フランスは、7月の時点でヘルスパスのシステムを起用して以来、ヘルスパスを持っている人に対しては、ほぼ規制のない日常が送れるような感染対策を続けてきました。
パンデミックが始まった当初の最初の厳格な、ほぼ、外に出られないようなロックダウンが約2ヶ月間続き、それからは、いくつかの感染の波を繰り返し、長い間、飲食店なども閉鎖され、それに夜間外出制限や長距離の移動制限などを繰り返してきました。
2021年が始まった当初は、今年はとにかく、「ワクチン・ワクチン・ワクチン!」と、ワクチン接種を拡大していくことを発表していました。ワクチン接種が始まった当初は、2回のワクチン接種をすれば、ある程度は、ウィルスから守られると思われていたからです。
そして、夏のバカンスに入るにあたって、思うようにワクチン接種が拡大していかないことから、ヘルスパスのシステムを構築し、ヘルスパスがなければ、レストランやカフェ、文化施設や娯楽施設、長距離公共交通機関などにもアクセスできないようになり、これでは、事実上のワクチン接種の義務化ではないか?と思ったものでした。
しかし、あまりに露骨なワクチン接種の強要はできずに、ヘルスパスをPCR検査で乗り切る逃げ道も残してあったために、結果的には、一定数のワクチン未接種者は残っていました。
夏から秋にかけては、ヘルスパスにより、ワクチン接種がかなり拡大したこともあり、周囲のヨーロッパ諸国に比べて、かなり感染を抑えられてきたフランスですが、ワクチン接種の効果が思っていたよりも長続きしなかったこともあって、秋から冬に向かう頃には、徐々に感染者が増加していきました。
そして、11月後半から12月にかけては、その感染増加に拍車がかかり、ノエルを迎えるという数日前からは、新規感染者数がほぼ毎日、1万人程度増加していくという恐ろしい状況に陥り、皮肉なことにノエル当日には、新規感染者数がキリ良く?10万人を突破してしまいました。
あくまでも、ウィルスと共存していくために、どんな施設も閉鎖することなく、ヘルスパスで入場制限することで、フランス人は、ほぼ日常と変わらない生活を送り、何の危機感も感じられないようになっていました。
しかし、あまりに感染速度の速い、オミクロン株の登場がちょうど、多くの人のワクチン接種の有効性が薄れていく時期に重なり、再び、感染爆発を起こしています。
毎日、10万人近くの感染者が出るということは、これだけ多勢の人々プラス感染者の周囲の濃厚接触者が隔離生活を送らなければならないわけで、ロックダウンを行わずとも、社会機能が不全になっていくのは、不可避なことで、あらゆる場面で、支障が起こり始めています。
先日もオペラ座の公演が中止になったというニュースを見たので、「感染対策で劇場が再び閉鎖になるの?」と思いきや、演者に感染者が続出して、公演が成立しないためのキャンセルで、「ああ〜そっち?」とちょっとびっくりしましたが、これだけ、感染者が多ければ、そういう場面は、あらゆるところで起こるわけで、たとえ、ロックダウンせずとも、ロックダウン状態に置かれる人が増えることで、部分的なロックダウンに近づいていくようなことになるという局面に陥り始めたのは、皮肉なことです。
これは、フランスだけのことではありませんが、24日から26日にかけて、全世界で6,000便以上のフライトが欠航になり、18,000便以上のフライトに遅延が出ています。これもまた、乗務員の感染によるスタッフ不足により、欠航や遅延を余儀なくされていることによるものです。
猛烈な勢いで感染が拡大していく中、感染者を隔離しないわけには、いかないのですが、これは、なにも、オペラ座や航空業界だけの問題ではなく、あらゆる場面、病院や警察、消防、薬局などの日常生活に必要最低限のライフラインに繋がる場所でも起こってきている深刻な問題になりつつあります。
オミクロン株はワクチンを3回接種していれば、比較的、重症化しないという説もありますが、たとえ、重症化しなくても、感染することには変わりなく、結果として、ワクチン未接種者が医療体制を逼迫する状況に陥ってしまうのです。
一体、いつになったら、終息することやら、ますます出口が見えなくなってきてしまいました。現在、フランスでは、3回目のブースター接種を加速度的に進めていますが、結局のところ、ワクチン接種を一度も行わない人が減らない限り、同じことが繰り返されます。
そのため、一部では、ワクチン未接種者に対し、「いつまでも日常生活が戻らないのは、これらの人々のせいだ!」というアンチワクチン論者に対する非難の声も上がり始めています。
フランスは、第5波がおさまらないうちに、その波がさらに大きくなり、第6波とも呼びにくいことから、今回の感染拡大を「オミクロン波」などと呼ぶ人も出てきました。
週明けには国防会議が開かれ、新しい対策が発表されることになっていますが、一体、どうなることか、フランスは、まことに憂鬱な年末を迎えています。
現在、フランスは全人口の1%が隔離中と言われています。
新規感染者数10万人突破 隔離による社会機能不全
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