安倍元総理が銃撃されて亡くなったニュースはフランスでもセンセーショナルに報道され、直後は、選挙運動中に銃撃されるというショッキングな亡くなり方も手伝って、あの安全で平和な日本で、しかも日本で最も有名な首相が暗殺されたという事実や、民主主義への攻撃は許されないというような正論も手伝って、「日出ずる国は、日本の近代史における重要な家系の純粋な家系図を失い、日本の歴史に長い歴史を持つ日本の政府首脳が初めて暗殺された暗い日として、永遠に刻まれることになるであろう」などと、もはや彼が神話として語り継がれるかの如き勢いでした。
彼の出自についても、「19世紀以降に大きな影響力を持った安倍、岸、佐藤という苗字を持つ家系であり、真の日本の王朝物語、安倍氏はその生涯を武勇伝として残した」と説明し、彼の業績とされることを羅列して報道していました。
「安倍晋三が「この国の人々が私に託した使命を自信を持って果たすことができない状況にあるため、もはや首相を続けるべきではない」と判断し、健康上の理由で、首相を退陣して2年も経たないうちに、まさか、こんなエピローグを迎えるとは、誰も想像していなかっただろう」と、その時の報道は結んでいましたが、しかし、エピローグはそんな美談だけでは終わらなかったのです。
ほとんど美化され、神話化されたかに見えた安倍首相暗殺の知らせに世界各国の首脳からは弔意のメッセージが届いていました。
しかし、その後、この犯人の自供により、この犯行の動機が統一教会に関係したものであり、少しずつ統一教会と政府、特に自民党との関係が明らかになってくると、世界からの見方、報道も一変したものになりました。
今では、「Shinzo Abe」と検索すると、「Shinzo Abe Secte Moon(統一教会)」と一番に上がってくるほどになりました。
そもそも、この統一教会の名前が当初、伏せられたことについても海外メディアは厳しく糾弾していましたし、その後、次々と明らかになり始めた政府と統一教会のつながり、統一教会による被害についての報道も容赦はありません。
その報道は山上容疑者が家族、人生を破壊された経緯とともに、信徒である母親が、銀行預金や相続した不動産や土地の売却益から1億円(約72万ユーロ)を宗派に寄付したことから、2002年には破産していることや、お金がなくて大学に行けなかったこと、自衛隊員だった2005年、兄と姉に生命保険を回収してもらうために自殺を図ったことなど、積年の恨みを募らせていたことが説明されています。
また、「日本のメディアは、統一教会(2005年に世界平和統一家庭連合に改称)と日本の政治家、特に自民党の政治家とのつながりを指摘し、この改称にあたっても政府が加担してきたことなどを含めて、日ごとに、時間ごとに、統一教会と自民党の関係を明らかにしていった。これは、長年、カルト教団に圧力をかけられた被害者を支援してきた弁護士集団が明確に確認するものである」
「35年間で総額1,237億円(9億ユーロ)を下らない金が統一教会に支払われていると推定されている」
安倍晋三氏の死の直後には、「真の日本の王朝物語」とまで評された安倍家の家系は一転して、祖父の代から統一教会の日本への参入と存続、勢力拡大に加担してきたブラックな一族として知らしめられるようになり、「現在、国会議員112人(その大半は自民党員)が、この宗派と関係があると言われている」と報道されています。
岸田首相は、かなり早い段階で安倍氏の国葬を行うことを決定し、日本国内でも国葬に関しては意見が分断しているようです。なぜ国葬にするのかの基準や理由はよくわかりませんが、多くの国から、弔意が寄せられたこともあり、岸田首相と安倍元首相の関係からくる気持ちなどもあるでしょうが、絶好の外交の場としても考えられたかもしれません。
しかし、この世界の安倍氏への見方が変化して、一転していることを考慮しないと、日本の国葬ともなれば、世界が無視はしないまでも、実際の首脳が国葬に参加するかどうかは、甚だ疑問でもあり、形式上、代理人が参加するようなことも多いに考えられ、もしかしたら、多くの日本国民から反感を買うだけでなく、世界的にも大きな恥をかくことになるかもしれません。
いい加減、日本政府は、ごまかしてばかりいないで、真正面から向き合わないと取り返しがつかないことになります。
安倍晋三 国葬
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