2024年5月10日金曜日

不妊治療対応のための二十歳前後の女性への不妊検査の無料化と卵子自己保存キャンペーン

  


 マクロン大統領が女性誌 ELLEのインタビューで語った少子化対策と不妊治療対策が話題を呼んでいます。彼はこのインタビューの中で、「ダイナミックな出生率を生み出す」という自身の願望を発表し、医療補助出産(PMA)へのアクセスを改善すると約束しています。

 出生率を高めるための計画は、今年1月の段階ですでに発表されていましたが、女性にとって重要と考えられるいくつかのテーマを取り上げたこのインタビューで、彼はあらためて、「子供を持ちたくない人々に罪悪感を感じさせてはなりませんが、私たちの社会保障組織が充分でないことが女性や家族が望むなら子供を産むことを妨げてはなりません。」と述べています。

 そのひとつとして、これまでの育児休暇に代わる措置として、出産休暇を設け、母親には 3 か月、父親には 3 か月、子供の生後 1 年間は累積され、社会保障の上限 (1900 ユーロ) まで給与の 50% が補償される(雇用主は希望に応じてこの金額を補うこともできる)システムを構築し、2025年8月の発効を目指しているといいます。

 これにより、親は現行の育児休暇(金額は429ユーロに設定)よりもはるかに高い報酬を受け取ることができるようになるはずだとしています。

 一方、これにも増して衝撃的な感じがしたのは、不妊治療についての対策で、「二十歳前後の「不妊検査」がすべての人に提供され、健康保険によって払い戻されるシステム」と「将来子どもを持ちたい女性のために、卵子の自己保存を支持するキャンペーン」の実施です。

 そして、現在のPMA(不妊治療)にアクセスするまでの待ち時間(現在16~24か月)を短縮するために、「これまで病院施設のみが利用していた卵子の自己保存を民間センターにも開放する」ことを発表しています。

 フランスでは、FIV(体外受精)の費用を平均4,000ユーロ、 IAC (配偶者の精子による人工子宮内授精) の場合は、平均 950 ユーロと言われていますが、これらの各処置は健康保険によって評価および価格設定され、その結果、ケアシートが発行され、人工授精や体外受精にかかる費用を全額補償してもらうことが可能です。

 それにしても、不妊検査を二十歳前後に行うというのも、二十歳前後以上から~ということだとは思いますが、今どき、その年ごろの女性がすでに子どもが欲しい・・子どもを持つことについて、どの程度、真剣に向き合って考えているかは疑問でもあります。

 しかし、一方でこのようなことがあれば、考えるきっかけになり得るとも言えるかもしれません。

 まあ、とりあえず、検査を受けておいて、治療が必用ならば、早く治療しておいた方がよいということなのでしょうが、現実的にそれが拡まっていくかどうかは、わかりません。

 また、この不妊問題について、彼は、代理出産(GPA)については、反対の立場をあらためて、表明しており、「これは女性の尊厳に反するものであり、女性の身体の商品化の一形態である」と述べています。

 実際に私のフランスでの友人の中には、当然、娘を通じて知り合っていることも多く、ママ友とか、すでに子どもが何人かいる状態で知り合いになっているので、あまり、このような話は聞いたことがなく、日本の友人たちは、子どもも何もシングルを貫いている人も結構多いので、具体的なことは正直、わからないのですが、悩みを抱えている人にとっては、切実なことです。

 しかし、数年前に結婚した娘の友人が、結婚だけでも「えっ?もう結婚するの?」とびっくりしたと思ったら、「彼女、今、子どもが欲しくて、欲しくて、不妊治療をしている・・」という話を聞いて、さらにびっくり!まだ20代半ばなのに、そんなに急ぐ?と思ったくらいですが、彼女は無事に妊娠して今は、もうママになっています。

 本当にこの不妊についての悩みを持っている人がどれだけ切実に悩んでいるかはかなり大変な様子。子どもは欲しくないというのも自由だと思いますが、この出生率が低下しているなか、子どもが欲しいと思う人のために国が手を差し延べてくれるのは、とってもありがたいことなのではないか?と思います。


フランスの少子化対策と不妊治療


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2024年5月9日木曜日

オリンピック聖火がマルセイユ港に到着! 

  


 オリンピックの聖火がマルセイユに到着する!というのは、数日前から聞いていました。しかし、それは、想像を遥かに上回るお祭り騒ぎぶりで、あたかも、もうオリンピックの開会式?と思うほどの盛り上がりぶりでした。

 それがマルセイユであったということもお祭り騒ぎぶりを大きくしているような気もしますが、その華々しい聖火到着のセレモニーは、さすがにこういった催し物を美しく盛り上げるのがフランスは上手い!と思わせられるものでした。

 オリンピックの聖火リレーというものがあることは聞いたことがありましたが、そのオリンピックの聖火はこんなに華々しく迎えられるのを私は初めて見た気分でした。

 ギリシャから地中海を横断して12日間を経て、オリンピック聖火は今週水曜日、5月8日早朝、マルセイユ港に到着。オリンピック聖火の到着式はまず、近港北部、南部の港でこれを護衛するために登録された1,024隻のボートによる大規模な海上パレードで始まりました。

 これだけ大規模なパレードを海上で行う風景はさすがに圧巻で、お天気にも恵まれ、夕刻には、虹がかかる瞬間まで加わり、最高の盛り上がりを見せました。セレモニーは、長い時間続き、パリ祭さながらのトリコロールのひこうき雲をはいて飛行機が飛び、夜には見事な花火もあがり、マルセイユは大熱狂に包まれました。

 マルセイユといえば、ふだんは事件がらみのニュースを聞くことが多いのですが、この日ばかりは、華やかな明るいマルセイユの光景が映し出され、空撮も含めて美しいマルセイユを見ることができました。

 つい先日まで、マルセイユは、このオリンピック聖火の到着を前に、ゴミ収集業者が賃上げ要求のためにストライキを起こしており、街には、未回収のゴミが山積みになり、悪臭を放っているというニュースを見たばかりでした。

 このゴミ収集業者のストライキはどうなったのか?全然、わかりませんが、このマルセイユ全体のオリンピック聖火到着の盛り上がりぶりを見ていると、そんなことは忘れてしまいそうです。

 マクロン大統領もマルセイユにかけつけ、「長年、準備してきたオリンピックはもう始まった!」とかなり高揚した表情で語っていました。

 マルセイユ市民のみならず、このオリンピック聖火到着の模様を見に、多くの地域から人々が集まり、熱狂的にこの聖火の到着を喜び、マルセイユ市民たちは、「世界の中心はマルセイユだ!」とでも言いたげに、「世界がマルセイユに注目している!」と興奮してインタビューにこたえている人もいました。

 フランス人って、そんなにオリンピック好きだった?と思ってしまうほどの興奮ぶりで、私は、パリにいるので、周囲の人々を見ても、少々、マルセイユとは温度差は感じるものの、基本、お祭り騒ぎが好きな人たち、こういうお祭り騒ぎがあると、やっぱりラテン系の人たちなんだな・・と感じます。

 これから、この聖火は7月26日パリのオリンピックスタジアムの聖火台に点火されるまで、ツールドフランスの3倍に相当する距離、60以上の県を通過しながら、その模様を中継し、フランス各地の美しい景色を全世界にアピールすると言われています。

 オリンピック本番はもちろんのこと、この聖火の長距離の旅には、大変な警戒体制がとられることになっているそうで、すでに1月付けの内務省の機密文書には、「聖火リレーに係るリスク分析・評価」と記された15ページにもわたる文書が作成されており、聖火リレーの間に発生する可能性のある主な危険地域がリストアップされています。

 オリンピックの聖火リレーの際には、毎度、これをなんとか消そうとする人が表れるようで、2021年7月、日本では茨城県での聖火リレー中に、デモ参加者が水鉄砲を使ってオリンピックの聖火を消そうとしたり、 5年前の2016年7月、ブラジルではサンパウロ近郊で、ある人物が消火器を使って車列を妨害し、2012年ロンドンで、群衆の中に水の入ったバケツを持った男性が登場したという記録も紹介されています。

 こういっては、身もふたもありませんが、その第一に挙げられそうなマルセイユでの聖火到着は、無事終了し、真っ青な海に浮かぶ千隻以上の白い帆船が散らばる中、トリコロールの噴煙が上がる様子は絶景で、マルセイユの海ってこんなに青かった?とあらためて美しいところだな・・などと思いました。

 これからオリンピックの開会式まで2ヶ月ちょっとの聖火リレーの旅ですが、このマルセイユでのセレモニーは、特別なのでしょうが、聖火が到着するだけで、この騒ぎ、このセレモニーですから、オリンピック本番ともなれば、きっとすごい盛り上がりになるのだろう・・とちょっと、怖いような、でも楽しみなような気もしてきました。


オリンピック聖火マルセイユ到着


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2024年5月8日水曜日

RER E 線 ナンテール、ラ・デファンス、サンラザール駅まで開通

  


 私がフランスに来て以来、パリ及びパリ近郊の公共交通機関は、ずいぶん変わりました。その代わりと言っちゃなんなんですが、いつもどこかで工事中な感じですが、ずいぶん新しい駅や新しい路線が様々な既存の線との乗り入れが可能になり、今回は、RER(パリ郊外線)E 線がナンテール、ラ・デファンス、からサンラザール駅まで開通したというので、様子を見てきました。

 日頃、私は、あまり郊外線に乗ることはないので、せいぜい、RER A,B,C 線の一部・・正直、E線なんて、あったっけ?という感じでしたが、このE線がラ・デファンス駅、サンラザール駅まで開通するとなると、これまで他の路線を利用していた人々(A線など)が、それぞれの利便性により、このE 線に路線を変更することも可能になるわけです。

 政府は、このパリおよびパリ近郊の公共交通機関を充実させていくことを「ポピュラーエコロジープロジェクト」と呼び、少しでも通勤等に少しでも車を使わなくてもすむようになることを目指していると言っています。

 このE 線がラ・デファンスまで開通することはおそらく非常に大きいことで、ラ・デファンスは、新凱旋門(ラ・グランダルシュ)を中心に作られているヨーロッパ最大のオフィス街で、グランダルシュ周辺には、近代的な高層ビルが立ち並ぶ、ここほんとにフランス?と思うような近代的な建物ばかりの場所で、大勢の人が働いている街なのです。

 これまでも当然、ラ・デファンス駅は存在していたのですが、E線が新しく乗り入れるとなれば、駅やその乗り換えのための通路などは、新しく作られたもので、また拡張されるとなると車両も現在は新しいものが追加されています。

 数ヶ月後にパリオリンピックを控え、パリでは他の路線でもずいぶんと新車両が増えていますが、私にとっては、E線は初めてです。


 とりあえず、E線のラ・デファンス駅に行ってみましたが、まあピカピカのキラキラ・・。まだ新しくてピカピカということもありますが、デザイン自体もキラキラな素材を使ったキラキラな壁。まだ、平日は午前 10 時から午後 4 時までとラッシュアワーを避けての運転しかしていないこともあり、駅も電車も人はまばらな状態です。



 また、車内が見たこともないカラフルな色調とライティング、パリの他の車両ではあまり見ることが少ないつり革みたいな取っ手がついていたり、途中で車内のライティングがブルーになったりオレンジになったり、まだ空いているせいもあるのでしょうが、なんだかアトラクションに乗っているような気さえしてくる感じでもあります。

 これが通勤時間帯の満員状態だったら、どんな感じなのかな?と、想像がつきません。

 車両のフロントもちょっと丸い感じと速い感じが混ざった感じで可愛いです。撮り鉄みたいな少年も来ていました。

 


 しかし、駅にしても車両にしても、今までとは少しずつ違う感じで、ちょっと面白かったです。 

 でも、きっと、このキラキラでピカピカなきれいな駅も電車もあっという間に汚くしてしいまうのがパリですが、せっかくお金をかけて作ったきれいな駅と電車。きれいに保ってほしいです。

 この延長工事は、まだ終わっていないそうで、このE線はさらに長くなり、最終的には、2026年12月に完成予定だそうです。


RER E線 ラ・デファンス ナンテール


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2024年5月7日火曜日

フランスの保険証カード Carte Vitale カルト・ヴィタル

 


 日本でマイナンバーカードやマイナンバー保険証がスムーズに移行していかない話を聞いて、あらためて、フランスはいつのまに保険証のカードが全て電子化されたんだったっけ?と、思い出してみました。

 フランスの保険証カード・通称 Carte Vitale(カルト・ヴィタル)は、今では全国民があたりまえのように持っていて、医者や薬局に行く際には、必ず必要な保険証のカードです。

 このカードには、ICチップが入っていて、それぞれ、個々の社会保険ナンバーと名前が記入されており、ICチップには、医療費の払い戻しと入院時のケアの提供に必要な情報が全て含まれています。

 考えてみれば、私がフランスに来たばかりの頃は、医者にかかるたびに、この払い戻しを請求する用紙を医者からもらって、必要事項を記入して、毎回、セキュリテ・ソーシャル(社会保障事務所)に提出(送付)しなければならず、払い戻しにもずいぶん時間がかかっていました。

 今は、このカードを診察時や薬局、あらゆる医療機関に行くときは、必ず、このカードを求められます。このカードがあれば、自動的に1週間以内に払い戻し分が自分の口座に振り込まれるようになっています。

 また、長期疾病(ALD)、出産、労働災害、または職業上の病気に関連したケアを受けている場合、自己負担金が免除され、前払い費用も免除されます。

 子どもに関しては、16歳未満は、保護者のカードに付属するかたちになっており、16歳になると、それぞれ独立したカード、または手続きをするようにとのお知らせが送られてきます。必要に応じて、12歳以上であれば、申請すれば独立したカードを発行してもらうことも可能です。

 このカードには、これまでの診療経過、検査、投薬内容、入院履歴などの情報が含まれており、医者は、診療の際にこれにアクセスすることができるために、より正確な治療や処方が可能になります。

 私自身は、自分で服用している薬の名前を全部、自分で覚えていないので、一応、薬のリストは、持ち歩いていますが、本来ならば、このカードがあれば、医療機関ならば、そんなことも全てわかるはずなのです。

 たとえば、私が急に意識不明で入院したりしても、このカードを持っていれば、一応の既往症や最近の健康状態などがこのカードの履歴からわかるはずです。

 このカードはフランス全土で使用可能で、どこの医療機関でも薬局でもこのカードに対応しています。また、ヨーロッパ内を旅行したりする場合は、セキュリテ・ソーシャルに申請してカルト・ヨーロピアン(Carte Europeane)を発行してもらえば、欧州内の他の国でも利用することができます。

 この社会保険番号に基づいて、それぞれのアカウントというものがあるので、セキュリテ・ソーシャルの自分のアカウントを開けば、自分で払い戻し状況などを確認することもでき、カードを紛失したり、子どものカードやカルト・ヨーロピアンを申請したりすることも全てオンラインで可能です。

 フランスでは、この保険証のカードの電子化は、いつの間にか、大した反発もなく、わりとスムーズにいつの間にか変わっていたし、以前から考えると、ずっと便利で面倒な手続きがいらなくなったので、良いことしかない気がします。

 日本のマイナ保険証がなぜ?すんなりいかないのか?と思いますが、おそらくマイナンバーカードと連携していたり、マイナンバーカード自体もトラブルがあったりして、すんなり浸透していないにもかかわらず、強引に保険証まで紐づけるので、信用できないという人が多かったり、また、厚生労働省のサイトを見ると、「マイナンバーカード保険証利用に対応できる医療機関を検索できるサイトはこちら・・」などとあり、「えっ?どこでも使えるわけじゃないの?」と驚いたり・・。

 なんか、どこかがおかしいな・・とも思います。

 ちなみに、フランスは、ID(身分証明書)(ナンバー)カードは別ですが、全国民、および合法的にフランスに滞在している人には、全員が持っていなければいけないことになっています。

 また、ついでに行っておけば、税金ナンバーは、それはそれで、また別に存在し、これまた、以前は指定の用紙で手書きで申告していたものが今では全てオンライン(希望者は紙で提出することもできますが・・)でOK。

 つまり、健康保険、身分証明書、税金などのナンバーは、全て違うナンバーでそれぞれ別の官庁が管理しています。もっとも裏では繋がっているのかもしれませんが、そこまではわかりません。しかし、それぞれが電子化され、とても便利で効率的になったと感じています。

 まあ、中では、私は外国人としてフランスに滞在しているため、10年に1回の滞在許可証(IDカード)の更新は、今ではオンライン申請も可能になっているらしいですが、なかなか気が重い作業ではありますがこれは仕方ありません。


フランスの保険証カード カルト・ヴィタル(Carte Vitale)


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2024年5月6日月曜日

服従拒否で17歳の少年に発砲して死亡させた警察官 緊迫の再度の現場検証

  


 かなり大きな事件でも、その事件が発生した当時は大々的に報道されますが、その後の裁判までは時間がかかるため、結局、その事件はどう裁かれたのかは、見過ごしてしまうことが多いです。

 昨年、6月27日に警察官の銃撃により17歳の少年が死亡した事件は、当時は、当初、発砲した当人である警察官からの嘘の供述をもとにした調書が提出されたため、一瞬、不問に付されそうになったところ、SNSで事件現場の映像が公開され、警察官の供述が全くの嘘であったバレたことから、高圧的な態度の警察官の発砲により、一人の少年の命を奪ってしまったことが公になり、日頃から一部の警察の対応に不満を感じている若者たちの怒りが爆発し、大暴動が巻き起こり、一連の反警察への暴動は、全国的な規模にまで発展し、上院の報告書によると、学校、裁判所、その他の公共の建物が攻撃されたり、火を放たれたり、店舗が略奪されたり、全国で推定10億ユーロの被害が記録されたといわれています。

 この時の暴動の勢いは、相当なもので、私自身もたまたま出かけたショッピングセンターにこの暴徒たちが突然やってきて、お店の中にしばらく閉じ込められ、近隣の駅も閉鎖され、延々と次の駅まで歩くハメになったことがありました。

 結局、この警察官は、5ヶ月間、公判前拘留されていましたが、11月に釈放。現在は司法の監督下に置かれ、武器の所持や民間団体との接触が禁止され、ナンテール(事件現場)に行くことも禁じられています。

 彼は裁判所に保釈金も支払わなければなりませんが、しかし、彼は管理職として仕事に戻ることを許されています。

 この保釈金に関しては、金額は発表されていませんが、この事件後、警察官の間で彼や彼の家族に対する同情の声が盛り上がり、クラウドファンディングで160万ユーロ(約2億6400万円)が集まり、この大金が彼の妻に対して支払われているので、保釈金の支払いには何ら問題はないと思われます。

 今回、この話が再び再燃しはじめたのは、事件以来、双方(同隊していた警察官と車に同乗していた2人の少年)の供述の食い違いから真実を突き留めるために、これを担当している判事の要請で異例の再度の現場検証が行われ、現場における当事者たちの証言を求める機会がもたれ、この現場検証のために事件現場周辺には憲兵と警察官が多数配備され、警察のトラックと柵が事前に配置され、地域への立ち入りを阻止するため、近隣の屋根の上には警察官の姿が見え、現場上空ではドローンが飛行し、現場は金属製のバリケードで視界から隠されるという緊張に包まれたことから、この異例の再度の現場検証が注目され、再び、この事件を思い起こさせる結果になりました。

 しかし、供述の食い違いとはいえ、警察官は、車と壁の間に挟まれて追いつめられ、死亡の危険があったと主張しているそうで、彼らは、車の横に銃を構えて立っており、少年たち(死亡した少年と同乗者2人)は、車の中で缶詰め状態のうえ、何の武器も持っていません。警察官に銃をつきつけられ、追いつめられているの少年たちの方です。

 警察官たちは車の前ならばともかく、すぐ左に立っていて、車が横に移動することは不可能なのに、なぜ?警察官が車と壁の間に挟まれるという危険を感じるのかというのは、大変に疑問なところです。

 被害者の母親は、この事件の真実の追及を深く熱望し続けており、彼の釈放に対しても、「警察官という公権力を行使して子どもを殺しても釈放され、億万長者になった家族のもとへ帰る」ことに憤りを感じており、いずれにしても、「息子が警察官に殺されなければならなかった理由はないはずだ・・」と訴え続けています。

 これは、いかにしても、公正に裁かれなければならないことで、さもなくば、また、あの暴動が再燃しかねない・・そんな大変な現場検証だったのです。


大暴動を引き起こした警察官の発砲事件の再現場検証


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2024年5月5日日曜日

セーヌ川を浄化するためのオーステルリッツの貯水池落成

  



 オリンピックを3ヶ月後に控え、トライアスロンなどの水泳競技を行う予定であるセーヌ川の水質汚染問題が浮き彫りになったのも記憶に新しいところです。

 セーヌ川の水質が充分に改善されていないという指摘にパリ市は、このオーステルリッツの貯水池が完成すれば、セーヌ川の水質は大幅に改善されるという回答を示していました。

 オーステルリッツ駅の裏側、ピティエ サルペトリエール病院と地下鉄 5 号線の間にあるこの巨大な貯水池は、大雨が降った場合に未処理の水がセーヌ川とその支流マルヌ川に流出するのを防ぐことを目的としています。



 この貯水池は、大雨の場合に最大 50,000 立方メートルの廃棄物と雨水(汚水)を収容でき、この汚染水の流出を防ぐことができるとしています。

 これまで、暴風雨や大雨の際には、下水道の飽和を避けるために 44 か所の越流路を経由してセーヌ川に放水されていましたが、これまでオーバーフローのためにセーヌ川に放水されていた汚水をポンプシステム経由で衛生ネットワークに戻す前に貯水しておくためのものです。

 このオーステルリッツのプロジェクトにより、汚水流出日数を年間10日減らすことが可能になり、大幅に削減できるとしていますが、逆に考えれば、全く流出しないようになるわけではなく、改善されるには違いないものの、これで安心というわけにはいかないようです。

 イル・ド・フランス自然環境(FNE)協会の関係者の中には、「勢いの速い激しい雨」が降れば、新しい構造物はすぐに「飽和」してしまうだろうと断言する人もいます。

 「パリでは、下水道、トンネル、オーステルリッツのような貯水池に 190 万立方メートルの水が蓄えられており、10㎜ の小さな雨は100万立方メートルに相当すると言われており、20㎜の大雨が降ると、どこからでも水が溢れてしまう」と説明しています。

 これは、最終的には2025年から一般の人々がセーヌ川で泳ぐを可能にするために当局が約14億ユーロを投資した計画の主要な工事であり、2024 年パリオリンピック大会でのトライアスロンなど水泳競技の開催により、この歴史的な習慣の復活を祝うものであり、オリンピックはこの取り組みを大いに加速させてくれたとしています。

 しかし、これは、まだ工事の第一段階の途中にすぎず、工事の終わりには移設され、拡張される予定です。このため、カバースラブは自然地盤の 4 メートル下に移され、植物で覆われ、新しい緑地は1ヘクタール以上の広さとなり、木々や芝生エリアを備えたオーステルリッツ駅地区の主要な緑地となる予定だそうです。

 この壮大な工事の第二段階は2028 年から 2029 年の間に行われる予定になっています。

 オーステルリッツ付近のセーヌ川沿いの歩道は、少し前に歩いたことがありましたが、けっこうきれいになっていて、えっ?こんなところに公衆トイレまであるの?と妙なところに感動してびっくりした覚えがあります。

 川沿いの歩道で気持ちの良い場所ですが、これから、さらにまた工事が始まるということなのでしょうか?

 しかし、とりあえずは、この貯水池の完成で、少しでも水質が改善されることは喜ばしいことではありますが、あくまでもこれは大雨の際の貯水池で緊急時のためのもので、浄水場ではないため、すぐに水質が改善されるというものではなさそうで、やっぱりオリンピック時には、ここで選手が泳ぐのか?と思うとセーヌ川の水面を見る限り、やはり、ちょっと(かなり)気の毒な気がしてしまいます。

 

オーステルリッツ貯水池落成


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2024年5月4日土曜日

パリ11区のマンガ アニメグッズ通り ブルヴァール ヴォルテール

  


 長くパリにいるのに、私にはまだまだ知らないところがたくさんあって、なにかのついでにそのあたりを歩いてみて、「えっ?パリにこんなところあるの?」とビックリすることが未だにけっこうあります。

 まあ、長い間、仕事と子育てで職場と娘の学校の往復が中心の毎日で、お休みの日も娘のお稽古事の送り迎えとか、買い物といっても、ごくごく限られた場所しか行かなかったので、今、娘も巣立って、少し時間に余裕ができた最近は、なにか別の用事で出かけた先を少し運動も兼ねて、あそこの駅まで歩いて行こうか・・などと思って、あたりにあるお店などを覗きながら、歩いて、けっこう良さげなお店を見つけたりもしています。

 つい先日、バゲットコンクールでグランプリをとったお店のバゲットを買いに行った帰りに、このあたり、ふだんはあまり来ることがないので、レピュブリック広場のあたりをプラプラしようかな?と歩き、あ~~ここ、いつか何かのデモ隊にぶち当たったことがあったなぁ~などと思いながら、ちょっと可愛いイギリス風な小物を扱っているお店とか、イタリアンの食材を扱っているお店などを見ながら、ちょっと調子にのって、それなら、もう少し、バスティーユ広場まで歩いて行こう、さっきは、あっちの通りを通ったから、今度はこっちの通りを歩こうと思って歩いていたら、なにやら、日本のマンガのキャラクターグッズのようなものが視界に入ってきました。



 私はほぼほぼマンガを読まないので、全然、知識はないのですが、ついこの間も鳥山明氏の訃報でさらに盛り上がった感じのドラゴンボールなどはさすがにちょっとだけ知っています。




 そんな感じのマスコットというか、フィギュアというか、ゲームやぬいぐるみ?などのけっこう大きなお店があって、せっかくだから、ちょっとのぞいてみようと思ったら、中には、ぎっしりの商品がところせましと積み上げられていて、また、けっこうなお客さんが入っています。しかも、1つ1つがなかなかなお値段・・。

 ローマ字表記にはなっていますが、ほぼほぼ日本のものです。こういうものには、これまで全く、無縁だったので、日本だったら、秋葉原とかに行けば売っているものなのでしょうか? マンガといえば、マンガ本くらいに思っていたのが、こういうマンガの数倍はする(値段)ようなマスコットやゲーム類や置物?などが、ぎっしり詰まっていて、また、それがかなり売れている様子。

 けっこう間口の広いお店でお店の前には、お目当てのものをゲットしたばかりの若い男性(子どもではなくて大人)が、家に帰るのを待ちきれずに、一緒にいる友人とともに、ワクワクした様子で箱をあけようとしているところでした。

 それこそ、「へえ~~パリにもこんなところあるんだ!」と驚いて、お店の外に出ると、そんな感じのお店はその1軒だけではなく、その通りには、同様のお店が何軒も並んでいるのでした。

 レピュブリック広場あたりは若者が多い場所でもあり、ファストフードのお店なども多いのですが、そういった土地柄というのもあるのでしょうか? 同様のお店が同じ通りに何軒もあって、そのどれもが成り立っているということは、相当な需要があるということです。

 今はオタクなどと言ったらいけないのでしょうか?マンガ・アニメ愛好家?のマーケットってパリでも本当にすごいんだ!・・と、このお店の様子をみて、さらに納得したのでした。



 この通りは、ブルヴァール ヴォルテール(Boulvard Voltaire)という通りでパリ11区にあります。

 パリもここ数年でずいぶん変わったとはいえ、おそらく、私が知らなかっただけで、そこまで新しいお店ではないのかもしれませんが、まさしく、「パリにこんなところがあるなんて、全然、知らなかった!」と最近、びっくりした場所のひとつです。

 しかし、考えてみれば、フランス人の間でこれほどまでに日本食が広まったのも、フランス人の間で日本へ観光に行きたいという人が増えたのも、「日本に興味をもったきっかけはマンガきっかけだった!」という人は少なくありません。

 とすれば、最もダイレクトにマンガに近いこのようなお店がパリで繁栄していないはずはなかったのです。


パリ11区 ブルヴァール ヴォルテール パリ マンガ アニメグッズ通り


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