2024年8月20日火曜日

戻ってきたRATP(パリ交通公団)の検札官とバスのチケット

  


 パリオリンピック期間中は、 パリ市内のバスやメトロで全くチケットのコントロールの検札官の集団を見かけることはありませんでした。おそらく、オリンピックのための駅の警備や案内係等のために多くの人員を割かなければならなかったのと、混雑時の混乱を避けるためではなかったかと思われます。

 パリオリンピックの開会式の一週間ほど前から、パリのバスやメトロの料金は、通常の倍近くに値上がりしましたが(月額、年額のNavigo(定期券のようなもの)購入済みの場合を除く)、このオリンピック料金は、オリンピックが終わった現在もまだ続いています。

 パラリンピックを控えているということもあるのでしょうが、「オリンピックが終わって、パラリンピックが始まるまでの期間も値上げしたままなのは、酷いではないか!どういうことになってるんだ!」という声も上がっているようですが、技術的な問題を理由に価格は元に戻っていません。

 私は、Navigo(定期券のようなもの)を持っているので、この値上げの影響は受けていないのですが、オリンピック期間中のことを考えれば、この期間は駅が閉鎖されていたり、迂回を余儀なくされたりと、通常よりはずっと不便で、これでいつもの2倍の料金のチケットを購入しなければならない人々は気の毒だな・・と思っていました。

 現在は、未だ閉鎖されている駅もあるものの、私がよく利用するバスなどの迂回経路などは元どおりになり、昨日、バスに乗ったら、久しぶりにコントロールと呼ばれる検札官が乗っていたのでビックリしました。

 そもそも日本(東京)のバスには検札なんていうものはないわけで、皆、入口から乗る時に運転手さんがチェックして済むわけなのに、パリではみんなが入口から乗るとは限らないし、そのうえ、入口から乗っても、平気でチケットなしに乗って行く人までいるからこういうことが必用になるというところなどは、日本とは民度が違うと言わざるを得ません。

 運転手さんの方も注意をしようものなら、逆ギレされてボコボコにされる・・なんてことも無きにしも非ずなわけなので、多くの場合は、この逆ギレされないように口で注意せずに、あらかじめ録音されたものを随時、流すというケースが多いような気がします。

 昨日は、どういうわけか、その検札官たちは、バスの入り口付近にいたので、もし、チケットを持っていない人がいれば、その場で何食わぬ顔をして、運転手さんからチケットを買えばよいので、なんだかあんまり意味がない?ような気もしたのですが、そこに乗ってきた小さい旅行用のキャリーバッグを持った明らかに観光客らしき子連れの女性がチケットを買おうとして、運転手さんに10ユーロ札を出したら、お釣りがないと言われていて、小銭がないなら、ネットで買ってくださいと言われて、苦労していました。

 バスに乗るときにその場で運転手さんからチケットを買っている人というのは、時々、見かけるのですが、お釣りがないと断られているのは初めて見て、観光客相手にネットで買えというのは、そりゃないでしょ!いつもの倍額取ってるのに・・この冷たい対応は何なの?と思ったわけです。お釣りを用意していないのは、明らかに運転手さんの不備なのに、申し訳ないという感じは微塵もなしです。

 観光客の場合、必ずしもネット環境が整った携帯を持っているとも限らないわけで、私がもし、外国で言葉もよくわからない国でそんなことを言われたら、どうしよう?と思ってしまうと思うのです。

 こういうことがあるから、パリは感じが悪い!と言われてしまうのだろう・・と思った次第です。

 現在はまだパリはいつもよりも空いているので、バスもメトロもあまり混雑することもなく、駅などもオリンピックの余韻?でまだ清潔さを保っているので、やっぱり今の季節はよいな・・などと思うのですが、やっぱりところどころで、こういう場面に出会うのがパリ・・だって、カード払いもできなくて、お釣りを用意しないで何かを売るって、ちょっとあり得ないことです。

 駅ならばともかく、バスの場合は、チケット売り場がバス停にあるわけでもないのですから、やっぱり酷い話です。

 こうして観光客の立場にたってみれば、やっぱりまだまだパリには、困ったところがけっこうあるのかもしれないな・・と思った日でした。


パリのメトロとバス


<関連記事>

「公共交通機関のトラブルに遭遇し続けた1日」

「RATP(パリ交通公団)の検札は観光客にも容赦なし」

「パリ市内のバス RATP(パリ交通公団)キセル乗車の取り締まり」

「大所帯でやってくるパリのバスの検札」

「パリのメトロは乗客に病人が出ても停車しない?」

2024年8月19日月曜日

アラン・ドロンの訃報 「サムライは死んだ・・」

 

         


 ここ数年、アラン・ドロンについては、彼の子どもたちどうしの家族のいざこざばかり(父親の治療をめぐって弁護士を介して衝突したりしていた様子)が大きく報じられてきました。

 本当のところの真相はわかりませんが、かなり彼自身がすでに心身ともに正常な状態ではなかったようで、最後には彼の財産等も含めて、司法監督下におかれていました。

 彼がフランスの映画界における偉大な存在であることは当然、知っていましたが、その度に流れる、彼が公に姿を現した2019年のカンヌ映画祭の名誉パルム賞を受賞した時の様子には、すでにかなり痛々しい印象を受けました。

 子どもたちが彼の人生の最後の数年に寄り添ったパートナーを追い出し、その後は子供たちの間で諍いを起こす様子は、カンヌ映画祭で見た痛々しい彼の様子を考えるに悲惨としか言いようのない感じがしていました。

 死の8か月前には、彼は後見判事によって司法的保護下に置かれており、この措置は春に「強化保佐権」に変更され、財産管理の完全な自由を剥奪され、自身の医療についてのみ一定の決定を下すことを認める追加措置となるというドロドロ劇にまで突入していました。

 昨日、彼の訃報を知ったのは、朝、Xのタイムラインでしたが、それを見て、不謹慎ではありますが、一瞬、ようやく自由になれたのだな・・と思ってしまったくらいでした。

 彼がフランスの映画界における大スターであることはわかっていましたが、それにしても、その日のXのトレンドは1日中、彼がダントツ1位、フランスの全てのテレビ局は大幅にスケジュールを変更し、特番を組み、もう彼の訃報と彼の功績を振り返る映像で溢れかえり、20時のニュースもほぼ彼のニュースに終始したくらいでした。

 彼は享年88歳、フランス映画の黄金時代を担ってきた国民的だけではなく、世界的スターで、考えてみれば、他のメディアがあまりなかった時代の彼のような存在は、もう今後、生まれ辛くなってくるのかもしれないと思うと、アラン・ドロンはフランス最後の世界的大スターであったと言えるかもしれません。

 彼に関する報道は、現在、溢れかえっていますが、そのどれもが長いこと長いこと・・。彼の死は、日常から饒舌なフランス人をさらに饒舌にさせるようなエモーションを巻き起こすほどの存在であったことに、あらためて驚いています。

 もちろん、私も日本にいた頃から、詳しくはありませんでしたが、一応、名前と顔が一致するくらいの認識はあり、とにかくハンサムな男性の代名詞のような感じでもあり、実際に美しく、逆に整いすぎていて、むしろ現実感がないような感じがしていました。

 日本人にとって、まだフランスが今よりももっともっと遠い存在であった頃、フランス人の男性はみんなアラン・ドロンみたいなハンサム・・そんなイメージがあったかもしれません。実際に世界的に人気があったアラン・ドロンですが、特に日本ではその人気がすさまじかったという報道もあり、また彼自身にもその自覚があったそうで、彼の訃報を世界中が悼んでいるという映像の一部には、日本での一般市民に向けたインタビューまで報道されていて、「昔、若い頃は彼に似ていると言われたことがある・・」などと答えている男性がいて、思わず吹き出してしまいました。(だって全然、似てない)

 彼の生い立ちから、90本近い彼の出演した作品を振り返る映像が一日中、テレビでは流れていますが、彼の生い立ちは決して裕福ではなく、4歳で両親が離婚してからは、刑務所の看守であった里親に預けられていた時期があり、彼の遊び場は、フレネス刑務所の中庭であった・・とか、「私が本当に幸せだったのは、軍隊にいた時だけだ・・」と語っていたり、美しく整った顔立ちにどこか哀愁を感じさせる影のような部分は、そんなところだったのかもしれない・・と思ったりもしました。

 彼は、人生の終盤に自分の最期については、かなり具体的に考えていたようでもあり、50年以上も所有し続けたロワレ県ドゥーシーにあるブリュレリーの邸宅には、両親のお墓とともに自分を埋葬してもらう場所まで用意しており、行政手続きも取っています。

 もうずいぶん前のインタビューにおいて、「自分が死んだら、そこで、やっと私たち親子は一緒にいられるようになる・・」と語っている場面もありました。

 また、自分自身が亡くなった場合の訃報のタイトルは?という、なんとも大胆な質問に対しては、「サムライは死んだ・・」がよい・・とあっさり答えて周囲を納得させたりもしていました。

 彼の訃報は、「ドゥーシーの自宅で、3人の子供たちと家族に見守られながら安らかに亡くなりました」という子どもたちと愛犬の連名でプレスリリースされました。

 その人の存在の大きさというものは、生前には計り知れないものなのだと、今回も痛感しましたが、フランスでは、彼の訃報は、近来、稀に見る大きな扱いです。


アラン・ドロンの訃報


<関連記事>

「アラン・ドロンの子供たちが同居している日本人女性に告訴状提出のゴタゴタ劇」

「アラン・ドロンの人生終盤の泥沼劇」

「ミスターフランス2024 今のフランスのイケメンはこういう感じ」

「鳥山明氏の訃報が証明したフランスでのマンガ人気」

「エリザベス女王ご逝去のフランスでの報道」

 

2024年8月18日日曜日

WHOが最高レベルの世界的警戒を発令した今回のサル痘はどのくらい危険なのか?

  


 数日前にWHO(世界保健機構)が「サル痘」に関する最高レベルの世界的警戒を発令したというニュースは聞いていました。しかし、まあ、そのうちおさまるでしょう・・と、正直、あまり関係ないような感じもしていて、そのままスルーしていました。

 ところが、このサル痘の世界的流行のニュースはフランスでは、けっこう引き続き報道し続けていて、なんだか不穏な気がしてきました。そもそも毎日毎日、いくらでもあるニュースの中で、特にテレビのニュースの時間枠は限られており、そのニュースに毎日のように食い込んでくること自体、ふつうの話ではありません。

 今は、バカンス中で多くの人々が世界中、あちこちの国を行き来することもあり、このような感染症が拡大する危険性は高いかもしれません。

 特にオリンピックの後、パラリンピックを控えているフランスにとっては、まだまだ世界中から人が集まる場所でもあり、特に警戒しなければならないことなのかもしれません。

 サル痘は2022年にも流行し、その後、今年、再流行の波を迎えており、始末の悪いことに、今回流行しているのは、以前のサル痘よりも新しいクレード 1b 変異種というもので、感染力と致死性がより高いということです。

 コロナウィルスの際も次から次へと現れる変異種というものに、恐れおののいた記憶がありますが、サル痘の場合もまた威力を増した変異種の登場が今回の騒ぎの原因のひとつのようです。

 アフリカ連合保健局がまず、「公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、これに続いてWHOも翌日、最高レベルの世界的警戒を発令。そして、アフリカ以外での最初の症例はパキスタンとスウェーデンで検出されましたが、今後数日から数週間のうちに欧州でも新種の輸入症例が出現すると予想されているとWHOは警告しています。新しい変異種は感染力と致死性がより高く、世界的な蔓延の懸念を引き起こしているというのです。

 2022年には、これまでウイルスが流行したことのなかった先進国を中心に、世界の他の地域に広がり始めましたが、今回の変異種はさらに感染力、致死性がより高くなって流行しているというのですから、WHOが警戒を呼び掛けるのもわからないではありません。

 そして、先週末、ついに、フランスでも、ガブリエル・アタル首相がフランス保健当局はサル痘に対しての最大限の警戒状態をとり、すでにあらゆる事態に対応できるように準備していると発表しています。

 サル痘は、動物から人間に広がるウイルス性疾患ですが、ウイルスに感染した人との濃厚な物理的接触によっても伝染するそうで、以前の株は口、顔、または性器に発疹や局所的な病変が現れるのが特徴でしたが、現在問題となっているクレード 1b 株は全身に発疹を引き起こすようです。

 アフリカで前例のない数の感染者が発生していることに加え、WHOが懸念しているのは新たな変異種の出現で、この新株は以前のものよりも重篤な疾患を引き起こすという点にあるようです。

 また、感染者に幼児が多いことは、主な媒介者として男性同性愛者コミュニティとの性的関係を介して広がった以前の株よりも、汗や唾液などの体液を介して感染がより容易に起こることを示唆していると言われています。

 現在までのところ、比較的、患者は若く、おそらく免疫システムが未熟なため、死亡率ははるかに高くなります。成人(15歳以上)の2.4%と比較して、乳児では8.6%、1歳から4歳までの子供では7.4%、5歳から15歳では3.7%となっています。

 汗や唾液などの体液を介して感染するとなれば、全く油断ならない話です。

 このサル痘のワクチンはデンマークの研究所バイエルン・ノルディック社が製造しており、また、このワクチンは新しいクレード 1b 変異種にも有効であると製造元は発表しています。

 フランスでは1月から4月までに107件の感染者が発生しているそうで、4月以降は毎月20人から25人の感染者を出し続けているようです。この数を多いと見るべきなのか?少ないと見るべきなのか?ちょっと見当がつかない気がしていますが、致死率が高いという点から考えれば、特に常に多くの疾病のリスクにさらされている幼児、高齢者、病人、妊婦などは、注意が必用だと呼びかけています。


サル痘 WHO最高レベル世界的警戒


<関連記事>

「ヨーロッパで相次いで症例が報告されているサル痘がフランスにも上陸した」

「冷凍ピザの次はサラミソーセージにサルモネラ菌 真剣にどうにかしてほしいフランスの食品衛生管理」

「パリ13区にサル痘専門ワクチンセンターオープン」

「冷凍ピザ死亡事故に見るフランスの食品衛生管理」

「史上最悪と言われるブイトーニ冷凍ピザ食中毒事件の賠償には守秘義務が課せられている」




 

2024年8月17日土曜日

フランスの新首相候補の女性 ルーシー・カステッツ 

  


 オリンピックムードの盛り上がりで、一時の騒ぎが嘘のように搔き消されてしまった感のあるフランスの首相任命、新内閣の組閣問題がそろそろ、取り上げられるようになってきました。

 そういえば、マクロン大統領は、ガブリエル・アタル首相からの辞表は受理したものの、オリンピックを滞りなく行うことにまず注力するということで、首相の任命はオリンピックの終わる頃に発表するとしていました。

 そして、フランスでは、大いに盛り上がったパリオリンピックのために、国民のこの内閣組閣への関心も少し逸れた感じもあり、マクロン大統領自身もオリンピック後半になってくると、中継されている試合の会場には、「えっ?マクロン大統領また来てる?」と思うほど足しげく、オリンピックの試合会場に姿を見せており、私が言うのも何なのですが、「仕事してる?」と思うほどでした。

 そして、オリンピックは一応、無事に終了して、一息ついたかと思われるようになった今、ようやく、そういえば、首相はどうなった?とばかりに首相任命問題が取りざたされ始めました。

 どうやら、フランスの次期首相は、ルーシー・カステッツという女性を第一党となった新人民戦線(NFP)が推しており、マクロン大統領もこれに依存はないようで、8月23日には、各会派の議長や党指導者らをエリゼ宮に招き、話し合いを行ったうえ、首相任命の運びとなるようです。

 このルーシー・カステッツという女性は1987年生まれの37歳(さすがにガブリエル・アタル氏には負けますが、やはり若い!)、パリ科学院(通称シアンスポ)、国立行政学院に学び、上海のフランス総領事館(文化武官補佐)勤務を経て、世界銀行のマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策部門のコンサルタント、秘密金融回路、マネーロンダリング、テロ資金供与との戦いを担当する諜報機関である Tracfin、パリ政治学院で経済学教授など、若いながらに、多くの職責をこなしてきた才女のようで、財政、金融に強い人のようです。

 経歴を聞くだけでも、かなりの秀才ぶりがうかがえますが、これに加えて、彼女は約10年間テニス、そしてハンドボールやテコンドーもやってきた、かなりのスポーツウーマンでもあるようです。

 まだ確定情報ではないようですが、マクロン大統領の側近の話として、「それが集団的な要請であり、NFPの政治勢力が意見交換が建設的なものになるのに有益であると判断するのであれば、大統領は明らかにそれに反対しない」、「マクロン大統領は、ルーシー・カステッツを首相に迎える準備はできている」と報道されています。

 しかし、あくまでも負けず嫌いのマクロン大統領らしく、彼自身は、「誰を首相に据えること以上に議会の多数派を築くことが大切である」と語っているようで、その点においては、ルーシー・カステッツ氏もRN以外の国会議員に書簡を送り、「NFPの枠を越えて議会の多数派を築くよう説得する」つもりであると説明しています。

 どちらにしても、もうあっという間に8月も半ばを過ぎ、あと2週間ほどで、もうフランスは新年度が始まり、新たにやらなければならないことが山積みなはず。

 マクロン大統領にしても、さすがにもうこれ以上は引き伸ばせないギリギリのタイミングなのだと思います。

 新年度になれば、皆がバカンスから戻り、学校も始まり、仕事も再開するとともに、フランスではデモも再開されます。

 フランスの首相は、大統領が任命するというカタチになっているし、日本の首相とはまた、位置づけが異なります。このルーシー・カステッツという方がどんな感じの方なのかはまだよくわかりませんが、とりあえず、それが37歳の女性らしいというだけでも、ずいぶんと違うものだな~と思っているのです。


フランス新首相 ルーシー・カステッツ


<関連記事>

「フランス国民議会選挙 予想外の結果と投票率の高さ」

「一難去ってまた一難のフランス・・首相任命」

「マクロン大統領の国民議会解散と選挙の危険な賭けの裏にあった別のシナリオ」

「国民議会解散 マクロン大統領の驚きの決断に政治的激震」

「フランス新首相にガブリエル・アタル氏就任 史上最年少34歳の首相」

2024年8月16日金曜日

パリのメトロ9号線の車内で侮辱された女性が告訴状提出

  


 オリンピック期間中は平和だったかに見えていたパリのメトロの中で、一人の男がユダヤ人の女性及びその家族を攻撃する暴言を吐き、つばを吐きかけるという事件が表沙汰になりました。

 事件は、早朝のメトロ9号線の車内で起こり、一人の男がユダヤ人に向け反ユダヤ主義的攻撃を続けていたところ、この女性は、恐怖を感じつつも、勇敢にも携帯で撮影しながら、「黙りなさい!やめなさい!と言いながら、この男が暴言を吐き、彼女たちを攻撃し続ける模様を撮影し続け、警察に苦情を申し立てる!」とその言葉どおりに彼女は本当に警察に告訴状を提出しました。

 イシー・レ・ムリノー警察署(オー・ド・セーヌ)はこの女性からの告訴状を受理し、この男は現在、指名手配されています。

 直接、本人には関わりのないことで侮蔑を受けたりすることがあり得ないことではないパリではあり、実際に、コロナウィルスが発症したばかりの頃に、中国がその拡散元であったことが公になり始めた頃、いわれのないアジア人差別が沸き起こったことがあり、私自身は、直接そのような被害に遭ったことはありませんでしたが、アジア人が人々の嫌悪の攻撃の対象となったこともありました。

 今回のユダヤ人への非難や攻撃は、明らかにハマスとイスラエルの問題が影響していると思われ、この被害者の女性の撮影した動画の中で、この男は、「あなたたちは子供を殺している」、「あなたたちは人道に対する罪を犯している」、「ヒットラーは正しかった、君たちは皆、命を奪われなければならなかった・・」などと物騒なことを叫んでいます。

 メトロの中にはこのような直接的な侮辱行為ではなくとも、時々、おかしな人をみかけ、なんとなく、怖いな・・と思うこともありますが、パリでも多くの場合は、皆、なんとなく気にしつつも見て見ないふりをしているのがふつうです。また、パリのメトロの車内は比較的狭い場合が多いので、このような明らかにおかしな人物がいた場合は、恐怖感も大きく感じられると思います。

 若い女性ながら、ものすごく勇敢な女性だ・・と感心していたら、実にこのような反ユダヤ主義的な攻撃は1,200件以上も報告されており(ハマス・イスラエル問題以来)、内務大臣ジェラルド・ダルマナン氏は、2024年上半期だけでも「887件の反ユダヤ主義行為」が記録され、これは昨年の同時期のほぼ3倍であると述べています。

 争いがまた別の場所で争いを呼び、放置すれば、エスカレートしかねないこの争い。私だったら、このようにののしられても、黙って我慢してしまいそうなのですが、もしかしたら、この女性、これが初めてのことではなかったのかもしれない・・度重なれば、自分たちの命も危険にさらされるという危機感を覚えていたのかもしれません。


メトロ内での侮辱行為


<関連記事>

「私はウィルスではない フランスでのアジア人差別」

「災害に免疫のないフランス人がパニックを起こして、アジア人全体を傷つけている」

「ロックダウン以来3ヶ月ぶりのパリのメトロ」

「12歳の少女を襲ったパリのメトロの痴漢は、あっさり釈放」

「パリのメトロ6号線でコートがドアに挟まって死亡事故」

2024年8月15日木曜日

オリンピックの終わった8月のパリはいつも以上に空いている

  


 今年の夏のパリは、当初、オリンピック効果を目論んで、ものすごい数の観光客を期待して、1年前にオリンピック期間中のホテルの予約が始まった当初は、おそらくパリ及びパリ近郊の宿泊施設が足りなくなるであろうと見込み、それにつれて、パリ市内のホテル価格は、2倍、3倍どころか、10倍以上にも価格が吊り上がる異常な事態になっていました。

 ところがオリンピックが近付くにつれて、予約が思ったほど入らず、ホテル業界は、冷水のシャワーを浴びている・・ともっぱらの評判になりました。

 実際に、オリンピックのための観客どころか、通常、夏の間に来ていた観光客までもがパリを避け、パリ市民たちも警備のための厳しい規制を避けてパリから逃げ出してしまい、「こんなの見たことない!」と思うほどのどこへ行ってもガラガラのパリになりました。

 オリンピックが始まってみると、それでも、オリンピックがけっこう盛り上がり始め、結果的には、ホテルの予約も少しずつ上向きになったようでしたが、結果的にパリのホテルは平均、約85%程度の稼働率になったようです。

 これはあくまでも平均なので、人気の地域(つまり価格が妥当であり、許容範囲内であるところ)は、100%超のところもあったようなので、酷いところの結果はあまり公にはされていないと思います。

 おかげさまで、オリンピック期間中は大した混乱も起こらず、多少、規制のために不便な思いをしたものの、住民にとっては今までにない7月の空いているパリを楽しむことができましたが、はて?いつもは、フランス人のバカンス本番はなんといっても8月で、オリンピックのために前倒しに7月にパリを去ってしまったパリジャンが8月には戻ってくるのでは?と思っていたのですが、どうやら、あんまり戻っていないようです。

 また、もう海外の観光客からも、今年の夏のバカンス先からパリは排除されてしまったようで・・観光客もいつもの夏よりも少なく、オリンピックの警戒も緩和されて、現在のパリは空いています。

 オリンピック騒ぎでまったく忘れていたのですが、8月のパリはお店も閉めてしまうところが多く、昨日は、最近、お気に入りのパン屋さんにいったら、9月まで休みと書いてあって、「あ~8月のパリはお店もけっこう閉まっちゃうんだった・・」ということを思い出したくらいです。

 オリンピック期間中は、あんなにいた警察官や憲兵隊も大幅に減少しましたが、昨日、メトロに乗ろうと思ったら、警察官の軍団が下りてきて、「えっ?まだ、メトロの中にまで警察官が乗ってるんだ・・」とビックリ!、主要な駅には、まだ憲兵隊等も通常よりは多くの人数が配置されているようです。

 まだ、パラリンピックが控えていることから、このオリンピックからパラリンピックへの移行期間も一定以上の警戒体制は保っている模様です。

 なんだか、パリでは、オリンピックのボランティアのユニフォームがすごい人気らしく、パラリンピックのボランティアにも応募が殺到しているとか、このオリンピックボランティアのユニフォームがフリマサイトに高額で出品されているとかいう話で、フランスのスポーツメーカーDecathlonが一般向けの商品化を検討しているということです。

 昨日もこのオリンピックのボランティアのユニフォームを着た人を見かけたので、「あれ?オリンピック終わったのに、なんであの人、あんな恰好しているんだろう?」と思ったばかりです。

 とはいえ、私は、人の少ない8月のパリが大好きで、パリジャンはパリからいなくなり、せいぜいいるのは観光客くらいなものなので、8月には、ぜったいにパリに留まりたいと思っているのですが、今年はその観光客でさえも、少なめというのですから、天国です。

 ホテルの価格を吊り上げたり、メトロのチケットも2倍近くに値上がりし、そのうえ、オリンピックのために様々な規制を設けられて自由に動けないとなったら、パリを避けようと思うのは当然のことです。

 しかし、住民にとっては、なにはともあれ、これからしばらくの間は静かなパリが楽しめそうです。


8月のパリ


<関連記事>

「来年のパリオリンピック期間中 パリのホテルの価格が爆上がり!」

「パリは想像以上にガラガラ・・パリジャンはパリにいない・・観光客もあんまりいない・・」

「空いているパリを満喫する1日」

「オリンピックを開催している街ってこういう感じなんだ・・」

「サン・ドニのオリンピックパークにドッキリ!・・選手村とは全然違う本当のサン・ドニ」

2024年8月14日水曜日

クロスボウの矢を頭に受けた女性が危篤状態

  



 パリオリンピックが終わって、堰(せき)を切ったように凶悪事件が報道され始めて、残念ながら、通常モードのフランスが戻ってきたことを実感しています。

 最初に目にしたのは、ヴィルジュイフ(ヴァル・ド・マルヌ県・イル・ド・フランス・パリ近郊)の寺院で、32歳の女性が頭に矢が刺さった状態で発見されたというもので、またその犯行に使用された凶器(武器)がクロスボウという私にとってはあまり聞きなれないもので、調べてみたら、「西洋で用いられた弓の一種、洋弓銃」というものらしく、その凶器に使われたものが、耳慣れないものであることは、余計に不気味に感じられるものでした。

 被害者は発見後、頭に矢が貫通した状態で病院に運ばれ、手術を受け、矢は頭蓋骨から取り出すことができたそうですが、生命予後は依然として危険な状態にあると言われています。

 ナイフとか、銃などなら、まだよくある話ではありますが、矢で頭を射抜かれるというのは、初めて聞きましたし、被害者を発見した人は、ちょっと信じ難い光景であったのではないかと思います。

 このクロスボウという洋弓銃というものは、どんなものなのか?そんなに出回っているものなのか?不安になります。

 この事件の容疑者3人は被害者が発見された翌日には逮捕され、取り調べが続いていますが、クロスボウが使用されたという状況と動機はまだ正確に解明されていないということです。というのも彼らは、障害のある人々のようで、全員が就労支援サービス事業所(Esat)で働いていました。この施設は障害のある者が医療の恩恵を受けながら専門的な活動を行えるようにするものです。

 この障害が精神障害であるかどうかは明らかにされていませんが、このような場合は、まず責任能力の問題が登場し、一定の期間、入院施設に保護されますが、いつの間にか、また世に解き放たれてしまうのが、よくあるケースだという印象を受けてしまいます。

 捜査はヴァル・ド・マルヌ司法警察に委託され、当初は配偶者による殺人未遂容疑で開始されましたが、被害者も同施設に所属していた者だったようです。

 事件の取り調べとともに、同時に彼らの精神鑑定も進行中とのことです。

 いずれにしても、パリオリンピックが終わった途端に、このような事件が堰を切ったように出てくるにつけ、オリンピック開催期間中は、このような事件がたとえ起きていても伏せられていたのか、または、報道されなかったということ?

 いずれにしても、オリンピック関係者や観客がこのような事件に巻き込まれることがなかったことは、全く、日常のパリ、パリ近郊、フランスからしたら、奇跡的なことだったと今さらながら思っています。


クロスボウ殺人事件


<関連記事>

「早朝のパリ・リヨン駅でのナイフとハンマーによる襲撃事件」

「フランスで最も有名な日本人留学生死去のフランスでの報道」

「首を絞められゴミ袋に入れられて捨てられた7歳の少年」

「少年院から出て2ヶ月後、5歳の少女を殺害した15歳の少年」

「「捕食者の巣窟」と呼ばれる危険なオンライン・チャットサイト」