2024年2月7日水曜日

社会を映し出す若者の自殺の増加と傾向

  


 2月5日は国が定めた自殺予防デーであることをこのニュースで知りました。フランス公衆衛生局がこの日を記念して発表したデータから、「過去 10 年間に見られた18歳から24歳の生涯にわたる自殺念慮と自殺未遂の大幅な増加」が注目されています。

 フランスは「ヨーロッパ諸国の中で自殺率が最も高い国の一つ」であるとも言われています。

 今回フランス公衆衛生局が発表したデータの中で、最も顕著は変動が認められたのはこの18歳から24歳の若い女性の自殺、あるいは自殺未遂の大幅な増加で、+32%増という驚異的な数字を記録しています。

 この若者の自殺・自殺未遂件数の増加は、そもそも不安定な年頃で、潜在的な危険をはらんでいたところに、後から思い返せば一時的ではあったものの、この数年間に人との関わりが途絶えたパンデミックの期間が影響していると言われていますが、その人口動態、家庭環境などを見ると、明らかに格差社会が影響していることもわかります。

 例えば2022年には、10歳以上の75,803人が自殺未遂や自傷行為により入院。そのうち64%が女性であり、また、その内訳は、圧倒的に貧しい家庭の子供に偏っているというのも、社会的に生きづらいことを浮き彫りにしているとも言えます。

 裕福な家庭の子供が自殺しないというわけではありませんが、この両カテゴリーを比較すると、貧しい家庭の子供の自殺願望は裕福な家庭の子供のほぼ2倍であったようです。

 また、この社会的格差がより顕著に表れているのは、45歳から49歳の女性にも見えることでもあり、この年代の貧因層は、そうでない女性の3.5倍とさらに、その差は広がります。

 これらのデータは、男性、女性の差に加えて、「非常に顕著な社会的勾配」をも示しているという、ある意味、社会の生きづらさの縮図のような気もします。

 一般的にフランスなどは、女性が強いイメージがあり、閣僚などにも相当数の女性の顔が並んではいるものの、その実、社会的立場は一般的には、女性が弱い立場に立たされているということが見えます。

 このような社会だからこそ、政府は敢えて、女性を大臣に据えて、いかにも差別がないように取り繕っているのではないか?と懐疑的にさえ思ってしまいます。

 また、さらに驚くことには、18歳から24歳の間で、生涯を通して行われた自殺企図は、前回のデータに比べて50%増、生涯の自殺未遂率は12.8%と10人に1人以上が自殺未遂を起こすということで、これは大変な話です。

 若いこの年頃は少なからずデリケートで繊細で、傷つくことも多い年頃で「死んでしまおうか?」、「死にたい・・」などと思ってしまうこともあり得るのだとは思いますが、しかし、自殺未遂とはいえ、実際に行動を起こすまでには、なかなか至らないのが普通だと思っていましたが、そうでもなくなっているようです。

 10人に1人が自殺を企てるって、どう考えても正常とは思えません。

 親にとって、子供に先立たれることは何より辛いこと、ましてやそれが自殺となれば、なおさらのことです。しかし、前述したデータから見るに、この急激に増加したと言われる18歳から24歳と45歳から49歳の女性はの層は、だぶる気もして、もしかしたら、同じ家庭に帰属しているのかもしれない・・、あるいは、同時に同家庭から犠牲者が出なくても、この年齢層の貧しい家庭が最も危険をはらんでいると見えるような気もします。

 どちらにしても、社会の歪のようなものが、この最も弱い立場の人々に表れてくることが残酷な現実でもあります。


若者の自殺


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2024年2月6日火曜日

最近のマイブーム パリのヴィエノワズリーの美味しいお店

  


 フランスに来て、もういい加減、かなり長くなり、本当に今さらではあるのですが、最近、私はとてもパンが好きになりました。

 スタンダードにバゲットを買うことが一番多いのですが、最近はふつうのバゲットではなく、バゲットトラディションを買うことにしています。若干、ふつうのバゲットよりは高いのですが、ほんの20セントくらい高くなるだけで、全然、クォリティが違うので、まあ、ちょっとだけ贅沢といっても、さすがにバゲットとなると、たかがしれているので、まあ、そんなに大量に食べるわけでもなく、まあ、これくらいはいいかな?と思っています。

 さすがにパリはどこへ行ってもパン屋さんは多く、通りかかったパン屋さんは、最初は外から様子をうかがって、良さそうだと思うと、特に買う予定がなくても、とりあえず、必ず入ってみるようにしているのですが、おもいのほかパンやケーキが並んでいるウィンドーは華やかでフワッとしたバターとパンの香ばしい香りに包まれて幸せな気分になります。

 最近は、気のせいか、クロワッサンやパンオショコラがやけに立派になり、またヴィエノワズリーの種類も増えた気がして、ついつい誘惑にかられます。

 昨年、セドリック・グロレのクロワッサンが食べてみたくて、延々並びましたが、たしかに美味しかったのですが、さすがに毎度毎度、あんなに並ぶ気もせず、また、ちょっと値段もいくらなんでも・・というくらいに高いので、そうそうリピートする気にはなりません。

 昨年、一時期、ギャラリーラファイエットグルメに入っていた(期間限定)パン屋さん(     PANADE)のヴィエノワズリーがとても美味しかったので、そのお店に行ってみたら、なんと、ラファイエットグルメとは、同じものが全然、安かったりして、ちょっと嬉しくなって、ごきげんにいくつか買ってきました。



 そのお店のヴィエノワズリーのパイ生地は、ちょっと大げさに言えば、エッジが立っているというか、パイ生地をしっかり感じられ、パイ生地好きの人にはおススメです。




 また、昨年、サロン・ド・ショコラに出店していたお店で魅せられたヴィエノワズリーが気になっていて、パリ市内のお店(LAURENT DUCHENE)に行ってみたところ、こちらも見事なパイ生地なのですが、何よりバターの香りが素晴らしく、パリッとしつつも、しっとりしていて絶品でした。



 この写真のシマシマは、クロワッサン・オ・ショコラでパン・オ・ショコラはまた別にあります。



 種類も多く、お値段もそこそこなので、ケーキを買ったりすることを考えれば、ずいぶんと割安だ・・などと自分に都合のよい理屈をつけて、ここのヴィエノワズリーもいくつか購入。今年中に全種類制覇したい・・などと、ワクワク楽しい気持ちです。

 我ながら、いつも美味しいものを探して歩いている自分に呆れる気もしますが、パンやヴィエノワズリーに関しては、パリでは美味しいものに遭遇する確率が高く、この美味しいヴィエノワズリー探しは、しばらく私のささやかな幸せのひとつになりそうです。


🌟PANADE                          35 Rue Violet 75015 Paris 

🌟LAURENT DUCHENE         2 Rue Wurtz 75013 Paris


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2024年2月5日月曜日

国内農業で禁止されていた農薬チアクロプリド 輸入品にも適用へ

  


 食料品への添加物や農薬などは、もう表示されていることを信じるしかなく、現品を見たところでは、ほとんどの場合はわからないし、一つ一つの添加物や農薬などへの詳しい知識もないので、例えば、この農薬が禁止されていると言われれば、「それは怖いな・・」と思うくらいしかありません。

 たしかに有機栽培の野菜や果物などは、「味も濃くて美味しいな・・」などとも思うのですが、それくらいしか、私にはわからないのです。

 しかし、添加物にしても農薬についても、腐るはずのものが腐らず、虫を殺してしまう薬なわけで、人間の身体にはよくないのは、当然のことです。

 普段はあまり意識していなくても、やけにすぐにカビが生えてしまったりしまう食品に遭遇すると、「あ~あ・・もったいないことしちゃった・・」と思うと同時に、これは、添加物が使っていないんだな・・と少々ホッとするところもあります。

 今回の農民たちの怒りが爆発した騒動から、農民たちの要望に入っていた輸入食料品の農薬規制について、ガブリエル・アタル首相は、問題となっていた農薬チアクロプリドを使用した食料品の輸入を禁止することを発表しました。

 このチアクロプリドという農薬は、散布することで害虫の神経系の異常興奮を引き起こし殺虫するというものらしいのですが、これが、人間にとっても内分泌かく乱物質であることが確認されたために、フランスでは、2018年から使用が禁止され(翌年、欧州連合圏内でも禁止)されていました。

 しかし、このチアクロプリド(日本では、バリアード、エコファイターなどの製品名)は、未だアメリカなどでは多く使用されており、特にブラジルやアルゼンチンなどの南米諸国ではかなり使用されている農薬で、それが低価格でフランスに輸入され続けていたのが実情だったのです。

 フランス国内、欧州連合で禁止した時点でなぜ?輸入品に対しても規制しなかったのかは、まことに不合理な話、きれいごとを並べて国内だけ規制しておいて、輸入品には、お咎めなしというザル規制であったわけで、今回、農民たちが騒がなかったら、一般国民には、知る由もなかった話で、結果的に、この危険とされる農薬を使用して効率よくできる海外からの野菜を安価に仕入れることで、国内の農家の首を絞めることになっていたおかしな話です。

 しかし、輸入食料品の農薬規制に関しては、トレーサビリティー(食品の生産についての情報や流通経路などの情報を消費者が確認できる仕組み)について、複雑な管理を徹底する必要があり、簡単な話ではないようですが、だからといって、人体に有害とわかっている農薬を国内(欧州内)で使用する方向に逆もどりしてよいはずはなく、輸入食料品であっても、国民の身体に害を及ぼすと確認されている農薬を使用したものをそのままなし崩しにしておくのはお門違いで、何としても、しっかり管理してもらわなければなりません。

 ガブリエル・アタル首相は、これを「セーフガード条項」、「ミラー措置」として、輸入食料品に欧州の農家に課せられているのと同じ規則を遵守することを義務付ける仕組みの一部として、他の欧州の国に先立って、フランスは、実行していくと説明しています。

 私自身も今回の農民たちの騒ぎがなかったら、ずっと知らなかったことで、やっぱり、声をあげること、社会運動は時には必要なことなのだろうと思います。

 しかし、この薬品を製造しているのは、ドイツの多国籍企業バイエルであり、ドイツは自国(欧州)で禁止している農薬を世界に向けては販売し続けていることは、もう一つ納得のいかない話でもあります。


チアクロプリド 農薬使用禁止


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2024年2月4日日曜日

早朝のパリ・リヨン駅でのナイフとハンマーによる襲撃事件

  


 パリのリヨン駅は、パリの中では比較的、大きな駅で、どこかに行く時に通過する時に通るくらいなのですが、かなりの割合で、警察官はもちろんのこと、けっこう長いライフルのような銃を肩にかついだ憲兵隊なども警戒にあたっていて、こんなライフルかついで警戒する必要があるのかな?と思いつつ、威嚇の意味なのかな?、とか、その憲兵隊がけっこう若い青年だったりするのに、なんだか物々しい武装のわりに、あどけなさが残るような感じがアンバランスだな・・などと、少し遠巻きに眺めながら、余計なことばかり思っていました。

 しかし、昨日の早朝にナイフとハンマーを持った男が旅行者を襲ったというニュースを見て、やっぱり、残念ながらこんな警戒は必要なのだと思いました。

 事件は土曜日の朝7時半頃、地下に位置するパリ・リヨン駅のRER A、Dや南部を走るR線などの郊外電車が乗り入れているホール3で起こりました。

 襲撃犯は、まずリュックサックに火をつけ、その後にナイフとハンマーを取り出して通行人を襲い、なんとか止めに入った人々をも襲いかかり、そのうち男性1名は腹部を刺され重傷を負っています。

 しかし、その後、襲撃犯はすぐにSNCF(フランス国鉄)鉄道警察により逮捕されました。この襲撃犯は、マリ国籍の32歳の男性で、イタリアの滞在許可証と運転免許証を所持していました。つまり、不法入国ではないということですが、精神障害を患っており、彼が実際に治療を受けていることを証明する一定数の薬が彼の体から発見されています。

 襲撃時には、よくあるこの手の襲撃犯のような叫び声をあげてはいなかったものの、警察は彼のTikTokのアカウントを発見し、2023 年 12 月 2 日付けのビデオの中で「安らかに眠れ、3か月後、アッラーが私を楽園に迎え入れてくださいますように!」などと語っており、 他のビデオでは、フランスのマリへの軍事介入に言及し、フランスに対する憤りを顕著に表明していることを突き止めています。

 現段階ではテロリストとしての認定はされてはいませんが、「テロの足跡が決定的に排除されるかどうかをしっかり見極める!」とパリ警察署長は発表しています。

 しかし、この事件の発生時の駅は、パニック状態であったようで、どの程度の規模の犯罪なのかは、知る由もなく、「すぐに駅から出てください!」と駅を脱出するように促されたとのことで、異様な光景であったと人々は証言しています。

 この恐ろしい事件が報道されている映像は「あ~あれ!あそこだ!」と見たことのある場所が黄色いテープが貼り巡らされている様子であることは、危険が日常のすぐそこにあることを再確認させられる気持ちでした。

 夜、遅くならないようにとか、ある程度の危険を回避することはできても、朝早く(といっても午前7時半頃)の駅などでは、避けようもなく、事件に遭遇してしまったら、本当に運が悪いとしかいいようがありません。いや、でもそういえば、以前にも似たような事件がパリ北駅でも起こって、それもたしか、早朝だった気もするので、早朝の大きな駅・・というのも、落とし穴なのかもしれません。

 反面、こんな時に助けに入ってくれる人がいるということは、それはそれですごいことだと思います。

 しかし、今回のこの襲撃は「交通機関の安全を強化する緊急の必要性を証明している」とも言われており、オリンピック・パラリンピックまで半年を切った今、何かにつけて、「これで1,500万人の来場者を迎えられるのか?」と不安視する声も上がっています。


パリ・リヨン駅 襲撃事件


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2024年2月3日土曜日

伊東純也選手への性加害報道 所属先のスタッド・ド・ランスが公式リリース発表

 


 フランス・スタッド・ド・ランスに所属する日本人サッカー選手 伊東純也氏の性加害スキャンダルを受けて、所属先のスタッド・ド・ランスは、この事件に対する公式プレス・リリースを以下のとおり発表しています。

 「スタッド・ド・ランスは、今週水曜日に日本のメディアが伊東純也選手について行った報道と、同選手が起こした名誉毀損の告訴状に注目し、留意している」

 「日本人ストライカーの人間的資質と行動がクラブによって疑問視される必要があったことは一度もなかった。よって、彼は引き続き、スタッド・ド・フランスのメンバーとして在籍します」

 「メディアの報道を裏付ける司法調査が行われるまで、スタッド・ド・ランスは当局による調査を裏付ける情報を持っていません。 現段階でも現在に至るまで、クラブは伊東選手との団結を示している。 したがって、スタッド・ド・ランスは、疑惑の事実を明らかにする具体的な要素を待っており、関連する法的進展を細心の注意を払って追跡する予定である」

 「しかし、スタッド・ド・ランスはこのような重要なテーマを無視することはできず、この件に対して何のアクションも起こさないこと、あるいは沈黙を保つことを望んでいません」

 「クラブはここ数シーズンにわたってプロフットボールリーグと共同で実施してきた「女性に対するあらゆる形態の暴力との戦い」への取り組みを改めて表明し、すでにシーズンに向けて新たな啓発活動に取り組んでいる」と発表しています。

 日本でこのスキャンダルが報道されたのが水曜日、翌日には、伊東選手は、逆告訴し、スタッド・ド・ランスはこのようなプレスリリースを発表しています。早々に彼が逆告訴したのも、クラブへの説明と話し合いやアドバイスによるものとも思われますが、とにかく対応が早かったのには、驚き・・少し前に起こった性加害報道に対する日本の芸能事務所の反応と比べてみても、事実関係も異なるとはいえ、慣れているというか、賢明というか・・。

 実際に捜査、裁判の結果がどうなるかわかりませんが、彼がスタッド・ド・ランスに移籍したのは、2022年7月のことで、まだ彼がクラブに所属して1年半ほどです。しかしながら、「人間的資質と行動がクラブによって疑問視される必要があったことは一度もなかった」、「クラブは彼への団結の意を表している」とすぐに公式発表してくれることは、選手にとって、何よりも心強いことだと思います。

 これほどにクラブからの深い信頼を寄せられている彼が無実であることを祈るばかりです。


伊東純也性加害報道 スタッドランス フランス


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2024年2月2日金曜日

インフルエンザ流行のためにワクチン接種キャンペーン期間延長

  


 「フランスではインフルエンザの流行が本格化しており、すべての指標が急激に上昇している!」という記事を見て、「えっ?そんなに流行ってたの?」とビックリしました。

 フランス公衆衛生局が1月31日に発行した速報によると、「あらゆる指標が地域医療や病院であらゆる年齢層で急増しており、特に救急治療室に行った後の入院が急増している・・」とのことで、ちょっとギョッとさせられました。

 とはいえ、かなり地域差はあるようで、サントル・ヴァル・ド・ロワール(パリ南部・フランス中央部)が際立って増加しているそうですが、全国レベルでは46%の増加なのだそうです。

 そういえば、私もここのところ、体調がすぐれず、鼻がズルズルしていたり、だるかったり、熱っぽかったりしたのは、もしかしてインフルエンザだった?と、ちょっと心配になりました。

 「そろそろ花粉症の季節だから花粉症じゃないの?」と言う人もいたのですが、最近の私の携帯の天気予報のアプリには、「花粉はとても少ない」などという情報まで明記してくれているので、やっぱり花粉症ではなかったかもしれません。

 とはいえ、多少、だるかったり、鼻がグズグズするからといって、生活に支障があるわけでもなく、特にお医者さんにかかるわけでもなく、そのまま放置していました。

 フランス公衆衛生局の発表によると、「1月中旬には既に首都圏全域に広がっていたインフルエンザの流行がフランスでも全土に拡大している・・」とのことで、ワクチン接種キャンペーンを一ヶ月延長したそうです。 当初は1月31日までの予定でしたが、現在は2月29日までとなっています。

 それを聞いて、「あ~そういえば、私、インフルエンザのワクチン接種してたんだ・・」と思い出し、「ワクチン接種のおかげで、酷くならないでいるのかも? それにしても、そんなことも忘れている方がヤバいのかも・・」とちょっと、自分のボケ具合が恥ずかしくなりました。

 これに加えて、公衆衛生局は、急性呼吸器感染症、細気管支炎、コロナウィルスと同時感染の危険にも警鐘を鳴らし続けており、特に高齢者や虚弱体質の人とのソーシャルディスタンスをとることや、石鹸やアルコールジェルで手をよく洗うこと、マスクを着用すること、一度使用したティッシュペーパーは使わないこと(使い捨てのティッシュペーパーを使用すること)、くしゃみや咳をするときは肘をあてること・・などと推奨しています。

 それにしても、今さらまだ、「一度使用したティッシュペーパーを使わないこと・・」などと繰り返すということは、あれだけの痛い思いをした今もなお、ティッシュペーパーの二度使いをしている人がいるのだろうか? 喉元過ぎれば・・なのか・・? よっぽど、ティッシュペーパーの二度使いが身に沁み込んでいるのか? と苦笑してしまうのでした。


インフルエンザ流行


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2024年2月1日木曜日

農民たちの怒りが巻き起こす波紋

  


 いくつかの欧州の国で巻き起こっている農民の怒りがフランスの農民の間でも一大ムーブメントになり、フランス全土の農民たちが怒りの抗議行動を開始しはじめてから、2週間以上が経っています。

 農民たちは、全国各地で結集を続け、トラクターや藁の束や土などを使って、全土の主要高速道路をブロックしています。

 これまで、あまり注目されなかった農民たちの悲惨な訴え、農業に対する厳しい規制や環境問題対応やインフレ、フランスの基準を満たしていない輸入品の増加などなどにフランス国民も概ね、彼らの怒りを理解し、支持する声が多いようです。

 フランスでのデモ行動は珍しいことではないし、それが暴動に繋がったりすることも珍しくないので、それに比べて、今回の農民たちのデモ、結集は比較的、おとなしいと思っていました。

 しかし、この動きも長引くにしたがって、彼らの中にはやはり暴挙に及ぶものもあらわれはじめ、ランジス国際市場に結集していた一部?の農民たちが市場内に押し入り、そのうち79人が器物損壊で逮捕されたという話が上がってきました。

 農民たちが「パリへ!」「空港やランジス市場をブロックする!」と宣言し始めて以来、ランジス市場には、物々しく装甲車が待機、農民たちをブロックしていましたが、あくまでも、破壊や負傷がない限りは介入しない姿勢をとっていました。

 また、果物や野菜などの外国製品(輸入品)を積んだトラックもデモ参加者によって、積み荷を道路に捨てられたりすることも起こり、暴力的な行動も増えつつあるようです。

 政府はこの農民の怒りを理解し、対応しようと「非道路用ディーゼルエンジンの増税の廃止」や「農家に対する規制に対する当面の簡素化」や「有機農家に対する5,000万ユーロの緊急援助基金」、「不正な輸入品に対する取り締まり、罰則の強化」などの回答を示していますが、農民はこれでは、まったく充分ではないと、この抗議行動を続行しています。

 基本的には、農民の怒りを支持する人が多いとはいえ、これだけ長くなってくると、あちこちに影響が表れ始め、スーパーマーケットでは、輸送のための交通網が麻痺しているために欠品が少しずつ出てきているとのことで、また、ブロックされている高速道路のガソリンスタンドなどは、当然、車が通れないために、顧客が来なくなり、開店休業状態になっています。

 農民たちとて、こんなに長期間、農場を放って、高速道路で寝泊まりしているわけですから、畑や動物たちは、大丈夫なのかな?とも思いますが、追いつめられた生活をしている彼らにとっては、このままでは、農業は続けられない!という命がけの覚悟でもあり、また、せっかく世論まで味方についている今、引くに引けない状況なのかもしれません。

 しかし、農民たちの間でも意見の相違はあるようで、このデモ行動に有機農家は参加していないようです。彼らはデモを行っている農民たちの要求の多くの部分を共有しているものの、全く同じではないため、それを混同されるリスクは冒すことはできないとしています。

 彼らは有機農業確立のためのよりよい援助を求めており、これは、欧州連合の新しい共通農業政策(CAP)と農業のグリーン化というその目標にかなったことであり、環境に優しい農業を行っている農家に対する援助の確立も含まれています。

 一応、先週の段階で政府は有機農家に対する5,000万ユーロの緊急基金を提示していましたが、彼らによると、一農家あたりにして、833ユーロにしかならないということで、「これではタイヤの値段にもならない・・」とこの金額が全く不十分であると主張しています。

 農業のグリーン化などときれいごとを言っても、実際には、早々簡単にいく話ではなく、また、このインフレから、消費者のオーガニック製品離れが起こっており、売り上げは減少傾向にあるとのこと、厳しいことには変わりありません。

 有機農家は、「私たちは、古い自由主義的で輸出モデルを支持するか、水、気候、生物多様性、健康を守る製品をフランス人に食べさせることを目的とした新しいモデルを支持するか、選択を迫られる時期にある!」と語っており、たしかに、一般的な農民たちとは、また別のステージに立つ部分もあるのかもしれません。

 いずれにせよ、一大農業国であったはずのフランスの農業は、たしかに上手く回っていないことだけはたしかなようで、これを機に、フランスの農業が再構築されていくための方策を政府がしっかりとってくれたらいいなと思います。


フランス農民の怒り


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