者は、パリ市内の3ヶ所の大きな病院に搬送されたほか、ブラスリーの一つに緊急救急センターが設置されました。

 爆発が起こった時間は夕方17時頃で、比較的、外出している人が多い時間帯であったことから、この規模の爆発にしては、被害者が少ないとは言われていますが、周辺の住民の動揺は激しく、また、安全が確認できるまで、周辺の住民も立ち入りができません。

 この爆発現場には、約270人の消防士が出動し、10人の医師も駆けつけ、パリ市は緊急対策所を設置しています。

 最も日が長い日の夜は、ゆっくり暮れていく日の中に、いつまでも瓦礫の山を映し出しているのでした。

 ガス爆発の起こった建物では、爆発の数分前に強いガス臭がしたという証言が多数あり、この爆発がガスによるものであることは、わかっていますが、17世紀から存在しつづけていた大きな石の建物が一気に吹っ飛び、周囲の3棟にわたり、大きな被害が及んでいることからも、その爆発がどんなに大きなものであったか、現場近くから避難してきた人は、「大きな爆発は少なくとも2回あり、地響きが起こった・・」とその時の恐怖を語っています。

 しかし、瓦礫の山に見えることは、17世紀後半の建築物が大きな石のブロックで組み合わせて作られていたことで、その大きなブロックに切られた石は、この大爆発をもってしても、粉々に崩れることもなく、そのままの形を成している頑丈なものだったということも驚きです。

 色々な事件が起こりますが、このような事件は、個人的には避けようもないことですが、原因はしっかり究明し、これが故意に起こされた事件でないならば、このような事故が二度と起こらないような対策を講じてほしいと思っています。

 本当に、いつ、何が起こるかわからない毎日です。


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2023年6月21日水曜日

ボルドーの静かな住宅街でのあり得ない暴力事件

  


 今回の事件は、その暴力映像があまりにも衝撃的だったことから、また大騒ぎになりました。事件はボルドーの穏やかそうな住宅街での出来事です。

 映像は、家の扉の前であたりの様子をうかがっていた年配(73歳)の女性とその孫娘(7歳)が家に入ろうとしています。女性はその男の存在に気が付いていたのか、いないのかもわからないぐらいのタイミングで入口の大扉を閉め、ドアが閉まりきらないうちに、その男が割り込んできて、閉まりかけた扉を開けて、2人を暴力的に引っ張り出し、歩道に投げつけ、2人を引き離し、子供だけを連れて行こうとしますが、失敗し、その後に犬が吠え始めたために、そのまま逃走した映像です。

 この映像は、インターホンに接続された防犯カメラの映像で、この映像はテレビやSNSですぐに公開されました。


 

 とても暴力的で、老人と子供(2人とも女性)という弱い立場の無防備な人を暴力的に襲う、非常に悪質な犯罪です。

 午後5時半頃のできごとで、現場に居合わせた目撃者がすぐに通報し、駆け付けた警察が防犯カメラをチェックし、男が黒いルノー・クリオで逃亡したことをつきとめ、事件の1時間後には、逮捕しています。

 この男は、警察から目をつけられている、いわゆる札付きの人物で、1993年ボルドー生まれのフランス国籍の29歳のホームレス。過去に無免許運転、窃盗、暴力、麻薬、さらには殺害の脅迫など15回有罪判決を受けている問題の多い人物のうえ、精神疾患を抱えており、精神科の監督下におかれているはずの人物であるのに、治療は受けていなかったようです。

 検札側は「男は非常に興奮しており、逮捕に抵抗していた」と説明し、彼は犯行事実を否認していたそうですが、この防犯カメラの映像が証拠となり、逮捕が執行されました。

 しかし、逮捕後、まもなく、彼は精神病性統合失調症という医者の診断により、警察での逮捕・拘留が中断され、精神病院に搬送されています。

 また、移民問題か?と思いきや、彼のルーツは別として、彼はフランスで生まれ育ったフランス人。しかし、彼の犯罪歴や病歴を考えると、なぜ、このような人が世に放たれているのかが、疑問というより、恐怖です。精神的な病気を差別するわけではありませんが、このような狂暴な犯罪を重ねている人間で、そのうえ精神的に問題を抱えている人物が保護(隔離)されていないのか?を考えると、そのような危険な人物の管理は大変、ずさんであると言わざるを得ません。

 ボルドーは、娘の学校があったことで、何度か行ったことがありますが、パリよりも、ずっと、ゆっくりと時間が流れている平和なイメージで、バスやタクシーまでも、ゆっくり走っている感じで、警察官もパリよりもずっと少なくて、ボルドーって、やっぱり平和なんだなぁ~というイメージがあっただけに、余計に衝撃的です。

 この容疑者は少なくとも、現在は隔離されていますが、目撃者の証言によると、「彼が逃走した車は彼が運転していたのではなく、運転手は別にいた」とか、逃走する車に同行しているバイクの存在が語られており、彼の単独犯ではないことが疑われています。

 とすると、彼の仲間たちは、まだ、世の中に紛れて暮らしているわけです。

 多くの政治家も、この事件については、多くのコメントを発しており、「刑罰は最大級に厳重に!」などと呼びかけていますが、彼の刑罰についてはもちろんのことではありますが、このような前科15犯もある、しかも精神的な病を患っている人物を監督、隔離管理できていないということをどうにかしてほしいと思うのです。


ボルドー住宅街暴力事件


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