2024年8月19日月曜日

アラン・ドロンの訃報 「サムライは死んだ・・」

 

         


 ここ数年、アラン・ドロンについては、彼の子どもたちどうしの家族のいざこざばかり(父親の治療をめぐって弁護士を介して衝突したりしていた様子)が大きく報じられてきました。

 本当のところの真相はわかりませんが、かなり彼自身がすでに心身ともに正常な状態ではなかったようで、最後には彼の財産等も含めて、司法監督下におかれていました。

 彼がフランスの映画界における偉大な存在であることは当然、知っていましたが、その度に流れる、彼が公に姿を現した2019年のカンヌ映画祭の名誉パルム賞を受賞した時の様子には、すでにかなり痛々しい印象を受けました。

 子どもたちが彼の人生の最後の数年に寄り添ったパートナーを追い出し、その後は子供たちの間で諍いを起こす様子は、カンヌ映画祭で見た痛々しい彼の様子を考えるに悲惨としか言いようのない感じがしていました。

 死の8か月前には、彼は後見判事によって司法的保護下に置かれており、この措置は春に「強化保佐権」に変更され、財産管理の完全な自由を剥奪され、自身の医療についてのみ一定の決定を下すことを認める追加措置となるというドロドロ劇にまで突入していました。

 昨日、彼の訃報を知ったのは、朝、Xのタイムラインでしたが、それを見て、不謹慎ではありますが、一瞬、ようやく自由になれたのだな・・と思ってしまったくらいでした。

 彼がフランスの映画界における大スターであることはわかっていましたが、それにしても、その日のXのトレンドは1日中、彼がダントツ1位、フランスの全てのテレビ局は大幅にスケジュールを変更し、特番を組み、もう彼の訃報と彼の功績を振り返る映像で溢れかえり、20時のニュースもほぼ彼のニュースに終始したくらいでした。

 彼は享年88歳、フランス映画の黄金時代を担ってきた国民的だけではなく、世界的スターで、考えてみれば、他のメディアがあまりなかった時代の彼のような存在は、もう今後、生まれ辛くなってくるのかもしれないと思うと、アラン・ドロンはフランス最後の世界的大スターであったと言えるかもしれません。

 彼に関する報道は、現在、溢れかえっていますが、そのどれもが長いこと長いこと・・。彼の死は、日常から饒舌なフランス人をさらに饒舌にさせるようなエモーションを巻き起こすほどの存在であったことに、あらためて驚いています。

 もちろん、私も日本にいた頃から、詳しくはありませんでしたが、一応、名前と顔が一致するくらいの認識はあり、とにかくハンサムな男性の代名詞のような感じでもあり、実際に美しく、逆に整いすぎていて、むしろ現実感がないような感じがしていました。

 日本人にとって、まだフランスが今よりももっともっと遠い存在であった頃、フランス人の男性はみんなアラン・ドロンみたいなハンサム・・そんなイメージがあったかもしれません。実際に世界的に人気があったアラン・ドロンですが、特に日本ではその人気がすさまじかったという報道もあり、また彼自身にもその自覚があったそうで、彼の訃報を世界中が悼んでいるという映像の一部には、日本での一般市民に向けたインタビューまで報道されていて、「昔、若い頃は彼に似ていると言われたことがある・・」などと答えている男性がいて、思わず吹き出してしまいました。(だって全然、似てない)

 彼の生い立ちから、90本近い彼の出演した作品を振り返る映像が一日中、テレビでは流れていますが、彼の生い立ちは決して裕福ではなく、4歳で両親が離婚してからは、刑務所の看守であった里親に預けられていた時期があり、彼の遊び場は、フレネス刑務所の中庭であった・・とか、「私が本当に幸せだったのは、軍隊にいた時だけだ・・」と語っていたり、美しく整った顔立ちにどこか哀愁を感じさせる影のような部分は、そんなところだったのかもしれない・・と思ったりもしました。

 彼は、人生の終盤に自分の最期については、かなり具体的に考えていたようでもあり、50年以上も所有し続けたロワレ県ドゥーシーにあるブリュレリーの邸宅には、両親のお墓とともに自分を埋葬してもらう場所まで用意しており、行政手続きも取っています。

 もうずいぶん前のインタビューにおいて、「自分が死んだら、そこで、やっと私たち親子は一緒にいられるようになる・・」と語っている場面もありました。

 また、自分自身が亡くなった場合の訃報のタイトルは?という、なんとも大胆な質問に対しては、「サムライは死んだ・・」がよい・・とあっさり答えて周囲を納得させたりもしていました。

 彼の訃報は、「ドゥーシーの自宅で、3人の子供たちと家族に見守られながら安らかに亡くなりました」という子どもたちと愛犬の連名でプレスリリースされました。

 その人の存在の大きさというものは、生前には計り知れないものなのだと、今回も痛感しましたが、フランスでは、彼の訃報は、近来、稀に見る大きな扱いです。


アラン・ドロンの訃報


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