2023年3月30日木曜日

フェイスブック(Facebook)でマクロン大統領を「ゴミ」と呼んだ女性が逮捕・拘留

 


 フェイスブックでエマニュエル・マクロンを「ゴミ」と呼んだとして、オー・ド・フランス在住の女性が自宅で 3 人の警察官に逮捕され、警察に拘留されたというニュースに多くのジャーナリストやSNSのユーザーの反感を買っています。


 年金改革問題および49.3条問題で世論が大荒れしている状況の中、マクロン大統領が前回CGT(全国労働組合連合)がデモ・ストライキを予定していた直前にテレビの生番組でインタビューに答えるという前日に、彼女が「ゴミが明日午後1時にテレビで喋る・・」とフェイスブックに投稿していたとのことで、大統領を標的にした侮辱的なメッセージを投稿した罪を問われています。

 SNSによる誹謗中傷は、問題視されることではありますが、今のフランスのこのご時世、Facebookだけでなく、Twitter、Instagram等では、同様のメッセージが多数、公開されているのに、なぜ彼女だけが? しかも逮捕? とちょっと驚愕してしまいます。

 みんながやってるからいいというものではありませんが、なぜ彼女だけが?しかも警察に逮捕・拘留とは、いくらなんでもやり過ぎではないか?と思ってしまいます。

 彼女のFacebookはどの程度の人の目に触れる規模のものなのかはわかりませんが、彼女が逮捕されたことによって、より多くの人の目に触れることになったことに違いありません。

 彼女に対しての訴状を提出したのは、サントメール地区の副知事で、「この種の不快なメッセージの作成者を起訴するために提出した」と述べているそうです。警察当局は、「大統領に対しての侮辱ということでこの手の手続きは滅多に見られないことだ・・」と述べているようですが、これは、現在のマクロン大統領への逆風が吹く中、マクロン大統領側が警察に手を回していることと誤解を受けかねない出来事でもあります。

 悪い言い方をすれば、彼女の逮捕は見せしめ的なものである感じが否めません。

 彼女は定期的にSNSで警察の暴力の動画を公開している人物だそうですが、彼女自身は、「常に法律を遵守している」「この逮捕は活動家に対する脅迫を助長している」と語っているそうです。

 彼女の裁判は6月20日に予定されており、彼女は「侮辱」の罪で最大 1 年の懲役と 15,000 ユーロの罰金を課せられる可能性があります。

 しかし、この逮捕と法廷への出廷は、彼女のモチベーションにまったく影響を与えていないどころか、彼女の逮捕に憤慨する人々が集結して、より怒りを募らせています。

 SNSはもちろんのこと、マクロン大統領に対する怒りを表す国民の言動は「ゴミ」くらいは、ぜんぜんソフトな方で、街に出れば、もっと強烈な言葉の落書きがあちこちに見られ、デモでは、等身大のマクロン大統領の人形が公然と燃やされているのです。

 今は、国民の怒りを抑えつけようとしてやることすべてが裏目に出ている感じ、もうこれ以上、騒ぎを大きくしないで!と思ってしまうのです。


Facebook フェイスブック 大統領侮辱 逮捕


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2023年3月29日水曜日

世界中に轟き始めたフランスの政情不安とマクロン大統領の孤立

  


 年金改革問題で荒れに荒れているフランスは公式に宣言されているデモの10回目を迎えた現在も国民の怒りが鎮まる兆しは全く見えていません。

 年明けから続いているデモの間隔は最初は2週間おきくらいで、ある程度、政府が回答する猶予期間を設けたような日程であったものの、ここのところは、毎週になり、(今回は中4日)、また、49.3条が発令された3月16日以来、俄然、暴力的なものに変化し、無許可のデモも含めて、ほぼ毎日のようにデモという名の暴動が起こり続けています。

 なので、10回目といわれても、全然、10回目という感じはせず、100回目くらいの気分です。

 これだけの国民の抗議を受けながらも、政府の態度には、まるで柔軟性というものがなく、昨日、組合から政府に向けて提出された、正式な「年金改革を数ヶ月中断する提案」をあっさり却下しています。

 これは、マクロン大統領にとって、改革を中断することは、黄色いベスト運動の際の燃料税に関しての失敗体験もあり、中断することは断念することを意味しているためとも言われていますが、「改革か破綻か?」と主張してきた政府にとって、これを断念したらしたで、無責任と責められる後にも先にも進めない状況であるともいえます。

 しかし、49.3条という政治的なチカラで国民を抑えつけようとしている政府は、このようなデモに対して、これ以上、政治的なチカラで国民の抗議の声を抑えつけることは不可能で、このままでは、この暴動が半永久的に続けられることになります。

 これだけの騒ぎになれば、マクロン大統領へのフランス国民の反発は世界中の注目を集めはじめ、世界の中でのマクロン大統領のポジションも変わってきそうな気がします。

 世界中のマスコミ(アメリカ、イギリス、スペイン、インド、ロシアなどなど・・)が、もはやこれが「年金改革問題」にとどまらず、むしろ、憲法49.3条の強行行使への国民の反発であることを伝え、パリの通りで燃えているゴミの山、炎に包まれたボルドーの市庁舎の門の映像を流しながら、大統領制の危機とまで報じています。

 また、これに加えて、後を絶たない過激な暴力行為に対しての警察・憲兵隊が国民に加える残虐行為などまでも取り沙汰されています。

 国王との約束をドタキャンされたイギリスの日刊紙には、「英国王の訪仏をキャンセルすることでマクロン大統領は屈辱を受け、その時にやっとフランスが火山の上で踊っている状態であることを初めて認識した・・」などと書かれているそうです。

 世界中のマスコミの中でも、最も痛烈な報道をしているのは、ロシアの国営放送だそうで、国営テレビ放送の中で、ジャーナリストがマクロンをナチスと呼び、彼に辞任を求め、ロシアは自由と人権の尊重が支配する唯一の国であると視聴者に伝えたとBBCのジャーナリストが伝えています。

 自由と人権について、ロシアから辱められる現在のフランスにマクロン大統領は何を思うのでしょうか?

 年金改革は遅れれば遅れるほど、取り返しがつかないと言っていたマクロン大統領ですが、その前に、この国民の怒りへの対応も遅れれば遅れるほど、取り返しがつかなくなりそうです。

 しかし、マクロン大統領は、「我々は、パンデミックの健康危機に際して、最もお金を払った政府なのに、フランス国民は恩知らずだ!」と言っているそうで、「それ、今、言っちゃいけないんじゃない?」と思うことしか伝わってこないマクロン大統領の言動に、なぜ?こんなにも国民感情を逆なですることしか言えないのか?と、今までの彼らしくない、ちょっと我を失っているような気さえしてしまうのです。


フランス年金改革問題デモ マクロン大統領 49.3条 暴動


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2023年3月28日火曜日

年金改革抗議でルーブル美術館 終日閉鎖

  


 パリに観光に来たら、多くの人が行きたいと思う場所の一つにルーブル美術館が挙げられると思います。ルーブル美術館は、かなり広いので、時間も覚悟も必要ですが、やはり絵や美術品はもちろんのこと、その入れ物、美術館自体が美しいもので、美術品だけが出張してどこかの美術館に行ったりしたものを見るのでは味わえない、それがそこにあることで感激できる感動を味わうことができるのです。

 まぁ、私のような素人は、しばらく見ているうちに、どうにもあまりに見るものが多すぎて、いささか食傷気味になって、飽きてしまううえに、そうとうな距離を歩くことになるので、途中で疲れてしまうのですが、しかし、やはり、せっかくパリに来たら、一度はおススメしたい場所でもあります。

 パリは美術館の多い街ですが、ルーブル美術館とオルセー美術館は月・火とずらしてお休みで、ルーブル美術館は通常は火曜日が休館日です。

 28日(火)は、再び、CGT(全国組合連合)が大規模ストライキとデモを呼び掛けている日で、ルーブル美術館はこれがちょうど休館日にあたるために、前日に前倒しで年金改革問題の抗議運動として、約300人のスタッフによって、朝から美術館の入口4か所を封鎖、CGTの垂れ幕を張って、物々しい騒ぎになり、大勢の観光客は入場することができませんでした。



 現在のフランスの状況を知って来ている外国人観光客も「えっ??ストライキは明日じゃなかったの?」と困惑・・。現在、ルーブル美術館はほとんどが予約制になっているため、あらかじめ、スケジュールを組んでやってきている観光客にとっては、突然の美術館封鎖には、さぞかし腹立たしいことでしょう。

 しかし、ストライカーたちは、全く迷いがない様子で、「私たちは年金改革に反対しており、それを示すという文化がフランスには存在します!」ととうとうと宣言します。

 「これでも今日はずっと静かな抗議。外国人観光客には、腹立たしいことに違いないが、ストライキは憲法上の権利であり、時には、義務でもある!」と叫んでいます。

 ストライキをする権利はともかく、「ストライキは時には義務でもある!」と言い出すとは、もう恐れ入っちゃう感じです。

 27日(月)のルーブル美術館のチケットは払い戻し、他の日時に変更できるそうです。

 3月7日のデモの際には、入場させておいて、モナリザなど数か所の部屋を占拠するという状態でしたが、今回は中に入ることもできない完全ブロック方式で観光客には踏んだりけったりでした。

 せっかくパンデミックがおさまってきて、観光客がパリに戻ってきたというのに、この様子では、当分、パリへの旅行はおススメできません。


ルーブル美術館封鎖


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2023年3月27日月曜日

ゴミ収集業社ストライキから20日後、民間のゴミ収集業社も無期限ストライキ突入

  


 パリのゴミ収集業社のストライキから3週間が経過し、一時はパリに山積みにされているゴミの山は1万トンを超えたと言われてきましたが、一部、ゴミ収集が復活したり、燃やされたりで否応なしに片付けざるを得なかった分のプラスマイナスがあり、現在は7,828トン近くにまで減少?しているようですが、今度は民間のゴミ収集業社が無期限ストライキに突入することを発表し、再び波紋を呼んでいます。

 これまで、ゴミ収集業社のストライキといっても、パリ市内でも区によって差があり、パリ1区~20区のうちの2,5,6,8,9,12,14,16,17,20区(約半分の区)における、パリ市のゴミ収集業社によるものであり、民間のゴミ収集業社に委託している区のゴミは通常どおりゴミ収集が行われてきました。

 これまでのストライキが依然として継続し、一部が復活しただけで、これに覆いかぶさる感じで、民間のゴミ収集業社までストライキに入ることで、今度は、1 区、2 区、4 区、10 区、18 区のゴミ収集が滞ると言われています。

 今回は先行のストライカーのように、年金改革に抗議するのに加えて「最大15%の賃金値上げ」を要求しています。先発隊のパリ市のゴミ収集業者のストライキが想像以上のインパクトがあったために、現時点でのストライキが効果的であることが世間に知れ渡ったためでもあると言えます。

 特に、現在のパリは、デモが当分、鎮まる気配はなく、ゴミを放置しておけば、それが、通常以上に危険な着火剤のような役割を果たしているため、ゴミ収集はいつも以上に必要とされている状況です。

 ストライキで仕事をしなければ、その分の給料は支払われないので、決して高給が支払われているとは言えない彼らにとって、身を削ってのストライキは最も効果的でいかに最もインパクトを与える時期でならなければならないことを考えたら、「今しかない!」となったのかもしれません。

 しかし、美しいはずのパリの街が焼けただれたゴミが異臭を放ったまま放置されるのは、哀しいことです。

 滅多にパリに来ることのない観光客には、まことに気の毒だろうと思いきや、山積みのゴミや、そのゴミに火がつけられている前で記念写真を撮っている観光客も増えたという話もでてきているので、それはそれでレア体験?として、楽しんでしまうのもたくましいです。

 「世界一美しい街パリ」を公言してやまないフランス人にとっては、プライドが傷つくものであるのかと思いきや、これはこれで、自分たちの主張は曲げない1ページだと言わんばかりに「これがパリだよ!」とウィンクして通り過ぎていくパリジャン。それはそれで堂々と胸を張るフランス人は本当に強いなぁと妙に感心させられたりもするのです。


民間ゴミ収集業社 無期限ストライキ突入


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2023年3月26日日曜日

エシレのミルクは超絶、美味しかった・・

 


 日本でも、けっこう有名な「エシレバター」でおなじみの「エシレ」の乳製品シリーズ。

 「エシレバター」はもともと、フランスでも高級品なので、どこのスーパーマーケットにもあるという商品ではありませんが、まあ、日本人も知っている?カーフールとか、モノプリ(Monoprix)(そんなに有名でもないか・・)などには、たいていおいてありますが、バターだけでもかなりの種類が置かれている、その中の一つにすぎません。

 しかし、数あるバターの中でも値段的には、群を抜いて高いので、そんなに売れている感じはしないし、意外とフランス人は「エシレバター」を知らないのにも逆にびっくりさせられるくらいです。

 フランス人は何といってもバターを大量に消費する(パンにバターを塗るというより、のせているという印象だし、お料理にもバターをよく使います)ので、家族が多かったりする場合は特に、大量に消費されるバターにそんな高級バターを買っているわけにもいかないのでしょう。

 私は日常的には、そんなにバターを大量に使うわけではないので、たまに食べるバターはエシレバターにしていますが、お料理などには、もう少しお手軽価格のものを使っています。

 日本に行った時にスーパーマーケットに並んでいるエシレバターやフランスのチーズの値段を見て、目を丸くしますが、まぁそれは、フランスでお醤油が高いのと似たようなものなので、最近はお互い様かもしれないな・・とも思います。

 今は日本で生活している娘が最初に日本で生活し始めた時に、「お醤油ってこんなに安いものだったんだ!」と驚いていたことを思い出します。

 パリには、エシレのお店はありませんが、日本には、何店舗かエシレのお店があるようですし、エシレバターで焼いたクロワッサンとか、エシレのアイスクリーム?ソフトクリームに数時間待ちの行列ができている・・などと言う話を聞いたこともあるので、もしかしたら、エシレは日本での方が有名なのかもしれません。

 日本に一時帰国する際には、みんなに頼まれるので大量のエシレバターを買って帰るので、一度、モノプリのレジのお兄さんに「バター好きなんだね・・」とあきれられたこともあります。

 話は逸れましたが、最近、インフレで全ての値段が上昇し、食料品なども、ちょっと明らかにウッとくるくらいの値上がりぶりで、なんだか金銭感覚が麻痺してきました。

 というのも、どの商品も値上がりしていることに変わりはないのですが、どういうわけか、高級品の方が値上がり率が低いようで、安かったはずの商品が「えっ?これがこんな値段??」となっているので、逆に今まで高いと思って、買わなかったものに、どうせ、高いんなら、良いものの方が良いかな?と妙な理屈が働くこともあるのです。

 「エシレ」はバターだけでなく、生クリームやミルクを出しているのは知っていましたが、私がこれまで買っていたのはバターだけで、一度、お土産用に生クリームを買ってみたことがありましたが、ミルクにまで手をのばしたことはありませんでした。

 それこそ、ミルクはバターなどと違って、コーヒーに入れたり、ポタージュを作ったりと消費量が多少多いために、高級ミルクには手をのばさずにいたのです。

 それがたまたま覗いたチーズ屋さんで、エシレのミルクを売っていて、値段が「1.5€」とついているのを見て、「エシレのミルクってこんなに安かった??」と思ってしまったのは、私の金銭感覚が狂っているのかどうかはわかりません。




 しかし、普段買っている普通のミルクもうろ覚えではありますが、恐らく1.2€程度で、そんなに大きく違うわけでもありません。(隣に並んでいたミルクはもっと高かったし・・)それならば、一度、飲んでみたいな・・とちょっと思っていたエシレのミルクを買ってみることにしました。

 まあ、失敗しても、大して後悔するほどの値段でもありません。

 あまり期待もせずに家に帰って飲んでみると、これが想像以上に「やっぱり、美味し~い!!」と期待を裏切らない(期待せずにといいながら、けっこう楽しみにしていました)すっきりとした飲みくちなのに、しっかり味がある後味のよいミルクで、これはコーヒーや紅茶に入れたりせずに、このままで飲んでも、一つの飲み物として十分に成り立つ飲み物で、大満足しました。

 美味しいものは後味がよいというのが私の中の鉄則で、特にミルク好き・・というわけではない私も、ちゃんと美味しいと感じられるミルクでした。

 これまでミルクには、あまりこだわりはありませんでしたが、これを知ってしまったら、この先、エシレミルクを素通りできないような気がしてきました。

 まあ、大した贅沢ではありませんが、今後、私の小さな喜びが追加された気分で大変、満足しています。


エシレバター エシレミルク エシレ生クリーム


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2023年3月25日土曜日

年金改革デモ・ストライキのため、英チャールズ国王のフランス公式訪問延期へ

 


 いつまでも、年金改革問題抗議デモ・ストライキが一向におさまらないフランスでは、数日まえから、今週末からの英チャールズ国王のフランス公式訪問はどうなるのだろうか?と少しずつ話題になり始めていました。

 23日(木)は、以前からCGT(全国組合連合)が再び(非公式デモが何日も続いているために公式デモが何度目だったかわからない)予告されていた日でもあり、ここ1週間以上、日々、暴動のようになっているデモを大きく上回る大変な動員数になりました。

 また、それに紛れて、ブラックブロックと呼ばれる破壊行動を起こすグループやデモがエスカレートして、暴れ出す人がもうどこにでも登場するようになり、山積みにされたゴミの山への放火もダイナミックになり、また、それだけでは飽き足らずに、キオスクに火がつけられたり、ショーウィンドーが割られたり、スプレーで落書きをされたりと、カオス状態になりました。

 山積みにされたゴミにネズミがたかる・・など、衛生状態が問題視されてもいましたが、これではネズミもびっくりです。

 翌日は、焼けただれたゴミなどは、ざっと片付けられてはいるものの、まだゴミは散らかり、焼かれたアパートの扉やキオスクには立ち入り禁止のテープが貼られていましたが、こんな汚いパリは見たことない・・感じでした。

 パリの中にも、日常から、「えっ?ここ、パリなの?」と思うような地域もあるにはあるのですが、この汚い状態がパリの中心地のまさにパリらしい華麗なイメージの場所でのことなので、歩いていても胸が痛む気がしました。

 いくらなんでも、これはやりすぎで、一般市民の住居であるアパートや商店やキオスクなどが攻撃対象になるのは、酷すぎる話です。

 とにかく、パリ(フランス)は、今、こんな状態で、怒り狂っている暴徒や、同じように政府に対しては怒りつつも、暴力行為に動揺、困惑している国民にとっては、チャールズ国王どころの話ではないのが正直なところだと思います。

 23日の夜にボルドー市庁舎の大扉が勢いよく燃やされている時に、チャールズ国王のフランス公式訪問については、あまり詳細な日程は公開されていない中、ベルサイユ宮殿での晩餐会とともに、訪問先になっていたボルドーは、市長が半泣き状態で、来週初めのチャールズ国王ボルドー訪問について、「我々は時間をかけて万全の警備体制を準備してきているので、国王をお迎えすることに問題はないです」と語っていたのは、とても印象的でした。

 また、内務相も、23日の夜の段階では、チャールズ国王のフランス公式訪問は問題はないと発表していました。

 しかし、翌日になって、エリゼ宮から発表されたのは、「英チャールズ国王のフランス公式訪問は社会情勢を考慮して延期されました」というもので、その日の午前中にマクロン大統領とチャールズ国王が直接電話で話し合い、マクロン大統領の申し出により、延期されたとのことでした。

 もっとも決定的であったのは、チャールズ国王がフランス滞在を予定していた3月26日~29日にぶつけるように、次回のCGTが動員するデモ・ストライキがその期間中の28日に設定されたことにあります。

 ここ1週間ほどのパリ(フランス)の荒れ様を見ていると、デモや暴動は予定された以外の日に起こらない保証はどこにもなく、何よりもブレグジット後にイギリスとフランスの友好的な外交の象徴として計画されていた今回の英チャールズ国王の訪問は、祝福ムードの中で迎えられるべきであるもので、現在のフランスには、祝福モードのかけらもありません。

 また、現在のフランスはデモやストライキ・暴動から日常生活を守るための警備だけでも大変な数の警察官や憲兵隊が動員されており(毎晩最低でも2000人といわれている)、とても、ヴェルサイユで予定されていた夕食会だけでも、ヘリコプター、地雷除去員、800 人の警官が現場に配置される予定であったために、デモと国王の両方の警備はかなり厳しい状態であったに違いありません。

 これは、ともかくも全てフランス側の問題でのキャンセル・・しかも、イギリス国王の予定をキャンセル(延期)するのですから、イギリスのフランスに対するイメージに深刻な打撃を与えるものであり、なんとバッシングを受けても仕方ないことで、何よりもマクロン大統領にとっては大変に屈辱的なことに違いありません。

 反マクロン派の政治家たちは、ここぞとばかりに「フランスの恥!」と声をあげています。

 しかし、英王室の話題が大好きなフランス人は、エリザベス女王のご逝去の際などには、昼夜をあけずに、まるで自分の国の女王様が亡くなったかのごとく大騒ぎしていたものの、チャールズ国王が就任して以来、どうにも熱が冷めてしまった感じもします。

 正直、エリザベス女王ほどには人気がないチャールズ国王のフランス訪問は、この時期ではさらに微妙な感じになってしまう可能性も大でした。

 ついに、国内だけでなく、外交問題にまでも影響が及び始めたフランスの年金改革問題ですが、この英チャールズ国王のフランス公式訪問キャンセルをCGT側はデモの勝利の一つとして掲げようとしており、また、このフランスの恥をさらす事態は反マクロンの声をさらに大きくしつつあります。


英チャールズ国王フランス公式訪問延期


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2023年3月24日金曜日

フランス全土で350万人動員の記録的なデモ 一晩に140ヶ所で炎が立ち上るパリ

 


 

 前日のマクロン大統領のインタビューを聞いて、「なんか火に油を注いだ感じだな・・」と思ったのが、まさに文字どおり、火に油を注いでパリの街はあちこちが燃え盛り、特に今回はオペラ界隈近くのサン・マルク通りなどは、山積みにされたゴミにつけられた火が建物に燃え移る、かなり危険な火災にまで発展したり、ブルバード・イタリアンのキオスクが燃やされたり、もはやゴミが燃やされるだけでなく、建造物が燃やされる火災にまで発展しています。

 49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)発令から8日連続のデモ+暴動騒ぎは収まるどころか、手が付けられない状態になっています。

 依然として続いているゴミ収集業者のストライキのために、あちこちに山積みにされているゴミには火がつけられ、消火された後は、まことに見るに堪えない惨状ぶりを強調しています。

 この日は、以前からCGT(全国組合連合)が大規模なデモ・ストライキを予告していた日で、CGTの発表によるとフランス全土で350万人がデモに参加した(当局の発表によると109万人)とのことで、記録的な動員であったと言われています。

 なにしろ、パリだけでも119,000人動員したというのですから、えらいことです。

 こうなってくると、山積みにされたゴミは、不衛生なだけでなく、近隣の住民や店舗などにとっても、いつ火がつけられるかわからない恐怖の対象でもあります。


 この日はなんと、大小含めて、少なくとも140ヶ所で火がつけられたとのことで、放火や破壊に乗じての略奪行為なども起こり始める危険も孕んでいるため、内務相をはじめとする政府の面々もこれらの暴力行為はとうてい、容認できないとしています。

 これは、パリだけではなく、ボルドー市庁舎の大扉も燃やされています。

 また、警察・憲兵隊もかなり乱暴な場面もみかけないではありませんが、彼らも命がけで、任務についているわけで、この日だけで負傷した警察官・憲兵隊は149人にも上ったということです。

 私の勝手な想像ですが、この警察官や憲兵隊の中にも、同じフランス国民として、抗議デモに参加したいくらいの気持ちの人はいるだろうに、まことに気の毒な気がしてきます。

 もともとの年金改革デモは、長いこと続いていましたが、比較的、暴力的な面が少ないデモだという印象でしたが、一気に暴力的な暴動の様相にシフトしたのは、49.3条発令が発端で、暴力的な行為は許せないことながら、この怒りに火をつけてしまった49.3条というものが、この激しやすい国民を持つフランスで、あってよい法令なのかどうか、考えてしまいます。

 私は年金改革は恐らく必要なことなのだとは理解しますが、やはり、フランス人の国民性を考慮したら、49.3条は使うべきではなかったと思います。やり方を間違えたと思います。

 国会での規定どおりの採決を通すにはリスクがあったためのこの49.3条発令で早道をとったつもりが、このパリの、いやフランス全土の荒れようを見れば、もはや、とんだ回り道になってしまったことは、もはや言うまでもありません。

 49.3条には、「首相の責任のもとに・・」という文言がついていますが、こんな破滅的な状況になって、首相が一人で責任をとれるものでもないでしょう。


年金改革問題 パリ 大規模デモ 暴動 放火


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