2023年12月29日金曜日

真似したいおしゃれ

 


 クリスマス前後は、どこのレストランもスペシャル・ノエルとか、スペシャル・レヴェイヨンとか、特別メニューになっていたりして、その値段からしても、また、ちょっと食べすぎる日々が続いていることもあるので、外食からは、ちょっと足も遠のく感じもするなか、日本から帰ってきてから、全然、外食してないな・・ランチくらいはいいかな?と、たま~に行くフレンチのレストランに出かけた時のことです。

 一見、間口はふつうでも、中に入ってみると、かなり奥まって広いレストランというのは、パリにはよくあることで、そのレストランも、かなり歴史のあるレストランで、歴史を感じさせる建物の造りや、調度品などに包まれている空間が心地よく、また、応対をしてくれるウェイターなどのスタッフもとても感じよく、礼儀正しくて気に入っているお店です。

 昼ならば、たいてい予約もいらないので、気が向いた時に好きに行けるところも気に入っています。ランチのメニューだと、そんなに高すぎることもなく、お値段もほどほどです。

 それほど、フォーマルすぎず、かといって、それほどカジュアルすぎる感じでもなく、ちょうどいい感じが気に入っています。

 その日は、今まで、入ったことのない部屋に案内してくれて(上階、中階、地上階と入り組んで部屋がたくさんあります)、「ほ~っ!ここの部屋、初めてだ!」と部屋の調度品などを眺めながら、メニューを選び、私には、ちょうどアントレが運ばれてきて、「う~ん!やっぱり美味しい~」と舌つづみを打っていた頃、隣には、50代後半くらいの3人連れの男女が案内されてきました。

 それとなく、様子を見ていると、上品な感じの人たちで、それほど着飾っているという感じではないものの、上質な感じの生地のシンプルなセーターに、控え目だけど、要所を押さえているようなアクセサリーを身に着け方で、とってもいいな・・と思って、何気なく、様子をうかがっていました。

 しばらくして、彼らの注文を聞きに来たウェイトレスの女の子が、「フランス語を話しますか?」と彼らに聞いたので、「えっ?」とそばにいた私もちょっとびっくりしたのですが、彼らの一人が、ニッコリと、「私たちは、ホンモノのパリジャンですよ!」と返し、上手くニュアンスが伝わらないかもしれませんが、そのゆったりとした態度が余計に、なんだか、いいな・・ああいう大人・・と思ったのです。

 外国人観光客と間違えてしまった若いウェイトレスの女の子は恐縮して謝っていましたが、穏やかな空間が壊れることなく、逆に彼女にいたわりの言葉をかけていました。

 フォーマルに着飾るおしゃれより、こういう普段着での素敵なおしゃれができるのって、いいな・・そして、その言動や立ち振る舞いなども、その人の醸し出すおしゃれな雰囲気の一部でもあり、私もすでにいい歳ではありますが、こんな大人になりたいな・・こんな歳のとり方、こんなおしゃれができるようになりたいな・・と思いました。

 一方、同じレストランで、見かけたことがあるのですが、まるで、舞踏会にでも行くの?みたいに煌びやかに着飾って、やたらと写真を撮りまくって、豪華なメニューを注文してはしゃいでいたアジア人観光客らしきカップルをみかけたことがあったのですが、観光客で、なんとなくはしゃいでいる気持ちもわからないではないのですが、どう考えてもみっともないな・・と思ったことがありました。

 時と場合にもよりますが、あまり華美に着飾るのではなく、シンプルな服装でおしゃれができるようになりたいな・・と、最近の私は思っています。

 しかし、ここまで書いて思ったのですが、もしかして、おしゃれってもう死語ですか?


おしゃれ


<関連記事>

「フランス人のおしゃれの仕方」

「美しく歳を重ねる同じアパートのフランス人のマダム」

「フランス人は、女を捨てない! パリのジムでの大らかなパリジェンヌたち」

「個性的なおしゃれとドギツいメイクに走るパリの日本人マダム」

「フランス人女性の美しさの基準と美容整形手術」





 

2023年12月28日木曜日

ジェラール・ドパルデューを消すな!50人以上の文化著名人が性加害俳優 擁護の署名



 現在、フランスでは、現在3件の性加害の告発状を受けている俳優ジェラール・ドパルデューについての大論争がどんどん膨らんで大騒ぎになっていきます。

 そもそもは今月初めに彼を特集した雑誌が発売されて、騒ぎが蒸し返されカタチになり、また、その後にその雑誌の盛り上がりをきっかけに、彼にターゲットをあてたテレビのドキュメンタリー番組が放送され、その中での彼の女性蔑視的、性的に侮蔑的な発言などがふたたび炎上、話は、彼が受賞していたレジオンドヌール勲章剥奪か?という話にまで発展しました。

 それにも増して、この騒ぎをさらに大きくしたのはマクロン大統領がテレビのインタビュー番組で、「彼はフランスの誇りである!」などと、「それ?今、言うこと?」と思われるような彼を擁護する発言をしたことで、さらに火に油を注ぐカタチとなりました。

 一応、判決が出ていないということで、「推定無罪」ということが前提での話であるとは思うのですが、一人ふたりではなく、しかも、同業の女優や海外のジャーナリストなど、著名人の被害者からの告発の数々は、告発する側も相当な覚悟があってのことで、推定無罪とはいえ、限りなくグレーです。(しかも、そのうち1件はすでに起訴されている)

 そんな状況で、ふつう「性加害など、絶対に許さない!」と言うのが、大統領としては、妥当だと思われるところを「彼はフランスの誇り」などと言ってのけるあたり、どうにも理解しがたい思いで聞いていました。

 しかし、そのように考えているのはマクロン大統領だけではなかったようで、仏紙ル・フィガロに掲載されたコラムの中で、約50人以上の文化人が「ジェラール・ドパルデューを消さないでください!」、「この偉大な俳優を自分たちから奪うことは悲劇であり、敗北だ!」、「それは、芸術の死を意味する!」などと声をあげています。

 著名人とはいえ、私は、あまりフランスの文化界については詳しくないので、そこに名を連ねているのが、どの程度の人々なのかはわかりませんが、ナタリー・バイ、ベルトラン・ブリエ、キャロル・ブーケ、カーラ・ブルーニ、ジャック・デュトロン、ピエール・リシャール、ナディーヌ・トランティニャン、さらにはジャック・ウェーバーなどが名前を連ねています。

 唯一、私がアッと思ったのは、カーラ・ブルーニ(サルコジ元大統領夫人)でした。

 今年、日本でジャニーズ事務所の性加害問題が大炎上した際に、「こんなこと!海外だったら、絶対に許されることではない!」と言われており、私もそうだと思っていましたが、ジャニーズの問題は、未成年への性加害でまた、ちょっと違うところもあるとはいえ、今回の問題とて、対象は異なりはしますが、弱い者に対する権力や立場を利用した性加害には違いなく、被害者感情を無視したような、この「芸術至上主義」、「芸術は全てに勝る」ような考え方が、こんなにも文化人や権力者の間に沁み込んでいることに、大変ショックを受けた次第です。

 当然、このような考え方には、大反発が生まれ、さらに大論争になっているわけで、また、この擁護する人々の立場をとる人などは、「だいたい、性加害など、何年も経ってから、告発するものではない!」などと言いだす人までいて、本当に開いた口がふさがりません。

 芸術だろうと何だろうと、人間、富と名声を得て、権力を持ち、それが長く続くと慢心をコントロールするのが難しくなり、また周囲もその権力にすがったり、恩恵に預かろうとして太鼓持ちをしたりと、醜悪極まりないことをしでかすような気がします。

 芸能界にせよ、政界にせよ、チカラを持つ者が弱い者を痛めつける構図は、ありとあらゆる場面で起こっていることです。

 しかし、司法の場では、公正に裁いてくれると信じたいし、芸能界や映画界の場合は、結局は、視聴者や観衆が判断することです。


文化著名人の署名


<関連記事>

「俳優ジェラール・ドパルデューのレジオンドヌール勲章剥奪とマクロン大統領の発言」

「世界が首をかしげる日本のマスコミ ジャニー喜多川性加害問題」

「登録者数1200万人のフランスの人気ユーチューバー 未成年者強姦で身柄拘束」

「フランスの報道機関が指摘する安倍元総理と統一教会についての日本での報道と警察と政府、報道機関の歪み」

「安倍晋三の神話は崩壊した」



2023年12月27日水曜日

クリスマスの一家5人殺人事件の犯人は父親だった・・

  


 クリスマスの夜、パリ近郊セーヌ・エ・マルヌ県(イルドフランス)で女性1人と4人の子供、合計5人の遺体が発見され、翌日、その家族の父親が逮捕されました。

 10歳、7歳、4歳、9ヶ月の子供たちとその母親が父親に殺されたのです。しかも、クリスマスイブの夜に・・。

 この事件が公になったのは、同じアパートに住む隣人の通報によるもので、彼女は、アパートの建物の踊り場に血痕を発見して、知人を伴って、その血痕を辿ってその家族の住居に安否を確認しに行きました。ドアフォンに応答した父親は、ドアを開けずに「みんな寝ています」と言ったので、彼女は一旦、家に戻りました。

 それから少しして、彼女はその母親から、「いとこの家にいる」というメッセージを受け取りましたが、このメッセージが通常、この女性から送られてくるメッセージとは違うと感じ、アパートのブラインドが閉まったままであったことを心配し、再び、その家を訪れると、今度はドアの取っ手に血が付いているのを発見し、警察に通報しました。

 駆け付けた警察官は、玄関の鍵がかけられていたため、窓のシャッターを破ってアパート内に突入すると、悲惨な犯行現場のなかに5人の遺体を発見しました。母親と2人の娘には、多数の刺し傷が認められ、4歳の男の子と9ヶ月の赤ちゃんには、外傷は認められず、窒息死、または、溺死が疑われています。

 通報した女性はこの母親と親しくしていたといい、大晦日には一家を家に招待していたと話しており、母親はとても陽気な人で、父親は、とても、おとなしくて控え目な人だったと話しています。

 近隣住民らは警察に対し、12月24日午後11時から12月25日早朝にかけて悲鳴を聞いたと証言しており、本来ならば、クリスマスイブからクリスマス当日にかけての一家で楽しく過ごしているはずの時間帯に悲鳴とは穏やかではありません。

 アパートに設置されている監視カメラの映像から、この父親は25日の夜8時過ぎにアパートを出ていく様子が確認され、翌日、この父親は同地域の彼の実家の前で逮捕されました。

 この男性は2017年にうつ病と精神病性障害で精神病院に収容されており、一応、監視下にあったものの、その後、退院してからまもなく、2019年には、妻の肩甲骨をナイフで刺すという事件を起こしていました。

 この夫婦、最近、結婚したばかりであったようですが、14年間の長い付き合いで、この事件の際も、妻は事を大ごとにしたくない事件化したくないと、パートナーが長年うつ病に苦しんでいると説明し、精神鑑定の結果、気分変調症(慢性うつ病状態によって定義される気分障害)と精神病的病理が存在し、事件当時の識別能力が失われていたと結論づけられ、その後、事件はそれ以上の措置を講じることなく終了してしまいました。

 結果的には、彼の精神病理は改善されることもなかったために、この惨状が展開されてしまったことになったことは、とても悔やまれることです。

 この手の精神障害とも思われる夫婦間および家族間の残酷な殺害事件は、時々、事件として浮上しますが、なぜ、ナイフまで持ち出したような事件を起こした加害者を、たとえ、被害者であったパートナーが事件として扱われることを望まなかったとしても、野放しにしてしまうのかは、そのたびに疑問に感じるところでもあります。

 この男性は、逮捕後に、「愛している妻に危害を加えたかったのではなく、自分自身に危害を加えたかった・・意図的せずにやってしまったことだ・・」と語っているそうですが、事件後に、妻の携帯から隣人に妻に扮してメッセージを送って犯行をごまかそうとしていたりもしていたことから、どうにも辻褄が合わない気がします。

 検察は「15歳の未成年者の故意の殺人」と「配偶者の故意の殺人」でこの事件の司法捜査を開始しました。 一家の父親はこれらの犯罪で終身刑に直面しています。 事件を起こした時点での精神病理の鑑定により、判断力がなかったと認められた場合、彼は懲役30年に処される可能性もあります。

 家族5人殺害ともなれば、日本だったら、まずは死刑は免れようもないと思われますが、死刑制度が廃止されているフランスでは、最悪でも終身刑です。精神病により責任能力なしと判断された場合は懲役30年になる可能性もあります。

 死刑制度には、問題があるとはいえ、このような人物が刑務所に30年いて、精神状態が改善されるとも考えにくく、また、これ以上悪化した状態で世に放たれるのかと思うと、凍り付くような思いがします。


クリスマス一家5人殺人事件


<関連記事>

「数度にわたる殺害予告の末、逮捕・拘留も、釈放され、元パートナーを殺害した男」

「妻を殺して3ヶ月間ウソをつき続けた男 逮捕拘留の末、自白」

「パリのバラバラ殺人事件 真犯人は被害者の夫だった・・」

「度を超えているフランスのDV 逮捕・投獄・釈放後に元妻を焼き殺す凶暴さ」

「フランスの家庭内性暴力の犠牲者が起こした殺人事件 ヴァレリー・バコの裁判」

 

 


 


2023年12月26日火曜日

パリ市の呼びかけ クリスマスツリーのリサイクル

  


 各家庭でのノエルのデコレーションを彩るのは、やはりクリスマスツリーで、プレゼントはクリスマスツリーの下に積み上げられて置かれるという習慣があり、その演出のためにも欠かせないものの一つでもあります。

 我が家でも娘が小さい頃には、夫の指導?により、娘はプレゼントのお願いの手紙をサンタクロースに送り、どういうわけか、家族それぞれの靴をツリーの下に置き、オレンジを添えるという行事を行い、25日の朝、娘がワクワクしながら、クリスマスツリーに駆け寄っていき、嬉しそうにプレゼントを開けていくのを、私たちは、娘以上にワクワクしながら、そんな娘を見守っていました。

 そんなクリスマスツリーを買ってきて、そのデコレーションを家族で始めることから、もうクリスマスを家族で楽しむことが始まっていて、やはり、クリスマスツリーは、我が家でも、以前は、ある種、象徴的で不可欠なものでもありました。

 クリスマスシーズンが始まると、生のモミの木がスーパーマーケットの前やガレージなどで売られていて、生の木だけに、当然、しまっておけるものでもなく、クリスマス、せめて、年明けの一連のお祭りが終わると、当然、捨ててしまうもので、これは、割りばし(以前、日本やアジアの割りばしはエコロジストの標的になっていたこともありました)どころではない、大変な廃棄物問題ではないか?と思ったこともありました。

 かねてから、フランス人のゴミの捨て方には、疑問が多いところでもありますが、このクリスマスツリーなどもまた、かなり、あからさまに、我が家のアパートのふつうのゴミ収集のゴミ箱にそのまま、無残にのせられているのを毎年、見かけます。

 まれに、夏ごろになって、ツリーが捨てられているのを見かけることもあり、「えっ?今ごろ?」と驚かされることもありますが、これを見ると、なぜか「お雛さまをいつまでも片付けないとお嫁に行けない・・」などと昔、言われたなあと思い出します。

 しかし、ここ数年、パリ市はこのクリスマスツリーのリサイクルとして、今年は12月26日から1月20日まで、176ヶ所の収集場所を設け、「クリスマスツリーに第2の命を吹き込もう!」と呼びかけています。

 第2の命を吹き込む?とは、どういうことなのか?と思ったら、回収されたモミの木は、粉砕され、緑地の植物を保護する役割を果たすそうです。 粉砕されたモミの木は雑草の発生を減らし、水の蒸発を制限し、土壌の寿命を最適化する地下微生物の発達を促進するため、天然の除草剤として利用されるのだそうです。

 モミの木は、酸性であるため、堆肥としての使用には適していませが、一方、その抗発芽特性は、環境に優しい方法で雑草の増殖を制限するのに最適で、自然の除草剤として作用するのだそうです。

 私が子供の頃は、季節になると、母がどこからか鉢植えのクリスマスツリーを買ってきて、飾っていたりしたこともあったのを覚えていますが、その処理はどうしていたのか? たいていは、枯らしてしまったのだと思いますが、ある年、枯らしてしまうのが可愛そうだからと、庭に植え替えたら、青天井でどんどん大きくなり続け、ある時期には、植木屋さんにこれ以上、伸びないように止めてもらったことを記憶しています。

 一方、両親がいなくなった実家では、庭もあまり手入れしなくなったために、放っておくと雑草が際限なく生えてくるために、一時は除草剤を撒こうかとも思ったのですが、それもなんだか躊躇われ、除草シートを貼ったりしていたのですが、まさかのモミの木の木くずが除草剤がわりになるとは、今度、日本に行ったら、試してみようかと思っています。

 常日頃のフランス人のゴミの捨て方を見ていると、あまり期待できないクリスマスツリーの回収場所設置ですが、昨年は意外にも 114,247 本ものモミの木が回収されたとのことで、さすがのフランス人もクリスマスツリーだけはちょっと特別扱いなのかもしれません。


クリスマスツリーのリサイクル


<関連記事>

「ゴミの捨て方に見るフランス人のモラル フランス人には、箱を潰して捨てようとか、そういう観念はない」

「フランスのシェアハウスでいつの間にか寮長のようになっていた娘」

「パリジャンの84%は自分たちの街が汚れていると思っている でも自分たちが汚しているとは思っていない」

「年金改革問題 ストライキ続行で街中にゴミが溢れるパリ」

「パリのねずみ」




2023年12月25日月曜日

ノエルと年末年始に警察官がまさかのストライキ

  


 パリの日常では、もうすっかり見慣れてしまって、空港などはもちろんのこと、大きな駅や街中でも、きっと、初めて見たら、ギョッとするような数のイカつい警察官や、たくさんの警察車両が並んでいたりしますが、もうそんな光景にも慣れてしまって、あらためて、驚くこともなくなっていますが、考えてみたら、パリは普段から、警戒のために巡回してくださっている警察官の数は他の都市と比べても相当数にのぼるものと思われます。

 たとえば、他の地方に行っていたりして、パリに戻ってくると、あらためて、パリは本当に警察官の多い街だなぁと思います。

 しかし、私たちが、一見、一括りに見てしまう警察も国家警察やその特殊部隊、自治体の警察、憲兵隊と様々な組織で構成されていますが、このなかの自治体警察の労働組合が26,000人(フランス全国地方自治体警察官連盟(FNPMF)によると、各自治体の市長の競争によって採用された地方公務員と自治体警察官の数は20年間で倍増し、現在では2万6000人に及んでいる)に、まさかのノエルと大晦日から元旦にかけてのストライキを呼び掛けています。

 ノエルは、どちらかといえば家族で過ごす人も多いため、そこまでの緊張状態が起こることは少ないとはいえ、祝祭の日といえば、世間は少なからず興奮状態にあり、問題も起こりやすく、ましてや、大晦日の日ともなれば、圧倒的に元気な若者たちは外に出て騒ぐ者が多く、毎年、何十台もの車が燃えることでも有名な暴動じみたことが起こる日でもあり、よりにもよって、そんな日に警察がストライキとは前代未聞のことです。

 彼らはこのストライキの要求として、「自治体警察の給料は低く、国家警察はより良い社会保障を受けている」と訴え、給与水準の引き上げを求めています。また、年金についても、35年間就労して、月額1,200~1,400ユーロのみで、同じ危険にさらされながら仕事をしているのに国家警察とはえらく違う!」と。

 ストライキを呼び掛けるからには、最も効果的な(世の中を混乱させたり、迷惑をかける)タイミングを選択しようとするのは、わからないでもありませんが、こと一般市民の安全にかかわる職業では、それってありなの?という気がしないでもありません。

 しかし、今回の彼らは、最終的にはパリオリンピックという特別な切り札も持っており、ノエル、大晦日から元旦にかけて、そして、2月3日での全国の自治体での集会を予告しており、それでも改善されない場合には、「パリオリンピックの警備には携わらない!」と警告しています。

 パリオリンピックといっても、競技はパリだけで行われるわけではなく、全国規模で展開されるもので、各自治体の警察の協力は必要不可欠です。

 日頃、私が見かけるたくさんの警察官のうち、一体、自治体警察がどれほどの割合を占めているのかはわかりませんが、オリンピックともなれば、マックスの警戒体制が敷かれる予定になっているのは、明白です。

 それが崩れることは、大変なことです。

 パリは、平常時でさえ、観光客が多い場所で、観光客だけでなく、その観光客狙いの犯罪者も周囲の国々から集まってくる場所でもあります。

 ノエルと年末年始に加えて、オリンピックまで盾にしている自治体警察は、要求を叶えられるのでしょうか? 

 しかし、今後、年明け以降、オリンピックを盾にしたストライキが他にも続々と起こる可能性があるかもしれません。


自治体警察ストライキ


<関連記事>

「パリだけでも毎晩警察官2000人が動員されている! デモは日に日に過激になっています・・」

「フランス全土で350万人動員の記録的なデモ 一晩に140ヶ所で炎が立ち上るパリ」

「年金改革交付後 ストライキ・デモの次はオリンピックを盾にする動き」

「フランスは、いつも誰かが何かを訴え、戦っている フランスは、デモの国」

「日本の失われた30年に思うこと」



 

 

2023年12月24日日曜日

フランス人がノエルに使うお金 物価高にもかかわらず減少

  


 フランス人にとって、一年のメインイベントの大きな一つでもあるノエル、クリスマスのために使うお金は、平均 549ユーロ(約8万6千円)と、昨年よりも19ユーロ減少しているという調査報告が出ています。

 これは、昨年よりもかなり円安になっているため、円に換算すると多くなっているという円換算では妙なことになっていますが、現実には、インフレのためにほぼ全ての値段が上昇しているなか、減少しているということは、事実上、かなりの緊縮財政をとっていると言えます。

 この 549ユーロには、ノエルは主に家族と過ごすことが多いために帰省するための交通費や、食事、プレゼント、クリスマスツリーなどのデコレーションなど、全てが含まれた金額です。

 なかでも、プレゼントに関しては、年々ヒートアップしていた感があり、フランス人一人につき、用意するプレゼントの数は平均7つと言われており、この家族に愛情を示す愛情表現のひとつとして習慣となっているプレゼントはかなりのプレッシャーになっているという調査結果も発表されています。

 プレゼントの数を減らすのではなく、いかに安く抑えるかという点で悩ましく思っているということで、困っているとはいえ、ノエルの準備の買い物をしている人は、どこかワクワク楽しそうで、そんな中でも、しっかり予算を抑えているのは、やはり、このインフレがノエルにも大変な影響を与えていることがうかがえます。

 実際には、このプレゼントにかける割合が依然として大きく、このノエルのための全予算549ユーロ中、プレゼントにかける金額は平均 332ユーロと最も多く、(ちなみに食事には 120ユーロ)かなりをプレゼントにかけていることがわかります。

 この時期は、メトロに乗っても、大きなプレゼントの入った紙袋を下げている人が多く、恐らく、フランスでは、最も商品が売れる時期でもあり、今年は、クリスマスイブが日曜日にもかかわらず、多くの店舗は営業して(通常、日曜日は休業)、売り上げをあげることに努めています。

 昨年は、冬の間は電力供給が間に合わないかもしれないと言われつつ、イルミネーション点灯時間が制限されたりしていたこともありましたが、今年は、そんな様子はなく、キラキラのパリ。

 イルミネーションの準備も例年よりも早く始まっていて、このフランス人が最も消費する季節を盛り上げようとしていましたが、結果的には、前年よりも、クリスマスの消費はダウンの傾向にあるようです。

 昨年、フランス人がノエルの準備のために使った予算は前年よりも増加していましたが、今年は減額、ノエルはフランス人にとって家族とともに過ごす夢のような時間であると同時に、けっこう現実的でもあり、イルミネーションと消費は正比例しないようです。


フランス人のノエル、クリスマス予算


<関連記事>

「ノエルの予算 フランスの平均568ユーロは安いか高いか?」

「ノエル直前のパリのスーパーマーケット やっぱりノエルの食事はケチらない」

「フランス人のプレゼント交換」

「フランスの国会を騒がせる「フランス人のクリスマスを迎える権利」」

「ノエルの食材に和牛が君臨するパリ」



2023年12月23日土曜日

俳優ジェラール・ドパルデューのレジオンドヌール勲章剥奪とマクロン大統領の発言

  


 ジェラール・ドパルデューはフランスの有名な俳優です。彼の俳優としての多くの業績とともに、様々なスキャンダルでも有名な存在でもあります。

 彼の歩んできた道は幼少期から決して平坦なものではなく、俳優として成功をおさめてからも、税金逃れのために、ベルギーに移住したり、プーチン大統領と親交が深かったり、最近では、女優のシャルロット・アルヌールからの告訴を受け、2020年から強姦罪で起訴され、その後、女優のエレーヌ・ダラスによる2007年に遡る性的暴行行為とスペイン人ジャーナリストで作家のルース・バザによる1995年に遡る強姦行為など、現在3件の性加害問題に関する告訴状が提出されています。

 まるで、フランス版 Me too 運動のように、1人が告訴を始めたことで、その後に立て続けに告訴状が提出されたカタチになっています。しかし、彼自身はこの告発を否認しており、この事件は、まだ捜査中で、有罪判決は出ていません。

 しかし、こんな状況の中で、先日、フランステレビジョンで12月7日に発売された雑誌「Complement d’investigation」でジェラール・ドパルデューを特集した一連の内容が放送され、物議を醸しました。

 内容は、北朝鮮で馬術のデモを観戦するジェラール・ドパルデューの発言などを扱っているもので、その中での彼の少女に対する発言が性的に侮蔑的で不適切であり、女性の品位を傷つけるものであると論争を巻き起こしているのです。

 同時にこれはフランステレビジョン側が故意に映像を編集して、彼を陥れようとしているとする意見があるものの、フランステレビジョン側は、「私たちのドキュメンタリーには、同じくらい深刻で衝撃的な問題のある箇所が無数にある」と、自分たちの報道は誠実なものであると反論しています。

 そして、この論争に輪をかけたのが、別のインタビュー番組でこの件について質問を受けたマクロン大統領の彼を庇っているとも思えるような発言でした。

 ジェラール・ドパルデューは、1996年シラク大統領政権下にレジオンドヌール勲章を受章していますが、このいくつもの告訴にまつわる彼の行為や今回の騒動により、文化相はレジオンドヌール勲章(フランスの軍事、社会、文化への功労者に送られる賞)の懲戒手続きの開始を発表しています。

 この件について質問されたマクロン大統領は、文化相からの申し入れがあることは認めたものの、最終的に決定するのは大統領である自分であるとし、また、自分は彼の友人でもあり、大ファンでもあることを公言し、彼はフランスの誇りであり、現段階では推定無罪であるとし、「レジオンドヌール勲章は道徳を説くためにあるのではない」と語りました。

 さすがに強姦罪で告訴されている状態は、もうすでに道徳云々の範囲を越していると思われるのに、なぜ?マクロン大統領がこれほどまでにグレーな彼を庇うような発言をするのか?大変、奇妙な気もします。

 しかし、実際に彼が有罪判決を受けた場合は、大統領が決定するということにはなっていますが、ほぼ自動的に剥奪されるようです。

 過去にもこのレジオンドヌール勲章が剥奪された例は、実はけっこうあるようなのですが、ウェブサイトでは、この措置は匿名化されているようで、官報のページでレジオンドヌール勲章のメンバーが除外されたことがわかっても、アクセスが保護されているためにそれが誰であるのかを知ることは簡単ではないようです。

 しかし、過去にこのレジオンドヌール勲章が剥奪された例の中には、外務省の現金ボーナス問題・・なんていうのもあったりで、まったく、どこの国でも同じようなことがあるんだな・・しかも、レジオンドヌール勲章叙勲者だったとは、びっくりです。


ジェラール・ドパルデュー レジオンドヌール勲章剥奪


<関連記事>

「フランソワーズ・モレシャンのインタビュー記事」

「メルケル首相にレジオン・ドヌール勲章最高位のグランドクロワ贈呈」

「美食の街リヨン 市議会が公式レセプションでのフォアグラ使用禁止」

「俳優ピエール・パルマードの自動車事故が炙り出した薬物による転落人生」

「チャールズ国王のフランス訪問に見るフランスとイギリスの関係」