2021年9月10日金曜日

25歳以下の女性への避妊ピルの無料化に踏み切るフランスの事情

   


 オリヴィエ・ヴェラン保健相は、2022年から25歳以下の女性に対して、避妊ピル等の避妊に関する処方(パッチ、インプラント、膣リング、ホルモンIUD(またはIUD)、さらには筋肉内注射等)を無料化することを発表しました。

 フランスでは、ピルなどの避妊薬に関連する費用は、既に2013年から、15歳から18歳の少女に対して、そして、また、2020年8月からは、15歳未満の子供に対しても国民健康保険で100%カバーされてきました。

 この避妊薬の無料化により、その後5年間の期間を経て、この該当年齢の少女の人工中絶の割合を1,000人あたり9.5人から6人へと大幅に減少させることに成功しています。成功しているとはいえ、それでもそんなにいることが驚きではありますが、さらに驚くことには、毎年、12歳から14歳までの1,000人近くの若い女の子が妊娠し、これらの妊娠のうち770人が中絶手術を行なっているという事実です。

 これには、私個人としては、あまりピンと来ないというのが正直なところで、1,000人が妊娠して、そのうち770人が中絶という厳しい現実に直面しているのも悲劇ですが、残りの220人は、どうしているのでしょうか? この統計が取られている年代が12歳から14歳ということもなかなかショッキングなことです。

 今回のオリヴィエ・ヴェラン保健相の発表は、これらの無料化の措置を25歳までという年齢制限の引き上げをしたということですが、これは近年、浮上してきている若年層の貧窮化の問題が背景にあります。

「妊娠の危険に晒される道を選んだ場合に、女性が自分自身を守ることができず、避妊をすることができないのは耐え難いことです。若い女性が経済的な理由から避妊を断念し、更なる悲劇を生んでいる状況を改善するために、国は2200万ユーロを投じて、これらの女性を守る」とオリヴィエ・ヴェラン保健相は語っています。


 大臣は、「経済的、社会的、収入の面で「より自律的」に対応する時代であるため、年齢制限を25歳に引き上げるとしています。 

 これは、単に避妊薬自体だけではなく、それに関わる処方相談、ケアに対する費用をカバーしてくれるものです。下記、無料化される避妊薬の例です。

○ピル(経口避妊薬)(ホルモン避妊薬)

 最も良く知られている方法で、21錠または28錠のパックで、3週間または継続的に毎日決まった時間に摂取する必要があり、排卵をブロックし、妊娠を防ぎますが、感染症を予防することはできません。

 また、2つのホルモンを組み合わせている複合ピルもあり(エストロゲン・プロゲストゲン)、非常に効果的ではありますが、全ての女性に適しているわけではなく、静脈血栓症(静脈炎、肺塞栓症)及び脳卒中、心筋梗塞のリスクを高めるケースもあります。

○パッチ

 皮膚を通してエストロゲン・プロゲストゲンホルモンを拡散させる自己接着パッチ、パッチは3週間毎週交換する必要があります。

○膣リング

 ラテックスあるいは、シリコン、柔軟なプラスチックリングは膣内に装着されるもので、体熱により、エストロゲン・プロゲストゲンホルモンが継続的に拡散されます。

○注射・インプラント

 2つの形態があり、1つ目は、診療所での局所麻酔下での手術が必要で、インプラントはプロゲステロンを継続的に拡散する薄くて柔軟な4センチの円筒形ロッドが上腕の皮下に埋め込まれます。このインプラントは3年間有効ですが、不規則な出血を引き起こす可能性もあります。

 2つ目は、期間の1日目と5日目の間に筋肉内注射によってエストロゲン・プロゲストゲンが体内に取り込まれ、2回目の注射は最初の注射から8〜12週間後に行われます。

○ホルモンまたは銅IUD:3〜5年間の子宮内避妊器具

 IUD、またはホルモンIUSは、医師によって子宮内に配置されます。銅の場合もあれば、子宮内にプロゲステロンを拡散させる場合もあります。どちらの場合も、IUDは子宮内膜の形成を遅くし、精子の通過を防ぎます。3〜5年ごとに交換する必要があります。

 なんだか、色々な方法があるようですが、これらの方法が避妊に対しては有効ではあるとはいえ、費用以外にもなかなかな精神的、肉体的な負担があるような感も拭えません。

 そのために、これらのいずれかの処方相談も無料になっているわけですが、なかなかどうして、今、コロナウィルスワクチンの副反応などが騒がれている中、これらの処方も必ずしも別のリスクがないとも言えないような気もするのです。

 フランスは、アムールの国などと言われますが、国がここまで援助しなければならない現状もまた、アムールの国の一面なのです。


フランス 25歳以下の避妊ピル無料化


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2021年9月9日木曜日

フランス人の子供の流行りの名前と名前の刷り込み

   


 子供の名前というものは、どこの国でも流行りがあるようで、日本でもキラキラネームなどと言われて、この子たち、おじいさん、おばあさんになっても、この名前??と思うような名前が流行った時期もありましたね。

 名前の流行は、フランスでもあるようで、毎年、毎年、男の子・女の子別の人気の名前のランキングなるものが発表されたりしています。

 ちなみに今年のフランス人の子供の名前のランキング(2021年)は、男の子で、1)Léo(レオ)、2)Gabriel(ガブリエル)、3)Raphaél(ラファエル)、4)Arthur(アーチュー)、5)Louis(ルイ)、6)Jules(ジュール)、7)Adam(アダム)などで、女の子は、1)Jade(ジャドゥ)、2)Louise(ルイーズ)、3)Emma(エマ)、4)Alice(アリス)、5)Ambre(アンブル)、6)Lina(リナ)、7)Rose(ローズ)などが挙げられています。

 なるほど、世代を超えて、使われている名前も混ざりながらも、フランスでの子供の名前というものも、時代に連れて、やはり、古臭いと感じられる名前もあるようで、上記に挙げられた名前は、時々、娘から漏れ聞こえてくる、友人にもちらほら見られる名前でもあり、明らかに娘の周りを取り巻く友人たちの多くは、圧倒的に現代的?な名前のようです。

 逆に私はフランスで生まれ育ったわけでもないので、知っているフランス人の数は娘に比べるとかなり少ないわけですが、(必ずしもフランス人ではない場合も多い)、娘に言わせれば、もちろん、私の付き合いのあるフランス人は、それなりに私と同年代、あるいは、私より年上の人が多く、そんな人たちの名前を聞いて、例えば、「Annette(アネット)??Jean-Pierre(ジャン・ピエール)??」そんな名前、スゴい年寄り臭い名前〜〜〜〜などと言うのです。

 私には、その辺のフランス人の名前が古臭いとか、そういった感覚がなく、それが苗字に至っては、さらに酷くて、そういえば、あの人の苗字・・そういえば、知らないや・・などということも多く、苗字で誰かを呼ぶのは、むしろ、仕事上などで、それほど個人的にはあまり親しくない人の場合のみで、大抵がファーストネームで呼び合っているので、そもそも苗字をあまり知らないのです。

 時々、ニュース番組に出てきたりするフランス人の苗字を見て、娘が「あ・・これは、お金持ちの上流階級の名前・・」などと言うのを、「ほ〜〜なるほど・・」などと、感心してみたりしていたのでした。

 要するに私には、フランス人の名前に対する感覚が薄く、刷り込みがあまりされていないわけです。

 しかし、逆に、先日、私が最近、仕事上で連絡を取り合っていた人の名前が「○○まさのり」と書いてあり、「へぇ〜あの人、まさのりさんって言うんだ・・」と呟いたら、娘がすかさず、「何それ?猫みたいな名前だね・・」と言うので、爆笑してしまいました。

 「まさのり」という名前は、別に日本ではそれほど珍しい名前でも目立つ名前でもないと思いますが、以前、私が学生の頃に好きだった日本の歌手の名前で、当時、私が日本で飼っていた猫に「まさのり」と言う名前をつけて呼んでいたのです。

 娘は、その「まさのり」という猫には会ったこともないのですが、私や父から昔、家で飼っていた「まさのり」と言う名前の猫の話を漏れ聞いて記憶しており、逆に日本人の名前にあまり接することのない娘には、「まさのり」という名前は「猫の名前」として刷り込まれていたのです。

 およそ猫らしくない名前でありながら、「まさのり」と言う名前が猫の名前として娘に刷り込まれていたことに、驚愕! 幼い頃から娘には、必死で日本語を教え続け、会話はもちろんのこと、日本語の読み書きまできちんとできる立派な?バイリンガル?に育ったと思っていた娘にとって、日本人の名前は、意外な落とし穴でした・・。


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2021年9月8日水曜日

フランスでのヘルスパスの浸透状況

   


 フランスのヘルスパスについて取材してほしいというご依頼を頂いて、パリの街で、ヘルスパスがどんな風に使用されているのかを改めて、見て歩いてきました。

 7月12日のマクロン大統領のヘルスパス起用の発表は、夏のバカンスを前に、ワクチン接種は義務化しないとしながらも、事実上、ワクチン接種に追い込む内容は、かなり衝撃的でもありましたが、一部の反感も買ってはいますが、結果的にこれをきっかけに多くの国民がワクチン接種を急ぎ始める大きな転換の機会となりました。

 あえて、それをワクチンパスポートとはせずに、ヘルスパス(Pass Sanitaire)とすることで、ワクチン接種だけを強要する形ではなく、その許容範囲に72時間以内のPCR検査の陰性証明書や、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書でも、ヘルスパスとして通用するという猶予を設けたのも、いきなり「ワクチン接種を義務化」というよりは、若干ではありますが、ソフトにする役割を果たしたかもしれません。

 実際にヘルスパスが起用され始めたのは、7月21日からで、それから、徐々にヘルスパスが必要となる場所を拡大していきましたが、バカンス期間中ということもあり、「バカンス先でもワクチン接種を!」などと呼びかけながら、ワクチン接種率は上昇してきました。

 それでもヘルスパス反対のデモは、8週連続で続いていますが、これがもし、72時間以内のPCR検査などで代用できるという緩さが含まれていなければ、フランス国民の反発は、もっともっと大変なものになっていたのではないか?と思っています。

 なんといっても、フランス人は大人しく、ハイ!と従う人ばかりではありませんから・・。

 私自身、ヘルスパスのシステムが発表された時点で、すでにワクチン接種が2回終了していたので、PCR検査を受けたこともなく、今でも人の集まる場所には、ところどころ見られるPCR検査場(簡単なテントが張られて囲いがしてある場所)や薬局で、どの程度、検査をしている人がいるのかは、あまり気にも止めていませんでした。

 しかし、昨日、「ワクチン接種をできない(していない)人がどんな風にPCR検査を受けているのでしょうか?」とのお問い合わせを頂いて、あらためて、検査場の様子を見て歩くと、意外にも?検査をしている人がおらず、既に、フランスでは、ヘルスパスをワクチン接種をする代わりにPCR検査で凌いでいる人が少なく、ある一定の通過点を過ぎたという印象を受けました。

 一時は、パリで行列ができる場所といえば、検査場という感じの時もあったので、そんな時はもう過ぎたのだということを実感しました。

 現在、街中にあるPCR検査場に行列はなく、行列どころか誰もいなく中で待機している人が暇そうに携帯をいじっていたり、下手をすると、既に待機しているはずの人も居なかったりして、検査キットが取り残されたまま、もぬけの殻のところもありました。

 たまに検査に来ている人に「ワクチン接種をしていないのですか?」と聞いてみたら、「まだ、ワクチン接種が1回しか済んでいないので・・」という答えが帰ってきて、なるほど・・と思わされたり、1回の接種が終わって2回目の接種を行うまでのしばらくは、期間をあけなければならないわけで、この検査をしにきている人もじきに検査はいらなくなるわけで、これからますます検査場は、人が少なくなっていくものと思われます。

 しかし、検査場に入って聞いてみると、ワクチン接種をしている人でも検査は同様にできるということでしたが、渡航の際などは必要な場合があるものの、日常生活を送る分には、ワクチン接種をしていれば、まずPCR検査は必要ないわけで、感染して症状が出ている場合を除いては、そうそう検査を受けに来る人はいないのです。

 それでも、現在のところ、フランスでは、国民健康保険加入者は、全て無料で検査を受けることができ、検査場にあるQRコードを読み込んで、健康保険ナンバーを入力して登録すれば、検査結果が携帯に15分程度で送られてくるようになっています。(10月半ばからは医師の処方箋がない限り有料化することが決定しています)

 逆に考えれば、たとえ、感染していても、ワクチン接種さえしていれば、どこへでも行くことができ、普通の日常生活が送れるわけで、その点に関しては、少々疑問も残るところではありますが、一般的にワクチン接種をしていれば、感染率も重症化率も低くなり、何よりも、ヘルスパス起用の一番の目的がワクチン接種の拡大であることを考えれば、そこまで窮屈にするのは不可能、むしろ反感を買って、逆効果になるかもしれません。

 現在のフランスのワクチン接種率は、79.2 %(少なくとも1回は接種済み)で、これが、世間的にどの程度なものかが、検査場の様子を見ることで、具体的に実感することができました。

 それでも、まだヘルスパス反対のデモを続けている人は、一定数いるわけで、どうしてヘルスパスに反対するのか?は、もちろん、ワクチン自体に懐疑的な人(副反応が怖い、ワクチンの必要性を理解できないなど・・)もいますが、必ずしもワクチン接種に反対というよりも、政府の強行的なやり方が気に入らない・・嫌なこと(ワクチン接種)はできるだけ先延ばしにしたいと考えている人も多く、強制されること、縛られることが嫌いなフランス人の国民性によるものであるとも言えます。

 いずれにせよ、フランスでのヘルスパスは、概ねスムーズに運んでおり、レストランやコマーシャルセンターなどでのヘルスパスチェックも携帯でQRコードを読み込むだけでスイスイ進み、大した時間も手間もかからずに、大多数の人がこれによって、ほぼ日常と同じ生活を取り戻していることに満足しています。

 いつまでも、自粛自粛だけを繰り返すことは賢明な解決策ではなく、日本もある程度、ワクチン接種率が上がってきたタイミングでワクチン接種をした人が日常生活を取り戻すことができるというメリットがあれば、さらにワクチン接種率は加速度的に上がっていくのではないかと思っています。


フランスのヘルスパス


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2021年9月7日火曜日

アパート内の自転車置き場での自転車泥棒

   

自転車を盗むために他の自転車が乱雑に積み上げられた形跡


 先日、出かけようと、家の玄関を出て、エレベーターに乗ったら、エレベーターの中に目立つ貼り紙がしてあって、何事か?とギョッとしたのです。

 同じアパートに住んでいる住民たちは、何か苦情があったりすると誰もが使用するエレベーター内は絶好の告知板になるわけで、例えば、「夜中に大騒ぎして迷惑だ!」とか、「うちのベランダはゴミ箱じゃない!窓からゴミを捨てるな!」「これが続くようなら、警察に通報する!」とか、なかなか穏やかではない文言が貼り紙してあるのです。

 そういうわけで、この手のエレベーター内の貼り紙は、かなりの確率で悪いお知らせなわけで、できる限りご近所とのトラブルは避けたいと静かに暮らしている私にとっても、「もしかしたら、私が気づかないところで、(私の場合は特にピアノの音を心配している)何かご迷惑をかけているかもしれない・・」とギョッとしてしまうのです。

 ところが、今回の貼り紙はまた別の意味でギョッとさせられるもので、「警告 1階の自転車室(自転車置き場)から、南京錠付きのデカトロン(スポーツ用品メーカー)のマウンテンバイクが2台盗まれました」という衝撃的な内容でした。

  


 我が家のアパートには、住民共用の自転車置き場のスペースがあり、その部屋には、鍵がかかっていて、その部屋を(自転車置き場)利用する人しか、その鍵は持っておらず、その部屋に入る前にも扉があり、その扉も鍵なしには通過できないようになっているのです。つまり、その自転車室には、鍵付きの2重の扉が存在するのです。

 そんなスペースに我が家は3台の自転車を置いていますが、当然、その中のスペースに置く際にも1台1台、厳重なU字型の鉄パイプでできたような鍵をかけているのです。

 今まで、20年近く住んでいて、その自転車室での盗難の話など聞いたことがなく、同じアパートに住む人しか、入れないスペースなので、ある程度は、安全だとばかり思っていたのです。

 しかし、鍵がかけられたその部屋で、しかも施錠されていた自転車が2台も盗まれるとは、当然、住民の中に犯人がいるとしか考えられません。

 パンデミック以来、ウィルス感染対策も後押しして、パリでも自転車人口が激増し、自転車が飛ぶように売れるようになった話は聞いていましたが、その分、転売するつもりなのか?盗難も増えているのです。

 パンデミックが始まった当初は、バスなどを利用するのも怖くて、しばらく自転車を利用していた私ですが、やはり、なんと言っても、出かける先々で、厳重な鍵をいちいちかけなければならず、それでも盗難の心配をしながら乗らなければならない自転車は結局、気が重くて、ここ最近は、ワクチンもしたし・・ということで、もっぱらマスクをして、バスやメトロを使うことが多くて、しばらく、その自転車室に入ることさえありませんでした。

 貼り紙を見て、慌てて自転車室の鍵を取りに家に戻り、自分の自転車が盗まれていないかどうか確かめに行くと、我が家の3台の自転車は、どうやら無事でした。

 しかし、中の様子は明らかにいつもと違って雑然としていて、子供の自転車などが積み上げられて置かれており、何者かが自転車を盗むために他の自転車を除けた様子が伺えました。

 何よりも同じアパートの住民の中でそのようなことをする人がいるということが何よりも恐怖で、バカンスで多くの人が家を開けていた間に行われたことではないかと思いますが、自転車を盗まれた人もバカンスから戻ってびっくりしたのではないかと思います。

 夏の間、やたらと家の電話に無言電話がかかってきて、留守宅チェックをされているのではないかと気味悪い思いをしていましたが、実際にこんな盗難事件が同じアパート内で、しかも住民しか鍵を持たないと入れない場所で起こるとは、つくづくうんざりさせられ、このまま自転車室に自転車を置いたままにして良いものかどうか、思いあぐねているのです。

 パリの治安の悪さは承知していましたが、まさか自分の住むアパート内まで・・とはかなりショッキングなことでした。

 翌日には、すぐに貼り紙は剥がされていましたが、アパートの住民に犯人がいるとすれば、そんな貼り紙は即刻、本人が剥がしてしまうに決まっています。怖いです。


自転車盗難


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2021年9月6日月曜日

パラリンピック閉会式に見る日本とフランスの温度差

  


 パラリンピックの閉会式が終わり、東京でのオリンピック・パラリンピックの日程が全て終了しました。

 今回のオリンピックは、次回のオリンピックの開催地がパリということもあり、フランスでは、いつも以上の盛り上がりを見せ、オリンピックの開会式にはじまって、閉会式、パラリンピックの開会式、閉会式まで、エッフェル塔近くの巨大スクリーンが設けられた会場に多くの人が集まりました。

 フランスでは、オリンピック開催の一週間前ほどからヘルスパス(2回のワクチン接種証明書・72時間以内のPCR検査陰性証明書・6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)の起用により、レストラン、カフェ、デパート、コマーシャルセンター、文化施設、娯楽施設、イベント会場などなど、多くの場所で入場制限が行われるようになり、このパラリンピックの閉会式の大勢の集まったイベントもヘルスパスによる入場制限が行われていました。

 日本では、この人混みを見て、ギョッとしている方も多いと思いますが、徒に無防備に人が集まっていたわけではありません。

 フランスでは、8週間連続でこのヘルスパス反対のデモが起こっていますが、実際には、このヘルスパスのおかげで、ヘルスパスさえ持っていれば、ほぼ日常の生活を送れるようになっており、現段階では、感染者も減少し始め、集中治療室の占拠率も38%(パリを含むイル・ド・フランス地域圏)まで下がり、ヘルスパスの効果が現れ始めています。

 フランスは5月の段階で、5000人を集めてのヘルスパス所持者の参加による実験コンサートなども行っており、ヘルスパスで入場制限をした場合での人が集まる危険性を検証したりもしています。

 日本では、国民が、どのような感じでこのパラリンピックの閉会式を見守っていたのかは、わかりませんが、日本の報道を見る限り、「パラリンピック閉会式に国立競技場付近が密に・・」などと書かれていたりするのを見ると、せっかくのこのイベントを思う存分に楽しめなかった状況をもどかしく思います。

 エッフェル塔の前で歓喜しているフランス人と、国立競技場の近辺に集まろうとする人を解散させようとしている日本の警備体制にすごい温度差を感じるのです。

 日本は依然として、ワクチンをした人も、していない人も同様に緊急事態宣言のもとに、自粛生活を強いられていることに疑問に感じています。日本はワクチン接種を始めるのが遅れたわりには、さすがに進み方が早く、かなりワクチン接種率も上がってきているようです。

 ワクチン接種は完璧に感染を防げるものではありませんが、かなりのリスクは軽減されることは、世界中の事例からも明らかになっているので、そろそろワクチン接種者に対しては、行動制限を軽減する方法を取るべきなのではないかと思います。

 ワクチン接種をするメリットが日常生活に反映しないのは、残念なことだと思うし、真面目な人ほど自粛して、危ない人ほど、危険な行為に走る矛盾は解消されません。

 前代未聞のパンデミック下での無観客オリンピック・パラリンピックを開催し、莫大な負債を負ったであろう日本は、他の国以上に経済を復興させることを考えなければなりません。

 とはいえ、フランスはこれまでのコロナウィルスによる犠牲者は114,905人(9月5日現在)という日本の7倍以上(フランスの人口は日本の半分なので、実際には、14倍)の甚大な被害を出しているので、大きなことは言えません。

 しかし、現在のフランスは、これまでの悲惨な状況を礎にヘルスパスという方法をかなり強行な形で押し進めたのだと思っています。

 日本もワクチン接種者には、ある程度の日常生活に戻れるようにすれば、もともと衛生観念に優れた日本人のこと、経済を復興させつつ、感染拡大を避けられると思うのです。

 ついでに言わせてもらえば、日本への入国の際も、ワクチン接種の有無に関わらず、3日間の強制隔離を含む2週間の隔離生活というのも、もう少し緩和してくれないだろうか?と思います。

 海外在住者の多くは、ワクチン接種を済ませているにも関わらず、この隔離生活のおかげで日本に帰国できない人が多いはずです。ワクチン接種済みで、しかも空港での検査結果が陰性なのに、2週間も隔離生活を送らなければならないというのは、どう考えても厳しすぎます。

 フランスにいれば、ヘルスパスで自由に生活をできるものの、何を好き好んで、バイ菌扱いされるような2週間の隔離生活という費用も時間もかかる日本に行くものか?と思ってしまうのです。

 でも、本当は、ずっと行けていない日本には、行きたいのです。

 海外在住者は、日本に行ったら、お金、使います。


ワクチン接種のメリット 日常生活への反映


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2021年9月5日日曜日

8週目のヘルスパス反対デモ シャトレのコマーシャルセンターに乱入

   

デモ隊が乱入したシャトレの巨大コマーシャルセンター


 もはや土曜日のヘルスパスのデモが近々に終わるとは誰も思っていませんが、このデモは7月17日から夏のバカンス中もずっと続き、とうとう8週連続のデモとなりました。

 フランスは何かといえば、すぐにデモが起こるので、余程の暴徒化でもしない限り、かなりの人数でさえ、それほど大ニュースにはなりません。

 このパンデミックのさなかでさえも、昨年3月の1回目の完全なロックダウン(生活必需品の買い物以外は外出禁止)の時以外は、デモ(その時々で目的は違っていたけど・・)は常に認められ続けてきました。

 ただし、デモを行うには、予め、その日時や場所(出発地やデモ行進するコース、到達地点)などを申請する必要があり、概ねその通りに行われます。

 デモ隊は、時に暴徒化して破壊行為や暴力行為に発展したりする危険もあるため、在仏日本大使館なども事前に土曜日のデモの予定を知らせてくれます。

 当然、私は、大勢の人が集まる場所は避けたいし、巻き込まれるのもゴメンなので、できるだけ、その近辺には近寄らないようにしています。

 とはいえ、狭いパリのこと、また、デモ隊は行進して場所を移動するため、例えば、今回のデモの予定は、パリ1区、2区、4区、5区、6区、11区、12区、15区、19区、20区とかなりの区域を網羅(パリは1区〜20区まであります)、もうほとんどの区がデモのコースにあたっており、あまり神経質に考えたら、外出不可能です。

 しかも、デモは必ずしも届出どおりのコースを進むわけでもなく、今回は、デモ隊の一つから一部から派生して、予定していたコースとは別の道を進み、パリ1区にあるシャトレのコマーシャルセンター(フォーラム・デ・アール)になだれ込み、コマーシャルセンターでのヘルスパス提示義務反対を叫び始め、一時、大変な緊張状態に陥りました。

 フォーラム・デ・アールは、パリの中心地(パリ1区)にある大型ショッピングセンターで、数多くのブティックを始めとして、書店、電化製品、映画館、レストランなど115軒の店舗が入っている、かつてはパリの胃袋と呼ばれていたランジス市場の跡地に建てられた巨大モールです。

 本当に行ってみるとびっくりするほど、そこへ行けば、どんなお店もあり、「あ〜このお店もある!あ!これもある!」と思います。しかも、RER(国鉄)やメトロの駅からも直結しているために、非常にアクセスも便利にできています。

 しかし、今回のデモ隊がこのコマーシャルセンターに流れ込んで、「リベルテ!リベルテ!(自由!自由!)」と騒ぎ出し、パリ警察はオーバーフローを恐れ、店舗の閉鎖を要請、CRS(Compagnies Républicaines de Sécurité・特別警備隊)やBRAV-M(Brigade de répression de l'action violente motorisée・暴力行為を抑制するための厳重な警備隊)や大型の警察車両10台が出動する大騒ぎになりました。

 


 入り口だけでも一体、いくつあるかわからないほど大きい上に、メトロやRERの駅にも直結しているこのコマーシャルセンターをデモ隊の一部が突如、コースを変更して突入したために、突如、警察、しかも、通常の警察だけではなく、イカつい様相の特別警備隊が現れて、閉鎖されるということは、想像もつかない大混乱です。

 これまでデモ隊が行進する通り沿いの店舗がシャッターを下ろさなければならないような場合もありましたが、このような巨大ショッピングモールに閉鎖の要請とは、なかなかな事態です。

 我が家はシャトレからはかなり離れているものの、家からでも聞こえる警察車両のサイレンに、今日は、どこで何が起こっているんだろうか?と思っていました。

 「自由!自由!」と叫んで、「自由」を訴える人は、結果的に「自由」を奪われる結果を招いていることに、やるせなさを感じるのです。


フランス ヘルスパス反対デモ コマーシャルセンター乱入


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2021年9月4日土曜日

「さよなら 日本の菅首相が試合を放棄」フランスでの菅首相退任の報道

   


 

 「さよなら 日本の菅首相が試合を放棄」「日本の菅首相が彼の次の出発を発表する理由」「日本の菅首相自民党総裁を辞任」これらが、フランスでの菅首相退任に関する報道のタイトルでした。

 そもそも、日本のニュースは、余程のことでない限り、フランスでは、大々的に報道されることはありませんが、さすがに首相退任のニュースは、大手新聞社では数社に及び、報道されていました。(テレビでの報道はほぼ無し)

 新聞の報道では、彼は、「コロナウィルスとの戦いと選挙運動を両立することは不可能であるため、コロナウィルス対策に専念し、総裁選には出馬しない」と発表したと伝えています。

 短い記者会見の内容に、各社、それに肉付けする形で、首相退任について説明していますが、その多くが、「パンデミック対応に失敗(ワクチン接種の遅れ、感染悪化、医療対応の不拡充などのコロナウィルス対応の失敗)と、大多数の国民の反対にも関わらず、オリンピック・パラリンピックを強行したことにより、記録的な不人気を更新し続けていた」などと伝えています。

 「日本は6月以来、コロナウィルス感染の記録的な増加に苦しんでおり、現在、約2万件の新たな症例が発生している。日本政府は集団予防接種キャンペーンの開始に遅れをとり、今年の初めから非常事態宣言を繰り返し発令していましたが、これは、本質的に拘束力のない推奨事項に基づくもので、感染を封じ込める効果が低下する一方、締め付けられ続けている国民を深刻に疲れさせ始めている。」

 「不人気記録の更新にも関わらず、当然のように総裁選に出馬すると思われていた菅首相の衝撃的な辞任の発表は、9月5日のパラリンピック閉会の2日前に行われ、47都道府県のうち、21地域で非常事態宣言下にある日本全体のコロナウィルス感染の指数関数的増加の危機的状況から国民の気を逸らす働きを果たした」となかなかの辛口の評もあります。

 「これは自民党の舞台裏でひねりを加えた哀れなパワーゲーム(同盟、裏切りなど)でもある。」

 「現在の日本には、医療崩壊の片鱗が見られる事例が続出しており、多くの感染者が、なかなか入院できずに自宅で死亡するケースが急増しており、これはワクチン接種の遅れを背景にワクチン供給の遅れ、スクリーニングの遅れが原因で、これらに対しての対策が充分に取れなかったことは、彼の失敗であった。」

 「8年間、前任の安倍首相の右腕であった菅首相は、安倍首相の遺言執行者だった。」

 ・・とまあ、こんな感じの報道が多く見られます。

 首相退陣のニュースは、その原因の追求から、日本の感染対策の失敗や、そのことにより、日本国民が現在、感染してもなかなか入院もできずに自宅療養を強いられている状況を知らしめるキャンペーンのようになってしまっている感が否めません。

 しかし、どこか吹っ切れたような菅首相の表情は印象的ですが、首相という権限を失った後に、コロナウィルス対策に専念する・・というのも、どこか、理屈に合わない気もします。

 在任中にコロナウィルス対策に専念して、成功していれば、総裁選を戦うことをせずとも自ずと結果は出てきていたであろうに・・と思うに、彼の退任の本当の理由は、他にあるような気もします。


菅首相退任


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