2022年11月4日金曜日

未成年者へのアルコール販売に対しての訴訟 Lidl(リドル)5,000ユーロ罰金

 


 昨年5月、スーパーマーケットチェーンLidl(リドル)で購入したアルコールを摂取し、その後、交通事故で死亡した16歳の少年の母親が「未成年者にアルコールを販売した」として、このスーマーマーケットに対して訴訟を起こし、5,000ユーロの罰金を求める裁判に発展しています。

 フランスでは18歳以下の未成年者にアルコールを販売することは、法律で禁止されていますが、現実にそれがどの程度、遵守されているかは、不透明というか、曖昧にされている印象があります。

 スーパーマーケットに行けば、どこでも普通にアルコールは販売されていますが、このような年齢チェックが行われているところを私は目にしたことがありません。しかも、最近、かなり普及しているセルフレジなどにも、アルコールを購入する際にも一応ではあっても年齢認証のチェックなどの画面はでてきません。

 事件は、2021年5月8日午後6時15分、少年が飲酒後にスクーターに乗っていたところ、鉄塔に衝突し、一緒に走っていた友人(共に飲酒していた)のスクーターにはねられ死亡したというものです。少年からは、血液1リットル当たり0.56gのアルコールが検出されており、加害者となった少年は、すでに児童裁判所で過失致死罪で有罪の判決を受けています。

 今回の裁判の焦点は、このスーパーマーケットでウォッカ2本を購入した際のレシートにありました。被害者の母親は、2本のボトルが未成年に販売されたとし、Lidl社に対して訴訟を起こしているのです。

 この母親は、「あの日、子供に酒が売られていなければ、棺に花を飾る必要もなかった可能性が高い」と訴えていますが、ついには、「息子の事故は、本人の責任ではなく、アルコールに責任がある」とまでしているところが、不可解ではあります。

 遺族側の弁護士は、アルコールの販売と消費は、死と直接関係があるとし、この裁判が未成年者へのアルコール販売に対する意識を高める役割を果たすことを期待していると語っています。

 このレシートの日時は、当日の午後1時頃になっており、その日勤務していた社員は10代の少年たちを記憶していないと語っていますが、加害者の少年は、この店でウォッカを買ったと証言しています。

 結局、現時点では、監視カメラからは、この少年たちの確認ができず、証明ができていませんが、判決は1ヶ月後に下されることになっています。

 この事件をきっかけに未成年者へのアルコール販売禁止の原則が想起されるのは、良いこととは思いますが、もしも、この店舗が少年にアルコールを販売してしまっていたとしても、そもそも16歳の少年が平日の午後1時にウォッカを買いに行くという生活自体がどうかしていると考えるのが普通です。

 フランスは、アルコール飲料のテレビコマーシャルなどを禁止していたり、かなりアルコールに対しては、厳しい対応をとっているようなところもあり、逆にたまに日本に行くと、アルコールのコマーシャルがいかに多いかに驚かされる気がしますが、実際のところの規制はゆるゆるであることも事実なのです。


未成年者へのアルコール販売


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2022年11月3日木曜日

2023年に提案される移民法の改正案の概要 積極的な受け入れと追い出しの両刀使い

  


 11月に入り、内務大臣と労働大臣は、2023年の初めに検討される「移民法の改正案」の一部に関してを公表しました。移民法といえば、外国人としてフランスに滞在している私にも関係ない話ではないわけで、見過ごせない内容でもあります。

 まあ、ビザもちゃんとあるし、違法滞在をしているわけではないので、問題はないのですが、つい最近、パリで起こった12歳の少女の殺人事件の容疑者が滞在許可証の期限切れのために退去命令が出ていた外国人だったために、一部の政党をはじめとして、移民に対してのプレッシャーが高まっていることも、この移民法改正案の背景にあります。

 しかし、この法案は移民をひたすら追い出すというわけではなく、人出不足に喘ぐ業界を救うために、外国人労働者の採用を促進し、同時に滞在許可証を積極的に発行していく姿勢も見せています。

 そういえば、パリにいる私の知人の一人はもともと、かなり昔に遊学でパリに来ていて、学生ビザで滞在していたものの、当時の政府の方針で外国人に対しての労働許可証が大盤振る舞いの時期があったとかで、「まあ、一応、取っておこうか?」という程度のノリでビザを取ったとか・・結局、それから彼女はパリで仕事をみつけて、今では、もうほとんど永住モードです。

 話は逸れましたが、現在は、特に建設業界などで、どちらかといえば、現状、労働許可証を持たずに働いている人に対して、申告制で正規の労働許可証を発行するということが先ず行われるべき問題とされています。

 実際には、ノアールと呼ばれているビザなし労働者で労働力を賄うこと(労働許可証なしに働くこと)は、雇用側にとっては、違法ではあるものの、税金、雇用保険料等その他の出費なしに雇えるわけで、建設業界などでは少なくないのかもしれません。

 また、比較的移民が潜り込みやすいレストランなどでは、警察が突然入ってきて、抜き打ちで滞在許可証(労働許可証)のチェックを行なっているという話も聞いたことがあります。

 今回の改正案では、不法就労者が雇用主を通さずに自ら正規化申請を行えるようにすることも検討されています。

 また、ビザの有効期限切れ等の退去義務命令(OQTF)(obligation de quitter le territoire français) に関しては、内務大臣は、各地域に対し、政府はOQTFの対象となる移民を「指名手配者ファイル」(FPR)に登録し(現在登録者58万人)、OQTFの対象となるすべての人を監視するよう要請する(ただし、監視対象は危険人物のみ)と発表しています。しかし現状ではOQTFの50%近くが控訴され、退去命令は停止され、実際には、実行されているのは、そのうち12%程度のみというのが現状とのことです。

 これに関しては、言わせてもらえば、滞在許可証の更新は、異常に時間がかかり、十分に余裕を持って申請したとしても、期限が切れても手続きが済まないことも少なくなく、私自身も前回のビザの更新では、期限が切れて、「これでは不法滞在者だ!」と青ざめたこともあったし、私の友人もまた、同様の目にあって、これが日本に一時帰国予定の目前まで長引いて、ひきつっていたので、一概に移民側の問題ばかりとは限らず、申し立てがあることは、このような理由も十分に考えられます。

 しかしながら、内務大臣によれば、「今日、パリの犯罪を見ると、少なくともその半分は、不法滞在の状況にある、あるいは許可待ちの、いずれにしても非常に不安定な状況にある外国人で、こうした現実を見過ごすことはできない」と断言したのです。

 パリでの犯罪行為で逮捕された人の48%、マルセイユで55%、リヨンで39%が外国人という発表(こんな統計は存在しないと反発の声もあり)は、衝撃的です。

 とはいえ、現状、人口に占める外国人の割合は7%で思ったよりも少ない印象ですが、これは、外国人でもフランス国籍を取得してしまっている場合は外国人としてカウントされていないのかもしれません。

 また、犯罪者における外国人の割合は19%だそうで、危険人物排除の方向、それでもなお、労働力確保のためには一部、移民を促進するというプラスマイナスの移民法改正案。

 労働力確保のために移民受け入れの是非は日本でも問題になっていますが、フランスが直面しているような、移民問題に関して、このプラスマイナスがつきまとうことは、おそらくどこの国でも同じかもしれません。


2023年移民法改正案


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2022年11月2日水曜日

トゥーサンのお墓参り フランスのお墓のこと 夫が亡くなった時のこと

 

トゥーサンの時期の墓地の近くのお花屋さんの店先

 

 今はトゥーサン(万聖節・諸聖人の祝日)のバカンスで、フランスでは皆がお墓参りをする時期です。我が家にとって、このトゥーサンのバカンスは、夫の命日が近いタイミングでもあり、もう10年以上が経った今でも季節的にあの頃のことを思い出してしまう複雑な季節でもあります。

 当時、ちょうどトゥーサンのバカンスが終わった翌日に、夫は職場で倒れて入院し、その後、数日のうちに亡くなってしまったので、本当に急なことで、茫然自失の状態でした。娘がバカンスで学校が休みの間は、水族館に行ったり、ムードンの森に栗拾いに行ったりと、ごくごく普通の生活を送っていた私たちにとっては、晴天の霹靂でした。

 それまでも、何回か夫が入院したことはあったので、まさか、そんなことになるとは思わず、入院した日も夫は夜、家に電話をかけてきて、「2〜3日入院するから、娘を学校に連れて行ってあげられないからお願いね・・」と言っており(それまでは、朝、夫が娘を学校に送り、夜、私が迎えに行っていました)、仕事をしながら、朝も夜も一人で送り迎え・・シングルマザー生活大変だ・・くらいに思っていて(結局は、それ以来、本当のシングルマザー生活に突入してしまったのですが・・)、「平日は病院には行けないから、週末、必要なものを持って病院に行くから・・」と話していました。

 週末になって、娘を連れて病院に行くと、夫は集中治療室に入っていたために、娘はまだ集中治療室に入れてもらえない年齢ということで、夫に会うことはできず、「夫の方も一般病棟に移れたら、またすぐ会えるのだから・・」と話していました。

 それが翌日、再び病院に行くと、容態は前日より悪化しており、お医者さんから、「命の危険がある」と告げられました。命の危険があると言われて、真っ青になり、とりあえず会社の上司に電話をして、しばらく会社を休ませてもらうことにしたのですが、私は会社の入り口の鍵を預かっていたので、それを誰かに渡さなければならず、翌朝、朝いちで会社に行って、同僚の一人に鍵を渡し、家に帰るとすぐに病院から「危篤だからすぐ来てほしい」という電話が入りました。

 慌てて、タクシーを拾って、病院に着いた時には、もう夫の息はなく、彼の最期には間に合いませんでした。「お医者さんから解剖をさせていただけたら・・しかし、強制ではありませんが・・」と言われて、今回ばかりは、こんなに急に亡くなってしまって、全くわけがわからず、納得もできなかったので、迷うことなく、「是非、お願いします」と答え、できることなら、自分でやりたいくらいだと思いました。

 その後、娘を学校に迎えに行って、病院に連れてきたことまでは覚えているのですが、その後、数日のことは詳しくは覚えていません。

 葬儀の手配等は、彼の息子たちが全部やってくれたので、とどこおりなく終わり、夫のパソコンの裏に貼り付けてあった、簡単な書き置きのようなものの中に「お墓は家から一番近いところにしてほしい」という一文があったため、近所の墓地に埋葬することになりました。

 夫の両親のお墓は、彼がお金を出して何やら立派なお墓を義理兄夫婦の家の近くにたてていたのですが、なぜ、そこには一緒に入らずに、家の近所に別にしてほしかったのかは、わかりませんが、そんなことはずっと先の話だと思っていたので、彼と直接、そんな話をしたことはなかったのです。

 市営墓地なので、年契約で場所を借り取る感じなので、我が家の場合はたしか、とりあえず30年契約にしたと思います。棺とともに霊柩車に乗って、墓地に着くと、もう場所が用意されていて、思ったよりもずっとずっと深い穴が掘られていて、土葬というものが初めてな私にとっては、それもかなりショッキングでした。

 私は普段はあまり感情表現が激しい方ではないのですが、その時ばかりは声をあげて大泣きしたことは、覚えているのですが、娘に言わせると、「ママの泣き声は、墓地の塀の外にまで聞こえていたと思うよ・・」と言われたので、私が取り乱したことは、娘にとってショックだったようで、後になってみると、娘には申し訳なかったと思います。

 周囲の風景はなに一つ変わることはないのに、私はもう半分、あちらの世界にいるように現実感がなく、私がどうにかこちらの世界にひき戻されたのは、娘を一人で育てていかなければならないという現実でした。

 深い深い穴に埋められた棺の上には山盛りの土が盛られ、その上にお花が山のように盛られましたが、墓石を置くのは数ヶ月経って、少し土が沈んでからの方がよいとのことで、数ヶ月後に、墓地のそばにある墓石屋さんで墓石を注文し、とりあえず、私が入る場合も考えて、二人分の名前を入れて、ちょうどいいスペースをとって名前を刻んでもらいました。

 まさかフランスで墓石を買うことになるとは・・思ってもみない大きな買い物でした。フランスでお墓を買う日本人もそうそういないだろうな・・とぼんやり思いました。

 夫が眠っている墓地は、家から歩いて20分ほどのところにあるのですが、亡くなってすぐの頃は、毎週のように行っていたのですが、今では、こんなに近いのに、滅多に行くことはなく、トゥーサンの時には必ず行くようにはしているものの、それでも年に数回です。

 以前は、お墓中がお花に包まれるような感じだったのですが、どうやら、ここ数年、ハロウィンにおされているのか、お花が減ったような気がします。



 それでも、お墓の上に乗り切らないほどのお花が乗っているお墓などを見ると、なんとなく、ほっこりさせられたりもします。

 しかし、私自身は、お墓にはあまりこだわりはないので、なんなら、海にでも撒いてくれてもいいけど・・と思っているのですが、娘には、「その時に一番簡単な方法でいいよ・・」(フランスにいる時に死んだら、フランスのお墓に、日本にいる時に死んだら日本の実家のお墓に・・)と頼んでいるのですが、どちらにしても人ひとりが亡くなるということは、お墓だけではなく、大変な手続きが必要で、できるだけ迷惑をかけないように、今のうちから、できるだけシンプルに済むように身辺を整理しておかなければと思っています。

 あれから、もう長い時が経ちましたが、「もしも、夫が生きていてくれたら・・」と何度思ったかわかりませんが、結局、今日もお墓に行って、一人で夫とそんな話をしながら、私や娘の近況報告をしてきた1日でした。

 パートナーのいらっしゃる方、まだまだ先のことだと思っても、一応、話しておいた方がよいことかもしれません。


フランスのお墓


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2022年11月1日火曜日

フランスのトゥーサンはハロウィンになった! ハロウィンフィーバーはパリにも!

  

家族勢揃いで仮装


 現在は、フランスはトゥーサン(万聖節・諸聖人の祝日)と呼ばれるバカンスで、それがハロウィンであることももちろん認識していましたが、昨日、昼間に街に出たら、ハロウィンの仮装をしている人がゾロゾロいて、しかも家族連れで、小さな子供たちから、子供たちを連れたママやパパまで一家総動員でハロウィンの仮装をして歩いている人がいっぱいで、ここは、パリなのか?とびっくりしました。

 しかも、街をあげてハロウィンのイベントをやっていたりして、それに一家勢揃いで仮装している人々が大行列していました。ここ数日、トゥーサンのバカンスがはじまってからは、バカンスのわりには、パリから人が減らずにその分、街中は家族連れですごい人出です。




 インフレやガソリン不足などの影響で、今回のバカンスは遠出をしないで済ませた人が多いのか、街中はえらい賑わいようで、かえって景気がよさそうな感じさえしてしまいます。

 以前、娘が小さい頃には、学校などで、仮装パーティーがあるから・・と仮装の用意をしてでかけたりしていたことはありましたが、こんなに街中が仮装大会のようになるとは、フランスもずいぶん変わったな・・と思います。

 元来、フランスのこの時期はトゥーサンといって、家族でお墓参りをする日で、お花屋さんには大きな菊の鉢植えが並び、お墓参りに行けば、どのお墓も華やかなお花に彩られており、けっこうみんな来ているんだ・・えらいものだな・・と感心する感じで、逆にハロウィンのイメージはあまりありませんでした。

 最近、「昔はこんなじゃなかった・・」と年寄りじみたことばかり言っている気がしますが、パンデミックで身動きが取れなかった時期を挟んで、このハロウィンフィーバーは一気に爆発したような気がします。しかも、以前は行列というものを極端に嫌っていたフランス人も最近は、行列に抵抗がなくなったのも興味深いところです。




 先日、ソウルでハロウィンのために集まった人ごみで、大変な事故が起こったばかりですが、夜、あまり出かけない私はわかりませんが、昼間でも家族連れの仮装している人々がけっこうな人出で驚いたので、夜は夜で若者たちは、ハロウィンイベントに参加しているのではないかと思います。

 夕方、スーパーマーケットに買い物にでかけたら、ハロウィンの仮装のためグッズのコーナーが、もうすでにかなり売り切れてガラガラになっている状態で、なるほど、ハロウィンのための売り上げもバカにならないのだろうな・・と思いました。


すでにほとんど売り切れ



売れ残っていたかぶりもの


 常に何かお祭り騒ぎのきっかけを探しているような感じではありますが、それを子供たちだけでなく、家族総動員でやるところが、フランスなのだな・・中には、おばあちゃんまで・・とビックリしましたが、よく見ると、そのおばあちゃんは仮装しているわけではなかったり・・苦笑してしまいました。

 私は、変わりなく、お墓まいりにだけは行くつもりで、お花の鉢植えを買ってありますが、このお墓に鉢植えを置くというのも、なにかの機会に日本の友人に話したら、フランスってお墓用のお花も鉢植えなんだね・・と驚かれて、あらためて、そういえばそうだ・・と思った覚えがあります。

 さすがにハロウィンで、ソウルのような人出になることはパリではないとは思いますが、あったとしても、また、デモで鍛え上げた警察や機動隊が激しくガードすると思われます。


フランスのハロウィン トゥーサン 仮装大会


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2022年10月31日月曜日

海外生活を送る日本人ママは頑張り屋さんが多い

  


 私がフランスで生活を始めてから20年以上が経ちますが、そんなにたくさんの日本人の知り合いがいるわけでもありませんが、それでもこれだけ長くいれば、そこそこに日本人を見かけることはあるわけで、海外生活を送る日本人ママは、みんな頑張り屋さんだなぁ〜と思うのです。

 だいたい、自分の育った文化とは違う国で生活するということだけでも大変なのに、異国で仕事をし、家庭を持ち、子供を育てながら家事もこなすということは、並大抵のことではありません。

 しかし、彼女たちは、言葉と文化の壁という障害を抱えながらも、たくましく仕事をし、子供を育てながら暮らしています。フランスの場合は共働きがあたりまえなので、日本人ママにしても、働いている場合が多いと思います。

 近くに子供の面倒を見てくれる実家があるわけでもなく、自分のルーツでもある日本の文化もできるだけ子供には伝えながら、(季節ごとの行事などもフランスのものと日本のものと両方・・)日本語を教え、フランスの学校に送り迎えをしながら通わせて、家事とて、手を抜くことなく、栄養のバランスを考えながら、手作りのものを食卓に並べます。

 日本食を作りたいと思えば、簡単にお惣菜を買ってきて食卓に並べるということもできないので、食材を買い集め、工夫しながら日本食も作ります。フランス人の家庭などは、日頃は、子供の食事は簡単に、ハム(あるいは肉でも焼いて)に茹で野菜やスープにパンとチーズなどの乳製品で終わりという家庭も少なくないので、それから考えると日本食などは、驚くほど手間がかかります。

 バカンスの多いフランスの学校の中で子供のバカンス期間のスケジュールの調整をし、お稽古ごとに通わせている人も多いです。

 海外で育つ子供に日本語を教えることは根気のいることですが、レベルも様々ですが、日本人ママのいる家庭で、全く日本語がわからない子供は少ないのではないかと思います。

 日仏家庭でも家庭それぞれで、子供の育て方も家事の分担もそれぞれだとは思いますし、概して、フランス人の男性は家のことには協力的な人が多いような気もしますが、それでもなお、日本人ママの負担はけっこう大きいのではないかと思います。それをさしてきびしい顔もせずに、あざやかにやってのけている人が多く、まさにスーパーママだな!と思うのです。

 そして、なぜか、日本人の子供は優秀な子供が多いような気もするのです。私の知り合いの子供は、なぜか、軒並み高学歴で、医者、弁護士、エンジニアなどの見事な仕上がりの子供が多いのです。

 一部には、子供の頃から、2ヶ国語以上の言語を使うことが脳の発達に影響するという話を聞いたこともありますが、基本的には、日本人が培ってきた真面目さにあると思っています。

 子供に日本人の基本的な生活習慣を教えながら、教育していくという観点からしても、それは海外にあっては、決して当たり前のことではなく、自分たちがあたりまえのように受けてきた教育をあたりまえのようにコツコツとこなしていくことは、海外ではすでに上レベルのことなのかもしれません。

 それにしても、彼女たちの日々の努力には、頭が下がることが多く、忙しいのに、そんなものまで手作り!?(自分で納豆を作ってみたり、お味噌を仕込んでみたり、ケーキを焼いたり・・)と驚かされることも多く、以前の職場にいた日本人の先輩のお弁当などを見るにつけ、彩ゆたかに品数も多く、家族の世話を細やかにやいていることは、そのお弁当からも垣間見られ、感心したものです。

 子供の教育に関しても、こういうことには気をつけた方がいいとか、日本語を教えるのは根気よく、諦めたらいけないとか、多くを彼女たちに教わりました。

 現在の私は子育ても終わり、全然、頑張らない生活になり、もっとずっと忙しくしていた頃には、逆にもっと、マメに色々なことをしていたような気もしていますが、現在、小さい子供を抱えて頑張っている日本人ママさんたちの様子を見るにつけ、やっぱり日本人ママってすごいなぁと思うのです。


日本人ママは努力家 頑張り屋さん


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2022年10月30日日曜日

陰惨な事件が続くフランス 被害者・加害者ともに若すぎる

  


 毎日のように大々的に殺人事件についての報道、毎週、遺体が発見されているような気がする・・そんなニュースばかりが続いていることに暗澹たる気持ちにさせられています。しかも、その被害者・加害者ともに20代前半だったり、子供だったり、命を絶たれた被害者はもちろんのこと、加害者となった若者の人生も終わりで、彼らのあまりに短い人生にやるせない気持ちになります。

 10月半ばにパリ15区で起こった、12歳の少女が殺され、彼女が住んでいたアパートの近くの中庭でスーツケースの中から遺体が発見された事件は、その非道で残酷な手口はあまりにも衝撃的でフランス中が大騒ぎになりました。

 容疑者は比較的早い段階で逮捕されましたが、24歳の、一見すると、普通の女性で娘と同じ年齢だったことは、私にとっては、同時に衝撃的でしたが、娘にその話をすると、「同い年だからといって、同じ境遇や環境で育ってはいないし、同じ24年間を過ごしてはいない」と一蹴されてまるで意に介していない様子には、どこか、ホッとするような、なんだか納得いかないような複雑な気持ちになりました。

 その後、今度はコレーズ県(ヌーベル・アキテーヌ地域圏)のディスコで週末に20歳の女性が行方不明になったと報じられ、それからまもなく、21歳の男性が誘拐、強姦、殺人の容疑で逮捕され、彼は彼女を殺して彼女の遺体を森に埋めたことを自供しました。

 2人の間に多少の面識はあったことが逆に彼女を油断させたような気もしますが、後に同席していた友人の証言により、向けられたシャンパンのグラスに口をつけた彼女がへんな味がすると言っていたことがわかっており、飲み物に薬物を入れられていた可能性が浮上しています。

 この犯行がどの程度、計画的なものであったのかはわかりませんが、彼は犯行後、彼女の持っていたバッグを燃やし、犯行が行われた部屋から彼女の痕跡を消そうとした形跡があり、遺体を埋めていることから、逆に彼自身が、彼の行いが悪いことであると認識して隠そうとしていたことが、たとえ衝動的な犯行であったにせよ、彼が責任能力が問われないような精神状態であったとは考え難いことを表しています。

 被害者の女性は2歳の子供がいる20歳の女性、加害者は21歳の男性。被害者の女性は命を奪われ、その子供は2歳で母親を亡くしてしまいました。加害者の男性には、今後、容疑が固められていきますが、おそらく終身刑が降ると言われています。

 そしてまた、今度は、マルセイユで11歳の子供が遺体で発見されたというニュース。当初、母親から子供の失踪届けが出されていたといいますが、子供の遺体にナイフで切られた跡が数箇所発見され、その血痕が家から遺体発見現場への道のりに残されていたことから、子供の母親が警察に拘束されています。

 ここのところ続いている陰惨な殺人事件とその被害者・加害者の若さは、衝撃的です。この世に殺されるという死に方をする人がどのくらいいるのかわかりませんが、まだ、はじまったばかりの人生で、殺されるほどの人の恨みをかうほど生きてこなかった人が殺されるやるせなさは、計り知れません。

 娘と同年代の人々の事件を見るにつけ、被害者になる心配とともに、初めて自分が妊娠した時に、育て方によっては、子供が将来、犯罪を犯す側にもなりえるのだ・・ちゃんと育てなければならない・・大変な責任を負ってしまった・・と感じたことを思い出します。

 このような若い人の陰惨な事件を見るにつけ、最近の私は、どうしてもその親側の目線で見てしまうのでした。


若者の殺人事件


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2022年10月29日土曜日

フランスの医者不足 医者に定年後も働いてもらうためのシステム 

  


 高齢化問題は、日本の「おはこ」のような気がしていましたが、フランスにも高齢化問題は、特に医療問題において、顕著になりつつあるようです。

 今週、マクロン大統領は、現在、国会で審議中の社会保障財源法案の一部として議論されているこの国の医療問題について、「病院や街に「十分な医師がいない」と指摘し、「今後、数年の間にフランスの医師の25%は60歳以上になる」「彼らが定年を迎えた後には、この医師不足の問題はさらに深刻になるため、定年後も彼らに仕事を続けてもらえるためのシステムを構築する」と発表しています。

 現時点では、開業医の定年は、生まれた年によって異なりますが、法的には、1955年以降に生まれた医師の定年は62歳です。仕事を開始した時期により僅差はありますが、67歳で年金を満額受け取ることができます。

 なので、フランスの医師の25%は、このまま放置すれば、10年以内に消えていくことになります。もちろん、現在でも定年後にも仕事を続けている医師はいますが、現時点では定年後も働き続けることに対しての特別待遇は設けられてはいません。

 フランスは少子化による人口減少は起こっていないにも関わらず、医者だけが高齢化を迎えているということは、医者になる人の数が減少しているということや、地域的な格差も影響していると言われています。

 いずれにせよ、人口は減少していないものの、高齢者も少なくないフランスで、今後数年は、ますます介護のニーズは増加し医者不足に拍車をかけると見られています。

 今後の医学部の学生数の設定などを検討しなおし、対策を始めたとしても、この結果が表れ、現在の現役医師数のレベルに回復するには、2035年頃と見られており、放置すれば、減少を続けるであろう医師をなんとかそれまでは確保しつづけるために、定年後も医者が働く特別待遇を提案し始めたわけです。

 マクロン大統領は「定年後も仕事を続ける医者に対しては、年金保険料を免除し、年金をもらいながら仕事を続けることを奨励する」と発表したのです。自分が引退後に受け取ることができる年金プラス、働いた分だけ給与をもらうことができるのです。

 しかし、一方では、このシステムにより、年金保険料の7.3%、つまり7300万ユーロの収入減になりかねないとも言われており、この減免措置が医師の増加につながるかどうかは定かではないばかりか、追加報酬の恩恵を受けるために退職の清算を前倒しする医師が出てくる可能性さえあるとも懸念されています。

 少子化は免れてなお、顕在化してくる高齢化問題に、社会全体が高齢化を迎えている日本ではなおさらのこと、AIでは代わりが効かない職業の人材問題は、一層深刻になっていくのではないか?と思うのです。

 私にとっては、もう20年以上もお世話になり続けているかかりつけのお医者さんがいますが、彼女は定年までは、まだ少し時間がありそうですが、今度、行ったら、「あなたがいなくなったら、絶対困る!ぜひ、その先も仕事を続けてほしい!」と、今度行ったら、頼んでみようと思います。


医者不足 定年後の医者の仕事継続 年金保険料免除


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