2021年12月21日火曜日

フランスでのオミクロン株の拡大とその危険性 パリ近郊・首都圏では、すでにオミクロンの割合が高い

  


 現在のフランスでの新型コロナウィルスの感染は、デルタ株が主流とされていますが、オミクロン株もその間を縫って、着々と侵食しつつあります。現在のフランスでのオミクロン株は、感染者全体の7〜12%と言われていますが、セーヌ・エ・マルヌ、サルト、パリ(la Seine-et-Marne, la Sarthe, Paris)などの首都圏では、より高い割合になっており、感染者の20%がオミクロン株による感染に移行していると言われています。

 コビットトラッカーCovidTracker(感染状況確認サイト)とViteMaDose(ワクチン予約サイト)のウェブサイトの創設者であるギヨーム・ロジエ(Guillaume Rozier)によると、オミクロンは国内で6.8%を超え、イル・ド・フランスでは20%、パリでは27%にもなる可能性があるといいます。

 他の専門家はさらに悲観的で、CNRS の研究者である Florence Débarre 氏も オミクロン変異種がこの週末にイル・ド・フランスの症例の 50% を通過した可能性と、変異体の倍加時間が「2 日間程度」であることを示しています。

 現在のフランスでは、感染者に対する変異種のスクリーニングは一部のケースにしか行われておらず、このオミクロン株の数については、非常に不確実なものであり、感染者数がここ1〜2ヶ月で、毎週のように10%以上の速い増加傾向を示していることから、感染速度の速いオミクロン株の数は、確認されている数字よりもずっと高い可能性があるのです。

 イギリスの最新の研究によると、オミクロンに対するワクチン防御率は2回の接種で30%(ブースター接種では70%)に低下することがわかっています。重症化した場合の防御率は70%と依然高いながらも、オミクロンの危険性は、患者数が圧倒的に大幅に増え、ただでさえ医療体制が危機的状態に陥っている時に、危険にさらされている人たちに打撃を与えることです。

 ファイザー社製ワクチンの共同開発者であるバイオテック社のCEOは、12月20日(月)のルモンド紙でオミクロン変異種は、メッセンジャーRNAワクチンの有効性を脅かす存在であることを指摘しています。

 また、毎日新聞のインタビューを受けたウグル・サヒンによると、「3回のワクチン接種者も、この変異種でウィルス感染を広げる傾向があり、オミクロンに対する効果は時間とともに失われる可能性が高いが、そのスピードはまだ測定できていない」と語っています。

 しかし、また同時に「オミクロン特別適応ワクチン」の開発もすでに発表されており、規制当局の承認が得られれば、3月には最初のオミクロン適応ワクチンを提供できるはずであるとしています。

 また、12月中旬、南アフリカとイギリスの民間・公共団体の研究からは、「オミクロン株が我々の免疫システムを回避して、以前にコロナウィルスに感染した人に再感染する能力がある」ことも発表されています。

 このように、オミクロン株については、様々な研究結果が発表されていますが、世界保健機関(WHO)も12月14日(火)、オミクロンの変異型が「他のどの変異型でも見たことのない速度で」広がっていると警告し、G7諸国の保健相は、「今日の世界の公衆衛生に対する最大の脅威」であるとして各国に協力を呼びかけています。

 いずれにしても、クリスマス、年末年始を迎えるタイミングで、昨年とは違って、ワクチン接種が行われている状態にもかかわらず、すでに、爆発的な感染拡大を見せているオミクロン株は、十分に脅威的な存在であるに違いありません。


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2021年12月20日月曜日

2022年1月からのワクチンパスの内容

  


 12月17日にカステックス首相が発表した来年早々にはヘルスパスがワクチンパスになるという話は、実際の施行は、おそらく1ヶ月以上先になるためなのか、私が思ったよりは騒ぎにはなっていません。むしろ、7月の時点でのヘルスパスの発表の方が衝撃的で皆が慌てたと言ってもいいかもしれません。

 そもそもワクチン接種をすでに受けている77.8%の人にとっては、なんら変更のないものであり、これにより影響を受けるのは、残りの22%のワクチン未接種者にのみ限られており、すでにヘルスパスによる生活が浸透しているフランス国民にとっては、大きな変更はありません。

 しかし、これは、日に日に深刻になっている現在の感染拡大による病院等の医療施設の圧迫を食い止めるためのヘルスパスだけでは動じないアンチワクチン論者をワクチン接種を加速させるための施策であることは言うまでもありません。

 これは、これまでのヘルスパスをワクチンパスに変更し、公共の場所への入場はワクチン接種者だけに限定し、たとえPCR検査があってもワクチン未接種者は入場させないということです。

 フランス政府は、「一部の人々(といっても約600万人)のワクチン接種拒否が国全体の命を危険にさらすことは許されない」と、ヘルスパスからワクチンパスへの移行を説明しています。

 特に心配されているのは、50歳から74歳の130万人、75歳以上の高齢者56万5千人が未接種であることで、意外にも高齢者にもワクチン未接種者が多いことです。

 基本的には、ヘルスパスと同様の形態をとり、QRコード形式でデジタルまたは、紙媒体で提供されるとしているので、これまでのヘルスパスの中のワクチン接種の記録をそのまま使用する形になります。

 また、ワクチンパスが必要とされる場所は概ねヘルスパスと同様で、カフェ・レストラン(テラス席を含む)、文化施設、娯楽施設、スポーツジム、病院、高齢者施設、イベント会場などで、ヘルスパス同様、ショッピングセンターは影響を受けることはありません。

 また、飛行機、列車、長距離バスなどの長旅には、必要とされますが、メトロ、RER、TERなど日常的な移動には必要ない。ウィンタースポーツリゾートでは、レストランやスキーリフトでワクチンパスが必要となります。

 また、病院の一般外来に関しても、ワクチンパスが必要になりますが、救急(緊急)外来の場合には、ワクチンパスのチェックはありません。一般外来のワクチンパスについては、緊急ではないとはいえ、物議を醸しそうな問題ではあります。
 
 企業へのアクセスについては、今後、労働大臣がソーシャルパートナーとの会合で直接、話し合いがもたれることになっています。

 しかし、今後、さらに問題をややこしくするのは、ワクチンの有効期限切れの問題で、これまでは、ワクチン接種率を2回のワクチン接種で換算していましたが、(現在は2回目のワクチン接種から7ヶ月後以内に3回目のワクチン接種をしないとヘルスパス(ワクチンパス)が1月15日以降は無効になることになっており、65歳以上の人に関しては、すでに12月15日から、追加接種をしていなければ、(2回のワクチン接種から7ヶ月以降経過している場合)無効になっています。

 ですから、今後、初めてワクチン接種をする人に関しては、2回のワクチン接種で、すでに2回のワクチン接種をしている人に対しては7ヶ月以内に3回目のワクチン接種をした状態がワクチンパスとして通用することになるのです。

 医療従事者に関しては、すでにワクチン接種が義務化されていますが、彼らは、2022年1月30日までに3回目のワクチン(ブースター接種)がさらに義務付けられます。オリヴィエ・ヴェラン保健相は、パリ近郊でオミクロン変異種の病院クラスターが複数検出されたことをこの理由として説明しています。

 また、医療従事者だけでなく、救急隊員(消防士)の接種義務を強化する予定であることも併せて発表しています。
 
 このワクチンパスへの移行について、「ワクチン接種強制の偽装ではないか?」と疑問の声も上がっていましたが、逆に政府は、はっきりと「これは、ワクチン接種を強制に近づけるものである」とはっきりと認めています。
 
 彼の態度は毅然としており、「我々は、いつまでもワクチン接種を受けない人のために、多くの国民を危険に晒し続け、コロナウィルスの被害を受け続けるわけにはいかない。ワクチン接種を受けていない人がバーやレストラン、一般の人々を迎える場所に行くのを防ぐことは、路上で捕まったら135ユーロの罰金を課すよりも効果的だ!我々は、罰を与えるためにやっているのではない!」と語っています。

 しかし、ワクチン接種が始まって以来、もはや1年以上経っても、未だワクチンを受けない人々の態度は強靭で、「ワクチンパス・・そんなの関係ない!」と息巻いている人が多いのも事実ですが、実際にワクチンを打たないとレストランにも行けない、TGVにも乗れない・・かなり厳しい措置、これにより、ワクチン未接種者は、フランス人にとって何よりも大切なバカンスも満足に過ごせなくなる、もはや兵糧攻めのような立場においやられることと同じことになります。

 このワクチンパスがどの程度の効果を見せるのかは期待したいところです。

ワクチンパス フランス


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2021年12月19日日曜日

イギリスとフランスの感染対策経緯の違い 順送りにヨーロッパを襲い続けるコロナ波

 


 パンデミックが始まって以来、ヨーロッパは、まるで順送りのように、感染の波の悪化と低下を繰り返しています。2020年の年末から2021年にかけては、イギリスでデルタ株が急増し始めて、急にイギリスとの国境を閉鎖し、クリスマスには、イギリスとの国境で立ち往生する多くのトラックの様子などが報道されていました。

 それから、イギリスは、どこの国よりも早く、ワクチン接種を開始し、猛スピードでワクチン接種を拡大していきました。

 今年の7月の段階では、イギリスはすでに国民の7割程度が2度のワクチン接種を済ませており、1日の感染者数は2千人台にまで落ち着いていました。

 この段階でフランスのワクチン接種率は、6割にも満たない状況で、バカンスを前にフランスは、ヘルスパスを起用し、ワクチン接種の拡大を促すとともに、ヘルスパスがないと身動きがとれなくなるような制限や医療従事者のワクチン接種義務化などを導入しています。

 イギリスは、同時期には、ワクチン対策が十分であることに賭け、フランスとは真逆の対応に向けて舵を切り、すべての制限を撤廃する方向に方針転換をしています。

 この段階では、フランスは、状況的に(感染状況・ワクチン接種状況)から、夏のバカンスに向けて、とてもイギリスのような方向に進むことができなかったのも事実です。

 しかし、冬が近づくにつれ、両国とも感染状況は悪化し始めましたが(デルタ株)、特に新しいオミクロン変異種が出現してからのイギリスの感染拡大は、ものすごい勢いで進み、1日の新規感染者数は毎日のように新記録を更新し、1日9万人を突破しています。

 現在のイギリスのオミクロン株の感染拡大は、デルタ株に関連した極めて緊迫した状況の上に発生しているのです。これは、今後、フランスでの感染がオミクロン株が主流になった場合におなじことが言えます。

 イギリス政府はこの事態を受け、パンデミック開始以来2回目となる「重大インシデント」を宣言したことを発表しています。現在は、屋内の公共の場や公共交通機関を利用する際、イベント参加等には、マスク着用が義務付けられ、可能な限りリモートワークにシフトすること、また、ナイトクラブなどに行く際は、NHS COVID PASS(フランスのヘルスパス)の提示などが呼びかけられています。(フランスではナイトクラブは現在、営業停止です)

 そして、ワクチン接種に関しては、2回目のワクチン接種から3ヶ月後にブースター接種が可能になっています。(フランスでは4ヶ月後から可能)

 このワクチン接種の間隔については、今後もしばらくは、感染拡大の重要な鍵となるかもしれません。

 結果的に、どちらの国も似たり寄ったりの感染対策のための制限を行なっているのですが、今年の夏の時点からヘルスパスを起用しているフランスは、以来、一貫して、若干、制限はキツめです。一時、制限を少し緩めたのは、小学校でのマスク義務化を撤廃したことでしょうか?

 しかし、このほんの少しの隙を縫って、ウィルスはワクチン接種をしていない子供の間から感染拡大し始めました。

 これまでの感染拡大の波を見てみると、イギリスは常に先頭を切り、フランスは、イギリスの2〜3ヶ月後にイギリス同様の感染の波を迎えており、ヘルスパスをもってしても、同じ道筋を辿る可能性は高いと思わざるを得ません。

 にもかかわらず、ノエル前にフランス政府が発表した感染対策は、特に厳しいものではなく、大勢での集まりは避けるように、年末のカウントダウンの花火なども中止という程度のもので、また、イギリスも感染対策のためのさらなる制限は、クリスマス後ということになっているようで、最も人々が集う機会を避けて制限を行うことに、両国民にとってのノエル・クリスマスの位置付けを垣間見ることができます。

 一方、似通った感染状況のオランダは、やはり、オミクロン株による急激な感染拡大から、19日から、日常必需品以外の店舗、学校、バー、レストラン、その他の公共施設をすべて閉鎖するという厳格なロックダウンに踏み切ることを発表しています。

 これだけの厳格なロックダウンは、第一波の際のロックダウン以来、ヨーロッパでは久しぶりのことです。

 先週火曜日、オランダ政府はすでに、午後5時から午前5時までのバー、レストラン、ほとんどの店の閉鎖を1月14日まで延長することを発表したばかりでした。

 人口に対する感染者数やワクチン接種率等は、ほぼフランスと変わらない状況のオランダが、このような厳しいロックダウンを行うことで、この間の感染は、おそらくフランスやイギリスとは桁違いに減少するのではないかと思います。

 どちらにしても、第一波から甚大な被害を生み続けているヨーロッパは、やはり、制限なしには、感染を抑えることは不可能で、この間、一時、若干(ヨーロッパと比較すればの話)感染が拡大したこともあったものの、結局のところ、ロックダウンなどは行わずに、オリンピックまで開催したというのに、結局、感染を抑えている日本は、別世界と言わざるを得ません。

 日頃からの衛生観念は、天と地ほどもの違いがあり、現在、ヨーロッパの国々が感染対策のために衛生に気を配った状態でさえも、コロナ前の日本の状況に及ぶものではありません。

 規則を守るとか、自制する、自粛するということも、結局のところ、制限されなければ、罰金が課せられなければ、遵守されることもないのです。(なかには、ちゃんとした人もいますが、大多数は違う)

 オミクロン株対策のための日本の水際対策により、日本人でさえも容易に日本に帰国できない状態になり、「日本は厳しい・・」と悲しく思うこともありますが、このような厳しい対策の上に現在の日本の状況が保たれていることを思うと、これも致し方ないかな・・と現在のヨーロッパの状況を目の当たりにして思い始めているのです。


オミクロン株対応


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2021年12月18日土曜日

ヘルスパスがワクチンパスになる! 

  


 現在、1日の新規感染者数が平均5万人のフランスは、ノエルのバカンスに入る前に国防会議を開き、カステックス首相がノエル・年末年始に向けての新しい制限を発表しました。

 ワクチン接種の効果から、これだけ感染者が多いにもかかわらず、重症患者は、昨年よりも少ない状況とはいえ、医療体制も限界に近づいており、地域によっては(マルセイユやアルプ・コートダジュールなど)、すでに患者の移送が始まっています。

 この状況の中でノエル・年末年始のバカンスを迎えるにあたって、「大勢での集まりは避ける=大きなパーティーや集まりは避ける」「公道での無許可の集会や飲酒を禁止し、自治体には、公道での集会、特に花火やコンサートの開催を控えるよう呼びかける」ことを発表しました。



 「皆の責任に訴える」という漠然とした発表に「皆の責任は、皆の無責任にはならないだろうか?」と年末年始への対策は、大いに不安です。「人数は少なければ少ないほどリスクは少なくなる」という言い方でしたが、具体的に集まりは、何名程度とか、そんな目安の提示があった方がよかったのではないかと思います。

 まあ、今さら、分かりきっていることではありますが、そうはいかないのがフランスです。

 年末のシャンゼリゼ(だけではないが・・)などでのカウントダウンなども、相当な人混みになるはずなのに、やるのかやらないのか? ヘルスパスのチェックがあるのかどうか、そんなことも発表されてはいません。

 現在のフランスは、デルタ株による第5波のピークを迎えていますが、もうすでに、ものすごい感染力を持ったオミクロン株による侵食が始まっています。イギリスでは、このオミクロン株による感染拡大で、1日の新規感染者数が9万3千人を超えたというニュースからも、このオミクロン株の波が1月にはフランスを襲うのは、もはや避けきれない状態です。

 フランス政府は結局は、国民がノエルを迎えることに対しては、相変わらず、甘々で、そのかわりに、その後に急速に制限を強化する方針が伺えます。

 何と言っても、最も衝撃的であったのは、1月早々にも、これまでの「ヘルスパス」が「ワクチンパス」になるという発表でした。すでに逼迫している病院の状況で、重症化している患者のほとんどがワクチン未接種者であることから、これは、ワクチン未接種者に対するさらなる追い込みであると考えられます。

 現在、ヘルスパスとして、PCR検査の陰性証明書も通用しているものが、来年からは、ワクチン接種者以外は、ヘルスパスで入場できていた場所(レストラン・カフェ、コンサート、映画館、長距離移動の交通機関、映画館、美術館、娯楽施設、スポーツ施設などなど)にワクチン接種者以外は立ち入れなくなります。

 フランスでは、未だワクチン接種を受けていない人が600万人以上残っています。(ワクチン接種を受ける資格のある年齢の人々)

 そして、また、これまで、2回目のワクチン接種から5ヶ月後(これも最近短縮したばかり)であったブースター接種が4ヶ月後に繰り上げられます。

 今年の7月にヘルスパスの発表を聞いた時は、「これではまるで、ワクチン接種の義務化だ・・」と思ったのを覚えていますが、結果的に、ワクチン接種は、77%程度でほとんど上げ止まりの状態で、ガンとしてワクチン接種を避け続けている層が存在しつづけています。

 今回のヘルスパスがワクチンパスになることで、どれほどのワクチン接種率があがるのかは、わかりませんが、この政策に期待したいところです。ヘルスパスがワクチンパスになっても、ワクチン義務化とは言わないのです。

 一方、先日、偽ヘルスパスを入院時に提示したことで、死亡した患者の事件で、偽ヘルスパスに対する警戒が強くなりましたが、それ以前までには、フランスでは、3万6千枚の偽ヘルスパスが流通していると言われていたのに、その後の調査から、実際は、11万以上もの偽ヘルスパスが流通していることがわかり、愕然としています。

 今回のヘルスパスからワクチンパスになることによって、ますます偽ワクチンパスが増えるのではないかと今から心配しています。


フランス ワクチンパス


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2021年12月17日金曜日

ワクチン接種の急な予約変更 パリのワクチンセンター

 


 フランスの感染状況が日々、悪化する中、政府は、ひたすらワクチン接種、ブースター接種を呼びかけ、毎日、ものすごい勢いでワクチン接種を進めています。先日は、1日のワクチン接種が828,705件という記録を更新したと発表されていました。

 私は、先週の初めにブースター接種を済ませたのですが、娘の予約はもう少し後になっていたのが、直前になって、場所が変更され、家から少し離れたパリ市内の大きなワクチンセンターに行くハメになりました。

 「家から近いところに予約したのに〜〜!」と不満気な娘。近所の薬局では、先週末に予約なしにワクチン接種をしていたので、念のため、今週末もやらないのかどうか聞きに行ったところ、「先週は、大量にワクチンが入荷することになったから、特別にやったけど、今のところ、大量に入る予定はないので、当分は予約制で・・」「予約は、今のところ12月中は、いっぱいだけど、あなた、家、近所でしょ・・もし、余ることがあったら、連絡しようか?」と言ってくれました。

 しかし、一応、場所は変更されたとはいえ、予約が取れている娘、いつになるかわからない近所でのワクチン接種を待つのも何なので、指定された家から少し離れたワクチンセンターに行くことにしました。

 それは、パリ15区ポルト・ド・ヴェルサイユにある「パリ・エクスポ」という大きな展示会や見本市をやったりする巨大な会場で、娘が小さい頃に春や夏のコロニー(合宿)の際の集合場所で(パリ近郊の子供たちが全て同じ場所に集められており、ここからバスが出発していました)毎年、バカンスシーズンの度に、娘を送り迎えに行っていた懐かしい場所です。

 数年ぶりに行ったパリ・エクスポは当時よりも数段、きれいに洗練されていて、長い年月が経ったと感慨深い気持ちでした。

 あの頃、来ていたあの場所がこんなにきれいになって、しかし、まさかワクチンセンターになるとは・・先のことはわからないものです。

 


 入り口から中がものすごく広いことはわかっていたので、そのどこでワクチンをやっているのか? 少し不安でしたが、何のことはない、入口には、大きな看板がたっており(そりゃそうだ・・)迷うことなく、すぐにワクチンセンターの中に入りました。

 中に入ると、まず、予約があるかどうかのチェック、ワクチン接種は、30歳以上、30歳以下で区別されていました。30歳以上はモデルナ、30歳以下はファイザーと分けられているのです。  


 おそらく、急激にワクチン接種を進めるために、最初に政府は一番、簡単にできるパリ市内の薬局にワクチンを大量に配り、少し軌道に乗ってきたところで、ワクチンセンターで集約してワクチン接種を行なっていくことにしたのでしょう。(薬局からも悲鳴があがっていましたから・・)

 私は、一歩、タイミングが早かったので、30歳以上ですが、予約していたとおりにファイザーを打ってもらいましたが、今週に入ってからは、ファイザーで予約したのに、モデルナになっていた・・などという人もいて、ワクチン接種を急拡大していくにあたって、交通整理のようなことをし始めたのだと思います。

  


 ワクチンセンターの中で働いているのは、救急隊員(通称ポンピエ)で、少々、ワクチンを打ちに来ている人に対して、待機しているポンピエが多すぎる気もしましたが、大きな会場の中に、いくつものブースができていて、ブースに進む前に問診票に記入し、その後にIDカード、名前、住所、生年月日、ヘルスパスの履歴のチェックの後、ワクチン接種へ進みます。

  


 ワクチン接種は、数分で済み、すぐにQRコード入りのワクチン接種証明書が渡されます。間隔をおいて置かれて並べられた椅子で15分ほど待ち、時間が経過すると、出口で証明書にスタンプが押されて完了です。

  


 ワクチン接種をする側からしたら、一つ一つの大きな場所で、このようにスムーズにどんどんワクチン接種をしていく方が、効率はよいのだろうと思います。

 オミクロン株の影響でフランス以上の急激な感染拡大を見せているイギリスのように(1日の感染者数8万人突破)、これから、ノエル、年末年始を迎えるフランスが年明けに第6波を迎えてしまうかどうかは、このワクチン接種の拡大にかかっています。


パリのワクチンセンター


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2021年12月16日木曜日

12月は犯罪が多いパリ パリのスリの生息地

   


 パリの治安はいつも悪いのですが、12月は特に悪いことを、ついつい忘れがちになります。友人がスリにあったという話を聞いて、そういえば、今は12月だったことを思い起こすほど、12月は特に治安が悪いのです。

 12月は、多くの人がノエルを控えての買い物に出たり、ノエルのイルミネーションで彩られていたり、何となく街全体が浮き足立っている中、スリやひったくり、置き引き、万引きなどの犯罪が一段と増え、届くはずの荷物が盗まれて、なくなってしまったりすることも多いのです。

 多くの人が買い物をする季節ということは、皆がお金がほしい季節でもあり、その手の犯罪のプロには、かき入れどきでもあるのです。

 そういえば、うちの娘も昨年のクリスマスイブにTGVの中でスリの被害に遭いました。いつ取られたのかわかっていれば、取られていないので、誰にとられたのかわからないのですが、TGVに乗った時にはたしかに持っていたお財布が降りるときには、なくなっていたのです。

 モンパルナス駅で一文なしになった娘が、落胆して、「これではメトロにものれない・・」と半鳴き声で電話をかけてきた、とんでもないクリスマスイブでした。

 そんな時は、警察に駆け込んだとしても、それは、被害届を作ってもらうだけのことで、そのことによって、盗られたお財布やバッグが戻ってくるわけではありません。

 一度だけ、友人がお財布を盗られた時に、後になって警察から連絡があり、お財布が戻ってきたという奇跡的な話がありましたが、それは、例外中の例外の話で、たまたまスリをはたらいた者が現金だけ抜き取って、お財布は捨て去ったために、運良くそのお財布を拾った人が警察に届けてくれたのであって、スリが捕まったわけではありません。

 お財布を盗られた娘は中には大した現金は入っていませんでしたが、銀行のカードの差し止めやIDカード、健康保険のカードなどの再発行手続きで年末年始は奔走することになったのでした。

 見るからに、怪しいジプシーの子供たちのようなグループや、数人でアンケートを装って近づいてきたり、親しげに話しかけてきたり、わざと何かをこぼしたり、落としたりして、注意を逸らして、その間に仲間がスリを働いたりと、わりとスタンダードなスリやひったくりもたくさんありますが、最近、増えたのは、一見するとそれとは、とても思えない、かなり身なりのよい、一見、ビジネスマン風の装いで、ごくごく普通に生活しているような風を装っているスリです。

 私の知人がレストランで食事をしていた際に自分の座っていた椅子に、自分のお尻と椅子のせもたれとに挟むかたちでバッグをおいていたところ、いつのまにか、バッグをとられており、その後、状況を思い返してみると、どう考えても、トレンチコートを着たビジネスマン風の男しか、思い当たらず、周囲の人の証言からも、おそらくあの男が犯人であろうということになったのですが、それは、後になってから思い返してみれば・・という話で、気付いた時には、その男は消え去っていたのでした。

 また、スリというと、電車やバスの中が狙われやすいのは、もちろんのことですが、スーパーマーケットやデパート、マルシェなどでの買い物中も危険です。買い物中は、買い物に気を取られがちで、ついつい気が逸れていることも多いので、そこを狙われるのです。

 特に日本人は、観光客はもちろんのこと、平和で治安のよい国で生まれ育っているためにスキも多く、現金をたくさん持っていると見られていて、ターゲットにされることも多く、一時は、日本食料品店がターゲットになっていた時期もあり、日本食料品に入ると、「店内でのスリが多発していますので、お気をつけください」などという張り紙がどこのお店にも貼られていました。

 その他、最近は、皆が携帯を持っているようになったので、電車やバスの中で携帯を出すと盗られる!などということは減りましたが、それでも、新しいモデルのiPhoneなどを持っていて、特に車内のドア近くに立って携帯を見ていたりすると、ドアが閉まる直前にひったくられるなどという被害にあった同僚がいました。

 「買ってまだ数日の新品だったのに・・」と嘆いていた彼女は、必死で同僚に「ドアの近くに立って、携帯を持っていてはいけない!」と言い回っていました。

 また、車に乗っていても、決して安心はできません。車の運転中、信号で車を停車した際に、突然、男が押し入ってきて、座席においていたバッグを奪い取られた知人もいました。これは、パリ16区で起こった事なので、特に治安が悪いところではありませんが、むしろ、お金持ち目当ての計画的な犯行とも考えられます。

 車に乗る時は、車のドアはロックしておかなければなりません。なんなら、バッグは座席の上に乗せておいてはいけません。

 ブランド物のバッグを持って街中を歩いていて、後ろからバイクに乗った男にバッグをひったくられた人もいました。

 こうして思い返していると、スリやひったくりの被害にあった知人の話はいくらでも出てきます。

 私自身は、急に男が近づいてきたと思ったら、いきなりネックレスをひっちぎられたことがありました。いつも通勤に通っている場所で、視界も良く、決して治安の悪い場所ではありません。

 その時は、恐怖で声をあげることもできませんでした。

 注意していれば、避けられることもありますが、狙われたら最後、避けられないものもあります。

 私は恐怖の一件以来、特に、パリではできるだけ目立たないように、地味な服装で、ブランド物などはできるだけ身につけないように警戒して暮らしています。

 名だたるブランドものを創出しているフランスではありますが、残念なことに、そんなブランドものは、パリでは持ち歩けないというまことに残念な治安の悪さです。

 友人がスリにあった!という話を聞いてすぐに、ドンピシャのタイミングでパリの日本大使館から、「スリ、置き引き、ひったくり等の犯罪が多発しています」という注意喚起のお知らせが入りました。

 いつもなら、見過ごしてしまいそうなお知らせですが、友人がスリにあったばかり、また、そういえば、12月だった!ということもあり、再び、身の引き締まる思いがしたのでした。


パリの治安 スリ 強奪 置き引き


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2021年12月15日水曜日

医療スタッフのノエルのバカンス延期に1日200ユーロの報酬 ノエルから年末年始にかけての病院の人手不足対応 

  

 

 ノエル・年末年始が近づいてきているというのに、フランスの感染拡大は一向にとどまることを知らずに、「ピークを迎えたかもしれない・・」と言いながら、すでに長い時が経過しています。

 ピークというのは、頂点ということで、ピークを迎えるということは、その後は減少し始めるということになると思うのですが、ひょっとすると、このピークの状態がしばらく上げ止まりの状態でしばらく続くかもしれないとも言い出しています。

 先週末には、人口10万人あたりの発症率が500人を超え(501.3人)、第2波のピーク時を超え、パンデミック開始以来、最高の水準に達し、昨日は、再び、これまでの記録を更新、1日の新規感染者数が6万3千人を突破(63,405人)しました。

 その結果、入院患者数は日に日に増加し、先週の11,526人に比べ、1週間で14,050人にまで増加しています。フランスで感染が急拡大しはじめて、マクロン大統領が緊急演説を行った11月9日には、6,851人でした。1ヶ月程度で2倍の増加です。

 この勢いで入院患者数が増加し続ければ、従来ならば、ノエル・年末年始のバカンス期間に休暇を取る予定にしている病院スタッフ・医療従事者も多く、この第5波に乗って病院に送られてくる患者の対応が非常に心配されています。

 この2年近く続くパンデミックでの疲弊から、病院では、退職者・転職者が増加した上に、以前よりも採用が少なく、人手不足が高じて年度始めから閉鎖されている病床が出ています。

 今週に入って、AP-HP(Assistance publique-Hôpitaux de Paris)(パリ公立病院連合)事務局長は、このノエル・年末年始のタイミングで、運び込まれる患者の対応のために、より多くの患者を受け入れることができるよう、病院スタッフ・医療従事者に対して、この期間のバカンス休暇を延期して、この間、働いた者に対して、1日あたり200ユーロ(約2万6千円)、10日間で2,000ユーロ(約26万円)を支払うという提案をしています。

 すでにこの提案は、8地域の医療機関で発動されていますが、これはあくまでも、強制ではなく、休みを取りたい人は取り、休暇の延期に同意してもらえれば、買い取りを申し出る予定としています。

 買い取りと言っても、休暇を取り上げられるわけではなく、延期です。休暇が延期された場合、この特別手当プラス、特に子ども一人につき週50時間を上限とする家庭でのケア費用を払い戻すことにより、病院スタッフの子どものケアを促進することを示しました。

 しかし、これには、賛否両論分かれており、「背に腹はかえられない」両者が苦渋の決断を強いられています。

 フランスでは、時間貯蓄口座を認可している企業では、従業員は取得しなかった休暇や、残業、または賞与や利益分配などの報酬をこの口座に入れ、積み立てることができます。しかし、今回のAP-HPの提案では、病院の人手不足を補うために、病院スタッフの休暇を「時間貯蓄口座に入れるのではなく、直接買い戻す」ことを提案していると言います。

 2020年末、フランス政府は、すでに政令により、医療従事者がパンデミックの影響で2020年10月1日から12月31日までに休暇数に応じて算出される「補償手当」を受け取ることを許可していました。

 これは、病院が人手不足に悩む中、クリスマス休暇を犠牲にすることに同意するよう、病院スタッフから有給休暇を高値で買い取り、患者さんの流入に対応するための発表です。

 それにしても、フランス人が何よりも尊ぶノエルを高額の特別手当と引き換えにするのかどうか? お金か?ノエルか? 

 AP-HPの事務局長は、この報酬を払う価値のあることであると語っています。

 それよりも、皆が何の不安もなく、大切な家族とノエルを過ごせる日が一日も早くやってきますように・・。


病院の人手不足


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