2020年10月26日月曜日

新規感染者数5万人突破・2日で1万人増加 サマータイムも終わり 本格的な冬支度


Les chrysanthèmes "pompon" reviennent en force cette année. En forme de boule, ils donnent beaucoup de couleurs pour peu de feuillage apparent.


 秋休みとも言えるトゥーサン(万聖節・諸聖人の祝日)のバカンスが終わり、サマータイムも終わり、一段と冬の様相が深まっていく季節です。トゥーサンのバカンスというのは、カトリックの行事によるバカンスでフランスでは、皆が故郷に帰省して、お墓まいりに行く習慣があります。

 この季節のフランスのお墓は、なかなか華やかで、お墓一面に備えられたお花の様子から、この時期は、皆が意外と真面目にお墓参りに来ていることがわかります。日本で言うお盆のお墓まいりのような感じでしょうか? 家族が集まってお墓まいりをしたり一緒に食事をしたりします。

 家から歩いて行けるところにありながら、あまりお墓まいりをしない我が家でさえも、さすがにこの時期にお花がないのはかわいそうな気もして、一年のこの時期には、必ずお墓まいりをしています。

 このトゥーサンのバカンスが終わると、街は、さっそく、ノエル(クリスマス)の飾り付けに入ります。あらゆることがグズグズと遅いフランスで、唯一、早くから準備にかかるのがノエルです。

 サマータイムが終わって一時間、時間がずれたことに身体が慣れ始めると、あとは、グングン日も短くなり、朝は、遅くまで暗く、夜も早くに暗くなり、憂鬱な長い冬に入ります。

 そんな時期にフランスのコロナウィルス感染状況は最悪の一途を辿り、これで4日連続、一日の新規感染者数は新記録を更新し続け、5万人を突破、昨日は、52,010人を記録しています。4万人を突破してから3日目のことです。

 たった2日後に1万人増加するとは、感染の速度が尋常ではありません。1日5万人を超える感染が、実際に、さらに、病院での治療、病室の占拠状態に大きく関わってくるのは、その1〜2週間後のことです。そして、一度、入院すれば、滞在が長くなるのもコロナウィルス治療の特徴で、病院でのコロナ患者数はこうして堆積してくるのです。

 現在のイル・ド・フランスの集中治療室のコロナ患者の占拠率は67%、アルプ・オーベルローヌ地域では74%にまで上昇しています。満床になるのは、時間の問題です。

 1日に5万人の感染者が出ている状態では、もう、「犬も歩けば棒に当たる・・」ような状況で感染者に遭遇する感じがします。だいたい、検査で陽性になった人でも、フランスでは、隔離されることもなく、マスクさえすれば、外出していいような風潮で、これでは、いつどこで感染者に遭遇しているか? かなりのその確率も高くなっていることでしょう。

 娘がスタージュに通っている会社でも、感染者が出たということで、ミーティングが開かれたということでしたが、感染自体は会社で起こったものではないと判断されたようで、さらに、注意して、生活するようにという注意喚起や社内のキャンティーン(食堂)や休憩室などの衛生環境の改善(プラスチックのバリアが貼られたり、席の間隔がさらにあけられたり・・)に留まり、会社が閉鎖になったりすることはないようです。

 これだけ、感染が蔓延してしまっては、逆に感染者が出たくらいでは、誰もひるむこともなく、皆が感染に対して、衝撃を受けなくなっているのです。

 サマータイムの夏の時期と冬時刻の季節の差がやたらと大きいヨーロッパでは、夏は夜も10時くらいまでは明るく、開放的ですが、冬は、夜が長くなります。3月〜4月のロックダウンの際には、どんどん日も長くなり、明るくなる季節にどれだけ救われていたかわかりません。

 これから暖かくなっていく季節にと、私は、ベランダで日本から持ってきた野菜のタネを撒き、せっせと野菜を育て、明るい日差しのもとにどんどん育っていく野菜の成長を楽しんだりしていました。

 それが、今回は、どんどん日も短くなり、暗くなりがちな季節に向かっていく時期であることに何か一層、憂鬱な気分です。今では、寒くてベランダに出るのも躊躇われます。

 前回のロックダウンでは、家に閉じ込め状態の中、DVも大きな問題になりましたが、この冬の鬱屈した時期でのロックダウンともなれば、DV被害は、春のロックダウン以上に問題になりそうな気がしてなりません。


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「コロナウィルス監禁生活でのストレスの矛先 DV・暴動」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_21.html


2020年10月25日日曜日

新規感染者数4万5千人突破のフランス 取締りの警察もさらに強硬化

 

                                                      パリ市内を取り締まっているBRAVM


 昨日のフランスの一日の新規感染者数は、45,4222人。フランスは3日連続で、新記録を更新し続けています。当然のごとく、あらゆる数字が悪化しています。

 それでも、ロックダウンではなく、日中は街には人が往き交い、レストランなども全て営業していることもあり、週末ともなれば、気が緩みがちな街中を、一般の警察だけではなく、通常では、あまり目にすることのないBRAVM(Brigades de répression de l'action violente motorisées・暴力行動抑止団)がパリ市内を取り締まっています。

 このBRAVMは、通常は、テロやデモなどの暴動や暴力行為などの緊急事態に編成されるバイクで移動する憲兵隊のような性質をもつ連隊で彼らが身を包んでいる防護を兼ねたヘルメットを含めた制服も黒づくめで威圧感があり、退去の求め方なども警察よりもさらに容赦のない雰囲気が漂っています。

        

               歩いているだけで物騒な感じ漂うBRAVM


 土曜日の午後、パリのあるレストランのテラスでは、賑やかにグラスを傾ける人々のもとに現れた彼らは、歓談するお客さんたちに向かって、「ソーシャルディスタンスが取れていませんから、今すぐに退去してください!」と退去命令。

 突然の彼らの登場に動揺しつつも、彼らの威圧的で有無を言わさない強硬な態度に、慌てて立ち去るお客さんたちは、支払いをする間さえも与えられません。

 お客さんにとっても、あまりに突然の彼らの登場に動揺してのことなのか? ビールを片手に、「マスクは、ここに持ってきている・・」とか、ビール片手に席だけ移動して居座ろうとしたりしていましたが、お金を払わないで済んだこともあってか? 彼らの威圧感からか? 一応、文句を言い返しつつも、わりとあっさり退散。

 レストランの店主でさえも料金を回収できなかったにも関わらず、すごすごとテーブルを片付け、店内に消えて行きました。

 本来ならば、レストラン側が衛生管理の基準に満たない状況での営業を違反と見なされて罰金、あるいは営業停止となっても致し方ない状況でもありますが、直接、お客さんを退散させることで、直ちに人が集まっている状態を有無を言わさずに、とにかく即座に解散させるやり方は、フランスの取り締まりには必要なのかもしれません。

                   

             環状線で車を止めて外出証明書のチェックをする警察
      

 21時以降の外出禁止の取締りは、車での移動の取締りも強化。パリ市内を通る環状線は午後9時になると、警察が一台一台、車を止めてチェックを行なっています。もちろん、外出証明書がない場合は、一人につき、135ユーロの罰金です。

 もちろん、渋滞に巻き込まれたなどの言い訳も一切、通用しません。

 それでも出かける若者たちは、一応、門限に間に合うように、まるでシンデレラのように必死な様子で、21時近くになると、バスやメトロに乗るために、普段は決して急いで走ることのない彼らが走っている様子が見かけられるそうです。

 また、パリで若者に大人気の有名な大きなレストランなどは、夜8時半ごろになると、彼らが読んでいるUber(タクシー)の長蛇の列ができるそうです。

 21時門限では、はなから楽しめないと、家に集まり食事をしている人たちも少なくないようですが、それでも外に出たい!外で楽しみたい!と思う若者たちが、普段の生活ではありえない門限に間に合うように必死になっている姿には、滅多に見られるものではありません。(単に罰金を払いたくないのだと思いますが・・)

 そんな彼らに、ただただ、集まるな!戯れるな!と怒るには忍びない気もするのですが、そこは、今のフランスの状況を考えれば、今しばらくは、辛抱してもらいたい・・と、思うのです。


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「決死のお迎えで、ある日、気付いたこと・・フランス人は、走らない」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_58.html


2020年10月24日土曜日

フランスのコロナウィルス感染 第2波は第1波よりも深刻かもしれない

 


 フランスの1日の新規感染者数は、連続で新記録を更新中、一昨日には、初めて4万人を突破して41,622人を記録したと思ったら、昨日は、さらにそれを上回る 43,032人を記録しました。もう何と言ったらいいのやら・・。

 また、Santé publique France (フランス衛生局)は、初めて、地方自治体レベルの細かい地域にわたるコロナウィルス発生率を記した地図を発表しました。

 この地図で見える様子が、今回のフランスがまさに直面しているコロナウィルス感染第2波が実は、第1波よりも悲惨な状況に陥るかもしれないとささやかれ始めている所以です。

 というのも、この色分けされた地図から見えるように、ほとんど白い地域(発生率の低い地域)がなく、感染が全国的にくまなく広がっていることから、第1波の際には、満床状態に陥った地域から、病床に余裕のある地域への患者の搬送をヘリコプターやTGVを使って、少しでも犠牲者を散らし、減らしていく努力ができたのですが、今回の第2波の感染が全国的にまんべんなく広がり、どこの地域でも病院が逼迫し続けている状況では、それが不可能となってしまうのです。

 毎日、4万人以上の新規感染者がいるのですから、当然といえば、当然でもあるのですが、恐ろしいことに、病院の逼迫は、日々、深刻な状態に陥っており、イル・ド・フランスのコロナウィルス患者の集中治療室の占拠率は、62%を超えています。

 ARS(Agence Régionale de Santé)(地方保健機関)の発表によれば、昨日、すでに、オー・ド・フランス(フランス北部の地域圏)から、2人の患者がベルギーに搬送されました。

 つまり、オー・ド・フランスの病院では、すでに医療崩壊が起こっており、患者の治療が抱え切れない状態になっており、しかも、その患者の搬送先がベルギーだということも国内に余裕がないという状況を示しています。

 たしかに上の地図を見るところ、フランス北部は、ブルーの色も濃く(発生率が高い)、ほとんど濃紺の状態、北部から3分の1くらいまでは、真っ青状態、フランス国内のかろうじて青の薄い地域に患者を搬送するよりもベルギーの方が近かったということもあるのかもしれません。

 とはいえ、余裕さえあれば、ベルギーは外国、自国内で何とかなるのであれば、フランス国内に搬送するのが普通だと思われます。

 テレビの報道などでも、あちこちの病院の逼迫状態、医療従事者が悲鳴をあげている様子が報道されています。なかでも、患者をベルギーへ搬送したというオー・ド・フランスの病院の医師は、「現在、我々は、3月25日頃のレベルの集中治療を受ける患者を抱えています」と語っています。

 3月25日頃といえば、第1波の際に、ロックダウンされてまもなくの、犠牲者のグラフが急上昇した時期です。今、1日の新規感染者数4万人の状態があの3月25日のグラフの波のポイントにいると考えると、これは、ほんの入り口のようなもので、それは、恐ろしいことです。

 そして、現在、21時以降の外出禁止(夜間ロックダウン)等の措置が取られ始めたのが17日、まだ、一週間しか経っていません。この効果を期待している間に感染はどんどん拡大していき、夜間ロックダウンの地域も拡大されましたが、どうやら、感染の速度が上回っているようです。

 マクロン大統領は、この逼迫した状況について、「今後、さらなる夜間ロックダウンの地域を広げるか? それとも地域的な全日にわたる再ロックダウンを行うかどうかの検討は現時点では時期尚早、少なくとも来週半ばまで様子を見る」としています。

 このコロナウィルス対応において、これまでことごとく、打つ手が後手後手に回っている感が拭えないマクロン大統領、フランスは、夜間だけのロックダウンで乗り切ることができるのでしょうか?

 チェコとアイルランド、ウェールズは、22日から再ロックダウンに突入しています。


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「コロナウィルスの感染は、明らかに気温が影響している ドイツの食肉処理工場で1500人感染」https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/06/1500.html

「パリ、イル・ド・フランスをはじめとするフランス8都市での夜21時以降の外出禁止」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/21.html






2020年10月23日金曜日

新規感染者数4万人突破のフランス 夜間ロックダウン54地域に拡大

 

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 ヨーロッパのコロナウィルス感染第2波が叫ばれ始めていますが、やはり、フランスは、他のヨーロッパ諸国の追随を許さないことを示すかのごとく、また新記録を更新し、とうとう昨日の1日の新規感染者数は、41,622人。4万人を軽々と超えてしまいました。

 この一週間のフランスの新規感染者数は189,359人、約19万人もの感染者が出ているのです。もう数字の感覚が麻痺してきて、何の数字だかよくわからなくなります。

 ヨーロッパ全体の感染状況が悪化しているのは事実ですが、同日の、ヨーロッパ諸国の新規感染者数は、スペイン20,986人、イタリア16,079人、イギリス 21,242人、ドイツ 5,780人と、フランスの4万人とは比べものになりません。

 ほんとうに、フランスは、一体、どこまでいくの? か 不安です。

 現在のフランスでは、1日に200件以上のクラスターが発見され、過去7日間で10,166人がコロナウィルスのために入院し、そのうちの1,627人が ICUでの集中治療を受けています。

 現在、集中治療を受けている患者の総数は2,248人、集中治療室での平均滞在期間は8週間近いため、このまま患者数が増え続ければ、患者が積もり重なって、パンク状態になる日もそう遠くはありません。

 この一週間のフランスのコロナウィルスによる死者は1,085人、一日150人近くが亡くなっている計算です。

 ジャン・カステックス首相は、会見で、「コロナウィルス感染の流通は非常に高いレベルに達し、15日間で症例数は2倍、65歳以上の症例数は3倍になっている。事態は深刻です」と発表し、パリ・イル・ド・フランスなどで、すでに開始されている9時以降の外出禁止(夜間ロックダウン)を前回指定された地域に、さらに38地域を加えた、合計54の地域に拡大することを発表しました。フランスの地図が再び真っ赤に染まり始めました。

 すでに先週から夜間外出禁止の措置が始まっているイル・ド・フランスを含む8つの大都市圏では、毎晩12,000人の警察と憲兵隊が動員されチェックが行われていますが、すでに一週間で、4,777人が違反として切符を切られており、それぞれ135ユーロの罰金が課せられています。

 これだけの深刻な状況にも関わらず、深刻な状況を認識せずに、一週間でこれだけの違反が摘発されることがさすがフランスだなと思います。

 この一週間のフランスの新規感染者数は189,359人、約19万人の感染者が出ているのです。

 これだけの感染者がいるということは、もう夜間の外出を禁止したところで、日中でさえ、普通に感染のリスクが高まっているということ・・そりゃ、やらないよりはやったほうがいいに決まっていますが、この感染者上昇の波がそれだけで抑えられる状態なのかは疑問が残ります。

 イル・ド・フランスの病床のコロナウィルス患者の占拠率は60%を超えている状態です。

 しかも、此の期に及んで、地域間の移動に関しては、放置されたままです。

 感染者追跡については、開発したにも関わらず、わずか3.5%しかダウンロードされることなく失敗に終わったアプリ「STOP COVID」に変わって、新しいアプリ「TOUS ANTI COVID」が新しく開発されたことを発表し、ダウンロードを呼びかけています。

 しかし、フランスのこと、少なくとも検査で陽性となった人には、アプリのダウンロードを義務化するなどの措置を取らなければ、ただでさえ縛られることを嫌う彼らに、いくらアプリが新しくなったとて、ただ、普通にダウンロードを呼びかけるだけでは、それが浸透するのは難しいのではないかと思っています。

 義務化するか(罰金を課すか)、何らかの利点がなければ自らを締め付けるようなことをフランス人が積極的にするはずがありません。

 このところ、1日の感染者数が一週間ごとに1万人単位で増えているフランス。

 夜間外出禁止の効果がいつ表れて、これが減少してくれるのか? それとも、もはやそれを上回る勢いに乗ってしまったのか? 今後の新記録更新がさらに心配されます。


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「フランスの新規感染者3万人超えの中の医療介護者のデモ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_16.html

2020年10月22日木曜日

テロの犠牲者サミュエル・パティの国葬

 


 先週金曜日に起こったテロ事件により首を掻き切られて死亡した表現の自由を担当していた教師、サミュエル・パティの国葬が昨夜、パリソルボンヌ大学で行われました。

 イスラム過激派の犯行であったことから、テロに屈しないフランスの姿勢を明確に世間に知らしめるべく行われたセレモニーは、マクロン大統領をはじめとする政府首脳が勢揃い、故人の教え子や友人、家族なども参加しての、荘厳なものでした。


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 セレモニーの場所にソルボンヌ大学が選ばれたのも、教育の現場での授業がもとで起こった事件に対するフランスの国としての威厳と確固とした姿勢を示したと言えます。

 毎回、国単位のセレモニーを見るたびに、フランスは、本当にセレモニーの演出が上手でセンスがいいなと感心します。


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 棺が運ばれてくる際には、家族の希望で、彼の好きだったアイルランドのグループ「U2」の曲「National Tribute」が会場に流されました。1992年にリリースされたこの曲は、愛だけでなく、協調と団結についても歌われています。

 正装に身を包んだ兵士たちが棺を中央に運ぶと、棺には Légion d’honneur(彼の名誉を讃えるメダル)が置かれた赤いクッションが乗せられました。

 故人の友人、同僚、教え子が弔辞を述べた後に、マクロン大統領も弔辞を述べました。

 「サミュエル・パティは悲惨な陰謀と他者への憎悪の犠牲者になってしまいました。私たちは、あなたが教えた自由を擁護し続けていきます。彼は、フランスの顔・自由の顔として私たちの中に生き続けます。」と。


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 安全上の理由からか、故人の家族は、テレビで放映されることはありませんでしたが、あまりに大きな波紋を生んだ彼の死を家族はどう受け止めているのでしょうか? 一教師の葬儀が国葬となり、政府の首脳が首を揃える葬儀。

 家族も教え子たちも友人でさえも、身近な人が亡くなったというだけでも痛ましいことなのに、しかもテロにより殺された・・しかも、想像さえつき難い陰惨な殺され方で・・。

 私の祖父が亡くなった時には、会社をあげての、かなり大規模な葬儀で、立派な葬儀がすごいなと思った一方で、何か家族だけで祖父の死を傷めないことも少し残念に思ったことがありました。今回のサミュエル・パティの場合は、テロによる被害者ということもあり、テロリストに向けてのフランスの圧倒的な力と団結を示すという意味も大きかったと思います。

 きっと、家族にとっては何が何だかわけがわからないうちに事が進んでいく・・そんな感じかもしれません。

 事件から数日が経って、犯人の背後には、数人の協力者がいた事が発覚してきています。犯人であるとはいえ、若干18歳の青年が人をこれほど陰惨な形で人を殺すほどの恨みや怒りを持地ながら生きていたのかということがある意味、気の毒にも感じられます。

 実際に犯行に及んだ18歳の青年はその場で射殺されていますが、その背後にいた大人たちの卑劣さが空恐ろしく、彼らがどんな気持ちでこの国葬を見ていたのかと思います。

 今、フランスはコロナウィルス感染も大変な状況、世間の注目が一気にこのテロ事件に持って行かれています。

 今、フランスでは、「表現の自由を守ろう」そんなテレビコマーシャルまで流されています。


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「閑静な住宅街で起きた路上で首を掻き切られる陰惨なテロ事件発生 18歳のテロリスト」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/18.html

「フランス全土で行われた先週末に殺された教師の追悼デモ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_19.html




2020年10月21日水曜日

好きと嫌い 感覚的なものに頼る選択

 


 例えば、好きな人ができたとして、どこが好きかと言われると、なんとなく、ぼんやりとしたものであることが多い一方で、嫌いになる場合は、かなり事細かに詳しく述べることができるような気がします。

 たまたま、カーペンターズの曲が流れてきて、なんとなく英語の音がきれいだ・・と思いながら、母を思い出しながら、好きと嫌いということについて考えていました。

 母は、英語が好きで、大学でも英語の勉強をし、しばらくお勤めをしていましたが、その後、結婚して、専業主婦になりましたが、(まあ、母の時代は、専業主婦が当たり前の日本でしたから・・)私が生まれて、物心つく頃には、私に英語を教えてくれていました。

 私は、小さい時から、寝る前には、英語の物語のテープを子守唄がわりに聴きながら、寝ていました。絵本も付いているそのお話は、「ぐるんぱのようちえん」や、「たろうのおでかけ」など、いくつかありましたが、子供の頃ですから、吸収も良く、今となっては、すっかり忘れてしまいましたが、当時は、暗唱できるほど、物語を英語で記憶していました。

 単語一つ一つの意味や、文法などはわからなくても、歌を覚えるように、文章を覚えてしまうのですから、子供の時の記憶力というのは、すごいものです。

 母は、その後、私だけでなく、私と同じ年頃の近所の子供を集めて家で英語を教えるようになりました。それはそれは、熱心で、丁寧で、楽しそうで、母が亡くなる数年前まで、母は、家で英語を教えるとともに、子供に英語を教えるための教材を作ったりして、その教材のための講演なども時々やっていました。

 私が成人してからは、そんな母の教材のテープの録音に付いて行ったり、講演会の時は、手伝いに行ったりしていましたが、母のその楽しそうな感じは、ちょっと羨ましいほどでしたし、講演会などとなると、もう止まらない・・といった勢いで話し続けるので、私は、母に聞いたことがありました。

 「英語のどこがそんなに好きなの?」と・・。

 すると、母から帰ってきたのは、意外な答えでした。「英語の音が好き・・」と・・。

 そんな感覚的な理由が母の口から出てきたことは、その時は、とても意外でしたが、そもそも「好き」ということは、感覚的なことに根ざしているのかもしれません。そして、その感覚的なものというのは、なかなか根強く、あながちバカにできないものだということも、過去のいくつもの場面を振り返ると思いあたります。

 音楽などでも英語の歌詞は、きれいにメロディーにのって響くように私自身も感じますし、そして、何よりも私自身も英語の音が好きだな〜と、いつの間にか思うようになっていたのです。

 私が子供の頃は、我が家の車の中は、母が好きだったパットブーンの曲がよく流れていました。英語の音がきれいだ・・心地よい・・と、最近、時々、音楽を聴いていると思うのは、そんな風に知らず知らずのうちに、私の中で慣れ親しんでいた音だからなのかもしれません。

 音が好き、心地よい・・そんな感覚的なものは、友人、恋人、仕事、職場など・・何かを選択するうえでも、一見、漠然としているようでも、結構、大事なポイントだったりするかもしれません。

 娘の幼少期、(2歳くらいの頃)彼女は、出会った人を一瞬で見抜く力がありました。もう動物的といってもいいくらいな反応でした。

 初めて日本に行った時、初めて会うたくさんの親戚の中から、一目で信頼できる人を見つけてベッタリ・・また、逆にフランスで、家族で散歩に出かけた時に、たまたまローラースケートで遊びに来ていた少年たちと写真を撮ってもらおうと主人がその少年の一人に抱っこを頼んだら、火がついたように泣き出し、困ってしまったこともありました。その泣き方の強烈さは、ちょっと周りの人も驚くほどでした。

 海外生活をしていると、日本では、決して出会うことがなかったであろう色々な人に遭遇します。そんな時、「ん???なんか、変だな・・この人・・何かどこか妙な感じがする・・」と、思うことがたまにありますが、ちょっと話してみると、慣れてくることもあって、違和感が薄れるのですが、よくよく知っていくうちに、やっぱり、あの時の違和感は、こういうことだったんだ・・と思うことがあります。

 直感とか、なんとなく感じることは、あながち、間違いでもないのです。直感だけで動くというのは何ですが、こういう感覚的に感じるものは、長い目で見てみると、あながちバカにしたものでもないかもしれません。

 ちなみに私は、フランスに住んで20年以上になりますが、フランス語の音がきれいだとか、好きだとか思ったことは、今のところ、ありません。


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「母の英語教育

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/12/blog-post_7.html


 

2020年10月20日火曜日

コロナ禍中のフランスの歯医者 ② インプラントと入れ歯

 


 前回、コロナ禍中に感染が怖くて行くのをためらっていた歯医者さんに、どうしても行かざるを得なくなって、渋々、出かけたら、思いの外、衛生管理がなされていて、(体温チェックやプラスチックのガウンとハットの着用や荷物のお預かりなどなど・・)めんどくさいな〜と思いつつも、やっぱり、この方が安心かな?と、思いなおして、着ていたガウンとハットを返して、帰ろうとしたら、次の患者さんがやってきて、なんの躊躇いもなしに私がさっきまで着ていたガウンとハットを次の患者さんに着るように促したのには、絶句しました。

 感染回避のために着用するガウンって普通、使い捨てだろ!あまりに唖然として、その場で言葉が出てこなかったのですが、あれから家に戻ってからも、モヤモヤして・・やはり、違うよな・・と思いながら、着ていたものを洗濯したり、シャワーを浴びたり・・今度、行った時には、あのガウンについて、確認しなければ・・と強く心に決めていました。

 そして、2回目の診察の日がやってきました。「絶対にガウンが新品かどうか確認しなきゃ! 」もしかして、使い回しのものを出されたら、「それは、おかしいでしょ!・・とちゃんと言わなきゃ!」と思いながら行くと、あっさり、新品のプラスチックのガウンがダンボールの中に雑に置かれており、「あっ!今日は、大丈夫だ〜」と、肩すかしを食ったのでした。

 前回は、もう土台もダメになってしまった歯を抜かれたので、さて、今日は、どうするのか?と思っていると、前回、歯を抜いた箇所をちょっとイジって終わり・・しばらく、傷が塞がるまで待たなければいけないとのこと・・。

 いつまでも、治療が進まず、見通しが立たないのも、嫌なので、このまま放っておくわけには行かないし、この先、どういう選択肢があるのか、恐る恐る聞いてみました。

 歯医者といえば、なかなかな金額を請求されるので、予め、見積もりを出してもらって、それから、その見積もりをミューチュエル(健康保険でカバーされない分をカバーしてくれる保険)の会社に送って、どのくらい保証されるのかを聞いてみてから、どの程度の治療にしてもらうのかを決めるのです。

 結局のところ、インプラントにするか、つけ外しのきく器具にするか?どちらかだと言うのです。つけ外しのきく器具???よくよく考えてみれば、それって入れ歯のこと???入れ歯って入れ歯??・・ショックでした。

 インプラントが高いのだけは知っていたので、はなから、「インプラント???ムリムリムリムリ!!!お金ないもん!」と言うと、「それだと、入れ歯になるけど・・取り外しのきく入れ歯ならセキュリテソーシャルも一部はきくけど、インプラントは、セキュリテソーシャルは効かない・・」と、絶望的な回答。

 つけ外しができると言うと、なんだか、一見、便利そうな気もしてしまうのですが、考えてみれば、歯など、本来、つけ外しの必要がないもので、エラく面倒に違いありません。

 そして、私は、何より「入れ歯??」というものについて悩む日が来たことがショックでなりませんでした。

 金額は、インプラントで1本、2000ユーロ(約25万円)、入れ歯で1200ユーロ(約15万円)、どちらにしても、なかなかな出費ですが、正直、インプラントと入れ歯の値段は、もっともっと違うのかと思っていました。

 まだ、保険会社に見積もりを送っていないので、どのくらいカバーされるかはわかりませんが、保険会社の回答を待つまでもなく、毎日毎日、面倒な思いをすることを考えれば、1000ユーロの違いは、目を瞑るべきかと思い始めています。

 それにしても、入れ歯について悩む日が来たことに、何よりショックを受けている私なのであります。

 動物は、歯が弱り始めることで、衰弱していくと言いますが、まさに私もそんな年齢に達しているのかと思うと「ガウンを使い回すな!」と息巻いていた私も、入れ歯ショックで、しょぼんとして帰ってきたのです。

 そして、家に帰ってきてから、思い返してみると、そういえば、体温チェックがなかった!と、また後になってから、思い出すのでした。

 一つのことが気になると、その他には、注意が行かなくなる・・これも老化の一部です。


<関連>「コロナ禍中のフランスの歯医者 ①」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_9.html