2022年1月8日土曜日

在宅中でも油断できないパリの治安 偽身分証明書による家宅侵入による盗難事件

 

偽警察官を見分けるために、警察が公開している本物の警察官の身分証明書

 

 イル・ド・フランス(パリ近郊地域)では、昨年の1月から11月までの11ヶ月で、偽の身分証明書を提示して、個人の家宅に侵入しての窃盗事件が464件も発生していることが報告されています。

 街中でスリやひったくりに遭うだけでなく、自宅にまでやってくるというのですから、家にいても、決して油断はできません。

 この手の犯罪は、一昨年までの倍以上に跳ね上がっているので、今、流行?している犯罪の手口なのかもしれません。ちょうど、パンデミックの時期と重なっているため、観光客が激減したり、外出制限などで、街中の人出が通常のようには、戻っていないため、その手の犯罪を生業にしている人にとっては、商売あがったりの状況が続き、窃盗の方法を変更しているのかもしれません。

 偽の身分証明書、身分を偽って家宅に侵入するには、さまざまな種類があるようで、時には警察官、配管工、電気工、水道や電気のメーターのチェック、ごみ収集、煙突掃除などなど、様々な身分に変装し、偽の証明書や書類を持って現れ、工事やチェックをするふりをして、隙をみて、家の中の貴重品を盗み出します。

 また、自治体を名乗り、寄付を募るという手口もあるようです。

 ここのところ、我が家でも、同じところに住んで長くなるために、どういうわけか、家の中のあちこちにガタがき始めて、トイレや洗面所、電気系統、給湯器など、ここのところ、立て続けに工事の人が家に入っていたので、このニュースにちょっとドッキリしています。

 しかし、我が家の場合は、調子が悪くなっている場所を修理してもらったりする場合は、必ず、管理人さんを通して、工事の人を頼んで来てもらっているので、このニュースにあるような、不意の訪問ではないので、まず心配はないと思っています。

 幸いにも現在の管理人さんは、とても腰が軽い人で、何かあれば、すぐにSNSで連絡がとれ、メッセージを送るとすぐに対応してくれる人なので、とても助かっています。

 とはいえ、このご時世に、全く知らない他人が家に入ってくるのですから、感染の心配もあるし、余計なことをされても困るし、逆についでに頼めることがあれば、頼んでおきたいと、思っているので、工事をしてもらっている最中は、工事人に張り付いて、おしゃべりしながら、見ているので、今のところ心配はないと思いますが、もしかしたら、気を抜いた隙に何かをとられていても気がついていないかもしれません。

 もっとも、我が家には、大した貴重品もないので、心配することはないのかもしれませんが・・。

 この手の犯罪は、どこも増加しているようで、自治体ごとに警戒のメッセージを告示しています。特に高齢者の世帯に被害が多いという報告も上がっています。

 特に警察官などが家に来れば、本来ならば、市民を守ってくれるはずの立場の人、容易に騙されてしまうことも多く、パリ近郊の市役所などでは、本物の警察官の身分証明書を公開し、違うものを提示された場合は、必ず警察に確認してくださいなどと警告しています。

 しかし、突然の訪問に咄嗟にそのような対応ができるか?と心配になりますが、このようなことがあり得ると知っているのとそうでないのとでは、身構え方が違ってくると思うのです。

 パリ警視庁は、この手の犯罪の防御策として、

○制服を着ている場合でも、プロフェッショナルカードの表裏とミッションオーダー(または通過証明)を見せてもらうこと。もし、本人が拒否したり、疑問を持ったりした場合は、中に入れないこと。

○訪問者の身元を確認したい場合は、名乗ったり電話をかけてきた人の電話番号ではなく、自分で電話番号を調べた先に、電話して確認すること。

○電話、郵便、または建物内の掲示で誰かが来ることを知らされた場合、その人が来た組織、家主、不動産管理人、コンシェルジュ、または隣人に確認すること。

○国勢調査、測量などのために来る人に注意すること。窃盗の犯人は、しばしば偵察を行っています。

○アポなし取材には決して応じず、相手の真意を確かめるために身元を確認した上で、改めてアポを取ること。

 窃盗は5年の禁固刑と75,000ユーロの罰金に処されることにはなっていますが、このような犯罪が横行しているということは、そのほとんどが検挙されていないということなので、注意が必要であることは、いうまでもありません。

 まったく、外に出れば、スリやひったくりに遭わないかと警戒し、家を留守にすれば、空き巣に狙われ、在宅していてもこのような窃盗に遭うとは、パリという街は、どこにいても気が抜けないところです。


偽身分証明書の提示での家宅侵入による窃盗事件


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2022年1月7日金曜日

日本からパリに来てくれた友人のコロナカルチャーショック

  


 

 パンデミック以来、私が日本へ行くこともできなくなっただけでなく、日本から友人が来てくれることも、パッタリとなくなってしまっていました。

 日本からフランスへの入国は、ワクチン接種さえしていれば、隔離もなく、さほど面倒なことはないのですが、日本に戻った時の隔離期間を考えると、まあ容易に海外に出るのは、難しく、旅行期間プラス隔離期間の日程をもってしても、検査だ隔離だ、公共交通機関を使わない移動だと、いつもはかからない余計な出費をも考えると、海外に出られるという人は、なかなかいるわけではありません。

 12月の初めに、私は友人から、「年末年始にかけて、パリに行くつもりでいたんだけど、どうしよう?」と連絡があり、「パリは感染は増えているけど、みんな全然、普通に生活してるよ・・」と話していました。

 彼女は、長いこと会えていなかった遠距離恋愛中の彼に会うためにフランスに来る予定にしていたのですが、現地の事情もよくわからないので・・と連絡をくれたのでした。

 長いこと会えていなかった彼女の彼は、このパンデミックで、家族数名を亡くし、失意に暮れていたところに、彼女も「やっぱり行くのは、諦めようかな・・」と言い出したら、さらにガックリしてしまったそうで・・結局、彼女は、意を決してパリにやってきたのでした。

 彼女は、エアフランスのチケットを予約していたのですが、予約していた便はキャンセルになり、翌日のフライトでパリに来たとのこと。彼女の住む地域には、パリへの直行便はなく、国内での乗り換えが必要なため、変更されてバタついたとのこと・・。

 しかも、前日のフライトのキャンセルのために彼女の乗った飛行機は満席だったとのこと、航空会社からしてみれば、効率はよいとはいえ、この時期の長距離便(日本⇄パリは12時間)で満席状態というのは、なかなかリスクもあるのではないか?と少々、不安にもなります。

 彼女曰く、日本での海外渡航用のPCR検査は3万円だったとかで、それが、当日の検査ともなると4万5千円なのだそうで、なぜ、PCR検査がそんな高額になるのか、それだけでもちょっとバカバカしい気分になります。

 彼女が「フランスに行くかもしれない・・」と言うと、「まさか、ほんとに行くの?」と怪訝な顔をする人も周囲に結構、いたとかで、結局、ごくごく親しい人にしか話さずに来たとのこと。日本の厳しい雰囲気がなんとなく、想像つく感じもしたのです。

 しかし、色々なことをクリアして、いざフランスに来てみると、「この自由な感じは、ホント、楽!」だったと話してくれて、その楽な感じにどっぷり浸かっている私は、逆に今、日本に行ったら、その厳しい感じがさぞかし、窮屈に感じるだろうと、そんな風にも思ったりしたのでした。

 結局、この自由な感じが感染者を急増させていることには違いはないので、一概に日本の厳しさを責めることはできません。何といっても桁違いも桁違い、桁がいくつも違うほどの感染者を叩き出しているフランスと日本の空気感の違いは、言うまでもありません。

 仕事関係の日本の人などが、「どうやら日本も感染が悪化してきたから、もしかしたら、また日本入国は、さらに厳しくなるかもしれない・・」などと話しているのを聞いても、日本での1日の感染者数は2,500人を超したくらい、フランスは?と聞かれて、「33万人を超えています」と言っても、もうどうにもお互いにピンと来なくなっていることを感じます。

 これは、コロナウィルスにより生まれた新しいカルチャーショックの一つでもあるかもしれません。

 もともと、世界中を渡り歩く仕事をしてきた私の友人は、順応性もあり、日本とフランスの現在の両方の様子を実際に体験して知っている貴重な友人ですが、フランスから日本に帰った時、時差ボケだけでなく、このコロナウィルスに対する温度差ボケに、ちょっとしたカルチャーショックを感じるのではないかと思いますが、幸い?現在、フランスから日本への入国の際には、6日間の隔離施設での隔離、その後、陰性の場合はさらに8日間の自主隔離期間があるので、その間に日本モードにシフトできるのではないか?と思っています。

 彼女は、フランスでのPCR検査は、4-5,000円(旅行者)でそれほど高いわけではありませんが、現在は、検査は長蛇の列、2時間並ぶ苦行に大変な思いをしたようです。

 そして日本に帰国後は、彼女には6日間の隔離施設での隔離プラス8日間の自主隔離というさらなる苦行が待っています。しかし、その隔離によっぽどうんざりしない限り、「また、春頃には来るから・・」と日本に帰国する前から、また来る気、まんまんです。

 それにしても、フランスの状況は、現在のところ、少なくともあと1週間くらいは、この悪化が止まらないであろうという感染予報?が出ており、特に学校などは、学級閉鎖が10,800件、25,000人の生徒、4,000人の大人(教員等のスタッフ)が陽性、75,000人の生徒、3,000人の大人が隔離中とかで、また、隔離明けのタイミングもなかなか微妙でややこしく、学校は、なかなか混乱している模様です。

 問題になっていたワクチンパスは国会で可決され、来週の上院での審議に備えている状況で、どうやら、予定どおり、1月15日からワクチンパスが施行される模様です。

 この決定を受けて、これまでワクチンをせずにねばっていた人がこれでワクチン接種を受け入れるのか?とは、疑問でしたが、多少なりとも、これまで全くワクチン接種をしてこなかった人々がワクチン接種をし始めたと報道されています。

 実際のところは、よくわかりませんが、初めてのワクチン接種を受けている様子のインタビューなどを見ていると、どちらかというと若者が多く、肝心の高齢者のワクチン未接種者の姿があまり見えないのは、気のせいでしょうか?

 とにかく、ワクチン接種を進めること、ワクチンパスを施行させることを軸に進めているフランスは、私の友人が「楽!緩い・・」と感じたとおりにワクチン接種さえしていれば、ほぼ、日常の生活が送れるように、レストランやカフェ(食事やアルコールの提供、営業時間などは通常どおり)、その他の施設、店舗なども、閉鎖されてはいません。(ディスコなどは除く)

 しかし、10万人あたりの感染率は、とうとう2,000人を突破、50人に1人は感染しているという計算になります。こうなると、本当に身近な周囲の人々の中にも、必ず感染者がいる感じを実感するようになり、ほんとうに明日は我が身です。いくら、フランスの社会が緩くても自分の身は自分で守らなければならないと実感しています。

 今日、処方箋をもらってあった薬を取りに行こうと薬局に行ったら、もの凄い人で、あまりの人の群れに恐れをなして、明日、朝、早くに出直そう・・と帰ってきてしまいました。

 日本のニュースを見ると、感染悪化のために、「蔓延防止等重点措置」だとか、アルコール提供停止、時短営業などを検討中だとか・・。感染者30万人でも、みな朗らかに暮らしているフランスから見ると、思わず「えっ?それだけの感染者数で時短営業? こちらのもはや天文学的数字の感染者数をよそに、日本の経済は大丈夫なの?」などと心配にもなってしまいます。

 フランスと日本、もはや比較にならないどころか、あまりの別世界ぶりにどちらが正解なのかは全くわかりませんが、以前に書いたことがありますが、危篤状態になった時に、比較的、あっさり?諦める気がするフランスの医療と、何がなんでも延命治療をしようとする日本の医療に見られる死生観の違いのようなものが、このコロナ対応にも反映しているのではないか?などと思ったりもするのです。


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2022年1月6日木曜日

フランスの1日の新規感染者数33万人突破 連日新記録更新とマクロン大統領の戦略

  


 もはや、どうにも止まらないフランスの感染者数は、昨日よりもさらに5万人以上増加し、1日で33万人(332,252人)を突破しました。

 感染者数だけでなく、入院患者数も1日で2,000人以上増加(現在、コロナウィルスによる入院患者数は20,688人)している今、オミクロン株は重症化しないから、感染者数だけで騒ぐことはない・・などとは、言っていられなくなる状況に陥りつつあります。

 しかも、そのうち295人は、10歳未満の子供だということです。

 にもかかわらず、フランスでは、一昨日のパリジャン紙のインタビューに答えたマクロン大統領の過激な発言の方が話題沸騰しています。

 たしかに、これまでのマクロン大統領は、決して国民を怒らず、どんな時も国民に対して好意的にフランスという国を称えながら、連帯と団結を唱え、つい先日の大晦日の演説でも、フランスという国の「団結、博愛、支持を維持しよう」と宣言し、国の「統一」を図ろうとしてきました。

 しかし、このインタビューでは、一転して、ワクチン未接種者に対して、「自分の自由が他人の自由を脅かしている!それは無責任な自由の主張であり、無責任な人間は、もはや国民ではない!」という強い攻撃的な言葉を発し、ワクチン未接種者を怒らせたい(しかも、俗語表現というか、お行儀のよい言葉使いではない)とまで語ったことは、少なからず、国民には、ショッキングな内容であったようです。

 おりしも、大統領選挙を目前としているタイミング、当然、対立候補の面々は、この発言をここぞとばかりにバッシングする発言を繰り返し、感染者が連日、爆発している現実を飛び越えて、「意見の違う人々を排除しようとする発言をする者は、大統領として認められない!」などの声明を出し続けて、違うところでヒートアップしています。

 しかし、これは、あくまでも、フランスの1新聞社のインタビューによる字面で発表された内容で、彼がこの内容をどのような口調でどのようなトーンで話したかは、映像として出されているわけではなく、ニュアンスがどのようなものであったかは、しっかりと伝わってはいません。

 現政府のスポークスマンなどは、この発言に対するフォローと思われる説明(現状がいかに厳しい状態であるか等)をしていますが、彼自身は、この件に関して、何の弁明もしていません。

 これだけの独占インタビューによる紙面ですから、内容に関しては、当然、大統領府のチェック済みのものだと思われるので、「彼自身が怒らせたい」とこの紙面で語っているとおりに、一部の人(ワクチン未接種者)は、怒り、また、それに乗じる政治上の争いのために、それを囃し立てて、騒ぎを大きくしていると思われます。

 しかし、多くのフランス国民に衝撃を与えたマクロン大統領のこの発言は、マクロン大統領自身による計算された作戦であるという見方もあります。

 現在のフランスのワクチン接種率は、ほぼ80%に達しつつあり、残りのワクチン未接種者は2割程度、ワクチン接種を受けている者にとっては、いつまでもワクチン未接種者のために続く感染拡大と医療の逼迫、生活制限には、うんざりとしているのは、言うまでもありません。

 非難の声を浴びせる対立候補をよそに、これまでのように、ぬるい言葉で、国民を讃えているだけでは、これ以上は、解決される問題ではないことは、皆がうすうす感じていることで、いわば、「ショック療法で、自分たちの置かれている状況を見つめ直させる」そんな意図があったのではないかとの声も上がり始めています。

 どちらにせよ、毎日、毎日、新規感染者数を記録更新し続け、1日30万人以上もの感染者を出し続け、医療状態も逼迫している現在のような状況で良いわけはありません。

 このような緊急事態を政権争いに利用して、撹乱するのは、やめてもらいたいです。

 現在のフランスの検査(PCR・抗原検査)における陽性率は、17.05%、10万人あたりの発症率は、1752.53人まで上昇しています。つまり、5人に1人は感染している状態に限りなく近づいています。

 イタリアでは、50歳以上は、ワクチン接種の義務付けられることになりました。


フランス1日の新規感染者33万人突破


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2022年1月5日水曜日

フランスの1日の新規感染者数27万人突破 怒りと焦りが見える政府陣営の怒りの発言の数々

  


 年末から、「1月の初旬には、1日の新規感染者数は25万人を超える可能性がある」と言われてきましたが、昨年のノエルに10万人を超え、10万人のしきい値を超え、そのわずか4日後には、20万人を突破した時点で、1月初旬の25万人突破も現実味をおびてきた・・と思っていたら、初旬も初旬、三ヶ日を過ぎてすぐに、25万人どころか27万人を突破してしまいました。

 もう数字の感覚が麻痺してきており、27万人を超え、すでに27万人が「30万人近くの感染者を出している・・」という報道のされ方をするようになり、もう換算される桁が10万人単位になりつつあり、27万人が限りなく30万人に近いという感覚になっています。

 先週はPCR検査と抗原検査を合わせて800万件の検査が実施され、陽性者は検査対象者の15%に相当しており、1週間で発症率が130.3%に跳ね上がっています。

 この感染者の増加とともに、入院患者数は1週間で38%増加、昨日、1日で297人が死亡しています。毎日、200人から300人が亡くなっているということは、毎日のように飛行機の墜落事故が起こっているような状況です。

 厚生省の発表によると、現在、コロナウィルスによる入院患者数は、20,186人、(1週間で3,000人近く増加)、うち3,685人が集中治療室で治療を受けています。

 想像以上の感染増加の速度に政府の閣僚たちも苛立ちを抑えきれずに、怒りを露わにする場面が目立ち始めました。

 かなりアクセントの強い喋り口調のせいもありますが、日頃は、どちらかというと、穏やかな口調のカステックス首相が、昨日の国会の議会では、ワクチンパスに関する法案の審査が中断されると、野党議員の政治的な動きを非難し、「コロナウィルスの感染の急拡大の局面を迎えている重要な時期に議論を遅らせることは、非常に無責任な行為である」「ウイルスは疾走しているのに、あなたはハンドブレーキを引いている」「真夜中も働き続けている医療従事者のことを考えているのか!」と激昂して語りました。

 また、マクロン大統領もル・パリジャン紙のインタビューの中で、「ワクチン接種を受けていない人々を攻撃するために言葉を濁すことはしない」とワクチンパスの正当化について語っています。

 こちらも、またかなり強めの発言です。

「私たちは、フランス国民を困らせるためにワクチンパスを施行するのではない!」「ワクチンパスによって、日常生活をブロックされるとなると、一日中文句を言っている人たちを本当に怒らせたい!最後までやり続ける!これが私たちの戦略だ!」と強く語りました。

 「この感染の急拡大をなんとかおさめるために、ワクチン未接種者を刑務所に監禁するのではなく、長期的に一定の活動を奪い、1月15日からは、レストランに行くことも、公共交通機関を利用して長距離旅行をすることも、劇場へ行くことも、映画館へ行くこともできなくなると伝えなければならない」と。

 また、アンチワクチン論者の人たちが、現在の感染急拡大による緊張状態を促進していることを強く批判し、「ワクチン未接種者への診療拒否」という問題が提起されている現在、彼らの道徳的な過ちを指摘し、国家の強さを損なうものとなっており、自分の自由が他人の自由を脅かしており、無責任な自由の主張であり、無責任な人間は、もはや国民ではない!」と発言しています。

 かなり、きつい発言になっていますが、現在の入院患者のほとんどがワクチン未接種者で埋められており、ワクチンをしていても、3回目のブースター接種が間に合わなかったケースなどがほとんどです。

 これらの人々のために、ノエルもなく、昼夜、患者のケアにあたっている医療従事者、また、病床がコロナウィルス患者に圧迫されて、本来予定されていた手術が延期されている人々の生命、検査を受け続けながら学校に通わなければならない子供たちなど、結果的に多くの人の日常生活を奪っている事態には、国を動かしている政府からしたら、怒りが震盪するのも理解できます。

 しかし、ただでさえ、大統領選挙を前にして、感染状況をよそに、何かと足の引っ張り合いのようなことが横行している現在のフランスでは、マクロン大統領のこの発言は、絶好のつっこみどころとなり、ワクチンパス以上に論争を起こしそうな気配です。

 さすがに、一部のワクチンをしない国民を切り捨てるような発言は、勢いあまって、口がすべったような感じがありますが、カステックス首相の激昂にしても、マクロン大統領の過激発言にしても、政府は、かなり、現在の状況に焦りと苛立ちを隠しきれなくなってきている状況であることは間違いありません。


新規感染者27万人突破 マクロン大統領の過激発言

 

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2022年1月4日火曜日

厳戒体制での学校の再開

   


 一昨年前の年末あたりから、「学校の閉鎖は最終手段」という方針を貫き通しているフランス政府は、今回の感染爆発ともいうべく感染の急激な増加の中でも、学校を予定どおりの日程で再開しました。

 しかし、特にワクチン接種を受けていない小学生以下の学校再開には、特に感染対策が強化されています。

 この学校における感染対策の主な柱は、生徒たちの検査をより徹底したものにすることに焦点を当てられています。

 登校初日には、必ず検査(PCR検査・抗原検査)を受け、陰性であることが確認された生徒だけが登校、学校再開後には、陽性例が確認され次第、クラスの生徒全員が抗原検査またはPCR検査を受けなければならず、保護者からの「書面」での証明と、陰性であることが確認された場合にのみ授業に復帰することができます。

 また陽性になった者については、陽性が確認された当日から1日おきに、4日間で3回のテストを行う必要があるとしています。この対策は、ウイルスが感染してから症状が出るまでに3〜5日かかるという潜伏期間をより考慮したものです。

 この検査をスムーズに行うために最初に実施した検査の後は、各家庭で2回、薬局で無料のセルフテストを受け取れるようになっています。

 フランス政府は、昨年末の段階で、すでにこの検査を徹底して行うことを可能にするために、充分な検査キットを大量に発注済みであると説明しています。

 また、教員に関しても、生徒と同じルールが適用されることになっています。そして、保護者会などに関してもすべてリモートにすることが義務付けられています。

 この検査の増加に加え、「換気の必要性」をよりよく測定するために、できるだけ多くのCO2センサーを配備するよう学校に呼びかけています。

 政府によると、現在までのところ、この小さな箱を備えているのは小学校の「約20%」に過ぎないそうで、これは中学校よりも多いのですが、まだ全然足りない状態です。

 注意点として、保健当局は、ウィルスが浮遊できる空気を新しくするために、1日に少なくとも10分から15分、定期的に窓やドアを開けることを勧めています。

 また、教育現場でさらに心配されるのは、感染や陽性者との接触があった場合、他の人と同じように厳しい隔離ルールが適用される教員の欠勤です。科学委員会の試算によると、学年の始めに30%の教員が陽性であるか、感染した子供の世話をしている可能性があると想定しています。

 ジャン・ミッシェル・ブランカー教育相は、1月が「緊迫状態の月」になることを認め、「ワクチン接種を受けた大人(教員)は、子供と同じ、反復テストを適用する」ことを発表しました。

 また、大量欠勤のリスクを減らすための対策として、病気以外の欠勤原因、例えば「現任訓練」を停止することを挙げています。この施策は、「代理教員」の募集と連動して行われます。

 小学校では、これにより「9%から、学校によっては12〜15%」補充能力が高まると目論んでいます。

 また、学校でのワクチン接種キャンペーンの促進も視野に入れられており、昨年7月、10代に向けたワクチン接種キャンペーンが開始された時に、中学校では校内にワクチン接種センターが設置されたように、5歳からの全児童にワクチンが開放された今、「各学校と接種センターがペアになり、ワクチン接種を拡大していく予定になっています。

 小学校の子どもたちには、「学校長や教師に予防接種の手順を説明するメッセージが送られる」ことになっていますが、「ワクチン接種の予約や接種の際の付き添いは家族が行うもので、すべてのケースで「親の承認」が必要になると念を押しています。 

 このように、かなり厳しい制限下での学校再開も、やはり、蓋をあけてみると、最初の混乱は、教員の欠勤で、基本的に「教員不在のために生徒を他のクラスに割り振ることはできない」としているために、予め、連絡がないまま学校に行ってみると、子供のクラスの先生がおらずに、慌てて両親のどちらかがリモートワークに切り替えて、子供を家に連れ帰らなければならないようなケースが出たり、逆に教員の突然の欠勤に慣れている親にとっては、いつもと違って、代理教員が割り振られて、助かった・・などと様々な声が上がっています。

 中学生以上に関しては、小学生と違って、生徒たちにも、かなりワクチン接種が浸透しているため、同様の対策が取られているものの、小学生ほどには、緊迫した状況ではありません。

 いずれにせよ、まだまだ始まったばかりの学校から、さらに大きな波がおこるかどうかは、これから数週間後に結果が表れてくると思われます。

 もはや、周囲にも感染者は珍しくなくなっている現在のフランスの状況から見ると、個人的には、オミクロン株は、どうやら潜伏期間が人によってはかなり長く、感染してからも、すぐに検査を受けても陽性とはならないところがややこしいところで、この感染してから、陽性反応が出るまでの間にさらに1人が10人は感染させるという勢いで感染を広げてしまうのに、その隙間の期間に隔離できないために、一体、いつ、どこで感染したのかもわかりにくいことも始末の悪いことです。

 しかし、年末年始には、本当に、どこから湧いてくるのかと思うほど、人で溢れていた場所がたくさんあったのに、いざ、新年が始まってみると、今度は、いたるところに感染、感染者との接触のための隔離による欠勤者が増え、現在のところ教員の10%程度が欠勤、フランス国鉄の長距離便などは、10%が欠便、いつもは渋滞しているところが、車もすいすい動いていたりして、明らかに人の動きが減少していることに、どうにもしっくりこないものを感じるのです。


学校再開のための感染対策


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2022年1月3日月曜日

感染者隔離期間の緩和 フランスの新しい隔離のルール

   


 フランスでの新型コロナウィルス感染が、爆発的に増加していますが、現段階でのオミクロン株に関する感染速度と感染力の強さは認められるものの、症状が悪化する割合が低いという比較的楽観的なデータに支えられ、政府は規則の一部を緩和することを選択しています。

 というのも、フランスの感染があまりにも急激に拡大したために、11月中旬から12月中旬にかけて、隔離を余儀なくされた人々による労働停止の数は、5763件から42541件へと7倍以上になり、12月後半から年末にかけてのさらなる感染拡大は、ちょうどノエルのバカンスに重なったために、実際の職場での隔離のための病欠は、大々的には表面化していませんでしたが、これまでどおりの隔離基準を継続した場合は、事実上のロックダウン状態に近い状況になることは必須。

 社会機能を停止させないために、社会生活継続と感染のリスクのバランスを計り直す必要がありました。

 これまで感染した場合には、変異型に関係なく、10日間の隔離が求められていましたが、ワクチン接種済み(2回)の場合には、7日間の隔離に短縮されました。また、5日目にPCR検査を受けて陰性であれば、その時点で隔離生活からは解除されます。ワクチン未接種者に関しては、10日間の隔離、7日目に検査の結果が陰性であれば、隔離は解除されます。

 また、感染者に接触した者については、ワクチン接種済みの者に対しては、「定期的に(即日、2日後、4日後)検査を受けることを条件に(検査結果が陰性の場合)隔離は不要となりますが、ワクチン未接種者については、7日間の隔離が求められます。

 そして、医療従事者については、さらに具体的な隔離のルールが検討されており、公衆衛生高等評議会は、医療従事者が 感染していても、症状がないか少ない場合は、一定の条件下で、仕事を続ける可能性を検証しています。

 この件に関して、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、「医療従事者はもともとワクチンを接種しているうえ、健康に対する緊張感が非常に高く、職員や接触者の陽性例が多いことから、医療の継続を可能にすることが問題である 」「リスクは常にありますが、陽性でも無症状の医療従事者を働かせるのと、ベッドを閉鎖するのとでは、リスクが最小になるように戦略を立てています。」と語っています。

 医療従事者がたとえ感染していても、条件付きで働くことは、病院の人員不足という根本的な問題を解決するものではなく、「急性期を乗り切るための一過性のプラスター」だとしています。つまり、現在のフランスは、感染している医療従事者に働いてもらわなければならないほど、病院の医療体制が逼迫しつつあるということなのです。

 現在のフランスの病院でのコロナウィルスによる集中治療室の病床占拠率は70%にも達しており、いくら、オミクロン株が重症化する率が低いとはいえ、毎日のように20万人近い感染者が出ている状態では、病床が逼迫していくのは、必須であり、医療従事者の隔離のために病床をさらに閉鎖した場合のリスクは、他の職業に比べてあまりにリスクが大きいという判断の上のことだと思います。

 まさに隔離云々以前に、感染しても働けというのは、人道的にどうかという声も上がりそうですが、すでに、感染状況もアクセルがかかり続ける状態で、ノエル、年末年始を過ごした後に、学校も仕事も全て再開される1月は、さらなる感染の増加は不可避の状況で、社会生活と感染拡大のリスクの間のバランスを考えて、苦渋の選択をしたと言わざるを得ません。

 感染の爆発的な増加中に隔離のルールを緩和しなければならないのは、本来ならば真逆の対応で、大変リスキーなことに違いありませんが、スイス、スペイン、アルゼンチン、ポルトガル、イギリスなどの他の国々がすでに同様の理由から同様の措置を採用し始めているため、これらの国々よりも感染の増加は激しいフランスもこれまでの隔離措置を継続していくのは、困難であると判断したと見られています。

 ワクチン接種以外は、検査、隔離を原則としてきたルールがこの感染爆発の現状でのまさかの隔離期間を緩和させなければならない厳しい状況に、フランスは、まさに綱渡りの綱がさらに脆くなった状況に追い込まれていると言わざるを得ません。

 新年早々、非常に厳しい状況は、もう昨年末からわかってはいたこととはいえ、あまり幸先のよいスタートではありません。1月半ばには、ヘルスパスがワクチンパスになりますが、これを機に、なんとかこの間を持ち堪えている間に、ワクチン接種が進んでくれることを、もう、祈るような気持ちです。

フランスの隔離緩和


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2022年1月2日日曜日

花火は禁止でも車は燃えるフランスの年越し

 


 もはや、大晦日の行事ではないかと思われる節のある車の放火が、今年は若干、減少し、ジェラルド・ダルマナン内務大臣は、「大晦日の夜は、秩序のおかげで暴力が減少した」「警察力のおかげで暴力が減少した」と発表しています。

 しかし、減少したとはいえ、大晦日の夜に燃やされた車両は874台、441人が逮捕されています。2021年の年越しは感染対策のために、シャンゼリゼやエッフェル塔をはじめとする大掛かりな花火は禁止されていましたが、相変わらず、車は燃やされていたようです。

 昨年の大晦日は、夜間外出禁止だったために、比較の対象にならないとのことで、2019年末と比較していますが、(2019年末には、1,316台の車が燃やされています)昨年とて、861台の車が燃やされているので、車を燃やす輩には、夜間外出禁止などは、あまり関係ないものと思われます。

 実際に、私は、車が燃えている現場に出くわしたことはありませんが、燃やされた車の残骸を見かけたことは何回かあります。これは、日本では見たことがなかった光景の一つです。

 大晦日ではなくとも、フランスでは、デモなどで、人が暴れ出すところでは、ゴミ箱を燃やしたり、車を燃やしたりすることは、珍しいことではありません。酷い時には、フランス銀行に火がつけられたこともありました。

 血の気が多いというか、興奮すると手がつけられなくなる感の強い人が多いのも、日本とはかなり違うところです。

 今年の大晦日は、夜間外出禁止にはならなかったものの、人の集まりや公道でのアルコールなどの飲酒の禁止、マスク着用などの義務や制限もあり、10万人の警察官が動員されるという発表がありましたが、実際には、パリ市内の9,000人を含む約95,000人の警察官と憲兵隊、32,000人の消防士と市民警備隊が動員されていたようです。

 今年は例年の大晦日の警戒に加えて、人の集まりなどの衛生環境統制のために、通常より多くの警察官が動員されましたが、結果的には、人の集まりは、シャンゼリゼやエッフェル塔の近辺、モンマルトルなどなど、あらゆる場所で、目を覆いたくなるほどの人の海で、昨日で4日連続で1日の新規感染者数が20万人超えというのに、人が外に出たい!大勢で集まって騒ぎたい!発散したい!という気持ちは、フランス人を抑えつけることには繋がらないようです。

 それ以上に長引くパンデミックで、新年を迎えるお祝いの機会にこれまでの鬱憤をはらしたい気持ちが強いのだと思います。

 しかし、ヘルスパスが起用されて以来、ほぼフランス人は、多くの人がバカンスにもでかけ、ほぼ日常を取り戻した生活をしており、そこまで鬱憤がたまっているとも思えないのですが、やはり、それでも、いつまでも感染のやまないウィルスに圧迫感が募っているのは確かです。

 874台の車が燃やされつつも、「秩序のおかげで車の放火などの暴力行為が減少した」というのも、悲しい話で、これは、単に動員された警察官の数と、今や100万人以上の人が感染のために隔離中のために外に出られないということも、若干、大晦日の暴挙が減少している理由ではないかと思うのです。

 一方、ストラスブールの7つの自治体では、大晦日に16歳以下の夜間外出禁止令が県令で発令されていましたが、これは、アルザスの首都でしばしば見られるような、年越しパーティーの暴走を防ぐために、合意の上で採用された措置の一つでした。

 アルザスの首都では、大晦日は伝統的に爆竹や花火、時には迫撃砲で祝います。新年を迎えるにあたり、ゴミ箱、バスシェルター、車などが狙われ、放火され、法と秩序を守る警察でさえも暴力のターゲットになってしまうのです。

 このような16歳以下の夜間外出制限にもかかわらず、今年の大晦日もこの地域では、約30人が逮捕され、警察との衝突が起こり、花火を投げつけられた警察官が負傷しています。

 感染急増への対策として、屋外でもマスク着用を義務化したパリでは、「マスクをしていない」として779人が罰金を科され、そのうち少なくとも600人がシャンゼリゼで罰せられたと、警察筋は述べていますが、本来ならば、そんな人数なはずはなく、途中からは、もう警察でさえも手がつけられないほどの状態であったのが、正直なところだと思われます。

 また、ヨンヌ県(ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地域)では、禁止されているレイブパーティーが行われ、サン・フロランタンの工業用地に1500人を集めていたと、県と国家憲兵隊が発表しています。

 まことに警察の警戒・統制がないとどうにもならないフランスは、コロナ禍中でも全く変わらないのです。


車の放火


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