2023年1月24日火曜日

パリ11区で警察官発砲事件で男性1名死亡

  


 日曜日の夜、パリ11区レピュブリック広場近くのレピュブリック通りとトロワ・ボーン通りの角で偽物の拳銃を持って脅しをかけてきた(といわれている)男に対してパトロール中だった警察官が発砲し、銃撃を受けた男性が死亡しました。

 現場に居合わせた人の証言によると、男は、最初は犬に対して拳銃を向けて脅していたといい、警察官によれば、その後、警察官が近寄ってくると、男は警察官に銃を向けてきたところで、警察官2人が4発(一人が1発、もう一人が3発)発砲したと言われています。

 警察官が発砲し、男が倒れた時点で私服の男性がすぐに心臓マッサージを始めたという証言があるようですが、この心臓マッサージをした男性が警察官かどうかは確認されていません。

 撃たれた時点で、この男は被害者、警察官が加害者となったわけですが、被害者は死亡しているので、当然、被害者の証言が得られることはなく、警察官側の言い分と周囲の目撃証言のみによる検証しかできないことになります。

 ましてや被害者が持っていたのは本物の拳銃でもなく、当初には拳銃を犬に向けて、犬を脅していたというのですから、なんだか子供じみているというか、彼の行動には、警察官に射殺されるほどのものであったのかどうか疑問が残るところです。

 昨年、起こった警察官発砲事件では、少なからず死亡者が出ているうえに、本当に発砲の必要があったのかどうかと思われる事件も少なくありません。

 この事件はパリ司法警察に委託され、「公権力者の殺人事件」、「殺意のない意図的な暴力」で捜査が行われることになっています。

 今年に入ってから聞くのは2度めの警察官の発砲事件ですが、ここ数年、警察官の発砲事件は、定期的に耳にするようになっており、今回の事件現場などは、パリの街中で人通りも少なくない場所での出来事で、ゾッとさせられます。

 この手の事件が起こるたび、警察官発砲事件として、報道されるものの、その後は、司法警察の捜査が行われる・・というところまでで、その後、発砲した警察官がどう扱われたのかに対してまでは報道されないのですが、もしも、なんらかの刑罰が下れば、当然、報道されるところ、それがないということは、そこそこの措置で済まされているような気がします。

 警察側が命を張って仕事をしているのはわかりますし、治安が悪くなっていることも事実なので、緊急事態に際して、容疑者を無力化するというのはわからないではありませんが、こうも簡単に容疑者を殺してしまうということがしばしば起こることは、容認できない気もします。

 ましてや、事前には、わからなかったにしろ、この被害者が持っていたのは、ほんものの拳銃ではなかったわけで、当然、彼は発砲もしていなかったのです。

 フランスは死刑制度を強く非難し、今の時代の人権問題に死刑などあり得ないようなことを堂々と言っていますが、死刑もなにも、こうも簡単に警察官が発砲し、裁判以前に容疑者を殺してしまうことに、大きな矛盾も感じます。

 私は日本の死刑制度に対しても、少なくとも、議論が必要なことであるとは思っていますが、フランスでの警察官の発砲事件に関しても、見直しと指導が必要であると思っています。緊急に、犯行を止める必要があったとしても致命傷になる発砲にならないようにする努力は、必要なのではないかと思うのです。

 フランスは治安の改善対策として、警察官の大幅増員を計画していますが、警察官に発砲されて殺されてしまうのでは、必ずしも安心ともいえません。しかも、公的な絶対的な権力に守られた人間の発砲ということで、軽く扱われてしまうことは、とても恐ろしいことです。

 

パリ警察官発砲事件


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2023年1月23日月曜日

現在の日本のコロナウィルス対応についてフランスで報道されていること

  


 今、ネットでコロナウィルスと検索すると中国のニュースがズラリと上がってきます。

 中国疾病予防管理センタ(CDC)の発表によると、中国側は現在、1週間の病院での死亡者が13,000人としているようですが、これには、自宅等、別の場所で死亡した人の数は含まれていません。しかも、この数字は、感染対策規制が緩和されたことを受けて、かなり控え目の数字におきかえられていると他国の専門家たちは分析しています。

 もともと、中国の発表する数字はどこの国でも信用していない様子で、イギリスの医療分析会社エアフィニティによると、中国では旧正月休みの間、1日のコロナウィルス感染死亡者数が約3万6千人に上ると予想されています。また、同社は、中国が12月に規制を解除して以来、60万人以上がこの病気で死亡したと推定しています。

 フランスにしても、この中国の感染拡大には、警戒を続けているものの、フランス国内でのコロナウィルス感染に関しては、フランスならではの問題が浮上・・ここでも、検査機関のストライキの影響で、正確な数字がつかめていませんが、日常生活自体においては、国による規制は、医療施設などの一部の機関を除けば、ほぼほぼ通常モードの生活に戻っています。

 そんな中、日本のコロナウィルス感染に関しても、「日本はコロナウィルス感染第8波を迎えており、過去最高の死亡率を記録している!」と伝えています。

 そして、また辛口なフランスの報道では、「日本ではこのパンデミック以来、過去最高の死亡者数を記録しているにもかかわらず、日本政府は景気回復を後押しするために、コロナウィルスをクラス2から季節性インフルエンザと同じランクのクラス5に格下げする予定であることを発表しました」

 「昨年、10月に外国人観光客への門戸を開いたばかりで死亡率が過去最高を記録しているこの時期に、最新の健康規制を解除することで、経済の活性化を図ることを目的とした施策のようだが、この宣言は驚きである」と書いています。

 日本が鎖国を続けていた時には、いつまで鎖国をしているつもりなのか?と言っていたのに、鎖国をやめて感染が拡大してみれば、これでさらに規制を緩和するのは驚きだ・・などと言われるのは、心外な気もしますが、たしかに、日本政府の対応はタイミングが悪いことも否めません。

 東京オリンピックに関しても、延期をしておきながら、結局、延期する前以上に状況の悪い事態になって、ギリギリまで開催か否かが発表されずに強行開催というタイミングの悪さでした。

 中国とまでは言わないまでも、パンデミックが始まってから3年間、諸外国に比べて、かなり隔離されてきた日本で、中国とほぼ同じタイミングで過去最高の死亡率を記録したりしているのには、これまでに国民の間にどれだけ免疫ができているかということも関連している気もしますが、フランスでは、日本での死亡率の上昇には、オミクロン対応のワクチン接種率が低いことと、世界一、国民の平均年齢が高いことではないか?と言っています。

 日本は未だにマスク率が高く、政府は今年の夏には屋外ではマスクを外すように呼び掛けているそうですが、もともと必要に応じてすればよいだけの話です。

 フランスでは、一時はアンチマスクの人がいて、マスクをしていることに対して嫌な顔をする人もいましたが、最近は、必要だと思う人はマスクをし、それに対しても嫌な顔をしたり、とやかく言う人もいなくなり、マスクをしようとしまいと放っておいてくれるので助かります。

 フランスでは「みんなが同じでなければいけない」という観念がないので、規制をするときには、罰金付きなどにしなければ国民も言うことをきかないのですが、規制解除に関しては、助かるのかもしれません。


日本のコロナウィルス対応


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2023年1月22日日曜日

パティスリーのワールドカップ SIRHA で日本が優勝した!

今回、優勝した日本チームの作品

  

 リヨンで開催されたパティスリー(洋菓子)のワールドカップと言われる SIRHA(Salon International Restauration Hotellerie et de l’alimentation)で日本のチームが優勝しました。

 このクープ・デュ・モンド・デュ・ラ・パティスリーは世界20か国からトップパティシエが参加しており、2日間にわたって17チーム(各国3人のメンバーで構成される)が10時間かけて、味はもちろんのこと、その技能や芸術性を競いあいます。

 今年は、地球温暖化をテーマに行われ、それぞれのチームが試食用のシェアデザート、アントルメ、レストラン(皿盛りデザート)、フローズンデザートなどに加えて、ビュッフェテーブルに展示するアート(飴細工、チョコレート細工、アイスクリーム(氷)細工作品が作成されました。

 日本チームは、柴田勇作さん、高橋萌さん、鈴鹿成年さんの3名で、開催国のフランスにおいても、「日本が世界のパティスリー界の頂点に立った!」と報道されています。

 昨年は惜しくも日本は2位にとどまってしまったようでしたが、今年はイタリア、フランスを抑えての堂々の優勝でした。


今回、優勝した日本チームの作品


 この大会の会長ピエール・エルメ氏は「非常に僅差の結果からもわかるように、大会ごとにレベルが上がっている。16年ぶりに再び表彰台の頂点に立った、表彰台慣れしている日本が、この第1位を授与することに、大きな感慨を覚えます」とコメントしています。

 このピエール・エルメ氏のコメントからもわかるように、日本はこの大会のトップの常連で、本家本元の洋菓子の国々を抑えて日本が優勝することは、スゴいことだな・・と思います。

 なにより、このような洋菓子をはじめとして、料理などでも日本人の活躍は目覚ましいものがあり、これは、日本人が器用であり、また職人技を追及する姿勢や辛抱強さや丁寧な仕事、また日本の食文化そのもののレベルの高さがベースにあるように思いますが、日本人が輝ける場面として、洋菓子だけでなく、職人技の仕事という国の宝が他にもたくさんあるような気がします。

 多少、うがった見方をするならば、このワールドカップの会長がピエール・エルメ氏ということで、日本でビッグビジネスを展開している彼が日本贔屓なところがあるかもしれないとチラッと頭をかすめたりもするのですが、それは、出場者に対して失礼なことです。

 私は日本人でありながら、あまり器用な方ではありませんが、しかし、一般的にフランス人が例えば、なにかプレゼントのパッケージをしたりしているのを見ていると、「もうちょっと、なんとかならないのかな?」と思うことも少なくないので、全般的に日本人というのは器用な方なのかな?と思うこともあります。

 いずれにせよ、なんだか衰退していく感が否めない日本の中で、なにか日本人が輝ける場所はないものか?などと思うことがあるのですが、このような職人技があったではないか!・・と思えた明るいニュースでした。


クープ・デュ・モンド・デュ・ラ・パティスリー 日本優勝


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2023年1月21日土曜日

日本のニューワードに疎くなる 「片親パン」の巻

  


 メトロの中で日本のネット記事を見ていたら、「片親パン」という言葉がでてきて、???となりました。

 今や海外に住んでいても、いつでも日本の記事も読めるし(yahooニュースはVPNを使わないと見れなくなってしまったけど・・)、日本人のYouTubeを見たりするので、そんなに日本語に疎くなる感じもありませんが、それでも、たまに新しい言葉だったり、表現だったりを知らなくて、長くフランスにいるからといって、ネイティブのようにフランス語を操れるわけでもなく、え~?日本語にもついていけなくなっちゃったかも??と焦るような気持ちになることがたまにあります。

 前回は、仕事で日本の雑誌への広告の文面を考えていて、編集の人に「ガーリーな・・」という言葉を使われて、「えっ?ガーリーってなに?」と焦ったことがありました。

 今回は、何の記事だったか忘れましたが、文面の中に、「親ガチャとか、片親パンとか・・」という内容があり、親ガチャは、ネット上でなんとなく、知っていた言葉でしたが、片親パンというニューワードの登場に再び、ちょっとドッキリしたのです。

 しかも、私自身は、片親で育ったわけではありませんが、私の夫は娘が10歳の時に亡くなっているので、いわば片親状態で育ったので、きっと普通以上に片親というワードが気にかかったのかもしれません。

 フランスは親が亡くなっていなくとも、両親が離婚している場合も多いので、片親家庭も日本よりは多い気もするので、片親であることをそんなに気にすることもないかもしれないと思っていたのは、私だけで、ある日、娘から「私の友達の間では、父親の話はなんとなくタブーになっている・・」という話を聞いて、普段、口にすることはなくとも、父親が早くに亡くなってしまったことは、娘にとっても周囲の友人が気を使ってくれるほどのやはり傷になっていることを思わせられたことがありました。

 まあ、考えてみれば当然のことです。

 そんなに豊かとはいえないものの、様々な援助などのおかげで、夫が亡くなったにも関わらず、そんなに経済的にひっ迫したということはなかったつもりですが、これもまた、娘が気を使って気にしていないふりをしてくれていただけかもしれません。

 「片親パン」というのは、量が多くて安価な菓子パンのことを言うそうですが、この言葉が、単なる自虐的なジョークのように使われているものなのか?その重みはわかりませんし、これらのパンを単に自分の好みで選んで食べている人もいるだろうとも思います。

 しかし、ジョークとしたら、あまりセンスは良くないな・・とは思います。

 フランスの場合は、スーパーマーケットなどで大量にパックになっているバゲットやヴィエノワズリー(パンオショコラなどのいわゆる菓子パン?の類)やブリオッシュなどもありますが、それらは片親パンというよりも大家族用?のイメージです。

 この片親パンには、経済的な問題が含まれているとは思いますが、その点で言えば、なんとなく、思い浮かぶのは、夕方、バゲットを買いに来ている少年がオイルサーディンの缶詰だけを握りしめているのを何回か見かけたことがあります。

 家の場合は、小学校を卒業するまでは、一人で買い物に出かけることもなかったし、娘があまりフランスの食べ物を好まなかったこともあり、おなかがすいたらいつでも食べられるように、我が家の冷蔵庫には娘が赤ちゃんの頃から好きだったブロッコリーを茹でたものや人参の茹でたもの(つくづく健康的なものが好きな子でした)を入れておくようにしていたので、さしずめ我が家にとっての片親パンはブロッコリーだったかな?と思います。

 値段から言えば、菓子パンもブロッコリーも大した代わりはありませんが、この片親パンには、単に安価というだけでなく、手間暇をかけないという意味もあるかもしれません。

 手間暇をかける時間の余裕もないのが片親なのかもしれませんが、現実に片親だった私が日本に住んでいたら、このパンを娘に食べさせていたかどうか?などと、やっぱり片親というワードに過敏に反応してしまうことは、やっぱり自分が普段は意識していなくても、片親であったということに何かひっかかるものがあったということを気付かせられるニューワードなのでした。


片親パン


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2023年1月20日金曜日

フランス全土で112万人動員!想像以上に長引きそうな年金改革のデモとストライキ

 


 今回の年金改革反対の動きは、12年ぶりの労働組合統一の大規模なデモだと言われていましたが、その動員数は、パリだけでも40万人、フランス全土で112万人を動員したと発表されています。

 これは、この動員を呼び掛けていた労働組合にとっも想像以上のものに盛り上がったようで、まだ、その1日が終わらないうちから、次回の動員は1月31日だと発表され、早くも長期戦の兆しを呈しています。

 とはいえ、これに伴うストライキについては、以前の2019年12月の大規模なストライキの時のような大混乱とはならずに、渋滞もさして深刻にはならず、駅も場所によっては、いつもより人が少ない場所もあったようです。

 これは、パンデミックのロックダウンなどの経験により、リモートワークが広がったことや自転車を交通手段として使う人の割合が増えたことにより、いつのまにか公共交通機関のストライキに対する耐性を身に着けていたことも大きいのかもしれません。

 とはいえ、誰もがリモートワークが可能なわけでもなく、また、誰もが自転車通勤が可能なわけでもなく、これが長く続けば、疲弊していくことに変わりはありません。

 私自身、以前、パリ近郊に住んでいた頃に1カ月近く、ストライキのための間引き運転が続いて、心身ともに疲れ果てたこともあり、その月のNavigo(定期券のようなもの)が払い戻しのような対応になったものの、その直後に電車内にキセルのコントロールに回ってきたRATP(パリ交通公団)の職員が「こんなに長いことストライキをやっていたくせに、コントロールとは何事だ!」と周囲の乗客に袋叩きに遭っているのを見かけたこともありました。

 また、学校のストライキが1カ月近く続いたときにも困り果てて、学校がストライキだからと私まで休むわけにもいかずに、勉強も見てくれる娘のベビーシッターを急遽探して頼んだら、私の安い給料などは、ほとんどベビーシッターのためにすっ飛んで、一体、何のために働いているのかわからないと思ったり、何より、明日は学校やっているのか?と不安な状態が続くことに、つくづくウンザリしたこともありました。

 その結果、「なにがなんでも娘はストライキをやらない私立の学校へ入れる!」という決意を固くし、後になってみれば、それが娘にとっては、幸いしたのです。

 今回の年金改革には、国民の80%が反対していると言われており、今回の動員数を見ても、そう易々と解決するとは思えません。

 今後、このデモがどのように発展していくはわかりませんが、デモが単に大勢の人が集まってモノ申すだけにとどまらず、乱暴者が介入し、破壊や放火などにつながる危険がついてまわるため、その日はまともな生活が送れなくなります。

 時間の経過とともに、勢いを失っていくデモもありますが、今回のデモはどうにも今のところ、沈静化していく兆しはないので、余計に盛り上がっていく可能性が高い気がしています。

 定年の年齢が62歳から64歳になったことで、「死ぬまで働かせるつもりか!」と怒っているのですが、特に若い世代にとっては、これがそのうち64歳どころでは済まなくなる・・ということで、職種にかかわらず、男女にかかわらず、年齢にもかかわらず、ほぼすべての人に該当することで、すでに定年を迎えている人でさえ、自分の子供、孫のためにと立ち上がっているのですから、動員数が膨れ上がるのも致し方ないところです。

 長く働くことで、それなりに受給する年金額は増額されることになるのですが、このインフレの折り、その増額はインフレにおいついていないというのも反発を買っている一つでもあります。

 とはいえ、政府に対して声を上げるデモの権利というものは、当然、正当な権利であり、それ自体はこの抗議を受ける側である政府も認めるところではありますが、いずれにしても長期化しても国全体にとってもよいはずはないため、今後、この国民の声に政府がどう対応していくのかは目が離せないところです。

 このようなデモによって、これからの政策がさらに練られていくことは、必要なことで、自分の意見をはっきり主張することを良しとする教育を受けて育っているフランス人にとっては、ごくあたりまえのことなのだろうと思います。

 フランスのこんな様子を見ていると、少しは日本人も政府に対してモノ申せばいいものをと思っても、おとなしく従うことを良しとする教育を受けてきた日本人には、なかなか難しいことで、教育からして、政府の都合のいいようにできているのだな・・と果てしない問題を抱えているようにも思います。

 

フランス年金改革デモ112万人動員


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2023年1月19日木曜日

LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ 時価総額4,000億ユーロ超の絶好調

  


 2年前の冬、まだまだパンデミックにもっと緊迫感があったころ、それでもクリスマスのイルミネーションは綺麗だろうとパリの街中に出かけて行ったとき、クリスマス前だというのに、人もまばらで、ようやく飲食店以外の店舗の営業ができるようになったものの、シャンゼリゼはもちろんのこと、高級品店が並ぶヴァンドーム広場などは、お店が開いているというのに、お客さんが全然いなくて、暇そうに店員がお店の中でつったている様子を見て、いつもは、忙しそうにしているこれらのお店のお客さんは、ほとんどが観光客だったんだと思わされて、クリスマスのデコレーションでいつも以上に煌びやかにお店が飾られている分、余計に物悲しい感じがしました。

 考えてみれば、ヴァンドーム広場やコンコルド広場などに出るまでの比較的細い道は、いつもは、クリスマスとは関係なくとも、けっこうな人がいて、スムーズには歩きづらいほどなのですが、そういえば、今日はスイスイ歩いてきたな・・などと、ガラガラのお店をみて思ったものでした。

 しかし、こんな状態が続いたら、これらのお店も大打撃だろうな・・と思ったのを覚えています。

 あれから、徐々に観光客も戻り、現在は、ほぼ通常モードに戻っているパリは、ルイヴィトンを筆頭に高級品店は長蛇の列がもとどおりになりました。もとどおりどころか、最近は、その派手なデコレーションやアピールぶりで、さらに否応なしに存在感を増している感じです。

 つい先日、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン)の時価総額が4,000ユーロを突破し、これは欧州企業では初めてのことだと沸いています。これは株価の上昇によるものなのですが、企業自体が好調であることは言うまでもありません。

 このインフレでガソリンの値段が、バゲットの値段が・・などと騒いでいる時に、ルイヴィトングループなどの高級品店は、インフレの影響をまるで感じさせず、ごくごく日常のものについては買い渋りなどの現象が見られるのに、けた違いの値段の商品が行列を作って人が買っていくのですから、まるで別世界のようです。

 別世界といえば、このグループ、最近はルイヴィトンにしてもディオールにしてもギャラリーや美術館まで拡大しているのがこれまでと違うところで、私などは、お店を覗くだけでも、美術館みたいだ・・と思うのですが、その美術館みたいだ・・と思って、なにも買わずに出てくる私のような人間に、本物の美術館を作って買わない人からも入場料を徴収するというのが凄いところ・・。

 また、このギャラリーなどが、大金を使っているだけあって、なかなか見応えがあり、予約しても行列ができるという大盛況ぶりです。

 そもそもこのグループの一つ一つのブランドは一つずつでも最強なブランドばかりが束になっているのですから、強者がさらに虎の威を借りてさらに強くなっていく相乗作用で、ルイヴィトンをはじめとして、そんなにブランドに詳しくもない私も知っているディオールやをセリーヌ、フェンディ、ティファニー、ショーメ、ブルガリ、ウブロ、ゲラン、ロエベなどなど・・名前を上げれば上げるほど、そりゃそうだよね・・という感じです。

 LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ会長ベルナール・アルノーは、昨年12月に個人資産もイーロンマスクを抜いて、世界一の資産家となり、彼はなにかと比較の対象となっています。

 今回の4,000億ユーロ超の記録についても、「LMVHベルナール・アルノーは、株式市場でもイーロンマスクに勝っている!」などと見出しがつくほどです。

 このインフレ知らずの強者は雪だるま式に大きくなっていく感じがしますが、よくよく考えてみれば、フランスには、このグループには属していないシャネルやエルメスなどのブランドが控えており、この業界の層の厚さを感じさせられます。

 個人的には、願わくば、LVMHは、そんなに大きくなってくれなくてもいいので、シャネルやエルメスなどは、このLVMHの傘下には入ってほしくないと思うのです。


LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ 時価総額過去最高


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2023年1月18日水曜日

日本の空き家問題をフランスのニュースで知る 空き家の相続問題



 日本では850万戸の空き家があり、政府は相続人に対する規制を強化することを検討している・・とフランスのニュースで取り上げられているのを見て、「えっ?そうなの?」「空き家が多くなっていることは知ってたけど、それに対する規制を強化・・という話は知らなかった・・」とちょっと斜め読みしていたところ、じっくり読むことにしました。

 「高齢化社会を迎え、団塊の世代が80歳を迎える10年後には、日本の住宅の3軒に1軒は空き家になるという試算もある」

 「多くの国々と同様、日本も深刻な住宅問題に直面しています。毎年人口が減少しているとはいえ、ある程度の広さが必要な家族にとっては住宅価格は高い。特に住宅市場は、相続した人が手入れをしないために空き家のままになっている数百万戸の家屋の存在によって歪んでいる。そのため、日本政府は税制改正を検討しています」

 なんか耳が痛いような話でした。

 そういう私の実家も母が亡くなったあと、長いこと父が一人で暮らしていましたが、その父が亡くなって以来、長いこと空き家になっていました。

 残された私と弟は二人とも海外生活をしていて、相続手続きからして、容易ではありませんでした。それは、父の容態が悪化してからの介護問題から始まっていたのですが、私はかなり前に夫を亡くして、フランスで一人で仕事をしながら子育てをしていたので、介護のために長期で日本に滞在することは不可能で、娘の教育のことを考えると、娘の受験の時期も重なっていたりして、その時点で日本に本帰国することは無理な話で、結局、父は最期を介護施設で迎えました。

 父の死後も落ち着いて、日本に滞在しているわけにも行かず、相続手続きは、すべて銀行に頼んで、なんどか書類を行ったり来たりさせるだけで、最後のサインの時だけ日本に帰国するという感じだったと思います。

 これで両親ともにいなくなってしまったという心理的なショックや家への思い入れなどもあり、家はすぐにどうこうするということは決められずに、とりあえず、家の名義は私と弟の共同名義にして、年に2~3回、日本に帰国しては、家の中を少しずつ片付けていました。

 父が亡くなった翌年だったか、日本の税務署から固定資産税の請求がフランスの家に届いて、「どうして?フランスの住所、知ってるの?こんなに追跡してくるんだ・・」とちょっと焦って、慌てて帰国したこともありました。

 そのうちになんとかしなくちゃ・・と思いながら、ある日、突然、パンデミックで容易に帰国もできなくなり、いよいよ、家は本格的な空き家になっていきました。

 家は住んでいないと傷むと言いますが、そのとおりで、それでも我が家の場合は家の地続きに従妹が住んでいるので、全くの空き家というわけでもなかったのですが、台風が来て、鎧戸が飛んでしまったとか、庭の草木が生い茂り植木屋さんに入ってもらったり、住んでもいない家の庭にお金をかけるのももったいない・・などと、帰国時に必死に草抜きをして、除草シートを張ったり、苦労していました。

 その後、パンデミックのため、色々な番狂わせがあったものの、その間、娘はフランスでの教育課程を修了し、日本で外資系の企業に就職したため、空き家だった家に今は彼女が一人で暮らしています。数年間、無駄にしましたが、現在、彼女が私の実家に住んでくれています。

 彼女が日本で暮らし始めるときに、一緒についていって、家が傷んでいるのにびっくりしましたが、まぁ、彼女にとっては家賃なしで暮らせる場所としては上々なのではないかと思っています。

 とりあえず、空き家問題からは一時回避している私ですが、いつかは、なんとかしなければならない空き家問題。現在は、他にも家をすぐには処分できない理由もあるので、手つかずのままいるのですが、いつかは再び、なんとかしなければならない問題として残されているのです。

 そんなところにこの「日本の空き家問題」のニュースをフランスで見たのは、何かのお告げかしら?とも思ってしまったわけですが、詳細については書かれていないものの、この空き家対策として「条件付き税額控除」を検討中だということです。

 850万戸の空き家は日本の総住宅数の14%に相当するそうで、我が家などは、都内でその気になれば、借り手も買い手もいくらでもいそうなのですが、私たち自身が高齢になっていくにつれて、終の棲家をどこにするのかも考えるし、色々なことが億劫になってきているので、いいかげん、なんとかした方がいいなとは思っています。

 団塊の世代が80代を迎える10年後には、日本の住宅の3軒に1軒は空き家になっているという試算もあり、誰にとっても空き家問題は他人事ではなく、ましてや海外在住の人にとっては、さらにハードルが高い問題なのです。


日本の空き家問題


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