2022年10月23日日曜日

最近、考える終の住処

   


 私が海外で生活を始めた時点では、私はずっと海外に永住しようとか、そんな決意があったわけでもなく、ただ、好きな人と暮らしたいという思いだけで、あまり長期的なことを計画していたわけではありませんでした。

 まあ、夫が今でも生きていれば、今でも、そんなことは考えていなかったかもしれませんが、思いの外、夫が突然、早くに亡くなってしまい、その時点で、日本に帰ろうかどうか考えたこともありましたが、結局、娘の教育のことを考えて、また、周囲のフランス人のママ友たちが強く、フランスに残ることを薦めてくれて、皆が力になってくれたので、結局、フランスに残ることにしたのでした。

 それからは、決めたからには、私には他の選択肢はなくなり、差し迫った状況に、むしろ、これまでにないほど迷いのない潔い気持ちでさえありました。

 今から思い返すに、私は今まで、自分の人生をそれほど具体的に長期に計画してきたことはなく、夫が亡くなったことで、なおさら、「色々なことを考えていても、突如、人生が変わってしまうこともあるのだ・・人生、思い通りにならないこともある・・」と虚しく感じたり、そのわりには、なんとか生き延びてこれたものだなどと思ったりもします。

 現在、私はフランスでの生活で、まあ、たまに日常的なトラブルはあるものの、それなりの交わし方も覚え、それなりに満足して過ごしていますが、このまま、ずっとフランスで生活をし続けると肝を据えているわけでもなく、今すぐどうこうというわけでなくとも、今後、日本に帰ることがあるかどうかを時々、考えます。

 これまでは、なんとなく、フランスと日本と半々とまでは言わないまでも、一年のうちに、しばらく日本で過ごせる期間があればいいなと思っていましたが、パンデミックで突然、身動きがとれなくなった2年間とちょっと、そして、今度は戦争で、以前のように、そうそう簡単には日本と行き来ができなくなり、これが一体、いつまで続くのかわからなくなっている今、また、自分が元気で動き回れる残された時間には限りがあること(余命宣告されたりしたわけではないけど)を考えると、このままフランスにいるべきか、いつかは日本に帰った方がいいのだろうか?と考えることがあります。

 しかし、現在のところは、どう考えても、日本に本帰国することは、あまりピンとこなくて、モヤモヤしています。

 先日、日本にいる友人と電話で話していて、彼女は一時、イギリスで生活していたことがあるのですが、今は日本で生活していて、それなりに幸せに生活しているものの、どこかしっくりこないところがあるというような話を聞くと、余計に日本に本帰国することに二の足を踏んでしまう気になります。

 彼女はイギリス滞在期間中はそれなりに一生懸命、勉強していただけあって、英語が堪能で職場でも彼女の英語を過剰に頼りにされることが多く、そのわりには、職場には、出来ないもの勝ちのようなところがあり、そのうえ、海外のごくごく普通の話題などをしても、「海外かぶれ」などと言われ、いちいち、面倒で過剰な反応をされるという話を聞いたりすると「あ〜〜私、無理かも・・」などと思ってしまいます。

 その生活の環境や周囲の状況などもあるのでしょうが、今さらながら、「私にとって、幸せは何なのか?」そんな単純なことをあらためて、考えている今日この頃なのです。


日本への本帰国 終の住処


<関連記事>

「海外生活一人暮らしの女性の終活」

「滞在許可証更新手続きのトラブル アクセス不能なフランスのお役所」

「137万人のウクライナからの退避難民の受け入れと海外生活の不安」

「フランス発の航空運賃 1年間で 43.5%上昇」

「エアフランス パリー羽田便運行再開と燃油サーチャージさらに値上げ」

2022年10月22日土曜日

海外で仕事を続けている義理の息子の久しぶりの訪問

  


 私が彼に最初に会ったのは、たしか彼が9歳の時だったと思います。彼は夫の前妻との子供の一人で、三人いる娘の義理のお兄ちゃんの一人でもあります。当時は、まだ、あどけない感じもあって、1週間おきに家に来ていましたし、ヴァカンスの間はしばらく家にいたりして、彼のママが教会べったりで、かなり自由な生活を制限されていたりしたこともあり、我が家が避難所のような時期もあり、彼の好きなゲームや本などは、家に保管してあったりもしました。

 なので、娘の3人のお兄ちゃんの中では、私にとっては、一番、身近な感じもしていましたが、彼は早々に家を出たかったこともあり、高校から全寮制の学校に入ってからは、すっかり顔を見る機会も減ってしまいました。

 しかし、彼はなかなか優秀でもあり、夫の息子たちの中では、夫の希望の星のようなところもあり、夫も何かと世話を焼いていて、遠くに住む彼の引っ越しなどには車で手伝いに出かけたりしていました。

 夫が亡くなった時には、ちょうど試験の真っ最中で彼にとっては試験中に大きな精神的な痛手で大変なハンディでもあったと思いますが、彼はグランゼコールに進みました。

 グランゼコールを卒業してからは、しばらくフランスの研究所で働いたあと、スイスで博士号を取得、今はドイツで原子力関係の研究所に勤務しているのだそうです。そんな感じなので、彼はパリどころか、長年、フランスにいることがない生活をしてきたので、あまり会う機会はありませんでした。

 それでも、かなり前にひょっこり、ノエルの時に来てくれたり、娘の誕生日に来てくれたりしたことはありましたが、たまにメールをくれたりすることはあっても、なんだか彼は遠い人になりつつありました。

 それが、先日、パリに行く機会があるので、「ちょっと家に寄ってもいい?」というので、久しぶりに懐かしく、食事をしながら、楽しい時を過ごしました。

 これまでじっくり聞くことがなかったスイスでの話、ドイツでの現在の生活、それぞれの国について、仕事についてなど、複数の国で生活した経験を持つ人の話は楽しいなと思いました。

 彼は研究者の道を選んだわけですが、最初はフランスの国の研究所、その後、スイスでPhdを取ったあとに、現在は大きな企業の中の研究所にいるのですが、彼の話を聞いていると、優秀な研究者の多くは外国(フランス国外)へ出て行ってしまうのではないか?と思いました。

 彼曰く、フランスは上に上がっていく機会がかなり限られている上に、時間もプロセスもかかり、そのうえ、報酬もパッとせず、話をきいていると彼がフランスに戻ってくる日はあるのだろうか?と思ってしまいました。

 彼がスイスに行ったばかりの頃は、スイスの物価の高さを嘆いていましたが、実際に働いてみるといくら物価が2倍だとしても、給料は3倍、もはや、フランスにいることは考えられないと言っています。

 だからといって、仕事はお金のためだけではないけれど、自分のやりたい研究が思うようにはできない、一企業人としての葛藤やだからといって、大学などには、十分な予算もないなど・・現在の仕事には満足はしているものの、生涯、同じところにはいなそうな気配。

 しかし、フランスで高等教育を受けた彼のような人々をフランスは、逃してしまっているのだな・・と娘とも重ねて、考えたのでした。

 専攻は違いますが、理系の道を進んだ娘も研究者になるか、それとも就職するのか、悩んでいた時期もありましたが、結局、色々、イレギュラーな出来事(パンデミック)なども重なって、きっとすんなり学生生活を過ごした場合とは違ったであろう道に進んだであろうと思います。

 しかし、結果的にフランスから出てしまっていることを考えると、なんだか、国が多額の負担を負って教育をしている結果をフランスが使いきれていないのはもったいないな・・などと、思います。

 それにしても、外国といっても、生活してみなければわからないこともたくさんあるわけで、スイスはほとんどストライキがないとか、かなり排他的な国民性、口で注意することなく、少しのことでイキナリすぐに通報されるとか、ドイツの鉄道事情が最悪だとか、保険のシステムが簡単な診療を妨げているとか、私がこれまで抱いていた両国のイメージとは違うもので、まぁどこの国も一長一短かな?と思います。

 現在、まだ独身の彼は、将来、結婚して、子供を育てていくとなると、子供のこともあるので、また、別の意味で仕事も仕事をする国も考えなければいけないな・・と言っていましたが、それにしても、今の私なら、色々、考えるところはあるにせよ、私が彼の年齢には、まるでそんなことを考えてこなかったにもかかわらず、よくも無事にここまで生きながらえてきたと思うのでした。

 義理の仲ではありますが、それぞれに歴史を知り合っている人と色々な話ができることは、大変、幸いなことであります。あんなに小さかった彼が立派に成長した姿がちょっと眩しいくらいです。


フランスの研究者


<関連記事>

「フランス人の夫の元妻との離婚理由は宗教だった・・」

「宗教に傾倒しすぎる義理の息子 フランス人の宗教」

「娘の卒業式」

「バイリンガルになった娘の就職」

「アカの他人の外国人のオッサンと暮らしている不思議」

 

 

2022年10月21日金曜日

コロナウィルス第8波のピークとオミクロンBQ.1.1

  


 フランスのコロナウィルス第8波は、先週に、1日あたりの新規感染者が6万8千人近くの数字を記録したのをピークに若干の減少傾向にあると言われています。しかし、依然として6万人前後の高い水準を維持しています。

 10月20日の時点では、入院患者数は、前日より38人多い20,110人を記録しており、新規感染者の減少とはうらはらに、未だ増加を続けています。感染から発症、悪化の時間差によるものとも思われますが、未だ安心できないのは、オミクロンBQ.1.1というオミクロンの新しい変異種の出現もあります。

 第8波と言われているフランスでは、パリでもメトロの中などは、少しマスクをしている人が増え、それなりに警戒している人もいるのだと思わされますが、この新しい変異種については、あまり騒がれてはいません。というか、コロナウィルスに関する報道はかなり縮小されています。

 しかし、これまでの感染の大半を占めてきたと言われていたオミクロンBA.5から新しい変異種であるオミクロンBQ.1.1に変化しつつあるということは、これまでの感染の波が新しい変異種の出現とともに感染の増加が起こってきたことを考えれば、容易に第8波は過ぎ去ったと言い切れない懸念を残しています。

 BQ.1.1は、すでにナイジェリアで広く流通しており、また、アメリカ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、イタリア、オランダ、イギリスでも増加傾向にあります。フランスも例外ではありません。

 10月16日の時点で、このBQ.1.1の割合は、前週の7%から16%に増加したと、フランスの公衆衛生機関が発表しています。妙な言い方ですが、新たに変異しているだけあって、BQ.1.1はBA.5より成長力があります。

 BQ.1.1は「厄介な変異に満ちている」ため、「我々の免疫系の反応を脅かす可能性がある」とともに、また、多くの科学者がこの新しい変異体が引き起こす症状(下痢や嘔吐を引き起こす特殊性がある)について懸念しています。

 発熱や嗅覚障害よりも、むしろ、消化器系の問題を引き起こす場合、患者はコロナウィルスとの関連性を認識しなくなるため、風邪や他の疾患だと考えて検査を受けずに感染が広がってしまう危険性も懸念されているのです。

 しかし、現在、急成長中のオミクロンBQ.1.1はもちろん懸念される問題ではあるものの、WHO(世界保健機構)では、オミクロンの亜系を全部で300以上リストアップしています。BQ.1.1は、その一つに過ぎないとも言えます。

 今や体調を崩すと、私も、まずは、もしもコロナに感染したかも?とすぐに検査に行きますが、それが消化器系の問題出会ったりした場合は、検査には、行っていなかったと思うので、今やどんな体調の悪化に際しても検査をしなければならないほどコロナウィルスの症状は多岐にわたっているのかもしれません。

 ちょっと風邪をひいたくらいでは、あまり医者にかかったりしませんし、医者に行ったところで治療薬があるわけでもないのですが、周囲の人に感染を広げないためには、具合が悪くなったらまず検査に行くということは必要なわけで、そんな生活はまだまだ終わりそうにありません。


オミクロンBQ.1.1 コロナウィルス第8波


<関連記事>

「コロナウィルス第8波 公共交通機関(閉鎖空間)でのマスク義務化検討中」

「今週から始まるフランスの第8波対策ワクチンキャンペーン 3回目のブースター接種も可能になる」

「体調不良で一気にダウン・・インフルエンザかコロナか? まずはコロナの検査から・・」

「娘がコロナウィルスに感染しました」

「フランスのコロナウィルス第8波の始まり」

「秋には、コロナウィルス第8波が来るのは確実 EUオミクロン対応新型バージョンワクチン確保」




 

2022年10月20日木曜日

12歳の少女殺人事件が呼び起こす極右政党の移民叩き

  


 パリ19区で12歳の少女がトランクの中で死体で発見された事件は、あまりに残酷で衝撃的な事件で、先週、死体入りのトランクが彼女が住んでいた建物の近くの中庭で発見され、容疑者と見られる女性が逮捕されて以来、大騒ぎになっています。

 トランクの近くには、2つのキャリーバッグが転がっていたという遺体を隠そうともしない放置の仕方も不可思議です。

 被害者の両親は、彼女が金曜日の午後に学校から帰ってこないことを心配して、娘の行方不明を警察に知らせ、パリ東部にある自分たちの住居にこの見知らぬ若い女性がいることを通報したのです。

 この見知らぬ若い女性は、彼女が学校を出てから数分後、姿を消すまでの間、建物の監視カメラに少女と一緒に映っていた人物でした。

 発見されたトランクの中の遺体には、喉に複数の傷があり、体は布に覆われ、縛られて丸まっていました。検死の結果、死因は窒息死と判定され、被害者の両足の下に赤で0と1が書かれていたと検察庁は発表しています。

 容疑者は24歳のアルジェリア出身の住所不定の女性で、2016年に学生ビザで合法的にフランスに入国していましたが、2022年9月21日以降、フランス領から退去する義務を負っていたと伝えられています。

 彼女は8月21日にフランスの空港で滞在許可を取得していないため、フランス領からの出国義務(OQTF)を課されていますが、前科がないため、行政拘置所には入れず、30日の帰国期限付きで自由にしてもらったという経緯があったようです。  

 彼女は警察からは、ノーマークの人物で、2018年にDVの被害者として警察に記録されていたといいます。

 彼女の姉がこの被害者と同じアパートに住んでいたということ以外、彼女と被害者との接点はなく、なぜ彼女が殺されなければならなかったのか? 犯行の動機などは、解明されていませんが、犯行前後の彼女の動向を目撃した人々の証言からも、到底、普通の精神状態ではなかったことは明らかで、彼女は「15歳未満の未成年者の殺害」と「拷問と野蛮な性的行為を伴う強姦」の罪で起訴されていますが、彼女が供述を度々、翻すことで、事情聴取はが難航している模様です。

 彼女は、当初「少女を、同じ建物に住む姉のアパートに引きずり込んだ後、シャワーを浴びさせ、死に至る性的犯罪やその他の暴力を行った」と話していましたが、その後、「子供を殺すなんて有り得ない」とか、「夢を語ったのであって、現実は違う」とか、「幽霊と戦った」とか、「私もレイプされ、目の前で両親が死ぬのを見ました」と、一貫しない供述を続けており、同時に精神鑑定が行われているようです。

 地域の住民の目撃者は「彼女はトランクを持ち歩いていて、カフェの前でトランクを置いて、向かいのパン屋にクロワッサンを買いに行って、何事もなかったかのように戻ってきた」と証言しています。

 死体の入ったトランクを持ち歩いてクロワッサンを買いに行くという神経も信じがたいのですが、彼女は、荷物を持ったまま近所に戻り、ローラと同じアパートに住む姉のベルを鳴らし、姉に詰め寄られた結果、アパートの中庭にトランクを捨ててしまったとも言われています。

 この衝撃的な事件は、地域の住民にも深いショックを与え、彼女のアパートには、多くの住民が訪れ、花を供え悲しみと恐怖の感情をあらわしています。

 彼女が在籍していた学校と周辺の学校の生徒と職員のために、心理的サポートのチームが設置されました。19区の市長は住民の感情がピークに達しているため、精神科医を派遣することを発表しています。

 週明けにはマクロン大統領がこの被害者の両親を迎え入れた・・という話が流れ始めてまもなく、この事件は火曜日に国民集会(RN)と共和党(LR)の主導で国民議会で政治的な展開となり、極右と右派が「不法移民との戦いにおける政府の無力さ」を糾弾しています。

 不法移民に対しては、例えば、彼女がフランス領からの出国義務(OQTF)を課されているにもかかわらず、猶予期限の1ヶ月を過ぎているのに、追跡していないことは、解せない話ですが、極右と右派の不法移民の排除、しいては移民自体の排除問題にまで発展しかねない感じもあり、この無惨な12歳の少女の殺人事件が政治に利用されているようで、痛ましい気がしてなりません。

 

 公開されている容疑者を見ると、本当にどこにでもいそうな若い女性であることに、なおさら恐ろしさを感じずにはいられません。

 彼女の姉の証言によると、「妹は社会になじめず、夜中に目を覚まして支離滅裂な発言をすることもあった」と語っています。

 フランスでは、わりと事件があっても、加害者の家族や被害者の家族がマスコミに顔出ししたりすることもあるのが驚きですが、今回はさすがに両者ともに、マスコミには登場していません。
 
 私もこの事件を見て、やはり、フランスでは送り迎えが必要なんだな・・と思ったりもしましたが、これが移民問題に飛び火していく様子には、ちょっと納得いかない気がしてなりません。
 
 何よりも被害者家族にとって、深い悲しみの中、正義をふりかざしながら、被害者感情を捨て置くだけでなく、真相も解明されていないうちから、鉄は熱いうちに打てとばかりに事件を利用して騒ぎ出すのは、あまりに忍びなく、やるせない気がするのです。

 被害者の少女の両親は、書面にて、「恐怖と苦痛の中にいる私たちは、平和を願い、嘆くために瞑想しています。娘のために、私たちは葬儀が政治やメディアの扇動から遠く離れて、静けさと穏やかさの精神で行われることを望んでいます」と声明を発表しています。


12歳少女殺人事件 移民問題


<関連記事>






  




2022年10月19日水曜日

バゲットの値上げとお金のない人のお金の使い方

  


 INSEE(統計経済研究所)によると、昨年平均90セントで売られていた標準的なバゲットの価格は、1.20ユーロ(約175円)に近づく可能性があると言われています。欧州全体では、パンの価格が1年で18%上昇したと言われているので、フランスはまだマシな方なのかもしれません。

 しかし、そう言われても、すでにかなり前からバゲットの値段は1ユーロを超えていたような気がするのですが、あくまでも平均価格での話なので、スーパーマーケットで10本5ユーロとかいうようなバゲットも当然入っているわけで、最近、気のせいか、スーパーマーケットで、この10本セットなどのバゲットを抱えている人が増えたような気がします。

 上の写真の10本セットのバゲットは、1本だと52セントで10本セットだと5.20ユーロで、たくさん買ったところで別に安くなるわけでもないんだ・・と思いきや、10本買うと1本オマケについてくるらしい・・つまり1本あたり47セント(70円くらい)になる計算です。

 なかなかギリギリな感じですが、5人家族が多いフランスの家庭ではこの10本のバゲットもあっという間に消費してしまえる量なのでしょう。

 一般的には、バゲットはフランス人家庭にとっては、主食であり、毎日、確実に消費する食品なので、バゲットの価格はある程度の経済指標の一つになるのです。バゲットはフランス人の家庭にとっての主食であり、おやつでもあり、子供のグーテ(学校に持っていったりするおやつ)には、バゲットにチョコレートクリームや時には板チョコを挟んだりして持たせる親も少なくありません。簡単だし、いつも家にあるもので、安上がりなフランス人の子供のおやつです。

 バゲットを焼くオーブンは、ガスや電気で稼働しているので、そもそも値上がりしたと言っても高くない単価のバゲットなどのパンに関して、このエネルギー価格の高騰は大変な痛手で、原材料価格の小麦、バター、卵、人件費、パンを包む紙袋まで、全ての価格が上昇し、小さいパン屋さんなどには、とても持ち堪えられない事態。

 おまけにスーパーマーケットなどの大量生産で価格を下げる戦法には、とても太刀打ちできません。2023年度予算では、従業員10人未満の企業には来年度も関税の軽減措置が適用されることになっており、これは多くのパン屋さんに関係します。

 私自身は、それほど定期的にバゲットを食べているわけではないので、この値上げにあまりピンと来てはいないのですが、最近、レストランに行くと出てくるパン(バゲット等のハード系のパンが多い)の量が減ったな・・と感じています。(足りなければ、頼めば追加で出してくれるとは思いますが・・)

 そもそもレストランでは日本だと、パンは行くとまず出てくる水のようなもので、パンは頼まなくてもまず出てくるものなので(食事の場合)、なんか、これでもか!というくらい山盛りで出てきていたイメージがあるのですが、それが、最近、このパン山盛り感が減った気がしています。

 まあ、パンを目当てに行っているわけではないし、パンばかりでお腹を膨らましては残念なので、私にとっては、全然OKなのですが、やはりパンがないと食事にならない・・という人もいて、夫の友人のパン好きの人は、ピザを食べてもパンが欲しいとか、日本食も好きなんだけど、日本食のレストランはパンが出てこないから行かない・・などという人もいるのです。

 全てが値上がりしているため、パン屋さんだけでなく、レストランなども緊縮財政での営業なのだと思いますが、価格の高騰を嘆くわりには、フランス人は外食が好きで、価格の高騰で生活苦を訴えるデモに数万人動員・・などと言っているわりに、こんなものにこんなに払ってまで外食する?また、ランチタイムなどのテイクアウトのサンドイッチやサラダなどが結構な値段にもかかわらず、けっこう売れているのは不思議です。

 自分で稼いでいるお金、何にどう使おうと勝手といえば、勝手なのですが、午前中の休憩時間などに、毎日のように、たむろして、クロワッサンとカフェなどを食べたり飲んだりしている決して高給取りとは思えない人々になんだかモヤモヤするのです。まあ、これが中途半端に高いのですよ・・。

 先日、日本では、「貧因層ほどコンビニで割高の買い物をしている」などという報道を見かけましたが、細かいながらも蓄積される消費を抑えないのは、フランスでも同じなのかな?と思ったりもします。

 ましてや、フランスは一般的に外食は高く、10ユーロ(約1,450円)以下で食事ができることは、かなり稀なのです。

 もともと私はケチなので、支払う金額に対してそれなりの価値がなければ、外食をする気にはなりません。外食をする場合は、家で自分で作れないもの、またお店の雰囲気や空間が心地よいと感じられる場所に限られるので、そんなに外食する機会が多いわけではないのです。

 しかし、「貧因層ほど無駄なお金の使い方をする」というのは、フランスでもまた、同じかな?と感じるのです。


バゲット値上げ 貧因層


<関連記事>

「チーズとバゲットが好き過ぎるフランス人の夫」

「娘の初めてのおつかい 近所のパン屋さんの超絶美味しいバゲット」

「フランスに来てからの食生活の変化」

「フランスの食品廃棄物救済アプリ Too Good To Go」

「パリの日本の食パンブームの波 Carré Pain de Mie カレ・パン・ドゥ・ミの日本の食パン」

「アメリカのものが嫌いなフランス人の夫」




2022年10月18日火曜日

些細なもので、感動できる「海外生活のおタカラ」の日本食

  


 日本に一時帰国する際には、入念に日本で買ってきたいものをリストアップ(ほぼ食糧)し、日本に滞在している間は、躍起になってそのリストアップされた食糧を探し回ることになるのですが、もう久しぶりに行く日本のスーパーマーケットは、欲しいものだらけで、大変な興奮状態になります。

 賞味期限等もあるので、ものによっては、買うタイミングを図りつつも、買い物に行けば、セールになっていたりすると、ついつい手が伸びてしまい、荷物をパッキングする際には、通常スーツケース1個あたり23キロに制限される荷物をギリギリ、プラスマイナス1キロ以内にまで調整するのに汗だくになり、期間中に頂いたものなどを併せると、結局、いつも泣く泣く置いて帰らなければならないものがでることになります。

 しかし、フランスに帰ってきて、山のような荷物を納めるところに納めてしまうと、案外あっけなく、何もなかったように納まってしまうのも、ちょっと寂しい気さえするほどなのですが、それでも日本から持ち帰ったものでいっぱいになっている冷蔵庫などを眺めるにつけ、自然と笑みが溢れてくるものです。

 なまものに関しては、賞味期限が短いので、案外あっさりとなくなってしまうのですが、逆にインスタントラーメンなどは、賞味期限も長いために比較的長いこと保管していることになるのです。

 今やインスタントラーメンなどは、パリでは行くところに行けば、買えるものではあるのですが、種類もそんなに多いわけではなく、日本から持ち帰ったものというのは、やはり特別な思い入れがあるわけで、ここぞと言う時の「ご褒美」、落ち込んだりした時の「元気の源」になるわけで、「とっておき」のおタカラとして、抱え込むのであります。

 そうなってくると、案外、忘れて賞味期限切れになってしまう場合も少なくないのですが、海外生活では、賞味期限にもかなり寛容になり、少々の賞味期限切れなどは意に介すこともなくなり、おおよその目安と化しています。

 そのとっておきのラーメンなどを食べるときには、本当にそれで、かなり癒されるもので、この喜びは海外生活ならではの感動だな・・とむせび泣く思いでラーメンを啜るのです。

 このささやかな喜びは日本に住んでいたら、ごくごくあたりまえの普通のことになり、なんの感動もなくなると思うとラーメン一つでこんなに感動できる海外生活というのも、悪くないな・・と思うのです。

 やはり、日本食と見れば、大興奮で一時帰国の際には、テンション高く私と買い物をしていた娘は現在は、日本で仕事をしているので、さぞかし食生活には満足しているかと思いきや、やはり、毎日の日常になれば、さしたる感動も失せ、しらっとしていることに、なんだか目を輝かしながら一緒にスーパーマーケットを回っていた同士を失ったようで、今後は一人でやたら興奮しながら買い物をするであろうと思いつつ、なんか、彼女はあの感動を失ってしまったことが気の毒な気さえしてくるのでした。


海外での日本食材


<関連記事>

「潤沢な日本食材を目の前にして思うこと 満ち足り過ぎると幸福に鈍感になる」

「フランスで日本の餃子(GYOZA)が浸透し始めた!」

「海外に持ち帰れる、おススメ日本の食料品」

「脅威の時差ボケ 私は日本の食材の山を見ただけで時差ボケする」

「パリで日本食を作るためにする買い物 タン・フレール(アジア食材店)のおススメ商品」






2022年10月17日月曜日

パリのモーターショーと電気自動車購入のためのボーナスとガス欠

  


 今週からモーターショー(自動車国際見本市)が、4年ぶりにパリに戻ってきます。通常は、1年おきに開催されているパリのモーターショーは、2020年にはパンデミックのために開催が中止されたために、実に4年ぶりの開催になります。

 しかし、例年は、2週間で100万人が集まる大規模な人気のイベントでしたが、今年は自動車業界の複雑な状況から規模を縮小して行われ、主催者は、今年の来場者数を1週間で、30万人から40万人とすることを目標としています。

 メインのフランスのプジョーとルノー、シトロエンと共に中国とベトナムの電気自動車ブランドが大きなブースを構えて欧州進出を狙っています。

 ルノーは新型ルノー5と一緒に展示される電気自動車SUV、新型ルノー4を展示、プジョーはジープ、DSの新型車を発表、シトロエンは「サスティナブル」をコンセプトとしたOLIを先行公開します。

 しかし、このモーターショーが盛り上がりにかけるのには、ドイツ車、日本車が出展していないこともあり、BMWとフォルクスワーゲンは、子会社のミニ、シート、ブガッティ、ランボルギーニとともに参加しない予定です、日本車に関しても不参加と噂されており、話題には上がってきていません。

 このモーターショーを前にしたタイミングを図ってのことだと思いますが、前日には、マクロン大統領は、国民に向けて、電気自動車購入の際に所得の低い層の国民に対して(全世帯の約半数)のボーナスを6,000ユーロから7,000ユーロに増加することを、同時に電気自動車の充電ステーションにエネルギー価格の関税シールドを拡張することを発表しました。

 この電気自動車購入のためのボーナスは、電気自動車がガソリンやディーゼル車に比べてはるかに高額であるにもかかわらず、多くの国で市場が離陸する手助けとなってきましたが、このボーナスは、47,000ユーロ以下で販売される車、すなわちルノー メガーヌやプジョー2008などの小型電気自動車やSUVが対象で、テスラは対象外です。欧州製の車の購入に対するメリットの強化を計っています。

 同日、ボルヌ首相はこれまでのガソリン1リットルあたり30セントの援助を11月中旬までに延長することを発表しています。

 しかし、大統領、首相のそれぞれの発表には、国民はさして関心を寄せてはおらず、どちらかといえば、「今ごろ何を的外れなことを言っている!」「まず、給油も満足にできない状態をなんとかしろ!」と、反対に国民の怒りを買う始末。

 ボルヌ首相は現在の製油所のストライキについて、「私たちは、ストライキの権利は尊重しています。しかし、組合とは過半数の同意を得て交渉を締結しているのだから、少数派の意見の人々がいつまでもストライキを続けることは、あり得ない、会社側も従業員を説得する努力をする必要があり、責任がある」「しかし、もしも明日もまた、状況が非常に緊迫していれば、徴発(強制的に仕事をさせる)を行うことができる」などと言及しているものの、彼女の言っていることはいちいちもっともなことではあるのですが、どうも彼女のキャラクター?からか、厳しい学校の先生のような感じで一般庶民にあまり行為的に受け入れられる感じがしないのも残念なところです。

 ガス欠で車が動かなくなる車が多いのか、最近、レッカー車をよく見かけるようにもなり、ガス欠で仕事に行けない、店舗なども品物が届かない、来週から始まる予定のバカンスにも行けない・・状態で、電気自動車購入のボーナスなどの話をされたところで、それどころではない!政府は悉くタイミングがズレている!といって国民の怒りを買うのも致し方ない状況なのです。


パリ モーターショー 電気自動車購入ボーナス ガソリン不足 


<関連記事>

「必須アイテムになったガソリンスタンド検索アプリ pénurie mon essence」

「フランスのガソリン不足が炙り出す格差社会の悪循環」 

「ガソリンスタンドにガソリンがない トータルエナジーズ ガソリン切れのため一部休業」

「2035年にはヨーロッパは電気自動車だけになる」

「フランスに女性新首相エリザベット・ボルヌ現労働相が就任」