2025年6月17日火曜日

コマーシャルセンター内の公衆トイレで・・

  


 パリのトイレ事情は、日本に比べると恵まれているとはいえない状態なので、できるだけ外でトイレに行かなくても済むようにしているのですが、時折、やむを得ない状況に追い込まれた時には、仕方なく公衆トイレに駆け込むこともあります。

 日本では信じられないことかもしれませんが、公衆トイレの場合などは、便座がついていないトイレもけっこうあるので、潔癖症の方には(そうでなくても)、かなり厳しいかもしれないので、覚悟が必用かもしれません。

 とはいえ、外出中のトイレ問題は差し迫った状況下になれば、もうそんなことも言っていられず、もう頭が真っ白の状態になって、トイレを探し回ることになります。あの緊迫感たるや、ちょっと、なかなか他にはない独特な瞬間です。

 よく出かける場所ならば、このあたりなら、ここのトイレ・・と、だいたいのトイレの場所はチェックしてあります。

 その点、コマーシャルセンターなどは、まあまあ、センター内にトイレは数ヶ所あることが多いので、そんなに心配はありません。

 先日、あるコマーシャルセンターに買物に行った際、そこのトイレは、まあまあ許容範囲内に入る程度のトイレなのは知っていたので、あまり躊躇なしにトイレに行ったのですが、そこで繰り広げられていた光景には、ちょっとショックを受けました。

 なんだか、荷物の多い小さな子ども2人を連れたオリエンタルな容貌の女性がいたのですが、いくつかトイレが並ぶ中の車椅子が入れる少し大きめのトイレを占領していて、ドアは開け放ったままなのですが、その中に全裸の少女(3~4歳くらい)が二人。暑いので、薄着とかいうレベルではなく、一糸まとわぬ姿・・扉も閉めない状態で真っ裸の子どもとおかあさん。

 さすがにトイレとはいえ、真っ裸の子どもがいたら、ちょっとギョッとします。どうやら、おかあさんは、子どもに行水?させていたというか?子どもの身体を洗っていたみたいなのですが、なかなか衝撃的な光景。しかも、その子どもたちの表情がなんとも言えない顔つきをしていて、とても複雑な気持ちになりました。

 なんというか、悲しそうでもあり、無表情でもあるような・・独特の顔つきでした。

 子どもを連れたホームレスなのか?難民なのか?わかりませんが、あまり、そういう人々がいる地域でもなく、ここには、時々、行くことがありますが、こんな光景に遭遇したのは初めてでした。

 平日の午後の時間で、その年ごろの子どもはふつうなら学校に行っている時間。こんな生活をしている子どもは、どんな人に育つのだろうか?と、ものすごくモヤモヤした気持ちになりました。

 蛇足になりますが、パリでトイレを探す場合、比較的大きな良いホテルのラウンジに近いトイレなら間違いないし、カフェや飲食店などにあるトイレは、まあまあ大丈夫なことが多いです。

 先日、サンラザール駅にある有料トイレに入ったら、カードでピッと払えて(1ユーロ)便利で、わりかしきれいでした。


パリの公衆トイレ


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2025年6月16日月曜日

ナイフに関する恐るべき数字 ナイフ襲撃事件は年間1万回以上も起こっている

  


 先週にオート・マルヌ県ノジャンの中学校で起こった中学生のナイフによる学校監督職員刺殺という衝撃的なニュース以来、ナイフに関する報道が散見されます。

 私は、まず、なぜナイフなんか持ってるの?しかも中学生が学校に行くのに・・と思ったのですが、これはなにも中学校に限ったことではないらしく、中には、小学校でさえも、ナイフによる事件は起こっているようで、本当に驚愕させられます。

 ということは、これが子どもに限ったことでなければ、もっともっと多いわけで、なんと2024年には、フランス国内ではナイフによる襲撃事件が10,397件も起こっていたそうで、これは1日あたり、28件のナイフ襲撃事件が起こっている計算になります。

 2024年、パリだけで学校内でのナイフによる襲撃事件が130件も起こっており、うちわけは、中学校で74件、高校で38件、小学校で18件となっています。

 中学校での事件が高校での事件の倍以上であることや、小学校でさえも事件は起こっているということには、本当に驚くばかりです。なんだかこのような狂暴な事件は、年齢が上がるとともに増加していくようなイメージがあったので、高校よりも中学校の方が事件が多いということは、このような犯罪が低年齢化しているということなのでしょうか?

 これらの事件は、今回のノジャンのケースのように極端に残忍だったりする場合を除き、ほとんど報道されてはいませんが、1日あたり28件もナイフ襲撃事件が起こっていれば、もういちいち報道してもいられないのかもしれません。

 特に学校内に持ち込むケースに関しては、今回のノジャンのように荷物検査を行い、憲兵または、警察によって荷物がチェックされているようですが(不定期抜き打ち検査)、ナイフを所持していた生徒は全員、規則に従って懲戒聴聞会の対象となることになっています。

 しかし、これは、あまり抑止力にはなっていないようです。

 一般社会においては、それ以上に荷物検査などということは不可能に近いので、ナイフ所持の数などは、計れないのが現実ですが、これだけ事件が起こっているとなると、相当数の人がナイフを持っているのではないか?と思ってしまいます。

 よく護身用などと聞くこともありますが、たとえ護身用ナイフを持っていたとしても、私のようなへなちょこでは、早々にナイフを取りあげられて、逆に敵に武器を与えることにもなりかねないし、人にナイフを向ける勇気もないので、そんなものは持っていない方がマシかも・・と思っています。

 しかし、思い出してみれば、亡き夫もそういえば、なんだか、いかついナイフを得意そうに買ってきたことがありました。「何に使うの?」と聞いたら、「コレクションみたいなもの、かっこいいでしょ・・」という答えが返ってきました。

 コレクションと言ったわりには、扱いはぞんざいで、その後、ずっと道具箱のようなものの中に放置されたままで、今でも道具箱を覗いたら、まだあるんじゃないかと思います。

 私は、「こういうもの、男の人って好きなんだな・・」と、なんとなくぼんやりとその時は思っていましたが、あれは、なんだったんだろうか?と今になって思います。

 しかし、事はもっと深刻で、それを持ち歩いて人を刺してしまうという事態が年間1万件以上も起こっているなんて、武器を持ち歩く勇気もない私は、もういかに、狙われないようにするか?くらいしか、対処方法はありません。


ナイフ襲撃事件


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2025年6月15日日曜日

アンチファストファッション法 ファストファッションと超ファストファッション

  


 今年の4月の段階ですでに発表されていたSHEIN,  TEMU,  Ali Express などの中国からの小包に課税するという話は、「アンチ・ファストファッション法」として、より広範囲に具体的に、また強力なカタチになりつつあります。

 4月の段階では、年間8億個以上の中国からのこれらのネットショッピングによる小包が到着しており、これが少額のために関税がかからずにフランスに入ってきており、この少額だが莫大な数のネットショッピングがフランスの繊維業界・服職業界を脅かしているというもので、これは、航空便という輸送に関してのみならず、低価格のために、結局はすぐに廃棄されてしまう、いわば使い捨てファッションという面からも環境問題にそぐわない見過ごせない状況であるとしています。

 今回、フランス上院に提出され、可決した「アンチファストファッション法」は、単なるアンチファストファッションというよりも、ターゲットを中国のネットショッピングプラットフォームであるSHEIN,  TEMUに絞ったものになっているのが現状で、ファストファッションとして知られているZaraやH&MやKiabiなどのブランドは、超ファストファッションブランドではないとし、すでにフランスで長く価値を見出しているとして、このアンチファストファッションのリストからは除外されています。

 フランスの中規模程度、小規模の服飾業界が不振でここ数年で倒産した企業が相次いでいます。多くの人々が特にパンデミックを境に大きくネットショッピングに傾き、需要の構図が一気に変わり、これに早く対応できなかったフランスに根付いていたはずの服飾ブランドがあっという間に本当に見事なほどにバタバタと倒れています。

 そもそもはファッション業界というものは、流行というものがあり、時代に乗っていなければ、また、それを牽引していくくらいでないと、生き残れない業界でもあります。

 昨今の若者たちは、偽ブランドも隠さず、それで構わないと堂々と偽物をいとわず持って歩く(身に着けて歩く)人が増えたそうで、そこそこ可愛ければ、品質は二の次でも、とにかく低価格のものに手がのびる世代が登場してきています。

 半面、シャネルやディオール、ルイヴィトンなどのハイブランドの価格は天井知らずという値段をつけても、やはりそれを買いたい人は後をたたず、超ハイブランドか超低価格のものが人気で、その中間に位置するこれまでの、そこそこ手が届く範囲の中途半端な位置にあったブランドは、一番生き残りが難しいのです。

 その中間あたりで、大成功しているユニクロは、本当にスゴイと思います。フランスでのユニクロは、日本のユニクロのイメージよりももう少し高級感があり、また、絶対的な品質の良さには定評があり、ネットショッピングはもちろんのこと、パリの大きなコマーシャルセンターには、たいていユニクロの店舗が入っているようになったくらいです。

 本当は、資本主義の社会では、仕方のない話で、これらの中堅どころのブランドもそのどちらにも該当しないながらも、何等かの押しを開発して、生き残らなければならないところ、フランスは、これを環境問題という大義名分を用いて、法律で超ファストファッションの勢いを止める手立てを打とうとしているのです。

 フランス環境庁によれば、フランスでは毎秒35着の衣類が廃棄されているといいます。たしかに環境問題的には、よいことではないとはいえ、本音を言えば、欧州企業やフランスの企業を保護するための法律といっても過言ではありません。

 この法案は、排出量、資源利用、リサイクルの可能性などファストファッション企業が販売する製品の環境への影響を評価するエコスコアシステムを導入し、最も低いスコアを獲得したブランドには、2025年から商品1点あたり最大5ユーロの税金が課せられ、2030年には、10ユーロに増額される可能性があります。ただし、税金は商品の小売価格の50%を超えることはないことになっています。

 また、この法には、超ファストファッションの広告禁止やオンラインで宣伝するインフルエンサーへの制裁も含まれているそうです。

 しかし、この法がターゲットにしているのは、主に2つのブランド(SHEIN,  TEMU)であり、フランス国内で生産・販売されている、衣料品の少なくとも90%を占めるブランドは除外されています。

 この法案はまだ上院で可決しただけで、まだ完全に施行されることが決定されたわけではありませんが、なんらかのかたちでこの中国のファストファッションに制裁を加えることはほぼ確実です。


アンチファストファッション法


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2025年6月14日土曜日

フランスでも報道し始めた日本の米騒動について

  


 日本で、お米の価格が上昇したり、スーパーマーケットの棚から消えている・・などという米騒動はネット等の報道で見ていました。

 海外生活を送っていると日本のお米というものは、本当に貴重なもので、日本に一時帰国した際には、日本のお米を必ず買ってきています。パリでもお米は買えますが、本当の日本米というものは、ないことはないのですが、高価で、日本米といっても日本の品種のイタリア産のお米・・とかいう場合が多いのです。

 ふつう、国民の主食となる食品については、あまり価格が高騰しすぎないようにある程度政府が介入して調整したりするものだと思っていましたが、そのあたりが上手く機能していないのだと思っていました。

 今回、こちら(フランス)の報道で見かけたのは、「日本は米の価格が高騰しているため、そして、選挙が近付いているために、3兆円もの費用を費やして全国民に140ユーロを支給する」というものでした。

 「4月に日本の店舗で売られる米は前年比で2倍に値上がりしたが、政府はここ数ヶ月、国の備蓄米を放出することで、この高騰を食い止めようとしていた」。「過去1年間の価格の上昇については、複数の要因が挙げられており、1つ目は記録的な猛暑のために供給量が減少したこと、2つ目は、2024年8月に巨大地震警報が発せられたためのパニック買いが起こったこと、そして記録的な観光客の流入が消費のさらなる増加につながったこと・・などとしています」

 しかし、そのどれもが要因の一端を担っていたとしても、それくらいで、お米が日常の供給に事欠くようになるのは、おかしな話です。

 ましてや、国民の税金で蓄えていたお米をまた国民に売りつけて、恩着せがましい感じのことを言っているし、さらには選挙前だからといって、ここぞとばかりに、その高騰しているお米のためにといって、国民にお金をばらまくというのはみえみえなやり口。

 そもそもは減反政策が度が過ぎていたのだろうと思いますが、なぜ、日本の美味しいお米の生産を減らすようなことをするのか?本当に疑問です。

 海外では、空前の日本食ブームを迎えて久しく、今やパリでもお寿司やおにぎりを売っていないスーパーを探す方が難しいくらいにお米は海外でも食べられています。

 おそらく、スーパーマーケットで売っているお寿司やおにぎりに使われているお米が日本製のお米とは思いませんが、日本のお米でもないおにぎり1個がいくらで売られているかご存知でしょうか?だいたい、安くて3ユーロ・・高いと5ユーロ近い(約500円~800円)のです。

 たいして美味しくもない外米のおにぎりでこの値段なのです。

 フランス人は、欧州の中でもかなり日本贔屓の人が多い国のような気がしていますが、同時に「ホンモノ」などへのこだわりを追求するというか、ウンチクを語る人が多いのです。

 これだけフランスでも浸透したおにぎりの元祖は日本、そして、本来使われるべき日本のお米で作られているおにぎりとなったら、多少、高くても彼らは喜んで買うのです。

 減反政策などせずに、日本の美味しいお米をたくさん作って海外にもっと売ればよいのに・・と本当に思います。海外では高くても売れるのですよ・・。

 農協の仕組みについては、よく知らないのですが、お米の生産・出荷を取り仕切っているのが農協ならば、農協は海外への輸出をもっと模索するべきだと思います。


日本の米騒動


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2025年6月13日金曜日

パリ・ロダン美術館は惜しみなくロダンの作品が楽しめる実はすごい美術館!

  


 パリには数多くの美術館があるけれど、いつでも行けるところにいながら、美術館というものは、そんなに頻繁に行くわけではありません。

 しかし、行ってみると、全然、気軽に行けるもので、行くたびに、「もっと、ちょくちょく来るべきだ・・うん!また、近いうちに来よう!」と思いながら、なんとなく、心が満たされた気分になって帰るのです。

 美術館に行くということが習慣になったら、よいな・・と思いつつ、結局、そこまでは行けていません。

 今回は、久しぶりにロダン美術館に行ってみたのですが、そういえば、前に来たのはいつだったかな?パンデミックの前かもしれない・・(最近、過去のことを思い出すときに、パンデミックは私の中でなにか一区切りになっていて、パンデミックの前か後?どっち?と考えるようになっています)と思いながら、たぶん5年ぶりくらいで5回目くらいです。

 ロダン美術館は個人的にはパリの美術館の中でももっとも好きな美術館のひとつで、そもそもず~っと昔にまだ私が日本に住んでいた頃に最初にパリに旅行で来た際に、まず、一番行きたかったのがロダン美術館でした。

 それは、私が彫刻が好きとか、ロダンが好き・・というよりも私の大好きな作家の井上靖氏の小説にパリが度々、登場し、その中で主人公がロダン美術館を訪れるシーンがあって、その小説の中の描写がとても素敵だったからです。

 小説の中にはロダンの「パンセ」、つまり日本語でいうところの「考える人」などが出てくるのですが、最初は、その本物のパンセが見たいと思ったのでした。当時は、私は、フランス語は全くできなくて、会社の上司の人でフランスに留学経験があって、フランスが大好きという人に「ロダン美術館はどこですか?」というフランス語を教わって行きました。

 その時の美術館のことは、あまりよく覚えていないのですが、その「ロダン美術館はどこですか?」と街行く人に尋ねてみたら、ちゃんと言葉が通じたことに感激しつつ、当然のことながら、フランス語で尋ねたので、フランス語で答えが返ってきて、何を言っているのかわからないことに初めて気が付いて、友人と大笑いした記憶があります。



 話が脱線しましたが、パリに来てからも、何回かロダン美術館には行っていますが、私の中では「ロダン美術館=お庭のバラがきれい」という頭があって、今回、行ったのも、バラの季節だし、さぞかし、お庭のバラがきれいだろうと思ったのですが、残念ながら、バラはところどころにはあったものの、盛りの頃はもう過ぎていました。



 入口を入るとすぐに荷物チェックの場所で少しだけ並びますが、これも数分のみ、比較的あっさり通れます。美術館の中に入るとチケット売り場とオーディオレンタルがあって、過ぎると現在は子どもが美術に触れて楽しむことのできるキッズスペースができています。

 私も入りたいんですけど・・と言ったら、子どものスペースなので大人はダメだと言われました。


 美術館の中には、ロダンの彫刻を中心とした作品(絵画等もあります)が約7,000点あるそうで、中には、ゴッホの絵(私が知っていたのはタンギー爺さんというもの)などもありますが、なんといっても力強いロダンの彫刻の数、大きさには、圧倒されます。




 彫刻のほとんどがケースなどには入っておらず、ほんとうに近くまで寄ってみることができます。ロダンの彫刻はもちろん小さなものもありますが、大きなものがけっこう多くて、これは、ロダンが世に出る頃にあまりの出来栄えにかたどりをしたものではないかと疑われたために、人間の実物大よりも大きな作品を作ってその作品がかたどりではないことを証明したため、それ以来の彼の作風になったという説があるそうです。




 とにかく、これだけの数の彫刻を作り出すパワーは並大抵のものではないと思われ、その作品の表情や身体、筋肉の動きなど、ひとつひとつを創りあげるのには、正気を保つのは厳しいのではないかと感じられます。



 私は美術に関して、詳しいわけではないので、なんとなく、好き・・すごい・・素敵・・きれい・・カッコいい・・とか、まるで幼稚園の子どものような感想しかないのですが、これがやはり数百年前にたしかにここにいたロダンという人が自分の手で造り上げたものがそのまま残っていると思うと、唸りたくなります。






 美術館内の広さはほどほどで、非常に見やすくて快適、しかし、私がこの美術館が好きなのは庭園です。庭園内には、カフェもあって、簡単な食事もできるようになっています。この庭園は、これまた、そこまで広すぎず、しかし、屋外だけど木陰になっているスペースに彫刻が点々と置かれていて、ベンチがたくさん置かれています。(ゴミ箱がやたらと多い)



 非常にゆったりとした空間で、友だちとおしゃべりしたりするのにもちょうどいいな・・とも思います。屋外に置かれた彫刻の数々には、ひとつひとつ説明書きがついています。



 今回は、その中のひとつの頭を抱えた大きな彫刻がやけに気に入って、しばらく側にいたい・・と思いました。頭を抱えて、なにか考え事をしている様子の彫刻ですが、頭を抱えて下を向いているのに、大きな目は見開かれているのです。

 今は、時期的なこともあるのでしょうが、幼稚園だか小学生だか小さい子どもたちが学校の遠足かなにかで来ている感じも、とても微笑ましいです。余談ですが、こちらの子どもたちは、美術館内などでも非常にお行儀が良いです。




 最後の出口の近くには、ブティックがあり、多くの美術館にあるように本や小さな彫刻、お土産類が売っていますが、なんといっても「考える人」は一番人気のようで、考える人消しゴムから、考える人鉛筆、考える人カレンダー、考える人パズルなど、考える人に埋め尽くされているのには、苦笑してしまいますが、ついつい欲しくなる気持ちもわからないではありません。

 この美術館は、大変よいロケーションでもあり、入口を入ってわりとすぐのところに有名なパンセ(考える人)があり、その向こうには、エッフェル塔、アンヴァリッドなどが見えます。また、同じ通りは、首相官邸をはじめ、多くの省庁が並んでいる通りなので、やたらと警察官が多く、治安の良さは抜群です。

 この美術館は晩年にロダンがアトリエとして使用していた場所だそうですが、こんなところにアトリエがあったなんて、すごいな・・などとも思うのです。

 現在、行列ができているという大阪万博のフランスパビリオンには、ロダンの彫刻が言っているようですが、パリのロダン美術館はほぼほぼ行列なしに入れ、山ほどのロダンの彫刻が惜しみなく置いてあります。

 子どもがけっこういたり、作品との距離も近いので、ゆったりと自由に見ることができて、堅苦しい感じは微塵もありませんので気軽に芸術に触れる(触るということではない)ことができるので、とってもおススメです。


パリ・ロダン美術館

🌟Musée Rodin  77 rue de Varenne 75007 Paris  


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2025年6月12日木曜日

15歳未満へのナイフ販売禁止とソーシャルメディア禁止

   


 先日のオート・マルヌ県ノージャン(グラン・テスト地域圏)での14歳の少年が学校職員(サーヴェイヤント=監督員?)をナイフで襲って殺してしまった事件以来、「15歳未満へのナイフ販売禁止とソーシャルメディア禁止」についての論争が起こっています。

 この事件の直後にマクロン大統領は、「15歳未満のユーザーによるソーシャルネットワークの利用禁止を急ぎたい」と発信。

 また、フランソワ・バイルー首相は、「未成年者へのナイフの販売禁止は15日以内に法令が交付される」と発表しています。

 この事件の被告となっている少年が犯行に使ったナイフは自分で購入したものではなく、家から持ち出した20㎝ほどのキッチン用ナイフだったと言われていますが、暴力行為へ魅せられていたと語っているようで、SNSの影響があったかもしれません。

 とはいえ、法律上、すでに、未成年には、あらゆる種類の軍事?攻撃用物資、弾薬、武器、ナイフなどを購入する権利はないのですが、未成年に対して販売することも禁止されています。

 また、購入だけでなく、ナイフを所持したり、持ち運んだりすることも禁止されており、未成年者であっても成人であっても、刃物と見なされるナイフを持って外出することは、禁止されているのです。

 これらのナイフ等を携帯していた場合には、正当な理由が提示できなければなりません。ピクニックに行くとか、狩猟に行くなどは、正当な理由として認められるということですが、この取り締まりをし始めたら、大変なことになります。

 なので、実際に禁止されているとはいっても、それはまったく遵守されていないということです。考えてみれば、このような禁止事項というものは、けっこうあるものかもしれません。

 つまり、これらは、非常にはっきりと鮮明な法的な禁止事項でありながら、実状は、ぼやけた法令としてしか機能していないのが現実で、それこそネットなどでの販売・購入に際しては、年齢確認等のステップがあるものの、これらは、いくらでも偽認証できてしまうわけで、これをどのように取り締まっていくのか?荷物を受け取る際に、保護者のサインが必用になるようにするとか、色々、提案はされているようですが、そもそも偽の年齢で認証を受けている場合には、該当しそうにありません。

 また、ソーシャルメディアの利用に関しても、禁止となると、色々と複雑な問題もあり、効果的に利用している場合も多いので、あながちその全てを禁止するということもまた、容易ではありません。

 フランスでは、すでに2023年の段階で、危険因子の高いメディアとして、15歳未満の子どもがTikTok、Snapchat、Instagramなどのソーシャルネットワークにアクセスすることを禁止する法律が可決されています。

 しかし、これはフランスですでに可決していながら、デジタルプラットフォームを規制する欧州法の遵守が欠如しているために、フランス国内でも施行できずにいました。

 ここのところが、マクロン大統領が「欧州全体の決定をいつまでも待てないので、2ヶ月以内にこの欧州法が前進しなければ、フランスだけでも、この禁止を施行する」と言っている所以です。

 どちらにしても、ソーシャルネットワークを全て否定はしませんが、これが、まず、なぜ?15歳未満・・と15歳なのか?なんなら、責任をとれない未成年全体に拡大してもよいのでは?と思わないでもありません。

 最近、フランスで起こっている犯罪を見ていると、大人が未成年の子どもを募って、犯罪の手先に利用したりするケースも多々あり、SNSが今まで無かった犯罪を生んでいることはたしかです。

 今回、フランス中を騒がせているこの14歳の少年は、全く反省の色も後悔もなく、また、被害者に対しての同情や謝罪の感情もないと伝えられています。人の命を奪うということに関しての重みや、それに関わる人々の痛みを感じられないというのは、どういうことなのだろうか?と思います。

 まだ14年しか生きていないのに、どうしたら、こんなになっちゃうんだろうか?と空恐ろしい気がします。やっぱり子育てって怖いし、責任重大なことです。

 このような問題を解決するのに、刃物の販売禁止とか、ソーシャルネットワークの禁止とかも必要なことなのかもしれませんが、根本的なことは、なにか別のことにあるのではないかという気がしています。


15歳未満 ナイフ販売禁止 ソーシャルメディア禁止


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2025年6月11日水曜日

学校の入り口での手荷物検査で14歳の少年がまさかのナイフで監督教員を殺傷

   


 事件は朝8時15分頃、オート・マルヌ県ノージャン(グラン・テスト地域圏)の中学校登校前の手荷物検査中に起こりました。陰惨な事件を回避するために行われていた検査の場でこのような衝撃的な事件が起こるとは、まさに、為す術がないかのようにも思えます。

 この事件の被害者となった女性は、この中学校の教員助手というか生徒を監督するサーヴェイヤントという職にありました。この学校でのサーヴェイヤントという職務、娘が学校に行っていた時に時々、耳にすることがあって、そのサーヴェイヤントってなに?と娘に聞いたことがありましたが、教師ではなく、キャンティーンや休み時間の校内などでの見回り係というか監督員のような立場の人とのことでした。

 教師ではなく、別にこのような職務というものがあることに、フランスらしいな・・と思った記憶があります。

 この女性は、元美容師さんで、クローン病を患い、健康上の理由から転職をしたばかりで、新しい人生(仕事)に大変、満足していたそうで・・まだ若干31歳の4歳の子どものママでした。

 一方、加害者の少年については、あまり、まだ詳しい情報は流れていませんが、特別に問題が見られる子どもではなく、全くのノーマークの生徒だったようで、むしろ、校内では、「いじめ対策チーム」のリーダーを務めていた少年だったということで、余計に闇深い気がします。

 とにかく、この14歳の少年は、この31歳の女性をナイフで数ヶ所刺して、結果的には殺してしまったわけで、すぐに逮捕されたものの、その衝撃は非常に大きく、大統領をはじめ、首相、教育相などが、すぐにマスコミの前に立ち、鎮痛な思いと今後の対策について、話しています。

 マクロン大統領は、この事件を受けて、「15歳以下のソーシャルメディアの使用を禁止する必要がある」と発表し、「欧州レベルでの実現を可能にするために数ヶ月間の猶予を設けるが、欧州レベルでの実現が2ヶ月以内にできなければ、フランスだけでもまず開始する」と述べています。

 このソーシャルメディアの禁止となると非常に大きなことになるとは思いますが、バイルー首相は、特に「ナイフなどの凶器の購入規制の厳格化」、「15歳以下の子どものオンラインでのナイフ購入を禁止する」ことなどを発表しています。

 これには、「すでに、子どもがこれらの凶器の購入は禁止になっているはず・・」とのことではありますが、現実にはそれが可能なままになっているのです。

 この未成年者の傷害事件についての報道を見ていると、ほぼほぼ皆、あたりまえのようにナイフを持っていることに驚かされます。それが、放課後や夜中に街にウロウロでかける少年たちだけでなく、ごくごくふつうの学校生活の中にも浸透しつつあるということが、異様なことです。

 そもそも今回のように、学校前で手荷物検査を行わなければならない事態・・その検査中にこのような陰惨な事件が起こってしまうということは、本当に悲惨な状態です。

 私は、フランスの学校については、娘が通っていた学校についてしか知らないので、このような事件を見るにつけ、あまり一般的なことは、知らなかったのだな・・と思いますが、とにかく、娘が通っていた学校(小学校から高校まで)は、大変、厳しい学校で、問題がある生徒は容赦なく、転校を促され、授業はもちろんのこと、日常生活での規律や礼儀などについても大変、厳しく、ポイント制?のようなものがあって、✖が3つ以上つくと、追い出されかねない・・それが、教師に対して、口答えしたり、怒られて、教師を睨み返しただけでも減点・・というのを聞いて、驚いたことがありました。

 特に中学校からは、授業の速度も大変速く、とにかく点取り虫の子が多かったので、そんな日常生活の些細なことで学校を追い出されるなどということは生徒たち自身にとっても考えられない感じだったと思います。

 初めて、その学校を見学に行った時は、もう学校内の空気が全く違って、凛とした感じがあり、ここなら大丈夫・・と思ったことを覚えています。

 このような様々な少年事件を見ていると、かなり厳しくしないとダメな年頃もあるのではないか?とも思うのです。

 子育ては、それぞれの子どもにとって、それぞれ違うので、何が正解かはわかりませんが、やっぱり、安全な環境に子どもをおいておきたいと思うじゃないですか・・。


荷物検査での14歳の刺殺事件


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