2021年11月14日日曜日

「電気料金滞納しても、電気は止められなくなる」措置は電気料金値上げのための布石か?

   


 フランスでは、エネルギー供給業者(電気やガス)が11月1日から3月31日までの間に、主たる住居に関連する請求書の未払いのためにサービスを中断することを法律で禁じています。

 11月1日から5ヶ月間は、料金がたとえ未払いであっても、電気やガスを止められることはありません。昨年は、ロックダウンのためにこの期間は3ヶ月間延長され、約30万世帯がこの影響を受けたと言われています。

 そして、先日、EDF(フランス電力)は、4月以降も、料金を支払わないユーザーに対して、の電力供給をストップしないことを発表しました。その代わり?に料金未払いの人への電力供給は必要最低限の1,000ワット相当に制限されます。

 これにより、すべての人々が最低限の基本的な生活を維持することが可能になります。

 これは、エネルギー価格の高騰を背景に講じられた措置とされています。

 我が家は、もう10年以上前のことになりますが、電気料金を支払い忘れていて、急に電気を止められたことがありました。夏の間のことだったので、家に帰ってすぐに電気をつけることもなく、すぐには気がつかなかったのですが、さて夕食の支度・・と始めた時に電気がつかないことに気がついたのです。

 我が家には、ガスはなく、すべて電気のため、電気を止められると何もできなくなります。

 その時は、停電?と思って、「仕方ない・・停電が復旧するまで、今日は、外に食事に行こう」と呑気に外食に出て、帰ってきても、まだ電気がつかないことで、はたと、電気料金を払い忘れていたことに気づいたのでした。

 そもそも、今どき電気料金を自動引き落としにしていないのには、嫌な思い出があってのことで、以前は自動引き落としにしていた電気料金で、二桁間違えて引き落とされ、それを返金してもらうのに、一言の謝罪もないどころか、「返金の手続きをやってあげます・・でも、時間はかかるわよ・・」といった感じで高飛車に出られて、ダブルで嫌な思いをしたせいで、EDF(フランス電力)の自動引き落としをやめたのでした。

 未だにEDFだけは、請求書を確認して、自分の手でネットで振込をしています。

 EDFの請求書がくるのは2ヶ月に一度なので、もともと常日頃から忘れた頃にやってくるので、忘れた頃にすぐに払っておかないとそのまま忘れたままになってしまうのです。

 ですから、我が家のようにうっかりしている場合は、余計に気が付くのが遅くなるかもしれません。

 しかし、今回の措置は我が家のように、うっかり支払いを忘れているというような場合のための措置ではなく、エネルギー価格の高騰に関連して、最も不安定な家庭の電力への最小限のアクセスする権利を尊重した国家エネルギー供給者としての措置(EDFは84%が国所有の会社)です。

 「電気がなければ、光も暖房もインターネットも電話もありません。フランスのような国では、世帯がこのような不安定さと頻員の状況に陥ることは容認できない」としています。

 フランス政府は最近、ヨーロッパ全体に影響を与えるエネルギー価格の上昇による措置で不安定な世帯のための追加の100ユーロ分配。ガス価格の上昇の凍結、および電力の関税の制限を発表しています。

 規制された電気料金は来年初めに約4%引き上げられる予定ですが、今後、さらなる介入がなければ約12%も跳ね上がる可能性があります。

 ですから、この措置は決して安心できるものではなく、うがった見方をすれば、電気料金値上げのための外堀を固めている措置とも考えることができます。

 電気料金は彼らの言うように基本的な生活に必要な費用であり、それを急に12%以上も跳ね上げることは、財源が不安定な家庭にとっては大変な打撃です。とても一時的に100ユーロ支給されたところで、埋められるものでもなく、ましてや支払いが滞っても電気を止められないとはいえ、料金の滞納は蓄積されていくのみです。

 これまでの冬の期間のみの電気料金滞納可能(冬は家にいる時間も長くなり、暖房費等もかかるために料金が跳ね上がる傾向にあります)ではなく、年間通して、未払いでも最低の電力は供給するという建前のもと値上がりが容認されかねないとも考えられます。

 現にEDF側は、「他の手段を使用して債務を返済するという点で、ほぼ同じくらい良い結果が得られる」としています。他の手段には料金の値上げも換算されているのではないか?と疑いをもってしまうのです。

 とはいえ、居住者の権利というものが、強く認められているフランスでのさらに強力な居住者の権利の一部になるとも考えられます。そもそも、冬の間に滞納が認められているのは、電気料金だけではなく、家賃滞納の場合も、この期間の立ち退きは要求できません。(住居の不法占拠者は除く)

 これがまかり通れば、電気料金は払わずに生活し続ける強者が現れ始めます。

 こうなってくると、どっちもどっちという感じになってきますが、結局は、税金と同じで、払い続けるものと貰い続けるものに分かれる、そんなフランス社会構造の縮図のような気さえしてしまうのです。


電気料金滞納でも電気は止められない EDF


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2021年11月13日土曜日

ヨーロッパの感染再拡大と再ロックダウンの波

 

 

 ヨーロッパでコロナウィルス感染が再拡大し始めている現在の状況から、欧州連合は、ストックホルムを拠点とする欧州疾病予防管理センター(ECDC)を通じて、最新のリスク評価により、27の欧州加盟国の中で、ベルギー、ポーランド、オランダ、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、スロベニアなどの10カ国が非常に懸念される状況にあることを発表しました。

 しかし、ここに挙げられていない国々も決して安心できる状況ではなく、ドイツやオーストリア・オランダなども、緊急の対応を取り始めています。

 中でも、オーストリアは、感染率が最も高いオーバーエスターライヒ州とザルツブルクではすでに、月曜日からのワクチン接種を受けていない人々のロックダウン(封じ込め)を決定していますが、14日の議会で、これを全国的に拡大する決議を取ることを発表しています。

 またこれと同時に、医療従事者の強制予防接種も行われる予定です。

 オーストリアのワクチン接種率は64%と、欧州全体のワクチン接種率(67%)を下回っており、オーストリアのアレクサンダー・シャレンバーグ首相は、「これは恥ずべきほど低い数字である」と語っています。

 また、オランダは、昨年12月の新規感染者数(12,997件)を上回る数字(16,364件)を記録し、この感染急増に直面したオランダ政府は、レストラン・バー、スーパーマーケット等(生活必需品を扱う店舗)の営業は午後8時まで、否必需品を扱う店舗の営業は午後6時までとし、学校は閉鎖せず、外出は許可されるものの、可能な限り自宅に4人以上を収容せず、在宅勤務をするように求める「部分的ロックダウン」の措置を少なくとも3週間取ることを発表しました。

 オランダ政府は、3週間後には、食事及びレジャー施設へのアクセスを「ワクチン接種済みの人々には制限しない状態」にする準備をしています。おそらく、フランスのヘルスパスのような制度の準備にかかるものと思われます。

 オランダのワクチン接種率は82%と比較的高く、それでも感染を避けきれずにこのような部分的ロックダウンの措置を取らざるを得ないことに反発も生じ始めています。

 また、これらのヨーロッパの感染拡大の再開に直面し、ノルウェーは自治体レベルでヘルスパスの使用を許可することにより、新たな制限を再導入することを発表しています。また、9月末に、すべての制限を解除したスカンジナビアの国はまた、18歳以上にワクチンの3回目の投与を提供する予定であることが発表されています。

 こうして、ヨーロッパの感染再拡大への各国の対応を見ていると、7月の時点でヘルスパスの規制を導入したフランスの措置を周囲のヨーロッパ諸国が追随しはじめたように思います。

 特に、オランダの例を見ると、現在蔓延しているウィルスは、決してワクチン接種だけで回避できるものではなく、感染リスクのある場所を中心に人の流れを制限する重要性が表れています。

 ちなみに昨年の今頃のフランスは1日の新規感染者数が4万人・5万人・6万人と急増していた時期です。現在、周囲の国が取り出した感染対策措置はすでにとっているフランスで、昨年の記録を上回るような状況はちょっと考え難いことではあります。(昨年が酷すぎたということもありますが・・)

 しかし、フランスも感染者は増加傾向、この波を低い波で抑えることはできるのでしょうか?

 それにしても、ヘルスパスも使わず、ワクチン接種率もヨーロッパをあっという間に追い越し、ロックダウンもせずに感染を抑えている日本を考えると、ヨーロッパはこれで2度目の感染爆発の気配・・やはり、国民性や生活習慣など、つくづくヨーロッパは感染拡大に最適な何かを備え持っている気がしてなりません。

 フランスでは相も変わらず、ヘルスパス反対、義務的ワクチン強制反対、黄色いベスト運動などの土曜日のデモが続いています。


ヨーロッパ感染拡大


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2021年11月12日金曜日

ドイツの急激な感染拡大から見えるワクチン接種とヘルスパスの効果

  


 パンデミックが始まって以来、ヨーロッパの中では、常に優等生であったドイツが1日の新規感染者数5万人突破(50,196件)するという、これまでにない感染拡大の局面を迎えています。

 フランスと比べれば、これまで常に感染を抑え続け、被害も桁違いに少なく、周囲のヨーロッパ諸国が相次いで医療崩壊を起こしていた時も、常にドイツは医療崩壊を起こすこともなく、周囲の国を助ける(フランスもずいぶんと助けられてきました)役割を果たしてきたドイツのこの急激な感染悪化には、フランスでも驚きと警戒を強めています。

  

2021年以来のドイツの感染状況


 私もこれまでは、さすがにドイツ人、しばしば日本人と気質が似ていると言われることもあるように規律正しく、きっちりしているんだ・・と思っていたのです。

 しかし、やはりこのウィルス、生半可なことでは太刀打ちできないようです。

 ドイツ政府のスポークスマンは、「パンデミックは再び劇的に広がっている」とし、特に影響を受けたいくつかの地域でワクチン未接種の人々を対象とした新たな対策を講じることを発表しています。

 10月以来のこの変化は顕著であり、特にザクセン州、バイエルン州、ごく最近ではベルリンなどの地域では著しく影響を受けています。

 今週に入って、ベルリンは、ワクチン未接種の人々が、特にテラス席のないレストラン、バー、スポーツホール、美容院へアクセスすることが禁じられました。ワクチン接種済みであるか、感染から回復したことを証明できない場合、これらの公共の場所へのアクセスは許可されなくなります。

 これを聞いて、「えっ?ドイツでは、今まではOKだったの?ドイツではフランスでのヘルスパスのような規制をしていなかったの?」と驚いた次第です。

 そして、現在のドイツの感染急拡大は、意外にもドイツのワクチン接種率が比較的低いことにも起因していると言われています。

 現在のフランスのワクチン接種率(2回接種済み)は約75%、これに対してドイツは67%とかなり低いのです。もともとドイツの人口はフランスの1.3倍程度ですから、ワクチン接種を行なっていない33%の人口は、フランスよりもかなり多い計算になります。

 ドイツ病院協会によると、10日の時点でコロナウィルスによる入院患者は1週間で40%増加し、集中治療室の患者は15%増加し、1日の死亡者が200人を突破していることを発表し、感染拡大は、ワクチン接種がより少ない地域で高い発生率を示していることも併せて報告しています。

 

ドイツの地域ごとの感染状況


 ワクチン接種率が最も低いザクセン州(ワクチン接種率57%)は、国内で最も高い感染発生率を記録し、10万人中 483.7人という高い陽性率を記録しています。

 ヨーロッパの中でも高齢者が比較的多いドイツでは、ワクチン接種をすでに行なっている人々でも、時間が経過すれば、その効果が薄れ始めることで、この感染拡大の影響が多くの高齢者にも及ぶことを懸念しています。

 昨年末から年明けにかけて、ドイツはフランスと比べるとかなり厳しく手綱を緩めない印象がありましたが、ワクチン接種が開始され、ある程度、広まり始めてからは、途中でヘルスパスを起用したフランスとは、いつの間にか、逆転状況にあったようです。

 こう考えてみると、フランスはヘルスパスの起用により、ワクチン接種率も大幅に上昇し、レストランやカフェ、娯楽施設、文化施設、スポーツジムなどのあらゆる場所はワクチン接種をしていない人はシャットダウンされ、守られている状況にあったことがこのドイツの状況を見てわかります。

 きっと、ヘルスパスによる規制がなければ、フランスはドイツ以上の被害を出していたことは間違いありません。

 こうしてドイツが現在、劇的な感染拡大の局面を迎えていることを目の当たりにすると、フランスがとってきたヘルスパスの起用は、発表当初はかなり衝撃的で強引な印象ではありましたが、結果的には、非常に有効な政策であったと思わずにはいられません。

 とはいえ、フランスの新規感染者数もここのところ、余裕で1万人超えの状況、決して気を緩めることはできません。このため、つい先日、マクロン大統領が演説を行い、3回目のワクチン接種を強いる方針を示し、ヘルスパスの効力(3回目のワクチン接種の拡大とヘルスパスによる公共の場所での安全性を維持する)を持続させる努力をしています。

 しかし、フランスとて、未だワクチン接種をしていない人々は25%もいるのです。

 急激な感染拡大が見られるドイツとの出入国制限に対する規制が何もないのは、不思議でなりません。

 そこへいくと、日本への入国はいつまでも厳しく、一時帰国がなかなかできない身からすると歯がゆいのですが、それが日本を守っていることに繋がっていると思わせられもするのです。


ドイツ感染拡大


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2021年11月11日木曜日

全ての小学校でのマスク着用義務化が復活

 


 先日のマクロン大統領の演説のメイントピックは、65歳以上を始めとする3回目のワクチン接種の必要性についての話でしたが、その中には、子供たちの学校でのマスク着用が再び義務化されるという内容も含まれていました。

 夏のバカンス突入とほぼ同時に発令されたヘルスパスによる規制のために、フランスでは、夏のバカンスを心置きなく過ごそうとする人々が一気にワクチン接種に走り、ワクチンの接種率も上がり、レストランやカフェ、映画館や美術館、遊園地などの娯楽施設・文化施設、スポーツジムなどがヘルスパスによって入場制限されたことにより、感染状況も小康状態を保ち続けていたため、9月に新年度を迎えてまもなく、10月4日からは、感染発生率が住民10万人あたり50例未満である47地域の小学校でのマスク着用義務が撤廃されていました。

 マスク着用が子供たちの学習、理解、集中力に影響を及ぼしている可能性、マスクによる苦痛を考慮し、感染の状況が許す限り、マスク着用義務を撤廃する方針をとったようです。

 しかし、残念ながら、10月の半ば過ぎから、フランスの感染状況は再び上昇モードに転じ、また、近隣のヨーロッパ諸国での深刻な感染拡大の状況から、大人の3回目のワクチン接種の強化を始め、フランス全土にわたる全ての小学校でのマスク着用の義務化で、再び、警戒体制に入るということに他なりません。

 もともと、小学生といえば、12歳以下の子供で、まだワクチン接種が不可能な年代の子供たち(フランスでは12歳以下のワクチン接種に門戸を開いてはいません)の学校内(学級内)でのマスク義務化の撤廃には、疑問の声も上がっていました。

 大人ですら、1日中、マスクをして生活をすることは苦痛を感じるところですが、この際、子供がワクチン接種を受けずに感染のリスクを減らすのは、基本的なソーシャルディスタンスやこまめな手洗いなどの衛生管理とマスク着用に頼るしかないのです。

 12歳以下の子供たちはワクチン接種をしていないことから、ヘルスパスにより守られることもなく、非常に無防備な状態であると言えるのです。

 マクロン大統領の演説の翌日、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、TF1のインタビューで、「1週間で感染者数が40%増加しているフランスの現在の状況は、明らかに第5波の始まりのようだ」と述べています。

 各々、ワクチン接種時期がずれていることによって、ワクチンによって保護され、ヘルスパスによって守られている人口が多いことでまだ救われていますが、再び感染拡大の顕著な数字があらわれ始めた今、大人が3回目のワクチン接種をしなければならないのと同様にワクチン接種のできない子供はマスクをしなければならないのは、致し方ないことなのかもしれません。

 3回目のワクチン接種とそれに伴うヘルスパス有効期限の設定と小学生のマスク着用義務、どうやら第5波の波がきているフランスのこの波をどうにか小さな波として越えられるための政策の一貫なのです。


小学校マスク着用義務化


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2021年11月10日水曜日

パンデミック以来、9回目のマクロン大統領の演説 65歳以上の3回目のワクチン接種

   



 今週、「マクロン大統領が演説をする」というアナウンスがあったのは、日曜日のこと。マクロン大統領がじきじきに、演説を行うというだけで、内容は、ほぼ、3回目のワクチン接種についての話であることは想像がついていました。

 それ以来、フランスのツイッターのトレンドには、「マクロン演説」、「ロックダウン」などのワードがトレンド入りする騒ぎになっており、それだけで(まだ内容の詳細が定かではないうちから)、ワクチン接種の予約が急増し、1日の予約が97,000件を突破するという絶大な影響力を示していました。

 特にWHOが第5波の震源地が再びヨーロッパであり、感染拡大の深刻な影響が考えられると発表したこともあり、(主には東欧とドイツ・イギリスなど)フランスでも徐々にではありますが、感染状態が悪化に転じていることからも、このままの状態を放置するわけにはいかないことは、皆、わかっているのです。

 特にリスクが最も高いと言われる高齢者(65歳以上)の人は、早くに2回のワクチン接種が終了していることもあり、その効果が薄れ始める時期も早くに迎えることから、その対応は急がなければなりません。

 マクロン大統領は、「2020年12月の初回予防接種以来、10ヶ月で1億回以上の接種が行われており、5,100万人が2回のワクチン接種が終了しており、ヘルスパスのおかげでコロナウィルスの流行をなんとかコントロールすることができてきました」と、演説を始めました。

 「しかし、私たちはパンデミックに終止符を打つことができず、何万人もの人がCOVID LONG(長期コロナ感染症)の影響を受けており、味覚の喪失や持続する倦怠感、精神的な痛手などの症状に苦しみ続けています。」

 マクロン大統領は、まだ1度もワクチン接種をうけていない600万人に連帯の精神を求め、「自分自身を自分の周囲の人を守るためにワクチン接種を受けてください!」と訴え、現在、ワクチン接種は12歳未満の子供を除いて誰にでも門戸は開かれており、ワクチン接種を受けた人は、重症化して病院に入院する可能性が11倍少ないと説明しています。

 そして、「ワクチン接種は普通に生活できるためのものであり、フランスのような国で自由であることは責任があることを意味します」と語りました。

 「新たな流行に直面している今の解決策は、3回目のワクチン接種であると判断し、65歳以上で最もリスクの高い人々を保護するために、これらの人々に対して、2回目のワクチン接種から6ヶ月以上経過している場合は、今すぐに予約を入れてください。」と言い、2回目のワクチン接種から6ヶ月以上経過している場合には、3回目のワクチン接種をできるだけ早くに済ませ、12月15日からは、ヘルスパスの有効期限を延長する必要があることを発表しました。

 つまり、とりあえずは、65歳以上の人々のヘルスパスは2回目の接種から6ヶ月経過した場合は12月15日から、ヘルスパスが無効になるということです。

 そして、12月初旬からは、50歳から64歳の3回目のワクチン接種キャンペーンが開始されます。つまり、現段階では、3回目のワクチン接種をしないと12月15日からはとりあえず65歳以上のヘルスパスは失効するということですが、これは、最初の2回のワクチン接種を高齢者を優先に始めて行ったのと同じ順番で、徐々に年齢を下げて、最終的には、全ての年齢枠において、ヘルスパスは3回のワクチン接種をしていなければ失効することになるということだと思います。

 そもそもヘルスパスは、私たちが公共の場所(カフェやレストラン、娯楽施設や文化施設など)において、少しでも感染のリスクを減らすためのもの、ワクチンの効果が薄れている人が同じ場所に集うのでは、ヘルスパスの意味がなくなります。

 マクロン大統領は、ヘルスパス適用の管理は今後も強化されるとしています。また、このおかげで、私たちは、日常生活を封じることなく生き続けることができると説明しています。

 今、私たちが所有しているヘルスパスには、名前とワクチン接種をした日付、ワクチンの種類と生年月日のみが記載されています。つまり、このワクチン接種の日付と年齢でヘルスパスの失効を整理していくということなのだと思います。

 マクロン大統領はこれまでのフランスの歴史を振り返っても連帯によって、多くの危機を乗り越えてきたと語り、「我々を、自分自身を、そしてフランスを信じてほしい」と国民にむけて熱く語りかけました。

 7月12日のヘルスパス施行の発表の時もなかなかの衝撃で、これにより、多くの人がワクチン接種を急ぎ始めましたが、今回の「3回目のワクチン接種をしないとヘルスパスが失効する」という発表もまた、大きな影響を及ぼしたようで、マクロン大統領のこの演説から1時間以内に10万件以上のワクチン接種の予約が入ったということで、フランス人も意外と従順?なのかも・・と思ったりもしましたが、結局のところ、今回の場合は、2回のワクチン接種を浸透させるためのヘルスパスによる効果にある程度、国民は納得しているということもあり、また、何よりも自由な生活を勝ち取るためのワクチン接種というように国民がとらえていると考えることもできます。

 ヨーロッパでの感染拡大が深刻化している中、フランスが現段階ではそこまで深刻な状況に陥ってはいないことは、どう考えてもヘルスパスのおかげであり、フランスのヘルスパスのような確固とした規制がなくとも、ワクチン接種があっという間に進み、感染も落ち着いてきた日本とは違うのだとつくづく思うのです。

 ですから、このワクチン接種の効果が減少していく6ヶ月後というタイミングでフランスがあらためて、3回目のワクチン接種を進めるためには、マクロン大統領の新たな政策は、必要なことであったと思っています。

 今回のマクロン大統領の演説は27分間(ワクチン接種の話は正味半分)、この27分間で1時間の間に10万人を動かすのですから、彼の演説効果は凄まじいものです。


3回目のワクチン接種 ヘルスパス失効

 

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2021年11月9日火曜日

3回目のコロナウィルスワクチンの前に、インフルエンザのワクチン接種をしてきました!

  
 


 いつの頃からか、毎年のようにインフルエンザのワクチン接種を受けましょうというお知らせが国民健康保険から届くようになっていましたが、これまではワクチンなんてしなくても、気をつければ大丈夫だろうと、ずっと私は無視し続けてきました。

 しかし、コロナウィルスの感染状況が再び怪しい雲行きを見せる中、感染のリスクも再び上昇してきて、ちょっと風邪をひいても、「もしかして、コロナ?」と不安になるうえに、どうやら3回目のワクチンもしなくてはならなくなりそうで、一応、薬局に行って、相談してみようと思い、他の薬を取りに行くついでに国民健康保険から届いている手紙をもってたずねてみました。

 以前なら、ワクチン等の注射をする時には、薬局でワクチンをもらってから、かかりつけの医者にそれを持っていって、ワクチン接種をしてもらわなければならなかったのですが、コロナのおかげ?か、いつの間にか、薬局でワクチンをするスペースができていて、インフルエンザのワクチンも薬局でその場でしてくれるようになっていました。

 私が気にかかっていたのは、もしも私がコロナの3回目のワクチン接種をする場合は、2回目のワクチン接種の6ヶ月後になるので、12月の初旬になります。

 インフルエンザのワクチンとコロナウィルスのワクチンは、時期が重なっても大丈夫なのだろうか? どのくらいの間隔をおいた方がよいのか?など、これまでほとんどワクチン接種というものをやってこなかった(子供の頃は別として)私としては、ちょっと心配だったのです。

 しかし、もしもコロナウィルスではなくとも、インフルエンザにかかって体力が低下すれば、コロナウィルスに感染するリスクも高くなるのでは?などという素人なりの危惧もあり、「今年はできるならば、インフルエンザのワクチンも受けておこう!」と、そんな風に思ったのです。

 薬局で聞いてみると、コロナのワクチンとインフルエンザのワクチンは全然、別物で、たとえ同時にやったとしても、全然、問題ないということでしたが、やはり、インフルエンザのワクチンとて全く副反応がないとも限らず、3回目のコロナワクチンとて、副反応がないとも言えず(1回目、2回目の接種では、少し腕が痛くなったくらいで大した副反応はありませんでした)、副反応がダブルチョップで襲ってくるのはたまらない・・と、できるならば、少し間隔をおいてやった方がよいのではないかと思ったのです。

 その話を聞いたのは、買い物の途中に寄っただけのタイミングで、まさかその場でワクチン接種ができるとは思っていなかったので、その場は「ちょっと考えてから、また来ます」と行って家に帰ったのですが、一旦、家に戻って考え直し、「やっぱり、ぐじぐじと考えているよりは、さっさとやってしまおう!」と、その日のうちに出直して、インフルエンザのワクチンを受けてきたのでした。

 昨年は、コロナウィルスの蔓延を恐れて、多くの人が感染予防に努めていたために、例年ほどはインフルエンザは流行しませんでしたが、それでも例年なら、インフルエンザにより死亡する人は2,000人を超えるそうで、フランスでは65歳以上の高齢者や慢性疾患などの既往症のある人などのリスクの高い人・医療従事者などはインフルエンザのワクチン接種は無料で受けられることになっています。

 コロナ前までは、薬局は薬をもらうだけのところで、注射をしてくれることはありませんでしたが(薬をもらって、それを持って医者に行かなければならなかった)、薬局でやってくれるなら、ぐっと簡単で楽になりました。

 


 インフルエンザワクチンにしても、コロナウィルスワクチンにしても完全に防御できるわけではありませんが、リスクが少しでも低くなるなら、この際、やっておこう!と、そんな気持ちです。

 自分自身を顧みると、どうやらパンデミック以来、やはり病気に対する恐怖心が増し、娘には、「ママ、ちょっと怖がりすぎだよ!」などと言われますが、やはり、普通に生活していても、身体はガタがき始めていて、普通に健康を保つだけでも、それなりの努力(食生活に気をつけたり、適度な運動を心がけたり、規則正しい生活や充分な睡眠をとることなど)が必要な年齢になってくると、やはり不安も増すのです。

 これまでは、自己免疫能力に頼って生きてきましたが、やはり、四六時中、コロナの感染の様子を見せられてそろそろ2年。これから先は頼れるものならワクチンでもなんでも頼りたくなってしまった気弱になっている自分を認めざるを得ないのです。

 インフルエンザのワクチン接種翌日は、案の定、だるくて寒気がして微熱があるような軽い風邪をひいたような状態で、やっぱりコロナのワクチンとは少し、時間をおくことにして、よかった・・と思いながら、今日は、1日、安静に過ごします。


インフルエンザ予防接種 インフルエンザワクチン


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2021年11月8日月曜日

外務省のお知らせは、すごくわかりにくい・・大使館の手数料問題と似ているかも?

   

外務省 海外安全ホームページ一面


 パンデミックが始まって以来、世界中で、めまぐるしく変わる感染状況に際して、外務省は出入国に関するお知らせを大使館経由で送って下さっています。

 私は、コロナウィルス騒ぎが始まって以来、日本入国のために必要な書類の煩雑さや、なんといっても、その後の隔離期間や公共交通機関を使用できないことなどから、あまりに余計な時間と出費を考えると、とりたてて急ぎの用事もないので日本への帰国は諦めています。

 でも本当はすごく行きたいので、隙あらば・・、入国後の隔離がなくなれば・・とずっと思ってはいるのです。

 パンデミックが長引くにつれて、外務省からのお知らせも、「○月○日、日本において新たな水際対策措置が決定されました。今回の措置の主な点を以下のとおり、お知らせ致しますので、日本への御帰国・御入国等の際には、御留意いただくとともに、最新の情報を御確認ください。」とあり、リンクが貼ってあるところに飛ぶと、「水際強化措置に係る指定国・地域一覧」などが出てきて、検疫所の宿泊施設での待機についてなどが書かれています。

 これらは、はっきり言って、関係のない国についてのお知らせがほとんどで、お知らせを頂いても、いちいち開けてみることはなくなりました。

 頻繁に送って下さるものの、しかし、いざ、日本へ帰国したいと思った場合、日々、条件等が変わる中、外務省のホームページはわかりにくく、いくつものページを開いて調べなければならない上に、一部の対象者向けの話しかかかれていなかったりで、結局、「えっ?じゃあ、私の場合はどうなるわけ?」と思ってしまうことが多いのです。

 例えば、最近、???と思ったのは、「ワクチン接種証明書保持者に対する入国後の行動制限の見直し」という項目について、「受入責任者(入国者を雇用する又は入国者を事業・興行のために招聘する企業・団体)の管理のもとで、ワクチン接種証明書保持者に対し、入国後最短で4日目以降の行動制限の見直しを認めることとします。具体的には・・とこの場合の詳細な条件がダラダラと書かれているのですが、一般的に仕事以外での入国(一時帰国)に関しては、全く触れられていません。

 「新型コロナウィルス感染症に関する重要なお知らせ」のページにいたっては、全面赤文字で、目がチカチカしそうな文字の詰まり方でそれぞれのページに飛ぶとしても、とても読みづらく、画面全体のレイアウトも今時、こんなのある?と言いたくなるような見づらいページです。

 結局、そこから関連ページに飛ぶとしても、そこから、次から次へとページを飛ばなくてはならず、まるでお役所にたらいまわしをされている気分になってきます。

 在外邦人向けに作られているのなら、日本に帰国するにあたって知りたいことは、入国に必要な書類、その後の隔離期間、ワクチン接種証明書の効力、公共交通機関利用の可否など、知りたいことを簡潔に何なら箇条書きにしてくれればよいものをダラダラとこの国に関しては、規制がこう変わりました・・などと、その都度、お知らせが来るのは、なんとも無駄で、いざ必要なオンタイムの情報がほしい時には、サイトをいくつも探して、挙げ句の果てにわからなくて大使館に電話で問い合わせる・・ということになるのです。

 いっそのこと、現在、日本に入国の際に必要なこと・・として、各国の情報がオンタイムで簡潔にわかる状態にしてくれたら良いのに・・と思ってしまいます。

 これには、一方的な情報の発信でそれを使う者の立場にたっていない、そんな印象を受けてしまいます。やっぱりお役所仕事だな・・と。日本なら、お客様のことを第一に考えて少しでも利用しやすいようになっているのが普通の企業ですが、そこは、やはり一般企業とは違うのです。

 これに似た話で、大使館の手数料問題も同じ感じです。先日、在外選挙登録のために久しぶりにパリにある日本大使館に行った際、あいも変わらず、窓口には、「手数料は、ユーロ現金でお支払いください。クレジットカード、小切手、その他の通貨はお使いになれません。」という張り紙がしてあって、正直、パンデミックのおかげ?(衛生問題などから)で、今や一般の店舗などでは、バゲット1本買うのにもカードで済むようになり、もはや、ほとんど現金を使わない生活になっているというのに、「大使館ってまだ変わってないの?」と、「大使館のこれ!いい加減、なんとかしてほしい!」とTwitterで呟いたら、想像以上の反響があり、世界各国の日本大使館は一律同じ対応のようで、ビックリしました。

  


 大使館での手数料といえば、その多くの場合は、パスポートの書き換えの手数料です。10年有効のパスポートの更新手続きの手数料は、132ユーロ(約18,000円)、「危険ですから、あまり現金を持ち歩かないようにしましょう」などと呼びかけながら、己のためなら132ユーロは現金で、しかもピッタリお釣りのないように支払えというのです。

 今どき、カードが使えないなんて、小さな小売店ならいざ知らず、大使館はいわば、日本国の大企業、どうしてこんな状態がいつまでも続くのか?大使館の中には、それがおかしなことだと申し出る人は誰もいないのでしょうか?

 これも、利用者の立場を全く考えないお役所仕事のひとつです。

 もっとも、パスポートの書き換えなどは、10年に一度のことで、その時は、「えっ?」と思っても、払ってしまえば、次はまた10年後で、その度に苦情も飲み込んでしまいます。

 一般には通用しないことでも、お役所であれば、まかり通っていつまでも改善されない・・そんなことが意外に多いのです。

 ちなみにフランスの滞在許可証の手数料は、予めネットで収入印紙を購入することができます。手続きについては多々、問題はありますが、手数料の支払いについては、日本大使館よりは簡素化されています。


外務省ホームページ 


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