2020年9月21日月曜日

週末のパリ ジョルネ・ド・パトリモアンヌとツール・ド・フランス ファイナル

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 新規感染者数が1万3千人を超えたフランス・パリの週末は、いつもの週末以上に人出が多く、街中も賑わっていました。

 というのも、この週末は、毎年9月に行われているJournées du patrimoine(ジョルネ・ド・パトリモアンヌ)といって、フランスの国家遺産、公共施設の裏側など、日頃、足を踏み入れることができない場所を一般公開する週末で、エリゼ宮や大統領官邸、オテル・マティニョン(首相官邸)、パリ市役所、パレロワイヤル、ソルボンヌなどの大学などなど多くの施設が無料で解放される週末であったためです。

 オテル・マティニョンなどは、先日、着任したばかりのジャン・カステックス首相自らが官邸内を案内したりして、首相自らこの日を盛り上げたようです。


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 本来ならば、普段、目にすることができない税金の使い道の一部に足を踏み入れることができるこの機会は、なかなか貴重な体験でもあり、いつもなら、天気もいいし、ちょっとどこかを見てみよう・・とも思うのですが、なにせ、今のフランスの感染状況を考えると、私は、どうにも腰が引けて、わざわざ、人の集まる場所へ足を運ぶ気にはなりませんでした。

 にもかかわらず、腰が引けないフランス人は、多くの人がこれらの施設に足を運び、この日を楽しんでいたのです。

 当然、各施設内の公開にあたっては、マスク着用はもちろんのこと、アルコールジェルの設置やソーシャルディスタンスが厳しく叫ばれていましたが、これらの催しがほぼ通常どおりに行われることに、フランスの強気の態度が垣間見えます。

 1万人を軽々超える感染状況で、ここまで強気の態度を貫くフランスを私は、正直、まったく理解ができません。

 それに加えて、例年7月に行われるツール・ド・フランスが延期されて行われたツール・ド・フランス(23日間にわたる自転車のロードレース)のファイナルを迎え、ロードレースが最終地点のシャンゼリゼに到着して、華やかにフィナーレを飾る日と重なり、当然、これにも多くの観客がツール・ド・フランスの最後の応援に集まりました。

 最終地点では、パリ祭の時のような、トリコロールの煙をはきながら飛ぶ航空ショーのような飛行機まで登場し、花火も上がり、大変な盛り上がり様でした。

 本来行われるはずだった7月よりもはるかに深刻な状況になっている状況でのこのツール・ド・フランスの強行も、・・なら、なんで延期したの??と思わずにはいられません。

                                          

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 それでも、コロナウィルスの影響で、人出は、例年よりも少なかったようではありますが、あくまで、コロナウィルス感染に注意しながら、例年どおりの行事を強行し、「コロナと共に生きる」のスローガンを掲げ、わざと国民を煽っているかのごときの、この週末の催し物の盛り上げ方に甚だ疑問を感じつつ、複雑な気持ちで家の窓から見えるトリコロールの煙を眺めていたのです。


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「ことごとくフランス人の習慣が裏目に出ているコロナウィルスの感染拡大 新規感染者7000人突破」

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2020年9月20日日曜日

娘の留学ドタキャン コロナウィルスによる被害

 


 娘の留学が決まったのは、昨年末のことでした。グランゼコールの2年目が終わると、3年目の彼女の予定は、海外でのスタージュや留学で、1年間が、びっちり埋まっていて、本体の学校へは、もう行かないことになっていました。

 彼女は理系専攻のため、エンジニアの資格取得のためには、一定期間のスタージュ(研修)が、必須で、今年の夏も彼女のクラスメートは、皆、漏れなくスタージュの予定が入っていました。

 スタージュ自体は、個人がそれぞれに興味のある会社や大学に申し込み、契約をするので、フランス国内だけでなく、ヨーロッパやアメリカなど、個人の希望で先方が受け入れてくれさえすれば、特別な縛りはありません。

 ところが、コロナウィルスのおかげで多くの学生がスタージュが取りやめになったり、行き先がアメリカだったりした人は、断念せざるを得なくなり、慌てて別のスタージュを探し回り、中には、コロナウィルスの検査を請け負っている会社でスタージュをしたり、それでも見つからなかった学生には、学校側がスタージュに代わる特別なプログラムを用意して、それを消化することで、その期間、スタージュをしたことにするという異例の措置が取られたりしました。

 娘は、夏の間は、イギリスの大学でのスタージュが決まっていましたが、結局、イギリスに行くことはなく、しかし、幸いにも先方がリモートワークで受け入れてくださったので、夏の3ヶ月間のスタージュは、予定どおり?に終えることができました。

 そして、9月の一ヶ月間をあけて、10月からは、今度は、スタージュではなくて、半年間、日本の国立大学の大学院に留学する予定になっていました。この留学は、こちらのグランゼコールからの留学なので、直接、日本の大学とも連絡が取れずに、しかも、このコロナ渦の中、どうなるかわからないまま、時間が過ぎて行きました。

 コロナウィルスでフランスがロックダウンになって以降は、日本の大学からも、航空券の予約は、ギリギリまで、しないように・・との連絡が来ていましたが、8月の半ばになって、急に日本の大学の方から、10月からの滞在場所、寮の申し込みをしてくださいという連絡があり、到着日、到着便なども記入しなければならないことになっていたので、慌てて、日本行きの便を探し始めました。

 彼女は、日本人なので、日本に入国することはできるのですが、留学先の大学が地方のため、パリからは直行便はなく、羽田での乗り換えの際に、そのまま乗り換えができるかどうかを悩んだ末、日本到着後の2週間の自粛は、東京の私の実家でおとなしく、引きこもり生活をし、2週間後に地方へ発つという方法を考えていました。

 羽田からも公共交通機関は使えないということで、親戚や友人にも高齢者である家族を抱える人が多いので、迷惑をかけることは、絶対に避けたいので、彼女は、羽田から、荷物は、配送を頼んで送り、自分は、家まで歩いて行くと言っていました。

 彼女は、運転免許を持っていないので、私が一緒に付いて行って、レンタカーを借りて、空港から実家まで送るという手も考えましたが、それも、あまりにバカらしく、彼女の健脚に任せることにしていたのです。

 寮に入れるかどうかの返事が来るのは、9月に入ってからということだったので、もし、それがダメな場合は、別の滞在先を探さなくてはいけないから、ダメだった時は・・と、見当をつけたりもしていました。

 ところが、9月に入って、こちらのエコールから転送されてきたのは、一ヶ月近く前に日本の大学から来ていた留学延期、あるいは、中止のどちらかを選んでくださいというメール。慌てて、日本の大学に確認のメールを送ったところが、検討の結果、渡航を伴う留学は、今期は受け付けられないとのこと。

 8月の段階で、日本の大学から来ていたメールをバカンス中だったために、こちらのエコールの担当者にスルーされていたのは、フランスなら、大いにあり得ること、そのメールになぜ?Cc.をつけてくれなかったのか? なぜ?日本の大学は、寮の申し込みなどということを言ってきたのか? 考えれば考えるほど、まったく腹立たしいことばかりです。

 買ってしまった日本行きのチケットは、こんなご時世だからと変更可能なチケットにしたものの、一体、いつに変更すれば良いのかも現時点ではわからず、しかも、変更の際には、なかなかな追加料金がかかるため、さらなるリスクを負うことは、躊躇われ、結局、チケットを変更することもできずに10万近くがパーになってしまいました。

 娘は、娘で、慌てて10月からのスタージュ探しに必死・・見つからなければ、彼女が在籍しているエコールに通わなければなりません。

 このフランスの感染状況からしても、フランスからの学生の受け入れは、お断り・・というのは、わからないではありませんが、フランスのエコールはもちろん、日本の大学の不明瞭な対応のために、大金を捨てる羽目になり、まったくもって、私は怒りまくっています。

 考えてみれば、夏のイギリス行きのユーロスターのチケットもキャンセルしたものの、返金ではなく、まさかの金券返し、予約していたホテルも返金すると言いながら、未だ返金されておらず、今度は、日本行きのチケットがパーになりました。

 コロナウィルスそのものに感染はしていませんが、我が家にとって、娘の留学にまつわる大損害、実際に留学した場合の出費なら、仕方ありませんが、連絡ミスのためのこの大出費。

 どうにも納得がいかないのです。


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「コロナウィルスのためのキャンセル料金 ANA変更手数料無料の航空券販売」

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2020年9月19日土曜日

新規感染者数1万3千人突破のフランス

  

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 ここ数ヶ月のフランスは、少なくとも週に1回は、思わず変な声をあげてしまうほど、夜に新規感染者数が発表されるたびに驚かされます。昨夜もその1日でした。

 前日には、1万人を超えていたものの、その数日前にも1万人を超えた日があったので、数日間、土日が入ったりして、検査数や検査の結果が出るまでの時間差で、減少してたものの、再び、1万人に達した時は、さすがに、また、戻っちゃった・・と思ったくらいで、もはや驚きませんでした。

 しかし、一日あけて、1万3千人(13215人)という数字を聞いて、再び、息を呑みました。1日で、3千人増加とは・・さすがに、フランスは、本当に大丈夫だろうか?と、不安になってきました。

 ラボ(検査所)に長蛇の列ができるほど、検査数が増えてはいますが、それは、検査の受け付け方が悪いので、悪目立ちしていますが、他のヨーロッパ諸国、ドイツ、イギリス、イタリア、スペインなどと比べてみると、この一ヶ月間のフランスの検査数は、フランスは、むしろ少ない方で、感染者数だけは飛び抜けているというのは、明らかにフランスの感染状況が飛び抜けて悲惨な状況であることを示しています。

 はっきり言って、これだけ急激に感染者が増加している国とは思えないほどに、街の中には、危機感がまるでなく、義務付けられているので、マスクをしているものの、家族で集まったり、友人と食事をしたりすることに躊躇がまるでなく、緊張感のかけらもありません。

 フランスでは、これまでに 3万人以上(31249人)の死者を出しているというのに、やっぱり、この人たちはバカなんじゃないかと思います。

 しかし、バカどころか、フランス屈指のグランゼコール(超エリート養成学校)パリ政治学院(通称シアンスポ・SciencesPo)でクラスターが発生し、感染経路を追ったところ、原因は、授業ではなく、学生同士のパーティーだということで、シアンスポは、2週間、閉校となることになりました。


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 このエリート集団のグランゼコールでさえ、授業自体は、ほとんどがリモートによる授業になっているにも関わらず、このような学生同士のパーティーから感染が広がってしまうのですから、なぜ、リモート授業になっているのか?この優秀な学生たちでさえ、理解できない・・というより、自粛できないのですから、フランス人の歯止めの効かなさは、どうしようもありません。

 しかし、他のヨーロッパの国は、これほどの感染状況になっていないことから、やはり、他のヨーロッパ諸国は、ロックダウンとは行かないまでも規制がかなり厳しいわけで、フランス政府の甘い対応が浮き彫りになっています。フランスは、確実にコロナウィルスに対する国民の舵取りができていないのです。

 マクロン大統領は、やたらとパニックを起こさないで!と言いますが、パニックどころか、この人たち・・危機感のかけらもありません。

 すでに、感染状況が深刻化しているニースなどでは、深夜には、営業停止になることをとても悲しい・・などと、此の期に及んでまだ言っているのを聞くと、その甘さの方が悲しくなります。

 先日、カステックス首相が感染者と車に同乗していて感染の疑いがあると、自粛に入りましたが、今度は、財務大臣自身が感染したことを発表。

 本当に、フランスは、感染の波がすぐそこまで迫っている、まさに、波打ち際にいるような、そんな感じなのです。


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「新規感染者が1万人に限りなく近づいたフランスの政府の対応」

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「新規感染者1万人突破・フランス人のコロナウィルスへの危機意識が低いのはなぜか?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_13.html


2020年9月18日金曜日

フランスで今、一番、行列ができる場所


Deux longues files d\'attente pour se faire dépister du coronavirus devant un laboratoire du XIIe arrondissement de Paris, le 14 août 2020. D\'un côté, les asymptomatiques, de l\'autre, ceux qui pensent avoir été en contact avec le Covid-19.


 今、フランスで、一番の行列ができる場所は、ラボラトワ(試験所、検査所)で、いくつもの街で、マスクをした人たちが路上に長い行列を作っています。

 最大限の検査を可能にして、感染者を隔離するという方針をとり、症状のある人はもちろんのこと、会社からの要請や、渡航に際しての証明書が必要だったりで、検査所の行列は、早朝5時、6時から行列が始まって、検査を受けるまでの待ち時間がひどい場所では3時間から4時間もかかかっている状況なのだそうです。

 行列嫌いのフランス人が、コロナ以来、ロックダウン中などは、入場制限がされていたスーパーマーケットに入る時にさえ、行列を作らなくてはならず、それまでは、ちゃんと列を作って並ぶということがあまりなかったフランスで、行列は、フランスに新しくできた習慣でもあります。

 しかし、症状のある人も混じえて、行列を作って、長時間、中には、路上に座り込む人まで出てきて、(このご時世に路上に座り込むことが不潔だと考えないことに唖然とする)その行列を見込んで、飲み物、食べ物を売る人たちが登場したり、これでは、検査所がクラスターになるのでは・・?と、思ってしまいます。

 そもそも、これらのラボは、日常は、他の病気、怪我等の検査を行う場所であり、血液検査、レントゲン、CTなどの他の検査を行う場所です。これでは、とても、他の検査のためにラボに行くことは、よほど緊急でない限り、躊躇われますし、ラボの業務自体もいっぱいいっぱいで、職員たちは、悲鳴を上げ始め、ストライキも厭わないと訴え始めています。

 ラボの職員とはいえ、フランス人、ラボの職員によるストライキで検査がストップする・・なんてこともありえない話ではありません。

 この検査と隔離の政策がスムーズに運ばない中、フランスの感染状況は、日々、深刻化しており、昨日も1日の感染者数は 10593 人と余裕の1万人越え、レッドゾーンに指定されている地域もパリ・イル・ド・フランスはもちろんのこと、マルセイユ、ボルドー、リールなどに加えて、リヨン、ニースなど、さらに広がり、ロックダウンが解除された直後には、ほとんどが緑だったコロナウィルス感染状況マップも今や、フランス全体がオレンジと赤に変わっています。


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 中でもマルセイユなどは、悲惨なことに、この一週間でコロナウィルスにより入院する患者は45%増加、ICUの患者数は48%増加で、病院での人出不足が始まり、ICUの余裕がほとんどなくなり始め、他の病気の患者を移動させたり、他の病院に転院させたりする道を探り始め、完全に感染第二波に乗り始めています。

 この状況の中、政府は、より厳しい注意を呼びかけ、検査に関する優先順位の制定や検査結果のスピードアップなどの対策を発表していますが、あくまでも、ウィルスとともに生きる道を掲げ、現在、すでに2300の学級や90校が閉校になっている状況から、保育園、幼稚園、小学校に関しては、年少の子供は感染率が低いことから、クラスに感染者が出ても、感染が確認された子供は一週間自宅待機、クラスや学校は閉鎖しない方針を発表しました。

 これは、年少の子供の感染率だけでなく、親が仕事を続けることができるための政策であるとも言えます。

 ウィルスとともに生きるという政策のもとに、例年どおりとは言わないまでも、多くの人がバカンスに出かけ、マスクは義務化したものの、感染者が出ても学校を閉鎖しないという強気の政策が今後のフランスの感染状況と経済状況にどう反映していくのか?

 昨日もパリやボルドー、トゥールーズなどでは、バカンス前から予定されていたデモが盛大に行われています。

 この際、フランスもデモもリモートにしてもらえないだろうか?と私は、思っていますが、まあ、フランス人にとって、デモはフランスの文化でもあり、無理な話です・・。

 

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「新規感染者1万人突破・フランス人のコロナウィルスへの危機意識が低いのはなぜか?」

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2020年9月17日木曜日

ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ①

 

 L'usine Bridgestone de Béthune


 私は、今日まで、ブリヂストンの工場がフランスにあることを知らず、娘は、ブリヂストンが日本の会社であることを知りませんでした。「だって、日本語っぽくない名前じゃない?」という娘に、創業者の石橋さんという人の名前をとって、STONE BRIDGEの語呂をよくするために、前後をひっくり返してできた名前らしいよ・・と言うと、なるほど・・と彼女も納得していました。

 つまり、ブリヂストンは、どこの国の会社かどうかは別として、その名前は、フランスでも多くの人に知られている会社なわけです。

 ブリヂストンが欧州内の乗用車用タイヤ市場の収益構造悪化のため、フランス・べチューン工場を閉鎖することを発表したことが、トップニュースで扱われているのを見て、工場の閉鎖そのものよりも、私は、ブリヂストンがトップニュースで扱われていることに驚いたのです。

 乗用車用タイヤを生産するこの工場の従業員は863人、フランスのボルヌ労働相とパニエリュナシェ経済閣外相は連名で、「ブリヂストンは、欧州内の別の工場のためにべチューン工場への投資を長年怠ってきた、工場閉鎖は全く同意できない」と発表しています。

 これを聞いて、改めて、私は、フランスで労働者を雇うということは、大変なリスクだと思いました。ブリヂストンは、べチューン工場の操業継続のためにあらゆる可能性を検討した結果、競争力を維持しながら、同工場の操業を維持することは困難であると発表しています。

 フランスの労働組合の強さは、ちょっと経営者が気の毒になるレベルで、コロナウィルス騒動後、多くの会社が人員削減や工場閉鎖に陥っていますが、その度に組合の抵抗は、相当なもので、そもそも、平常時ですら、気に入らないことがあるとすぐにデモやストライキといった権利が認められ、その権利を横行して反発するのですから、経営者側から見れば、フランスの労働者ほど使いにくいものは、ないんじゃないか??と思ってしまいます。

 それでも、ブリヂストンは、タイヤ部門において、2005年には、シェアトップのフランスのミシュラン社を抜き、以来、世界シェアトップを貫いているので、今回閉鎖されるフランスのべチューンとて、良い時期もあり、メリットもあったのでしょうが、同工場の生産性は、そもそもコロナ以前からの過去10年間で40%も減少しており、ヨーロッパに10ヶ所ある同社の工場の中でも最低なのだそうです。

 ブリヂストンは、この工場閉鎖に関わる人員について、誠実な対応をすることを約束していますが、そもそも、フランスでは、会社の都合により(業績悪化等)、社員を解雇するためには、契約形態や勤続年数にもよりますが、大変なお金がかかるのです。

 それでもなお、工場閉鎖を決めたのには、おそらくコロナウィルスが引き金を引いたことには違いありませんが、そうでなくとも、フランスでフランス人を雇って継続するメリットがないわけで、もともと、人件費もアジアなどの諸外国に比べて安いわけでもなく、かといって、生産性よく働くわけではもなく、バカンスだけはたっぷり取り、何かと言えば、デモだストライキだと騒ぐフランス人を雇って工場を続けて良いことは、何もなく、その上、国民はドケチで、買うのは、中古車がメイン。少しでもダメージを少なく食い止めるために、工場閉鎖は、もっともな選択だと思われます。

 そもそも業績悪化のために会社が工場を閉鎖すると下した決断に労働相や経済閣外相が工場閉鎖は認められないなどというのもおかしな話です。会社自体も生き残りをかけて必死なのですから、会社は労働者への慈善事業ではないのです。

 いい加減、あまりに労働者ファーストに偏ったフランスのやり方は、経営者サイドから見れば、生産性が悪く、デメリットばかりが目立ち、このままでは、国際競争の中では、置いてきぼりを食い、多くの国のフランスにある工場等が撤退することになりかねないのではないかと思っています。

 ちなみに全然、無駄な情報ですが、フランス人はブリヂストンをブリジェストンという人が多いです。


<関連>

「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ②」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_22.html

「権利を主張するわりには、義務をちゃんと果たさないフランス人」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_61.html

「フランスの雇用問題」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/09/blog-post_6.html




2020年9月16日水曜日

幸せの感受性 海外生活でみつけた幸せを感じる方法

 



 昨晩は、なぜか、明け方まで寝付かれずに、朝、早くには、起きれずに、起きる前から背中の全面が痛くて不調そのもの、なんか1日のサイクルも狂ってしまいました。

 朝ごはんも食べたような食べないような・・いつもなら、午前中に済ませるはずのことが立て込んで、なんだか逆にバタバタで、お昼を食べようかと思っても、なんだか何にも食べたくなくて・・なにも作る気がしなかったのです。

 夜だったら、買い置きの生ハムやチーズとちょっとサラダでも作ってワインで終わり・・にしてしまうところですが、昼間から飲むというのも何だかなぁ・・と考えていたら、そうそう酢飯だったら、ちょっと食べたいかも・・と冷凍してあったご飯をチンして、すしの子を混ぜて、ベランダのシソを摘んできて細く切って混ぜて・・。

 このところハマっているオクラをさっと茹でて刻み、冷蔵庫にあったえのき茸にお醤油、砂糖、白ワイン(みりんが切れているので、砂糖と白ワインでゴマかす)をかけてフタをしてチン・・これを刻んでおいたオクラと和えて、ちょっとお酢を加えてネバネバするまで混ぜて、ご飯にかけて出来上がりです。

 それに、パンとビールで作ったぬか床に寝ているきゅうりを出して、切って・・おわり。

 とても質素な食事ですが、我が家には、とても贅沢な食事です。そんなお昼ご飯を食べながら、こんなものが贅沢に幸せに感じられるのも海外にいるからで、日本にいたら、きっと、こんなものは、どこででも手に入る大したことない材料で、いくつかあるおかずのほんの一つの箸休めくらいにしかならなくて、なんの有り難みも感じないだろうなと思ったのです。

 このわけのわからない献立も、たまたま家にあるもので思いついたものですが、そもそもきゅうりもシソも自分で毎日毎日、手入れして大切に育てたもので、ぬか床さえも、どうしてもぬか漬けが食べたくて、全粒粉のパンを細かくしてビールでふやかして、昆布を入れたりしながら、作って奇跡的に成功したぬか床、今や我が家の家宝です。


               パンとビールでつけたお漬物


 こんなわけのわからないことばかりやっていますが、手に入らないものをなんとか自分で育てたり、作ったりする、質素だけど、ていねいな暮らしが、私は、今、とても気に入っています。

 いつでも、どこでも、何でも手に入る日本の暮らしは快適ですが、満たされすぎて、幸せを感じにくくなっていたかもしれません。毎日食べることは、小さなことですが、大きな幸せでもあります。

 お金を出せば、簡単に手に入るものではなく、質素にていねいに暮らすことが今の私には、喜びです。

 しかし、その反動で日本へ行った時には、一食も無駄にするものかとあちこちで美味しいものを食べまくり、その上、これでもかというくらい、パリに食料品を持って帰るのですから、決して大口は叩けません。

 でも、これは、食べることに限らず、何にでも当てはまることなのかもしれません。何でも簡単に手に入る、便利な生活に慣れすぎると、逆にちょっとのことで、イライラすることが多くなってしまうかもしれません。満たされすぎると、不足分がより気になり、もっともっとと欲にはキリがありません。

 贅沢なことも好きな私ですが、日々の生活は、シンプルに質素に、無駄のないように、ていねいに暮らすことが心地よくなっている最近の私です。生活がシンプルになってくると、とても小さな単純なことがとても幸せに感じられます。

 私がこんな風になってきたのも、多分に年齢のせいもありますが、ひとえにフランスでの不便な暮らしの賜物だと思っています。


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「便利な生活がもたらすもの フランスへの修行ツアーのススメ」

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2020年9月15日火曜日

宗教に傾倒しすぎる義理の息子 フランス人の宗教

 


 私が彼に最初に会ったのは、彼が高校生の時で、真面目で、まっすぐな好青年といった印象でした。ちょうど、「バカロレアの試験に通ったよ・・」という報告に、主人が大げさに喜んでいるのに対して・・「C'est normal・・あたりまえだよ・・」と、笑っていたのが、つい少し前のことのように感じられますが、あれからもうずいぶんと時間も経って、あの時に想像していた彼の将来とは、全く違う道を進んでいます。

 彼は、主人の前の奥さんとの間の長男で、お母さんの影響を誰よりも強く受けて育っています。

 というのも、主人が離婚した最たる理由は、彼の前妻の度が過ぎる宗教への傾倒で、新興宗教ではないようですが、最初は、家族揃って通っていた教会から、やがて、生活全てが教会に振り回される形になり、主人は脱退してしまったことがきっかけでした。

 フランスは、カトリック教徒が多くを占める国ですが、実のところ毎週、日曜日に教会のミサに出かける敬虔なクリスチャンは、ほんの僅かでしかありません。

 以前、私は、日曜日も仕事に出ることが多かったのですが、日曜日の朝、いつもより本数の少ないバスには、いつも同じメンバーが乗っていることが多く、その中に、綺麗に身なりを整えた、いかにもこれから教会のミサに出かけると思われる上品な老婦人がいて、なんか、素敵だな・・と思ったこともありますが、逆に言えば、それだけ、目を引く珍しい存在であると言うこともできます。

 彼の前妻はプロテスタントの信者で、年を重ねるとともに、教会に深く傾倒するようになり、日々のお祈りから、週数回の教会通い、教会の行事などが日常生活の中心になっていき、当然の如く、子供たちの教育にも教会の教えが色濃くなっていき、テレビやゲームは、禁止、本も内容によっては制限がかかり、家の中のものは、どんどん教会への寄付に消え始め、明らかに一般の日常生活からかけ離れたものになっていきました。

 主人には、前妻との間に3人の息子がいますが、下に行くほど、母親との関係を壊さない程度に教会との距離をおいており、末っ子の男の子は、教会から逃れるために日曜日になると、よく我が家に避難しにきていました。

 おばあちゃんから買ってもらったという家では禁止されているゲームやハリーポッターの本などは、我が家に全て置いてあり、自分の家では禁止されているテレビやDVDを我が家で楽しそうに見ていました。

 しかし、反対に長男である彼は、母親以上に信仰に生活を捧げる生活になり、普通に経済系の大学を卒業して、有名な銀行に就職して、主人も喜んでいたのですが、結局、自分は、信仰に生きたいと主人とは大げんかをして、せっかく就職した銀行も辞めてしまいました。

 だからと言って、牧師さんになるわけでなく、教会のために働いても生活の糧になるわけではありません。現在は、教会関係の子供の小規模の学校の先生や様々な慈善事業や難民救済?など、まともな収入はないのに、なんだか、いつも、とても忙しそうにしていますが、彼には、深い信仰心が根本にあるので、全く迷いがありません。

 人に迷惑をかけるわけでもなく、贅沢は望まず、一生、ジャガイモだけを食べて暮らすことも厭わないと言うのですから、彼の人生は彼の納得するように、生きればいいと思いますが、ふと、それほどまでに彼を極端に宗教に走らせるものは、何なのか?と思います。

 実際、とても親切で、こちらからほとんど連絡をしなくても、気にかけてくれたり、おそらく頼めば、すぐに飛んできてくれると思います。

 しかし、こちらが宗教お断りといくら話しても、おかまいなしに、お祈りを唱えたりするのには、かなり抵抗があります。

 年齢を重ねるとともに、明らかに普通の生活からかけ離れている人であることが、目に見えるように彼自身の洋装にも表れています。

 彼自身は、心底、善意の人、悪意は全くないのはわかっていますが、善意であるだけに余計に救いようがなく、しかし、強烈なエネルギーと我の強さには、少々、引いてしまいます。悪気がないと言うことは、自覚がないだけに、時に悪意がある場合よりもタチが悪いこともあります。

 日常のフランス人のサッカーの試合やお祭り騒ぎ、デモなどでの興奮ぶりと熱量には、驚かされることも多いのですが、その熱量が宗教に向かった時には、こうなるのか・・と、そもそもの彼らの情熱は、やっぱり日本人とは違うのかな・・と思うのです。


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「海外での新興宗教の勧誘」

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