フランス最大手製薬会社「サノフィ」がフランス人がもっとも利用している薬「ドリプラン」等の一般市販薬部門の子会社の株式をアメリカのファンドCD&Rに50%売却することが発表され、ほぼ、合意に達したというニュースは、かなり衝撃的に取り扱われていました。
サノフィは、この株式売却に関して、「より収益性の高い医薬品に注力したい(同社の主力分野である免疫学での治療法の開発を優先したい)」という方針によるものであるという説明をしていましたが、これは、フランスの大企業(正確には、ドリプラン等の一般市販薬部門は子会社になっている)とはいえ、一民間企業であり、国が介入できる問題ではないと思われてきました。
この薬はパラセタモール(鎮痛・解熱剤)で、実際には、すでに国内で生産されている量は減少していて、その生産は海外で行っているために、いざというとき(パンデミック時など)に薬が不足して、国内に入ってこないような事態が起こったために、今後は、国内生産に切り替えていくと発表していました。しかし、この発表をしたのは、一方的に政府が発表しただけで、それに対してのサノフィとの話し合いが水面下で行われていたのかどうかは、不明です。
しかし、今回のサノフィのドリプラン等の子会社売却で、フランス国内にあるドリプランを製造していた工場等は大騒ぎ・・しかし、子会社株の50%が売却される以上、収益性を追求して・・というのであれば、現状が継続されることは考えにくいと思われてきました。
その後、もう為す術もなく事態を見守るしかないと思いきや、このドリプラン問題について、経済財務大臣(フランス政府)は、突然、このサノフィの子会社の株式を取得するために、サノフィ、アメリカのファンドCD&Rの間で「三者合意」に達したと発表しました。
すでに話がまとまりかけていたサノフィとアメリカのファンドCD&Rとの間によく割って入れた・・というか、なんらかの計画ありきで、投資するつもりであったこのファンドCD&Rが同意したな~と思うのですが、これまた政府もよく割って入れたな・・と驚いています。
フランス政府は、この株式取得をBpifrance(フランス公的投資銀行)を通じて行うことも同時に発表しています。
このBpifrance(フランス公的投資銀行)は、フランス経済の原動力であり、ビジネス創出に対する支援やマネジメントに必要なパートナーシップ、投資を行っているところで、協調融資、共同投資、自己起業家コミュニティ、地域、フランス 2030、DGE、DG Trésor、CDC、省庁などとパートナーシップを組んで国を動かすことを可能にしているメカニズムを持っていると公表しています。
つまり、今回は、政府はBpifranceを通じて、「雇用、生産、投資」に関する国の要件を確実に遵守することを目的として、株式を取得し、この会社の取締役会に参加し、介入することができるようになるということで、このドリプランの国外退去?の防波堤になることができるとしています。
しかし、このサノフィ・ドリプランに関する報道は、二転三転しているので、今後もまた、ビックリ展開があるかもしれませんが、国民の健康を守る(必要な薬品の国内生産を確保)という約束を必死に政府が守ろうとしている姿勢には、すごいな・・と思ったのです。
このビックリ展開は、このBpifranceが取得する株式はたったの2%とのことで、これでは、大きな影響力はないのでは?と再び、不安の声が上がっています。
ドリプラン Bpifrance(フランス公的投資銀行)
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