2023年4月25日火曜日

日本人なのに日本語がほとんど話せない海外育ちの従弟の子供

 


 娘が日本で就職して、あっという間に1年が経ちました。彼女が生まれてから、私は彼女の日本語教育には、ことのほかしつこく、根気よく、かなり労力を費やしてきました。

 フランスで生活しつつ、私は彼女とは日本語だけで会話を続け、ある程度の年齢までは、家にいるときは、日本語のテレビ(ビデオやDVDなど)しか見せず、小さい時は、日本語の単語のカードを作って遊みたばせてみたり、毎晩、寝る前には、日本語の絵本の読み聞かせを続け、会話だけでなく、日本語の読み書きもできるようになってほしかったので、日本語をできるだけ億劫に感じることがないように、フランスの学校に通い始める前に、2歳になるかならないかのうちに、公文に通い始め、日本語で彼女に接してくれる私以外の人のいる環境にも定期的に身を置き、簡単な読み書きを教え始めました。

 親子だと、どうしても煮詰まってしまうこともあるので、公文には本当に助けられました。その後、結局9年くらい公文には通い、毎晩、学校が終わって家に帰宅後、私は食事の支度をしながら、公文の宿題を5枚やらせるというのが、日課になっていました。

 途中、夫が亡くなってしまったことで、正直、私も仕事と学校の送り迎えであっぷあっぷで、やはり本業?の現地校の学校での勉強を優先にしなければと思い、その時点で公文はやめてしまいましたが、その後、バカロレアのオプションに日本語を選択するとかで、高校生になってから、また別の学校に個人授業を受けに通わせたりしていました。

 小さい頃は必ず1年に一度は日本に連れていき、日本の小学校に一時的に編入させていただいたこともありました。毎年毎年、娘は日本に行くのが何よりの楽しみで、「日本語が出来ない子は日本には行けないよ!」と私に言われて、彼女には、日本行きが日本語のお勉強の大きなモチベーションになっていたと思います。

 そんなわけで、彼女は今では日本で仕事ができるほどに、日本語を習得することができたので、私としては大変、満足な結果を得ることができたのですが、もともとは、彼女に私の家族と普通に話ができるようになってほしかった・・コミュニケーションがとれるようになってほしかったというのが、一番、シンプルな私の願いでした。

 現在、日本で生活している娘は、友人もできて、小さい頃から日本に行くたびに可愛がってくれていた日本の叔父や叔母や私の従妹たちとも、時々、会ったりして、楽しく生活しているようです。

 先日、カナダに住む従妹の娘が日本に来ているというので、娘にもお声がかかって会いに行ってきたというのですが、どうにも従弟の娘は日本語がほぼ話せないようで、周囲とはほぼコミュニケーションがとれずに、「なんだか、とっても暗い雰囲気だった・・みんなもあんまり英語話さないし・・だから、私が呼ばれたのかな? あれじゃ、日本に来ても楽しくないだろうね・・」などと話していました。

 カナダに住んでいる従弟の娘のママは、もう従弟とは離婚してしまっていて、従弟は別の人と再婚して、再婚相手との間にも子供がいるので、少々、複雑な境遇でもあります。彼女のママは、日本人ではあるのですが、父親が外交官で海外を転々として育ってきたので、それこそ日本語があまり得意ではなく、子供が生まれた時点で、ほぼ、日本語を教えることを放棄していたのです。

 せっかくバイリンガルにできる機会なのにもったいないな・・と思ったものの、私が強制するのもおかしな話なので黙っていましたが、結果的に日本にいる家族とはろくにコミュニケーションが取れないという事態になってしまっているようです。それでも、英語なので、周囲とて、なんとか話ができないわけではないのですが、やはり、日常的に話つけていないと会話は弾まないのです。

 私は、娘がこんな状況に陥ることをとても恐れていましたし、また、我が家の場合はフランス語・・日本だとフランス語を話す人となると、英語以上にハードルが高くなるので、これはもう日本語ができなかった場合は絶望的な状態になり、結局、疎遠になってしまいがちでもあります。

 娘は、幸いにもそんなことにはならず、周囲の叔父や叔母や従妹たちとも普通に接することができていて、そんな親戚の集まりにも、ごちそうにつられて時々、顔を出しているようです。

 唯一の私の誤算といえば、一番、彼女を可愛がってくれていた私の両親が思っていたよりも早くに亡くなってしまったことで、今、両親が生きていてくれたら、彼女が日本で生活していることをどんなに喜んでくれたかと思うと残念ではあります。

 しかし、海外で普通に生活しているまま、そのまま放置していれば、両親が日本人だろうが、日本語はしっかり身につかないということは、忘れてはなりません。そして、それは日本の家族とのコミュニケーションがとれなくなるということで、疎遠になってしまうということに他ならないのです。


バイリンガル教育 日本語教育


<関連記事>

「バイリンガル教育は簡単じゃないけど、頑張れば、その子の一生の財産になる」

「バイリンガルになった娘の就職」

「海外在住の日本人の子供には優秀な子が多い」

「夏の一時帰国時の日本の学校への編入体験 バイリンガル教育の生体験」

「パリで、たまに見かける子供に日本語を教えようとしない日本人の親 バイリンガル教育」

「パリの公文 やってて良かった!」

「娘の卒業式」

「バイリンガルに育てる方法」

2023年4月24日月曜日

パリのメトロ6号線でコートがドアに挟まって死亡事故 

 


 私が初めてパリのメトロに乗ったのは、はっきりと記憶にはありませんが、ずっと昔に旅行でパリに来た時のことだったと思います。あの時はフランス語も全くわからなかったし、外国の地下鉄だし、治安も悪いというし、なんか、やたらと緊張した覚えがあります。

 あれから数十年経って、パリのメトロもずいぶん進化し、特にここ数年はオリンピックの準備なのか、やけに工事も多く、きれいになった駅も多く、車両も新車になったりしてずいぶん様変わりした感じがしていました。

 しかし、実際には、路線によって、整備のされ方はずいぶんと差があることも事実で、駅のホームと車両の間にドーム型のガードやそれと同様のガード(もう一つのドアみたいな感じのものなど)がつけられていたり、ピカピカの新車の車内に次の駅の表示が出るようになったり、冷房車が増えたり、中には携帯の充電までできる車両もあったりして驚かされるのですが、一方では相変わらず、ハンドルを手動で回して自分でドアを開ける車両が今でも使われていたり、ついこの間も車両とホームの間がやけに広く空いていて(多分、4号線だったと思う)、ボーッとしておりたら、足を踏み外してしまったり、間に挟まってしまったりしそうで危ないな・・と思ったばかりでした。

 パリのメトロは、「次は○○駅~~」というようなアナウンスもなく、なので、大げさな言い方をすれば、電車は勝手に来て、勝手に去っていくという感じなので、うっかりすると乗り過ごしてしまいかねません。

 また、一応、ホーム全体を監視するカメラが数か所には備え付けられているものの、日本のように電車の発着時の安全の確認をする駅員さんもいません。

 こんな感じに慣れてしまうと、日本に行ったときは、なにもそんなに言わなくてもいいのに・・などと、至れり尽くせりの日本のサービスをちょっとうるさいように感じてしまうことすらあったのですが、やっぱりあれは必要なことなんだな・・と、今回のような事故を聞くと、今、あらためて感じています。 

 事故が起こったのは、土曜日の午後4時頃のことで、パリのメトロ6号線がベル・エア駅(パリ12区)を出発しようとした時に起こりました。家族連れの45歳の女性がメトロを下りようとした際にコートがメトロのドアに挟まり、それに気が付かないままに発車したメトロに引きずられて身体の一部が車両の下敷きになり、死亡してしまったという大変、悲惨な事故でした。

 この女性はこの時、夫と子供が一緒だったそうなので、ごくごく普通の土曜日のお休みの日に家族で出かけた先の思ってもみなかった事故により、一瞬のうちに死亡してしまったのですから、一緒にいた家族は呆然自失だったことでしょう。

 パリのメトロは、現在のところ、1番線と14番線だけが運転手のいない自動運転になっていますが、この6番線には運転手がいて、事故を起こしたメトロの運転手さんは、当然のことながら強いショックを受けているそうです。

 6号線は地下鉄とはいえ、地上に出ている部分もあったりで、セーヌ川を渡る陸橋の上を走る部分もあり、エッフェル塔が見えたり、パリの街を眺められたりもする線でもあるのですが、それだけに駅も車両とホームのガードなどがない駅も多く、このような事故が起こってみれば、危険と言えば危険でもあります。

 メトロの車両のドアがコートを挟んで人を引きずるくらい強力に閉じるということには、改めて驚きですが、コートと言わないまでも、慌てて乗ったり降りたりする際にバッグが挟まってしまって周囲の人が手でこじ開けている様子は、そういえば、時々、みかけることはあります。

 バッグが挟まった場合などなら、逆にドアがきっちりと閉まらないために、その隙間に手を突っ込んでこじ開けるということも可能なのですが、コートの場合は、周囲の人もそのことに気付かなかった可能性も考えられます。

 どちらにしても、ちょっと信じられない悲劇的な事故ですが、発車の際の安全確認を十分にしていないという意味では、このような事故はいつでも起こりうる話なのかもしれません。

 一応、警察は運転手に対して、薬物、アルコールの検査を行ったそうですが、陰性だったようです。

 メトロといえば、スリやひったくりなどに注意しなければいけないと思ってきましたが、ドアに挟まれないようにも気を付けなければなりません。

 こういう事故が起こると実はこんなこともあった・・という話が出てくるのが常ではありますが、1週間前にもRER(パリ郊外線) B線で若い女性が線路に落ちて死亡するという事故があったばかりだそうです。

 駅の整備や拡張なども、ありがたいことですが、RATP(パリ交通公団)は、まずは根本的な安全対策を徹底してもらいたいと思った出来事でした。


パリ メトロ6号線 死亡事故


<関連記事>

「パリのメトロの中は日本よりも携帯を眺めている人が少ない気がする」

「12歳の少女を襲ったパリのメトロの痴漢は、あっさり釈放」

「パリのメトロ・Navigoパス 2023年1月1日から値上げ」

「パリ市内のバス RATP(パリ交通公団)キセル乗車の取り締まり」

「公共交通機関でのベビーカー問題について」

 

2023年4月23日日曜日

フランス人はどんな権利も主張する 驚愕の「失踪する権利」

  


 フランス人は、ことごとく権利を主張する場面が多いような気がしますが、なにかにつけて、権利があるとか、権利がないとか言う言い方をするし、かと思うと、「それは私の仕事じゃない!」「それは私のミスじゃない!」とこの言い方をするというか・・そんな彼らの姿勢に慣れるまでは、「この人たち、最悪だ・・何かというと、権利を主張するくせに、いざとなると、責任逃れだ・・」とウンザリしていました。

 しかし、「まぁ、そんなもんだ・・また出たよ・・」とか思うようになってからは、合理的といえば合理的?はっきりしていてわかりやすいということもでき、また、このようなことをいう傾向にある人というのも、ある程度、カテゴライズできる気がしてきました。

 今、大騒動を起こしている年金改革問題にしてみたら、全国民に共通する62歳で退職する権利を脅かされているわけですから、それに抵抗しているのも、権利の主張の一端でもあります。

 先週末にパリ郊外で20歳の女性が早朝にジョギングに出かけたまま行方不明になったという事件があり、100名近い憲兵隊に加えて300名以上のボランティアが捜索を始め、同時に彼女の写真や身長、目の色、髪の色、体格、その日の服装など詳しい情報が公開され、目撃者を募っていました。

 彼女が行方不明になった当日の午前6時過ぎには、防犯カメラには彼女が走っている様子が映っていて、その後、ぱったりと消息がわからなくなってしまったのですから、これはよからぬことが起こったと思うのは普通のことです。

 全国展開される行方不明者の情報が出る場合は、高い確率で残念な結果に終わることが多く、また若い女性が襲われたんだ・・などと私は勝手に思っていました。

 ところが、翌日の夜になって、彼女が生きているのが発見されたというので、「どういうこと?」と思っていたら、これは彼女自身の意思で失踪しようとしていたということで、彼女は元カレと一緒にいるところを発見されたのだそうです。

 これが計画的なものであったかは別として、彼女自身は家を出るときに自分の携帯を家に置いて出ていたために、彼女自身が家と連絡を絶ちたいという意思をうかがうこともできますが、いざ、行方不明となれば、事件性を疑うのも無理はありません。

 結局、発見された時点で、彼女は自分の意思で失踪したことを認めたため、一緒にいた男性も、彼女自身も拘留されることはなかったそうですが、多くの人を巻き込んでの大騒動に、どうおさまりがつくのかと思いきや、「彼女はもう成人だし、彼女には、消える権利(失踪する権利)がある!」とのことで、「彼女の事情を追求する権利はない」そうで、彼女の権利を尊重することで、この事件は一件落着となったようです。

 今まで、色々なフランス人の権利の主張を聞いてきましたが、今回の「消える権利」、「失踪する権利」といういのは、初めて聞いたとびっくりした次第です。

 よくよく考えてみれば、成人した大人がどこに住もうとどこで生活しようと自由なわけで、あとは家族間の問題ではあると思うのですが、これだけたくさんの人を騒がせて、それこそ、いい大人?が周囲に知らせずにいなくなったら、どんな騒ぎになるかは、言わずと知れたこと、この先、この家族がどうするのかわかりませんが、権利は権利でも、やっぱり他人に迷惑かけちゃいけないよな・・とごくごくあたりまえのことを思うのでした。


失踪 権利の主張


<関連記事>

「フランスの国会を騒がせる「フランス人のクリスマスを迎える権利」」

「コロナ禍中でも続くフランス人の権利の主張」

「FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利」

「フランスの労働者保護の悪循環」

「トゥールーズ スクワット(アパート乗っ取られ)事件 フランスの居住権」

2023年4月22日土曜日

黄色いベストの次は鍋 フランスで起こっている鍋騒動

  


 今回の年金改革問題に関する抗議運動は、なにかと前回の大きな社会的な騒動となった黄色いベスト運動と比べられることが多く、あの時は、もっと期間も長く、暴力的で破壊行為が過激だったなどとも言われていますが、今回の年金改革問題も、大きな動きになり始めてから早や3ヶ月以上が経過し、強引なカタチではありましたが、法案が交付されてなお、抗議運動は止むことはありません。

 今週に入って、マクロン大統領が実際に地方の街を廻り始めたことから、今のところ、逆にこの問題を盛り上げている感もあります。

 このマクロン大統領の地方行脚の際に、群衆が抗議の意味を込めて鍋を叩きながら集まり、詰め寄った人々に向けて、マクロン大統領が「フランスを前進させるのは鍋ではない」と言ったことから、どうやら今回の抗議運動のシンボルが「鍋」になりつつあり、早くも「鍋革命」とか・・・と言われ始めています。

 エロー県では、マクロン大統領の訪問を考慮して、当日、鍋を持って集まることが禁止され、知らずに鍋を持ってきた人々は鍋を没収されるという憂き目にあい、さらに彼らの怒りを増長させています。

 問題にされているのが、「鍋」というものだけに、どこか牧歌的というか滑稽な印象もあるのですが、それくらい暴力的ではない抗議方法であるとも思うので、こんなことまで禁止してしまうのもどうかと思わないでもありません。

 黄色いベスト運動の時は、そもそもは燃料税に関する問題で、フランスの家庭ならどこの家庭にも1つや2つはあると思われる黄色いベストが抗議運動のシンボルとなり、目立つこともあり、黄色いベストというシンボルは大いに前回の抗議運動に貢献したと思われます。

 前回の黄色いベストのように、このような運動にはシンボル的なものの存在は大きな力を発揮するので、今回の「鍋」は、視覚的には目立つものではありませんが、「強力な音」を発することでその存在感と抗議する者たちの連帯感を生むものになるかもしれません。


 鍋はフランス語でキャセロールと言いますが、このキャセロールをもじっているのか?「キャセロラード」なる聞きなれない言葉が出てきて、鍋を持っての集会まで呼びかけられています。

 また、この鍋騒動に乗じて、IKEA(イケア)フランス(スウェーデンの家具・家庭用品メーカー)は、「たったの12.99 ユーロで音を立てることができます!」と広告を張って、そんなちょっとブラックユーモアチックな宣伝も話題を呼んでいます。



 どうにも、強制的に規制しようとしたりするから、余計に反発を生むことになるわけで、今回の年金改革問題に関しては、強制的に抑えつけようとする政府と強行手段ゆえに余計に反発する国民の図式がこんな鍋問題にまで一貫してあらわれているような気もします。

 エロー県は、マクロン大統領訪問への忖度?で、鍋禁止令を発令したのであって、これは全国的に鍋が禁止されたわけではありませんが、鍋くらい叩きたい人には叩かせておけ・・くらいの余裕がないと、反発がより強くなり、今度は鍋くらいでは済まなくなるかもしれません。

 4月ももう後半に入り、1年の3分の1が過ぎたばかりではありますが、もしかしたら、今年のフランスの流行語大賞は、「鍋」かもしれません。


鍋革命 鍋騒動


<関連記事>

「険しい道を歩むマクロン大統領 それでも彼のハートは折れない」

「マクロン大統領の風刺フレスコ画消去要請」

「黄色いベストが帰ってきた!」

「年末恒例の大統領の演説に2023年もデモ激化の予感」

「マクロン大統領の演説がどうにも、しっくり響かなかった理由」

2023年4月21日金曜日

険しい道を歩むマクロン大統領 それでも彼のハートは折れない

  


 年金改革法案が交付された数日後、国民の前で演説を行ったマクロン大統領はその翌日から、アルザスを皮切りに地方行脚を始めています。意を決して?行われた今回の彼の演説も、「一方的な停戦要求」ととられた感が強く、あまり好意的に受け取られはしませんでした。

 リベラシオン(仏・日刊紙)が最近発表した世論調査によると、質問された人の 4 分の 3 が、主に選出された役人が現実から切り離されていること (74%) と、マクロン大統領の権力行使があまりにも権威主義的であること (54%) のために、民主主義は不健康であるという結果を発表しています。

 これまで3ヶ月以上、ほとんど表舞台には、現れなかったマクロン大統領には、行く先々で、停電をおこされたり、これでもかというブーイングがあがって、国民はお鍋を叩きながら、「マクロン大統領辞めろ!」の大合唱。

 マクロン大統領を迎える地域は大変な警戒ぶりではあるものの、全く一般市民を遮断して護衛するというわけでもなく、集まってきた人が直接、話をできる場面もあるところが、フランスなのだな・・と思うものの、その大部分は、ブーイングでマクロン大統領にとっては、なかなか厳しい状況であることは明白です。

 それでも、マクロン大統領は、「このようなバッシングは初めてのことではない・・黄色いベスト運動のときは、むしろもっと酷かった・・」なと矮小化しようとする発言もみられ、これだけ嫌われても折れないハートは凄いな・・などと妙な感心をしてしまいます。普通の人なら、こんなにたくさんの人に嫌われるのは、耐えられません。

 行く先々でマクロン大統領と一般市民の言い合い・せめぎあいの様子が流されたりしていますが、苦し紛れ?に彼が発言したことを抜粋されて流されているので、そんな会話ばかりではないと思うのですが、鍋を叩きながらブーイングの意を伝える国民に対して「フランスを前進させるのは鍋ではない!・・私がやろうとしていることは、フランス人がより良い生活を送り、子供たちの未来を築くことで、 私にはそれを止める権利はない!」と言ったとか、また「フランスには、憲法があり、それを決めるのは、大統領だ!単純なことだ!」と言ったとか、「大統領選に勝てなかったことを乗り越えられない人がたくさんいる!」とか、彼が国民との対話で言葉にしたことが、一つ一つ取り上げられて、あーでもない、こーでもないと論じられています。

 これだけ嫌われても決して折れることがないマクロン大統領は、逆にあっぱれな気もしますが、彼の周囲はやはり穏やかではないようで、政府のスポークスマンが「今、フランスに起こっているのは民主主義の危機はなく、信頼の危機である!」などと説明してみたり、マクロン大統領夫人のブリジット・マクロンがインタビューに答えて「マクロン大統領は孤立してはいない!」と熱弁したり、どうにも彼の歩く道が険しいことが周囲の言動からも垣間見えます。

 彼が孤立しているかどうかは別として、民主主義の危機ではなく信頼の危機であることは、全くのプラスな状況にはならないことを熱弁しているのも気になります。

 それでも、マクロン大統領は「私たちは、あなたの話を聞かない政府ではなく、人々を納得させることができることを確信している!」という姿勢を崩さずにいます。

 彼は抗議行動を続ける人々に対して、「彼らが話そうとしているとは思えません。 彼らは騒ぎ立てようとしています。 言葉をごまかすために騒ぎ立てようとする人々の話を聞くだけの社会にいるとしたら、そこから抜け出すことはできない!」と話しています。

 しかし、インタビューに答えてのことではあるでしょうが、「辞任するつもりはないし、そんなことは起こらないだろう」と述べたことがニュースになっているので、彼の進退にかかわる騒動になりつつあることも見逃すことはできません。

 そんな中、政府は、毎日、交通違反の罰則を減刑したり、教師の給与を月額100ユーロ~230ユーロ上げることを発表したり、歩み寄り?の政策を公表しています。

 年金改革法案交付の少し前に中国を公式訪問していたマクロン大統領、この際の発言もかなり世界的には非難の対象になっているものの、中国政府や中国の国民からは熱烈歓迎を受けていました。

 しかし、肝心の自国では、当分、彼の行く先々では、鍋によるコンサートが開かれるものと思われます。


マクロン大統領


<関連記事>

「マクロン大統領の演説がどうにも、しっくり響かなかった理由」

「年金改革交付後 ストライキ・デモの次はオリンピックを盾にする動き」

「年金改革法案が憲法評議会通過 パリだけでも1万人の警察・憲兵隊配備 パリの街の警戒ぶりが凄かった・・」

「マクロン大統領ゆかりのレストランが燃やされる! 11回目の年金改革反対デモ」

「世界中に轟き始めたフランスの政情不安とマクロン大統領の孤立」




2023年4月20日木曜日

派手にぶざまに転んだら、周りの人たちが、とっても優しかった・・

  


 以前、会社で階段から落ちて、数ヶ月も仕事を休むハメになって以来、私には階段が少し怖くなって、特に階段は、気を付けて下りるようになっていました。そうでなくとも、日頃の運動不足のせいもあるのか、はたまた年齢のせいもあるのか、転んだり、怪我をすることが増えています。

 何よりも痛い思いをするのは嫌なので、自分でも、ちょっとカッコ悪いな・・と思うくらい注意深くなっているのです。だからといって、動かないでいると、ますます弱っていくので、できるだけ歩くように、そして少しでも運動をして鍛えるように心がけているのですが、鍛えるつもりでやっていた縄跳びで、転んだわけでも何でもないのにもかかわらず、いつのまにか骨折していたという、目も当てられない結果を招いたこともありました。

 それでも、ロックダウンを機に始めた家の中でもできる簡単なエアロビやストレッチを毎日の日課とし、週1は必ずプールで1キロ泳ぐことにしているのですが、それでも転ぶ時は転ぶのです。

 先日、仕事でパリ近郊の行ったことのない場所に行かなければならず、携帯を頼りに約束の場所を探しながら歩いていた時のことです。パリを少しでも出ると駅の様子もガラッと違って、どこか広々としていて、また、行き交う人もちょっと違った感じで、ちょっとガラの悪い感じの人もいたりして、なんとなく、治安悪いのかも?・・などと、正直、ちょっと腰の引ける思いでいたのです。

 何より土地勘が全くないことから、ちょっと警戒しながら、携帯を見つめて「えっ?こっちでいいのかな?」などと思いながら歩いていた時のことです。

 そんな私は携帯の中の地図と、自分が今、歩いている道に気をとられて、歩道と車道の段差に気付かずに、うっかり転んでしまったのです。そんなに人通りがある道でもなかったのですが、痛~い!と思いながらも、携帯を持ったまま、あまりに無様な転び方をしたために、恥ずかしいのが先にたって、かえって平気な顔をして、立ち上がったのです。

 すると、すぐに近くに止まっていた車に乗っていた男性二人が「大丈夫?」と駆け降りてきてくれて、また、ちょっと離れたところを歩いていた女性までが、「大丈夫ですか?」と走り寄ってきてくれました。

 私自身は、客観的に自分の転び方を見ていないので、どの程度、派手な転び方だったかはわからないのですが、もしもこれがパリだったら、もっと人通りが多くても、わざわざ車から降りてきて声をかけてくれるなんてことはないような気がするし、あったとしても、何か盗られるんじゃないか?などと警戒してしまうような気もします。

 どこかほのぼのとした空間で、ちょっと、おっとりした感じの中年の男性二人が、この会社の中で応急処置ができるから、少し休んで行ったら?などと、言って下さり、痛さと恥ずかしさで口ごもっていた私を見て、フランス語わからなかったら、英語で話そうか?などとまで言ってくれて、駅を降りてから、ちょっとガラが悪いかも・・とか、治安悪いかも・・などと思っていたことが申し訳なかったような気持ちになりました。

 痛いは痛かったのですが、そこまでの怪我ではなかったし、約束の時間があったので、それに遅れてはいけないと思い、彼らに道を尋ねると、私は見当違いの方向へ歩いていたようでした。

 彼らには、丁重にお礼を言って、教わった道を痛い足を引きずりながら、妙にバツの悪い思いと、「やっぱり郊外に住んでいる人って優しいんだな・・」などと思いながら歩き、幸い約束の時間に遅れることはありませんでした。

 それにしても、地図に気を取られて転ぶほど道を見ていたはずなのに、GoogleMapを持ちながらも迷う私の方向音痴にもつくづく嫌になると同時に、階段ばかり気を付けて、歩道と車道の段差もこれからは気を付けなければ・・と心に誓ったのでした。

 夜になると足の痛みは増してきて、慌てて湿布をしながら、痛みが出てくるのさえも鈍くなっていることが情けなくなりました。

  

パリ郊外


<関連記事>

「公共交通機関でのベビーカー問題について」

「義兄夫婦のフランス人の家族」

「フランスの職場でのイジメと嫌がらせから、悲惨な結果になったリンダちゃんの話」

「フランスのベビーシッターと子供のお迎え」

「スティーブン・スピルバーグ「ターミナル」にインスピレーションを与えた伝説のホームレスCDGで死去」



 

2023年4月19日水曜日

史上最悪と言われるブイトーニ冷凍ピザ食中毒事件の賠償には守秘義務が課せられている

  


 史上最悪の食品スキャンダルと言われた2名の死亡者を含む75名の犠牲者を出したブイトーニの冷凍ピザ食中毒事件から約1年、事件の被害者家族(63家族)とネスレ・フランス(ブイトーニのピザ工場の親会社)との間でようやく合意に達し、ネスレ・フランスは、被害者に対して相応の賠償金を支払うことで合意に達しています。

 63家族全体の弁護を請け負っている弁護士は、この事件の賠償金として、2億5千万ユーロの支払いをネスレ・フランスに対して要求していました。

 この賠償金の支払いは、医学的評価に従い、公平な方法で、損害の深刻さとそれぞれの状況を考慮に入れ算定されていると言われており、被害に応じて中には数十万ユーロに達するものもあると言われています。

 しかし、この金額については、メディアを含めて絶対的な守秘義務が課せられており、この同意に関しての内容や金額については公表されないということです。

 死亡した子供2人の人生はもとより、重度の溶血性尿毒症症候群(HUS)に感染した数十人が生涯にわたる障害を負ってしまったのですから、とりかえしがつかないこととでもあり、相応の賠償金の金額は生半可なものですまされるものではありません。

 しかし、未だ一部の家族は同意を拒否しているそうで、完全な合意に至ったわけではありません。

 この事件後に、以前に工場で働いていた職員が公開した大腸菌入りピザを生産していた工場の不潔な映像が流出しましたが、ちょっと信じがたいレベルの不潔さで、この工場の生産ラインはストップされ、一旦、再開したものの、長くは続かずに工場は閉鎖に追い込まれています。




 私自身も、たまに冷凍ピザを購入することもありますが、あの映像を見た後は、ブイトーニのピザだけは手がのびることはありません。

 しかし、一応、一段落がついたのは、民事訴訟の部分で、ネスレ・フランスには、まだ刑事訴訟が控えており、パリ検察庁が、「不随意殺人」と「不随意傷害」について司法捜査を継続しているものの、まだ起訴されてはいません。

 当のネスレ・フランスの広報は、「民事訴訟では、友好的な合意が通常であり、刑事訴訟を回避することなく民事訴訟を終わらせる」、今回の事件も「そのプロセスに従っている」「妥当な時間内に犠牲者とその家族の宥和に貢献するために、友好的な補償プロセスをとることを決定した」とかなり事務的な発表をしているあたりは、あまり好印象は持てません。

 これだけの事件を起こしておいて、好印象もないとは思うのですが、当初からネスレ・フランスの対応には、誠意というものが感じられず、食品会社における食中毒という致命的な危機対応は明らかに充分なものではありませんでした。

 あくまで推測ではありますが、一部の家族の同意が得られていないというのは、このあたりも影響しているのではないか? もっとも甚大な被害を被った家族からしてみれば、賠償金の金額だけでなく、このような姿勢もまた納得がいっていなのではないか?と思ってしまいます。

 一般大衆からしてみれば、喉元過ぎれば・・となってしまうかもしれませんが、消費者側からしたら、あのような不潔な食品工場が存在しえたということも恐怖であり、冷凍ピザにかかわらず、食品を扱う場所での衛生検査なども徹底する方向に進んでほしいものです。


ブイトーニ冷凍ピザ食中毒事件 賠償金 守秘義務


<関連記事>

「冷凍ピザ死亡事故に見るフランスの食品衛生管理」

「冷凍ピザの次はサラミソーセージにサルモネラ菌 真剣にどうにかしてほしいフランスの食品衛生管理」

「冷凍ピザ食中毒死亡事故から1年 ブイトーニのコードリー工場閉鎖へ」

「ネスレ ブイトーニ 食中毒事件 冷凍ピザ工場閉鎖も年内は従業員を解雇しない事情」

「フランスのゴミの収集 フランス人の衛生観念」