2021年9月28日火曜日

2021年バゲットコンクール優勝・グランプリ獲得のバゲット Le Grand Prix de la baguette de tradition française 2021

  

バゲットコンクール・グランプリを獲得したお店はいたって普通のパン屋さん


 毎年、パリでは、バゲットコンクール(Le Grand Prix de la baguette de tradition française)が開催され、その年の最高のバゲットが選ばれ、グランプリ・優勝したバゲットを作るパン屋さんは、賞金4,000ユーロを獲得し、その年、一年間、そのバゲットはエリゼ宮御用達のバゲットとなります。

 パリ市によって行われるこのバゲットコンクールは今年で28回目を迎えます。


 このコンクールに出品されるバゲットは、サイズは55〜70 cm、重さは250〜300グラム、塩分は小麦粉1キロあたり18グラムという厳しい規定をクリアしていなければならず、その上で、味、香り、焼き上がりの外観など総合的に判断されます。

 厳しい審査のために、今年は、測定、計量、塩分チェックの段階で、54本のバゲットが審査から省かれてしまったそうです。

 そして、今年、出品された173点のバゲットの中から、見事、グランプリを勝ち取ったのは、パリ12区で Les boulangers de Reuillyを営む42歳のパン職人でした。

 彼は、審査の結果の報告を受けて、「最初は、冗談かと思った・・信じられなかった・・しかし、父も私もずっとパン作りをしてきた。この結果を非常に誇りに思っている」と語っています。

 これまでにコンクールでグランプリを獲得したパン屋さんには、「〇〇年のバゲットコンクールグランプリ獲得」というパネルが掲げられ、その店舗の栄誉をその後、何年にもわたって、誇りにしています。

 パリに来て以来、さすがにパンを食べる機会が格段に増え、その中でもバゲットは、フランス人の主食と言って良いほどの存在で、さすがに美味しいものも多く、フランスで、一番簡単で、手軽で、美味しいものは、パンとバター、チーズ・・だと思っている私にとって、その年のグランプリを取ったバゲットを見過ごすわけにはいきません。

 昨日、グランプリを取り立てホヤホヤのそのパン屋さんに、さっそく、そのバゲットを買いに行ってきました。

 近くまで行って、「あれ?たしか、この近所に数年前にバゲットコンクールでグランプリを取ったパン屋さんがあったはず・・」と思いつつ、今年のグランプリを取ったお店を見つけましたが、それは、あまりに普通のお店で、まだコンクールでグランプリを取ったことも何も表示されておらず、ごくごく普通の風情で逆にそのことに驚いたくらいでした。

  


 お昼時だったためか、特にグランプリを取ったからと言って私のように野次馬根性で訪れている感じの人も見当たらず、周囲のお客さんたちは、普通にサンドイッチやパン・オ・ショコラなどを買っているので、なんだか、「ホントにここ??」と何度もお店の名前を確認してしまったほどです。



 しかし、それが特別きらびやかなお店でもなく、ごくごく普通のどこにでもありそうなパン屋さんであったことは、逆に好印象で、その、今年のフランスのバゲット界の栄誉に輝いたバゲットを買うときも、「これが、グランプリを取ったバゲットなの?」と確認すると、「ちょっと恥ずかしそうに、「そうですよ!」と微笑むお姉さんに、「まぁ、おめでとうございます!」と言うと、嬉しそうに「ありがとうございます!」と顔を赤らめて答えるあたり、その素朴な感じがますます微笑ましい感じでした。

 グランプリを獲得したそのお店のバゲット・トラディショナルは、1本1.2ユーロ(約150円)で、わりと大ぶりで、何よりも、受け取った時から、その香りの良さは、家に帰るまで食べるのを我慢するのが苦しい感じでした。

  

見事、今年のグランプリに輝いたバゲット・トラディショナル

 焼きたてのバゲットの程よく焼けた部分と適度に空気を含み、中は絶妙なしっとり具合とモチっとした感じは、さすがに絶品のバゲットでした。

  

あえてナイフを使わずちぎったバゲットの断面

 個人的には、塩分がもう少しあっても良いかとも思いましたが、とりあえず、今年最高のバゲットをさっそく食べることができて、大満足でした。

 日本ではフランスパンとまで呼ばれるバゲットは、フランスの伝統的な食文化の代表選手でもあり、その文化を競い合わせ、毎年毎年、最高のバゲットに称号を与えることは、フランスの伝統文化の継承に大きく寄与しています。

 日本にもしも、このようなコンクールがあったなら、マスコミが囃し立てて、大変な騒ぎになっていそうなところ、静かにいつもどおりに営業しているパン屋さんに、かえって地に足がついた奥深さをしみじみと感じたお店の雰囲気と同じの素朴な味のバゲットでした。


⭐️Les Boulangers de Reuilly

 54 Boulvard de Reuilly 75012 Paris 月〜土 6:00~21:00 日曜休み 

 メトロ6号線 Bel-Air または、Dugommier

 

       


パリ 2021年バゲットコンクール


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2021年9月27日月曜日

ヘルスパスのQRコードのオンライン上の盗難と偽造QRコードへの警告

  


 ヘルスパスにより、日常を取り戻しつつあるフランスですが、ヘルスパスの登場とともに出現したのは、偽造ヘルスパスの販売や、ヘルスパスQRコードのオンライン上での盗難事件です。

 そもそも、偽のワクチン接種証明書(QRコード付き)がSNSで出回り始めたのは、ヘルスパスが起用されるよりもずっと前からの話で、ワクチン接種が広まり始めた6月の時点で、すでに大問題になり、実際にそれにパリの病院の看護師が加担していたことなどが発覚したりしていました。

 SNS上では400〜500ユーロで販売されていると言われている偽造ワクチン証明書に加えて、ワクチン証明書(ヘルスパス)QRコードがオンライン上で盗まれるというケースまで登場し、フランス国民健康保険機構は、現在までのこの不正なヘルスパスの数は、約36,000件にも上っていると見積もっています。

 先日もマクロン大統領とカステックス首相のヘルスパスのQRコードがSNSに流出し、二人のヘルスパスが新しく作り直されたという話が物議を醸していましたが、このケースは、実際にそれを使用するためには、あまりに有名人すぎて、多分に嫌がらせや挑発的な意味があったように思われますが、実際に一般人も知らないうちに、オンライン上で自分のQRコードが盗まれているということは、充分にあり得ることなのです。

 そもそもヘルスパスのチェックは、(例えばレストランなどの入店の際などでも)非常に簡単なもので、自分の携帯に保存したQRコードをかざして、お店の人が同様に携帯で、ピッピッと読み込むだけで、詳しい内容などは、チェックしていません。

 ヘルスパスのQRコードには、名前と生年月日、接種したワクチンの種類と2回目のワクチン接種の終了日が記載されているだけのものなので、本人確認も行われない(IDカードとの照合など)ため、正直、私のヘルスパスを誰か別の人が使用しても、全くわからないのです。

 まあ、せいぜい、性別、年齢などで、明らかに違いがある場合は、気がつかれる可能性もないではありませんが、これまで私がヘルスパスを提示した際には、ヘルスパスの内容を詳しく見られたケースなどは一度もなく、盗まれたヘルスパスを使用していてもほとんど発覚しないのではないかと思ってしまいます。

 マクロン大統領やカステックス首相のように、盗まれたヘルスパスがSNS上で出回ったりすれば、すぐに発覚しますが、一般市民の場合は、盗難にあったことさえも気づかない可能性があります。

 しかし、マクロン大統領のヘルスパスを盗んだ犯人はすでに確定されているようで、追跡をすれば、犯人特定は可能なことのようです。

 とはいえ、不正に使用されたヘルスパスは、無効になるため、その場合は、新しいヘルスパスを作り直す必要があります。


 フランス政府は、この偽造ヘルスパスやヘルスパスの盗難に際して、盗難にあった可能性のあるヘルスパス所持者に向けて、その事例を報告し、現在のヘルスパスを一旦無効にしてから、新しいヘルスパスを作り直すように呼びかけています。

 I Tの進歩で私たちの生活は格段に便利になり、現在フランスで行われているヘルスパスのチェックなども非常に簡単にできるようになりましたが、技術が進歩すればしたで、必ず登場する裏で不正を行う存在は、家に押し入られて何かを盗まれるような盗難とは別のタイプのもので、盗難に遭っているかどうかもよくわからない気味悪いものでもあります。

 フランスでの予防接種証明書(ヘルスパス)の不正使用は、45,000ユーロ(約585万円)の罰金と3年の懲役で罰せられます。


ヘルスパス盗難 オンライン上盗難


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2021年9月26日日曜日

11週目のヘルスパス反対デモ・動員数大幅減少 

   


 ヘルスパス反対のデモは、11週目を迎え、未だ続いているものの、動員数は、内務省の発表によれば、63,700人と大幅に減少しています。

 ヘルスパスの起用が発表されたのが7月12日、ヘルスパス(ワクチン接種2回摂取済証明書、72時間以内のPCR検査の陰性証明書、6ヶ月以内のコロナウィルス感染証明書)がないと身動きが取れなくなるような、限りなくワクチン接種義務化に近いような内容に、国民は、慌ててワクチン接種に走り、また政府の強制的なやり方に反発を感じた人々は、バカンス期間中にも関わらず、異例のデモが始まりました。

 一時は、21万人を超える全国的な規模の(8月7日がピークだった・・)デモの拡大に、これは、皆がバカンスから戻ってきたら、デモは一体、どれほどのものになってしまうのかと思いきや、8月中にワクチン接種率が急激に上がり、それにつれてウィルスの感染率もみるみる低下を始め、ヘルスパスの結果が表れ始めるにつれ、デモは毎週、続いているものの、動員数は、少しずつ減少していきました。

 結果的に、当初、反対していた人々も「背に腹はかえられない」というのが正直なところで、実際に結果が出始め、ほぼ日常の生活を取り戻し始めると、ヘルスパスに反対する理由がなくなってしまったのです。

 結果として、人々が望んでいたのは、ヘルスパス云々以上に、コロナ前の日常を感染者を増やすことなく取り戻すことで、それが達成されつつある以上、このヘルスパスを認めざるを得ないことになったのです。

 2回のワクチン接種の間には、一定期間をおかなければならないので、その間は、PCR検査を受けることで、なんとかヘルスパスを保持することも可能だったわけですが、現時点では、国民の83.2%がワクチン接種済みで、それさえも必要なくなってきたわけです。

 このヘルスパスが実際に起用されてからは、年齢による猶予期間を設けることや職域にわたるヘルスパスの義務化に猶予期間が設けられ、また、9月半ばには、医療従事者のワクチン接種の義務化という、いくつかのハードルがあったわけですが、その度に、「もしかしたら、デモがヒートアップするかもしれない・・」という心配をよそに、それでも、ワクチン接種率は順調に上昇し、逆にデモは、縮小していく結果となりました。

 この後、10月半ばには、PCR検査の有料化というハードルが待っていますが、今となっては、ほぼヘルスパスのためにPCR検査を受け続けている人はごく少数で、しかも事情があってワクチン接種を受けること(アレルギー等で)ができない人や、実際に自覚症状が見られる人などに対しては、医者の処方箋があれば、これまでどおり検査は無料で受けることができるため、大した反発を生むとは考え難い状況です。

 フランスでのヘルスパスは、国民をワクチン接種に向かわせるためのものであったと同時に、実際に人の集まる場所や飲食店等での感染回避の役割も果たしていたわけで、この一筋縄ではいかないフランス国民をよくもここまで導き、結果を出したと感心するばかりです。

 ヘルスパスの制度は、スタートしてから、その適用範囲の増減など若干の修正を加えながら進められてきましたが、今後は、さらにコロナ前の日常に近づける方向に向けて、修正されていくものと思われます。

 ワクチン接種率が8割を超えた現在は、大規模なワクチン接種場も閉鎖されていく見通しです。

 今後の問題は、2回のワクチンの有効性が下がり始めるという時期の見定めと3回目のワクチン接種に関してですが、悲観的に考えれば、6ヶ月間程度と見られているワクチン接種の有効性が下がり始める時期が、大多数の人がワクチン接種を受けた7月〜8月の半年後、真冬のウィルスが一番活発化する時期と重なることです。

 しかし、これまでの、時には、かなり強引でもあった経験を踏まえて、臨機応変に対応していってくれるのではないかと思っています。


フランス ヘルスパス反対デモ


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2021年9月25日土曜日

クラック(コカインを含んだ違法薬物)常用者溜まり場の中毒者の強制締め出し

   


 フランスは、ヨーロッパ最大の麻薬消費国であることが、最近、頻繁に報じられるようになりましたが、麻薬の蔓延が特別なニュースにもならないくらいの現在では、麻薬よりもクラック(CRACK)と呼ばれるコカインの一種のドラッグの急速な拡大が問題となっています。

 このクラックは比較的安価なことから、「貧乏人の薬」などとも揶揄され、低所得者やホームレスなど、生活が不安定で荒れがちの階層の人々にも、手に入りやすく、広まりやすかったこともあり、パリ北部(19区近辺)のスターリングラードの広場は、いつの間にか、このクラックの聖地?のような状態に陥り、このクラックの売買や常習者の溜まり場のようになり、スターリンクラックなど皮肉な呼び名をつけられたりしています。

 このスターリンクラックには、このクラックを常用している人々が暴れて騒ぎを起こしたり、暴力的な行為に走ったり、女性を襲ったりと近隣住民は、穏やかな生活を脅かされ、悲鳴を挙げ続けていました。

 もともとパリ北部とそこからちょっと外れたサン・ドニなどの地域は、治安の悪いことで有名で、このクラックが出現する以前から、暴力行為を伴う事件・犯罪が多発している地域でもあり、低所得層が多く、パンデミックにおいても、パリ近郊の中では、最も感染が悪化した地域でもありました。

 今は、おそらく、日本からのツアーなどは、ほとんどないのだと思われますが、以前、普通に日本から多くの観光客がパリに訪れていた頃は、この近辺のホテルなども宿泊場所に入っていて、日本人の観光客のガイドをしていた人が、オプショナルツアーの代金などの大金を持っているところを狙われて、殴り殺された事件などもありました。

 とにかく、もともとそのような治安の悪い地乗りもあって、違法薬物が広がり、根付きやすかった背景は容易に想像がつきます。

 今回、フランス政府はこの状態を打開しようと、200人の警察官を動員し、この場所(エオール庭園やスターリングラード庭園)のクラック常用者を別の場所(ポルト・ド・ラ・ヴィレット)へ強制的に移動させる作戦を開始しました。


 しかし、これは、単にクラック常用者を移動させ、分散させたに過ぎず、何の解決にもなっていないどころか、分散されたこれらの人々がさらにそれぞれ別の場所でクラックを拡散させることになりかねません。

 この政府の措置は、あくまでも、ひとまず、住宅地・学校などのある地域から、クラック乗用車を遠ざける暫定的な措置にしかなっておらず、引き続き、彼らを施設に保護し、クラックと断絶させる手段を取らない限り、永久に彼らは永久に場所を移動し続けるだけで、最終的には、再び元の場所に戻ってくる可能性も捨てきれません。

 また驚くことに、この大移動が行われたのは、金曜日の朝10時からで、この時間に約130名のクラック常用者がこの場所にいて移動させられたということは、一体、夜間はどのような状態であったのかと恐ろしくなるほどです。

 この退去させられたクラック常用者も問題ではありますが、彼らは、所詮、末端の消費者で、それをばら撒いて懐を肥やしている人々こそ、根絶させなければならない問題です。また、これらの麻薬・ドラッグ販売が武装化され、銃などの武器も合わせて出回っていることも、さらに問題を深刻化させています。

 2024年に開催が予定されているパリオリンピックの中心となるスタジアムは、現在、クラックの蔓延で問題になっている場所からそう遠くない場所にあります。

 パリオリンピックの準備には、このクラック問題を解決するという実際のオリンピックとは、別の次元での問題解決も含まれています。

 とりあえずは、パリに観光に来られる機会がある方は、パリのホテルは、この地域を避けるようにしたほうが賢明だと思われます。


クラック CRACK


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2021年9月24日金曜日

トラブルの絶えない娘の学生生活最後の2年間

  



 娘は、小学校から高校まで、近所にあるカトリック系の私立の学校に通い、その後、2年間、通称プレパーと呼ばれるグランドエコール準備学校に通い、実際にグランドエコールに通学したのは、2年間、残りの2年間は、スタージュ、留学の予定をびっしり入れ、学校に通うことなく卒業を迎える予定になっていました。

 プレパーを卒業してからは、初めての一人暮らしも経験し、概ね順調に全てが進んでいたのですが、トラブルが絶えなくなったのは、最後の約2年にわたってのことで、そもそもはパンデミックが引き金になっています。

 今回のパンデミックのために人生が大きく変わってしまった人も少なくないと思いますが、間違いなく、我が家の娘もその一人です。

 グランドエコール2年目の最後の段階で、フランスが完全ロックダウンを迎えたのを皮切りに、その時点で、通学はストップし、全て授業はリモートに切り替わり、学生らしいキャンパスライフはストップしてしまいました。

 初めてパリから離れた学生生活で、ボルドーというそれまで知らなかった場所で、最後の最後にロックダウンになり、ろくにボルドー周辺を楽しむこともできずに、ロックダウンが解除になった段階で、彼女はパリに戻ってきました。

 その年の夏には、イギリスの大学の研究室でのスタージュが決まっていたのですが、それもキャンセルになり、予約していたユーロスターもホテルも全部すっ飛んでしまいました。(ユーロスターはクーポンでの返金、ホテルに関しては返金すると言いつつ今まで返金なし)

 私も以前、イギリスに留学していた経験があり、しかも娘のスタージュ先の大学が、私が当時、住んでいたサウスケンジントンにあり、これは、何という偶然!と、私も娘がスタージュの間にロンドンに行くことを楽しみにしていましたが、これも、もちろん断念。

 しかし、幸い、先方がリモートでのスタージュを受け入れてくださり、娘はパリの自宅から、リモートでスタージュをさせていただいていました。

 そして、その秋には、日本の国立大学への留学が決まっていたのですが、それも、いつまでもハッキリせずに業を煮やしていたところに、ギリギリのタイミングでキャンセルになってしまいました。娘は日本人なのに、外国からの留学生ということで拒否されたのです。

 しかも、こちらの学校と日本の学校との連絡が上手く行っていなかったことから、本当は、夏の間に、留学はキャンセルか延期という通知がこちらのグランドエコール宛に届いていたにもかかわらず、本人には何の連絡もなく、その上、「キャンセルか延期」と言ってきていた日本の大学からも、大学内での連絡ミスか、「到着日、到着便を知らせてください」とだけ、急にこちらに連絡が入ったので、「えっ??OKなんだ!到着便っていうことは、急いで航空券取らなくちゃ!」と慌てて、航空券をとり、隔離期間を考えて、日本の国内線の分まで、航空券を手配してしまったのでした。

 ところが、その後、出発間際になって、夏の間にこちらの学校宛に送られてきていたメールが転送されてきて、慌てて日本の大学に直接連絡を取ると今回の留学はキャンセルになりました。半年、延期を希望しますか?」という回答に唖然とし、日本行きの航空券は全てパーになりました。

 しかし、問題は、それだけには留まらず、キャンセルになった半年間の日本での留学の期間を別のスタージュに当てなければならないため、フランス国内で慌ててスタージュを探す羽目になり、もともとフランス国内でのスタージュは、当初から国内でスタージュ予定だった人でほぼ、全てのポストが埋まってしまっている中、何とかスタージュを見つけて、それもパリ近郊ではなかったために、彼女は、慌てて引っ越しする羽目になりました。

 スタージュが始まる日にちに合わせて出かけた娘は、引越し先も本決まりではない状態で出発していきました。

 幸いなことにフランスでは、かなり大手の大きな会社ではありましたが、それも研究所のために、周りには何もない、Googleマップでは、これが駅?と見分けがつかないほどの、ど田舎生活。一時は、彼女は、「このスタージュで一番に学んだことは、ど田舎には二度と住まないということだ・・」などと冗談のように言っていました。

 そして、その半年間が終わりに近づいた頃、延期されていたはずの日本の大学への留学の時期を迎えようとしているのに、日本の大学はいつまでもハッキリした返答をくれずに(結果、ギリギリになって再びキャンセルになりました)、前回で痛い目にあっていた娘は、日本の大学からの返事を待たずに、パリ市内の病院併設の研究所でのスタージュを決めてしまいました。

 そして、今年の夏の終わりとともに、最後のスタージュを終え、ここのところ、娘は最後の論文を書くことと、就活に明け暮れていました。現在のパンデミックの事情もある上に、会社もフランス国内ばかりではないため、就活といってもほとんど、リモート・zoomなどでの面接で、正直、新卒の時には、日本でドキドキしながら就職の面接に行った私からすれば、何だか国も時代も違うんだな・・などと呆気に取られて、娘の就活の様子を眺めていました。

 フランスでは、日本のように一斉に4月に新入社員がスーツを着て、入社式・・なんていうものもないようで、だいたい会社が人を採用する機会が多い季節というのは少しはあるのでしょうが、それが一様に統一されてはいないのです。

 考えてみれば、入学式も卒業式もないフランスの学校ですが、それと同じにどの会社も一斉に入社式・・なんていうものもないのです。(一部の公的機関などは除く)

 そんな感じなので、娘も就職を焦るなどという気持ちはあまりなく、就職してしまえば、一年間はバカンスも取れないのだから、少しゆっくりしたいなどとのたまっており、とりあえず提出期限のある論文の方に取り組みながら、ポツポツと面接を受けたりしていました。

 現在は、通学はしていなくとも、在籍している学校には、10月に一度、その論文の発表に1日だけボルドーへ行く予定になっていたのですが、また、ここに来て、一週間後に一週間にわたって最終講義が行われるというメールが急に送られてきて、おおわらわ。その間の滞在先の手配をしなければならなくなりました。

 どうやら、現在も通学を続けている人には、夏の間に連絡があったものの、留学中、または、留学予定だった人には、連絡漏れだった模様です。

 急な話にどんなに迷惑するかは学校の事務の人は想像すらできず、もちろん謝るなどという頭は毛頭もなく、まるで他人事でクレームのつけようもありません。

 全く、連絡漏れというのがフランスにはどれだけあることか? 私の滞在許可証の書き換えですったもんだした時も、結局、気を揉む私は、たらい回しで問い合わせさえ受け付けられずに、本当は、とっくに出来上がっていたものを連絡漏れで引き取りに行くことができなかったのですが、引き取りに行った場所では、引き渡しをする係の人としか接点がなく、苦情をいうことさえできなかったことを思い出しました。

 結局、この手のトラブルは、フランスでは、まるでなかったことのように過ごされていき、一向に改善されることはないのです。

 もともとは、パンデミックが原因で、起こったトラブルの数々ではありますが、非常時だからこそ、気を回して、さらに連絡漏れがないかどうか注意する・・なんてことは、フランスには、ないのです。

 娘の就活は現在進行形、上手く進みそうな気配の会社もあるのですが、その前に彼女の学生生活は、最後の最後までトラブルで追いまくられることになりました。

 まあ、楽観的に考えれば、この最後の2年間で、彼女は急な変更が起こっても、何とか対応、対処できるチカラを身につけたのかもしれません。


フランスでのトラブル


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2021年9月23日木曜日

締めたり緩めたり・・フランスの感染対策のさじ加減とその背景にある死生観

   


 ワクチン接種の拡大とヘルスパスにより、コロナウィルス感染が鎮静化しつつあるように見えるフランスは、今度は、ヘルスパスによる制限を緩和していくことを検討しつつも、そのさじ加減に慎重な態度を保っています。

 フランスは、9月15日から医療関連就業者に対して、ワクチン接種の義務化を決行し、3,000人にも及ぶ停職処分となった人々までいますが、逆に?ヘルスパスによる行動制限は、地域ごとに緩和させていく方向で検討を進めているようです。

 しかし、また現段階では、ワクチン接種が遅れて開始されたために猶予期間を与えられていた12歳〜17歳の未成年に対して、9月30日から、大人同様にヘルスパスが適用されることが発表されています。

 そして、それとほぼ同時に、10月4日からは、感染発生率が少なくとも5日間で住民10万人あたり50例未満である地域の小学校では、生徒、教師ともにマスク着用の義務を撤廃することを決定しています。

 これに関しては、教職員組合はその措置について意見が分かれており、おそらく保護者側からも賛否両論の意見が上がってくるものと思われます。

 たしかに、12歳以下の小学生が一日中、マスクをしながら学校生活を送ることは、きついことに違いありませんが、12歳以下の小学生については、現在のところ、ワクチン接種ができていない年齢でもあるため、より慎重な対応が求められる気がします。

 こうして、小学校でのマスク義務化を撤廃したり(地域ごとによる条件付きで)、逆にヘルスパスが求められる年齢層を広げたり、制限を緩和しているのか、強めているのか、理解に苦しむところでもあります。

 現在は、ワクチン接種率が81.7%にまで上昇してきたこともあり、街中に設けられたPCR検査場はどこもガラガラで、あまり検査を受けている人を見かけなくなってきたものの、10月16日からは、今まで無料で行われていたPCR検査が有料化されます。

 これだけワクチン接種率が上昇すれば、PCR検査が有料化されても、大勢に影響はない気もしますが、それでも、ヘルスパスによる制限のために、検査を受け続けていた人々(ワクチン接種をしていない場合)は、お金を支払って検査を受け続けて凌ぐか、ワクチン接種をするかに追い込まれていきます。

 結局は、ワクチン接種の義務化に限りなく近い状況が現実化するわけです。

 しかし、ワクチン接種をしているからといって、感染のリスクは減少するとはいえ、感染しないということではないことから、実際の感染者はもっといるとも考えられます。

 けれども、入院患者数、集中治療室の患者数も減少している現状を考えれば、たとえ、感染していても、重症化しなければ良いと考えられているのかもしれません。

 実際にワクチン接種をしても感染しているケースなど、それ以上のことまで考えていては、大きな感染対策への対応は進まないので、一先ず、医療崩壊を起こさない状態を保つことを第一義として考えていることも理解できます。

 過去にこのパンデミックにおいて、深刻な医療崩壊状態を迎えた経験があってこそのフランスの強めの対応なのかもしれません。

 私は、医療に携わっているわけではないので、はっきりとしたことは言えませんが、これは、フランス人の死生観とも関係があるのではないかとも思っています。

 つまり、あくまで、最期まで力を尽くそうとする日本とフランス人が考える「もうこれは、助からない、ダメだ・・」という判断をするラインが違うのではないか?と思うのです。

 今まで、私の周囲(フランスで)で亡くなっていった人(コロナウィルス感染によるものではない)の最期を考えると、ある時点で、医師側が、あっさり死を受け入れるような気がしています。決して早々にさじを投げるというわけではありませんが、もうこれはダメだ・・と判断するラインが日本とは違うような気がしているのです。

 昨年の3月から4月にかけて、フランスが医療崩壊を起こした時期には、それはもう、医療体制が充分であれば、助かったはずの命が多く失われてしまったことは、まさに惨憺たる状況でしたが、その時にやれるだけやって、ダメなら仕方がないと思う境界線が日本とは、違うような気がするのです。

 その違いが、この制限を締めたり緩めたりの、微妙なさじ加減にも影響しているような気がしてならないのです。最初から、全てを完璧には求めずに、ある程度の犠牲を覚悟の上で、事が進められている気がします。

 もちろん、できるだけ犠牲者を出さないために、ワクチン接種を拡大したり、常に国民に対して、理解を求め、説得しようと賢明な努力を続けていますが、感染対策や医療体制とともに、常に生きている人々の生活の質も追求し続けている・・そんな感じでもあります。

 死ぬまで生きるために・・。


フランスのヘルスパス フランス人の死生観

 

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2021年9月22日水曜日

シャンゼリゼ・ラッピングされた凱旋門とディオールの躍進

   



 行くと、「あ〜やっぱりいいなぁ〜」としみじみと思うのに、滅多に行かないのは、ルーブルなど、パリにある数々の名所も同じなのですが、シャンゼリゼもまた、滅多に行くことはありません。

 そんなに遠いわけでもないけど、特に用事もないので、わざわざ行かないというのが正直なところ、せいぜいノエルの際にシャンゼリゼの街路樹にイルミネーションが灯される頃になると、今年のイルミネーションはどんな感じかな?などと気が向いた時だけ、ひょっと行ってみたりするだけです。

 以前は、日本人会がシャンゼリゼにあり、そのスペースで公文の教室をやっていたりしたので、当時は、毎週のように来ていましたが、それも移転してしまって以来、さっぱりご無沙汰です。

 前回、行ったのは、やはりノエルの頃のイルミネーションを見に行ったので、もう半年以上も行っていなかったことになります。昨年の12月は、まだワクチン接種も始まっておらず、おっかなびっくり出かけ、ノエルの時期にこんなに人の少ないシャンゼリゼは初めて・・お腹がすいてしまったのに、飲食店の営業はなし・・空腹に耐えながら、やはり美しいと眺めたイルミネーションと、イルミネーション以上にその人の少なさに驚きと寂しさを感じたのを覚えています。

 今回は、現在、クリスト&ジャンヌ・クロードの60年がかりのアート作品としてうっすらと青みがかった25,000㎡のシルバーの布で凱旋門が期間限定(10月3日まで)で、ラッピングされているという凱旋門を見てみようと思い、9ヶ月ぶりのシャンゼリゼに出向いたのでした。

 現在でも以前のように観光客に溢れかえるシャンゼリゼではありませんでしたが、それなりに人出も戻り、少しほっこりさせられました。

 何よりも、このラッピングされた凱旋門を見に来ている人は少なくなく、平日の昼間とはいえ、なかなかな人出でした。

 


 ここぞとばかりにこのアートを説明する本などがシャンゼリゼの路上に路面店が出店されていたりしました。




 この構想の主のジャンヌ・クロードは、すでに2009年に他界していますが、クリストもまた、これを目にすることは叶わず、彼の構想どおりに布やロープの素材からドレープの作り方、凱旋門の補強まで全て彼が綿密に指示していたとおりに作り上げられたと言います。

 シルバーの布のドレープが織りなす、風によって、呼吸しているかの如く、また、瞬間瞬間の光の反射によって、違う光を放つ様子は、いつもとは違う圧巻の凱旋門でした。

 また、このアートは、一切の公的資金が使用されることなく、このためにかかった1,400万ユーロは全てクリストの自己資金によるものであることも公表されています。


 このラッピングされた凱旋門のアート目当てにシャンゼリゼに出かけた私ですが、シャンゼリゼの中央あたりに位置するメトロ・ジョルジュ・サンク駅を上がってきて、一番最初にびっくりしたのは、いつの間にか工事が進んでいたディオールの大きな建物でした。

 

ルイ・ヴィトンの正面にそびえ立つディオール

 

 工事中のために、外観を壊さないための完成時を彷彿とさせる布で覆われていたものの、その大きな建物がディオールのものであることは、建物のてっぺんに既に掲げられた大きな星とディオールのロゴで一目瞭然でした。

 この建物は、ちょうどルイ・ヴィトンの正面に位置し、相当な大きさのもので、シャンゼリゼ沿いのディオールの建物は、私の足でちょうど88歩。その前を歩きながら、「はて?ここのスペースは、以前は何のお店だったっけ?」と考えてしまったほどです。

 以前にシャンゼリゼでラデュレの正面にピエールエルメがオープンした時にびっくりしたことがありましたが、今度は、ルイ・ヴィトンの前にディオール・・これもまた、なかなかです。

 そして、工事中のディオールのスペースを通り抜け、凱旋門へ向かっていくと、またディオールの大きな店舗がありました。「はて?こんなところにディオールあったっけ?」と思いながら、「たまには、ディオールのお店・・覗いてみよう!」と入ってみました。

 入り口で、アルコールジェルを手につけてくれた店員さんがとても感じの良い人だったので、「今、工事中のディオールのビル、あれが完成したら、このお店もあっちに引っ越すの?」と聞いてみたところ、なんと、あの大々的な工事中のディオールのビルは、オフィス用に使用されるとのことで、シャンゼリゼのお店は、より凱旋門に近い、この店舗のみとのことでまたびっくり!

  

工事中のディオールの建物全景

 「えっ?あんなに大きいのに、全部、オフィス?」と聞くと、「ディオールで働いている人は、すごくたくさんいるから・・」とのことでした。そのお姉さんは、すかさず、「アベニューモンテーニュの方のブティックは、もう2年近く閉まったままだけど、今年中には再開するはずだから、あっちの方がすごいから、オープンしたら、行ってみて!」と、ディオール本店の宣伝も欠かしませんでした。

 日頃、ブランド物とは、ほとんど縁のない生活をしている私も、ほとんど美術館を見て回る気分で店内を楽しく見学しました。(見るだけ・・)

 




美術館気分も味わえるディオールの店内

 店内は、以前、パリでよく見かけた光景のように、ブランド物の大きな袋を脇におき、さらに買い物をし続ける人が結構いましたが、そのほとんどが英語で買い物をしていたことを考えると明らかに彼らは観光客で、フランスの大きなブランドが観光客により支えられていることを思わずにはいられませんでした。

 



 それにしても、パンデミックで多くの店舗が喘ぐ中、ディオールのこの躍進にラッピングされた凱旋門と同じくらいビックリしたのでした。


シャンゼリゼ 凱旋門期間限定アート ディオール


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