2023年5月28日日曜日

マクロン大統領の支持率 ほんのちょっとだけ回復

  


 年金改革を憲法49条3項の発令により、強行突破して、2019年の黄色いベスト運動以来、26%までに低下していたマクロン大統領の支持率がここへきて+6%の32%まで回復したことが話題になっています。

 とにかく、今回の年金改革問題でのマクロン大統領に対しての国民の怒りは激しく、最低支持率を記録した当時は、フランス国民の 72% が共和国大統領に不満を持っていると答えたが、そのうちの47% が単に不満という程度ではなく、「非常~に不満!」と答えるほどで、このままどうなることかと思っていました。

 マクロン大統領への不満は、街中の落書きだけにはとどまらず、嫌悪感丸出しの肖像画が出没したり、マクロン大統領にまつわるレストランが燃やされかけたり、甥っ子が襲われたりとなかなか深刻なものにまで発展し始めていました。

 しかし、マクロン大統領本人は、国民に嫌われることを厭わずに、国民に嫌われることを憂うよりも、これがフランスにとっては必要なことであるという姿勢を全く崩すことなく、大統領の職務に邁進しつつ、100日後を見ていてほしいと、年金改革法案成立とともに、フランスが乗り越えていかなければならない道と方策を示していくと約束していました。

 正直、彼はフランス国内にとどまることを避けているのではないか?と思ってしまうほど、海外訪問する機会が重なり、フランスにいるより、海外で外交の仕事をしている方が居心地が良いのではないか?と思ってしまうほど、中国を訪問したり、G7に出席したり、その後にモンゴルを訪問したりする日が続いていました。

 一方では、彼はフランスに戻っている間も、勢力的に公務をこなし、インタビューに答える中で、中間層に向けての減税を発表したりしていました。これは人気回復のための手段だと言われつつも、しかし、この減税にも何やらカラクリがあるようで、止まらないインフレで上昇し続ける価格を無理に抑えるのではなく、中間層(実質、中間層というよりもそれ以下の感じ)の人々の生活が少しでも楽になるために、これらの人々に対して減税する手段をとるということに、「恩着せがましく減税などといっておいて、結局は、減税した分など、上昇し続ける価格に対しての消費税等で結局はまき上げられることになるではないか?おまえの言うことなんか、もう信じない!」などと一部から反発の声も上がっていました。

 しかし、結果的には、このままどこまで下がり続けるのかと思われた支持率は、下降がストップし、ほんの僅かとはいえ、上昇に転じたということは、彼が行おうとしていることが、一定の割合の人には響いたのではないかと思われます。

 今後、夏までに(100日後の約束)提出される予定の法案の中心となる移民問題については、フランス人の69%が移民問題については、懸念していると答えてはいるものの、彼らの中での憂慮している問題の6位(24%)にとどまっており、購買力(56%)、健康(38%)、安全(32%)には大きく及んでいません。(複数回答可能の質問)

 しかし、フランス人の67%が移民が多すぎると考えているものの、大多数(60%)は「移民は差別の被害者である」と認識していることも興味深い結果でもあります。

 今後、発表されていく移民問題については、国民の一番の関心事ではないことから、少し、国民の関心が逸らされるような気もしますが、他人事ではないので、これは気になるところです。


 それにしてもマクロン大統領の自己アピールは、なかなか強烈なものがあり、現在は、むしろ、海外での活躍をドキュメンタリーのようにまとめて発信したりするのを見るにつけ、(もちろん、本人が自分で作っているものではないにせよ)、G7の際のフィルムなどを見たりすれば、他国の首脳に比べると圧倒的にスキンシップが多く、肩を抱いたり、抱きあったり、手を握ったりして、相手との距離を縮めて、海外の首脳と向き合っている姿は、もちろん、このフィルムは彼を引き立たせるために作られているとはいえ、さすが!と思わされてしまう感じで、最後はG7の会場となったホテルのスタッフに1人1人握手をしながらお礼を言い、最後は記念撮影を撮るところで閉められていて、マクロン大統領の人気取りもここまでやるのか!と脱帽もので、そのフィルムに彼は、「外交」のひとことをつけてSNSで発信しています。

 このフィルムをどれだけの人が目にふれて、どれだけの人が彼を評価するのかわかりませんが、もしかしたら、このフィルムに誰よりも力づけられているのは彼自身なのかもしれない・・などと思ったりもするのです。

 しかし、若干の回復を見せているとはいえ、未だ67%の国民には否定的に見られているマクロン大統領、とはいえ、いくら支持率が低いとて、大統領は大統領、そのうえ、だからといって、国民から絶大に支持されている他の候補がいないということも、逆風を受けてなお、彼を強くしているのかもしれません。


マクロン大統領支持率


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