ヘルスパスの導入により、フランスのワクチン接種率は上昇し、それにつれて、感染率も着実に低下し、集中治療室の占拠率も下がり、フランスでは、ほぼ日常に近い生活が戻ってきました。
このヘルスパスのおかげで、これまで閉鎖されていた映画館や美術館、娯楽施設、レストラン・カフェなどにも行けるようになり、フランス国民は、夏の間のバカンスもしっかりと楽しみました。
そして、夏のバカンスが終わっても昨年のように感染が悪化するという兆候も現在のところは、見られていません。
この順調な回復状態に、これまで常に現状の事態に適応していくという形を取ることを約束してきた政府は、つい先日まで、ヘルスパスによる規制を地域ごとに緩和していくことを検討すると言い始めていたのです。
しかし、それは、結局は、「検討する」と言っただけで、検討の結果、「ヘルスパスは、当分の間、継続していくべきだ」ということになったようで、29日、政府のスポークスマンであるガブリエル・アタルは、「フランスのほぼ全ての地域で感染率の低下が見られるが、だからと言って、再び上昇しないとも限らない。感染率が低下したとはいえ、ウィルスは根絶したわけではない。私たちは、ヘルスパスを2022年夏まで延長することを議会に提案する」と発表しました。
"Il faut se donner les moyens, pendant encore plusieurs mois, d'avoir la possibilité de recourir à des mesures pour protéger les Français"
— BFMTV (@BFMTV) September 29, 2021
Gabriel Attal évoque la possibilité d'étendre le pass sanitaire jusqu'à l'été, en prolongeant l'état d'urgence pic.twitter.com/FPc4rTOoGT
少し前に、マクロン大統領が年末までにヘルスパスによる制約の緩和を検討していると仄めかし始めて以来、感染症の専門家、疫学者からは、「コロナウィルスの流行は秋には再開する」という警告の声をあげ始めていました。
たしかに、現在のフランスは感染が減少傾向にあるとはいえ、1日の新規感染者は5,000人前後、集中治療室の1,609人を含めた7,726人が入院中です。これは、感染率が減少傾向にあるとはいえ、ウィルスは確実に循環し続けていることを意味しています。
秋から冬になり、さらに気温が低下し、感染が再び上昇傾向に向かうことも十分に考えられ、また新たな変異種が出現しないとも限りません。
現在、屋外はともかく、パリのメトロやバスの中は、ほぼ全ての人がマスクをしていることを私は、なかなか意外だなぁと思って眺めています。(交通機関内等ではマスク着用は義務化されているので、当然といえば、当然なのですが、それをきっちり守り続けていることがフランスでは驚くべきことなのです。)
しかし、それは、出かける先々で求められているヘルスパス生活から、ある一定の緊張感が保たれているおかげではないか?と思っているのです。
ほぼ日常の生活に戻ったとはいえ、それはヘルスパス規制の上で成り立っている以前に近い日常生活であり、まるで無防備でいるのとは違います。
再び、感染悪化のリスクがある以上、ヘルスパスを解除してリスクを冒し、再び、レストラン・カフェ・店舗が閉鎖になったり、夜間外出禁止になるよりも、多くの人は、このままヘルスパスのシステムを続行することを選ぶでしょう。
ワクチン接種さえしていれば、ヘルスパスの提示は、さほど煩雑な作業でもなく、それが習慣になりつつある現在では、それほど差し障りがあるものではありません。
また、マクロン大統領にとっても、7ヶ月後に大統領選挙を控えて、今後の感染対策の失敗は許されません。
多くの国民でさえも、再び、ロックダウンか?ヘルスパス続行か?と問われたら、ヘルスパス続行の道を選ぶに違いありません。
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