2022年5月2日月曜日

フランスのメーデー 労働者の日と労働者のデモとスズラン

  


 5月1日は、フランスでは労働者の日として、祭日でお休みですが、今年は日曜日にあたり、多くの人にとっては、休日が1日減ってしまうことになります。(フランスは5月1日と8日が祭日なので、今年は2日とも日曜日)

 休日出勤というのも、普段の休日ならば、フランスとて、ないわけではありませんが、この日(5月1日)ばかりは、労働者のための休日ということもあり、基本的に法的に労働は禁止、この日に労働させる場合は、雇用者は労働者に対して、ダブル(職種によってはトリプル)の賃金を支払わなくてはならないため、普通の会社はまず休み、店舗とて、かなり閉店にしているお店が多く、比較的、静かな日です。

 しかし、どこもかしこも静かかというと、そういうわけでもなく、労働者の日ということもあり、デモが大々的に行われる日でもあります。そうでなくとも、毎週土曜日は、いつでもどこかでデモをやっている国なので、デモがあるからといって、とりたてて驚くことでもないのですが、メーデーという大義名分がある分、デモの動員数は、いつもに増して拡大する傾向にあります。

 今年は、大統領選挙の直後ということもあり、早くも新しいマクロン政権の提案している政策に反対する人々やデモに乗じて、暴力・破壊行為に及ぶ人々が出たりと、また、なかなかな騒ぎになったようです。

 今年のメーデーのデモは、フランス全土で11万6,500人、パリだけで24,000人に及びました。デモ隊がレピュブリック広場を出発してわずか数分後、黒い服、手袋、マスクをつけた機動力のあるデモ隊が、オベルカンフ通りでメインの行列から離れ、警察と衝突。

 さらに、レオン・ブルム広場では、マクドナルドの店舗が破壊され、窓には反資本主義のスローガンが書かれました。 沿道では、銀行の支店、不動産会社、保険会社、有機製品の店などが同じような被害を被りました。

 また、デモの最終目的地であるナション広場に到着した行列の左翼指導者が警察と衝突し、投擲された弾丸に反応して催涙弾が発射される事態となりました。



 中には、火をつけられた店舗に消火活動にあたっている消防隊に殴りかかる人まで現れ、(なんと、女性)計45名が逮捕されています。

 一度、デモ隊の近くをたまたま通りかかったことがありましたが、警察や憲兵隊が重装備でものすごい警護をして先導しているのにびっくりしたことがありましたが、そこまでしても、このような暴力・破壊行為が、デモの本体から派生して起こるのです。

 現在のロシア国内の状況などを見ていると、デモの権利は認められるべきものだと思いますが、このような暴力・破壊行為は本来のデモの意味とは別問題です。

 ジェラルド・ダルマナン内務大臣は、この事態を「容認できない暴力」と非難し、パリ消防隊も「人々や市の資産を守り、デモの進行を保証する消防隊員への野蛮行為は恥ずべきことである」と抗議のツイートを発表しています。

 ここのところ、(特に年末年始に感染が異常に拡大し、ウクライナ戦争が開始されて以来)ここまでデモ隊の一部が暴徒化することは、あまりなかったので、ここまでの騒ぎは久しぶりでもあり、これよりずっと悲惨な戦争の状況を見慣れてしまっているために、今までよりも驚かなくなってしまっている自分にも驚きです。

 しかし、今回の大統領選挙では、想像以上に、今の政権に満足していない勢力が拡大していて、しかも、マクロン大統領に投票した人でさえも、必ずしも彼の政策に満足して投票したわけではないことからも、このメーデーを皮切りに、今後、このデモがますます拡大していく危険性は無きにしも非ずだと思っています。

 また、フランスでは、メーデーには、労働者に感謝して、スズランの花を送り合うという風習もあり、街中でスズランを売っている人を見かけます。このスズランの販売は、販売用に栽培されたものではなく、庭や森で摘んだスズランを販売することが一般の人にも許可されています。(ただし、お花屋さんから40m離れた場所で人や交通を妨げないこと)

 なんとも、ほっこりさせられるスズランの販売事情と、デモの暴徒化により燃やされる店舗と警察と争い炎と黒煙があがる風景に、そのどちらもが同時に存在しているパリの不思議を思うのです。


5月1日 フランスのメーデー


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2022年5月1日日曜日

止まらないロシアの威嚇とマクロン大統領とゼレンスキー大統領の電話会談

  


 毎日、毎日、戦争のニュースで気持ちが滅入ってきて、正直、このニュースを避けたくなる気持ちがあります。ウクライナの様子は、本当に日々悲惨な光景で、同じ瞬間に、しかも地続きの国がこんなに悲惨な状況にあることが信じ難い気がしてしまうこともあるのですが、これはやはり現実なのです。

 私は昔の戦争を知っているわけではありませんが、オンタイムの戦地の状況が流されるのは、現代の戦争というものなのかと不思議な気もしています。

 今回の戦争は、どうやらロシア(というよりもプーチン大統領)の目論見の甘さが戦争を長引かせているようですが、彼の意に反して、フィンランドやスウェーデンまでをNATO(北大西洋条約機構)加盟に導き、欧米の力の拡大を引き起こし、どうにも引くに引けない状況を招いています。

 この戦争の報道を見ていると、戦争のルールとも言われる戦争犯罪とか国際人道法などという言葉が出てきて、民間人への攻撃や虐殺について、問題にしていますが、そもそも民間人を攻撃しなければよいというルール?も腑に落ちないところではあります。

 もはや敵国の民間人どころか、自分に相反する者であれば、自国民の命さえも何とも思わないような人が、今さら、何かを躊躇するようなことがあるのだろうか?と思ってしまいます。

 先日、ロシアのテレビ番組で第三次世界大戦と核兵器について報道され、現在のウクライナ紛争が第三次世界大戦にエスカレートする可能性が「現実的」な危険であるとの警告を強め始めました。 

 ロシアの外交官セルゲイ・ラブロフの「危険は深刻であり、現実であり、過小評価することはできない」と警告、この強い発言以来、ロシアのテレビは、核兵器使用の可能性をこれまで以上に強調するようになりました。

 番組では、カリーニングラードからパリ、ロンドン、ベルリンに向けて発射されるサルマット・ミサイルの飛行時間を示すインフォグラフィックを発表し、 プーチンが最近「比類なき」と賞賛したこの新世代の超長距離ミサイルは、フランスとイギリスの首都に約3分20秒、ドイツの首都に約1分45秒かかると説明しています。 

 同番組では、「サルマット・ミサイルが1発あれば、もうイギリス諸島はなくなる」と解説しています。ロシアのテレビは、西側諸国を核攻撃で脅し続け、ウクライナへの支援を続けることを必死に思いとどまらせようとしているのですが、西側諸国は、この脅しで引くはずはありません。自分から攻撃を始めておいて、なんだか変なお願いです。

 ロシアがウクライナを攻撃しなければ、西側諸国とて、援助などしません。だいたい、世界中がウクライナへ支援するといって提示している金額に、そんなにお金出せるんだ・・とちょっとびっくりするほどです。



 先日、マクロン大統領は、大統領選挙後、初めてゼレンスキー大統領との1時間にわたる電話会談を行い、軍事装備と人道支援という観点からフランスのウクライナ支援を強化することを約束しました。

 ゼレンスキー大統領は、この電話会談の後、「ウクライナはEUの一員であるように心強く感じている」とインタビューで語っています。同い年であるこの二人、ゼレンスキー大統領はマクロン大統領を「真の友」と呼び、多大なる信頼を寄せています。

 この戦争の一部は、情報合戦とも思えないでもない部分もあり、どんどん過激になって行く中、この悲惨な状況に目を背けそうになるところもありますが、この現実にはやはり目を背けてはいけないし、報道は続けられなければならないと思っています。

 先月、日本に一時帰国していた際は、フランスに比べて日本はこの戦争についての報道が少ないことに驚き、ともするとバラエティー番組ばかりを目にすることになってしまいそうで、日本滞在中は、情報はもっぱら、ネットに頼っていました。

 結局は、バラエティー番組の需要が多いということなのかもしれませんが、日本のテレビ番組の編成にも少々疑問を感じました。(ほとんどテレビをつけてはいなかったのですが、つけるとバラエティ番組ばかりでちょっとガッカリしました)

 現在のところは、欧米諸国が直接攻撃をしているわけではなく、ウクライナへのさまざまな支援をしているだけではありますが、現在の状況では、ロシア側は、もはや、この支援さえも攻撃として受け止めつつあるということです。

 プーチン大統領は、「どうせ、いずれは皆死ぬ」とか、「それでも我々は天国に行ける」とか、新興宗教の教祖のようなことを言い始めているそうです。予言めいたことを言って、それを自らが実行して、自分達が被害者のように訴える・・なんか、日本で同じことをやっていた教祖がいたな・・と思ったりもするのです。


ロシアの核戦争威嚇


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2022年4月30日土曜日

馴染みの運転手さんがコロナで人生がすっかり変わってしまったという話

  


 我が家は、たいていのところには、バスかメトロで用が足りるために、家の車も処分してしまい、自分で運転することもなくなり、運転するといえば、たま〜に旅行に出かけた時に旅先で車を借りて運転するくらいで、旅行さえも、ここのところ行っていないために車とはほぼ無縁の生活をしています。

 一時は、娘が大きくなって、運転免許をとったら、また車のことは考えようと思ってはいたものの、免許はとりかけたものの(学科試験だけは取っている)、パンデミックのために、彼女自身の学業の予定なども大幅に変更せざるを得なくなったり、技能教習がキャンセルになったりしているうちに取り損ね、しまいには、自転車などでもやたらと事故が多い彼女には運転は向いていないのではないか・・などとも心配になったり、そもそもやり出したら、なんでもやり通す彼女が、ここまでことが進まないのは、それほどやる気もないのかもしれないと思いながら、結局、彼女は運転免許を取らないまま現在に至っています。

 そんな我が家は買い物でさえも、家の駐車場に降りて行くよりも、ごくごく近所の大型スーパーマーケット(カーフール)に行く方が近いくらいで、しかも、荷物の多い時は、そのままカーフールのキャディーで家に荷物を運んで、後で、キャディーを返しに行く方が楽なので、買い物に車が必要ということもありません。

 しかし、日本に行く時などは、さすがに車が必要で、もうここ10年くらい、以前、私が働いていた会社に出入りしていた運転手のマリオさんという人にお願いしていました。もう彼とも長い付き合いになり、電話をするのは、車をお願いする時と空港行きの車の中で話をする程度ですが、10年ともなれば、お互いの家庭環境や家族、健康状態など、そこそこお互いを知っています。

 彼自身は、ハイヤーの会社を立ち上げ、結構な数の車を動かして、成功して、今では、ほぼ引退して、彼の自国であるポルトガルには、大きなプール付きの大邸宅を所有し、パリとポルトガルの半々の生活をしています。

 彼は非常に温和な性格で人当たりもよく、LOREALのVIPや日本からのVIPなどが顧客ということで、決して時間に遅れることなく、きめ細やかな心使いをしてくれる人で、何より優しく、温かい人なのです。

 一度、日本から帰ってきたら、ストライキのためにバスも電車もタクシーでさえもなく、途方に暮れて彼に電話をしたら、会社の車は全て出払ってしまっているから・・と彼の奥さんの車で空港に迎えにきてくれたこともありました。

 今回、日本に行くにあたって、彼に電話したところ、残念ながら彼は今、ポルトガルにいるということで、以前も何回か彼の代わりに来てくれた運転手さんを手配してくれました。その電話の時点でジョエルという運転手が代わりに行きます・・ということだったので、これで車の手配はOK!と思っていたら、後から念の為にジョエルの電話番号は・・とメッセージが送られてきたので、「いつも、親切にありがとう」と返信したら、「ありがとうと言ってくれて嬉しい・・ありがとう」と返信が・・なんとも、あったかいやりとりでした。

 出発当日、ジョエルが迎えに来てくれて、以前、マリオさんが心臓の手術をしたりしていたことを聞いていたので、車中、彼の健康状態を聞くつもりで、マリオは最近どうしてるの?と聞いたら、「彼はコロナで両親を相次いで亡くして、その上、どういうわけか離婚してしまって、すっかり人生が変わってしまった・・」と言うのです。

 コロナで両親とも!?と驚く私にジョエルは、僕もコロナで両親ともに亡くした・・と。私の周辺には、コロナウィルスのために亡くなった人はいなかったので、初めてそんな話を聞いてびっくり! 考えてみれば、フランスでのコロナウィルスによる死者数はこれまでに14万5000人以上。これまで私の周囲にそんな犠牲者の話を聞かなかったのは不思議なくらいです。

 挙句の果てに何があったのか?離婚なんて・・。彼はもうセミリタイア状態で、子供や孫に囲まれて家族仲良い家庭だったはずなのに・・。家族の誰かが欠けると生活のリズムが崩れたり、バランスが崩れたり、メンタルも厳しいもの・・家族の絆に亀裂が入ることもあったのかもしれません。

 それにしても、このパンデミックの2年間、しばらく連絡を取らなかった人の人生がすっかり変わってしまったと言う話を聞くのは悲しいことです。


パンデミック


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2022年4月29日金曜日

大統領選挙後のスケジュールとフランス国民が望む女性首相の擁立

  



 マクロン大統領の再選から、数日経って、新しい内閣の人事が早々に発表されるのだと思っていたら、マクロン大統領の2期目の正式な就任は5月14日ということで、じっくり地固めをするため、マクロン大統領は新体制の選択と決定に時間をかけることにした模様です。

 昨日、臨時にエリゼ宮に召集された閣僚理事会は、現政府の最後の理事会になるものと思われていましたが、政府のスポークスマン・ガブリエル・アタル氏は、「この理事会が最後ではなく、政府は、国にとって現在のすべての問題に関して必要な決定を下し続けるために活動している」と発表し、周囲を驚かせました。

 とはいえ、今回のエリゼ宮での昼食会を含んだ会合は、多くの特別感を含んだもので、閣僚が勢揃いし、エリゼの中庭が閣僚の到着に合わせて特別に開放され、庭園に隣接するテラスでは豪華なビュッフェも用意され、選挙後初の閣僚会議 ということで、みんな一致団結しており、選挙の勝利は政府の勝利でもあると、この政府の5年間の成果であった感謝と労いを感じさせるものであったようです。

 マクロン大統領は、閣僚に対して、デッキにとどまり、各々の仕事を続けなければならないと述べたそうで、現政府での閣僚会議は、任期ぎりぎりまで続くことになりそうです。

 今回の閣僚会議が最後だと思って参加していた閣僚の面々は「これが最後ではない」と言われた驚きをそれぞれに語っています。


 マクロン大統領は、今後の政府内の人事を立法運動の開始と同時進行させたいと考えており、それらを現政府の閣僚のチームで進めていく模様です。そして、その区切りのタイミングを5月8日というナチス・ドイツに対する戦勝記念日に照準を合わせて実行しようとしているとみられています。

 なかでも、大統領と最も密接に連携していく首相については、最も注目が集まっています。

 次期の首相候補について、マクロン大統領は、現在のところ、「社会問題、環境問題や生産性の問題に長けている誰かであろう」とだけ述べていますが、具体的な名前は挙げられていません。

 しかし、JDD(Le Journal du dimanche)が実施した世論調査によれば、フランス国民の74%が「女性を首相に任命してほしい」と望んでいることが明らかになっており、マクロン大統領がこの国民の声に耳を傾けるのかどうかが注目されています。

 もとより、閣僚人事に関しては、すでに現政権では、大臣だけだと男女8人ずつで同数ですが、首相と担当大臣、閣外相を含む32人全体だと女性が17人、男性が15人で総数では女性の方が多くなっており、意図的に女性を起用しようとしている感があります。

 首相となれば、またハードルが高いとも思われますが、あり得ないことでもないかもしれません。

 もっとも、今回の大統領選挙でマリン・ルペン氏が当選していたら、女性の首相どころか、女性の大統領が誕生していたわけですが、マリン・ルペン氏の場合、男性とか女性とかを超えた次元の人のような感じもしないでもありません。

 どちらにしても、マクロン大統領と強力なタッグを組んでいける人が必須となるため、それが男性であるか、女性であるかは、私個人としては、そこまで重要とも思わないのですが、この国民を背景に、さて、マクロン大統領がどんな決断をするのか? 楽しみです。


新閣僚人事 女性首相


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2022年4月28日木曜日

フランス人に花粉症が増えた

    

フランスの花粉マップ


 今年はやたらとなぜか、周囲で花粉症に悩まされている人の話を耳にするようになりました。以前は、フランスでは、こんなに花粉症の話を聞かなかったのになぁ・・と不思議に思っています。

 我が家は母方の親族はこぞってアレルギー体質で、私もしっかり、その体質を引き継いでいて、母も私も叔母たちも春先は特にクシャンクシャンとくしゃみが止まらず、ティッシュを手放せない状態が続き、酷い時には、もうこの時期は外に出られないとまで言い出す者までいたくらいでした。

 私が最初に海外に出たのは、イギリスで、イギリスには花粉症はないのか?と聞いたところ、当時はそれほどでもなく、その後のアフリカでは花粉以前の問題で、アレルギーも全くあらわれず、フランスに来てからは、もっぱら、花粉というよりは、埃とかハウスダストに悩まされることはあっても、花粉症には、それほど悩まされることはありませんでした。

 一方、かなり前に、いつもは夏に一時帰国していたものの、夏には、娘の学校の入学問題があって、夏には帰れない年があって、それなら、4月のお休みの際にと、4月に一時帰国したことがあって、その時は、私の花粉症の最悪の時期で、くしゃみや鼻水だけでなく、花粉症に起因して、喘息のような症状になり、呼吸も苦しくて、せっかくの一時帰国時に丸一日寝込んでしまうという苦しい思いをしたことがあって以来、もう春に日本に行くのはやめようと思ったくらいでした。

 しかし、今は亡き母が「花粉症などのアレルギーも年齢を重ねていくと、どうやら身体がアレルギーに対して大きく反応しなくなるらしく、自然とおさまっていくわよ・・」と言っていたとおりに、ここのところ、私はあまり花粉症に悩まされることはなくなってきました。

 今年もそんなことはすっかり忘れて、春に日本に一時帰国したというのに、花粉症の症状はまったく起こりませんでした。入国の際の書類や検査、そして、入国後の隔離問題などに直面して花粉症のことなど忘れていたくらいでした。

 ところが、パリに戻って以来、ここのところ、やたらと周囲に「花粉症だ・・」と嘆いている人が増えたことを意外に思っています。 

 今日、買い物に出かけて、レジで並んでいたら、近くにおしゃべり好き?なおじいさんがいて、別の女性に、「なんだ、おまえ、いつまでマスクなんかしてるんだ・・」と店内でマスクをしている人にケチをつけているのを見かけて、耳を傾けていたら、その女性は、「ここのところ、花粉症なのよ・・ほら・・」とマスクをずらして、真っ赤になった鼻を見せていました。

 「うわっ!マスクをしている人にイチャモンつけている人が出てきた!」と思ったと同時に、「はて、また、花粉症の人だ・・」とも思ったのです。

 その後、そのおじいさんは、「花粉症」というあまり聞きなれない話題になったことからか、それ以上、その女性のマスク着用に言及することはなく、自分は今は引退していて、かつてはずっとルノーで働いていて、1年前からガンを患っている・・などという身の上話を始め、マスクに対するイチャモンは、おしゃべり好きのおじいさんのほんの話のとっかかりであったことが判明し、ちょっとホッとしたと同時に、いつまでも喋り続けることに、ちょっとうんざり・・。

 しかし、もしも、これから、マスクをしていて、イチャモンをつけられたら、「花粉症なんで・・」というのは、ちょっとした逃げ道になるかな?とも思ったりしたのでした。

 そして、家に帰ってしばらくすると、近所に住む知人が、「ちょっとポニョ(我が家の猫)が喜ぶものがあるから、明日、行ってもいい?」という電話。電話口で、鼻声なので、「どうしたの? 風邪ひいた? まさかコロナ?」と聞いたら、「くしゃみや咳、鼻水が酷いので、医者に行ったら、花粉症だと言われた・・」「今までは、こんなことなかったのに、まったく、歳をとると、いろいろ、生きにくくなるよ・・」と・・。

 またまた出た出た花粉症・・今年はなんで、こんなに花粉症が多いのか? さっそく、フランスの花粉症の状況について、調べてみると、どうやらフランスの花粉症は、白樺と樫の花粉だそうで、日本でよく聞くスギ花粉ではありません。

 しかし、この花粉症がどうやら、フランスではあまり長い歴史を持つものではないな・・と思ったのは、その記事のトップに「花粉症対策として、マスクは有効か?」とあったことで、いくらマスク文化がなかった国とはいえ、花粉症といえば、マスクは定番のアイテムで、日本人からしたら、今さら・・と思うことを堂々と書いてあるのです。

 しまいには、アレルギーの専門医まで出てきて、「マスクをすることであまり苦しまないで済みます、マスクをすると、くしゃみやのどの痛みが軽減されます。マスクには明らかに鼻と口を守る効果があるのです」などと、書かれているのです。

 明らかに日本だったら、もはや公然の事実である誰でも知っている情報に花粉症初心者感が満載です。

 そして、この時期、日本では定番だった(今でもあるんだと思うけど)花粉症マップなるものまで登場しています。

 これまで、そこまで騒いでいなかった花粉症がこんなに増えているとは・・昨年、一昨年は、幸か不幸かコロナのために、ほとんどの人がマスクをしていたために、花粉症が避けられていたのかもしれませんが、「ここ数年の気候変動で、フランスでも一気に花粉が増えたのかな?」などと思っています。

 どちらにしても、コロナ以外でもマスクが有効なことが広まってくれれば、少しはマスクに対する嫌悪感が減ってくれるのではないか?とちょっと、違った期待をしています。


フランスの花粉症


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2022年4月27日水曜日

大統領選挙フィーバーで見たノーマスクにビズーのフランスの日常の復活

   


 日曜日の大統領選挙の結果は、今後5年間のフランスの将来のかかった重大なもので、十分に注目すべきことでしたが、この盛り上がりぶりを見て、私には少なからず気に掛かることがありました。

 それは、マクロン大統領の当選が決まって、エッフェル塔近くのシャン・ド・マルスに約3,000人ほどが集まった集会の模様でした。屋外とはいえ、これだけの人が集まり、歓喜の声を上げる中、誰もマスクをしていない・・。

 マクロン大統領当選の晴れやかな場面でのマスクは興ざめであることに違いはありませんが、マスクどころか、フランスでは、かつては日常の挨拶であったビズー(頬と頬を交互に合わせての挨拶)もすっかり復活していて、マクロン大統領を迎え待つ人々に夫妻ともどもビズーをしながら挨拶を交わしていたのには、少々、ギョッとさせられたのです。

 フランスからマスクが消えた・・ビズーも復活した・・と。

 パリの街中を歩いていれば、気候がよくなったこともあり、屋外でマスクをしている人は、ほぼ見られなくなりました。

 ここ数週間の大統領選挙活動を見ても、マスク姿の人はほぼ見当たらず、握手をしたり、肩を抱いて写真を撮ったりと、まるでパンデミックの影は消え去ったかのようでした。

 マスク嫌いのフランス人の中で、マスクをしての選挙活動はマイナスイメージであるのかもしれませんが、ついこの間、日本に行ったばかりの私にとっては、これはかなりの温度差を感じるものです。

 日本では、本当にどこへ行っても、屋外でさえも、みんながマスクをしていることに逆にビックリしたくらいで、人のいない道だから、ちょっとぐらいはいいだろう・・と、マスクをずらしていたら、どこからか人が出てきて、マスクをずらしているのをスゴい怖い顔で睨まれたりして、「うわっ!!厳しい!日本人!」と身を縮めたくらいだったので、フランスに戻ってからの、フランスのこの緩い様子にどこかホッとすると同時に、「やっぱり、ちょっと怖いな・・」とも思うのです。

 さすがにパリでも、バスやメトロの中などは皆、一応マスクはしているので、マスクが全く消滅したのではないんだな・・と逆にホッとするのですが、どうにも不安がつきまとうのは、私の日本人っぽいところなのでしょうか?

 こうなってくると、逆にいつまでもマスクをしていることに、そのうち日本とは逆の同調圧力がかかってくるのではないか?と思いつつも、感染者数は若干減少しつつあるとはいえ、しっかり「感染してしまった!」などという人々の話も聞くので、やっぱり、個人的にはマスクはまだまだ外せないのです。

 もはや、フランスでの感染者数については、ウクライナ戦争と大統領選挙の報道でかき消されているのかと思いきや、ゼロコロナを目指して躍起になって、感染者を隔離したり、ロックダウンをしたりしている上海を狂気的な出来事として報道したりしているところを見ると、コロナウィルス感染に全く関心がないというわけでもないのでしょうが、これは、どちらかといえば、感染云々よりもこの上海の威圧的なやり方についてを取り上げている感じではあります。

 4月上旬からいったん、フランスも感染者が上昇して、これはまたヤバいかも・・と日本から見ていたものの現在は、若干減少傾向にはあるものの、日によってかなり差があり、先週1週間の1日の感染者数の平均は5万人前後、集中治療室の患者数は若干ではありますが、増加しています。

 フランスがすでに日常生活を取り戻すことを優先にして、感染対策に目くじらを立てることは放棄したことは明白ですが、この同じウィルスに対する対応の違いには、なかなか戸惑いを感じるところです。

 現在のところ、私個人としては、人の多いところでは屋外でもマスクは外せません。まあ、もともと人の多い場所は好きではないので、ほとんど行かないのですが・・。


ノーマスク ビズー復活


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2022年4月26日火曜日

マクロン大統領再選の世界の反応と投票結果の分析

   



 マクロン大統領が再選されて、正直、ホッとしています。現在のこの世界情勢で極右政権に傾くことは、外国人として生活している在仏邦人としては、穏やかならないものがあります。

 また、ロシアによる侵攻から始まったウクライナ戦争が一向に終息の兆しが見えない中、ヨーロッパが結束を強めなければならない中、その中心になって動き始めていたマクロン大統領の存在は、ヨーロッパ全体としても非常に重要な存在であり、もしもマクロン大統領が失脚すれば、ヨーロッパとしての結束が揺らぐ可能性もあり、ロシアに対しても、つけ込む隙を与えかねないことになりかねない結果に陥る危険を孕んでいたと思います。

 大統領選挙に向けて、服装から発言まで、ソフト路線に切り替えていたマリン・ルペン氏も、その根本に持つ思想については、疑問が多く、ロシアとの金銭的な繋がりなども指摘されていたこともあり、私個人の意見ではありますが、そのソフト路線が仮面のように見えてしまっていました。

 実際に大統領選挙直前にドイツ・スペイン・ポルトガルの首脳が内政干渉とも言える異例の声明を発表し、マクロン指示を表明したことや、ウクライナのゼレンスキー首相が「マクロン大統領との良好な関係を失いたくない」と発言したり、周囲の国々からもマクロン大統領を支持する声が上がっていました。

 マクロン大統領が満点であるとも思えませんし、実際にマクロン大統領に投票した人のうちの42%は、マクロン大統領に投票したのは、とりあえず、マリン・ルペン氏を阻止するために投票したという数字も出てきています。

 年齢層や地域によってもかなり大きく意見が分かれているようで、高齢者と若者には、比較的マクロンを支持するものが多いとか、中間の労働者層にはルペン支持がおおいなど、どちらに投票したかという分析がなされていて、自分の住む地域や周囲の人々がどんな意見を持っている人なのか? この大統領選挙は、そんなことを再確認する機会でもあったかもしれません。

 しかし、ともかくも、フランス国内の状況だけでなく、世界との関係性においては、やはりマクロン大統領でよかったと思っています。

 そんな世界の期待どおり、マクロン大統領は「我々は警戒を怠らず、ヨーロッパとして、同盟国として団結し、非欧州の地域大国を含むすべての大国と対話を続け、国連内で、ロシアに対して明確なメッセージを送るべきだと思う」と強調し、「しかし、同時にエスカレートしてはならない」と語りました。

 「我々は停戦と平和のための努力を続けているが、特にロシア側のいかなるエスカレーションの試みにも屈することがあってはならない。」、ウクライナ・ブチャでの大量虐殺の痕跡と見られる映像が世界中に流れて以来、プーチン大統領との連絡が途絶えている中、早ければ今週中にも彼に電話する機会があるだろう」と語っています。



 マクロン大統領再選に際して、EU・欧州連合をはじめとして、ドイツ、イギリス、アイルランド、スペイン、カナダ、ウクライナ、アメリカ、日本、オーストラリア、ニジェール等世界各国の首脳が祝辞を発表していますが、ロシアのプーチン大統領もマクロン大統領再選に際しての祝辞を発表。

 プーチン大統領からは、「公務の成功とご健康を心よりお祈り申し上げます」というメッセージ。この戦渦の禍中の人として、このような他国の大統領選挙当選に祝辞を贈るような、常識的?なことを臆面もなくやるのも驚きですが、今、彼に健康を祈られるほど不気味な空恐ろしさを感じるものもありません。

 どちらにしても、これは、一応、ロシア国内へのポーズをとっているものではないかと思われますが、これをマクロン大統領がどのような顔をして見ているのかは、想像に難くないところですが、これまでさんざんプーチン大統領と会談を重ねてきたマクロン大統領にとっては今さら何の感情も動かないことかもしれません。

 いずれにしても、パンデミックも戦争も終息していない中、マクロン大統領の仕事は、これらを終息させることを中心に始まると思われますが、とりあえずは、自分の政策を進めるための組閣人事にとりかかる模様です。

 再選が決まったばかりで気の早い話ではありますが、2008年の憲法改正以来、フランスの大統領は2期以上連続して就任することはできなくなっていますが、1期スキップした10年後には出馬することは可能などという話も出始めています。

 彼は現在44歳、10年後でも54歳です。彼がそんなに何回も大統領の座に就くことが良いかどうかは別として、とにかく若いんだな・・とあらためて感心しているところです。

 蛇足ですが、日本の首相としては54歳でも若い方だよな・・と思って調べたら、伊藤博文は44歳で首相になっていました。


マクロン大統領再選 フランス大統領選挙


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