2025年9月14日日曜日

フィッチ(Fitch)レーティングスがフランスの格付けをAAーからA+に格下げ

  


 2025年9月12日、格付け会社フィッチはフランスのソブリン格付けをAAーからA+に格下げました。フランスは2012年以降、この格付けにおいて、着実に低下して続けており、財政の不確実性と潜在的な政治不安定性が理由とされています。

 バイルー前首相が信任投票で倒れた後、次期首相の任命があまりにも早かったのは、このフィッチの格付けが控えているのも理由のひとつだとの声が上がっていましたが、首相の速攻任命くらいでは、格付け格下げを避けることはできなかったようです。

 そもそも、バイルー首相の首相在任期間は9ヶ月弱、その前のバルニエ首相は、3ヶ月程度、とにかく、今度の新首相が1年の間に4人目の首相というだけでも、政治が安定していないことを表す一番の状況に他なりません。

 「今回の信任投票で政権が崩壊したことは、国内政治の分裂と二極化の深刻化を浮き彫りにしている」とフィッチは声明で述べています。

 「こうした不安定さは、大規模な財政再建を実施する政治システムの能力を弱めている」とフィッチは付け加え、「政府が期待していた2029年までに財政赤字をGDPの3%未満に引き下げることは難しい」としています。

 この格付けの結果に対して、仏経済大臣は、「フィッチがフランスの格付けをAAーからA+に格下げしたことに注視している。これはフランス経済が堅調であるにもかかわらず、財政状況と政治的不確実性に基づく決定である。」と、もっともでもあるけど、甘々な、なんとなく責任逃れをしているようにも受け取れないではないようなコメントを残しています。

 また、ある報道によれば、この決定は、バイルー政権の崩壊、「全てをブロックせよ!」の抗議活動といったフランスにとっての緊迫した時期に下されたもので、あたかも時期が悪かったといった見方をするものもありましたが、この2つだけをとっても、安定した政権のもとであったら、起こってはいなかったことで、巨額の債務を抱えているという事実には、変わりありません。

 フランスはユーロ圏第二位の経済大国と言われていますが、そんなフランスにとっては、屈辱的な格付けであったに違いありません。

 ちなみに、アメリカはこの格付けにおいて、2023年にトリプルA格付けを失い、AA+の格付けを受けており、スタンダード&プアーズなど、他の格付け機関も各国の財政を評価しており、ヨーロッパでは、デンマーク、フィンランド、ドイツ、ルクセンブルクなどにトリプルA格付けを与えています。

 そして、フランスでは「今、このランキングでは、フランスはスロバキアや日本と同じレベルだ!」と書かれています。読みようによっては、というか、これでは、日本のようにフランスも落ちぶれてしまった・・とも読めるのですが、日本ってやっぱり、こんな風に見られているの?とフランスの格下げ以上に日本の見られ方が気になったのでした。


フランス フィッチ格付け 格下げ


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2025年9月13日土曜日

一体、何を食べたらいいのか?わからなくなってきた・・

  


 私は、若い頃は、あまり食生活について、真剣に考えることもなく、ただ、これ太るだろうな・・と思うものは、避けるくらいで、いわゆる身体に良い食品などと言われると、あまのじゃくな私は、「身体に良い食品」とか言われるだけで、「なんか、マズそう・・」な気がしてくるくらいでした。

 お酒もかなり飲んでいたし、気を付けるもなにも、そこまでしっかり食べていなかったような感じもしないではありません。

 ただ、非常に食べ物にこだわるというか、美味しいものには目がない家庭に育ってきたので、それなりに美味しいものを食べさせてもらってきたし、美味しいものを食べるためなら、手間暇を惜しまないという感じの家だったので、そこのあたりは現在の海外生活にも役立っているような気がします。

 そんな私も子どもが生まれてからは、子どもには、栄養バランスのとれた良い食事をとらせなければいけないと思ってきたので、ずいぶん、食事については、気を付けるようになりました。

 幸い娘は、本当に押し付けたわけでもないのに、非常に健康的な食品が好みで、小さい頃の娘の大好物は茹でたブロッコリーや高野豆腐や湯葉などの大豆製品で、高野豆腐や湯葉などは、パリではいつでも手に入るわけではないので、そんなに毎日食べられるわけではありませんが、ブロッコリーに関しては、どこでも買えるので、いつでも茹でたブロッコリーと人参は冷蔵庫にストックしてある習慣になっていて、学校から帰ってきて、お腹が空いたときには、お菓子などは食べずにモリモリ、ブロッコリーを食べていました。しかも、マヨネーズ(娘はマヨネーズが大嫌い)などのソースは一切つけずに、モリモリ食べるといったちょっと変わった子どもでした。

 長いこと、我が家の食生活は(特に夫が亡くなってからは・・)娘中心の生活で、大方、娘の好みに沿って用意していました。

 娘が独立してからは、私は一人暮らしになったので、私の好きなものだけを好きに食べていてもよい境遇になりましたが、反面、自分だけのために作る食事というものは、どうにも簡素になりがちで、リズムができてくるまでは、少し時間がかかりました。

 しかし、最近になって、身体のあちこちに支障が表れ始め、食生活にも充分に気をつけなければならないようになってからは、糖質制限やら、カロリー、これは食べた方がよい食品だとか、避けた方がよい食品などというものをずいぶん、考えるようになりました。

 野菜をできるだけ摂ることは言うまでもないのですが、私の食生活には、どうやらたんぱく質が足りないようで、最近は、自分の中でも「たんぱく質・たんぱく質・・」と思いながら、買い物をするようになりました。

 私は、全くベジタリアンなどではないのですが、どちらかといえば、お肉もお魚もなくてもまあ、いいや・・と思ってしまうところがあり、まあ、簡単にいえば、美味しいお米と美味しいお漬物があれば良い・・くらいで、お肉を食べるとちょっと重いな・・くらいに思っていたので、たんぱく質摂取というのも、それはそれで、少々、億劫なところもあります。

 そのうえ、このインフレでお肉も相当値上がりして、お魚となると、良いお魚は、なかなか手に入りにくいとなれば、あとは卵・・昔は、卵は、1日せいぜい1個くらいにしないと、コレステロールが・・とかいう話があったのですが、最近の説では、卵はもっと食べても大丈夫らしい・・との話。

 考えてみれば、色々な科学技術などは、信じられないくらい進歩しているのに、この種の身体に良い悪い・・という健康に関わる食生活に関する情報というものは、どうして、こうもくるくる変わっていくのか? と不思議な気がします。

 つい最近も、糖質制限はもとより、体脂肪を落とす食事・・などなど、色々な情報があって、ちょっとビックリしたのは、体脂肪を落とすためには、むしろ、油を採らなければいけない・・なんていうのもあったりして、もうどれを信じていいのかわからなくなりました。

 「健康のために良い食品」に関しては、「昔は、こんなふうに言われていたけど、実は、その節は違った・・それは誤りだった・・」というものがけっこうあって、そんなこと今さら言われても・・と思うことはけっこう多いのです。

 私の場合、そこまで厳しく制限しているわけではないのですが、それでも、できるだけ、これを食べた方が良いと言われれば、できるだけ取り入れようとは思うし、糖質等に関しても、甘いものはできるだけ控えるけれども、全くカットしてしまうのも寂しいので、高級品なら少しは良い・・ということにしていますが、それにしても、もう山のように薬を飲んでいる身としては、それでも体調が良くならないとなれば、あとは、毎日の食生活をできるだけ良いものを取り入れるということくらいしか、やることはないわけです。

 しかし、次から次へと、時には、これまでと正反対のような「油は摂った方がよい」などということを言われれば、一体、どうしたらよいのか?わからなくなってしまいました。

 ちなみに私のかかりつけのお医者さんは、食生活で体調を改善していこうというアドバイスはあまりなく、あくまでも薬で・・という感じ。

 もっとも、食生活に関しては、ふつうのフランス人と同じような食生活ではないので、アドバイスしてくれたところで、あまり役には立たないので、自分で模索してみるしかありません。

 食べることが何よりも好きな私ですが、現在、食事については、大いに頭を悩ませているところです。


食生活 健康に良い食品


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2025年9月12日金曜日

私のお気に入りのパリのフレンチ ビストロ Le Comptoir du Relais ル・コントワール・デュ・ルレ

  


 私は、正直、フレンチ、フランス料理が大好き!というほどではないのですが、そりゃあ、美味しいものが好きなことには変わりはありません。

 いつだったか、珍しく、娘とフランス国内を旅行した際に、たまにフランス国内を旅行するんだから、美味しいフレンチにしておこうよ・・と、そんなに頻繁には行かないフレンチに2日間、昼、夜と続けて行ったことがあったのですが、もう2日目の夜には、なんだか、ちっとも食欲がいま一つ湧かずに、二人して苦笑してしまったことがありました。

 色々と調べて出かけたので、そのどれもが美味しいレストランやビストロではあったのですが、やっぱり、フレンチだとこうなるのか・・と思ったこともありました。

 そんな私が、珍しく、パリでわりと行き続けているレストラン・・というか、ビストロがあるのですが、今日は、そのご紹介をします。

 そのビストロは、「Le Comptoir du Relais」(ル・コントワール ・デュ・ ルレ」というお店です。パリのサンジェルマン・デ・プレ、オデオン界隈にある小さなビストロです。もとはと言えば、知人に教わって行きはじめたお店ではあるのですが、ここは、ちょっといつ、何を食べても、他のビストロで食べるのとは、ちょっと一味違うな・・と唸ります。



 今回、食べたロブスターのお料理は、パエリア風のリゾットとロブスターのバターソテーを組み合わせた絶品でした。

 とはいえ、いつでも混んでいるので、今、パリ空いているし・・だったら、あそこも空いているかも?と思うときくらいしか行かないのですが、いつ行っても、期待を裏切られることはありません。

 後から知ったのですが、ミシュランのガイドにも掲載されているそうです。(星付き等ではありませんが・・)

 ここは、私が外食するコンセプトの一つである、「同じようなメニューでも、これは、絶対に自分ではできない料理」を出してくれるところでもあります。


メニューはだいたいこんな感じ


 また、地域柄?客層もわりといい(お客の立場で言うのもなんですが・・)ので、ゆったりとした気分で食事ができますし、お値段も相応(安くはないが妥当)で、非常に雰囲気も良いです。

 お店は、特に凝った内装などではありませんが、ついつい、テラス席やテラス席に近い席で食事したくなるような、パリらしい雰囲気のお店です。

 以前は、ホテル・リッツやホテル・クリヨンでシェフをしていたという有名シェフがオーナーを務めておられたのですが、今は別のオーナーに代わったようですが、味はしっかり引き継がれていて健在です。引き継いだシェフもなかなかの有名シェフのようです。

 間違いないパリらしいビストロをお探しの方には、ぜひぜひ、おススメのビストロです。


🌟Le Comptoir du Relais 9 Carr de Odeon 75009 Paris 


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2025年9月11日木曜日

思っていたよりも激しかった9月10日の「全てを封鎖せよ!」のデモ

 


 フランスにいると、デモは日常茶飯事のことなので、なんだか「あ~~?またなの?」くらいに持ってしまうところがあって、「全てを封鎖せよ!」などという勇ましい呼びかけのもと行われた9月10日のデモも、正直、あんまり大変なことだとも思っていなかったのですが、それは、想像以上に激しいものでした。

 しかし、この感じだと、この動きはまだまだ序章といったところで、とても1日で収まる類のものではない気がしています。

 当日は、朝早い時間に、恐る恐る家を出て、メトロやバスがどの程度、動いているのかとおっかなびっくりでしたが、思ったよりもメトロは動いているし、RATPはちょっと厳しいのかな?くらいに軽く考えていました。

 しかし、蓋を開けてみれば、全国的に約20万人(政府の発表と組合の発表の数が異なるので、どっちが本当なのかはわかりませんが・・)が参加したとのことで、パリ及びパリ近郊はもちろんのこと、オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ、ブルターニュ、ペイ・ド・ラ・ロワール、グラン・エスト、ヌーヴェル・アキテーヌ、ノルマンディー、オクシタニーなどなどの地方都市でもなかなかの動員を見せた模様です。

 各労働組合によると、約30の美術館、モニュメント、公共サービスが終日、または、一部中断されました。これには、ヴェルサイユ宮殿、凱旋門、ルーブル美術館、オランジュリー美術館、パリ・ピカソ美術館、サンクルー国立美術館、パリ国立公文書館、ヴァンセンヌ城などが含まれていました。

 また、多くの高校が封鎖。国民教育省は、約100校の学校が妨害され、27校が封鎖されたと発表。主要な高校組合であるリセ組合はフランスの3,700校の高校のうち150校でストライキを宣言。中学校の教員ストライキ率は6.5%、小学校はもともとほとんどの学校が水曜日はお休みなので、この影響は受けていません。

 しかしながら、今回のデモは高校生をはじめ、比較的若い層が多かったのが特徴と言われているので、将来のフランスを憂いている若者たちがいかに多いかということでもあるとも思います。

 大規模な赤字を抱え、社会保障や年金がどんどん削られていく状況に見過ごせないと思っている人が多いのは、日本とも共通する部分が多いかもしれません・・が、フランス人はおとなしく黙ってはいないのです。

 今回の「全てを封鎖せよ!」デモに際して、政府は約8万人の警察官・憲兵隊を一日中配置。約30機のヘリコプターやドローン、放水車、装甲車の配備で備えていましたが、パリでは、多くの惨事が起こってしまいました。

 今回、一番、派手だったのは、シャトレ周辺のブラスリーがデモ隊と警察との攻防戦の巻き添えを食って、火が立ち上り、けっこうな火災。また、シャトレ・レアール駅にあるヨーロッパで最も多い集客数を誇る映画館やプール、多くの商店やレストランなどがある大きなコマーシャルセンターは、午後には安全上(SNS上で強奪を呼び掛ける投稿が出回り始めたためと言われている)、閉鎖になり、シャトレ・レアールの駅でもほぼ電車が停車するという大惨事。

 また、パリ・北駅でも約1000人が侵入しようとしたところを警察が阻止・・駅は一時、閉鎖状態になったようです。

 私は、こんなことになっているとは全く知らずに午後過ぎくらいに近所のスーパーマーケットに買物に行ったのですが、ウソみたいにガラガラでびっくりしました。

 結局、却下されたものの、赤字削減のために祝日2日を返上・・なんていう案も出ていましたが、祝日ではなくても、このようなデモが度々起こり、ほとんど社会が麻痺してしまう状態では、祝日返上以前の問題かも・・と思いました。

 今回の「9月10日全てを封鎖せよ!」のデモは、一応、9月10日・・と日にちが指定されていましたが、とてもこの騒ぎが1日で終わるとは思われず、7年前の「黄色いベスト運動」の二の舞になるのでは?9月10日は、単に国民の意識に火をつけ、エンジンをかける役割を果たしただけで、これがさらに続くのでは?と見る意見が多く出ています。

 今回の「全てを封鎖せよ!」という動きは、SNSを中心に広まったので、結局のところ、どこが火元なのかがわかりづらく、そのうえ、政党までそれを煽る動きに加わっているために、余計に話が複雑になっています。

 しかし、いずれにせよ、フランス・・このままでは、絶対におさまりそうもありません。


9月10日の「全てを封鎖せよ!」デモ


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2025年9月10日水曜日

バイルー辞任の24時間も経たないうちに次期首相任命 セバスチャン・ルコルニュ 39歳

  


 予想通りというのも失礼なのですが、フランソワ・バイルー首相の辞任が決定した翌日、正確には、辞表が提出されたのが翌日なので、その辞表が提出された数時間後、マクロン大統領は、次期首相に「セバスチャン・ルコルニュ氏」を指名しました。

 大規模ストライキの予定が今後、ギッシリ詰まっているフランスで、次期首相の任命は早くに行われるだろうと大方の予想が出ていましたが、それにしても、24時間も経たないうちに発表されるとは、ちょっと驚きでした。

 ここ2年間(マクロン大統領2期目)で、5人目の首相となる人物は、39歳の現在まで軍事大臣を務めていた人物でした。

 なんといっても、39歳とは若いですが(とはいえ、ガブリエル・アタルの最年少記録は破られていませんが・・)、一見、歳のわりには、貫禄があるというか、そんなに若くも見えない感じ・・現在、彼の人となりを紹介する映像などがニュースで流されていますが、20代前半の映像などでも、ん??そんな歳?太い眉に鋭い眼光、もしかしたら、若い頃からおじさんみたいに見える人・・そんな人??という印象を受けてしまいました。

 見かけは、別として、彼は、非常に若い頃から政治に関わってきている人物で、マクロン大統領に非常に近い忠実な支持者といわれている人物で、今回ばかりは、マクロン大統領も、もう我が身に危険が及ぶのを恐れてか?国民議会の第一党から・・などと言う声は、全く意に介さず、彼自身を忠実に支持しながらキャリアを積んできた強力な自分の腹心のような人物を選んだようです。

 セバスチャン・ルコルニュ氏は、2017年のマクロン大統領の当選以来、全ての政権に参画してきた人物。2017年には、環境・包摂的移行担当大臣(当時31歳で最年少の政府メンバー)、2018年には地方自治相、2020年7月には、カステックス政権下で海外領土担当大臣、そして2022年5月からは、軍事相に就任しています。

 彼は、幼少期から政治への情熱に突き動かされてきた人物、16歳でウール県ヴェルノンでUMP(国民運動連合)に入党し、19歳でウール県議会議員フランク・ジラールの議会補佐官を務め、国民議会で最年少の議会補佐官となりました。そこで、同じく議会補佐官だったジェラール・ダルマナンと出会いました。二人は定期的に一緒に休暇を過ごし、20年にわたる友情を育みました。

 2014年3月、27歳でウール県ヴェルノン市最年少市長に就任し、その後、第一副市長のフランソワ・ウジヨーにその職を譲りました。2015年には、29歳でウール県議会議長に就任し、フランス最年少の県知事となりました。2017年からはマクロン大統領の下で政権に参画してきたわけですが、これまで不思議とあまり印象に残る話題にのぼった覚えがありません。

 今回、この新しい首相に関しては、まだあまり情報が出きっていないので、あまり良くわからないのが正直なところではありますが、今回の人選にしても、この異様に速い首相任命にしても、マクロン大統領がかなり切羽詰まっている感じが受け取れます。

 いずれにしても、おちおちしていると、また、来年の予算が今年中に可決できないなんてこともありえるわけで、もうこのバタバタ具合を「予算案可決までに首相は何人必用か?」なんて嫌みたっぷりの見出しを掲げているところまであるくらいです。


フランス新首相 セバスチャン・ルコルニュ


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2025年9月9日火曜日

バイバイ!バイルー! フランソワ・バイルー内閣崩壊

  


 国民議会は月曜日、フランソワ・バイルー首相の信任決議を行い、賛成194票、反対364票で否決し、首相は罷免されました。

 フランソワ・バイルー首相は、公的債務に関する懸念が高まる中、自分の首をかけて、国民議会に問題を突きつけましたが、無残にも砕け散ってしまいました。

 これは、あまりに無謀なやり方で、結果は、ほぼほぼ予想されていたことでしたが、最後の最後まで、なにか、ウルトラ級の案があるのかとも思ったのですが、首相自身がこの方法を発表したのちは、予算案云々以前に現政権を倒すことが目的とも思われる言動が増え始め、バイルー首相を飛び越えて、打倒!マクロン大統領!のような声さえ出始めてしまったのには、まともに予算を話し合う感じがかえって薄れる感じさえしてくるのでした。

 昨年のパリ・オリンピック終了後のミシェル・バルニエ首相任命以来、1年未満の首相退陣が続いていますが、どちらも、膨大な負債を抱えた予算案の審議の過程においての話であり、この財政赤字をどう削減していくかは、現在のフランスの深刻な問題に違いありません。

 2025年の予算は、突如、首相が退陣するハメになったために、年明けまでに予算の審議が間に合わず、予算案が確定するまえに2025年がスタートしてしまい、とりあえず、2024年の暫定予算のままスタートするという壊滅的なスタートでした。

 そして、現在、審議中の2026年の予算案ですが、これで首相の退陣が決まったために、また、予算の審議は先送りになるわけです。

 思い返せば、そもそもは、欧州議会選挙において、極右政党が圧勝したことから、本当はやる必要がなかった国民議会の解散・総選挙を行ったことで、結果的には、マクロン大統領は、多くの自分の党の議席を失い、第一党過半数を失ったどころか、第一党を新人民戦線(NFP)に奪われてしまいました。

 フランスの首相は大統領が任命するのですが、この首相任命にあたっては、通常ならば、第一党の政党から選出するのが誰もが納得できる道だと思われるところ、マクロン大統領は、ここ2回の首相任命に関して、第一党からの選出を行いませんでした。

 ただでさえ、難航しそうな議題(財政赤字削減)に際して、これでは、政府からの予算案が通りづらいのは、当然のことでもあります。

 今の段階では、マクロン大統領が倒れるわけではありませんが、これで1年の間に3回目の首相任命という事態をマクロン大統領は招いてしまったことになります。

 この直後に、フランスはすでに「全てをブロックせよ!」と銘打った大規模デモが9月10日には予定されており、18日には、労働組合デモ、そして金曜日には、フィッチ格付けによるフランスの債務格付け引き下げの決定の可能性もあるなど、次期首相任命に時間はかけられない理由が乱立しており、次期首相任命は、早くなるだろうと予想されています。

 しかし、もとをただせば、マクロン大統領が全てを引き起こしていると思えないでもない事態。もうこうなってくると、次の首相は何ヶ月もつだろうか?と思ってしまいます。


フランソワ・バイルー内閣崩壊


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2025年9月8日月曜日

日本の石破首相辞任の報道 海外のメディアはしっかり見ている

  


 さすがに日本の首相が辞任するというニュースは、首相本人の記者会見で正式に辞任が発表される数時間前からフランスでも報道されていました。

 この石破首相の辞任は、自民党分裂回避のためと、しっかり見られているとともに、世論調査では、石破首相の支持率が上昇していたにもかかわらず、国民の声よりも党内の分裂を避けるために自民党の重鎮たちがこぞって圧力をかけ、辞任を求める署名を集めたり、数日前には、森山幹事長をはじめとした自民党幹部4人が集団辞任を申し出ていたと報じています。

 「彼の辞任理由は、表向きには、自民党が過去15年間で最悪の結果となった選挙結果の責任をとるということになっているが、しかし、自民党の敗北は彼の責任ではなく、国民の政治体制への不信感に起因するもので、保守党内の裏金の存在や党自体の秘密資金提供、そして統一教会との関係が明らかになったことなど、日本の民主主義の不調が露わになったためである」

 「むしろ、石破首相は、長年、これらの国民が不振を感じている自民党の元凶のアウトサイダーとして知られる存在であった」

 「首相就任後もずっと党内圧力が続いており、国内政治においては、彼の思うようには事は進まず、人気は停滞していたものの、近々では、米国との貿易協定が締結され、米国の関税が25%から15%に引き下げられ、国民からの支持率は急上昇を見せていた最中に起こった首相の辞任劇で、皮肉なことに、国民の声を無視して党内政治を優先した自民党への反感がさらに高まるものになったのではないか?」

 と、フランスのメディアは、事の概要をこんな風に報じています。

 フランスも現在、内閣存続が危うくなっている中、あまり大きな口をたたけた状態ではありませんし、また、政治の体制も違うので、一概に語れる問題でもありませんが、少なくとも、組閣等においては、世論の趨勢を非常に加味していると思われることが多く、あるいは、そんなに世論に阿る??と思わなくもない時もありますが、少なくとも、支持率上向きの状態の首相に圧力をかけて辞任に追い込むなどという無謀な真似はしないであろうと思うのです。

 自民党内の重鎮とやらが、どのようにお考えかはわかりませんが、少なくとも海外のメディアにまでお見通しの惨状がなぜ?おわかりにならないのか?と暗澹たる思いにさせられます。


石破首相辞任のフランスでの報道


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