2022年7月25日月曜日

パリ市内、今日から冷房中に扉を閉めないお店は罰金150ユーロ

   


 これまでお店の扉が開いているか閉まっているかということは、あまり意識していませんでしたが、あらためて思い直してみると、パリでは日本のようにお店の扉が自動扉ということが少なく、開店時には、扉が開いたままになっているお店が多かったように思います。

 こんなことをあらためて思い直してみるに至ったのは、今週からパリ市内では、エアコンの効いたお店の扉を開いたままにしておくと、150ユーロの罰金が課せられるという法令が発布されたからで、「パリにおける地球温暖化の影響と、現在の期間におけるエネルギー消費の削減が急務である」ことが理由に掲げられています。

 ただし、「定期的に認可された屋外テラスのあるレストランやパブ」には適用されないという例外もまた同時に認められています。



 地球温暖化は、昨今、夏の間に何回も40℃に迫る気温上昇に見舞われていることからも明らかで、そのうえ、ウクライナ戦争の影響もあり、電力供給が危ぶまれていることもあり、20日の段階で、フランス政府は国民向けにバカンスなど、長期で家を空ける場合には、「無線LANのプラグを抜くこと」や「エアコンの温度を少し下げること」「部屋を使わないときは電気を消すこと」などの具体例をあげて、節電の努力を呼びかけています。

 もともと、パリで、こんなに夏が暑くなったのは、せいぜいここ5年くらいのことで、それまでは、冷房も必要がなく、未だに一般家庭にはエアコンがない家の方が多く、少し前までは、レストランなどでも、わざわざ「冷房完備」などと張り紙がしてあるくらい、冷房は一般的なものではありませんでした。

 しかし、さすがにここ数年はあっという間に冷房のないお店はほとんどないほど冷房は普及していましたが、それでも、そこまで気温が上がる日というのも限られているため、レストランや一般商店は、冷房をつけていても、これまでどおり、なんとなく、これまでの習慣で扉は開いたままというお店が多くを占めていたように思います。

 そういえば、この間、生ハム屋さんに買い物に行った時、お店の扉が閉まっていたため、一瞬、「えっ??休み?」と思ってしまったし、扉の張り紙を見ると「開店中」と書いてあったので、お店に入ると、お店の人が「ボンジュール!」と機嫌よく挨拶してくれたすぐあとに、「扉、閉めといて!」というので、「あれ・・ずいぶんとキッチリしているな・・」「珍しいな・・」となんだか、ちょっと、いつもと違う感じがした気がしていました。

 多分、私も知らず知らずのうちに、お店の扉が開いていなければ、「え??閉まってるの?」と思ってしまい、扉が開けたままになっていることにも、何の抵抗もないことが習慣になってしまっているのです。

 パリには、夏の間は、特に室温の管理にうるさく、◯人以上はお店に入れない・・などというチョコレート屋さんがあり、人間よりもチョコレートが大事にされている・・と思ったこともありますが、これまでパリのお店は当たり前のように冷房が効いていても扉は開けたままというお店が多かったような気がします。

 お店の扉が開いていた方が客足が伸びるというのが、これまでの定説でしたが、これからは、それが罰金付きで禁止されることになります。

 しかし、普通に考えてみれば、自宅で冷房をつける時は、ドアどころか、窓も閉め切るのは、当然のことで、消費電力を考えれば当然のことです。

 これが罰金付きの禁止ということは、マスクの義務化の際同様、かなりきっちりと守られるであろう厳しい法令です。

 このパリ市の冷房に関する法令の発令に次いで、政府・エコロジー担当大臣は、この法令を恒久化し、全国レベルに拡大すること、冷房に限らず、冬の暖房に関しても適用し、同時に街の規模にかかわらず、午前1時から午前6時までの間、電飾広告(広告看板の夜間照明)を禁止することを発表しています。

 この広告看板の夜間照明禁止については、駅や空港(夜間に閉鎖されない特別な場所)を除き、罰金1,500ユーロに設定されるとのことです。

 戦争による電力供給の問題もありますが、この年々過酷になる猛暑に、地球環境問題は、もはや猶予のない問題であるとなると、やはり罰金付きの法令ということになるのが、フランスなのです。フランスでは、罰金のないルールはルールにならないのです。


冷房中閉扉義務 違反罰金150ユーロ


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2022年7月24日日曜日

観光客が戻ってきたパリ 今年のスリ、ひったくりなどの犯罪のトレンド「観光客なりすまし」

  


 パンデミック以来、フランスは、まだ第7波のさなかというのに、ここ2年間、感染対策のために行われていたさまざまな規制もほぼ全て撤回され、夏のバカンスシーズンを迎えて、たくさんの観光客が戻ってきました。

 パリの街を歩いていても、英語はもちろんのことスペイン語だったり、ロシア語だったり、フランス語以外の外国語がずいぶん聞こえてくるようになり、駅などでもゴロゴロとスーツケースを転がして移動している人がけっこういたりして、「そうそう・・パリってこうだったんだな・・」と思わされたりして、それはそれで、なんとなく、日常を取り戻した感じでホッコリさせられます。

 フランスには、なかなかここまでの体型の人はいないな・・と思われるほどのかなりの肥満体型の人も見かけることも観光客が戻ってきたことを感じる一つでもあります。

 今年のパリの観光客の状況は、もはや2019年(コロナ前)の人数を上回っているのではないか?とも見られていて、ルーブル美術館やヴェルサイユ宮殿なども、ものすごい行列で、すっかり日常を取り戻しているようで、戻ってこないのは、日本人と中国人だけ・・などとも言われています。

 パリにとって観光客が戻ってくるのは喜ばしい話なのですが、観光客が戻るとともに、観光客狙いのスリやひったくりなどの犯罪も戻ってきて、また、大変な被害が発生しているようです。

 パンデミックの間、観光客という最高のターゲットを失っていたスリなどの犯罪者にとっては、ここ2年間を取り戻すかのごとく、ここぞとばかりに仕事を再開しているわけです。

 私自身も知らない場所を観光したりしている時には、さぞかしスキがある歩き方をしているのではないかと思いますが、やはり観光客を見ていると、これは狙われるでしょ!と思うことも多いのです。

 ジプシーの子供たちが集団でやってきたり、アンケートを装ったり、わざとぶつかってきたりして、何か落としましたよ・・と声をかけてきたりして、注意を逸らしたスキに仲間がさっとスリをはたらいていったり、定番のスリの手口は数々あるのですが、今年は、どうやら海外からの出稼ぎスリというのが急上昇(急増加)しているらしく、観光客を装ったカップルなどが、観光地(例えば、ルーブルとかヴェルサイユ宮殿やエッフェル塔、レストランやカフェなどなど・・)に観光しているかのごとく入り込み、仕事(スリや置き引きなど)をしているというので、驚いています。

 彼らは自国の言葉(スペイン語だったり、ポルトガル語だったり)で話したり、写真を撮ったりしながら、観光客のふりをしているのですから、同じ観光客だろうということで、どうしたって、油断が生じてしまいます。

 以前は、ごくごくきちんとした身なりの紳士タイプのスリや置き引きが流行した時期もありましたが、今年のトレンドはどうやら「観光客なりすまし」のスリのようです。

 考えてみれば、地続きのヨーロッパで最大の観光地であるパリは出稼ぎしてでも稼げる絶好の場所なのかもしれません。

 せっかくの旅がこのような被害に遭って嫌な気分にならないためにも、パリにいらっしゃる場合は、貴重品は持ち歩かず、華美な服装は避け、まずは、できるだけ狙われないように、万全の体制で観光してください。


パリのスリ ひったくり 観光客なりすましスリ


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2022年7月23日土曜日

リヨンで警察官が群衆に襲われリンチ状態になる恐怖の事件

   


 水曜日の午後7時半頃、リヨンのギヨティエール地区で警察官がスリ・ひったくり撲滅のためのパトロール中のことです。警察官が路上でカップルの後をついていく不審な人物を発見し尾行を開始しました。

 尾行されていた男は、女性が首から下げていたチェーンをひったくるように盗むところを警察官に目撃され、容疑者は警察に追われながら逃走しました。

 逃走はガブリエル・ペリ広場で終わり、警察が本人に尋問を開始しました。その時、事態は一変したのです。警察官の尋問開始直後、警察官は周囲にいた群衆約50人に取り囲まれ、容疑者がこの混乱に乗じて逃走してしまいました。

 群衆に取り囲まれた警察官は、鉄棒で殴られ、催涙ガスや投擲物を投げつけられ、その時のビデオを見ると、リンチさながらのボコボコ状態です。周囲にいた女性も激しく殴打される被害に巻き込まれています。



 群衆が犯人を取り押さえようとするならともかく、群衆が3人の警察官を攻撃するという恐ろしい事件でこの警察官は全治1週間の怪我を負いました。

 警察官が尾行していた容疑者は、18歳のアルジェリア人の男性で、前科十数犯で警察によく知られている人物と見られていて、彼は、過去の司法判断によりフランス領内への立ち入りを禁止されていますが、有罪判決の一環として自宅軟禁状態にあります。

 一方、3人の警察官は省庁間公共交通機関に所属する私服警官だったようで、そのため、警察官だと認識されなかったということも考えられないでもありませんが、しかし、ひったくり犯とそれを尋問する立場の人を見れば、それぞれの立場は誤解されるということも考え難いことです。

 しかも、それがどちらの立場の人だったとしても、50人もの人が鉄棒まで使って暴力行為に走るなど、ちょっとあり得ない話でもあります。

 市民の安全を守るはずの警察に対する暴力が横行する無法地帯状態、警察に対する暴力の悲惨な常態化を警察組合は強く非難しています。また、内務大臣も即座に、「耐え難い暴力の犠牲となった3人を全面的に支持する」と表明、「私の要請により、犯人を逮捕するためにあらゆる手段を動員している。警察官を攻撃することは、共和国を攻撃することだ」と発表しています。

 内務大臣は2020年の段階で、リヨンに年間100人の警察官が増員される(3年間)ことを発表していますが、これは単に警察官の人数の問題では解決できないのかもしれません。

 私服警官がパトロール中に容疑者を特定して、現場を取り押さえて逮捕に踏み切るというタイミングは偶発的なもので、そのために50人もの人がそこで警察官を攻撃しようとして待機していたとも思えないことから、機会があれば、警察官を攻撃してやろうと思っている人々がその近辺にたむろしていると考える方が妥当かもしれません。

 2年前から、リヨンの中心部に位置するこの地区では、暴力シーンが増加しており、昨年から増援が来て、警察の存在感は増していると言われています。にもかかわらず、このような事件が起こるということは、警察官の存在感が増したことにさらに反発感を抱いている人々が機会を狙っていたのかもしれません。

 少し前に、パリで検問のために車を止めた警察官が発砲した事件がありましたが、警察官の高圧的な態度に対して反発をもつ攻撃的な人々が一定数存在しているということは、紛れもない事実のようです。

 この事態に警察組合は、「しっかりとした罰則対応」と「警察官の増員」を求めています。

 いずれにしても、違法行為を取り締まる警察官が攻撃されるということが横行するような状況には、ため息もでません。


リヨン警察官襲撃事件


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2022年7月22日金曜日

夏のソルド(バーゲン)の激しい衰退ぶり

   


 今年の夏のソルド(バーゲン)は、6月22日〜7月19日まででした。

 ここ数年、パンデミックが拍車をかける感じで、年々、このソルドは盛り上がらなくなっているところ、今年はインフレによる全ての物価の上昇がさらに消費者の購買意欲を削いだ形になったと言われています。

 もともと、フランスでは、国が夏と冬のソルド期間を指定するという、摩訶不思議な方法をとっているのですが、これには、20年以上前に私がフランスに来た頃から、奇妙なことをするのだな・・と思っていました。

 私自身は、年齢的なこともあるのでしょうが、あまり物欲がなくなり、(残るは食欲のみ)若い頃のように、あの洋服が欲しいとか、この靴が欲しいとかいう衝動にかられることも極端に減少していて、どちらかというと、持っているものを少しでも処分していこうとしている気持ちの方が強いので、あまり一般的ではないかもしれませんが、正直、今年のソルドが始まった時期も気づかずに、数日してから、たまたま買い物に出掛けて、そういえば、もうソルドが始まっているんだ・・と気がついたくらいでした。

 私の場合はかなり極端なのかもしれませんが、以前は、会社の同僚などが来週からソルドが始まるから、下見に行かなきゃ・・などと言っていて、張り切ってソルドに臨んでいて、実際にソルドが始まった直後に戦利品などを披露したりしていたのをちょっと冷めた目で眺めていました。

 しかし、そんなことをしている人も周囲にはいなくなり、マスコミなどでも以前は、「明日から夏のソルド!」などと報道していたのに、そんなこともなかったようで、今年などは、マスコミが騒いでいるのは、「今年のソルドの売り上げが激減した!」ということのみで、全く、消費者の動向が変化してしまったと言わざるを得ません。

 今年のソルドの集客数は20%低下、売上は10%低下したとかで、それでも売り上げが10%しか落ちていないのか・・とびっくりしたくらいです。

 この一番の原因はネットショッピングの拡大で、ネット上では、ソルド期間などというものは、あまりきっぱりしていないため、いつでも自分の希望する価格帯のものを買い物することができ、何もこの期間を待って買い物をする必要がないわけです。

 例えば、アマゾン(フランス)に関して言えば、2019年から2021年の2年間で、売り上げは68%増と言われています。配送や返品のシステムまでが、かなり簡易化され、素早いので我が家も昨日、注文した電化製品が今日、届き、試してみた結果、機種が合わなかったために即日、返品し、荷物を預かってくれるところに預けてきたら、すぐに返金の通知が届き、これなら、わざわざ店舗に買い物に行くよりも、返品する際でもずっと早くてスムーズでこれでは、わざわざ買い物に行く必要もないなと思ってしまいます。

 これと同じで、例えばネットで洋服などを買ったとしても、これまで試着しなければ、不安で買い物できなかったものなども、一応、買ってみて、家で試着して気に入らなければ返品することも簡単で、むしろ、店舗に行って買い物して、店舗に返品するなどとなったら、人を介す分だけ、お店で長いこと待たされ、ミスも多く、感じも悪く、さぞかしうんざりすることも多かろうに・・などと思ってしまいます。

 また、このソルドの衰退には、leboncoin(ルボンカン)、や Vinted(ヴィンテッド)などのフリマアプリ(フランス版メルカリのようなもの)の急成長もあり、もともと古着や中古品などに価値を見出す文化のフランス人には、もってこいのシステムで、全く使用されていない新品でさえも、出展されているにもかかわらず、一般の市場よりは、破格の値段で買い物ができ、また、値段の交渉や商品の配送、受け取りなどのシステムもかなり配慮されて作られているうえに、ヨーロッパの他の国々ともやりとりができるため、この市場が2021年には、150%増加するという急成長を遂げていることも、ますます一般の店舗のソルドから、客足を遠ざけています。

 私もleboncoin(ルボンカン)、や Vinted(ヴィンテッド)など、両方に登録してありますが、私は不用品を処分するばかり(つまり売るばかり)ですが、確実に売れていきます。

 それでも、世界をリードするファッションの発信地でもあるパリの店舗としては、やはりシーズンごとの流行というものはあり、定期的にソルドのようなもので、その年の在庫を処分していくことは必要なのかもしれませんが、実際に、人気の店舗などは、ソルドなどしなくとも、お店には行列ができていて、どちらにしてもソルドなどというものは、あまり意味をなさなくなっているということで、ましてや国がこのソルド期間を設定するなどナンセンス。

 実際にソルド期間が終わっても、在庫を処分できないお店は、そのまま在庫を抱え込むわけにはいかないので、「特別プロモーション」などと呼び方を変えて、実際のところは、割引を続けています。

 消費者の買い物の仕方が大きく変化していることで、全く意味をなさなくなっているこのソルド期間を国が設定し続けることは、なんだか空虚な感じさえしてしまうのです。

 以前は、夏のソルドの最終週などは、店舗の一部には、秋物が登場し始め、冬のソルドの最終週には、春物が登場し始めていたりしたのですが、現在は、ソルドが終わっても売れ残りの商品を売り続けるしらけた状態。

 よほどの人気店でもない限り、一般の店舗がネットショッピングに対抗するのは、どんどん難しくなっていくのは、確実です。


夏のソルド 売り上げ大幅減少


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2022年7月21日木曜日

フランスの報道機関が指摘する安倍元総理と統一教会についての日本での報道と警察と政府、報道機関の歪み

  


 安倍元総理が襲撃された事件は、フランスでも衝撃的な事件として取り上げられ、フランス時間でほぼオンタイムで、病院に搬送され、心拍停止状態で、その後、死亡が発表されるまでの様子が生中継で放送されていました。

 犯人については、その場ですぐに取り押さえられたことも伝えられ、世界中の首脳がこぞって弔意を示していることまでがセンセーショナルに報道されていました。

 それ以上の詳細については、あまり触れられることはないのかと思いきや、その後の日本でのこの事件についての報道や政治と宗教団体のつながり、そして、警察と日本のマスコミの報道について、かなり辛口な指摘がなされています。

 以下は、仏大手フィガロ紙などに掲載された内容で、なかなか辛辣で興味深いものでした。

 安倍元総理が襲撃された48時間後、日本は議員選挙の投票日を迎え、自民党は安倍晋三が生涯をかけて追い求めてきた憲法改正の可能性に充分な票を獲得しました。しかし、日経新聞が「暗い勝利」と題したように、通常、暴力、特に政治暴力とは無縁の日本における前例のない事件に与党でさえも、しばらく唖然としていました。

 しかし、その後、この事件は犯人の安倍氏殺害の動機によって、思いがけない次元に突入してしまいました。

 日本の警察とマスコミは、「彼は元海上自衛隊員で、母親が財産を投げ打ってまで入信した宗教団体の指導者とその教団を推した安倍晋三を狙い事件を起こした」と発表しました。

 このシナリオは日本という国にとって、非常に恥ずべきことで、この48時間、日本の大手メディアは膨大な人的・物的資源(全国紙5社で9,355人の記者)を導入して、事件の情報収集に当たっており、事件現場にはヘリコプターが飛ばされ、事件現場は模型で再現され、きめ細かく検証されているかのごとく報道されています。

 しかし、堕落したマスコミは、これだけの人的・物的資源を導入が単なる水増しされた動員、導入であるかのごとく、愚かしいニュースを流しています。驚くことに安倍晋三が殺害された翌日、日本の大手5大新聞は全て同じ記事を一面トップで掲載し、書体の大きさも含めて一言一句違わないのは、彼らの共犯関係を裏付けています。

 操作当局は目に見えて置き換えられた「自白」を彼らが認定した同人記者たちに垂れ流し、彼らは真実性や臨場感さえ気にせずに、それをそのまま掲載しています。

 日本の読者は当初、この報道によって、犯人が元海上自衛隊員であったことに無理矢理注目させられ、安倍晋三が無名の宗教団体と繋がっているという誤解を招くような印象を与えられています。

 また、フィガロ紙は、この目に見えて置き換えられた犯人の自白を発表した現在の警察のトップが政府に近いジャーナリストの強姦事件の起訴を不起訴処分にしたことで有名な中村格氏であるという説明の仕方をしています。 

 この宗教団体の名前は、すでに初期の段階から、すでに地元のタブロイド紙や海外の新聞によって明らかにされ、全世界に300万人の信者を持つという統一教会に対して信者に与えている洗脳を批判しているにもかかわらず、選挙が終わるまでは、安倍氏と繋がりがあったと言われるこの特定団体の名前を報じない主要メディアは「卵の殻の上を歩いているようなものだ」と書いています。

 日本における宗教は、伝統的なもの(地元の神道など)、確立されたもの(創価学会など)、「新しい」もの(統一教会や生長の家など)が、日本の政治において控えめながら重要な役割を果たしています。信者を選挙戦の力と献金に動員する能力を持つ彼らは、特に多数派で、特に社交の機会が少ないアノマリー人口が多い都市では、政党の貴重な味方となっているのです。

 この仏紙が書いている「日本の主要メディアが卵の殻の上を歩いているようなものだ」という表現は、もはや日本の主要メディアが報道機関として成り立っていないということを指摘しているのです。

 安倍氏の殺害事件も統一教会の問題とともに、浮き彫りになった日本の報道機関の歪みを指摘しているのです。

 日本では、政治や宗教の話題はどちらかといえば、避けられる傾向にある気がしますが、社会問題を浮き彫りにして、問題提起するのがマスコミの使命でもあります。民主主義とか、言論の自由と言いながら、一見、そのような体をとりながら、まったく違う方向に向かっているということは由々しき問題です。

 フランスでは、少し前にオルペアという高齢者施設での問題を取材したジャーナリストが出した本により、大きな社会問題として掘り下げられ、政府が動き出したということがありました。フランス政府を見ていると、フランス政府は世論の動きを大変、恐れているなと感じることがあります。国民は黙っていないし、マスコミも黙ってはいないからです。

 日本の政府も世論の動きを恐れているからこそ、マスコミを懐柔しているのかもしれませんが、マスコミもまたそれに懐柔され続けているのも本来の役割を果たせないでいるということなのです。取材ができなくなることを恐れて政府や警察に懐柔されている日本のマスコミが本来の役割を果たせずに主要メディアとして存在しつづけているということが、まさに「卵の殻の上を歩いている」というのは絶妙な表現です。

 こちらでの日本についての報道を見ていると、時に、こんな視点から見るのか・・というものもありますが、また時には、日本の報道よりも辛辣に真実を語っていることも多いので、なかなか見逃せません。

 本来は、マスコミと政府のチカラ関係は逆なはずなのです。このような政府と報道機関の歪(いびつ)な関係こそが今回の事件の闇であるのかもしれません。


日本の報道機関 マスコミ


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2022年7月20日水曜日

パリ40℃の猛暑とパリの上空を覆う噴煙のベールの正体

  


 ここのところ、夏の猛暑というか、酷暑は年中行事のようになっていますが、今年は、5月から異常な暑さが始まり、6月の猛暑、そして7月の40℃超えの猛暑と、どんどん夏が長く、厳しくなってきている感じです。

 一昨日にフランスは歴史的な暑さに見舞われるだろうと言われていたと思ったら、次の日はさらにその気温を上回る暑さで、パリでは 40.5℃を記録、体温よりも遥かに暑い気温では、さすがに、この気温で外を歩く気にはなりません。

 我が家にはエアコンはないので、朝の早い時間に家の空気の入れ替えをして、午前中のうちに、その日の分のお料理を簡単に済ませ、頃合いを見計らって、シャッターを下ろして、シャッターのない部屋には、遮光用の板を置き、朝から、戦闘体制で臨みます。

 日本だと午後2時頃が暑さのピークだった気がしますが、フランスでは、だいたい暑さのピークは午後4時頃からです。お昼頃から、じわじわと気温は上がり始め、40℃の気温が数時間続き、午後7時には38℃、午後8時には36℃、午後9時くらいになって、ようやく34℃にまで下がりましたが、本当に日が暮れるのが待ち遠しい1日でした。

 アフリカに住んでいた頃は、ほぼ1年中が夏で、もう、ちょっと眩暈がしそうな日差しに、たまに朝、起きて曇っていると心の底からホッとしたことを思い出します。

 しかし、ここはパリ、いつもは嬉しい日の長さもこの酷暑の中では恨めしいばかりで、日が暮れるのをまだかまだかと待っている感じです。

 パリでは、この数日間の猛暑で、ついに昨日は、焦げ臭い匂いまで充満していると大騒ぎになりました。

 フランスでは、この猛暑の中、あちこちで森林火災が続いており、今年は中でもジロンド県の森林火災は1週間近くも燃え続け、被害を広げ続けていますが、今回のパリでのこの40℃超えの気温の中、パリの一部では薄い煙のベールに覆われ、焦げ臭い匂いが立ち込め始めたという事態にどこかで、火災が起こっているのではないか?と皆が警戒感に包まれました。

 この煙と焦げ臭い匂いの原因は、実際にイヴリーヌ県で進行中の別の森林火災や16区のレストランと17区の車両火災も重なったことも原因ではありましたが、気象学者ギヨーム・セシェによると、パリからは遠く離れた、今夏、最大のジロンド県で起こっている森林火災もこれに関係していると言っています。

 


 ジロンド県の森林火災以来「煙の回廊」が形成され、微粒子のモデルが広範囲にわたり、拡散されているとのことで、火災そのものだけでなく、この大気汚染のために、地域の人々は避難を強いられ、動物園の動物まで避難させられているのです。

 その煙の回廊が、この熱波と上空の寒気の影響で、進行中の火災による微粒子が、イル・ド・フランスまで運ばれてきたという異常気象現象が起こっているというのです。

 このジロンド県とパリの距離を大雑把に説明するとすると、ボルドー(ジロンド県)⇄パリ間はTGVで少なくとも2時間はかかる距離です。このあたりからの火災による汚染された塵煙がパリまでやってくるということは、相当な広範囲でこの火災による大気汚染の被害が広がっているということです。

 一週間以上も火災が鎮火できないのは、なぜかと思ったら、1ヶ所で起こった火災が広がっているだけでなく、複数ヶ所から発生して、それぞれに広がっているということで、これがその地域だけでなく、他の地域にまで及ぶ大気汚染問題にまで発展しているというのには、さらに仰天させられるのです。

 森林が真っ赤な炎に包まれて燃え続け、朽ちて行く様子は、悲惨な映像で、戦争の映像と見間違わんばかりの悲惨さです。

 最近の猛暑のあとは、お決まりのように雷や大雨の被害に襲われますが、今回ばかりは、雷雨でこの火災がおさまってくれないか・・などと儚い期待を抱いてもいるのです。


パリ猛暑40℃


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2022年7月19日火曜日

フランス人は日傘も雨傘もささない

    


 先日、日本の記録的な猛暑がフランスで報道されていて、猛暑に見舞われた日本の映像がテレビで流れていて、皆がこの暑さにもかかわらず、きちんとマスクをして、日傘をさして歩いているのを見て、湿度の高い日本の暑さの中のマスク率にも驚きましたが、もう一つ、自分が日傘というものをすっかり忘れていたことに驚きました。

 フランスでも年々、夏の暑さは厳しくなっていますが、そうだ!日傘というものがあったんだ!とすっかりその存在を忘れていたことにハッとさせられたのです。

 昨日も、前日から、「明日、フランスは歴史上、最も暑い日を迎える・・こんな天気図見たことない!」などと騒いでいたので、警戒していたのですが、翌日はさらに気温が上昇する予報にもうちょっとウンザリしています。

 私がフランスに来たばかりの頃(20年以上前)は、夏に暑い日があっても、ほんの数日のことで、その数日さえ乗り切ればあとは全然、大丈夫だったのですが、ここ数年は、全然、大丈夫ではなくなりました。

 たしか、雨晴兼用の折り畳みの傘がどこかにあったはず・・と思って、家中を探したのですが、行方不明・・こういう探し物は、それが必要なくなった時に、どこかからヒョッと出てくるもので、こうなったら、雨傘でも構わない・・と、ここのところ、折り畳みの雨傘を持って歩き、どうしても太陽の光が避けられない場所では傘をさして歩いています。

 もう気温が40℃近くなってくると、なりふりなどかまってはいられません。この暑さの中で日傘というものをすっかり忘れていた私は、日陰になっているところを探して歩いていたので、日傘をさせば、自分の歩いているところは、とりあえず日陰になるわけで、私はなぜ、こんなに便利なものを忘れていたんだろう?と愕然としたのです。

 しかし、それも考えてみれば、フランスには日傘というものは、ほぼ、存在しない・・たまたまそんなことを考えていたら、初めて日傘をさしている人がいて、びっくりしたくらいでした。

 そもそも考えてみれば、フランス人は日傘どころか、雨でもほとんど傘をささないので、傘を持ち歩くという習慣もなく、よほどの大降りでもなければ、少し待っていれば雨は止むし、そもそも少しくらいの雨なら、濡れても気にしない人が多いのです。

 子供が小さい頃も学校には、危険だからという理由で、傘を持って行くことが禁止で、(どちらにしても送り迎えが必要なので、車で送り迎えをするか、そうでない場合も子供の傘は親が持って帰らなければならなかった)、「えっ??なんで??危険もあるけど、そういうものは、危険がないように気をつけて使うことを覚えなければいけないのに・・」と思った記憶があります。

 子供が小さい頃は、まだまだ私も日本の習慣を引きずっていて、雨が降れば傘をさすもの、雨に備えて傘を持って歩く生活をしていましたが、いつの間にか、私自身も多少の雨なら、傘はささなくなっているので、ましてや日傘の存在などは、すっかり忘れていたのです。

 そもそも日傘に関しては、太陽の光を求めることはあっても、避けることはあまり考えていないと思われるフランス人、太陽が燦々と輝く中で、昼寝をしたり、読書をしたり、日向のテラスで食事したりすることを好むので、わざわざ日傘で太陽の光を遮るという発想はないのかもしれません。

 しかし、雨でも傘をささなかったり、強い日差しの中でも日傘がいらないと思ったりするのも、ヨーロッパの気候の影響もあったわけで、雨が降っても、少し待てば、さっと雨があがってしまうような気候や、暑いといってもさらっとしていて、気温が上がるといってもたかが知れていた以前と違って、ものすごい雨が降り続けたり、40℃に迫る気温の上昇がたびたび訪れるようになっては、フランスの傘事情も変わるのではないか?とちょっとだけ思います。

 少なくとも私は、日傘に関しては、もはやここ数日のように命の危険を感じるような暑さの中では、周囲が日傘をさそうがさすまいが、日傘であろうが雨傘であろうが、なりふりかまってはいられない・・と思っているのです。


フランス人と傘 日傘


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