2021年9月3日金曜日

フランスの学校の新年度の始まり フランスの新学期手当とワクチン接種と唾液検査

   


 約2ヶ月間の長い夏のバカンスも終わり、フランスの学校の新学期が2日(木)から始まりました。毎年、カレンダーにもよりますが、なぜか木曜日スタートが多いというのも、フランスの不思議なところでもあります。

 9月の新学期は、フランスでは新年度の始まりでもあり、子供を持つ親には、9月は何かと忙しい月でもあります。

 入学式や始業式などの学校でのセレモニーはなく、しれ〜っと始まるのですが、そのしれ〜っと始まる新年度の前には、学校から、必要なものを揃えるようにと毎年毎年、前もって細かいリストが送られてきます。

 教科ごとに必要なノート類(サイズから、様式、ページ数まで指定)、画用紙、筆記用具(ボールペンの色や時にはメーカーまで指定)、定規や電卓(年齢ごとに変わっていく)などなど、なかなか細かくて、フランスの学校に通ったことのなかった私にとっては、最初は見慣れない文房具、ノート類などの学用品を揃えるのは、なかなか厄介なことでした。

 これだけ、同じものを揃えるなら、いっそのこと学校で纏めて揃えてくれればいいものを学校の先生は、子供に勉強を教えることだけ・・というフランスでは、一切の余計な業務は請け負わないのです。

 それでも、業者が介入して、一切を取り仕切れば、なかなかのビジネスチャンスだとも思ったりもするのですが、不思議なことに、そんな習慣はあまり変わることがなく、夏休みが始まるとともに、スーパーマーケットには、新年度のための文房具などの学用品のコーナーができます。まあ、これもフランスの夏から秋にかけての風物詩のようなものでもあります。



 そして、学校が始まり、教科書をもらってくると、教科書は1年が終わると返還しなければならないため、教科書一冊一冊にカバーをかけるのもフランスならではです。(汚したり、破いたり、失くしたりした場合は弁償させられます)合理的と言えば、合理的なフランス、日本などは、海外に住んでいても申請しておくと、日本人の子供ならば、毎年、新しい教科書をもらうことができるので、国によって、ずいぶん違うものだ・・と思います。

 この新年度の準備のために、フランス政府からは、1人でも子供のいる家庭には、新学期手当( L'allocation de rentrée scolaire (ARS))が支払われます。

 2021年は、6〜10歳の子供1人あたり370.31ユーロ(約48,000円)、11〜14歳の子供1人あたり390.74ユーロ(約51,000円)、15〜18歳の子供1人あたり404.28ユーロ(約52,500円)が8月末に支払われます。

 このお金は、子供のための援助金ではありますが、安くあげようと思えば、安く済んでしまうものでもあり、子供にあまりお金をかけない子供がたくさんいる家庭などには、ちょっとしたボーナスのようになっていて、その使途について、問題視する向きもないわけではありませんが、細かいチェックは難しいのが現状です。

 この時期には、学校だけでなく、学校以外のお稽古事などのアクティビティの申し込みも一斉に行われるため、なかなかな出費の多い月でもあるため、大変、ありがたい制度でした。(結局、これだけではとても足りないのが普通?ですが・・)

 このお稽古事などの申し込みは、一年間を通してのものなので、パンデミック以来、「ロックダウンなどになった場合でも返金はしない」などの項目が追加されたりしています。

 昨年の秋には再び感染爆発を起こしたフランスでは、学校の衛生対策にも特別に気を配らなければないところですが、9月からの学校の授業では、もしも感染者がクラスに出た場合でも、ワクチン接種をしている子供は授業をそのまま続けることができ、ワクチン未接種の子供に関しては、当面の隔離、リモート授業に切り替わることが決定しています。

 同じクラスの中でもワクチン接種をしている子供としていない子供で、隔離措置が違ってくるわけです。致し方ないことでもありますが、なんだかここでもクラス内で不穏な空気が流れそうで、なかなか微妙ではあります。

 また、学校では、週60万回の唾液検査が実施されることになっていると同時に12歳以上のワクチン接種が可能な年齢の子供たちに対してのワクチン接種(両親の同意書が必要)の強化、学校単位でのワクチン接種なども検討されています。

 ヘルスパスの適用範囲が広がる中、教師は、ヘルスパスの提示は必要でも、ワクチン接種が義務化されている職業ではありません。世論調査によると国民の74%は、「教師もワクチン接種を義務化するべき」と感じているという結果が出ています。

 しかし、現在のフランスでは、子供を持つ親にとっても、学校再開は、それほど神経質に危険視されてはおらず、すでにヘルスパスの起用により、ほぼ日常生活が戻っている事情が反映されています。

 とはいえ、特にワクチン接種ができない12歳以下の子供などは、引き続き、心配な要素が多いことも現実です。

 フランスでの次の学校のバカンスの休みは10月23日から、(Vacances de la Toussaint ・万聖節・ハロウィン)です。それまでの2ヶ月弱、無事に学校生活が落ち着いてスタートしますように・・。


フランス新年度手当 


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2021年9月2日木曜日

日本のワクチンパスポートはフランス入国後、そのままヘルスパスにはならない

   

将来的に2次元コードを搭載予定・・???


 海外に住んでいると、時折、人伝てに、「日本から〇〇さんの親戚の子がフランスに留学する(あるいは、旅行する)から、何かの時に力になってあげてほしい・・よろしく・・」などと頼まれることがあります。

 友人・知人などが日本から来てくれるのは嬉しいことですが、旅行の場合は、街中を案内したり、メトロやバスなどの乗り方を教えたり、買い物や食事の際に多少の通訳まがいのことをする程度で、実際には、大してお力にはなれてはいません。

 しかし、留学やワーキングホリデーなどの長期滞在ともなれば、旅行ではなく、実際に生活をしていかなければならないとなると、色々なことが起こります。

 現在は、パンデミックのために、旅行者は激減しましたが、留学に関しては、フランスは、一定の手続きさえすれば、受け入れを開始しており、9月の新年度から、留学生はフランスに入国し、フランスでの学生生活を始めています。

 先日、しばらく連絡をとっていなかったパリ在住の日本人の友人に会って、「どうしてたの?」と聞いたら、日本のお姉さんの知り合いの子が9月からフランスに留学することになって、アパートを探してあげたり、必要なものを揃えてあげたり、様々な手続きを手伝ったりして、結構、忙しかった・・」そうで、学校のために必要な書類上の手続きは、大方、日本から済んでいたそうですが、一番、手こずっているのが日本のワクチンパスポートだと言うのです。

 もちろん、日本を出国し、渡航する際には、ワクチンパスポートが必要なため、ワクチン接種を済ませ、日本のワクチンパスポートは持っていたのですが、日本のワクチンパスポートには、QRコードがついていないとかで、フランス国内でのヘルスパスとして、そのまま使用することができないのです。

 現在、多くの場所でヘルスパスが求められるために、日本のワクチンパスポートをもとに、フランスでヘルスパスとして使用できるQRコードを取得するには、またさらに、手続きが必要なのだとか・・。

 日本を出発する前から頼んでいた(フランス大使館・サイトからフランスのQRコード付きのヘルスパスの申請ができますが、時間がかかるらしい)QRコードが出発時には間に合わず、フランスで再び、申請し直したようですが、学校が始まったと言うのに、まだ届かないのだそうです。

「外国人旅行者・学生向けヘルスパス・フランス大使館」

 ちょっと食事をしに行こうと思っても、QRコードチェックならば、一瞬で済むものを日本のワクチンパスポートを持って、「ワクチン接種は済んでいる、QRコードは申請中」と説明し、お店の人を説得しなければならないのだとか・・。しかも、これが、必ずしも通るとも限らないのです。

 レストラン側は、それでも商売なので、大方、納得して、通してくれるそうですが、まだまだフランスでの生活・フランス語に慣れていない留学生にとっては、なかなか厄介なことです。

 それでさえも、どこでも納得して通してくれるわけではなく、映画館、美術館などは、頑として認めてくれないところもあるようです。書類などは、偽造が簡単で、旅行者と偽って、その手の書類を認め出したら、統制が取れなくなりますから、拒否する側の気持ちもわからないではありません。ましてやいい加減なことをして、それが発覚したら、たちまちお店側(受け入れ側)は、罰金、あるいは営業停止になりかねないのです。

 現在のところ、パリの街を歩いていても、日本人の観光客らしき人を見かけることはありませんが、たとえ、日本のワクチンパスポートを持ってきても、入国はできても、観光をするためには、PCR検査を受けなければならないということになります。

 もともとQRコードを発明したのは、日本人(自動車部品メーカーのデンソー(愛知県)の開発部門)だというのに、ここぞという時(今回の場合は、ワクチンパスポート)に日本でそれが使用されていないことは、とても残念です。

 現在、日本に入国する際には、空港に到着した時点で、何重にも書類のチェックが行われているそうですが、それはそれで厳重で良いことだとは思うものの、QRコードでチェックできれば、それだけの人出も手間もかける必要はないわけです。

 どうにももどかしい日本のワクチンパスポートの現実を日本からパリにやってきた留学生から、再び思い知らされることになりました。

 現在は、フランスに旅行・出張等する人も少ないとは思いますが、フランスにおいでの方は、その辺のところ、十分ご注意下さい。

 フランスでは、現在、ヘルスパスがないと、レストランにも美術館にも、デパートにも行くことができません。


日本のワクチンパスポート フランスのヘルスパス QRコード


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2021年9月1日水曜日

フランス政府の何があっても押し通すチカラ

   


 よく、フランス人がある程度以上の人数で、口泡飛ばして話に夢中になっている様子を側から見ていると、人の話をきいているのか、いないのか? 何人もの人が同時に話していて、周囲の人が意見を差し挟んでも、平気で、同時に話し続ける、まるで「朝まで生テレビ」の討論会のようだと思うことがあります。

 要するに、議論が好きで、言いたいことを言い、自己主張をすることが美徳とされるのは、子供の頃からのフランスの教育によって培われているもので、議論とはいえ、必ずしも解決の糸口を探ることが目的でとは限りません。

 それぞれが、人の話を聞くよりも、自分が話すことが重要なので、平行線のまま会話が進むことも少なくありません。

 それは、政府と国民の関係にも同じことが言えます。

 今回のパンデミックのように、何かが起こっても、とりあえず、物申す人は多くいて、何かといえば、デモが起こって国民は声を上げますが、フランス政府は、デモは国民の当然の権利として認めながらも、現在はSNSなども使って、テレビ番組に積極的に登場して、説得を続け、その態度は、決して揺らぐことはありません。

 煮え切らない曖昧な態度は、国民の反感を買う内容の政策以上にNGです。言いたいことははっきりと言い、それが通じない人がいたとしても、あくまでもそれぞれが自己主張を続け、平行線のままでも、押し通していきます。

 民主主義、自由、連帯などのワードとともに、かなり強引に推し進めていく様子もユニークでもあります。

 フランス名物と言っても良い、時としてテロの原因になったりする風刺画などは、日頃、言いたいことをはっきり言いすぎる?フランスでは、それを楽しむ人もいれば、逆に多くの言葉で語られる以上に、怒りの着火剤になったりするのも不思議です。

 今回のヘルスパスの問題にしても、ヘルスパス起用の発表以来、7週連続でデモが起こっていますが、デモはデモとして、デモの権利は認めながらも、政府は、さして問題にもしていません。

 全国規模のデモにも動じず、最近では、そんな中でも、ヘルスパスについて、政府は堂々と勝利宣言を始めました。実際にワクチン接種が進み、効果が現れ始めた今、それに付随する問題が生じたとしても、その新しく付随して生じた問題に対しては対処していきますが、その本髄が揺らぐことはないどころか、勝利宣言をして、自画自賛も忘れません。

 結果として、事態が好転していけば良いわけで、押し通したもの勝ちになります。

 正直、私は内容にもよりますが、デモをする人の気持ちがあまり、わかりませんが、現在のヘルスパスに関して言えば、ヘルスパス反対のデモは、圧倒的に劣勢ですが、それでもデモを続ける人々は、結果的に自分たちの意見が通らず、平行線のままで、結局は、政府の方針どおりになったとしても反論をし続けることに誇りを抱いているのです。

 それは、ちょっと、辺りの一般人がこぞって議論しつつも、それぞれが言いたいことを言い合って、答えの出ない会話にそれぞれがご満悦な様子と少し似ている構図のような気もします。

 時として、政府が間違った方向に進もうとした時、また、社会で許容できないような事件が起こった時などに、黙認するのではなく、声を上げる事も必要な時もあるのではないかと、私は、フランスに来て以来、少しだけ思うようになりました。

 それは、直接的な結果には繋がらなくとも、時には意味のあることなのかもしれないとも思うのです。

 とはいえ、国の決定は大きなもので、常に結果が求められるものではありますが、揺るがずに発信を続け、国を牽引していく少々強引なチカラが、現在のパンデミックのような状況には必要不可欠であるのではないかと思っています。


フランス政府 発信力


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2021年8月31日火曜日

ヘルスパス 職場でのヘルスパス提示義務化に伴う職場内の摩擦

   


  フランスでは、今週から、ヘルスパスの提示義務が職域にまで求められるようになりました。つまり、同じ職場内で、従業員のヘルスパスをチェック・管理することが必要になったわけです。職務上以外のことで、人をチェックし合うというのは、あまり気持ちの良いものではありません。

 現在の段階では、全ての職場でというわけではなく、レストラン・カフェ、映画館、美術館などの文化・娯楽施設、スポーツ施設、一部のコマーシャルセンター・デパートなどの顧客に対してヘルスパスの提示が求められる場所においての人と接する部門で働く従業員に対してのものであり、フランスでは、約180万人がこれに該当します。

 現在、フランスのワクチン接種率は74.3%までに上昇していますから、そこまでの大問題には、発展しにくいとは思いますが、とはいえ、頑なにワクチン接種を拒否、ヘルスパスに反対する従業員を抱える企業では、少なからず、摩擦が生じています。

 元来、フランスは、労働者の権利が強く守られている国で、一旦、正規採用した場合の従業員の扱い、特に解雇に関しては、法律で強く守られており、今回のような、ヘルスパスが提示できない場合(=ワクチン接種拒否)は、給与が支払われない=解雇同然、というような図式のケースは、元来のフランスの労働者保護の観点から考えれば、かなり異例なことです。

 現在のところは、まだスタートしたばかりなので、たとえ、ヘルスパスの提示ができなかったとしても、他の部署への異動や、説得などの話し合いが持たれることが先決なので、そこまで深刻な事態は、浮上してきていません。

 しかし、国の決定とはいえ、顧客に対して行うヘルスパスのチェックと職場の中でお互いのヘルスパスをチェックし合うという図式は、職場全体の意志統一ができていない限り、職場内で不穏な空気を生み出します。

 と言っても、今回の場合は、経営者側もこれを遂行しない場合には、企業全体が営業停止になる恐れがあるため、これを回避することはできません。

 このような強制的な管理体制を敷くというのは、まことにフランスらしくない、フランス人には受け入れにくいことであるに違いありませんが、(それ故、7週間連続で反対デモも起こっている)すでに1年半以上も続いているパンデミックという異常事態ゆえ、フランス人とて、多くの人が受け入れざるを得ず、このヘルスパスに追い立てられるようにして、ここまでワクチン接種率も上がってきたのです。

 しかし、このワクチン接種の有無による不穏な対人関係は、企業内だけでなく、家族の中でも生まれ始めています。家族の集まりに際して、(誰かの誕生日パーティーや冠婚葬祭など)ワクチン接種をしていない者は参加してほしくないとか、それでも参加したい、家族に会いたいという摩擦で、家族関係にヒビが入ってしまった・・などというケースも少なくありません。

 もともと、コロナウィルスという病気は、人との接触を避けなければならないという残酷な側面を持つウィルスではありますが、ワクチンが誕生したことで、それが回避できると思いきや、そのことで、一層、凝縮した人間関係のいざこざが、また別の形で生じてしまうことに、やるせない気持ちになります。

 しかし、そこで、ちゃっかりした人もしっかり現れるのがフランスで、ワクチン接種を拒否している人が早々に医者に頼み込んで、ドクターストップ(Arrêt Maladie)の書類を書いてもらい、3ヶ月間の病気のための休職手続きをとってしまう人まで登場しています。

 医師の書いたドクターストップによる休職の場合、企業側は当人の病気についての詳しい事情について追求することはできず、この期間、少なくとも給与の半額は保障されます。つまり、ヘルスパスを提示できない場合に、無給になってしまうことを避けて、とりあえず、給与の半額が保障される方法をとるわけです。

 しかしながら、このヘルスパス提示義務の終わりが見えているわけではなく、永遠にドクターストップの書類をもらい続けて生活を続けることは不可能で、問題を先延ばしにしているに過ぎません。

 もっとも、この期間にヘルスパスの提示が必要のない転職先を探すという道もあるにはありますが・・。

 あくまでもワクチン接種は義務化したわけではないと言いながら、事実上の義務化のような状態に、「強制はできない・・しかし・・」といった曖昧な、どうにもおさまりが付きにくいモヤモヤした状況が生じています。

 そんな状況をよそに、政府側は、「フランスはヘルスパスの成功を収めた!」「他国の多くの国がフランスのヘルスパスに追随している!」と得意の自画自賛を始めています。

 たしかに、このヘルスパスがなければ、いつまでも、レストランやバー、その他の文化施設なども、閉鎖状態が続き、人々が現在のような、ほぼ日常に近いような生活を取り戻すことはできなかったかもしれないし、ここまでワクチン接種率が上がることもなかったかもしれません。

 とりあえずは、3日に1回、PCR検査を受け続ければ、ヘルスパスとして、使えるので、どうしてもヘルスパスを受け入れられない人々は、PCR検査をし続ける意外、他に道はありません。しかし、10月半ばにPCR検査が有料化すれば、それさえもあまり現実的な話ではなくなります。

 そして、実際に、経営者とヘルスパスを拒否する人々との間の話し合いが決裂し、解雇同然の状況になり始めた時、ヘルスパス反対、ワクチン接種をする人々がおとなしくそれを受け入れるのかどうかはわかりません。

 9月の半ばには、医療施設・高齢者施設勤務の従業員(医療従事者及び医療施設の職員)に対しては、ヘルスパスではなく、ワクチン接種の義務化の期限を迎えます。これは、PCR検査で乗り切ることはできません。

 フランスの感染状況は、少しずつとはいえ、減少傾向に向かい始め、概ね、フランスのヘルスパス政策は成功したかに見えていますが、万人が両手をあげてそれを歓迎しているわけではないのです。


職域によるヘルスパス提示の義務 フランス


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2021年8月30日月曜日

フランスに来てからの食生活の変化 


バゲットに分厚く切ったエシレバター とりあえず手っ取り早くて美味しいもの

 

 思い返してみれば、フランスに来てから、私の食生活はずいぶん変わったなぁ〜と思います。まぁ、変わったと言っても、フランスに来てからすでに随分、時が経っているので、子供ができたり、状況も違うので、一概に国が違うせいとも言い難いのですが・・。

 日本にいた頃は、外食も(と言っても、食べるというより、飲み歩いていただけだけですが・・)かなり頻繁で、しかも、数軒にわたって飲み歩いて、夜もかなり遅くなったりもしていたのですが、フランスに来てからは外食はめっきり減って、夜、遅くまで飲み歩くということもしなくなりました。

 まあ、子供がいたこともあるのですが、大体、フランスでは外食が高い上、治安も日本ほど良くないので、夜、遅くまで飲み歩くということも、なかなか躊躇われ、どちらかといえば、友達と飲んだりするなら、家で・・となることが多いのです。

 思えば、日本にいた頃は、自分で言うのも何なんですが、よく言えば? 私は、結構な酒豪で、(全然、よく言ってないかも・・)とにかく、よく、飲んでいました。あの頃は、飲み出せば、そんなに食べなくてもいい感じで、よく塩で飲めるなどと言いますが、まさに塩もいらないような感じでした。

 どんなに夜、遅くなっても、途中、記憶が曖昧なことがあっても、不思議なもので、しっかり家に帰っていて、朝、起きると自分のベッドで洋服を全て脱いで寝ていて、朝、起きると自分が脱いだ洋服がベッドの脇に脱いだままの形で置かれていて、しかも、ブラジャーまで丸い形のまま(ホックを外していないということ)捨て置かれていて、どうやって脱いだんだろう?と、一人で苦笑してしまうこともありました。

 まぁ、それだけ若かったということもあるのでしょうが、フランスでは外でそんなに飲むことはありません。実際に治安も良くないので、警戒心が働いて、そこまで飲む気にもなりません。

 食生活については、日本のように食べたいものが、いつでもどこでも簡単に買えるわけでもないので、何でも自分で作るようになりました。食べたいものが、どこでも手軽に気軽に買えないので、仕方ないのですが、こちらで手に入れることができる材料を工夫して作ることが楽しくなりました。

 何も作りたくなければ、最も手っ取り早くて確実に美味しいのは、バゲットとバター、チーズです。下手な外食をするよりも、確実に間違いなく美味しいので、バゲットやバター、チーズは、ものすごく食べることが多くなりました。

 それでもパリは、海外にしては、かなり日本やアジアの食品が手に入る場所ではあるのですが、それとて、それなりの場所に買い物に行かなければならないし、特に、このパンデミックの間などは、食料品の買い物とて、外出できる距離まで制限されていた時期もあったので、その何でも自分でどうにかして作るという作業がレベルアップしたような気がしています。

 手に入りづらい納豆やさんまなどがある時などは、もう納豆とご飯だけで、さんまを焼いただけで、もうこの上ない幸せを感じることができるのです。

 狭いベランダで日本のきゅうりやしそ、みつば、小ネギ、さやえんどう、ニラ、小蕪などを育てたり、自給自足とまでは行かないまでも、野菜を育てたりする楽しみも覚えました。

 あらためて考えると、日本にいた頃よりも、ずっと日本食を自分で作っていて、日本にいた頃よりも食べるようになっていることが、少々、妙な気がするというか、皮肉な気もします。

 お酒は、以前よりも量は減ったものの、ちゃんと飲んでいます。(ちゃんと飲んでますなんて、薬かよ?って感じだけど・・)

 私の育った家庭では、(もちろん、子供の頃は飲みませんでしたが・・)食事の時は、飲みながら・・という感じだったので、日本では、家では、まずはビール、そしてその後は食事に合ったお酒を飲んでいましたが、フランスでは、それこそ日本酒や焼酎などは、高価で、そうそう簡単には手に入りません。

 一時は、わりとどんな食事にも合う、ウォッカにハマり、買い物に行けば、小さかった娘がウォッカの置いてある場所に走っていって、大きな声で「ママ〜!!おっか!おっか!あったよ〜!」などと叫ぶのを止めるのに必死になったりしたこともありましたが、結局のところ、最近は、結局のところ、もっぱらワインに落ち着いています。

 フランスでは、やっぱり、ワインが一番、コスパが良いようです。それも、いかにも有名なワインではなく、安くて美味しいものを見つけるのがなかなかの楽しみになっています。最近は、フランスでは(特に若者の間では、)もっぱらビールやその他の水や炭酸で割って飲むアルコール類が代等してきているようですが、私は、もっぱらワインです。

 食生活に関しては、日本ほど満たされている国はないと思うのですが、たまに帰国すると限られた期間に狂ったように食べまくる私も、もしも、実際に日本で再び生活することがあったら、私は、どんな食生活を送るんだろうか? どこから手をつけたらいいかわからないほどの食品に戸惑いを感じるのではないか? とさえ思っています。

 いずれにせよ、食べること・お酒を飲むことが大好きな私、どこで暮らしていても、食生活が生活における大きな位置を占めていることに変わりはありません。


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2021年8月29日日曜日

ヘルスパス反対デモ7週目 地域ごとのワクチン接種率・デモ動員数・感染率は連動している

   


 このヘルスパス反対のデモは当分の間はなくなることはないでしょう。

 ヘルスパスの起用が発表されて以来、ヘルスパスの効力も適用範囲も徐々に拡大されている中、いよいよそれは、来週から、職域にまで(ヘルスパスの提示が求められる場所で働く主に人と接する職業に対してヘルスパスが求められる)及ぶことが決定しており、また、多くの人がバカンスから戻ってきた今、デモが止む理由はありません。

 この職域に及ぶヘルスパスの適用は、ヘルスパスの提示ができなければ、給与が支払われなくなるというかなり厳しいもので、事実上の解雇に近い強行なもので、ヘルスパス(ワクチン接種)反対の人にとっては、生活のかかった深刻な状況に陥ることになります。

 しかし、現在のフランスのワクチン接種率は74.3%にまでなり、ワクチン接種はしても、政府の強行なやり方に反抗している人という層を除けば、デモに参加しているのは、ワクチン未接種の残りの25%程度の人です。(とはいえ、16万人の結構な人出ではありますが・・先週よりも減ってはいます・・)

 つまり、国民の大半はワクチン接種を既に済ませているわけで、ヘルスパスが起用されることが決まった段階で、急激にワクチン接種が進んだだけでも、半ばヘルスパスは成功したとも言えます。

 ここ一週間ほどで、ほんの僅かではありますが、フランスの感染者数は減少傾向にあり、これもまた、ヘルスパス起用の効果が表れ始めたとも言われています。

 とはいえ、このヘルスパス反対のデモは、フランス全土にわたる大掛かりなもので、その動員数は、7週間の間に、地域的にも差が表れ始め、ワクチン接種率が低い地域ほど、デモの動員数が多いという当然ではありながらも、さらに感染の危険を増大するというさらに皮肉な結果を生み始めています。

 つまり、地域ごとによるワクチン接種率とデモの動員数、そして感染者数は、規則的に連動しているわけです。

 特にフランスの南東部では、ヘルスパスに対する反抗勢力が強く見られます。

 これは、単にワクチン接種だけではなく、格差社会における社会への反抗の側面もあります。これらの人々は既に植え付けられている価値観に支配されて、聞く耳を持たず、視点や思考を拡げることができません。

 しかし、政府側は、大半がワクチン接種を進めている現状に、もはやデモはあまり問題視はしておらず、はっきり言えば、「言いたい奴には言わせておけ」という状態で、オリヴィエ・ヴェラン保健相は「ヘルスパスの成功に直面して、抵抗は落ちている」と語り、それがまたデモ隊の反感を買っています。

 とはいえ、8月30日からはヘルスパスの効力が職域にまで拡張されるのに続いて、9月15日には、医療従事者のワクチン接種義務化による問題が再浮上するのは必須、10月には、PCR検査の有料化が待ち構えています。

 このままでいくと、この秋の感染状況も影響してくるとは思いますが、その全てが落ち着く、少なくとも10月末までは、このデモは続くと思われます。

 それにしても、土曜日の度にデモ、街中への外出も躊躇われるし、ましてや、デモ隊が行進する近隣の店舗、商業施設、レストランなどにとっては、とんでもない営業妨害です。

 レストランはともかく、多くの店舗が日曜日には営業しないフランスで、土曜日の営業妨害が続くのは、それこそ大変な損害です。ロックダウンによる閉店には、政府の補償金が支払われていましたが、デモのための補償金が支払われることはありません。

 言いたいこと、抗議したいことを訴える権利は認められるべきだとは思いますが、いいかげん、大概にしてもらいたいものです。


ヘルスパス反対デモ フランス


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2021年8月28日土曜日

来週から新年度の学校再開に向けて、学校で週60万回の唾液検査実施

   



 フランスの長い長い夏休みのバカンスももうすぐ終わり、来週、9月2日(木)からは、新年度が始まります。

 現在のフランスのワクチン接種率は、国全体で74.3%にまで上昇してきているものの、一番最後にワクチン接種が開始された12歳から17歳の年齢層に関しては、57%にとどまっています。

 科学評議会(Conseil Scientifique)は、現在のところ12歳以下の子供に対しては、ワクチン接種は行われていないため、他の年齢層の生徒達も併せて、新年度が始まれば、1日あたり、5万人の子どもたちの感染が起こるであろうとの懸念を示しています。

 しかし、フランス(本土)は、「新年度の開始を延期する理由はない。新年度の開始を延期することは、極端な場合にのみ取られるべき措置である」とし、新年度の学校開始は、従来からの予定どおりに9月2日(木)とすることを発表しました。

 感染状況が極度に悪化している一部の海外圏(グアドループ・レユニオン・ギアナ)については、当面の間、9月13日まで、新年度の授業再開が延期されることになりました。

 ジャン・ミッシェル・ブランケー教育相は、この新年度の開始について、各学校での厳重な衛生対策とともに、週60万件の学校での唾液検査を行うことを発表しています。



 ワクチン接種率が低い子供たちの間での感染から感染拡大が懸念される現在のデルタ変異種の対策として、学校を通常に近い形で再開するために、頻繁にテストを行う対策を取っています。

 また、8月30日からは、ヘルスパス(2回のワクチン接種済の証明書、72時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)がないと働けなくなる職業には、主に人と接する職業が該当していますが、教師もまた、このヘルスパスが必要な職業の一つになっています。

 教育省がイプソス世論調査機関に調査を依頼した結果、現在のフランスの全国の教師のワクチン接種率は、89%(78%が2回接種済み、11%が接種過程(1回接種済または、接種予約済み)がワクチン接種済みであることがわかっています。

 現在のところは、教師はワクチン接種が義務化されている職業ではないとはいえ、ヘルスパスがないと働けなくなる職業であることには変わりなく、現在の段階で、ワクチン接種をしていない残りの11%の教師に関しては、当面の間は、PCR検査を週に2回受け続けることが必要になります。

 教育相は、今年の初めから政府が示している方針どおりに学校閉鎖は最終的な手段であるとし、これまでも完璧であったとは言えないものの、できる限りの対策をとりつつ、学校の授業を続けていることは、やはりフランスが誇るべきことの一つであると語っています。

 しかし、今後の感染状況によっては、新たな対策を講じていくとしています。

 学校の新年度の再開は、18ヶ月以上も続いているパンデミックに対して、逃げ続けるだけでなく、対策を講じて、立ち向かい、是が非でも日常生活を続けていくためのフランスの大きなハードルの一つでもあります。


学校再開 唾液検査


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