2021年10月8日金曜日

まだまだ油断はできないフランスの感染状況 いくつかの地域で再び感染上昇

  

フランスで感染が再び上昇し始めた地域

 


 政府のスポークスマン・ガブリエル・アタルは、フランス国内のいくつかの地域で、再び感染が上昇し始めたことを発表しました。

 これまで、ワクチン接種率の上昇とヘルスパスの起用により順調に減少してきたコロナウィルスの感染状況がペイ・ド・ラ・ロワール(Pays-de-la-Loire)とオード(Aude)の地域で感染状況が増加傾向に転じ始め、10万人あたりの感染症例50のしきい値を超え、警戒が必要な数字に達しています。

 政府当局は、感染率がもはや減少しないどころか、増加し始めた、これらの地域の約30県は、危機に瀕しており、今後、より注意を払う必要があることを警告しています。

 オード県での発生率はこの一週間で10万人あたり66件を記録し、大学(リムー)も閉鎖することを余儀なくされています。

 また、ペイ・ド・ラ・ロワールでもいくつかの県で発生率が10万人あたり50件を超えています。(マイエンヌ55件、メーヌ・エ・ロワール51.2件)

 保健当局は主に過去、数週間にわたるこれらの地域部門の感染状況の変化を注視しており、フランス全体としては、低下しているものの、これらの地域(オード県)では9月20日から10月3日までの間に発生率が6.97%増加し、カンタル(オーベルヌ・ローヌ・アルプ圏)では2週間で88%の発生率の増加を示しています。

 政府は、現在の一部での地域の感染増加から、冬に向けて気温が低下することに牽引されて起こる可能性のある第5波の到来を懸念しています。

 これらの地域で特に感染状況が増加に転じた原因は解明されていませんが、夏のバカンスが終わり、学校も再開され、47の地域では小学校でのマスク義務化も撤回され、ヘルスパスがあることで、日常を取り戻し始めた人々の気の緩みや気温の低下など、これらの地域だけでなく、感染が再び上昇傾向に転ずる危険性はどこの地域にでも潜んでいるということを思い起こさせてくれる事態が起こりました。

 ウィルスが気温が低下するごとに活発になることは、これまでの状況からも既に明白な状況で、ワクチン接種は感染を完全に回避できるものでもない上に、ワクチン接種をしてから、半年ほどでワクチン接種の効果が低下し始めることがわかっています。

 感染の上昇は、いったん上昇傾向に転じ始めれば、倍々で増加していくので、この気温が低下していく時期に、しかもワクチン接種をしているからといって、油断は大敵なのです。

 この一部地域での感染悪化の状況が全国的に警鐘を鳴らす機会になってくれれば良いのですが、フランス全体としては感染状況を示す数字は現在のところは、減少しているために、警戒を強めるどころか、「ヘルスパスを廃止」の期待が大きいことは、憂慮すべき現実です。

 一度、規制を緩めてしまえば、再び規制を厳しくすることは、よりショッキングなことであり、さらに反発が強まります。

 2022年の夏までは、ヘルスパスを続行することを検討すると発表していたフランス政府ですが、それよりも具体的に11月15日まではヘルスパスによる規制は解除しない方向であることを確認しています。

 10月15日からはPCR検査は有料化され、検査数が減少することは確実です。ワクチン接種に追い立てるために、検査を有料化する(もちろん経費削減もあるでしょうが)ことを決めた結果が検査をしないために、感染していることに気付かないまま、感染が増加する危険性も含んでいるのです。

 そして、フランスでは、10月末からは万聖節(ハロウィン・フランスではトゥーサン)のバカンスに突入し、家族が集まり、お墓参りをする慣わしがあります。そして、トゥーサンが終われば、その次には、何よりフランス人にとって大変なイベントのノエルが待ち構えています。

 これから気温の低下とともに、ワクチン接種の効果が薄れ始めた頃に次から次へと感染悪化を呼び起こしかねない行事が目白押しなのです。

 すっかり開放モードのフランスが、この秋から冬にかけて、無事でいられる確証はまだまだないのです。


フランスの一部地域での感染悪化


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2021年10月7日木曜日

一年以上かかって、まだ治療が終わらないフランスの歯医者

  


 思い起こせば、通い始めて1年以上経ってしまった歯の治療ですが、手短に言えば、まだまだ終わりそうもありません。

 そもそも、もしかしたら、ヤバいかも?・・と思いながら、放置していた上に、衝撃的な完全ロックダウンを迎えて、医者通いの外出は認められていたものの、マスクを外さなければ用をなさない、しかも口の中をいじくりまわす?歯の治療は、何とも恐ろしくて、躊躇われて行かなかったことが、さらに症状を悪化させたこともあり、事態は最悪の結果を迎えることになり、一本の歯はインプラント、そして、その隣の歯も治療が必要になってしまいました。

 ロックダウンが解除になって少しして、ようやく恐る恐る歯医者さんに行って聞かされた、まさかの入れ歯かインプラントの選択から始まり、まさか自分が入れ歯を入れるかどうか悩む日が来るとは思ってもみませんでした。

 私の歯も間接的なパンデミックの被害に遭っております。

 まずは、もう根っこももうダメになっている・・と言われてしまった方の歯の根っこを抜くことから始まり、結局は、その後の煩わしさや「食べる」という私の数少ない楽しみを尊重するために選択したインプラントの埋め込みの手術(現在のところは歯の根っこの部分にネジのようなものを埋め込んだ状態)も、2回目のワクチン接種から2週間経過しないと・・さらにワクチンのために延期されて、ようやくできたのが、6月の末のことで、それから1ヶ月間は、経過を1週間おきに診る必要があることで、7月は毎週、歯医者に通ったところで、再び治療は夏のバカンスのためにストップ。

 私は、特に夏の間に遠出はしなかったものの、夏のバカンスの間に診察室の改装工事をするとかで、次の予約は9月になりました。

 しかし、予定どおりに行かないのがフランスで、案の定、工事が工期どおりに済まなかったということで、予約はキャンセル、しかも9月中に2回、毎回、携帯に歯医者さんから電話が入るたびに、またか・・とうんざりし、10月に入ってからに変更された予約も怪しいものだ・・と半ばあまり期待しないで、逆にギリギリまでキャンセルの電話があるのではないか・・と思っていました。

 結局、今回の予約にはキャンセルの電話が入らなかったので、半信半疑で歯医者に行ってみると、エレベーターを降りた段階から嫌な予感。エレベーターの中からエレベーターを降りた廊下のカーペットには、工事用のビニールのシートが貼られたままで、歯医者に入ると工事の真っ最中。

 夏前までは、感染対策のために診療所に入るとガウンを着せられたり、頭に感染防止用のキャップまで被せられていたのに、そんなものも一切なくなっていました。

 それどころか、どうにか間に合わせでほぼ仕上がっているのは、診察室の一つだけで、他の部屋では工事が続いています。歯医者さんも、そうそう休診のままではいられないので、どうにか診察室の一つだけを先に工事を完了させたのだと思いますが、それにしても、診察中にも工事の問い合わせの電話が入ったり、バタバタと落ち着かないことこの上ありません。

 ただでさえ、インプラントは時間がかかるのはわかっていますが、今回のところは、インプラントの方は、手が付けられず、結局、もう一本の方の仮歯の付け直しで終わりました。

 私の方は、年内いっぱいで保険を切り替えたいために、前々から、年内には、終わらせてもらいたいと念を押して来ましたが、今やすでに10月。

 年内中に歯の治療が完了するのは絶望的です。

 こんな状況からか、「インプラントの次の手術はもう少し時間を置かないと・・」などと自分の都合の良いように言うことを変えるので、「年内には終わるって言ったじゃない!」と言うと、保険の都合なら、「支払いは先に済ませれば、保険の方は問題ないから、その後、治療は、ゆっくりやりましょう!」とのこと。

 いくらなんでも今年中に終わらなければ、治療を始めてもう2年。この期に及んで「ゆっくりやりましょう!」もないものだ・・と思いつつ、治療を始めてしまった以上、現段階で歯医者を変えるわけにもいかず、仕方がありません。

 今の家に引っ越して以来、ずっと通ってきた家の近所の歯医者さんで、これまでこんなことはなかったのですが、いつもの歯の治療とは違うインプラントということもあり、それにパンデミックやバカンスが重なった上に、診察室の工事まで重なって(こちらの工事は工期を守るという観念はない)しまったことなどもありますが、これでは乗り替えるのは、保険だけでなく、歯医者さんも乗り換えることを考えなければ・・と思い始めているのです。

 というより、今後は歯医者に用事がないように祈るばかりです。


インプラント フランスの歯医者


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2021年10月6日水曜日

やたら謝る日本人と謝らないフランス人に見る厳しい日本社会と緩いフランス

   


 フランスでの生活が長くなって、たまに日本に行くと、やたらと謝られることに恐縮してしまうことがあります。「こんなことで、そんなに謝らなくてもいいのに・・」と。

 日本で生活していた頃はあまり気にもしませんでしたが、こんなに謝られる国は、そうそうないのではないかと思います。

 「すみませんでした」「申し訳ありませんでした」「ご迷惑をおかけ致しました」などなど、日本にいたら、1日、何回、謝られることかと思うほどです。

 日本のサービスは、正直、世界一ではないかと思うのですが、また顧客側も世界一厳しい顧客なのではないかとも思います。

 逆にフランスに来たばかりの頃は、何をするにも時間がかかり、ダラダラと同僚とおしゃべりしながらの接客にイライラし、しかもミスが多いにも関わらず、絶対に謝らないフランス人に対して、「パードン(ごめんなさい)」ぐらい言えないの?」とキレかけたこともありました。

 今から思えば、あれは珍しいことではなく、大抵、何があっても謝らないのがフランス人なので、そこで怒る私の方が馬鹿らしかったのですが、あの頃は、まだまだ、そんなフランス人には慣れていなかったのです。

 日本だとよく言われる「大変、お待たせして申し訳ありませんでした」という台詞も、待たされることが当たり前のフランスでは、これまで20年以上フランスにいて、これを言われたのは1回のみで、そんなことを言われて、あまりにビックリしたので、逆に鮮明にその時のことを覚えているくらいです。

 例えば、スーパーマーケットで値段を間違えられていたりして、返金してもらいに受付に行ったりすると、謝るどころか、返金の手続きをやってあげた・・そんな感じの応対です。

 私がミスしたわけではないから、私が謝る必要はないし、むしろ、面倒な返金の手続きをやってあげる・・という感じなので、思わずお礼を言ってしまう自分にちょっとバカげた気分になります。そもそも謝るなどということは微塵も考えてもいないのです。

 会社全体のミスを自分がその会社を背負って謝るなどという感覚は全くないのです。

 さすがに高級品を扱うお店などでは、店員も教育され、頗る感じが良いのですが、そんなお店には、滅多に用がありません。

 今では、スムーズに行かないことが前提なので、何かミスをされても、「まただ・・」とちょっとがっかりするだけで、うまくいけばラッキーぐらいの気構えでいます。

 フランスではそんな感じで生活しているので、たまに日本に行くと、あまりに度々、ちょっとのことでも謝られるのに恐縮するというか、それを超えて、どれだけ厳しい社会なんだろうと思うことがあります。

 厳しい顧客がいるからこそ、サービスもどんどん向上していくのでしょうが、少しのミスも許されず、謝らなくてはならない社会がちょっと厳しすぎるような気もするのです。

 逆に、トラブルが前提のフランスでは、多少、待たされても、それが当然なので文句をいう人もおらず、ミスがあっても、謝りもせずに淡々と、堂々とミスを処理していくのは、反省しない分、改善されませんが、反面、それが許される寛容さ?緩さ?があるような気もするのです。


謝罪


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2021年10月5日火曜日

47の地域圏の小学校でマスク着用義務撤廃

   

グリーンの地域での小学校ではマスクの義務化が撤廃された



 10月4日(月)から、感染発生率が少なくとも5日間で住民10万人あたり50例未満である47地域の小学校でマスク着用の義務が撤廃され始めました。このまだワクチン接種が不可能な年代の子供たちの学級内でのマスク義務化の撤廃には、懸念の声も上がっていましたが、子供たちの学習、理解、集中力に影響を与える可能性、マスクによる苦痛を考慮し、感染の状況が許す限り、小学生からマスク義務を撤廃した模様です。

 しかし、マスク義務化の撤廃は小学生のみで、小学校の職員、教員、また、中学校、高校に関しては、マスクの義務化は継続しています。

 9月の学校再開と同時に学校内での唾液検査が行われたことにより、これまでに3,300学級が一定期間閉鎖されていますが、小学生のマスク義務化の撤廃により、今後はこれまでの20倍の唾液テストの強化が必要だと言われています。

 この小学校でのマスク義務化の撤廃により、大人も勤務先でのマスク義務化撤廃を望む声が高まり始めています。近々の世論調査によるとフランス人の74%は職場でのマスク義務化の撤廃を希望しています。これは、職場でのヘルスパス提示が義務化されている以上、マスクは必要ないではないか?という意見です。

 もともとマスクが大嫌いなフランス人にとって、ワクチン接種の拡大と感染率の低下によりほぼ取り戻し始めた日常で、次に取り戻したいのは、マスクなしの日常なのは、大いに理解できることです。

 しかし、現段階でも、すでに、政府のサイトによると、従業員が一人でオフィスにいる時、また、部屋が充分に換気されているか、2メートル以上の間隔をとることができる場合は、マスクを着用する必要はない」としており、かなり緩くはなっています。

 一方、労働省は、会社の従業員の安全を確保するための国家議定書で、「雇用主は、従業員のリスクを軽減するために必要な全ての組織的措置を講じなければならない」と規定しているため、これを尊重できなければ、雇用者側に対する罰金・罰則対象となるため、各々の企業による判断とはいえ、現在のところは、企業側は慎重な態度をとっています。

 しかし、街中の様子を見ていると、メトロやバスなどの公共交通機関でのマスク着用率は、ほぼ100%に近いものの、外を歩く人々のマスク着用率は激減しており、このマスク着用義務の境界線はどこにあるのかと疑問に感じるほどです。

 けれど、実際に、感染減少傾向にある現在の状況は、ワクチン接種の拡大や、ヘルスパスによる入場制限や一定の施設内でのマスク義務化などの衛生措置の上に成り立っている結果であることは明白です。

 決して、感染が終息してはいない状況での様々な制限の撤廃は、いったいどの制限から撤廃しても良いのか?将棋くずしかジェンガをやっているのと同じような状態で、もしも撤廃してはいけなかった制限を撤廃してしまえば、ガラガラと崩れてしまう依然として危険な状況にあることに違いありません。

 ただでさえ、日常からこまめに手を洗ったり、うがいをしたりする習慣のない日本人の私からすれば衛生観念に欠けたフランス人には、マスクぐらい、まだしばらくは我慢して欲しいと思ってしまいます。

 かなりの強硬手段と思われたフランスのヘルスパスの適用は、一部で大きな反発を呼びましたが、結果が伴ってきたことから(感染の減少)、今ではすっかり日常化し、むしろ、ヘルスパスによって、安心して、外食や娯楽が楽しめるようになり、ずっと続いているデモもかなり動員数も減り、定着しています。

 政府はこのヘルスパスを2022年の夏まで延長する方針を発表していますが、今度は、「ヘルスパスがあるなら、マスクの義務化を撤廃しろ!」という声が上がり始めているのです。

 小学校でのマスク義務化撤廃を機に上がり始めた「職場内でのマスク義務化撤廃」を求める声・・ヘルスパス反対デモの次は、職場でのマスク義務化撤廃デモに変わるかもしれません。


小学校マスク義務化撤廃


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2021年10月4日月曜日

眞子内親王ご結婚に関するフランスの報道

   


 皇室のないフランスでは、他国の皇室の話題がしばしば取り上げられます。その最たるものは、話題に事欠かない事もあり、また、隣国であることもあってか、イギリス王室が最も注目されています。

 しかし、遠い東の国である日本の皇室についても、特に平成から令和に変わった皇位継承の儀式などは、欧州人からすれば、歴史を重んじ、荘厳で尊厳に満ちたセレモニーの様子などが神々しく、また神秘的に映ることも手伝って、絶賛されていました。

 フランス人は、(日本の)伝統的なものに対しての畏敬の念を持っています。それがフランス人の王室・皇室好きに通ずるところがあるのです。(当のフランスの王室は崩壊しているところは皮肉なことですが・・)

 今回の眞子内親王のご結婚に関しては、そこまで大々的に扱われているわけではありませんが、婚約発表からの4年間の経過の事情やその間の日本での報道、そして今回の10月26日に結婚することが発表されるに至った事情などを説明しています。(いくつもの報道がありますが、なぜか、「日本の朝日新聞は、こう説明している」という説明が多いです。)

 「2017年9月に婚約発表をし、当初は2018年11月4日に予定されていたご結婚が婚約者の母親の借金問題が浮上し、スキャンダルになり、多くの国民が反対したために、ご結婚が無期延期となったこと。」

 「日本の多くのマスコミがこれを食い物にし、このカップルについての報道が激化し、その間、婚約者はニューヨークに弁護士資格を取得するために渡米したが、この4年間の間、日本に残され、苦しい立場に追い込まれたプリンセスは心的外傷ストレス障害を発症したこと。」

 「この間に起こったパンデミックがさらに二人の距離を遠ざけたこと。」

 「一部、伝えられるところによると、プリンセスは、婚約者との結婚が叶わなければ、人生を終わらせる覚悟だったこと。」

 「4年間の逆風にも関わらず、婚約者との結婚を諦めることがなかったプリンセスは、通常、皇室のメンバーが結婚の際に行われる全てのセレモニーは執り行わず、また結婚の際に皇室から受け取れるはずの約852,000ユーロを放棄して、皇室を去り、結婚することになったこと。」

 「結婚のために婚約者が3年ぶりに日本に帰国した際にも、マスコミの報道は再び過熱し、空港に降り立った彼のポニーテールが皇室にあるまじき髪型であることなどまでが非難の対象となったこと。」

 「しかし、宮内庁より、彼らは10月26日に結婚し、その後、プリンセスは戸籍、パスポートなどを取得したのち、晴れてニューヨークで新生活をスタートさせることが発表されたこと。」 

 「歴史と慣例を重んじる日本の皇室で、まことに異例づくしの結婚は、しばしば、英国のハリーとメーガンとも比較されて報じられていること。」

 「4年間、国民の非難を浴びながらも耐え続けてきた恋人たちは、ようやく結ばれる!」

 「プリンセスは、愛のためにそんなに多くの人々を遠ざける準備ができていますか?」

 などなど、フランスでは、概ね日本での報道をそのまま伝える形で報道されています。

 皇室のないフランスで、「皇室にあるまじき・・」という概念や、国内での皇室の立ち位置、国民感情など、理解し難いことが多い内容ではあると思いますが、世界最古の皇室の前例のない、このご結婚を、困難を乗り越え、恋愛を成就させたという形で見ている気がします。


眞子さまご結婚報道


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2021年10月3日日曜日

ブレグジット(Brexit)がもたらす混乱 M&S(マークス&スペンサー)がパリから消えていく

  


 2020年12月31日をもって、イギリスがEUを離脱し、ある程度の部分での猶予期間が設けられていたものの、着々と離脱の現実が表れ始めています。

 これまでEU圏内の国民に対しては、EU圏内の移動に関しては、IDカードのみで可能であったものが、10月1日から、イギリス入出国に関しては、パスポートが必要になることになりました。

 パンデミック以来、途中、英国変異種の出現などもあり、特に、このブレグジット云々以前に、イギリスとの行き来が制限されたりして、ことさらブレグジットに注目されることはありませんでしたが、少し感染状態が減少してきた今になって、徐々にこのブレグジットによる影響が注目されるようになってきました。

 陸続きではないとはいえ、ユーロスターで2時間ちょっとで行けるパリ⇄ロンドンは、フランス人にとっても、イギリス人にとっても相互に人気の観光地でもありました。ロンドンに行って、買い物をしていたりすると、びっくりするくらい周囲からフランス語が聞こえてくるのに驚いたことがあります。

 現在は、パスポート云々以前に、イギリスへ行き来するには、イギリスで課している感染対策(ワクチン接種をしていても、入国後2日目にPCR検査が必要で、しかもイギリスでのPCR検査が高額(フランスでは現在のところ無料)なために気楽にイギリスに観光に出かけるフランス人は少ないと思われます。

 EU圏内ならばIDカードで行き来できるため、フランス人のパスポート所持率は意外に低いのです。わざわざパスポートを取得しなければならなくなるとなると、フランス人にとって、ロンドンは、これまでのように気楽に出かける場所ではなくなる可能性もあります。

 これまでIDカードで済んでいたものがパスポートが必要になることは、想像以上にフランス人にとってのイギリスとの行き来のハードルを上げることになるかもしれません。(フランスでのパスポート取得には、大人86ユーロ、15〜17歳は42ユーロ、15歳以下で17ユーロがかかります。)

 それ以上に問題なのは、実際にフランスに居住しているイギリス人、イギリスに居住しているフランス人が在留許可を取得しなければならない点です。(フランスには、約13万人のイギリス人居住者がいると言われています)

 ただでさえ、常時、滞って問題が積載されている在留許可の手続きに新たにイギリス人が加わることは大変な問題です。これは、フランスだけでなく、EU圏内どこの国にも起こってくる深刻な問題でもあります。

 また、これにより、イギリスでは、多くのEU圏内から移住していたトラック運転手が本国に帰国したり、他国へ移住してしまったことで大幅に不足していることから、物流が滞り、特にガソリンの供給に支障をきたし、パニック状態に陥っているといいます。

 ブレグジットにより滞っているのは、ガソリンだけではなく、食料品などにも影響が出ています。イギリス大手スーパーマーケットM&S(マークス&スペンサー)は、イギリスからEUへの生鮮食料品及び冷蔵製品の供給のための複雑で長い時間を要する手続きから、フランスにある20店舗のうち11店舗を閉鎖することを発表しています。

  

すでにM&Sの店内の商品はガラガラ状態

 これは、個人的にも大変、ショックな話で、M&Sは、フランスにあるスーパーマーケットの中でも、イギリスのものが手に入るお気に入りのお店だっただけにとても残念で、つい先日、近くを通りかかって、お店に入ったところ、すでに店内には充分な商品はなく、ガラガラ状態・・フランスにあるM&Sの多くが閉店してしまう話を聞いていたので、店員さんを捕まえて、「ここのお店も閉めてしまうの?」と聞くと、今年いっぱいで閉店とのこと。

 どうやら、残されるのは、駅や空港にある店舗のみのようです。

 EU加盟時にも、ユーロの通貨は使用せずに自国の通過であるポンドを貫き通したイギリスだったので、他のEU加盟国とは、一線を画した感じではありましたが、実際に40年以上も続いたEUを離脱したとなれば、これまで自然な流れで進んでいたことに様々な場面で変更しなければならない規制が出てくるのです。

 考えてみたら、EUというのは、不思議なもので、違う国でありながら、EUとして大きく括られていて、外国でありながら、他の外国とは違う関係。

 結婚する時よりも別れる時の方がエネルギーがいるなどと言いますが、イギリスのEU離脱もなかなか時間もエネルギーもいることなのかもしれません。



Brexit ブレグジット M&S


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2021年10月2日土曜日

バイリンガル教育は簡単じゃないけど、頑張れば、その子の一生の財産になる

   


 国際結婚の場合、子供はハーフでバイリンガルになる・・と、簡単に思われがちですが、バイリンガル教育は、考えているほど簡単なことではありません。

 二つの国(あるいはそれ以上)の国籍を持っており(日本の場合は22歳までにどちらかの国籍を選択しなければなりません)、両親の母国語が二カ国語に渡る場合でも、生活の基盤は、どちらかの国(あるいは、それ以外の国)に置くことになるわけで、どうしても生活の基盤のある国の言語に引っ張られます。

 我が家の場合は、主人がフランス人、私が日本人で、フランスで生活しています。普通のフランスの学校に通っている娘にとって、フランスで生活する上では、娘にとって、日本語は全く必要はありません。

 現在はフランスも以前より、少しはマシになりましたが、フランス人は愛国心旺盛なあまりに外国語に対して排他的な感じもあり、娘が小学校入学の面接の時などは、私が日本人と知って、「うちはフランス語だけですよ!」と念を押されたことがあり、「そんなこと!わかってるわい!」とムッとした覚えがあります。

 ですから、余程、親が心して、日本語を教えようとしなければ、容易に日本語は切り捨てられてしまいます。実際に、フランスにいる日仏ハーフの子供でも日本語がほとんどできない子供もたくさんいます。

 しかし、一般的に普通に外国語を習得しようとするよりは、日仏家庭(国際結婚の家庭)やはり恵まれた環境であることは間違いありません。

 私は、娘が生まれた時から、「必ず娘が日本語を理解し、話し、読み書きまでできるようにする!」と強く思っていたので、私は、娘が言葉を覚え始める頃から、娘とは、一切、フランス語は使わず、日本語だけを押し通し、娘はパパとはフランス語、ママとは日本語、三人で話す時には、それに英語も混ざったごちゃごちゃの言語の中で育ってきました。

 もちろん、小さい頃は、彼女は英語は理解できていませんでしたが、パパとママが内緒話をする英語をいつの間にか彼女も理解するようになり、その話にフランス語で参加するようになりました。やはり、彼女は日本語もできるとはいえ、彼女の母国語がフランス語であることを私は、その時に思い知らされることになりました。

 それはバイリンガルとはいえ、どちらかの言語に軸を置くということは、その子のアイデンティティの形成上にも必要なことでもあります。

 しかし、絶対に娘にしっかり習得させると考えていた私は、母が私が子供の頃に英語を教えてくれたように、日本語のカードなどを作って、日本語を教え、毎晩、毎晩、寝る前には、日本語の絵本を読み聞かせることを続けていました。

 そして、日本語の読み書きを億劫に感じ辛くするために、フランスの学校に就学する前に、まず日本語の読み書きを教えようと、娘が2歳になった頃から、公文に通わせ始め、鉛筆の持ち方から、公文の先生に教えて頂きました。それは、私以外の日本人に接する機会を作りたかったこともありました。

 家では、10歳くらいまでは、テレビは日本語のビデオ・DVDのみ(私も仕事をしていたので、家で過ごす時間は限られていたので・・)、娘は、日本のテレビ番組(ドラマやアニメ、バラエティ番組など)で多くの日本語を覚えました。

 少し字がわかるようになってからは、日本のバラエティ番組は、話していることが字幕テロップのように入るので、わかりやすく、これはこんな字を書くのか〜などと勉強になると言っていました。(まあ、それらしいことを言ってテレビをゲラゲラ見ていることを正当化していたのかもしれませんが・・)

 小さい子供のスゴいところは、気に入ったドラマなどは、何回も何回もセリフごと覚えてしまうほど、飽きずに見続けることができることです。

 そして、毎日、毎日、学校が終わり、家に帰ってくると、私は食事の支度をしながら、公文の宿題を毎日5枚ずつ、やらせ続けました。毎年、夏には日本に娘を連れて行っていましたが、娘には、「日本語の勉強をしない子は、日本には行けないよ!」と夏の日本行きを人参のように目の前にチラつかせながら、どうにか、小学生のうちは、それを続けてきました。

 フランスの小学校では、学校の授業が終わった後に、親がお迎えに行く時間まで、エチュードといって、学校の宿題は、その時間に見てもらえるので、ある程度の年齢までは、娘はほとんど学校の勉強は、家ではせず、夜は日本語の時間にあてることができたのです。

 とはいえ、毎日毎日のこと、あまり興味のない題材のこともあれば、面倒になってしまうことも少なくありませんでした。そこは、ひたすら、親の根気です。褒めたり、宥めたりしながら、忍耐の毎日でした。

 小学校に入った頃には、夏の帰国の際には、こちらの学校がお休みになってすぐに日本へ行き、毎年、2週間ほどですが、日本の小学校に編入させていただいてもいました。同年代の日本人の子供と接することや、日本の学校の様子を体験させたかったこともありました。

 中学生になった頃、こちらの(フランスの)学校も忙しくなり、また、他の事情も多少あり、一時、公文はお休みしていた期間がありましたが、その間も、ずっと日本のテレビ番組を見ることだけは続け、変わらず私とは日本語だけの生活をしていました。

 そして、やがて、バカロレア(高校卒業資格試験)が近くなり、オプションの科目に日本語を選択することにした娘は、日本語の勉強を再び再開し、公文ではない他の日本語学校に週一回通い始めました。

 バカロレアのオプションの日本語の試験は、ある程度、日本語の下地のある子供にとっては、満点をとり、点数稼ぎができる絶好の科目でもあるのです。

 その頃になると、親がやいのやいの言わなくても自分で勉強するようになっていましたので、それから先は、彼女自身の点取虫根性が追い風となってくれました。

 そして、そんなこんなで、どうにか娘は、バイリンガルになりました。

 親の私としては、思い返せば、色々工夫したりした楽しい思い出ではありますが、同時になかなか険しい道のりでもあった、大変だったな〜と思うのに、当の本人は、日本語を覚えるために、大した苦労をしたとは全く思っていません。

 実際にある程度の年齢になってから、外国語を習得するのは、大変な努力が必要ですが、物心つく前から覚え始めた言語に関しては、あまり苦にすることなく、習得することができるのです。

 現在進行形でバイリンガル教育を続けていらっしゃる方も多いと思いますが、時には、くじけそうになることもあると思いますが、そんな時は、テレビやYouTubeでも、今はいくらでも日本語に楽しく触れることができるツールがあります。

 とにかく、どんな形でも、たとえ、ほんの少しずつでも、継続することはとても大切です。

 それは、その子にとって、一生の大変な財産になります。

 そして、一つ理解できる言語が増えることで子供の世界は広がります。

 私自身は、バイリンガルと言い切れる程ではありませんが、母が子供の頃から英語を教えてくれていたことで、英語を苦労して覚えたという記憶はありません。そんな母が私にしてくれた英語教育が私が娘に日本語を根気強く教えることを自然に植え付けてくれてくれたのかもしれません。

 いつか娘が子供を持った時、同じように子供に複数言語を教えてくれるようになることを私は、心から祈っています。


バイリンガル教育


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