2024年9月13日金曜日

ブルーノ・ル・メール財務相の素敵な政界の去り方

 


 フランスにいる以上、ある程度、フランスの政情を知ることは必要なことでもあり、また、フランス人の間では、政治が話題にのぼることも多く、まるで、その知識がないことは、恥ずかしいことだとも思っています。

 たとえ、私には、選挙権がなくとも、フランスで起こる数々の紛争や争いごとなども、政治が関わっていることも多く、その原因を理解しようとすることは必要だとも思っています。

 とはいえ、これだけ、色々なことが起こり、どんどん世の中が変わっていくなか、日々、このフランスの政治、情勢に関わるニュースを追っていくことは、私にとっては簡単なことでもなく、しかし、同時にフランスの政治の動きを見ていると、政治に関心を持つことは楽しいことだとも思うようにもなりました。

 同時に日本の政治の動きも少しは見ているので、それと比較して、色々と考えることもあります。

 とはいえ、フランスの政治に関するニュースなど、私が把握しきれる登場人物は、その時々の大統領、首相、主要官僚などで、とてもその全てを把握しきれてはいません。

 そんな中で、極めて、ミーハー的な観点から、私は、今回、辞任を発表したブルーノ・ル・メール財務相は、なかなか素敵な人だな・・と思っていました。個人的な好みではありますが、これまでフランスの政治家で、素敵な人だな・・と思ったのは、シラク共和国大統領の事務総長を務められていたドミニク・ドゥ・ヴィルパンという方で、ずっと、「カッコいい!あの人が大統領になったら、いいのに・・」と思っていました。

 一度、彼がサンジェルマン・デ・プレで家族と歩いているところに出くわしたことがあるのですが、圧倒的なオーラで思わずその家族全体のたたずまいに見惚れてしまったくらいでした。

 そして、ドミニク・ドゥ・ヴィルパン氏が政界からいつの間にか、姿を消したあとは、このブルーノ・ル・メール財務相がどことなく、雰囲気が似ていて、素敵な人だなぁ~と思っていたのです。

 今回、彼が辞任するというので、彼の経歴を見ていたら、なんと、彼は政界入りした当初、ドミニク・ドゥ・ヴィルパン氏の首席補佐官を務めており、なるほど、なんとなく雰囲気が似ているのは、そういうことだったんだな・・とハッとさせられた思いでした。

 正直、彼の政治的手腕はもちろんのことですが、それよりも、どことなく育ちが良さそうで、賢明で、話し方、立ち振る舞いがとてもエレガントであり、冷静で、という極めて、曖昧な理由です。

 ブルーノ・ル・メール氏は、直近までは、経済・財務・産業・デジタル担当大臣を7年間担ってきました。現在、内閣が解散し、首相はようやく決まったものの、内閣人事は発表されていない現在、多く(約半数)の大臣は留任を希望する中、彼は、22年間の政治の世界に別れを告げ、財務省に別れを告げ、ベルシーの財務省の中庭でスピーチを行い、集まった財務省の人々に感謝を述べました。

 彼は現在、55歳、彼がなぜ留任を望まなかったのかは、名言はしていませんが、    現在の政権・政治の流れに思うことがあるのは、確かで、ここで、ひとまず、息をつき、彼の最初の職業であった大学教授という職に戻り、今度は、最初に抗議したフランス文学だけではなく、政治や地政学などにおいても教鞭をとり、若い学生たちと議論をたたかわし、異なる場所で未来を担う人々の声を耳を傾けることができることをとても楽しみに感じていると語っています。

 彼は、ローザンヌ大学との話が進んでいるとのことで、スイスに永住か?などとの声もありますが、彼自身は、愛するフランスを捨てるつもりはないとのことです。

 現在のマクロン大統領、新しく任命されたミシェル・バルニエ首相の築いていこうとしているものがどんなものなのかは、わかりませんが、彼なりの美学を貫いての決断であったような気がしています。

 彼が辞任するというニュースを最初に見た時は、「えっ?辞めちゃうの?」と思いつつ、大臣という座にしがみつくことなく、自ら周囲に感謝しつつ、別の道を選んだブルーノ・ル・メール氏をやっぱり素敵な人だったな・・と思ったのでした。

 この挨拶を行っている彼の表情は、これまでとは、すでにすっかり変わっている感じで、すっきり、穏やかになっている気がしました。


ブルーノ・ル・メール経済相辞任


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2024年9月12日木曜日

20年間で急増しているフランス人の肥満 揺らぐフレンチパラドックス

   


 フランス公衆衛生局が発表したフランスの過体重と肥満に関する調査によると、過去20年間でフランス人の過体重、肥満が急増しており、これは、過去に例をみない増加傾向であると警告しています。

 これは、身長と体重の割合をもとに計算するBMI(ボディマス指数)を用いたもので、体重(kg)/ 身長(m²)の数字が25~30の場合を過体重、30以上の場合を肥満と定義しています。

 今回、フランス公衆衛生局が問題視しているのは、過体重と肥満以上に関するケースについてですが、BMI 30以上の肥満に関しては、1996年には男性の7%、2016年には14%を超えるまで増加しましたが、その後2017年には13%に戻りました。女性の場合、肥満は増加し続け、 1996年には 6%を下回っていましたが、2017 年には 14%に達しています。

 現在では、フランスでは2人に1人近くが過体重であり、17%が肥満であると言われているのです。

 保健当局は、過体重と肥満が主要な病気(心血管疾患、糖尿病、特定のがん、早期死亡などの非感染性疾患の主要な危険因子)のリスクを構成するものであるため、予防政策を強化する必要があると警告しています。

 肥満の原因は、座りっぱなしのライフスタイルの増加、身体活動の減少、ジャンクフードの増加などが挙げられていますが、貧因、社会的に恵まれない人々の間では、ほぼ4倍、肥満が多いというWHOの報告もあります。

 また、この増加傾向には、男女差が認められ、ある時点で男性の増加は止まり、一定の数字を維持していますが、女性の肥満は、増加し続けているという結果も注目すべき点の一つでもあります。

 この要因として、女性特有の体質的な要素、閉経期に女性に変化が生じる可能性があること、ストレス、内分泌かく乱物質、特定の人々の体重増加につながる生物学的メカニズムもたしかに理由として挙げられることも事実ではありますが、体質的なものは、以前と比べて、特に変化しているとはいえず、女性がより肥満増加傾向にある理由とは認めにくいような気もします。

 これは、フレンチパラドックス(フランス人が、相対的に喫煙率が高く、脂肪が多く含まれる食事を摂取しているにも関わらず、冠状動脈性心臓病にかかることや肥満体型が比較的少ない学説から生まれた造語)などと言われ、比較的高カロリーのものを摂取しているにもかかわらず、肥満が少ないと言われており、私も不思議に思っていましたが、その説は、もはや微妙になりつつあるということです。

 しかし、過体重程度はともかく、極端な肥満体型の人は、あまり見かけない気はするのですが、フランスでも地方に行くと、比較的、ふくよかな人が多い気がする(私の個人的な印象ですが・・)ので、パリジャン・パリジェンヌは、フランスの中では肥満は少ない方なような気もします。

 とはいえ、日本に行ったりすると、特に思うのは、日本人の若い女の子が華奢なこと・・細~い!痩せてるな~!とビックリする反面、こちらでは、食事時間外など、小腹がすいたの?と思われるような時間帯に、若い女の子がクロワッサンなどのヴィエノワズリーなどをかじっているのを見かけることが多くて(決して太り過ぎではないけど・・)、若い女の子が間食にクロワッサンとは・・カロリー気にしないのかな?などと思うことはあります。

 フランスでは、健康に気を付けて!の決まり文句みたいに「1日、5つの野菜、果物を!」と言いますが、日本人の私からしたら、たった5つ??とずいぶん、ハードルが低く思えます。

 しかし、この肥満の増加はインフレも影響しているのでは?とも思います。バランスの良い食事、健康的な食事・・を摂ろうと思うとなかなかお金も手間もかかります。

 ましてや、フランスの美味しいもの、バターやチーズやパン、ヴィエノワズリー、生ハムやフォアグラ、パテなどなど・・もうハイカロリー食品のオンパレードです。そして、これらのものが、比較的、お手頃価格で手に入りやすいものであるということは、やっぱり肥満には絶好の土壌なのです。

 そういう私は、家では、ほぼ日本食とはいえ、面倒になると、ついつい簡単に手に入るものに走りがち・・こうして警告を鳴らしてくれることは、自分への戒めとして、受け止めます。


フランス人の肥満急増


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2024年9月11日水曜日

パリは急激に秋めいてきました・・

   


 数日間、体調不良で家に閉じこもっていた間にパリは一気に秋めいてきて、うっかり半そでででかけたら、もう寒かったです。

 あらら・・ちょっとこれでは肌寒いかも・・と思って、周囲を見渡すと、もちろん半そでの人もいますが、ジャケットやコートを羽織っている人もけっこういて、中には、ダウンを着ている人や、マフラーをしている人までいるので、相変わらず、この衣替えのタイミングの早さはさすがだ・・と思いつつ、いつまでたっても、慣れずに出遅れる自分を情けなく感じます。

 衣替え・・とはいえ、最近の私は、そんなに洋服もたくさん持っているわけでもないので、年中通して、冬物も夏物も、いつも同じように洋服ダンスに入ったままなので、そのどちらもしまい込むということをしていないので、その日、何を着てでかけるか気を付けるだけなのですが、いつも乗り遅れます。

 このあたりは、この変わり目の早さは見事だと思うのですが、春から夏にかけてよりも、夏から秋にかけての方が、なんか先取りがカッコよい感じがします。なんだかこんな時に夏服だとみすぼらしい感じさえしてしまうのは、秋ならではな感じです。

 とはいえ、今は、一番、みんなの服装がマチマチな感じがして、軽装の人からダウンジャケットまで、勢ぞろいで、それはそれでパリらしい感じでもあり、好きなところでもあります。

 衣替えといえば、パラリンピックが終わったとたんに、オリンピックのロゴなどの入ったエコバッグなども、スーパーマーケットから一斉に姿を消して、新しいオリジナルのモデルが出ていたりするのも、スゴ!切り替え早い!とビックリし、そして、なんだか、ちょっと寂しい気さえしてしまいました。絶対に完売はしていないはずなのに、もう少し置いておけば、買う人もいるだろうに・・などと、せこい?ことを考えます。

 まさか、あの売れ残りは、廃棄??

 そして、もう朝は、10℃を切るような気温なので、本当に、一気に秋になった感じ・・で、あわててヒートテックを着始めました。

 9月といえば、残暑が厳しくて・・なんてことも無きにしも非ずなのですが、今年の夏は、いつまでも天気が悪い日が多く、ちょうど、オリンピックの少し前に天気がよくなって、やっと夏らしくなった感じで、かなり暑くてヒーヒーする日が2~3日だけで、酷暑に苦しむことは、あまりありませんでしたが、なんだかいつもより、夏が短かった気がします。

 これから秋から冬に向けて、気温が下がるとともに、日も短くなり、寂しい季節になりますが、最近のこの天気の悪い日が多いようになってくると余計に、フランス人が夏の間のバカンスバカンスといって、太陽を求める気持ちがわかる気がしてきました。

 そうそう・・気温の問題だけでなく、これから冬にかけては日が短くなり、朝、暗いうちから学校や仕事に行って、もう帰る頃には真っ暗という生活になるのです。この極端な日照時間の長短からも、夏の太陽の季節になると、それを満喫すべく、フランス人は躍起になるんだろうな・・と、ちょっと寂しい秋の初めに思います。


パリの秋


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2024年9月10日火曜日

言語のスイッチはキープし続けることができるか?

  


 ここ数日、また体調がすぐれなくて、もう無理は一切しないことにして、あがらわずに、家でおとなしくしていました。家にいればいたで、色々とやることはあるのですが、具合が悪いときは身体を休めなければいけないので、横になって、本を読んだり、ベッドサイドにタブレットをたてて、YouTubeを見たりしていました。

 YouTubeは、時々、どういうわけで出てきたのかわからないものが急に表れたりもするのですが、そんな時、急に、私が子どもの頃によく見ていた「奥様は魔女」が出てきて、ついつい見入ってしまいました。

 私が昔、見ていたのは日本のテレビでの吹き替え版だったのですが、その後、母が仕事で東北新社の方とお仕事をする機会があり、なぜか「奥様は魔女」の話になり、私がこのドラマが大好きだと話したら、ビデオをダビングさせてくれたことがあって、今もずっとそのビデオを大切に持っていたくらいでした。

 思いがけなく、YouTubeにあがっていた「奥様は魔女」は、吹き替え版ではありませんが、私が見たことがないストーリーのものまでたくさんあって、私は、ものすごく楽しく懐かしく、この体調不良の2日間を「奥様は魔女」を見て過ごしました。

 以前、フランスのテレビでも、「奥様は魔女」をフランス語吹き替えでやっていたのを見たことがあったのですが、フランス語版のものは、サマンサの旦那様のダーリンがジャンピエールになっていて、「ジャンピエールってなんだよ!」と苦笑した覚えがあります。

 話は逸れましたが、今、YouTubeにあがっている「奥様は魔女」は、「Bewitched」というチャンネルで見ることができますが、もちろん、英語のままで、まあ、そもそものストーリーを知っているものがけっこうあるとはいえ、英語で見ていても、なんの不自由も感じず、すっと頭に入ってくることが不思議でもあり、なんだか心地よくもありました。

 最近では、当然のことですが、あまり英語を使うことはないので、英語で話しかけられると戸惑ったりすることもあったのですが、なんだか英語がスムーズに理解できることが嬉しくもあったのです。

 そして、ちょっと体調が上向きになって、外に出かけて、自分が思わず英語で話しかけそうになって自分でもドッキリ!・・あらら、この2日間も、家でテレビのニュース等でフランス語は聞いていましたが、英語にどっぷりの生活で、頭が英語になっていました。

 とはいえ、私はそこまでネイティブのように英語が話せるわけでもなく、フランス語にしても同じことで、今は、フランス語が中心の生活ではあるけれど、本を読むのは日本語で、自分で考え事をしたりするのも日本語です。

 娘などは、完全にバイリンガルになっているし、若い時から英語、フランス語、日本語を器用にスイッチングしながら、仕事をしているのは、見事なものだと思うのですが、私は、そこまで器用に切り替えができるわけではなく、かなり意識的にスイッチングしている感じです。

 そこで、ふと不安になったのは、私がもっと歳をとって(あるいはとらなくても・・)、いつまでも、このスイッチングがちゃんとできるだろうか?ということです。

 海外生活で多くの人が不安に思うことの一つは、歳をとって、あるいはとらなくても健康を害したりした場合、長期で医者にかかったりした場合、やっぱり母国語が安心なのではないか?ということがあるように思います。

 実際に、こちらに来てから、日本人の知り合いで末期ガンを宣告されて、日本に引き上げて本帰国した人を数人知っています。

 こちらにいる友人にそんな話をしたら、どっちにしろ、医学用語なんて日本語でもよくわからないんだから、自分の症状を訴えることができれば大丈夫でしょ・・と彼女はかなり楽観的な感じでしたが、入院したりしなくとも、少しずつボケてきたら、そんなスイッチングがいつまでもできるだろうか?と、少々、不安を感じたのでした。

 まあ、そんなことばかり考えて生活しているわけにはいかないので、良いように考えれば、いつも、意識的にスイッチングしているということは、それだけ脳を使っているということで、ボケにくいかも・・などと都合よく考えたりもしています。

 しかし、語学というものは、ある程度の基礎知識さえあれば、継続的にドラマや映画などを見続けることでも、けっこう上達できるものであるだろうな・・とも思います。

 考えてみれば、私が娘にしていた日本語教育の一部は、この日本のテレビのビデオやDVDを見せ続けることで、少なくとも、小学生の間は、テレビは日本語だけしか見せないと決めており、また、子どもの頃は、同じものを(好きなドラマなど)何度も何度も繰り返して楽しんで見れる時期で、娘の日本語教育は、日本のテレビドラマに助けられてきたことを思い出しました。

 なんだか話が逸れっぱなしではありますが、好きこそものの上手なれ・・自分の好きなドラマや映画を習得したい言語でとことん見続ける・・というのは、言語習得の一つの手段かもしれません。


バイリンガル 奥様は魔女


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2024年9月9日月曜日

パラリンピック閉会式も雨・・PARIS 2024

  


 パラリンピックの閉会式をもってPARIS2024 パリオリンピック・パラリンピックは終了しました。オリンピックの開会式も雨、そして最後のパラリンピックの閉会式も雨とは、なんだか、どちらも残念でしたが、ひとまず、そのどちらも大きな事故も事件も起こらず、概ね滞りなく全てが終わったことにホッとしています。

 自分の人生の中で自分の住んでいる場所でオリンピックが開催されることなど、そうそうあることはなく、本来なら東京オリンピック開催の時も日本に行って、そして4年後のパリオリンピックもパリで見よう!と思っていたのですが、残念ながら、東京オリンピックの時は、パンデミックのために無観客のうえ、渡航も簡単ではなく、行けませんでしたが、パリオリンピックは、競技そのものの観戦はしませんでしたが、ひととおりの会場を見て歩き、それなりに、美しくオリンピック・パラリンピックに彩られた街を楽しみました。

 本当だったら、パンデミックのような異常事態であったのですから、東京オリンピックも無観客などでは行わず、いっそのこと、東京オリンピックを2024年、そして、その4年後にパリオリンピックと、ずらして行うようにはできなかったのだろうか?と本当に残念に思います。

 パリの住民にとっては、この PARIS 2024は、決して、この開催期間中だけのことではなく、このために行われたメトロなどの工事のために、ずいぶん長い間、「オリンピックのため・・」という工事が行われてきました。

 特に様々な工事に関しては、通常、フランスに工期というものはあるのか?と思うほど、工期は守られないのがふつうなのですが、このオリンピックのための工事だけは、いかにしてもオリンピックに間に合わせるためにと、必死であったことがうかがえます。

 おかげで、いくつもの路線延長や新車の導入や駅の整備、街の整備などが、いつもとは考えられない速度で進みました。

 オリンピック・パラリンピック期間中は、警備も厳重で、いつになくパリも治安がよく、また、駅や街中もきれいで清潔・・しかも、ボランティアをはじめとする多くの人々がとても親切でフレンドリーで、これがオリンピック期間中だけでなく、ずっと続くといいのに・・と思いますが、あっという間にもとに戻ってしまうことと思います。

 けっこうな雨量の中の閉会式は、大会委員長の挨拶等が長い長い・・雨の中の観客も開会式の大雨に学んだのか、雨合羽のようなものを着ている人が多い感じでした。

 開会式もそうでしたが、もはやオリンピックやパラリンピックのセレモニーというよりは、長い長いショーみたいです。

 フランスのエレクトロニックシーンから24人のDJアーティストが集結し、パリの夜へのオマージュというかたちでショーが構成されました。

 最後にこのオリンピック・パラリンピックを締めくくるオリンピック聖火はチュイルリー公園で最後の飛行を終えると、次回開催地のロサンジェルスに受け渡されました。

 今回のPARIS 2024 パリの様々な場所、コンコルド広場やグランパレ、ヴェルサイユ宮殿まで利用されたことも、とても美しいものでしたが、今回、このために設置されたチュイルリー公園の聖火台となった気球は、想像以上に美しく、これで見納めというのだけは、少々残念な気もします。

 この気球を残してほしいという声も多いようですが、この決定は国に委ねられているものの、元来、長期間維持するように設計されていないということで、これを維持するためには、技術的な問題で今のままでは不可能で、作り変える必要があるようです。

 しかし、これを作り変えるにしても、少なくとも気球のボールだけでも保管しようという声もあるそうです。

 いずれにしても、これで一段落、来週末には、フランスのオリンピック・パラリンピックの選手たちを讃えるパレードがシャンゼリゼであるそうですが、そこでPARIS 2024は終了です。

 ライブでこのオリンピック・パラリンピックを味わえたのは、やっぱり楽しかったけど、お祭り騒ぎがあまり得意でない私としては、やっと終わってホッとするところでもあります。


パリ・パラリンピック閉会式


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2024年9月8日日曜日

マクロン大統領 ノートルダム大聖堂の現代ステンドグラスプロジェクト再始動

  


 2019年4月に起こった火災のために、閉鎖されているノートルダム大聖堂が再開されるまであと3ヶ月という最終段階に入っている中、9月に入って、文化相は、ノートルダム大聖堂の現代的なステンドグラスの窓を創造する責任を負う選ばれた8人の芸術家の名前を発表し、このノートルダム大聖堂の現代ステンドグラスプロジェクト問題が再浮上し、炎上しています。

 昨年12月にマクロン大統領がノートルダム大聖堂の修復工事現場を視察した際に「身廊の南側、セーヌ川側にある6つの礼拝堂に、19世紀のものから現代的なステンドグラスの窓に取り換えてを設置する」「大聖堂の現代的なステンドグラスの窓が「21世紀の象徴」となるように作られる」と発表。

 このプロジェクトはすぐに、文化遺産界や建築界からの大きな反発を引き起こし、国家遺産建築委員会(CNPA)は、40名の専門家委員会を招集し、全会一致で反対意見を表明しているにもかかわらず、政府はこれを全く無視した感じでこのプロジェクトを諦めるつもりは全くない模様です。

 国家遺産建築委員会(CNPA)は、1965年にフランスが署名したヴェネツィア憲章として知られる記念碑や遺跡の保存と修復に関する国際憲章に基づくもので、同憲章は歴史的建造物の修復に関する規則を定め、よく保存されている古い要素を現代の作品に置き換えることを禁じていると説明しています。

 マクロン大統領は、文化遺産の専門家のアドバイスにもかかわらず、ノートルダム大聖堂に現代的なステンドグラスの窓を設置したいと主張し続け、強引に推し進めようとしていると、反発の声は激しくなっています。昨日、X(旧Twitter)のトレンドにマクロンがトップを飾っていたので、首相任命の話かと思ったら、もちろん、その話もあるのですが、このステンドグラス反対の声もかなりあって、なんか、あらゆる場面で彼の強引さが国民に受け入れられていない感じがしました。


 「怪しげなシンボルだらけのオリンピック式典の後、同じ妄想で大聖堂を汚したいようだ!」、「それは歴史的記念碑であり、フランスのキリスト教徒の魂の一部であり、目覚めた悪魔崇拝者の気まぐれのため​​の絵画ではない!」など、かなり辛辣な声が上がっています。

 しかし、このプロジェクトのために実際に火災の影響を受けなかったステンドグラスは機密扱いになっており、これらは、将来建設される大聖堂の歴史を専門とする博物館に展示される予定になっていると言われています。

 この現代ステンドグラスに置き換わるためにはずされたステンドグラスに対して、国家遺産建築委員会(CNPA)は、「こんな不合理は受け入れがたい!これらのステンドグラスは大聖堂建築全体の不可欠な要素として、その場にあるからこその価値であり、他の場所で保存すればよいというものではない!」と怒りをあらわにしています。

 この現代ステンドグラスプロジェクトに反対するのは、国家遺産建築委員会(CNPA)だけではなく、彼らが提出している嘆願書には、15万人の署名が集められています。

 私もこの現代ステンドグラスには、反対、フランスの歴史的建築を現代アートで塗り替えるのは、どう考えてもおかしい話。もしも21世紀の象徴を表現したいのなら、別に作ればよい話で、文化遺産を崩してよいことでもなく、また、何より、国家的文化遺産であるとともに、ノートルダム大聖堂は宗教的な場所でもあり、それに政府が強引に介入するのも異様な気がします。何よりもこんなに多くの専門家の意見を全く無視して・・。

 このステンドグラスプロジェクトだけではなく、最近のマクロン大統領・・突然の国民議会解散や選挙、そして、誰もが想像しなかった首相任命など、どうにも他の意見を無視して独走している感が拭えないことが不安です。


マクロン大統領 ノートルダム大聖堂ステンドグラス


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2024年9月7日土曜日

慈善団体アベ・ピエール財団 新たな性加害発覚で名称変更、記念碑撤廃へ

  


 フランスでの慈善活動の大きな柱の一つとなっているエマウスやアベ・ピエール財団を設立したアベ・ピエールの50年以上にもわたる性加害・性暴力事件が表沙汰になったのが、今年の7月の半ば頃のことでした。

 アベ・ピエールは、貧しい人々の救世主的な存在であっただけに、この性加害・性暴力の犠牲者がこの貧しい人々や子どもたちであったことは、さらに衝撃的な話でした。また、これまでも被害者が訴え出たことが少なからずあったにもかかわらず、この財団内で揉み消しのようなことが行われ続け、公にならなかったことも問題を長期化、深刻化させたとして、大きく問題視され、現在のアベ・ピエール財団の代表は、この問題に対して、激しい怒りを表明し、独立した調査委員会を立ち上げ、問題追及、事態の解明に努めることを宣言していました。

 最初の暴露から、ほぼ2ヶ月後、財団は、さらに17件の新たな被害者の証言が認められ、アベ・ピエール財団の名称を変更し、アベ・ピエールが埋葬されている村、エステヴィル(セーヌ・マリティーム県)にある記念碑を撤廃することを発表しています。

 なんといっても、アベ・ピエールはすでに亡くなっているため、本人を告発することはできませんが、このさらなる17件の証言では、「胸への一方的な接触」、「強制的なキス」、「強制的なフェラチオ」だけでなく、「弱い立場の人への性的接触の繰り返し」、「性的挿入の繰り返し」、さらに「子供との性的接触」などの、なかなか重たい内容で、報告書では、50年近くこの行為が続けられてきたとしており、被害者女性は、子どもから成人までに及び、本人が90歳を過ぎて、車椅子で生活するようになっていた時でさえも続いていたとされています。

 これらの証言によると、被害は1950年代にまで遡り、そのほとんどはフランス国内で起こったことでしたが、時には米国、モロッコ、スイスなどでも被害が報告されているとのことで、もう言葉を失う感じです。

 アベ・ピエール財団、エマウス・フランス、エマウス・インターナショナルは「犠牲者に対する全面的な支援」を再確認し、証言者の勇気に敬意を表し、彼らの味方であることを保証することをプレスリリースで発表、サポートシステムは年末までオープンで利用可能であるとしています。

 しかし、逆に、50年も続いたこの性加害行為に対してのサポートシステムが、年末まで利用可能・・ということは年末にはクローズしてしまうとは、どういうことかと思ってしまいます。

 日本のジャニーズ問題は、今、どうなっているのかわかりませんが、長い間、内部で隠蔽されてきたことや、生前は、やたらと本人を奉りあげるような感じがあったり、その実、本人がやってきたことは、えげつないことこのうえなくて、また、アフターケアーや補償についても、どうにもすっきりしないことまで、なんだかよく似ているような気がします。

 そのうえ、アベ・ピエールに関しては、慈善事業の創始者・カトリックの司祭というのですから、つくづくウンザリさせられる話です。

 それでも、彼の作った貧しい人々を助けるためのこの団体やエマウスなどの仕組みは、今でもフランスの中で機能し続けているもの・・、とはいえ、今となっては、おぞましさしか連想できないこの彼の名前の入った団体名を変更するとのことで、それは当然と思いつつ、これまた、ジャニーズを連想させるのでした。


アベピエール


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