2024年12月14日土曜日

思いっきりジタバタした感じのフランスの首相任命劇 新首相はフランソワ・バイルー氏 73歳

  


 思い返せば、このゴタゴタは、マクロン大統領が欧州議会選挙の結果を受けて、誰もが驚く国民議会の解散を宣言したことから始まっています。

 マクロン大統領が2期目を迎えてからの首相任命は、当時の世論では、新しい首相には、女性を!と望む声が多かったこともあってか、女性で史上2人目である「エリザベス・ボルヌ氏」が任命されました。 

 彼女の就任期間中にマクロン大統領は、「年金改革」に取り掛かり、ボルヌ首相は、憲法49条3項を発令(首相の権限において、採決せずに発効するという手段を取り、フランス中がデモや暴動で大荒れになり、パリでもあちこちに積みあがるゴミの山が燃やされる大変な騒ぎになりました。

 結果、彼女は20ヶ月で退陣、彼女の次には、今度は、史上最年少34歳のガブリエル・アタル氏が首相に就任しました。これも、当時、彼はフランスの政治家の中で一番人気!などと騒がれていたので、(そもそも彼はマクロンが政界での育ての親的存在でもある)彼の人気に乗っかったというか利用した感がないこともありませんでしたが、実際に彼は、マクロンの教え子?だけあって、非常に弁がたち、抜群の行動力の持ち主でもありました。

 しかし、そんな彼もマクロン大統領の突然の国民議会解散宣言により、首相在任期間は8ヶ月で終わってしまいました。

 そもそも、マクロン大統領の突然の宣言は、当時の内閣の面々もウンザリしている感じがあり、彼はますます求心力を失っていく感じになったのです。

 そして、選挙の結果は、ますますマクロン大統領を難しい立場に追い込むものになり、新たに首相を任命する段になって、彼は大いに悩み、間にパリ・オリンピック・パラリンピックが挟まったこともあるとはいえ、首相任命までに2ヶ月近くを要してしまったのです。

 2カ月近くもかけて熟考したはずの首相は、わずか3ヶ月で不信任案が持ち上がり、あっさり可決し、退任に追い込まれ、その翌日にマクロン大統領は国民に向けての演説で数日以内に首相任命を約束しましたが、約束から大幅に遅れ、1週間経過した時点で、あと48時間以内には、任命すると発表して、もう最後の1日は、分刻みでその動向が注目されていました。

 新首相が任命された当日は、首相候補として名前が挙がっていたフランソワ・バイルー氏宛に早朝5時にマクロン大統領から「首相候補からは外れた」という電話が入ったという話が入ったと報じられてもいました。

 また、午前8時30分にエリゼ宮に表れたバイルー氏はマクロン大統領と1時間45分にも及ぶ会談が行われ、フランステレビジョン閣僚担当者は「このやりとりは、非常に緊張したものであった・・」と交渉が難航しているかのように伝えられていました。

 その後、マクロン大統領は、日程がずらせなかったのか?エリゼ宮にて、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長にレジオン・ド・ヌール勲章を授与。

 マクロン大統領は、前日夜にポーランドから帰国したばかり。朝5時にフランソワ・バイルー氏に電話したとすれば、一体、いつ寝ているの?という感じでもあります。

 いずれにしても、これでようやく首相が任命されたわけで、フランソワ・バイルー氏の力量は、これから厳しく注目されていくと思いますが、昨日、首相官邸で行われた首相交代のセレモニーでの新旧両首相の挨拶を見ると、フランソワ・バイルー氏の方が人に訴えかけるものをもっていて、鉄仮面のような前首相よりも人間味が感じられる気がしました。

 しかし、退任させられた首相はともかくも、結局はマクロン大統領がぐらついているのは、この首相任命がこれだけジタバタしているのを見ても明白なことで、世間の目から見れば、マクロン自身が行き詰っているという見方が強く、「ノートルダムが再開しても、奇跡は起こらない!」などと言われ、マクロン大統領の信頼度は、彼が政権を握った2017以来、最低レベルに陥っていると言われています。

 縁起をかつぐわけではありませんが、この首相任命が行われたのは、奇しくも「13日の金曜日・・」なんだか不吉な感じがしないでもありません。


フランス新首相 フランソワ・バイルー


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2024年12月13日金曜日

HAS(高等保健局)が16歳からの性転換への無料アクセスを検討

  



 性転換という、なかなかセンシブルな内容なうえに、これを無料で行えるように、そのうえ、その該当年齢を16歳から・・ということを、HAS(フランス高等保健局)が提案しているというのは、なかなかセンセーショナルではありませんか?

 性転換については、HAS(フランス高等保健局)は、実は3年前より「連帯保険省から性転換を望む人に対応する際に医療専門家が採用すべき適切な実践方法を決定するように委託」されていました。

 そして、今回、ル・フィガロ紙によって、同機関が作成した医師と介護者向けの実践に関する推奨事項が公表されています。

 内容は、基本的には、「16歳からの性転換に無料で対応する」ということで、まず、これを希望する人々の「リクエスト」から始まり、「トランスジェンダーの人々に適応した歓迎的な環境、専門的知識を持つ訓練された医療専門家によって受け入れられる必用がある」と説明しています。

 HASは、この性転換に時間がかかりすぎることを避けるために、「充分な情報を得たうえで、希望するトランスジェンダーの人々にまず、ホルモン剤を投与すること」を推奨しています。また、同時に希望するトランスジェンダーの人々が遅滞なく、性別適合手術を受けられるようにすること」も推奨しています。

 ただし、16歳から18歳の未成年者の性別変更に関しては、HASは他の専門家と相談して決定することを推奨してはいますが、同時に「親が子どもの性転換に抵抗している場合は、親権の喪失や解放に繋がる可能性もある」ことも付け加えています。

 これは、まだ提案されているという段階ではありますが、この試みの根底には、「トランスジェンダーは、もはや病理とは考えられていない」という理論が存在します。

 しかし、この提案はなかなか詳細な広範囲にわたるもので、検討されている手術の中には、「顔の女性化または、男性化を目的とした鼻整形、顔面輪郭整形、毛髪移植」、などのほか、「乳房切除術や乳房インプラントなどの胸部手術」、「生殖器」、「音声」などの手術も含まれています。

 現在、フランスでは18歳未満の性器手術は行われておらず、このHASの提案が通過通れば、この年齢が引き下げられることになります。

 よく言えば、なかなか進歩的だとは思いますが、現在、政府は深刻な財政難に直面し、一般診療の自己負担が増え、保険適用率が低下しているなか、一気に無料という話は、なかなか抵抗の声もあがりそうな話です。

 しかも、16歳から18歳となると、ますます話は複雑かつ深刻です。

 ヨーロッパでは、この問題に関して、フランスよりも慎重な対応をとっている国もあり、イギリスは、未成年に対する思春期阻止薬の処方を中止し、スウェーデンも同様の措置を採用しています。

 いずれにしても、現状では、性転換どころか、フランスでは専門医へのアクセスには、2~3ヶ月は余裕で待たされるのがふつうで、そんなに簡単にこのサービスが一気に進むとも思えませんが、全額補償というのは、他にはなかなか見られないことです。

 今、フランスの医療費で全額補償で思い浮かぶのは、「ガン治療」(一般標準治療)に関してですが、このトランスジェンダーは、それに匹敵する扱いということなのでしょうか?


16歳から性転換無料


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2024年12月12日木曜日

Navigo・RER/RATP 値上げと特別暫定財政法案

  



 はっきり言って、現在のフランスは歴史的と言われる首相退任と内閣解散により、ガタガタの状態で、もう年末まであと半月くらいだというのに、来年からは、こうなる・・と決まりかけていたことが、全て?ストップして、何がどこまで変わることになったのか?よくわからない状態が続いています。

 突如、退任することが決まったバルニエ政権が提案していた予算案の中にあった連帯税が大幅に引き上げられる(3倍)話なども、ペンディングとなったために、この連帯税の値上げを見込んで航空券を販売していたエアフランスなどが、連帯税値上がり分の金額を払い戻すという話や、逆にこれまでインフレ対応として、行われてきたレストランチケット(多くの会社が使用している昼食代の補助のチケット)での食料品のお買い物(2024年末までという期限付きだった)の期間延長なども、決定しないままにとりあえず終了するということで、お買い物には使えないようになってしまったり・・こんな話もあんな話も出ていたけど、あれらは、結局、どこまでが決まって、どこまでが決まっていないのか?よくわからず、混乱状態になっています。

 首相の辞任が決まったのが12月4日の夜、翌日、マクロン大統領が国民向けに演説を行い、首相は数日中に任命することと、特別暫定財政法案を提出することを発表していました。

 しかし、1週間経っても首相は決まっておらず、昨日、特別暫定財政法案だけは提出されたようです。

 この特別暫定財政法案は、とりあえずの公共サービスを継続することを保証するためのもので、12月31日までには、とりあえず、この特別暫定財政法案を発効できるようにするためには、来週には、議会で検討されるまでに持っていかなくてはなりません。

 今回、提出された法案の内容は、主に3つの項目で、

① 既存の税金を徴収する権限(新たな税制措置は組み込まれないもの)

② 財務省が公共サービスに資金を提供するために債券を発行する権限

③ 4つの社会保障機関に対する借入の認可

 そんな中、Navigo(定期券のようなもの)が88.80ユーロに値上げされることや、鉄道・RERは2.50ユーロ、バス・路面電車が2ユーロの均一料金になることは決定したというので、値上げだけが決まるのは、なぜ?と思ったら、これは、イルドフランスモビリテ(イルドフランス圏内の公共交通機関)の決定事項で、つまりは、地方議会の管轄で国会で審議される話ではなかったということです。

 ともかくも、この首相退任・内閣解散の波紋はやっぱり大変なことで、まず首相が決まったとしても、それから組閣、この特別暫定財政法案を年内に発効するまでで恐らくギリギリで、2025年の予算案は、2025年に入ってから本格的に審議されるという不安定で、効率の悪いことになります。


Navigo値上げ 特別暫定財政法案


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2024年12月11日水曜日

娘へのクリスマスプレゼント

  


 この時期、パリの街中に出ると、クリスマス商戦とも言われる感じの、もういかにもクリスマスプレゼント用の商品が山積みになっていて、どうにも煽られている感じが否めないのですが、そんな様子を見て回っているのも楽しいです。見るだけですが・・・。

 娘がまだ、サンタクロースを信じていた頃はそんな娘がクリスマスの当日に目を覚ますと同時にクリスマスツリーに突撃して、目を輝かせてプレゼントを開けていく様子が可愛くてたまらなくて、夫とともに、いそいそと準備して、前もって相談して他からのプレゼントと被らないようにして、きれいにパッケージして当日まで戸棚の奥の方に隠していました。

 あの頃は、私からと夫から・・そして、夫の職場などや日本の私の両親や叔父や叔母たちなどからも娘宛てにクリスマスプレゼントが届いて、いったい一人にどれだけプレゼント??と思うほど、プレゼントが山積みになっていた時期もありました。

 しかし、正直なことを言えば、この時期、クリスマスプレゼントに!と日本から送ってくれた小包は、何回か盗難に遭って、受け取れなかったまま紛失・・という目にも遭っています。

 今は娘も独立し、本来はクリスマスなどの行事はあまり好きではない私は、静かにいつもと同じ一日を過ごしているのですが、さすがに離れていても娘は娘。プレゼントくらいは、なにか送りたいな・・と思っていました。

 娘は、若い女の子であるのに、あまり物欲がない方で、贅沢なものも好まないので、たいていは、一緒に旅行などをして、「これ、お誕生日プレゼントの代わりね・・とか、クリスマスプレゼントの代わりね・・」などと言って済ませてしまうのですが、今年のクリスマス近辺は一緒に旅行できる機会もありません。

 娘が二十歳になった時に成人式、これで一区切りというお誕生日でもあったために、私は何か記念になるような、長い期間使えるような、ちょっと良いものを送りたいな・・と思って、当時、仕事の関係で伝手のあったエルメスの時計を買ってあげようと思って、一応、娘にお伺いをたてたところ、「エルメスはあんまり好きじゃない・・」とバッサリ。

 それがあまりに衝撃的で、結局は何をあげたんだったか、覚えていないほどです。

 そして、今年、先日、電話で話をしていたときに、「クリスマスプレゼントに、なにか欲しいものない?」と聞いてみたところ、「あんまり思いつかないな・・」という返答で、「相変わらず、物欲ない娘だな・・」と思いながら、「そうそう!そういえば、携帯、そろそろヤバそうだって言ってたから、クリスマスプレゼントに携帯買ってあげようか?」と、私はとても良いこと思いついた!と思って提案したのです。

 ところが、娘が言うには、「携帯は、寿命がそんなに長いものではなくて、数年ごとに買い替えるような消耗品だから、そういうのは、ちょっと違うな・・」などというので、これまたビックリ!

 「でも、いつもは一緒に旅行したりして済ませているじゃない?」と言うと、「それはそれで想い出が残るからいいの・・」と、娘の中にはプレゼントへのこだわりがある模様。

 消耗品は違う・・ということは、私がいなくなってもずっと大事に使い続けることを考えてくれているのか?と思うとますますハードルが上がって難しくなるのでした。


クリスマスプレゼント


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2024年12月10日火曜日

メトロで見かけた高齢のおしゃれな女性に少し襟を正す気持ち

  



 最近の私は、外出する際など、絶対に危ない目に遭いたくないというのが第一で、おしゃれよりも安全が優先で、それでも、一応、見苦しくない程度の服装にはしているものの、できるだけたくさん歩けるように靴はスニーカー、バッグなども目立つものは避け、バッグ自体を持たずに、エコバッグよりはちょっとはマシかな?という程度のショッピングバッグを持って歩いています。

 友人とランチに行ったり、ちょっと良さげなお店に行ったりする時は、それでも一応、若干マシな格好をしているつもりでも、まあ、日本にいた頃(若い頃)の私からはちょっと考えられないほど、おしゃれはしなくなっていて、お化粧も5分ほどで済む程度の軽いお化粧しかしなくなっています。

 私は、これで、全く危ない目に遭わなくなって、パリを歩き回るのは、やっぱりこの程度がラクだし、狙われずに安心・・とすっかりそんな状態に慣れきってしまっています。

 しかし、季節柄もあるのか、たまにメトロの駅などで、年配の女性がちょっとこじゃれた着こなしで上質な感じのコートに素敵にマフラーを合わせていたり、先日は、全体的にシックな服装に赤いバッグと赤いエナメルの靴を合わせている上品そうなご婦人を見かけて、なんか、年齢を重ねても、こうしておしゃれをして(本人にとっては、ふつうのことで、特におしゃれをしている感覚ではないのかもしれないけど・・)出かける習慣を持ち続けるのっていいな・・大切なことだな・・と、私も安心、安全、快適性・・ばかりを言い訳にしないで、少しはおしゃれをしないとな・・と、ちょっと襟を正すような気持ちになりました。

 ちなみに彼女、うっすらと品のよいお化粧もちゃんとしています。

 パリは、若い人々も比較的、ラフな格好をしている人が多いですが、時々、真似したいようなおしゃれをしている人を見かけることもあります。特にかなり高い年齢層の場合、歩きやすいスニーカーが多い中、それなりにちゃんとした靴を履いている人も一定層存在します。

 健康のため、できるだけ歩くことを心掛けるようになって以来、私などはもっぱらスニーカー一辺倒で、最後にまともな靴を履いたのはいつだったか?もう思い出せないどころか、靴を履いて出掛けると考えただけで、ちょっと気が遠くなるくらいに憂鬱になる感じです。

 でも、そういえば私は、実は以前は靴というものが大好きで、若い頃は本当に父に「おまえの足は何本だ!」と怒られるくらい靴を沢山持っていたのです。

 いつの間にか、色々、理由をつけて、ラフでラクな服装にまっしぐらに向かっていましたが、歳を重ねていくからこそ、心して、たまには、まともな靴を履いて、ちょっとだけおしゃれな服装をしてでかける機会も持った方がいいな・・と、この高齢の女性からちょっと教えられた気がするのでした。


おしゃれ 


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2024年12月9日月曜日

フランスの教育レベル PISA(International Program for Student Assesement)ランキング

  


 PISA(International Program for Student Assesement)は、世界中の教育システムの有効性を測定するためにOECD(経済協力開発機構)によって国際的に実施される調査です。

 フランスはこのレポートでランク付けされる国のひとつであり、日本もまた、このランキングの中に登場する国のひとつです。

 PISAランキング(留学生評価プログラム、またはフランス語で学生の成績を監視する国際プログラム)はOECDのプログラムで15歳の学生の学力を読解力、数学、科学の3つのカテゴリーで分析し、これにより、さまざまな国の教育制度を評価および比較することができます。

 PISAの報告書は3年ごとに発行されていますが、最新のものでは、フランスは特に急激に数学の学力が低下していることが問題視されています。今回のものは、2022年のデータに基づいたものであると言われ、パンデミックによるロックダウンのために学校に通えなくなった期間の悪影響ではないか?とも言われていますが、ロックダウンになったのはフランスだけではないわけで、なにか別に原因があるような気もします。

 それでも総合的に見れば、参加国85ヵ国のうち、フランスは26位、読解力29位、科学でも26位となっており、フランスはOECD参加国の平均内にあります。

 この調査はフランスの335の教育機関が評価に参加し、これらの教育機関から無作為に選ばれた8,000人の学生のデータが使用されています。

 フランスが急激にそのポイントを落としているという数学に関しては、圧倒的にアジア諸国が上位を占め、1位シンガポール、以下、マカオ(中国)、台湾、香港、日本となっています。

 私は数学は好きではない科目でしたが、「日本人は数学が得意である・・」というイメージがあるらしく、大変、低次元の話ではありますが、アフリカにいた頃におつりの計算を暗算したら、家にいたボーイさんにひどく感心され、「あ~でも、日本人だから数学が得意なのは当然だね・・」と言われたことにビックリし、心の中でこれは数学ではなく算数・・などと思った(アフリカの人にも日本人は数学が得意だというイメージがあることを知ってビックリした)のを覚えています。

 ちなみに、ヨーロッパで最もこのランキングの上位にいるのは、数学では、エストニアとスイス(7位と8位)で、読解力ではアイルランドとエストニア(2位と6位)、科学ではエストニアとフィンランド(6位と9位)となっています。

 単にランキングだけだと、あんまりピンと来ないし、同じ国でも学校によって、ずいぶん違うので、一概には言えないと思うのですが、それでもきっと、けっこうな違いがありそうで、その内容にも興味が湧いてきます。



PISA(International Program for Student Assesement)


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2024年12月8日日曜日

ノートルダム大聖堂再開の記念式典を見て感じたこと

  



 ノートルダム大聖堂の再開の日は、日中は晴れていたものの、夕刻から雨が降り出しました。この日は、午後から多くの局がノートルダム大聖堂についての報道を行っていましたが、この記念式典にアメリカ次期大統領であるトランプ氏が参加することや、それに加えて、ウクライナのゼレンスキー大統領までやってきて、この式典が始まる前に、マクロン大統領も交えて3者会談が行われるということで、中継はノートルダム大聖堂と同時にエリゼ宮の生中継が行われ、ノートルダム大聖堂という宗教的施設の再開というには、なんとも政治色の強いものになりました。

 エリゼ宮にトランプ氏が表れたのは、午後17時少し前、マクロン大統領がお出迎えして、彼らはすぐに中へ、その40分後くらいにゼレンスキー大統領が到着して、彼も急いでエリゼ宮の中へ、3者会談は、45分程度でそんなに長時間ではありませんでしたが、このスリーショットはかなりインパクトの強いものでした。

 その後、彼らは大勢の招待客とともに、大聖堂の最前列に座して記念式典に参加しました。ちなみに最前列は各国からの要人とフランスの政治家の面々。大勢が招かれたとはいえ、限られた招待客の中には、イーロンマスク氏の顔も見えました。

 セレモニーそのものは、宗教的な儀式ですが、5年前の大聖堂の火災の際に消火活動に参加した消防士たちの一部も招かれており、彼らの命がけの救済を讃える場面などもあり、大聖堂正面のライトアップには、「MERCI(ありがとう)」の文字が浮かびあがりました。

 ノートルダム大聖堂は、1789年11月以来、宗教的施設ではあるものの、国の所有物ということになっているのですが、それにしても、あまりにも政治色が強く、フランスの象徴的な建築物であるノートルダム大聖堂の再開という喜ばしい瞬間ではあるものの、あまりに国(政治家)が前面に出過ぎていて、げんなりする感じがありました。

 このセレモニーの前のセンセーショナルな3者会談も、この機会だからこそ集まった機会を利用したのは合理的といえば、合理的なのかもしれませんが、どうにもスッキリしません。

 マクロン大統領がこのセレモニーの始まる前から、終始取り仕切っている感じだったのも国の所有物であれば、当然なのかもしれないとも思いつつ、そこが宗教施設であることを考えると「政教分離」はどこへ?と思わずにはいられません。

 この感じを見ると、式典の招待を断ったと言われるカトリック教会の大司教の想いがわからないでもない気がしますが、それでも、「フランスにおける教会再生の預言的なしるしを期待している」とのメッセージが届いています。

 また、イエズス会も「ノートルダムへの訪問者を無料で歓迎し続けることを期待している」と訴えています。

 それもこれも、このノートルダム大聖堂再開を前にフランス政府(文化大臣)から、ノートルダム大聖堂に入場料5ユーロを徴収する・・などという提案があったりしたことがある経緯からのことで、宗教施設としての本来の位置づけへの危機感をこのカトリック側が感じているということでもあります。

 政教分離に関する1905年以来の法律では、ノートルダム・ド・パリなどの歴史的建造物に分類される教会や大聖堂へのアクセスは「無料」のままでなければならないと規定しており、この法律の第 17 条には、「建物の訪問および機密の動産の展示は公開され、いかなる税金や料金も発生することはない」となっていますが、政治家の手にかかれば、法律自体を変えてしまうこともできるわけです。

 この修復工事に関しても、ステンドグラスは火災の被害に遭っていなかったにもかかわらず、現代的なデザインのものに取り換えて、既存のものは博物館に移動させるというプロジェクトが多くの専門家の反対にもかかわらず、フランス政府によって、強引に進められていた経緯もあり(結果的にどうなったのかはわかりません)、力関係のバランスが政府に偏っている感じがあります。

 それに加えて、今回の外交の場と化したような式典になんだか素直に感動できないところがありました。

 ほんの2日前には、首相の辞任に際して、厳しい表情でスピーチをしていたマクロン大統領、この日は得意満面の笑顔で大変、満足そうでした。


ノートルダム大聖堂再開


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