昨年末には、カルロスゴーンの日本逃亡劇で日産とともに注目を集めた、フランスの大手自動車メーカー・ルノーは、コロナウィルスのためのロックダウンによる業績不振のため、15000人の削減(フランス国内では、4600人削減)、3年間で20億ユーロをコスト削減をする計画を発表しています。
ルノーは、コロナウィルスによる経済危機以前から、弱体化しており、(ヨーロッパでは、多くの国でディーラーが閉鎖され、4月の自動車市場は76.3%下落)生産過剰に悩まされています。
このルノー経営陣の発表を受けて、組合連合の呼びかけにより、従業員数千人がルノー・モブージュ(フランス北部)工場に集まり、市庁舎までの6キロの道のりを経営陣の経営計画(人員削減計画)に反対するデモを行いました。
あらゆるセクションの集まるこの工場では、約2100人の従業員を抱えており、金曜日の朝から閉鎖され、この工場で扱っているカングー(ルノーの車の車名)の生産を、新しいプラットフォームを継承する約70 km離れたドゥーアイに移管する計画を進めています。つまり、この工場は、大幅に縮小されるわけです。
2100人のルノーの従業員は、このモブージュという地域の人口の約10%に当たるので、この地域にとっても彼らの仕事を守ることは、その地域を守ることにも繋がるのです。
いみじくも、2018年にマクロン大統領がこの工場の視察に訪れた際に、「この工場は、ヨーロッパで最高の工場である。何も臆することはない! フランスは、自動車産業を守る。」と約束したこともあり(実際に、政府は、多額の予算を自動車産業に割いている)、このデモでは、「嘘つき!マクロン!約束を守れ!」という叫び声も、多く上がっていました。
ロックダウン解除の第一ステージ(5月11日の段階)でも、工場再開の際に、工場内の安全性が保たれていないとの従業員との間で騒ぎが起こり、今回の第二ステージ(6月2日から)発表の直後にルノー経営陣からの人員削減の発表での数千人にも及ぶ大規模なデモ発生。同じフランスの自動車メーカーであるシトロエンやプジョーからは、そのような動きは聞こえてこないのに、ルノーばかりがこの騒ぎです。
ルノー経営陣、フランス政府に反抗、批判するデモの集結地である、モブージュ市庁舎前に集まった人たちが大声で歌うマルセイエーズ(フランス国歌)。
国歌が、デモに参加している人たちを奮い立たせ、団結させる歌として歌われることにもフランスらしさを感じるのです。デモで反抗の意を表明しつつも、その根底には、強い愛国心があることが感じられます。
もはや、「10名以上の集まりが禁止」などという禁止事項はどこ吹く風で、このデモを統率している組合連合は、社会的な話し合いの欠如を指摘し、「この決定は、自殺行為」「戦いは、まだ始まったばかり」と声明を発表しています。
ということは、この規模のデモがまだまだ続くのでしょうか? 今、経営の危機にある会社、政府、社会に訴えたいことがある人は、溢れるほど存在しています。このルノーのデモに触発されて、これ以上、デモが起こらないことを切に願うばかりです。
コロナウィルスの感染は、まだ、完全におさまってはいないのです。
<関連>「ロックダウン解除後・フランス各地に起こる不穏な動き・フランスのデモ」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/05/blog-post_22.html