2022年9月1日木曜日

ロシア 大手ガスプロム フランスへのガス供給 完全停止の衝撃

  


 ロシアの大手ガスプロム社は、9月1日からフランスへのガス供給を停止すると発表しました。同社は、「エンジー(Engie)(フランスの電気・ガス供給会社)グループが7月分の請求書を支払っていない」とこのガス供給停止を正当化しています。

 フランスは戦争が始まる前までは、17%のガスをロシアから輸入していましたが、現在は9%にまで落としています。最近ではフランスにガスを供給しているのは、ノルウェー(36%)や、アルジェリア、アメリカなど、供給源の多様化が進んでいます。

 ウクライナ紛争が始まって以来、エンジーへのロシアからのガス供給はすでに大幅に減少しており、最近では1ヶ月あたりわずか1.5TWhにまで落ち込んでいるとエンジー社はすぐに反応しています。

 つまり、契約時の量のガスが供給されていないために、エンジー社は実際に受け取っている分だけ支払いをしていると言っているのです。

 ロシア ガスプロム側は、ガス供給量の減少をメンテナンスのためと説明していますが、これが(メンテナンス)本当かどうかは別問題としても、受け取っていない分を支払わないのは、至極当然の道理です。

 しかし、エンジー社にとっては、これは、ある程度、予想していたことだと述べており、ガスプロムのフローが途絶えた場合でも、顧客に供給できるような対策をすでに講じているとし、逆にガスプロムに違約金を求めることを発表しています。

 もともと、ロシアのウクライナへの侵攻も、まともな理屈が通らない中、ロシア側が言い出す理屈や難癖には、世界中が閉口しているところ・・。現在のロシアとの商談、約束は成り立たないと考えるのが妥当なのかもしれません。

 先週の段階で、欧州のプラットフォームAgregated Gas Storage Inventory(AGSI)は、「フランスのガス在庫は冬に向けて90%の基準を超え、フランスは11月までに100%の目標を達成する見込みである」 と述べていることから、すでにロシア側がこのような難癖をつけて、武器を使わない攻撃を欧州向けに行おうとしていることを見通していたものであったと言えます。

 しかし、一方で、政府スポークスマンのオリヴィエ・ベランは、報道インタビューで「夏の終わりまでに、ガスの在庫目標を達成することを確認したが、これは、ロシアがガスを切断し、その多くが消費された場合に、フランスが冬を越すのに十分なガスを蓄えたということではない」と警告しています。

 それで、ここのところ、エリザベス・ボルヌ首相が国民に対してのみならず、各企業に対して具体的に10%の節電計画を10月までに作成するように呼びかけたりしていることの裏付けが表面化してきた気がしています。

 エリザベス・ボルヌ首相は、エンジーの顧客を安心させるために、「フランスのガスグループは他の供給源を見つけた」と述べていますが、具体的な供給源は明示していません。(日本政府が国葬の費用を明示しないのとは、わけが違うなどとチラと頭をかすめました)

 とりわけ、2021年の冬から禁止されると言われていたのに、結局は延期されていたカフェなどのテラス席の暖房は、今年こそは、本当に禁止になるかもしれません。

 しかし、このような現実の報道は何よりも国民への節電への求心力になるとも考えられ、現在、ロシアから供給されているガスがすでに4%まで落ちていたとしたら、4%の節電、省エネを考えることも方策の一つなのだ・・と、これから、私も省エネに努めようと思います。


ガスプロム フランスへのガス供給停止


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2022年8月31日水曜日

固定資産税の増税と未申告プールの税金徴収1,000万ユーロ

 


 毎年夏のバカンスの時期の終わりになると、3,000万人以上の住宅所有者が固定資産税の請求を受け取り、現実に引き戻される嫌な時期を迎えます。

 固定資産税などの税金は、毎月、引き落としで支払うこともできますが、毎月、支払っていない世帯に対しては、10月中旬に一括で納めることになります。

 今週から固定資産税の納税通知書は、オンライン化されています。お役所仕事は、とかくスムーズに運ばないフランスでも、本当に税務署だけは、しっかり働きます。

 価格の上昇は、エネルギーや食料だけではなく、あらゆるものがインフレに直面して、政府もまた、固定資産税の計算の基礎となる地籍上の賃貸価格を3.4%再評価することを決定し、2022年予算で議決させています。これは、ここ数年よりもはるかに大幅な増加です。

 これにより、フランスのいくつかの都市で固定資産税が引き上げられ、マルセイユや、アンドル・エ・ロワール県のトゥールでは、1年で15%以上引き上げられ、その他の場所でも続々と固定資産税は高騰しています。それにしても、15%引き上げとは、なかなか穏やかではありません。

 パンデミックをきっかけに、リモートワークが浸透した結果、家賃の高いパリを離れて、地方都市に家を買って引っ越す人が増えましたが、引っ越した先でも今度は固定資産税増税とは、厳しい世の中です。

 地方都市の家が売れて嬉しい悲鳴をあげていた不動産業者も固定資産税の上昇は、地方での家を購入する大きな躊躇いの原因となることを懸念しています。

 また、税務署は、今年の固定資産税の徴収に向けて、未申告の増築、ベランダ、駐車場、物置、プールなどの追跡にも力を入れ始めました。これは、昨年10月から、財務省が始めた家の庭に隠れた未申告プールを追跡する実験に端を発しており、グーグルとキャップジェミニが開発した人工知能ソフトウェアが使われ、衛星画像をもとに納税者の申告と比較が行われ、未申告部分の取り立てを行うわけです。

 一般的に固定資産税の計算のため、不動産の賃貸価値を高めるような工事は、地面に固定されている限り申告が必要で、建物の拡張はもちろん、テラス、ベランダ、庭の物置、プール、駐車場、部屋の増設なども含まれ、工事完了後90日以内に申告書を提出しなければなりません。

 また、固定資産税に加え、増築部分には開発税がかかる可能性があります。これは、建築許可や工事の事前申告など、計画的な許可を必要とする工事に関するものです。物置の表面積が5㎡を超えると有料になります。

 今年の夏はこの追跡のおかげ?で未申告であったプール2万箇所が発見され、財務当局には、1,000万ユーロの収入となりました。今年の夏は実験的に行われた調査でしたが、これに味をしめた財務省は、これを全国規模に拡大し、一般化することを発表しています。

 都市計画法により、工事の申告を怠った所有者は、建築面積1㎡あたり1,200ユーロから6,000ユーロの罰金が課せられます。

 まあ、もともと払わなければならないものを払うことになっただけではありますが、特に今年のプールの摘発については、干ばつによる水不足のため、思う存分使用できなかった人もいて、気の毒な気もしますが、工事終了から90日以内に申告した場合は、2年間固定資産税が免除される特典があります。

 どちらにしても、私には、財産もなく、何も持たない私には、関係ない話で、何も心配することはありません。

 何かを持てば持つほど管理や手間がかかり、身軽なのが一番!と思うのは、私の負け惜しみでしょうか?


固定資産税増税 未申告プール摘発


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2022年8月30日火曜日

フランスの物価上昇と年度始まりの100ユーロのインフレ手当

  


 ここのところ、買い物に行くと、ちょっとギョッとするほど、あらゆるものの価格が上がっているような気がします。普段、具体的に正確な値段を把握していなかったものでも、値段を目にして、「えっ??」とびっくりして、伸ばした手を引っ込める感じで、そんな感じで手を引っ込めていたつもりで買い物しても、最後にレジで、また、「えっ??」そんなに買っていないはずだったのに・・とウンザリします。

 かなりボーッとしている私が気付くほどの値上げなので、よっぽどなのだろうと思うし、散財してしまった・・というわけでもないのに、どんどんお金を使っているというのは、ちょっと恐ろしい気がします。

 それでも、ヨーロッパの中では、まだフランスは物価上昇率はマシな方だと言われていますが、7月の物価上昇率は、全体で約 6.1%と発表されています。でも感覚的には、もっと上がっている気がします。

 ちなみに、日本はどの程度なのかな?と調べてみたら、総務省統計局の発表では7月の物価上昇率は 2.6%でフランスに比べるとだいぶ緩やかなようです。

 大統領選挙を前後して話題にあがっていたインフレ手当(当初はフードバウチャーと呼ばれていました)は、ずっと先延ばしになっていましたが、9月の新年度開始を前にして、9月半ばに1人あたり100ユーロが支払われるようです。

 しかし、今回は、常態的にRSA、RSO、AAH、APL、ASS、AFIS、AVFS、AER、ASPA(障害者、家族・社会生活支援、住宅支援、連帯配分等)などの社会支援を受けて生活している人に限定されており、前回のインフレ手当に比べると対象となる人は少なくなる印象ですが、奨学金を受けている学生(該当者は約150万人)も、一定の条件下で支給されます。

 それでも該当するのは1,100万世帯にまで、のぼると言われており、基本1世帯あたり100ユーロ、扶養家族1人あたり、追加50ユーロが支払われます。ですから、例えば、3人の子供を扶養している家庭は、250ユーロを支給されることになります。

 この給付金を受け取るためには、何の申請もする必要はなく、自動的に口座に振り込まれるようになっているようです。

 このあたりは、フランスの良いところで、最も貧窮している人に対する援助は、一度、基本的な手続きをしていれば、かなり円滑です。

 しかし、この100ユーロがどの程度、助かるのかと言えば、未知数でもあり、全てが値上がりし続けている現在の状況を考えると、当然、値上がりしている物価のために泡と帰すだけの話で、元の原因を排除していただかない限り、解決しない問題です。

 同時にフランス政府は、国民、企業に向けて、できる限りの節電の呼びかけを始めました。特に企業に向けては10%の節電計画を建てるようにと具体的な数字までを示しています。冷房があまり普及していないフランスでは、電力消費は主に冬に消費量が上がります。まだ、ようやく暑さが和らいできたばかりの段階で、もう節電の呼びかけとは、あまりに用意周到で、逆に空恐ろしい気もしています。

 物価高騰・インフレによるものや、電力供給確保のための節電など、しめつけられる感がなかなか強まっていきます。

 まさに、マクロン大統領が言っていた「豊かさの終焉の時」を実感する日々です。

 日本の物価上昇は、フランスほどではないようではありますが、貧窮する家庭に対する社会保障はあまり良さそうではない印象。どちらが生きやすいのか、考えてしまいます。


フランスのインフレ手当 100ユーロ


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2022年8月29日月曜日

海外在住と日本の家族 独り残された父

 

  


 海外に在住することを決めた段階では、私の場合はあまり詳しく後先を考えていませんでした。別に海外に永住すると心に決めていたわけでもないし、もしも私がもう少し思慮深い人間で、後のことまで色々と心づもりをして考えていたら、海外に移住することなどできなかったかもしれません。

 しかし、私だけでなく、周囲の家族を含めての、すべての人々の先のことなど想像がつかないことでした。

 だからといって、海外に移住したことを後悔しているわけではありませんが、最も困ったことの一つは、日本にいる両親が歳をとっていって、健康を害する場面に直面したときだったような気がします。

 娘が生まれて、私がフランスで就職して約1年後、バカンスが取れるようになってからは、娘を連れて毎年のように日本の両親に会いに行っていましたが、本当に一緒に買い物に行ったり、山荘に行ったりと、楽しいばかりの日本への帰国は、最初の数年だけでした。

 その後は母の心臓病が悪化して、急に入院したと聞いて、慌てて日本に帰国して、退院してから母が家で過ごしやすいように実家での母の生活環境を整えたり、介護保険の申請に行ったり、それから先、母は数年、なんとか家で寝たり起きたりの生活を続けていましたが、普段、何もできないからと日本に行った時には、家の家事から何から全て私が請け負いながら、娘を日本の小学校に体験入学をさせてもらったりとまるでバカンスとは思えない忙しい時間でした。

 しかし、今から思い起こすに、それでさえ、母が生きていてくれた頃はそれはそれで、かけがえのない楽しい時間でした。

 母は、結局、69歳で亡くなり、1人残された父は当時72歳でした。父は子供の頃から、ずっと同じところに住んでいたこともあり、今さら自分が他の場所で暮らすということなど微塵も考えていなかった様子だったし、当時から、私も弟も海外在住だったため、父と同居するということは、考えていませんでした。

 72歳にして初めて一人暮らしをすることになった父は、そこまで心配される持病があるわけではなく、少しずつ時間をかけて、独りの生活を築いて行ったようです。幸いにも父の兄弟家族が同じ敷地内の別の家に住んでいたことも、彼にとっては何よりも心強いことだったと思います。

 それから、10年くらいは、碁会に通ったり、ネットに挑戦して株式投資をしたり、友人と旅行に行ったりと、父にこんなに親しくしていただける友人がいたのか?とびっくりするほど、それなりに楽しく暮らしていたようです。

 その間、私の方は、フランスで夫が急に亡くなるということもあったりして、しばらく、日本には行けない期間が数年ありました。

 途中、東日本大震災で日本が大変なことになっていると言う時には、もしも、日本が危険なら、フランスに来たら・・と父に話したことがありましたが、当時、アメリカにいた弟も同じことを父に話していたようで、父は、長期間、家を空けることはできないからと私たちには、断っていましたが、周囲には、アメリカからもフランスからも避難してくれば?と言ってくれていると嬉しそうに話していたそうです。

 当時、父はすでに引退していて、長期間、家を空けられないというのも、私には、よく意味がわかりませんでしたが、後々になって考えるに父にとって、住み慣れた家への執着というものはかなり大きなものであったことをしみじみと思わせられました。

 以前、親をフランスに呼び寄せたという知人がいましたが、しばらくフランスで一緒に生活したものの、結局、日本で介護施設に入れることになったようです。

 日本で生まれ育ったはずの自分の子供が2人とも海外生活を送っているというのは、そうそうあることではないことなのかもしれませんが、我が家の場合は、まさに日本には、父が独り残ったことになりました。

 フランスにいる日本人の友人などでも、たいていは、他の日本にいる兄弟がいて、彼らが親のことは、彼らに任せているという人が多いのですが、先日も久しぶりに日本に帰国した友人が、久しぶりに母親に会ったら、かなり、危うい感じになっていて、愕然としたと話していました。

 しかし、独りになって、歳をとればとるほど、家や住まいを変えるというのは大変なことで、住み慣れた家、地域とともに、友人や親戚なども全てひっくるめた住まいということなわけで、息子や娘がいるからといって、それらを全て捨てて、海外へ・・とは、なかなか思い切れないのもわかります。

 父は英語は堪能で、弟が住むアメリカには、一度、遊びに出かけたことがあったのですが、フランスは言葉の問題もあったのか、父にとってはハードルが高かったようで、結局、一度もフランスに来ることはありませんでした。

 いよいよ、父も身体が弱ってきた頃には、父からは、特に私に対して、具体的に何か言ってくることはありませんでしたが、周囲の親戚などからは、年老いた親を放ったらかしにしておくのか!!などと、お叱りを頂いたりもして、自分たち(私たち姉弟)は身動きがとれず、弟が父に介護施設に入るように説得したりしたものの、父はなかなか受け入れず、「ここで野垂れ死んでもいいからどこへも行きたくない!」と言い張っていましたが、最後の最後には、体調が回復するまでという約束で施設に入りました。

 当時、私はちょうど娘の大学受験前で、今さら日本へ本帰国するということは考えられず、また、一人親の家庭で、裁判所の監督下にあった我が家は娘が18歳になるまでは、娘を一人にして家を空けるということは絶対にできなかったので、そうそう簡単に動くということもできなかったのです。

 あれが数年ずれていたら、私は日本に帰国していたと思うのですが、当時は私には、他の選択肢はありませんでした。幸い弟は、子供の将来を優先すべきだと理解してくれていたので、助かりましたが、私は私で、色々重なる時には重なるものだ・・と、ちょっと参っていました。

 父が亡くなって、もう数年経ちますが、今、私の周囲では、たとえ親子ともに、日本に住んでいても、親の介護問題に頭を悩ませている人が多く、大変だな・・と思うと同時に、両親ともにいなくなってしまっている私にとっては、ちょっと羨ましかったりもするのです。

 しかし、両親がいなくなってしまえば、今度は自分の番で、私など、元気なうちは、願わくば、フランスと日本と半々くらいで暮らしたいなどと思ってはいるものの、パンデミックや戦争、航空運賃の爆上がりなど、そうそう簡単には、日本には行けない状況になり、ほとほと、予定どおりには、人生うまくは行かないものだ・・とつくづく思っています。

 とかく、人生は思い通りには行きませんが、その時にできることを自分で選択していく積み重ね・・それでも、家族の問題は、海外在住者にとっては、特に大きなハードルでもあるのです。


海外移住 介護問題


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2022年8月28日日曜日

エアフランスのロストバゲージは45日経っても戻らない上に90日後には捜索も打ち切り

  


 今年の夏のバカンスシーズンの始まりのシャルル・ド・ゴール空港は、航空会社や空港職員や消防隊員のストライキのためにフライトキャンセルや空港のシステムダウンも重なって大混乱となりました。

 特に、飛行機に搭載されないまま出発した人の荷物がシャルル・ド・ゴール空港に置き去りにされ、この期間に出たロストバゲージは3万5千個と言われており、山積みにされたまま放置されているスーツケースに当事者ではない私でさえも、ゾッとしたくらいでした。

 シャルル・ド・ゴール空港での出来事のため、当然、一番、被害の多かったのはエアフランスのフライトに関するロストバゲージが大部分だったようで、当初はエアフランスは、「1週間以内には、荷物を届ける」と発表していたものの、その後、長い間、そのスーツケースの山がなくならなかったという話も聞いていました。

 それは容易に想像がついた話で、その後もバカンスシーズンで毎日、1,000機以上の離発着便の荷物の処理だけでも人員が足りない中、フランス人が残業してまで、このロストバゲージを積極的に片付けていくとは、とうてい思えませんでした。

 そして、そろそろ、夏のバカンスも終わりという今の時期になって、まだ、空港に残されているスーツケースが800個以上あることを聞いて、唖然と言う気持ちと、やっぱり・・という気持ちと、それでも、ずいぶん減っていたんだ・・という気持ちが混在しています。

 いくら、長々とバカンスを取るフランス人とはいえ、もうそろそろ2ヶ月近くも経てば、さすがにロストバゲージの持ち主はバカンスから戻っているのに、それでも、まだ自分の荷物を受け取れないというのは、どう考えても異常です。

 フランスの法律では、ロストバゲージから21日後には、航空会社が無くなった荷物に対する補償金が支払われることになっていますが、これはなくなった荷物に対する補償金のみで、バカンスを台無しにされた慰謝料は含まれていません。

 私は、これまでにロストバゲージの被害に遭ったのは、1度きりで、しかも、完全に荷物が無くなったわけではなく、「なにも荷物は同じ飛行機で届けるとは言っていない」とばかりに、「届けるんだからいいでしょ!」という感じで、当然のように到着の翌日に荷物は滞在先のホテルに届けられましたが、それだけでも、当時の私は憤慨し、一晩、着替えも何もなく、不便な夜を過ごしたことに腹をたてていましたが、今回のシャルル・ド・ゴール空港のロストバゲージは、ちょっと桁違いの被害です。

 しかも、それに加えて、エアフランスは、90日後には、荷物の捜索も打ち切るのだそうで、その無責任さに目を丸くしています。

 エアフランスは、パンデミック前には、パリから日本への直行便が1日2便は出ていたこともあり、利用することも結構、多かったし、機内サービスやCAの対応も妙に媚びた感じがなく、スパークリングワインではなく、必ずシャンパンがあるのも嬉しかったりして、決して嫌いではなかったのですが、何回か続けて、ストライキのために勝手に予約便を変更されて、急に自分の予定も変更せざるを得なくなって、慌てたりしたこともあって以来、もうこんなのは懲り懲りだ・・と、できれば避けるようにしてきました。

 今回のようなロストバゲージの話を聞いてしまったら、ただでさえ、できれば避けたいと思っていたエアフランスは、絶対、嫌だ!と思ってしまいます。

 旅行のために持って行ったスーツケースが旅行中には届かずに帰ってきてから受け取るというのも、かなり腹立たしく、虚しいものだと思いますが、それでもさらに長期間、戻ってこないどころか、90日経ったら、もう探してももらえないなど、なぜ、こんな無責任な対応が黙認されるのか、腹立たしいのを通り越して、不思議です。


エアフランス ロストバゲージ 90日後は捜索停止


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2022年8月27日土曜日

フランス 教育革新基金に5億ユーロ投入

  


 私がフランスで仕事を始めたのは、娘が1歳になるかならないかの頃で、初めての子育て、しかも、まだフランスに来て1年も経たないフランスのこともよく知らない状況で、周囲には、子育ての先輩が結構いて、色々と忠告をしてくれました。

 まあ、同じフランスでの子育てといっても、それぞれ、家族構成や生活環境は違い、全てを参考にできたわけではありませんでしたが、私にとっては、大きく2つのことを心に留めていました。

 そのうちの一つは、「放っておいたら、日本語はできなくなってしまうから、心して日本語教育には取り組まなければいけない」ということと、「学校は小学校から中学、できたら高校までは、私立に入れた方が良い」ということでした。

 日本語教育については、別にも書いているので、ここでは省くことにしますが、保育園、幼稚園と経て、少しずつ、フランスでの生活の中で、周囲の様子なども見えてきて、外で目にする子供の様子などを見ていて、これは、下に引きずられたら、大変なことになってしまうだろう・・とやはり子供の学校については、真剣に取り組まなければならないと思うようになりました。

 大人でも同じですが、フランスは上と下の差が激しく、クズは限りなくクズで、クズの予備軍は、残念ながら、子供の時から始まっていることを周囲のゴロつきのような子供たちを見ていて思うようになりました。

 私たちにとっては、引越しのタイミングと重なり、娘の小学校の入学の申し込みをした時には、すでに遅く、娘の入学希望はウェイティングリストに乗せられることになりましたが、たまたま最後のタイミングで娘が良い成績表をもらってきたので、それを希望の学校に送ったところ、学校から面接の連絡が来て、結局、小学校入学時には、娘は私立の学校に通えることになりました。

 それからは、私は、ほぼ、学校についての心配はしておらず、せっかく入れた学校・・追い出されないようにね・・くらいで、その他は、日本の学校とは異なる様々なシステムに「フランスの学校というのは、こんな感じなんだ・・すごいな・・」などと感心させられることも度々ありました。

 私は、娘の通っていた学校にとても満足していたので、その学校に入るまで、公立の学校に行かせて、クズの仲間入りをしたら大変・・などと思っていたことはすっかり忘れて、「フランスの教育はなかなか素晴らしいのに、世間一般を見回すと結果は、これってなぜだろうか?」などと不思議に思っていたくらいでした。

 しかし、後から思うに、娘を通わせていた学校は、世間一般の学校とは、全然、違う学校だったわけで、やはり、周囲の子育ての先輩方に言われていた「小学校からは私立へ行かせた方がいい」という忠告は、まことに有難いものであったと感謝しています。

 どうにか、娘が無事に成長してくれたのも、大きくは、この学校のおかげでした。

 現在の厳しい世の中にハッキリと現実をつきつけたマクロン大統領が、教育についても提言を始め、「私たちの教育システムは、上手く機能していない・・」と指摘し、教育を革新するいくつかのテーマを示し、これにかかる予算「教育革新基金」を5億ユーロを提供することを発表しました。

 やはり、一般的なレベルのフランスの教育には、問題があることを彼は見過ごしてはいなかったのです。

 幼稚園では、子どもの発達への配慮を強化。小学校では、引き続き基礎的な学習を重視し、スポーツの日常的な練習を一般化。5年生からは、週1回の半日授業「アベニール」を導入し、生徒が「多くの職業、特に技術、手作業、関係性のある職業を発見」できる機会を設けます。

 高校については、コアカリキュラムにおける数学の強化を挙げています。ここのところ、フランスの子供の数学の学力低下が語られることもしばしばあり、例えば、ウクライナから避難してきている子供たちがフランスの学校に通うと、フランス語については問題があるのは当然としても、ウクライナの子供たちの数学のは、フランスの学校の1年近く先のレベルだった・・などという話を聞いたりもしました。

 マクロン大統領は、非常に現実的で現実をはっきりと述べるので、嫌われるところもありますが、特に教育に関しては、この下を救いあげる努力、教育に力を入れようとしていることが伺えます。

 フランスはれっきとした格差社会で、なかなかこの差を埋めるのは、容易ではありませんが、少しでも社会の底辺にいる人々に機会を与えるチャンスを設けようとしているのがわかります。

 教育は、すぐに成果が出るものではありませんが、少なくとも将来を担う子供たちの教育についても、他の政策同様、あるいは、それ以上に注力しようとしてくれている社会には、好感をもつことができます。

 また、教師といえば、低賃金のために優秀な人材が集まらないこともあり、教師の賃金についても、2,000ユーロ(net)以下でキャリアをスタートすることはない、また既存の教員については、10%の賃上げを約束しています。

 フランスにいるとはいえ、日本人ゆえ、ついつい比べてしまう日本ですが、現在の教育事情については、よくわかりませんが、少なくとも、子供の教育についての話題が日本の政治家からあまり上がらないことは、とても残念に思っています。


フランス 教育革新基金5億ユーロ


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2022年8月26日金曜日

「私たちは豊かさの終焉の時を生きている」マクロン大統領閣僚理事会での厳しめのスピーチ

  


 マクロン大統領が閣僚理事会を開催し、その冒頭で行ったスピーチが衝撃を与えています。

 マクロン大統領は、世界を襲っている「一連の危機」を振り返りながら、国際関係の非常に厳しいパノラマを描写しながら、非常にインパクトの強いメッセージを発信しました。

 閣僚理事会の席上ゆえ、一応は出席している閣僚に向けての発言ではあるものの、報道カメラが入っている以上、それは、少なからず国民に向けてのメッセージでもあり、同時に国民の不安を煽るものでもありました。

 「私たちは豊かさの終焉、不安のない生活の終焉、先行きの見える生活の終焉を経験しており、コストのかからない流動性の終焉を経験している。水のように、ある素材や技術の希少性が再び登場する。私たちは、今、決して自暴自棄にならずに行動を起こさなければならない」そして「私たちは気楽な時代の終わりを生きているのであって、我々の自由というシステムには犠牲が必要かもしれない」とフランス人の反感を最も煽るようなことも、あえて付け加えています。

 「この大きな変化に直面し、国民は大きな不安を抱えて反応するかもしれません。このような困難に直面したとき、私たちには待つという選択肢はありません。志を持って国を興し、守るべきものを守り、必要とする人を守らなければなりません。」

 「私は真剣さと信頼性を期待します」「このような不安や課題に直面すると、時に何でもかんでも約束したり言ったりしがちです。世界では、人々が望んでいることを言うのが魅力的に見えるかもしれません。彼らが聞きたいことが効果的で役に立つこともあります。」

 「しかし、我々はまず、それが有用で、効果的で、公正であるかどうか、あるいは彼らを説得しに行く必要があるかどうかを自問自答することによって、理由をつけなければならない」。 これは、閣僚向けの注意喚起で、「不用意なことを言うな。容易に約束をするな。」ということです。そして最後に、「私は多くの合議制を期待している」と、締めくくりました。

 これは、この混乱の時期に起こりうる政府の不協和音を回避するための発言とも受け取ることができます。

 また、このマクロン大統領のスピーチを補うように、政府のスポークスマンであるオリヴィエヴェラン氏が「秋には政府が施策のパッケージを提示する」ことを説明しています。

 しかし、このマクロン大統領のメッセージは、何よりも戦争や地球温暖化のための干ばつ被害などから起こるエネルギー危機やインフレなどに直面して、9月の新年度の始まりとともに当然、起こるであろうデモに対しての先制パンチのようなものであったような気がしています。

 げんきんなもので、フランスでは、その大小にかかわらず、年間を通して、毎週のように、土曜日にはデモが行われていますが、7月、8月の夏のバカンスシーズンには、しっかりみんながバカンスをとって、デモも行わないのが普通です。(昨年は、アンチワクチン、アンチヘルスパスのデモがありましたが・・これは例外的な場合・・)

 今年も夏の間には、目立ったデモはほとんど行われていません。

 バカンスも終わって、さあ、これから、仕事!という時になると、デモも再開するのです。

 今年は、この混乱の世、特にデモは激しいものになるのは必須のところ、マクロン大統領は、このデモを迎え撃ちする、わざと強めのメッセージを国民に直接という形でなく、閣僚理事会という場を通して発表したのは、それなりの作戦であったような気がしています。

 人はこのような混乱の時、明らかに今よりも世の中が悪化すると思われる中でも、どこかに希望的観測を抱くもの、しかし、さらに悪化して「こんなはずじゃなかった・・」と怒りが爆発します。たとえ、このようにハッキリといわれることは、ショッキングでも、マクロン大統領は、「現実を直視し、受け入れるところは受け入れて対応していくためのカンフル剤が必要である」と考えたのではないか?と思っています。


マクロン大統領 豊かさの終焉


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