2025年8月28日木曜日

秋には本当にフランスにバター不足の危機がやってくるのか?

  


 夏の間の猛暑は私たち人間だけでなく、動物たちにとっても苦しい季節でもあります。この夏の異常な猛暑は牛乳生産に深刻な影響を与えており、それにつれて、バター生産も危機に陥る可能性があります。

 また、この猛暑だけでなく、ブルータング病(昆虫によって媒介される反芻動物に感染するウィルス性の病気)の流行も重なり、乳牛たちも苦しい夏を過ごしました。

 この現象により、牛乳の搾乳量は、特に6月末から7月初旬にかけて、大幅に減少したために、バター不足に陥るのではないか?という懸念の声が拡がり、実際にブーランジェリーやパティスリーなどの間では買い溜めを始めている者も出始めているというのです。

 しかし、国立酪農経済専門職連携専門センター(CNIEL)によれば、実際には、一般消費者向けのバターに関して、スーパーマーケットの棚からバターが消えるようなことにはならないし、バター不足に陥る恐れはないと断言しています。

 近年、フランスではバターの消費量が増加しており、特にペストリーなどの商品が好調となっています。それは、一般消費者である私がブーランジェリーなどを覗いて歩いているときにも感じることで、以前に比べると、ブーランジェリーに並ぶペストリーの種類が驚くほど増えてきたと思います。

 まあ、これも需要と供給のバランスによるものなのでしょうが、これがまた、よく売れているようです。外食の値段があまりに高くなったので、それを台頭するかたちで、ブーランジェリーが手を変え、品を変え、外食を台頭するかたちで、発展を遂げているような気がします。

 また、専門家によれば、熱波やブルータング病の流行にもかかわらず、今年の牛乳搾乳量は、2024年と同程度になる見込みであり、また、近年のフランスでは、牛乳の搾乳量が増えなくても、バターの生産量は増やすことができる技術があるといいます。

 これを裏付けるように農業省のデータによると、今年の5月末のバター生産量は、2024年の最初の5ヶ月と比較して、1.7%増の16万2,029トンでしたが、一方、牛乳の搾乳量は、同時期に0.9%減少しています。

 実際には、バターはほぼ例年どおりに生産できているわけです。

 しかし、牛乳やバターなどは国内需要だけでなく、海外市場が大幅に伸びており、輸出は44%増と驚異的な伸びを記録しています。海外の方がより高価格で売れるために、これらの業者が輸出に力を入れ始めていることは、まぎれもない事実。

 2017年には、この国内需要と海外への輸出のバランスが崩れ、一部のメーカーがフランスの小売業者よりも海外への輸出を優先させてしまったために、国内ではバター不足が起こり、買い溜め現象が起こり、混乱が起こったことがありました。

 今回も原因が何にせよ、バター不足が起こるかもしれない!という推測がこれ以上広まれば、また、以前のような本当にスーパーマーケットの棚からバターが消えるようなことになりかねないかもしれません。

 個人的には、バターはあってもなくてもいい・・くらいのものですが、フランス人にとっては、日本でお味噌やお醤油がなくなるくらいの感じかもしれません。

 しかし、冷静に状況を見極め、慌てず、ムダは買い物をしないように、気をつけたいものです。


バター不足の危機


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