2021年12月26日日曜日

クリスマスプレゼントは即刻転売サイト行きが急増

   


 フランス人にとってのノエルは一年のうちの一大イベントで、そのチカラの入れようは、なかなかなものです。むしろ、新年を祝うお正月よりも重んじられている感もあり、たいていは、ノエルは家族とともに、新年のカウントダウンは友達同士で・・という過ごし方をする人が多いです。

 日常は、どちらかといえば倹約家のフランス人もノエルの食事やプレゼントには、惜しみなくお金を使います。

 街を歩いていても、明らかにクリスマスプレゼントであろう包みを抱えた人を多勢見かけます。それも、家族全員分なので、結構な量でかなりの出費になります。

 多くの商店は、一年の売り上げの大半をこの時期にあげると言われています。

 我が家も娘が小さい頃は、クリスマスイブの日の夜に、クリスマスツリーの木の下に、家族全員の靴をならべ、なぜか、その靴にオレンジを添えて、サンタクロースを待つという不思議なことをしていました。

 そして、娘が寝た後に、クリスマスツリーの下に事前にあちこちから届いているプレゼントをツリーの下に並べておいておくのが習慣でした。

 翌朝、娘が起きてきて、一番にクリスマスツリーを確認しに行き、嬉しそうに一つ一つプレゼントを開けていく様子がかわいくて、私たちにとっては、娘が嬉しそうにプレゼントを開けていく、その場面を見ることこそが何よりのクリスマスプレゼントでした。

 このノエルのプレゼントの習慣は、相変わらずフランス人にとっては、とても大きなイベントではありますが、ここ数年、それに異変が起きているのは、そのプレゼントが即刻、転売サイトに掲載され、売り出されてしまうケースが急増していることです。

 私は、Vinted(ヴィンテッド)というフランス版メルカリサイトのようなもので、家にある不用品を処分しつつ、ちょっとしたおこづかい稼ぎをしているのですが、このサイトも11月から12月にかけてが一番、品物が売れるので、この時期に狙いを定めています。

 実際にそれは、クリスマスプレゼント用のものとして購入され、ノエルを過ぎるとパッタリと売れなくなるので、これまでは、この時期で今年の営業は終わり・・という気分でいたのです。

 ところが、最近は、結構、そのサイトをノエルが過ぎても覗いている人がいるのを不思議な現象だな・・と思っていたのです。

 楽天バロメーターによると、この1年間でフランス人の2人に1人以上がノエルのプレゼントの転売を行っているか、またはそれを検討していると言います。現に、あるサイトでは、25日の15時までに、60万件近くの広告が再販サイトに掲載され、2020年と比較して15%以上の伸びを示しています。(1月上旬までに300万個のクリスマスプレゼントが転売される見込み)

 プレゼントの交換の時には、大袈裟とも思われるほどに喜びあっているのに、実のところは、そのプレゼントが即刻、転売に出されているところは、あれは芝居だったのか?と思ってしまいます。

 無駄なものを持たずに、お金に変えてしまうあたり、さっぱりしているというか、がっちりしているというか、プレゼントを贈るときには、転売されないように、本人の希望を吟味する必要があるな・・と思います。

 それでも、あまりにプレゼントが行き交うために、同じものをダブってもらってしまったりするケースやサイズ違いや好みではないものであったり、転売の理由はさまざまです。

 実際に、子供などに対しても、これは、ちょっと物を与え過ぎではないか?と思うほど、ノエルには、甘々なフランスの親や祖父母なのです。

 今年、最も転売サイトに掲載された物は、「レゴ・ハリー・ポッター」や「スター・ウォーズ」、ボードゲームの「スカイジョー」や「コードネーム」、そしてフランスのスター選手キリアン・エムバペが表紙を飾るビデオゲーム「FIFA 2022」などがあります。

 スティーブン・キングの『アプレ』、漫画の『アステリックスとグリフィン』、バーナード・ウェーバーの『蜜蜂の予言』など、書籍は言うに及ばずです。

 これらの転売サイトには、Vinted、Ebay、Leboncoin、Rakuten France、fnac.comなど、すでに数社が利用されています。

 せめて、これらが廃棄されるのではなく、転売されて再利用されることは、救いといえば救いであるとも言えますが、なんだかせっかくのプレゼントを即日、転売されてしまうことも、空虚なプレゼント交換の習慣になりつつあるような気もします。

 しかし、それらをこのタイミングで買う人は、もちろん、店頭で購入するよりも安い価格であることが魅力なのでしょうが、来年のプレゼント用に買い置きしておくのでしょうか?どちらにしても、合理的?といえば、合理的、ノエルのプレゼントで多くの人が散財しながらも、不要なものは、その日のうちにすぐに転売する、フランス人のガッチリして、現実的な一面が垣間見える新しい現象でもあります。


クリスマスプレゼント転売


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2021年12月25日土曜日

ノエルの食材に和牛が君臨するパリ

  


 世界が、オミクロン株でバタつく中、フランス人は、急激な感染拡大にもかかわらず、やはりノエル一色になっています。

 街の中は、ノエルのデコレーションで煌びやかに彩られ、メトロやバスの中もいつもより多い人出で、クリスマスプレゼントを買い集めているのか、大きな袋をいくつも抱えた人が目立ちます。

 日本にいる私の友人たちからは、今年の日本はクリスマスをすっとばして、お正月って感じ・・という知らせが入っていますが、パリはクリスマス全開の感じです。

 毎年のことですが、ルパ・ド・ノエルといって、クリスマスに食べる食事についても、職場などでも話題の中心は、ノエルの食事についてが多くなります。

  


 スーパーマーケットは、やはりノエル仕様に山積みのチョコレート、フォアグラ、キャビア、牡蠣、シャポンなどのいつもはあまり大々的に前面には出てこない食材が並んでいます。

   

  


 特にお肉の種類は多く、いつも出回っているチキンなどは、むしろ目立たなくなり、この時期にしか登場しないシャポンや、鹿、バイソン、ダチョウ、猪などなど、ちょっと珍しいさまざまな種類の肉が並べられています。

 




 そして、特に今年、目を引いたのは、その多くの種類のお肉のセンターを飾るのが「WAGYU(和牛)」であったことで、「WAGYU(和牛)」がこんなに前面に出てきたのを見たのは今年が初めてでした。

 実際にフランス人がどの程度、WAGYU(和牛)を知っているのかは、わかりませんが、その和牛もコニャックでマリネされているものや、ヒマラヤの岩塩が添えられているものなど、種類はいろいろあります。

 ノエルには、普段は食べないちょっと高級なものを食べるという感覚がありますが、まさに牛肉の中でもWAGYU(和牛)は、高級な肉に位置付けられている(実際、高い)ような気がしています。

 空前の日本食ブームということもあるのでしょうが、とかく日本の食品というのは、フランスでは、高級なイメージが浸透している感じがあり、日本人の私としては、至極、光栄かつ嬉しいことではありますが、この和牛についても、どの程度のクォリティーのものかはわからず、また、日本から空輸しているとも思い難く、欧州産の日本米があるように、欧州産の和牛なのではないか?と思って、調べてみましたが、どこにも記載はなく、実際のところは、何物なのかは定かではありません。

 しかし、ここ数年で、日本の食品がかなりフランスに出回るようになったことは、事実で、お寿司、ラーメン、餃子などは、立派に市民権を得た感もあり、SUSHI, RAMEN, GYOZAなどは、そのままフランス語として使用されています。

 そして、ついには、このフランス人の食の祭典とも言うべくノエルの時期に「WAGYU」が堂々とセンターを飾る日が来るとは、私がフランスに来たばかりの20年ほど前には、想像すらつかないことでした。

 食品によっては、フランス人の好みに合わせて、変化しているもの(甘いお醤油など)もありますが、いずれも他の食品よりは、少々値段が高くてもフランス人が買いたがるようになりました。

 以前は、日本製品なら間違いなし・・と日本の工業製品がもてはやされましたが、現在は、日本の食品がちょっと高級で先端を行くような雰囲気を纏っていて、食品の中でも「日本」というのは、一種のブランドのような価値がつくもののような感じで、その実際のクォリティは、必ずしもどうかと思うところはありますが、イメージとして、かなり悪くないものとして、フランスでは浸透しつつあることを、スーパーマーケットの肉売り場で堂々とセンターを飾る「WAGYU」を見て感じたのでした。


WAGYU 和牛


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2021年12月24日金曜日

昨日は新規感染者9万人突破のフランスの感染者・濃厚接触者の隔離が社会機能を麻痺させる危機

 


 

 予想を裏切らないフランスの感染者数の拡大は、ここ3日間で記録を更新し、7万人、8万人を突破したと思っていたら、昨日はとうとう9万人(91,608人)を突破してしまいました。このままだと、ノエルぴったりのタイミングで10万人を突破しそうです。

 毎日のように、7万人、8万人、9万人の感染者が出ているということは、少なくともここ3日間で、24万人が隔離生活を送らなければならなくなっているわけで、それらの感染者の濃厚接触者を含めたら、隔離生活が必要な人もその数倍の規模で増加していきます。

 フランスでは、オミクロン株の感染対策の一環として、12月13日から、隔離のルールが変更されています。

 オミクロン株に感染した場合は、17日間の隔離が求められます。また濃厚接触者として、感染した者と同じ世帯の居住者も同様に17日間の隔離が必要になります。

 隔離状態ということは、海外から日本に入国する時のように、強制隔離施設に滞在しなければならないわけではありませんが、感染者本人とその家族がロックダウン状態になるということで、当然、仕事にも学校にも行けなくなります。

 この1週間のフランスの新規感染者数は、合計で432,611人で、一人暮らしの人もいるでしょうが、まあ、少なく考えてもその2倍、3倍の人々が隔離生活を余儀なくされるわけです。

 ただし、現在のところは、オミクロン株は感染者全体の20%程度(公式発表では)と言われているので、その全員が17日間の隔離が求められているわけではありませんが、数日のうちにオミクロン株の割合が優勢となると言われているので、感染者の大多数が長期の隔離生活を送らなければならなくなります。

 この感染増加のリズムで行けば、10万人を突破する日が何日も続くわけで、容易に100万人以上の人が隔離生活を17日間送ることになります。当然、病欠扱いです。

 これが続いていけば、1月には、病院、公共交通機関、スーパーマーケットなどの一般の商店、学校などなど、あらゆる場所においての社会的な機能が麻痺することが心配され始めています。

 毎日、10万人近くの人が17日間の隔離生活に入れば、少なくともその倍以上の人がその期間は働けない状態になるわけですから、社会機能に支障をきたすことは、言うまでもありません。

 すでに、一部の地域の交通機関などでは、減便、運行休止を余儀なくされています。

 これは、これまでの感染の波にはなかった新しい現実で、オミクロン株の拡散速度によるものです。フランス政府は、この事態を受けて、この感染者ならびに感染者の濃厚接触者の隔離期間について、症状の重さを考慮した調整が必要になるだろうと語っています。

 科学技術評議会と検討の上で、検査によって決定されるその時点の伝染力レベルや、その人の職務の性質を考慮して隔離期間が緩和される可能性があります。

 しかし、これは悪循環のスパイラルに突入する可能性も秘めており、ただでさえ、猛烈な勢いで感染が拡大している中で、本来ならば17日間は隔離する必要があると判断されていた隔離期間を社会機能が麻痺することにより、隔離期間を軽減することは、またさらに、感染を広げてしまう可能性を生み出してしまうことになりかねません。

 現在は、学校もノエルのバカンス期間に入っているために、学校での感染のリスクはなくなっていることだけが救いです。

 代わりに人が集まり集うノエルが控えているので、それも帳消しになりかねませんが・・。

 現在、パリの街に出てみると、ノエル前ということで、メトロの中も商店もマルシェ・ド・ノエル(クリスマスマーケット)なども、ものすごい人出。メトロの中などは、平日の昼間にもかかわらず、いつもよりも乗車率が高く、スーツケースを持っている人、クリスマスプレゼントの買い物袋をたくさん抱えている人など、楽天的に考えれば、経済が回っているなぁ・・と思います。

 しかし、一方、マルシェ・ド・ノエルの人出などを見ると、屋外とはいえ、ほとんど遊園地のような状態。本来なら、遊園地などの娯楽施設(ディズニーランドなど)では、屋外とてヘルスパスの提示が求められているのです。

 パリのチュイルリー公園内のマルシェ・ド・ノエルなどでものすごい人にもかかわらず、マスクをしていない人もちらほら見られ、していても鼻が出ていたり、顎マスクだったりの上、ヘルスパスのチェックもありません。

 もっとも、ワクチン接種をしていても、重症化を避けられるだけで、感染のリスクはいつもつきまとうオミクロン株に対して、もはやヘルスパスが有効なのかどうかもわからなくなってきました。

 しかし、いずれにせよ、ノエルを控え、1日の新規感染者が9万人以上もいる国らしい緊張感はどこにも見えません。

 オミクロン株は、一般的に悪化する割合が低いと言われてはいますが、悪化する割合以上に感染拡大の割合が高ければ、結果的には、以前と同じ、あるいは、それ以上に医療体制も逼迫していきます。

 検査と隔離が基本であったはずの感染拡大の回避ですが、あまりの感染拡大の速度に隔離を緩和させなければならない、八方塞がりの状態になりつつあります。

 やはり、頼みの綱は、もはやワクチン接種の拡大しかないのかもしれません。


オミクロン株感染者 濃厚接触者隔離


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2021年12月23日木曜日

イギリスの1日の新規感染者数10万人、フランス8万4千人突破 もう止まらないオミクロン株

  



 イギリスの1日の新規感染者数が10万人を突破したと言うニュースに、さすがにイギリスは先を突っ走っていく・・とびっくりしていたら、同日のフランスの新規感染者数も8万4千人を超えて(84,272人)、これは冗談を言っては、いられない・・とますます怖くなってきました。

 一昨日のフランスの新規感染者数は、7万3千人、1日で1万人以上も増えるとは、やはり、只事ではありません。

 たしかに、現在はノエルを控えて検査する人が増えているのは事実ですが、それにしても、検査をして感染していなければ、感染者が増えるわけではないので、たしかに感染が急拡大していることは確かなのです。

 1日の新規感染者数を聞く前に、ちょっとお祝い事があったので、久しぶりに外食に出かけたら、そのお店では、ヘルスパスのチェックもなく、開店時間早々に入店したので、お店には、私たち以外は誰もいなかったため?と思いきや、その後、続々と入ってくるお客さんに対してもヘルスパスのチェックはしていませんでした。

 もともと、私は、あまり外食を頻繁にするわけではありませんが、それでもヘルスパスのシステムが始まって以来、全くヘルスパスのチェックをしていないお店は初めてでした。

 飲食店では、ヘルスパスのチェックが義務付けられて以来、それでも、数回は外食していますが、こんなことは初めてでした。

 これまでも、そんなお店はけっこうあるよ!と友人からは聞いていたのですが、明らかにヘルスパスもゆるゆるになってきているのを、目の当たりにしたのでした。

 知人がパリのガイドさんのような仕事をしていて、久しぶりにやってきた日本人観光客数人を案内して、ムーラン・ルージュ(フレンチカンカンなどを披露するパリの人気スペクタルショー)に行ったら、全席満席で、マスクをしている人など誰もいなくて、ビックリして、早々に外に出てしまった・・という話をたまたま昨日、聞いて、驚愕したところでした。

 まあムーラン・ルージュはドリンク付き、あるいは食事付きのショーなのでマスクをしていないのも無理はないのかもしれませんが、思わずそのド派手なショーと、満席の興奮している様子に屋内での全員ノーマスクの光景にギョッとする気持ちもわからないではありません。

 ディスコやナイトクラブなどは営業停止だと思っていたのに、ムーラン・ルージュは、食事やドリンクを伴うショーのために、この営業停止には、入っていないようです。気になって調べてみたら、もう年内いっぱい予約は満杯です。

 しかし、考えてみたら、どこのレストランも大勢のお客さんで賑わっており、飲食店ゆえ、お客さんは誰もマスクなどしていないわけで、何もムーラン・ルージュにだけ、驚くのもおかしな話です。

 しかし、ヘルスパスのチェックも適当になっているのなら、現在のフランスの感染状況が急速に拡大しているのも不思議な話ではありません。

 また、先日、偽ヘルスパスを入院の際に提示して、急激に病状が悪化して死亡した事件から偽ヘルスパスに対する調査が広がり、それ以前には、フランスでは3万6千枚の偽ヘルスパスが流通していると言っていたのが、それから、捜査が進み始めて、その次の段階では、「11万枚、またその次には30万以上の偽ヘルスパスが流通している」と発表されるごとにその数は新記録を更新し続けています。

 また、レストランなどのヘルスパスをチェックする側も、「けっこう同じ名前、同じ生年月日の人のヘルスパスを見かける・・」などと平然と言ってのけていたりするのを聞くと、これはもう、ヘルスパスが正常な機能を果たしてはいないのではないか?と思わずにはいられません。

 しかし、レストラン側では、ヘルスパスと本人確認のIDカードのチェックをすることはできずに、ハッキングされているか、闇でやりとりされているヘルスパスを見分けることはできません。

 ノエルを家族と迎えるために、絶賛、PCR検査進行中のフランスではありますが、こうなってくると、検査の結果、陽性になった8万4千人の人々が、家族とノエルを迎えることを諦めて、おとなしく隔離生活を送るのかどうかも疑わしく思えてきてしまいます。

 こんなに急激に感染が拡大している事態に、「昨年は、ワクチンなしにノエルを乗り越えた・・フランス国民は皆、どうやって感染回避ができるかはわかっているはず・・」と、ただ漠然と、「大勢での集まりは避けるように」というだけで、ノエル・年末年始を迎えようとしているのは、どう考えても甘すぎると思うのです。

 ヘルスパスからワクチンパスへの移行を急いで1月初旬に前倒しにすることになったようですが、たとえ、それがヘルスパスでもワクチンパスでもそのチェック機能がしっかりなされていなければ、同じことで、その前に最も人々が集うノエルや年末年始に特別な対策もとらずにいたら、ワクチンパスが施行される前に大事に至ってしまいます。

 11月の初旬にWHO(世界保健機構)が「ヨーロッパが再び感染の震源地になる 2月までにさらに50万人の犠牲者が出る恐れがある」と警告していましたが、まさに、ヨーロッパでの感染拡大は、現在とどまることを知らず、イギリスの10万6千人をはじめとして、フランス8万4千人、ドイツ4万5千人、スペイン6万人、イタリア3万6千人、オランダ1万3千人とこれだけの国でも、1日の新規感染者数は34万5千人以上、毎日、新記録を更新しつづけています。

 これまで「コロナと共存しながら生きる」などのスローガンを掲げて進んできましたが、どうやら、これでは、「とてもコロナと共存して生きる」どころではありません。


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2021年12月22日水曜日

フランス新規感染者数73,000人を記録 

 


 21日、フランスから日本への入国の際の強制隔離期間が3日間から6日間に延長されました。これまで、フランスよりも感染者の少ないイタリアなどの国が6日間の隔離とされていたので、「なぜ?フランスは3日間でいいの?」と思っていたくらいなので、当然だとは思うものの、やはりショックでもあります。

 もちろん、当分、日本には行くつもりはありませんが、あらためて隔離期間を延長されれば、ショッキングではあります。「あ〜あ・・」などと言っている私に娘は、あっさりと、「隔離云々以前に、来ないでくださいってことでしょ!」とバッサリ。

 そう、この6日間の強制隔離、しかも、どんな施設が割り当てられるかもわからず、ヘタをすると、テレビなし、ネットなしの狭い個室の監禁状態。これでは、ただでさえ、ややこしい日本への帰国は、さらにハードルが上がります。

 そんなお知らせが入ったと思ったら、フランスでの1日の新規感染者数は73,000人を記録したという、これまた衝撃的なニュース。毎週月曜日は、前日が休日のために感染者数が減少するのですが、その分が上乗せされた?としても、深刻な数字です。

 政府報道官のガブリエル・アタルは、この数字は1週間で15%増加しているものであり、現在、一番、警戒されているオミクロン株の割合が20%を超えたことを発表しました。

 10万人あたりの発症率は、全国平均で545人、しかしこれは、地域による格差も激しく、パリでは、発生率は1,000人に近く、20〜29歳の年齢層では1,748人となっています。

 首都圏での感染、特に20〜40歳の若年層における非常に強い感染の増加が見られることも特徴のひとつです。

 オミクロン株により、周囲のヨーロッパ諸国も感染が拡大進み、クリスマス・年末年始を前に続々と生活の行動制限を行い始めました。

 オランダのロックダウンをはじめとして、ドイツは、年末年始に人を招く際には、ワクチン接種者は10人以内、ワクチン未接種者は2人以内と人数制限し、28日からのスポーツ大会は非公開にすると発表。ポルトガルも来週からバーやディスコは閉店し、2週間のリモートワークが義務付けられます。

 これに対して、フランスは、クラブやディスコはすでに営業停止になっているものの、現在のところ、ノエルや年末年始の細かい具体的な人数制限などの規制は設けていません。

 むしろ、ノエルや年末年始の集まりを飛び越えて、ヘルスパスからワクチンパスへの移行を予定より前倒しにすることを急いでいるようです。

 常にウィルス感染に関しては先頭を切っているイギリスも、一時、1日の感染者数が9万人を突破していますが、イギリスの場合は、感染者数は多いものの、集中治療室の患者数は1,000人以下、死者数もフランスよりも抑えられています。

 そこへ行くと、フランスは、感染者の増加とともに、順調に集中治療室(3,000人突破)の患者数、死者数も増加しており、医療従事者の疲弊と危機感は増すばかりです。

 第1波の時の医療崩壊は、本当に悲惨な状態で、集中治療室の患者数が7,000以上にまで達しましたが、医療従事者が言うには、「それでもあの時は、ロックダウンしていたために、ほぼほぼコロナウィルスの患者に集中できていたけれど、現在は、交通事故もあれば、他の病気の患者さんもたくさんいて、しかも、この2年間に疲れ果てたり、ワクチン義務化に反対する医療従事者が退職したりで、人手不足のために閉鎖されている病棟も増えてしまった」のだとか・・。

 つまり、あの当時よりも病床のキャパも人手も減っているということなのです。

 ヘルスパスをワクチンパスに移行するのも良いけれど、とりあえず目前に控えたノエルでの人の集まりを具体的な人数などを示して制限しなければ、大変なことになりかねないと、私は心配でなりません。

 特に、昨年は、ワクチン接種をしていなかったにもかかわらず、想像以上にノエルのタイミングでは感染拡大を避けられたので、「ノエルはさほど心配ではなく、むしろ年末のカウントダウンの方に注意するべき」などと言っていますが、昨年とは、様々な点で状況は違います。

 あの頃は、レストランなどの飲食店も全て営業停止で、蔓延していたウィルスの種類も現在とは違うのです。

 特にオミクロン株が若年層で急拡大しているのならば、むしろ、子供からおじいさん、おばあさんまでの家族で集まるノエルは非常に危険なのではないかと思うのです。

 また、「ノエルの集まりの前には検査をして、少なくともオートテスト(簡易検査)をして臨みましょう」と言っているにもかかわらず、イル・ド・フランス(パリ近郊地域)の薬局のオートテストはほぼ完売状態で今や簡単には手に入らない状況です。

 この2日に2倍以上に感染者が増加するというオミクロン株、ワクチンパスを急ぐだけでなく、年末年始の感染対策を強化しなければ、大変なことになりかねません。

 もうだんだん、感染者数の増加にも感覚が麻痺してきていますが、1日の新規感染者数が7万人というのは、現在の感染者数が7万人というわけではなく、毎日、プラス7万人増加しているということで、累積している感染者数は、考えるだけでも恐ろしい現状です。

 WHOは「2022年までにパンデミックを終わらせるために全力を尽くすことを約束します」と言っているようですが、本当に不安の中で過ごすノエルはこれで最後にしてもらいたいものです。


フランス新規感染者新記録更新


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2021年12月21日火曜日

フランスでのオミクロン株の拡大とその危険性 パリ近郊・首都圏では、すでにオミクロンの割合が高い

  


 現在のフランスでの新型コロナウィルスの感染は、デルタ株が主流とされていますが、オミクロン株もその間を縫って、着々と侵食しつつあります。現在のフランスでのオミクロン株は、感染者全体の7〜12%と言われていますが、セーヌ・エ・マルヌ、サルト、パリ(la Seine-et-Marne, la Sarthe, Paris)などの首都圏では、より高い割合になっており、感染者の20%がオミクロン株による感染に移行していると言われています。

 コビットトラッカーCovidTracker(感染状況確認サイト)とViteMaDose(ワクチン予約サイト)のウェブサイトの創設者であるギヨーム・ロジエ(Guillaume Rozier)によると、オミクロンは国内で6.8%を超え、イル・ド・フランスでは20%、パリでは27%にもなる可能性があるといいます。

 他の専門家はさらに悲観的で、CNRS の研究者である Florence Débarre 氏も オミクロン変異種がこの週末にイル・ド・フランスの症例の 50% を通過した可能性と、変異体の倍加時間が「2 日間程度」であることを示しています。

 現在のフランスでは、感染者に対する変異種のスクリーニングは一部のケースにしか行われておらず、このオミクロン株の数については、非常に不確実なものであり、感染者数がここ1〜2ヶ月で、毎週のように10%以上の速い増加傾向を示していることから、感染速度の速いオミクロン株の数は、確認されている数字よりもずっと高い可能性があるのです。

 イギリスの最新の研究によると、オミクロンに対するワクチン防御率は2回の接種で30%(ブースター接種では70%)に低下することがわかっています。重症化した場合の防御率は70%と依然高いながらも、オミクロンの危険性は、患者数が圧倒的に大幅に増え、ただでさえ医療体制が危機的状態に陥っている時に、危険にさらされている人たちに打撃を与えることです。

 ファイザー社製ワクチンの共同開発者であるバイオテック社のCEOは、12月20日(月)のルモンド紙でオミクロン変異種は、メッセンジャーRNAワクチンの有効性を脅かす存在であることを指摘しています。

 また、毎日新聞のインタビューを受けたウグル・サヒンによると、「3回のワクチン接種者も、この変異種でウィルス感染を広げる傾向があり、オミクロンに対する効果は時間とともに失われる可能性が高いが、そのスピードはまだ測定できていない」と語っています。

 しかし、また同時に「オミクロン特別適応ワクチン」の開発もすでに発表されており、規制当局の承認が得られれば、3月には最初のオミクロン適応ワクチンを提供できるはずであるとしています。

 また、12月中旬、南アフリカとイギリスの民間・公共団体の研究からは、「オミクロン株が我々の免疫システムを回避して、以前にコロナウィルスに感染した人に再感染する能力がある」ことも発表されています。

 このように、オミクロン株については、様々な研究結果が発表されていますが、世界保健機関(WHO)も12月14日(火)、オミクロンの変異型が「他のどの変異型でも見たことのない速度で」広がっていると警告し、G7諸国の保健相は、「今日の世界の公衆衛生に対する最大の脅威」であるとして各国に協力を呼びかけています。

 いずれにしても、クリスマス、年末年始を迎えるタイミングで、昨年とは違って、ワクチン接種が行われている状態にもかかわらず、すでに、爆発的な感染拡大を見せているオミクロン株は、十分に脅威的な存在であるに違いありません。


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2021年12月20日月曜日

2022年1月からのワクチンパスの内容

  


 12月17日にカステックス首相が発表した来年早々にはヘルスパスがワクチンパスになるという話は、実際の施行は、おそらく1ヶ月以上先になるためなのか、私が思ったよりは騒ぎにはなっていません。むしろ、7月の時点でのヘルスパスの発表の方が衝撃的で皆が慌てたと言ってもいいかもしれません。

 そもそもワクチン接種をすでに受けている77.8%の人にとっては、なんら変更のないものであり、これにより影響を受けるのは、残りの22%のワクチン未接種者にのみ限られており、すでにヘルスパスによる生活が浸透しているフランス国民にとっては、大きな変更はありません。

 しかし、これは、日に日に深刻になっている現在の感染拡大による病院等の医療施設の圧迫を食い止めるためのヘルスパスだけでは動じないアンチワクチン論者をワクチン接種を加速させるための施策であることは言うまでもありません。

 これは、これまでのヘルスパスをワクチンパスに変更し、公共の場所への入場はワクチン接種者だけに限定し、たとえPCR検査があってもワクチン未接種者は入場させないということです。

 フランス政府は、「一部の人々(といっても約600万人)のワクチン接種拒否が国全体の命を危険にさらすことは許されない」と、ヘルスパスからワクチンパスへの移行を説明しています。

 特に心配されているのは、50歳から74歳の130万人、75歳以上の高齢者56万5千人が未接種であることで、意外にも高齢者にもワクチン未接種者が多いことです。

 基本的には、ヘルスパスと同様の形態をとり、QRコード形式でデジタルまたは、紙媒体で提供されるとしているので、これまでのヘルスパスの中のワクチン接種の記録をそのまま使用する形になります。

 また、ワクチンパスが必要とされる場所は概ねヘルスパスと同様で、カフェ・レストラン(テラス席を含む)、文化施設、娯楽施設、スポーツジム、病院、高齢者施設、イベント会場などで、ヘルスパス同様、ショッピングセンターは影響を受けることはありません。

 また、飛行機、列車、長距離バスなどの長旅には、必要とされますが、メトロ、RER、TERなど日常的な移動には必要ない。ウィンタースポーツリゾートでは、レストランやスキーリフトでワクチンパスが必要となります。

 また、病院の一般外来に関しても、ワクチンパスが必要になりますが、救急(緊急)外来の場合には、ワクチンパスのチェックはありません。一般外来のワクチンパスについては、緊急ではないとはいえ、物議を醸しそうな問題ではあります。
 
 企業へのアクセスについては、今後、労働大臣がソーシャルパートナーとの会合で直接、話し合いがもたれることになっています。

 しかし、今後、さらに問題をややこしくするのは、ワクチンの有効期限切れの問題で、これまでは、ワクチン接種率を2回のワクチン接種で換算していましたが、(現在は2回目のワクチン接種から7ヶ月後以内に3回目のワクチン接種をしないとヘルスパス(ワクチンパス)が1月15日以降は無効になることになっており、65歳以上の人に関しては、すでに12月15日から、追加接種をしていなければ、(2回のワクチン接種から7ヶ月以降経過している場合)無効になっています。

 ですから、今後、初めてワクチン接種をする人に関しては、2回のワクチン接種で、すでに2回のワクチン接種をしている人に対しては7ヶ月以内に3回目のワクチン接種をした状態がワクチンパスとして通用することになるのです。

 医療従事者に関しては、すでにワクチン接種が義務化されていますが、彼らは、2022年1月30日までに3回目のワクチン(ブースター接種)がさらに義務付けられます。オリヴィエ・ヴェラン保健相は、パリ近郊でオミクロン変異種の病院クラスターが複数検出されたことをこの理由として説明しています。

 また、医療従事者だけでなく、救急隊員(消防士)の接種義務を強化する予定であることも併せて発表しています。
 
 このワクチンパスへの移行について、「ワクチン接種強制の偽装ではないか?」と疑問の声も上がっていましたが、逆に政府は、はっきりと「これは、ワクチン接種を強制に近づけるものである」とはっきりと認めています。
 
 彼の態度は毅然としており、「我々は、いつまでもワクチン接種を受けない人のために、多くの国民を危険に晒し続け、コロナウィルスの被害を受け続けるわけにはいかない。ワクチン接種を受けていない人がバーやレストラン、一般の人々を迎える場所に行くのを防ぐことは、路上で捕まったら135ユーロの罰金を課すよりも効果的だ!我々は、罰を与えるためにやっているのではない!」と語っています。

 しかし、ワクチン接種が始まって以来、もはや1年以上経っても、未だワクチンを受けない人々の態度は強靭で、「ワクチンパス・・そんなの関係ない!」と息巻いている人が多いのも事実ですが、実際にワクチンを打たないとレストランにも行けない、TGVにも乗れない・・かなり厳しい措置、これにより、ワクチン未接種者は、フランス人にとって何よりも大切なバカンスも満足に過ごせなくなる、もはや兵糧攻めのような立場においやられることと同じことになります。

 このワクチンパスがどの程度の効果を見せるのかは期待したいところです。

ワクチンパス フランス


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