2022年11月18日金曜日

ボジョレーヌーボーと日本の関係

  



 ボジョレーヌーボー解禁の日だと、朝、気がついて、今年はどんな具合だろうか?とスーパーマーケットをのぞきに行ってみました。ここ数年、パンデミックの影響も多少はあったとはいえ、年々、衰退していくボジョレーヌーボーを「あ〜あ・・」という感じで、見ていました。

 もともと、ボジョレーヌーボーは、フランスでは、そんなに人気があるわけでもなく、私自身も特に飲みたいと思うわけでもないのですが、一応、11月の第3週目の木曜日と日付が決められていることで、なんか、季節感を感じる気がする程度です。

 とはいえ、一応は、解禁日からしばらくは、ボジョレーヌーボーのコーナーが設けられ、低価格(5〜10€程度)なこともあり、手にとっている人もいたのですが、いつの頃からか、スーパーマーケットのボジョレーヌーポーのコーナーは年々縮小されてきました。

 昨年も、「あれ?これだけ?」と驚くほど小さいコーナーが設けられていただけでしたが、なんと今年は、影もかたちもありませんでした。(あくまで私がいつも行っているスーパーマーケットでの話ですが・・)

 醸造期間の短いこのワインは、時に、人工酵母などの化学物質が添加されることも多く、ワインにピリッとした甘さを与えているなどと、悪評が広まったことがフランスでの人気低迷の理由にも挙げられています。

 ボジョレーヌーボーの人気のピークは1980年代だったと言われており、1984年には、ボジョレーヌーボーが数日で6千万本販売されるという記録が残されていますが、1985年以降は解禁日が11月の第3木曜日に固定されたことで、商業的に別の盛り上がりを煽るかたちになったことは否めません。

 ボジョレーヌーボーが話題にされるたびに、「なぜボジョレーヌーボーは日本で人気があるのか?」など、日本でのボジョレー人気が話題にあがるほど、フランスにとっても、ボジョレーヌーボーと日本は切り離せない存在のようです。

 フランス人の分析によれば、日本でのボジョレー人気を「日本人は何よりも非常にフルーティーで軽いものを求めている」という日本人の味覚があたかもボジョレーヌーボーの特質にマッチしているかのように語る人もいます。

 また、日本人にとって、ハロウィンとクリスマスの間にある、このボジョレーヌーボー解禁の日付が、祭りの季節感に敏感な日本人の心をくすぐり、日本市場はこれを巧みに広告にのせて、マーケットを展開しているとも評しています。

 とはいえ、ボジョレー・ヌーヴォーの生産量は、最盛期の50%から、現在では20%に過ぎないほど低下しているうえ、今年は、干ばつの影響でさらに過去5年間の平均を20%ほど下回っていると言われています。

 今でもボジョレー・ヌーボーの総生産量の3分の1は日本に輸出されていると言われているものの、同じ3分の1でも全体の生産量が落ちているので、以前とは違ってはいるのでしょう。

 実際に日本で実際に現在、どのようにボジョレーヌーボーが売られているのかわかりませんが、ボジョレーヌーボーにとって、今でも日本のマーケットは欠かせない存在のようなのです。


ボジョレーヌーボー


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2022年11月17日木曜日

ポーランドに落下したミサイルとNATO条約第5条 よもや第三次世界大戦の危機

  


 ウクライナがロシア軍から激しい砲撃を受ける中、ポーランドにミサイルが直撃し、一昨日は、フランスにも大きな波紋が広がりました。

 NATO加盟国であるポーランドがロシアからの攻撃を受けたとなれば、NATO条約第5条により、集団的自衛権を行使することに繋がる可能性があるのです。

 この第5条には、「NATO加盟国が武力攻撃の被害を受けた場合、他の加盟国はこの暴力行為を全加盟国に対する武力攻撃とみなし、攻撃された国を支援するために必要と認められる措置を講じる」と記されています。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、まもなく、このポーランドへのミサイル攻撃を「これはロシアの攻撃だ!インドネシアで開催中のG20サミットに対する「ロシアからのメッセージ」だと発言。

 バイデン大統領も、「これはおそらくロシアの攻撃だろう!」と発言していましたが、当のポーランドは、極めて深刻な緊急事態であるとしながらも、早急に真相を追求する必要があると、慎重な態度をとっていました。

 ロシア側はすぐに、これはウクライナの仕業だと声明を発表しましたが、これまでも、自分でしかけては相手のせいにしてきたロシアの発言に信憑性はありません。

 漏れ伝わってくる戦況からすれば、現在のロシアがNATO全体の攻撃の誘因となるような攻撃をすることは、あり得ないとは思っても、そもそも、これまであり得ないことばかりをやってきたロシアが今度は何をやらかすかはわかりません。

 また、NATO、マクロン大統領は、かなり冷静な態度を取り続けていて、不用意な発言はせず、「真相を解明し、慎重な対応をとる」という姿勢を崩すことはありませんでした。

 私は、これまでNATOの集団的自衛権は、戦争を抑止するためのものとの認識で、実際にこれが行使されるかもしれないという局面が訪れる緊迫感を感じたのは、初めてのことで、よもや第三次世界大戦に突入するかもしれないという事態に、NATO加盟国であるフランスにも緊張が走ったのです。

 しかし、一夜が明けて、NATOは、「ポーランドを直撃したミサイルは、どうやらウクライナの迎撃ミサイルが落下したもので、不幸な事故であったとの見方」を発表。しかし、彼はこの声明に加えて、「しかし、これはウクライナが悪いのではなく、もともと非合法の戦争をしかけたロシアの責任である」ことも付け加えて発表しました。

 まだ、このミサイルの発射元については、正確に確定されたわけではありませんが、一先ずロシアのものではなかったらしい・・ということで、NATO第5条の勇み足は中断されることになったようです。

 ウクライナは、当日も、少なくとも85発以上のミサイル攻撃を受けており、同時にインフラ施設への激しい爆撃作戦を受け、広い範囲で停電が起こっており、ゼレンスキー大統領がフライング気味の発言をしてロシアを非難するのもわからないではありませんが、NATOの中でもより大きな力を持っているアメリカの大統領としてのバイデン大統領の不用意な発言には、問題を感じます。

 いずれにしても、あらためてウクライナでの戦争がもしかしたら、第三次世界大戦に発展する危険性はそんなに遠くないところにあるという緊迫感を感じ、「そんなことになったら、やっぱり自国である日本にいた方がいいのだろうか?」などと不安になった夜でした。


ポーランドミサイル落下 NATO第5条 集団的自衛権


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2022年11月16日水曜日

10ユーロから45ユーロの電気・電子機器 家電製品修理ボーナス導入

  


 2022年12月15日から、フランスは、電気・電子機器に修理ボーナスの導入をスタートさせます。これは、2020年、循環型経済法で規定された修理基金で、機器の長寿命化と廃棄物削減を目的としたもので、この基金には6年間で4億1千万ユーロが割り当てられる予定です。

 現在、約15億点の電気・電子機器が流通するフランスでは、年間約1,000万件の修理が行われていると推定されていますが、この修理ボーナス導入により、この修理量を20%増加させることを目標としています。

 つまりは、「捨てずに修理して使おう! そのために、一部は負担するよ!」ということです。

 この修理ボーナスは製品の種類により、金額は10ユーロから45ユーロに分類されています。

 ・10€ コーヒーメーカー、アイロンなど

 ・15€ 掃除機、DVDプレーヤー、ホームシアター、楽器、自転車、スクーターなど

 ・20€ ゲーム機、スピーカーなど

 ・25€ ワインセラー、洗濯機、冷蔵庫/冷凍庫、タブレット、携帯電話など

 ・30€ テレビ、ビデオプロジェクターなど

 ・45€   デスクトップ、ノートパソコンなど

 修理の内容に関わらず、この修理ボーナスは固定されたままということです。

 そして、2024年には、ディープフライヤー、プリンター、フードプロセッサー、電子レンジが、2025年には、エアコン、ヘアドライヤー、扇風機が追加される予定になっています。

 2022年12月の段階では、対象とされる30種類ほどの家電製品について、先着500社の認定修理業者(「QualiRépar」ラベル付き)に修理を依頼した場合にのみ、このボーナスの恩恵を受けることができるようになります。

 この認定修理業者は、2023年までに1,500社、2027年までに1万社を見込んでおり、すべてのタイプ(独立系、メーカーアフターサービス、代理店アフターサービス)が含まれるようになります。

 フランス人は比較的、古いものを大切に使い続け、中古品なども積極的に利用する傾向が強く、粗大ゴミなどでも、捨てるそばから拾っていく人も少なくない印象があり、私も一度、壊れた掃除機を捨てに行ったら、「それ捨てるんですか?」と言われたことがあります。

 しかし、私は恥ずかしながら洗濯機や冷蔵庫、オーブンなどは、もはや修理しようと考えたこともなく、ハナから無理だと決めつけ、新しいものを買って、買う際に必ず古いものを引き取ってくれることを交渉してくるくらいしか考えたことがありませんでした。

 ちょっと前ですが、ノートパソコンが壊れた際には、修理ができるか?いくらでできるか?を見てもらいにアップルストアーに行ったことがあるのですが、とても修理とは思えない金額で、諦めたことがありました。

 そうなのです。電化製品が壊れた場合は、普通なら修理するか、新品に買い替えるかを検討するところですが、往々にして修理代が異様に高額で、それなら新しいものを買った方がいい・・となってしまうのです。

 フランスの場合は、修理に来てもらう時点で、頼んだ日時にちゃんと来てくれる可能性も低いうえに、その人が十分に修理できる技術を有している可能性はさらに低く、そんな煩わしさも考えると、特に緊急性の高い冷蔵庫などに関しては、即、買い替えをしてしまうのです。

 新しい冷蔵庫を買った時でさえ、配達の日にちを勝手に変更された挙句にようやく届いたと思ったら、「ぶつけて穴をあけてしまったので、値引きするのでこれでいいか?」などと言われて、「良いわけないだろ!」と憤慨したことがありました。

 この修理ボーナスは大変、ありがたい話ではありますが、製品にもよりますが、ちょっと安すぎないか?と思ってしまいます。一応、各製品の平均的な修理費用の20%程度に相当するはずだとしていますが、「いやいやいや〜〜〜そんな安くない〜〜」と思うのは私だけでしょうか?

 この家電製品修理ボーナス、どの程度の結果がでるか、ちょっと見ものな気がしています。


家電製品修理ボーナス


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2022年11月15日火曜日

2024年パリオリンピック・パラリンピック マスコットキャラクター フリージュ

 


 2024年パリオリンピック・パラリンピックのマスコットキャラクターが発表されました。

 「フリージュ」と名付けられたこのキャラクターは、フランスの精神を具現化したもので、トリコロールとフランス革命とフランスの象徴であるフリジア帽をモチーフにしていると言われています。そういわれてみれば、たしかに、あの帽子です。

 このキャラクターの選択は、6歳から14歳の子どもたちにサンプルを使ってテストして、検証された結果、選ばれたもので、赤いフリジア帽がマスコット化したもの。それぞれの靴はトリコロールの赤・青・白でデザインされていて、ご丁寧なことに目そのものもトリコロールカラー、目尻につけられたリボンまでトリコロールで足さえもブルーと白で、双子のうち1人は義足をつけています。

 彼らの使命は「フランスとフランス人を動かし、スポーツを紹介・再導入すること」であり、「完璧なサポーターの精神」を広めることだそうで、「スポーツはすべてを変えることができ、私たちの社会で重要な位置を占めるに値することを証明することを目的としている」と重大な任務を負っています。

 この二つのキャラクターには、ストーリー性のあるキャラクター設定もされており、オリンピックのフリージュは「賢い人であり、すべてを計算せずに物事に着手することはなく、少し狡猾で誘惑的な面もあるが、非常に感情的でもある」一方、パラリンピックのフリージュは、「無限のエネルギーを持つ外向的なパーティーガールで、自発的で、少し熱血漢、常に新しい経験を求めている」のだそうです。

 他の国のオリンピックのマスコットキャラクターに関しても、こんなに詳細なキャラクター設定がもされているのかどうかはわかりませんが、とかく、なにかと理屈をつみあげて、仰々しく語りたがるフランス人らしいような気がします。

 とはいえ、このマスコットキャラクター販売は、オリンピックのライセンス収入の25%にのぼり、総額は1億2700万ユーロとと見積もられています。

 フランスの中小企業メーカーGipsy ToysとDoudou et compagnieが請け負い、主にリサイクル素材で作られるマスコットは200万個の売り上げを目標とし、その他、Tシャツ、パーカー、キーホルダー、ピンバッチも販売される予定になっていますが、実際の生産は中国の工場で行われるようです。

 「マスコットはフランスのエスプリを体現していなければならず、フランスの価値観を担う理想、信念のようなものであり、長い時間、歴史の中で積み重ねられてきたものが表現されていなければならない」と壮大な理想のもとにキャラクターのストーリー設定までが語られているのに、中国で作るあたりは、ちょっとがっかりするというか、非常に現実的で、実際のところは、オリンピックのビッグビジネスの一つなのです。

 オリンピックなどのマスコットというのは、可愛いんだか可愛くないんだか、よくわからない奇妙なものとして、登場し、中には見慣れていくうちにだんだん愛着が湧いてくるものもありますが、いずれにせよ、オリンピックまで、そしてオリンピック開催時には、これでもかというくらい登場するので、これから、2024年にかけて、パリではさまざまなところで、この「フリージュ」を見かけることになるかもしれません。

 

2024年パリオリンピック・パラリンピック マスコットキャラクター フリージュ 

 

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2022年11月14日月曜日

スティーブン・スピルバーグ「ターミナル」にインスピレーションを与えた伝説のホームレスCDGで死去

  


 スティーブン・スピルバーグ監督の映画「ターミナル」にインスピレーションを与えたイランの政治亡命者、メヘラン・カリミ・ナセリ氏が彼が長年過ごしたホームであるパリ・シャルル・ド・ゴール空港で亡くなりました。

 彼は、母親を探してロンドン、ベルリン、アムステルダムと旅をした後、1988年11月にパリ北部のロワシーに居を構えるようになりました。彼は、自分のホームに選んだ空港という場所で、好きな音楽を聴き、新聞や小説を読み、自分の思いを書き綴りながら、空港という公共の施設で静かに暮らし続けていましたが、ついには、1999年、フランスで難民認定を受け、滞在許可証を取得しています。

 そんな彼をどうやって発掘したのかは謎ですが、彼の哲学的?な生活からヒントを受けてスティーブン・スピルバーグ監督が制作した映画「ターミナル」が公開された当時、彼は世界中からのジャーナリストの注目を集め、1日に何本ものインタビューを受けるほどの有名人になり、シャルル・ド・ゴール空港では、空港職員の顔として親しまれ、伝説的な存在になっていたのです。

 サンドイッチ屋とマクドナルドに挟まれた数平方メートルの三角形が彼の日常生活の中心で、空港のトイレがバスルームになっており、上着やズボンは定期的にクリーニングに出していて、決して問題は起こさず、静かな人で、他のホームレスが助けを求めてきたり、食べ物を求めてきたりしても、彼は何も言わず、何も要求せず、お金も出さず、他とは一線を画す存在で、彼を知る人々は、「素直だけど口下手で正直者だが口数の少ない人」「彼は仙人だ、現代社会の僧侶を思わせる 」とも語っています。

 彼は約18年間、シャルル・ド・ゴール空港で暮らしていましたが、映画の公開により、彼にはある程度のまとまったお金が入り、映画公開の2年後には、空港から病院経由でパリ郊外のホステルに滞在していたと言われています。

 彼が空港に戻ってきたのは、死亡する数週間前と言われており、映画で得たお金を使い果たして空港に戻ってきたと思われていましたが、彼の遺体からは数千ユーロが発見されたようです。

 彼の死は自然死であったと公表されていますが、彼の77歳という年齢からも自然死というのも妙な話で、事故でも事件でもなかったという意味なのだと思いますが、なんらかの病を患っていた彼が死期を察して、彼のホームでもあったシャルル・ド・ゴール空港ターミナル2Fを最期の場所として選んでいたのかもしれません。

 ターミナル2Fにいた空港職員は、数週間前から彼が荷物を持って悲しげな表情をして、いつもと同じ席に動かずに座っており、ここ数週間は、あまり調子が良くないようで、窓の方を向いて、口を開けて、ぼんやりとした目をしていたと証言しています。

 彼が亡くなったことは、座席に白いシートがかけられたことで気づいたと語っています。

 スピルバーグ監督の映画は彼からのインスピレーションを受けて作られた作品ではあるものの、彼自身の人生そのものとは、異なる物語ですが、この彼の最期の迎え方、また空港職員との独特な関係性や彼の生き様のようなものも、そのまま映画になりそうな感じです。

 彼がとても大切にしていた自分の思いを書き綴ること・・彼のノートに書かれていたことも、このまま埋もれてしまうのは、惜しいような気がします。

 彼の物語は、フランスのフィリップ・リオレ監督にも影響を与え、「Tombés du ciel」という映画が1994年に公開されています。

 今年に入って、空港のホームレスが空港警察官に射殺されたという殺伐とした事件もありましたが、それと同じ空港で、このように生活していた人もいた時代が悪くはなかったような、なんだか不思議な感じもします。

 ましてや、彼のホームであったシャルル・ド・ゴール空港のターミナル2Fは、私も一番利用する機会の多いターミナルで、そんなドラマがあったとは・・今度、空港に行ったら、彼のホームであったベンチを探してみたくなりました。


スティーブン・スピルバーグ 伝説の空港ホームレス


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2022年11月13日日曜日

モンパルナスにできた新しいコマーシャルセンター Les Ateliers Gaîté とモンパルナス駅のM&Sとカヌレ

  



 パリ・モンパルナス界隈に新しいコマーシャルセンター Les Ateliers Gaîté ができたというので、覗きに行ってきました。ちょっと、他の出先からだったので、バスで出かけたのですが、モンパルナス駅からもそんなに遠くはありません。




 この新しいコマーシャルセンターはアトリエと名前に入っていることからも、一般的なコマーシャルセンターに入っているような店舗(Truffaut、Nature & Découvertes、Mr. Bricolage、Go Sport、Bo Concept、PoltroneSofà、Darty)、衣料品店(Naf Naf、Okaïdi、Courir、Claire'sなど)から古着屋さんなども入っていますが、とりたてて、もの珍しくもなく、個人的には、あまり興味が湧かず、強いていうなら、フードコートが比較的広く、DJなども入るようにできているので、おそらく夜、若者たちにとっては、楽しい空間になるのかもしれません。

フードコート入り口



 ところどころにピンボールなどのゲーム機が置かれているのにも遊び心が感じられます。




 しかし、このコマーシャルセンターは、ショッピングエリアだけではなく、最終的なプロジェクトとしては、社会住宅、託児所、オフィス、ホテル、市立図書館を含む複合施設になることになっており、また、このアトリエのコンセプトは、この地域が、劇場、芸術家のアトリエ、文壇などの娯楽の場であったことを喚起させ、DIYのトレンドに乗り、お客様がワークショップに参加することで交流し、学び、単なる購買行為を超えた体験をする場にすることをうたっています。

 そういえば、昨年、16年ぶりに再開したパリ・サマリテーヌもショッピングエリアとともに、同様の社会住宅や託児所、オフィス、ホテルなどを併設した形で完成すると言われていますので、複合的な総合施設というのは、現在のトレンドなのかもしれません。

 コマーシャルセンターだけでは、もはや人を惹きつけられず、プラスアルファが求められているのかもしれません。

 しかし、はっきり言って、私にとっては、少々、期待ハズレで、あまり来ることのないモンパルナス界隈、せっかく来たのだから、モンパルナス駅に寄って、カヌレを買って帰ろう・・とモンパルナス駅に向かったのでした。

 滅多に来ることがないモンパルナス駅ですが、去年、久しぶりにTGVに乗るために駅を利用し、びっくりするほど綺麗になっているのにビックリしたのですが、旅行の通過点にすぎず、あまり駅の中をゆっくり歩くことはありませんでした。

 今回、じゃあカヌレを買いに・・と思ったのは、ボルドーの有名な La Toque Cuivrée というカヌレ屋さんのお店がパリでは1軒だけ、モンパルナス駅にあることを知っていたからです。




 ここのお店のカヌレはふんわりとラムの香りのするもっちりとしたカヌレで、何よりも、そのクォリティに対して圧倒的に値段が安いので(というより、一般的に他のお店のものが高すぎる)(例えばPAULなどの半額以下)、ボルドーには、この店舗はけっこうありますが、どこも行列のできる人気店。パリには、モンパルナス駅にしかないのです。

 店舗というよりは、駅の片隅にあるスタンドのようなスペースですが、しっかり発見、久しぶりのカヌレを買ってきました。




 そして、駅の構内のテイクアウトできるさまざまな食品のスタンドの種類の多いこと!昔は、駅にあるスタンドといえば、サンドイッチかクロワッサンくらいなものでしたが、今は、よりどりみどりで、ベーグルやマフィン、ドーナッツ、スープ、おにぎりやお寿司、ポケボウルなどなど、さしずめ日本でいうなら、駅弁フェアみたいです。



 食い意地の張っている私にとっては、新しいショッピングセンターよりもモンパルナス駅の方がよっぽど楽しく、一先ずお目当てのカヌレを抱えて、ニコニコでメトロで帰ろうと地下に降りていく途中に発見したのは、「M&S(マークスアンドスペンサー)Food」の看板が・・。



 ブレグジットとともに、あっという間にパリの街から姿を消していったイギリスのスーパーマーケットM&Sです。そういえば、空港や駅の一部の店舗だけは残すという話は聞いていたのですが、思わず、「あなた・・ここにいたのね・・」と別れた恋人にばったり出会った気分でした。

 M&Sには、クッキーや紅茶、サンドイッチ、スナック類、パンなど、大好きなものがたくさんで、思わず、カヌレを買ったことも忘れて、大量の食品を買い込んだのでした。イギリスに留学していたこともあり、より思い入れの深いこともありますが、フランスのものとは違うどこか懐かしい感じもするシンプルなクッキーやクラッカー、薄切り、ふわふわの食パンなどが結構、好きなのです。




 これまで、あまりモンパルナスに来ることはありませんでしたが、これからは、このカヌレとM&Sのために定期的に来ることになるだろうと思っています。


モンパルナス駅 M&S コマーシャルセンター Les Ateliers Gaîté 


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2022年11月12日土曜日

1686年創業のパリ最古のカフェレストラン ル・プロコープ Le Procope

  


 パリの街の美しいところは、近代化されていく中でも歴史が脈々と残されているところにあると思っています。とはいえ、場所によっては、「ここは、本当にパリ?」と思うほど劣化して、スラム化しているような場所もあるのですが、そういう場所は危険も伴うので、たまに出くわすことがあってもあまり近寄ることはありません。

 パリに来たばかりの頃は、「きっとパリってず〜っと変わらないんだろうな・・」と思っていたのですが、ここ10年ほど、特にパンデミックを境に大きく変わってきた気がします。

 パリの中でも、私が最も好きなの場所のひとつは、サンジェルマン・デ・プレ界隈で、おそらく日本の人がイメージしているであろうパリが楽しめる場所です。

 

サンジェルマン大通り沿いのパッサージュの入り口付近


 そんなサンジェルマン・デ・プレを散歩していて偶然見つけたのが、パリで最古といわれるル・プロコープ Le Procopeというカフェレストランです。実は、有名なレストランだったのですが、私は全くそんなことは知らずに、サンジェルマン大通り(Boulvard St.Germain)に面した小さなパッサージュ(石畳の小さなお店が迷路のように並んでいる一画)を歩いていて、こんなところにこんな空間!とちょっとワクワクして、その古路を歩いていると、一見すると小ぶりなカフェ?と思われるお店を見つけ、覗き込むとレストランでもあり、メニューを見ても、そんなに横暴な値段でもなく、ただ、看板には1686年創業とちょっと信じ難い年号が出ていたために興味を惹かれたのでした。

 

パッサージュの中のカフェ裏口のテラス席

 

 しかし、実のところは、そのパッサージュから入る入り口はいわば裏口のようなもので、正面口は、アンシャン・コメディ通り(Rue de l'Ancienne Comédie)にあり、見事な店構えです。

 店内は美術館というか博物館のような感じの重厚なインテリアでシャンデリアや絵画、歴史的な書物などが要所要所に飾られており、だいたい建物自体が歴史を感じさせる一見の価値があるもので、地上階(日本でいう1階)、階段を登ると中間の階にも部屋があり、その上に1階と大変、立体的で面白い作りで、「うわっ!ここにもお部屋が・・うわっ!こんなものが・・」といちいち感動します。






 テーブルには古典的ではありますが、白いテーブルクロスが敷かれ、ウェイターの人も背筋が伸びている感じで礼儀正しく、感じよく、細かいサービスも行き届いています。




 メニューは、アントレ(前菜)10〜20ユーロ前後、肉料理、魚料理(20〜30ユーロ前後)、デザート(10ユーロ前後)と、パリでは一般的な感じのお値段ですが、お昼のメニューだと、その日のいくつかのメニューの中から、前菜とメインまたは、メインとデザートで23.50ユーロ(平日のみ)というチョイスもできます。

 お店のインテリアや雰囲気、サービスに負けることなく、お料理もしっかり美味しく、一つ一つ手抜きのないお料理であることが一口、口にするとわかります。

 


 オーダーするとまず、つきだし?のように出してくれるオリーブがちょっと感動するほど美味しく、前回、行った時に食べたお昼のメニューのアントレに頼んだ白トリュフのラビオリは、「これは、やっぱり自分ではできない、なかなかなクォリティー!」と感動し、メインに選んだ鱒のムニエルは散りばめられているアーモンドのソテーの香ばしさが上手くマッチしていて、外はカリッと中はふっくらとしていて絶品でした。

 

白トリュフのラビオリ

 また、添えられていたピューレもわざとつぶが残されているバターの香りの効いた思わずにっこりしてしまう味、何も足さずに出てきたそのままで満足できるお味でした。


鱒のムニエルとじゃがいものピューレ


 デザートは、もうお腹いっぱいで、食べられませんでしたが、近くの席に座っていた人が食べていたこのお店の人気のタルト・オ・カフェがとても美味しそうでした。

 また、このお店には、伝統的に受け継がれたメニューというものが、いくつか存在していて、その中でも人気のコック・オー・ヴァン(雄鶏の赤ワイン煮込み)を、後日、食べてみましたが、まず、実に鶏肉自体が大変美味しく、味のしっかりした鶏肉で、これが鶏肉料理?と思うほどの煮込み料理で、赤ワインと鶏のブイヨンでよくぞこれほどのコクのある味が・・と思わせられるのに、鶏肉自体は柔らかく煮込まれているにもかかわらず、煮崩れることなく存在し、一緒に煮込まれている小さなじゃがいもや小玉ねぎ、人参、マッシュルームなどが、ソースと混ざって、かなり食べ応えがあります。


 
コック・オー・ヴァン(雄鶏の赤ワイン煮込み)


 このコック・オー・ヴァンは、お鍋のままサーブされ、温かいお皿が別にやってきます。ふたりで分けて食べてもいいくらいたっぷり入っています。

 デザートは食べられなかったので、最後にカフェだけ頼んだら、なんとカフェにはマドレーヌで蓋がしてあるというユニークな心遣いで、なんだか妙にお得な気分。よくカフェには小さなチョコレートがついてきたりしますが、マドレーヌとは・・、これにもちょっと感激でした。



 一見すると煌びやかな感じもしますが、お客さんはそんなにかしこまることもなく、普段着で気楽にやってきていて、たまに観光客らしきアジア人のカップルがやけにドレスアップしてやたらと写真を撮りまくっていたりするのもまた、そんなに違和感もありません。




 ちょうど近くにいた私と同年代の女性が母親らしき人を連れて食事していたのが、微笑ましく、かなり高齢と思われる母親はオニオングラタンスープだけしか食べていませんでしたが、それはそれでOKな、見かけの重厚さとは裏腹な、温かいお店の雰囲気です。

 私もそんな彼女を見ていて、母が生きていたら、連れてきてあげたかった・・いやいや、フランス料理好きだった祖父を連れてきてあげたらどんなに喜んだだろうか?などと、一瞬、思っていたのですが、そもそも歴史あるお店ゆえ、パリに留学していたことのある祖父です。

 数々の歴史的著名人も訪れていたというこのお店、なにしろ、1686年からやっているのですから、彼の留学中にも存在していたわけで、もしかしたら、祖父もここに来たことがあったかもしれない・・などと想像が膨らんだのでした。


このお店に来店していた著名人の名前が刻まれている


 レストランを選ぶ時には、その味はもちろんのこと、そのお店の雰囲気、サービスなど色々な要素が加わりますが、このお店はそのどれをとっても超おススメです。

 また、私が初めてパリに旅行に行く際に一番、躊躇したのが言葉の問題ですが、ここは英語もOK(というより、今はパリ市内のたいていのレストランは英語を話してくれます)で、英語のメニューもあるようですのでご心配いりません。


Le Peocope ル・プロコープ

13 Rue de l'Ancienne Comédie 75006 Paris      毎日12:00~0:00まで


パリ最古のカフェレストラン ルプロコープ


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