2023年7月16日日曜日

RER B線でホームから突き落とされた女性死亡

 


 もともと、RER B線(パリ市内も通るパリ郊外線)は、あまり治安のよいイメージではありませんでしたが、今年に入って同じ路線で、2回目の死亡事故が起こったというので、ちょっと、ウンザリしています。

 この路線は、CDG(シャルルドゴール空港)に行く際に利用する路線で、以前は早朝や夜遅かったりすると、列車内で襲われて荷物を奪われたりする危険があるので、空いている場合は、できるだけ、孤立しないように人のいる車両に乗った方がいいとかいう話は、よく聞いた気がします。

 ところが、今回の事件は、祝日の朝、9時半頃、パリ14区のシテ・ユニヴェルシテール駅のホームに立って、電車を待っていた52歳の女性がいきなりすごい勢いで線路に突き落とされ、駅に入ってきた電車にはねられて死亡するという恐怖の事故が起こりました。

 検察によると、ホームに突き落とされた女性は、一度、立ち上がったものの、電車の急停車が間に合わずに、轢かれてしまったという残酷なもので、被害者の恐怖はもちろんのこと、現場を目撃してしまった人にとっても、かなり衝撃的な場面であったに違いありません。

 犯人の男は、その場からはすぐに逃走しましたが、その日の午後3時40分頃に、ヴィトリー・シュル・セーヌ(ヴァル・ド・マルヌ県)のスーパーマーケットで万引きをして捕まっており、その際に朝、RER B線での事件を起こしたことを自白したそうで、RER B線の監視カメラとの照合の結果、彼の犯行であったことが確認されたそうです。

 容疑者は1981年生まれ42歳のギニア国籍の男性で、警察に対し、「自分は神であり、弱い人々をターゲットにして、人を殺して、地球上で善行をつまなければならなかった・・」と話しており、また「子供や高齢者を殺すつもりで、ヴィトリー・シュル・セーヌの路面電車の近くにナイフが詰まったバッグを隠している」とも供述をしているそうです。

 明らかに正気を疑う供述が続いたために、この男は、精神鑑定を受け、通常の警察拘留ではなく、警察病院の精神科に搬送されました。

 しかし、驚くことに、この男性は、2011年にもホームから線路に人を突き落としており(その時は、電車の急停車が間に合い、死亡事故には至らなかったが、精神鑑定の結果、責任能力なしと判断されたらしい)、同様の事件を起こしたのが、これで2回目ということが判明しています。

 彼は最初の事件から5年間、精神病院に入院していたようですが、その後、再び、世に放たれていたようです。

 今回の被害者は死亡してしまっているため、被害者の証言は得ることができませんが、前回の被害者は、「男が近づいてくるのを気付かずに、彼は一言も言わずに、いきなり腕を強く掴まれて、かなり強めに線路に投げつけられた」と証言しています。

 容疑者の、「自分は神で、弱い人々を攻撃しなければならない」という供述ですが、今回の犠牲者は、さほど高齢でも障がい者でもありません。女性という意味では弱い人々に分類されるのかもしれませんが、なぜ、彼女がターゲットになってしまったのかは、不明です。

 今回の事件が起こったRER B線は、今年の4月にも乗客が線路に落ちて死亡する事故が起こっており、事故後、何の対策もとられていないことには、疑問を感じないでもありません。

 この容疑者は精神障害者という括りで片付けられてしまえば、それで終わりなのですが、最近の犯罪の傾向として、ただの治安の悪さ、金品強奪のための犯行だけでなく、明白な目的なしに、不特定の対象を狙ったより暴力的な犯罪が増えている気がするのは、恐ろしいことです。


RER B線 死亡事故


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2023年7月15日土曜日

2024年のパリ祭のパレードとオリンピックの融合

 


 心配されていた今年のパリ祭のシャンゼリゼでのパレードは、ほぼ、いつもどおり滞りなく行われました。なぜか、この日はいつもお天気にも恵まれる感じで、いつもながら、フランス人でもなく、ただフランスに住んでいるというだけの外国人の私でさえも、フランスを誇らしく感じる日でもあります。

 凱旋門を背景にシャンゼリゼの緑の街路樹には、トリコロールのフランス国旗がたなびく絶好のロケーションの中、その中央を隊列を組んで行進してくる様子は、やはり、何度、見ても、ため息が出るほど美しい光景です。

 このパレードはシャンゼリゼ以外にはあり得ないように思ってしまいますが、なんと、来年のパリ祭のパレードのルートは、パリオリンピックのために、ヴァンセンヌとナションの間を通るルートに変更されることが発表されました。

 2024年のパリオリンピックは、7月26日に開会されますが、このパレードのルート変更は、現行のパレードの終着点となっているコンコルド広場がスケートボードなどの新しい都市スポーツ分野の会場となるためと言われています。

 しかし、来年の、このパリ祭のパレードの中には、聖火リレーが組み込まれる予定になっているそうで、オリンピック聖火は7月14日にパリに到着し、2日間かけて、パリ1~20区の全ての区を廻ります。

 オリンピック聖火はシャンゼリゼはもちろんのこと、 国会議事堂、リュクサンブール公園、パンテオン、ソルボンヌ、ノートルダム寺院、バスティーユ、レピュブリック、ルーブル美術館などの最も有名な場所を経由して、パリの中心部を廻り、オテル・ド・ヴィル(パリ市庁舎)で1日目を終えます。

 翌日には、パリ市長曰く、「私たちの首都の魅力を全世界と共有するとともに、なによりもパリは私たちが住んでいる都市であり、地区の住民とともに共有したい」と、聖火はシャペル、モンマルトル、ベルヴィル、カタルーニャ広場、あるいは、カイユボットを通過し、私たちの日常生活に光を当てる機会にしたいと語っています。

 オリンピック聖火はこの2日間、パリを廻り、その後、パリを離れてフランス国内をめぐりますが、26日には、再び開会式が行われるパリに戻る予定です。

 現在のフランスの不安定な社会情勢の中、パリ祭だけでも大変な警戒であったのに、このうえ、オリンピックという世界中が注目する場が重なるということは、並大抵のことではないと思われますが、逆にこのパリ祭とオリンピックの融合で、不安定に映ってしまっている現在のフランスの世界からのイメージを払拭すると強気の姿勢です。

 私がフランスに来て以来、パリ祭のパレードはシャンゼリゼで行われるものしか見たことがありませんでしたが、このパレードがシャンゼリゼに固定されたのは、1980年からのことだそうで、それまでは、場所は不定期に変更されてきており、最初のパレードはロンシャン競馬場で行われたそうです。

 しかし、どんなフランス人もが「世界一美しい通り・シャンゼリゼ!」と誇らしげに語るシャンゼリゼ以外でのパレードがどのようなものになるのか? また、どのように聖火リレーと融合するのか? 今から楽しみです。

 また、来年のパレードのルート変更から、オリンピックの話題になったタイミングで、止まらないインフレとともに加速しているデマを払拭するために、マクロン大統領は、「オリンピック税などは、あり得ないこと、オリンピックはオリンピックの資金で賄うこと」(オリンピック税が導入されるという噂があったらしい・・)と断言し、これに加え、政府は、オリンピックチケット40万枚(全チケット1,000万枚中)を国が購入し、若者、特に16歳未満の子供に配布することを発表しています。

 およそ、1年後に迫ってきたパリオリンピックをもう1年しかないとも、まだ1年もあると思うかは、捉えかた次第ですが、たった一つの出来事でさえも、あっという間に大きな暴動になってしまう現状を考えれば、現在の暴動がおさまったとて、また、いつ炎が再燃するかはわからないわけで、やはり、パリ祭+パリオリンピックの警備・警戒は相当なものになるんだろうな・・とそんなことを考えてしまいます。


2024年パリ祭 パリオリンピック


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2023年7月14日金曜日

パリ祭・革命記念日に向けてエリゼ宮に届く大統領殺害予告と切断された人間の指

  


 今年のパリ祭・革命記念日は、ちょっと信じられないほどの勢いと暴力性をもった暴動が起こった直後ということで、いつにない警戒体制を敷いていることは、政府が7月14日を前後して動員、配置している警察官や憲兵隊などの数や、交通規制、輸送規制、花火に関する規制などで、うかがい知れるところでもあります。

 市町村が公的に行う花火や催し物などに関しては、禁止されているわけではありませんが、危険回避のために、自粛、自主規制で取りやめにしている地域もあります。

 にもかかわらず、前日の夜には、かなり大きな花火もあがっていて、例年ならば、さほど気にはしていないものの、なんだか気のせいか前日にしては、かなり音が大きい気がして、なんだか、少々、不安な気持ちになってしまっているのも事実です。花火の音を聞いて、ちょっと不安にもなるあたり、やっぱり普通ではありません。

 これだけピリピリしながら迎えるパリ祭というものも、今まであまり記憶にないのですが、エリゼ宮には、マクロン大統領殺害予告や、そのうえ、なんと「切断された人間の指が届く」という前代未聞の事件も起こっています。

 マクロン大統領の殺害予告をしたのは、23歳の男性のようで、ビデオゲームサイトで、「パリ祭の日にシャンゼリゼを攻撃するためにカラシニコフを購入するつもりだ!」と投稿しており、また、「イスラム教徒、ユダヤ人、黒人、同性愛者」といった少数派を攻撃したいとも宣言していました。

 彼のこのネット上の発言から、複数のネットユーザーの通報により、この男性はすでに逮捕されているようで、逮捕時には、ナイフで警察に向かいかかるという、非常に反抗的で狂暴な態度であったうえに、彼の車の中からは3本のナイフが発見され、また押収された彼のパソコンからは、ターゲットを検索していた履歴が発見されました。

 RMCによると、容疑者はアルジャントゥイユ(ヴァル・ドワーズ)在住で、自らを「国家主義者」と称しているということです。

 そして、もう一つ驚かされる、エリゼ宮に郵便で届けられた手紙が添えられた「切断された人間の指」に関しては、すぐに警察の捜査が開始され、当局によると、指先は手紙に署名した人物のものであり、すぐに犯人は特定されましたが、彼は精神疾患を患っている患者で、すでに適切なサービスによって治療中であると発表されています。

 どう考えても、ふつうではないやり口も、精神疾患を患っているということで、理解できる気もしてしまいそうになりますが、「すでに適切なサービスによって治療中であるという点については、治療中であるとはいえ、このような奇行に走るのですから、治療の効果はいかばかりなのか?と疑問にも思うし、決して安心できるものではありません。

 これらの件に関しては、エリゼ宮をはじめとして、マクロン大統領本人もコメントを控えており、不穏な雰囲気が広がることを恐れて、事件を大々的に騒ぎ立てることを控えています。

 しかし、このような事例が続いているからこそ、今回のパリ祭の警戒がいつもよりも厳しいピリピリしたものになっているのも頷けるような気がします。

 また、年金問題で暴動が起こった時も、100日後までには、夏前までには、フランスが乗り越えていかなければならない道と方策を示していくと話していた約束は、その時点では、パリ祭の日に行われる大統領演説で語られるであろうと皆、思っていたものの、今年の演説はパリ祭の日には行われないことがエリゼ宮から前もって発表されており、数日後にあらためて、行うとしています。

 このフランス国民が歓喜し、興奮する行事の日は、あえて、あらたな火種となりかねない演説は日をずらして行うということも、この社会全体がなんとなく不安定で、情勢不安の中、いつでも爆発しかねないものをフランスが抱えているという現れなのかもしれません。

 

大統領殺害予告と切断された人間の指


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2023年7月13日木曜日

娘と私の友人の不思議な関係

  


 娘が日本で仕事を始めて、1年半くらいが経って、その間、2回フランスに一時帰国?していますが、そのたびに、日本に住む私の友人たちとの間の伝書鳩のようなことをしてくれています。

 私も日本を離れてから、もう20年以上経つので、もともと、そんなにたくさんいなかった友人もさらに限られて、わりと頻繁に連絡をとったりしている友人は、今では、そんなに多くはありません。

 とはいえ、この20年ほどの間に一時帰国するたびに会っていた友人たちとは、両親が存命中だったころから、母はすでに心臓の具合があまりよくなかったために、娘を両親に預けて、私1人が友人に会いに出かけるということもできずに、友人に会うときは、必ず、娘が一緒でした。

 娘が日本に住むことになった時に、最初は私もついていって、お役所のこととか、銀行の手続きとかの手伝いをし、親戚はたくさんいるものの、日本には友人がほとんどいなかった娘を案じて、ついでに仲の良い私の友人たちには、一応、「娘が日本で一人暮らしをすることになったから、何かの時にはよろしくね・・」と、ラインを繋げてもらったりして、一応、声をかけてきました。

 今では、日本ですっかり仲良しのお友達もできたようで、楽しそうに暮らしている娘ですが、わりと臆することなく、私の友人とも連絡を取り合ったりして、一緒に食事をしたり(というか、ごちそうになっているらしい・・)、パリに来るとなると、友人から私へのおみやげを受け取りに行ってくれて、持ってきてくれ、また、私が、これ、〇〇ちゃんに渡しといて・・というものを友人に届けてくれたりしています。

 しかし、わが身に置き換えて考えれば、母親の友人と当の母親なしに会いに行ったり、一緒に食事をしたりということは、私には、経験がなかったことで、そんなことは想像もつかないことなので、ちょっと気になって、「私の友人に届け物をしに行ったりするの嫌じゃないの? ママと同年代のおばさんと会ったりするの面倒くさくない?」と聞いてみたところ、「ぜ~んぜん、大丈夫!ぜ~んぜん嫌じゃない!」と。

 私の友人も友人で、「ぜ~んぜん!むしろ、若い子と過ごせて楽しいよ!この間も一緒に買い物につきあったし・・」などと結構、楽しんでくれている様子。彼女には、子供がいないので、そんなことも新鮮なのかもしれません。

 しかし、私の友人と娘とが、そんなふうに、良好な関係を保ち続けてくれていることには、それこそ、一年に一度とはいえ、長い年月、帰国するたびに一緒に食事をしたり、おしゃべりをしたりしているところに、否応なしにとはいえ、娘も一緒にいた歴史があるわけで、そんな歳月が無駄にはなっていなかったと思わされる今日この頃です。

 まあ、娘にしてみれば、彼女たちに会うということは、間違いなく美味しいものが待っている・・と思ってのことなのかもしれませんが、自然に母親の友人とも、ほどほどに付き合ってくれている娘にも、母親から離れて暮らしている娘にそれなりに気を配ってくれている友人たちにも感謝しています。

 おかげで、私はパリにいても日本の美味しいものにありつけています。


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2023年7月12日水曜日

騒音被害の苦情を言いに行った75歳の男性が殴る蹴るの暴行を受けて死亡

  


 フランス北部の街ヴュー・コンデ(パ・ド・カレー地域圏)で、夜中の騒音を注意しに行った75歳の男性が14歳から18歳の複数の男性に殴る蹴るの暴行を受けて死亡するという痛ましい事件が起こりました。

 事件が起こったのは、先週のことでしたが、数日間、危篤状態が続いていたこの被害者の男性が死亡したことから、殺人事件となってしいました。

 ご近所トラブルの中でも騒音問題は大小含めて、珍しくない問題ではありますが、この騒音問題がきっかけで殺人事件にまで発展する話は、幸いなことに?これまではあまり聞いたことがありませんでした。

 事件は夜中に起こったことですが、この被害者は路上に倒れているところを発見され、救急搬送されましたが、この時点ですでに重体で、容疑者として、すでに暴行傷害、殺人未遂の罪で17歳と14歳の未成年者2名と18歳の少年が逮捕され、警察に拘留されていましたが、被害者が死亡したことで、殺人事件へと切り替わりました。

 主犯は、17歳の青年と言われていますが、この青年と一緒にいた14歳の少年2名と18歳の青年たちは、犯罪や軽犯罪の実行を阻止しなかったこと、および危険にさらされている人を助けなかった罪で起訴されています。

 なんとなく、今は亡き夫は、きっと、このような騒音があった場合に、やはり、黙っていなかっただろうと思えたりして、なんとなくイメージを重ねてしまったところもあるのです。

 以前、夫が我が家と同じアパート内にいた素行不良?の少年に苦情というよりも、その母親の相談にのって、その少年の更生の道を一緒に探していたりしていたことがあって、なんとなく、この事件を聞いて、夫だったら、やはり黙ってはいなかっただろうと思うと、余計に恐ろしい気がしたのです。

 また、以前、日本からパリに来たばかりの人に「深夜のアパート内のゴミのダッシュボードの音がうるさいので、張り紙などをしたけれど、一向に止む気配がないけれど、どうしたら、よいでしょうか?」と相談を受けて、「フランス人は張り紙くらいは意に介さない人も多いから、直接、話をしに行った方がいいかもしれませんよ・・」などとアドバイスをしたことがあったのです。

 その際は、結果的に問題のあった世帯は、その人が思っていた世帯とは違う世帯だったのですが、結果的には、ちゃんと話もできて、円満解決したので、よかったのですが、これは、下手をすると、今回のようなこともあり得なくもないので、前言撤回しなければなりません。

 「黙って我慢していたら、フランスでは生きていけない・・言うべきことは言わなくては・・」というのも、ある意味、現実ではありますが、相手がこのような暴力的な相手の場合は、まともに話ができないので、警察に通報するべきなのだと今回の事件であらためて、思い直しました。

 もちろん全ての若者が暴力的なわけではないにせよ、つい最近の暴動しかり、今回の暴行事件しかり、ちょっと限度を超えているのは、大いに不安に感じるところです。

 75歳の高齢の男性に10代の若者たちが命を奪うほどの暴行を加えるなど、想像するだに恐ろしいことです。

 ネット上では、被害者の男性の写真が出回っていますが、穏やかそうな品のよさそうな年配の男性です。

 100歩譲って(譲れないけど)、暴れるにしても、限度というものがあるだろうに、それを殺すまでやってしまうところが、恐ろしいところで、やっぱり警察にお願いする方が賢明なのかもしれないとは思うものの、警察が来たとて、こういう輩は、警察に対しても、同じような行動をとった挙句に警察を逆恨みするようなことになるので、結局、先日の暴動のような問題に至るのです。

 たしかに警察の対応にも人によっては、問題はあるとは思いますが、このような暴力少年たちに、少なくとも、一般市民が立ち向かえるものではないかもしれません。

 75歳という年齢で、まさかこんなことで、殴る蹴るの暴行を受けて、命を落とすなど、本人はもちろんのこと、遺族の悲しみははかりきれません。


騒音を訴えた75歳の男性暴行を受け死亡


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2023年7月11日火曜日

暴動後、パリ祭に向けて、いつにない警戒ぶり 花火の販売・輸送禁止

  


 暴動後、といってよいのか? もう完全におさまったのかはよくわからない今回の暴動は、おそらくフランスの今年の10大ニュースに入ると思われる大変な出来事でした。

 この暴動の火種がおさまったのかおさまらないのか、まだよくわからない現時点で、フランスは一年に一度のパリ祭・革命記念日の祭典を控え、いつも以上に警戒を強めています。

 そうでなくとも、例年、パリ祭の夜には、フランスの光と影の部分が同時に表れる日で、華々しいシャンゼリゼのパレードや花火などが打ち上げられる、その華やかな光景と同時に、一方では、必ず怒りをぶちまけて、車を燃やしたり、ふつうの花火とは違う攻撃的な花火(花火迫撃砲)などの応酬が起こったりするのは、珍しくはないことです。

 そんなパリ祭を数日後に控えたフランス政府は、この革命記念日までの個人への花火の販売、輸送、使用を禁止する法令を発令しました。

 また、ボルヌ首相は、「この花火禁止と同時に大規模なセキュリティ手段が配備される」と発表しています。

 今回の暴動に関しての後始末がまだまだつかないうちから、次の暴動対策をとらなければならない政府も気の毒といえば気の毒ではありますが、このフランスにとっての一大イベントの一つであるパリ祭が暴動の再燃になることだけは、なんとしても避けなければなりません。

 逆に言えば、今回の暴動で暴徒たちは、この暴動の起こし方、やり方の多くを学んだとも言えるわけで、ここで、彼らの行動を完全にブロックし、今もくすぶっている今後の暴動の火種を消し去り、また、今回の暴動で使われたツールが流通することを避けなければならないのです。

 また同時に、今回の暴動により車などを燃やされたりした個人に対しては、「被害者保証基金」を通じて補償される予定で、政府首脳はまた、若い暴力加害者の家族に制裁を加える可能性も検討、「既存の法的枠組みが十分でない場合は、必要に応じて法律を変える」と強気の姿勢を示しています。

 こうした暴動を起こした人に対する制裁・罰則の強化も、おそらくは、再発予防になると思います。

 そして、今回の暴動で使用されたツールの一つであったインターネット(SNS)に関しても、先日、マクロン大統領の「私たちは、おそらく、緊急時(暴動発生時)は、SNSを規制するか、遮断する立場にある」という発言から、よもやネット切断?と物議を醸したりもしましたが、実際のところは、完全にネットを遮断するというのは、現実的な話ではなく、「位置情報などの機能を停止する」、あるいは、「特定のプラットフォームの機能を停止する」ことを検討していると言われています。

 とりあえず、近々に、この暴徒たちを興奮させかねないパリ祭まで、あとわずか数日、検討しているというよりも、もうこのネットに関する件はある程度は水面下では決定しているものだと思います。

 しかし、暴動のツールとして使われているとすれば、仕方ないとは思いつつ、先日、暴動に巻き込まれて、コマーシャルセンター内に閉じ込められ、わけのわからない出口から避難するように追い出され、何の誘導もなしに次の駅まで歩かなければならなかった身からすると、その時、なんとか、知らない次の駅まで歩いて行けたのは、ネットの位置情報サービスのおかげであり、こんな時にこそ欲しいサービスでもあるのです。

 例年ならば、パリ祭を控えた今頃の時期は、パレードの予行演習の兵隊さん街を制服姿で歩いていたり、飛行機がパリの上空を隊列を組んで飛んでいく様子が見える、なんだかワクワクするような時期でもあるのですが、今年は警戒の話ばかりで、なんだか、パリ祭でさえも、これまでのようには、おこなえなくなっていることをとても残念に思うのです。


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2023年7月10日月曜日

夏休み・夏のバカンス短縮で不公平は是正できるか?

  


 日本で生まれて、日本で育った私にとって、海外で生活していれば、否応なしに感じるのは、文化の違いですが、その中でも「バカンス」に関しては、感覚が大きく違うものの一つでもあります。

 なんといっても、フランス人のバカンスは長い!

 私はフランスに来て、ちょうど1年後くらい、娘がちょうど1歳になるかならないかくらいの時に仕事を始めたので、フランスで学生生活を送ったことはありませんが、代わりに娘の長い夏休みやその他の時期のバカンス(学校のお休み)の多さには、つくづく辟易してきました。

 ヨーロッパの人は大胆に長期間のバカンスをとるということは、なんとなく知ってはいましたが、実際に体験してみると、なかなか大きな違いです。

 職種によっても違うかもしれませんが、普通に会社務めをしている場合、約1ヶ月間の有給休暇は仕事を始めて、1年後からとれるようになっていますし、当然の権利として考えています。

 日本の会社で長期間の有給はとりにくいとか・・有休を消化しきれないとかいうのは、フランス人にはそれこそ、逆に意味のわからないことだと思います。

 しかし、それ以上に学校のお休みは長いし、多いし、夏は2ヶ月強、その他、約1ヶ月おきくらいに2週間くらいのバカンス(トゥーサンやノエル、冬休み、イースターなど)があり、おまけに小学校までは、水・土・日が休みです。

 あまりにお休みが多いので、一度数えたことがありましたが、これらのお休みの合計は1年のうちの約3分の1に相当します。つまり、自分の有給休暇だけでは、なんとかできるはずもなく、子供の長い学校のバカンス期間(特に夏)をどう都合をつけるかは、大変な問題だったのです。

 夏休みの場合、多くのフランス人は、子供の長いバカンスの半分は、子供をパピーやマミー(おじいさん、おばあさん)のところに行かせて、半分は家族でバカンスへ・・という家庭が多い気がしていましたが、それができない我が家はもっぱら、コロニー(スポーツなどを体験させてくれる合宿のようなもの)のお世話になり、むしろ、コロニーをやっていない時期に私はバカンスをとるようにしていました。

 学校のお休みとコロニーとをパズルのように組み合わせて予約をして(また、この予約がかなり前から必要)埋めていく作業は、私の仕事の都合でバカンスをとれる時期が限られていたこともあって、母子家庭だった我が家にとっては常に頭の痛い問題でした。

 それが、最近、マクロン大統領が学生間の不平等を是正し、また日常のキツ過ぎる授業日程を緩和するために、授業を年間を通じて、より適切に分散するために、夏の学校のバカンス期間を短縮したいと言い始めました。バカンス期間が長いだけあって、日常の学校の授業は、小学校から16時半まで、エチュード(宿題や補修の時間(希望者のみ)も含めれば18時までと長いのです。

 特に送り迎えが小学校が終わるまでは必要なフランスで(高学年になれば、必須ではないものの、一応、多くの家庭では送り迎えをしている)、これは、共働きが多い親の都合に合わせてくれているのかとも思いますが、子供によっては、かなりキツい日程かもしれません。

 子育てが終わってしまった我が家にとっては、「遅いよ~今頃・・」という話なのですが、特にこの長期間のバカンス期間に旅行や文化、スポーツ活動をする財力に乏しい家庭の子供たちの不公平感を是正するという考え方には、少々、疑問を感じます。

 とにもかくにもバカンス期間が長すぎるという意味では異論はないのですが、バカンス期間を短縮することで、不公平感を是正できるというのは、あんまり納得できません。

 そもそも、それぞれの家庭、様々な事情があるのは当然のことで、そもそもは世の中は公平ではないものだし、公平というものは、なかなか測りきれるものでもありません。

 むしろ、何かあるたびに不公平だとか騒ぐ方が私には抵抗があります。バカンスが長いにしろ、短いにしろ、平等に与えられているのは時間で、その時間をそれなりにどのように有意義に子供に過ごさせるかは、必ずしも経済的なことに依存するばかりではありません。

 むしろ、フランスは援助の手を辿っていけば、現時点でも結構な援助が受けられるようになっています。

 結局は、全ての問題が格差社会の問題につながっているような気もするのですが、バカンス期間を短くしたとて、これが緩和されることはなく、もっと別の問題なような気がします。

 また、このバカンス短縮問題は、逆に言えば、長いバカンス期間を享受している教職員組合からは、ブーイングが必須であろうし(一般的に、教師は低賃金で、バカンスが長いということが取り柄と言われている)、観光関係者連盟(CAT)もバカンス期間が短縮されれば、それだけ、短い期間にバカンス客が集中することになり、価格の高騰を招きかねないとの見解を発表しています。

 これだけ多くの人が長期間にわたり、バカンスに出て、お金を使うフランスでは、観光産業は決して侮れない金額、200億ユーロが動く産業で、GDPの13%を占めていると言われています。

 これまで、過去の大統領、サルコジ政権、オランド政権などの時にもこの夏のバカンス短縮の声は上がっていましたが、結局のところ、現実化はしませんでした。

 短縮するどころか、「フランスはヨーロッパの中でも夏休みが最も少ない国の一つ」、アイルランド、ポルトガル、ラトビアなどは13週間休む・・など、ホントかウソかわかりませんが、そんなことを言いだす人までいます。

 どちらにしても、フランス人にとって、重要な位置を占めるバカンス問題、増やすならともかく、短縮となれば、そんなに簡単なことではありません。


夏休み 夏のバカンス短縮計画


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