2021年6月7日月曜日

パリ・チャイナタウンの露天商摘発

  

厳しい露店の取り締まりにざわつく人々


 私は、日常の食料品は、近所にある徒歩1分のスーパーマーケットでだいたい済ませているのですが、2ヶ月に一度くらいは、パリ13区にある、いわゆるチャイナタウンにあるアジア系の食材店に普通のフランスのスーパーマーケットでは買えない調味料や食材等の買い出しに行っています。

 今は、ずいぶんとフランスの普通のスーパーマーケットでもお醤油やインスタントのお味噌汁、インスタントラーメン、冷凍の餃子、わさびなど、手に入るものも増えてきたのですが、値段の設定も高めだったり、種類も少ないし、やはり、そこへ行かなければ買えないものも多いので、たまには、ちょっと足をのばして、買い物に出かけるのです。

 パリに来たばかりの頃は、お店も汚くて、買い物に来ている人もほとんどがアジア人ばかりの場所でしたが、最近は、フランス人も増え(とはいえ、まだまだアジア人が多いですが・・)、お店も若干、綺麗になり、近辺の通りなどもずいぶんと整然としてきました。

 私がいつも行くのは、パリ市内には10軒以上チェーン店を抱えるタン・フレールというアジア系食材を集めた大きなスーパーマーケットなのですが、あたりには、たくさんの中華系の食材店やレストランなどもあり、買い物帰りに食事をしてきたりするのも楽しみの一つです。

 また、その通り沿いには、たいてい、いわゆるマルシェなどではなく、無許可の露店が出ていて、自分の家で育てたのかな〜?と思われる野菜や、自分の家で作ったんだろうな〜?と思われるちまきやお菓子類、ちょっと意味不明なアクセサリー、わけのわからない中国の薬や、CDなどなどを売っている人たちがいます。

 これらの露店は、無許可の露店のため、お店を広げている人も警察の取り締まりがあったときにすぐに逃げられるように、木箱などを積んで商品を並べているだけで、すぐに撤退する準備をしているようで、かなり身軽な感じで、商売をしています。

 通りかかると、たまに、警察が取り締まりをしたりしていて、注意されて、引き上げようとしているのを見かけることは、これまでもあったのです。

 でも、まあ、警察官が通り過ぎるだけで、彼らはすぐに引き上げるので、まあ、ちょっとは目をつぶるというか、黙認しているようなところがあるのかな?と思っていました。

 しかし、今回、見かけた警察の取り締まりは、なかなか用意周到な、今までよりも厳しいもので、警察は、商品として広げていたものも全て没収するためのトラックと、その商品撤廃のための人員まで引き連れた大々的なもので、私がスーパーマーケットに入って行った時には、横目で覗きながら、「これ、タン・フレールとどっちが安いのかな?」などと横目で眺めていた野菜を売っていた露店などが、スーパーマーケットから出てきた時には、一斉に商品を没収されているところで、露店商の人々が違反切符を切られていました。

   

露天商の商品撤廃のための車

 トラックに次々と積み上げられていく商品を運ぶ人たちの、どこか、してやったりといったちょっと意地悪な感じの表情と、周囲に集まる見物人。

 騒ぎに紛れて、没収された商品をトラックの上から持ち去って盗んでいく人。

 その泥棒を呆然と眺めながらも、「あれは、ダメだよね・・」などと、意見する人々。

 まあ、日本では、あり得ない光景だと・・この一連の騒ぎをため息をつきながら、見ていました。

 ロックダウンが解除されて、日常を取り戻し始めたフランスですが、こんな日常も同時に戻ってきたんだな・・と思ったのです。

 しかし、なぜ、今までは黙認同然だったこの場所での露店に厳しい対応をするようになったのか? それは、パリ市内での、路上でのタバコの並行輸入品の販売や、麻薬・ドラッグなどが広く流通するようになったためだと思われます。

 麻薬やドラッグなどから比べれば、自分で育てた野菜や料理を売るなんて、まだまだ随分、良心的だと思えないでもありませんが、疑い出せば、それらの商品の中には、麻薬やドラッグも一部、含まれている可能性もないではありません。

 13区のそのあたりは、いわゆる麻薬・ドラッグの流通が多いとされているポイントではありませんが、他の地域での摘発が続いている中、ドラッグのディーラーは、摘発されても、結局は、場所を移動するだけで、結局、警察と彼らとのイタチごっこが続いているのです。

 無許可の露店を放置することは、この種のドラッグの流通の隠れ蓑にならないとも限らないのです。

 最近の、麻薬・ドラッグのディーラーは、武装化しており、銃などの武器も持っています。この平和だった私の食料調達の場の一つがそんなことになっては、たまりません。

 無許可の露店ごときに少々、荒療治な気もしますが、今のパリは、こんなことも必要なのかもしれません。


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2021年6月6日日曜日

2回目のワクチン接種が終了しました! 初回の予約から、2回目終了後のワクチン証明書のダウンロードまで

   


 フランスでの新型コロナウィルスのワクチン接種が始まったのは、昨年の12月のことでした。思っていたよりもずっと早く開発されたワクチンに、当初は、その効用や副作用などにワクチン接種に対して、懐疑的な人も多く、私自身もどのみち、私に順番が回ってくるのは、ずっと先になるだろうし、世界中の人がワクチンをしていく様子を見てから考えようくらいに思っていました。

 案の定、高齢者施設の居住者が最優先(それまでに一番被害が大きかったためリスク大と考えられていました)となっていたフランスでは、国民のワクチンに対する半信半疑の思いを反映するように、ワクチン接種に際しての家族の同意書がなかなか取れずに、年明けに蓋を開けてみると、他のヨーロッパ諸国に比べて、フランスは、驚くほどワクチン接種が進んでいないことが明らかになり、フランス政府のワクチン接種拡大キャンペーンには、一気にアクセルがかかり、次々とワクチン接種をすることができる年齢や職業などの条件を広げて行きました。

 それでも、まさか、私に順番は、まだまだ回っては来ないとは、思ってはいましたが、年が明けてからも長い間、感染はどんどん広がっているのに、フランスは、あくまでもロックダウンは最終手段としていたので、フランスの感染状況は、悪化の一途を辿るばかりで、世界の国々がワクチン接種を進めていく様子を見ても、これは、もうワクチン接種をするリスクよりも感染するリスクの方がずっと高いだろうと、機会があれば、私もワクチンをしたいと思うようになっていました。

 それが、一般の開業医でワクチン接種が可能になった頃、たまたま薬の処方箋をもらいに近所のかかりつけの医者に行った時に、あなたは、心臓疾患があるから、ワクチン接種の権利があるからと言われて、ワクチン接種の申し込みができたのが、2月末のことでした。

 その頃は、まだ申し込みをしてから、実際に承認が降りるまでに時間がかかっていたし、ワクチンの供給が全く滞っていたので、1回目のワクチン接種ができたのは、4月の初めのことでした。

 何よりも私にとっては、私のこれまでの病歴などを知っていてくれるかかりつけのお医者さんがワクチンを打ってくれるのは、心強いことでした。彼女の方も一度、開けたワクチン(1本で10回分)は、使い切ってしまわなければならないために、ワクチン接種の希望者をある程度、まとめて確保しておくことが必要なようでした。

 しかし、最初は、ワクチンがなかなか届かずに、先延ばしになって、結局、私のワクチン接種も予約から1ヶ月以上、待つことになったわけですが、1回目のワクチン接種後も2〜3日、腕が痛かったくらいで、大した副反応も見られず、最低でも数週間は、間隔をあけなければならないという国で定められた期日を待って、昨日、やっと2回目のワクチン接種が完了しました。

 もうすでに、現在では、フランスでは、18歳以上の成人は誰でもワクチン接種が可能になっており、予約さえ取れれば、いつでもすぐにワクチンを受けられるようになっています。また、6月15日からは、ティーンエイジャーでさえワクチン接種が受けられます。

 2度目のワクチン接種が終わると、その場でコロナウィルスワクチン接種証明書を受け取ることができ、証明書には、QRコードがついていて、フランスの感染者追跡アプリ(TousAntiCovid)に即、ワクチン接種証明書を携帯にダウンロードすることができ、今後、これが、ワクチンパスポートの役割を果たします。

 このTousAntiCovidというアプリは、もともとは、感染者追跡アプリとして開発されたもので、1回作り直したりされたものの、あまり利用者がなくて、感染回避対策には、ほとんど役に立ってはいなかったのですが、感染状況などについての最新情報を知ることができる他、現在は、ワクチン接種の証明書をダウンロードできるようになって、おそらく利用者が今後、グッと増えるようになると思われます。

 まあ、どちらにしても、せっかく開発されたアプリが利用できて、よかったです。

 フランスでのワクチン接種は、基本的にフランスの健康保険システムで使用されている健康保険のカード・カルト・ヴィタル(Carte Vital)のオンラインデータシステムで全て管理されており、このワクチン証明書のダウンロードや情報も全てこのカルト・ヴィタルの情報に記録されています。

 まだまだ、この証明書がどのような場面で、実際に活用されるのは、わかりませんが、とりあえずは、これで、なんだかひと仕事終わったかのような気分です。

 フランス政府は、今後、数年の間は、少なくとも一年に一度は、ワクチン接種が必要になるだろうと言っていますが、これから先に関しても引き続き、このシステムに記録が積み重なっていくものと思われます。

 ワクチンでは100%ウィルスを防げるわけではないので、今後も注意が必要ですが、これで感染するリスクも、他人に感染させてしまうリスクも大幅に減ったわけで、有難いことだと思っています。

 我が家は、現在のスタージュの関係(病院併設の研究所勤務のため)で、まだ若いにもかかわらず、私の後にワクチン接種をした娘もワクチンの種類が違って、逆に私よりも早く娘も2回目のワクチン接種が済んでいます。

 この2回のワクチンの間隔の差は、どうやらワクチンの種類によるもののようで、フランスでは、ファイザー、モデルナ社のワクチンの2回目投与は、4〜6週間後、アストラゼネカ社のものは、9〜12週間後とされているようです。

 現在、フランスでは、全人口の40%程度(成人人口の50%以上)のワクチン接種が完了しており、2回の接種が終わっているのは、まだ20%未満です。

 どういうわけか、私も娘もその20%に入れてもらえていることを幸運に思って、フランスに感謝しています。

 2回目の接種の方が不調になる人が多いと聞いているのですが、私は、今のところ、何も変化はありません。私も娘も2回のワクチン接種で特に目立った副反応はありませんでした。

  


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2021年6月5日土曜日

今年の夏のフランスへの観光客受け入れに対する国ごとの対応 6月9日から開始

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 フランス政府は、今年の夏に向けての観光客の受け入れを国別に色分けして、それぞれの国の感染状況に応じて、フランスへの入国条件を明確に提示し、観光客の受け入れ体勢を整え、それぞれに対応する準備を開始しました。

 世界地図をグリーン・オレンジ・レッドの3色に分布し、それぞれの国別の入国受け入れ条件を具体的に示しています。


・グリーンゾーンの国 

「ウィルスの活発な循環も、懸念される変異株も存在しない国」とみなされている国で、日本はこのグリーンゾーンに入っています。このグリーンゾーンからの観光客は、ワクチン接種が済んでいる人に関しては、フランスを自由に旅行することができます。

 また、ワクチン未接種の場合は、搭乗時に、72 時間以内に遡って陰性の PCR または抗原検査の陰性結果を提示する必要がありますが、その後は自由にフランス国内を旅行することができます。

 このグリーンゾーンに指定されているのは、日本の他、ヨーロッパ、オーストラリア、韓国、イスラエル、日本、レバノン、ニュージーランド、シンガポールです。


・オレンジゾーンの国

「ウイルスの流行がまだ存在しているが、制御下にあり、懸念される変異株がない国」

 ワクチン接種を受けている場合でも、搭乗時に、72 時間以内(抗原検査の場合は 48 時間)に遡って陰性の PCR 検査を提出する必要があります。

 ワクチン接種を受けていない場合は、搭乗時に、72 時間以内 (抗原検査の場合は 48 時間) に遡って陰性 PCR 検査の陰性結果を提示する必要があります。

 また、到着時、抗原検査がランダムに実施され(ランダムというところが疑問ですが・・)、フランス入国後、7日間の自己隔離が必要になります。

 地図を見てもわかるとおり、現在のところ、アメリカ・カナダ・マグレブ諸国を含む、このオレンジゾーンが大部分を占めています。


・レッドゾーンの国

「ウイルスが活発に循環しており、亜種の存在が懸念されている国」

 南アフリカ、アルゼンチン、バーレーン、バングラデシュ、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、インド、ネパール、パキスタン、スリランカ、スリナム、トルコ、ウルグアイなどがこのレッドゾーンに指定されています。

 これらの国からの観光目的の入国は基本的に禁止されています。

 このレッドゾーンに関しては、フランス人に向けても、「この地域には、旅行しないことを推奨しますが、ワクチン接種を受けた人は、観光目的ではなく、やむを得ない理由でのみ旅行できます。」としています。

 これらの国から帰国する場合は、48 時間以内の PCR 検査または抗原検査を提示する必要があります。警察の管理の下、フランス本土に到着すると、10 日間の検疫が課されます。これらの国々に行って帰国した場合は、警察による管理下による監視下に置かれるという点でも、一層、厳しさが感じられます。

 この国ごとによる色分けの観光客受け入れは、6月9日から開始されます。

 しかし、現在、特にインド変異種の拡大が懸念されているイギリスに関しては、オレンジゾーンではありながら、この強制検疫は 7 日間続き、「英国からフランスに入国する非居住外国人に対して」やむを得ない理由が引き続き要求されています。 

 また、イギリスからフランスに来る人には48時間のPCR検査または抗原検査も実施されます。

 私は、まだ、フランス国内でさえ、旅行はしておらず、パリの街を歩く程度ではありますが、感染が減少してきて、日常が戻り始めたことを喜ばしく思いながらも、やはり、あちこちで気付くのは、フランス(特にパリ)は、観光客による収入に多くを依存している国(街)で、いくら、ロックダウンが解除しても、観光客なしには、立ち行かないままである場面にいくつも遭遇するのです。

 しかし、だからといって、感染減少のために、ロックダウンをしたりしてきた努力を無にするわけにはいかず、少しでも安心できる状況で、段階的に観光客を受け入れていく準備を始めたのです。

 だからと言って、例えば、私が今、日本に行こうと思っても、ワクチン接種が済んだとしても、日本側が指定している2週間の強制隔離期間を逃れることはできないわけで、それを考えれば、やはり日本へ行くことは躊躇われます。

 しかし、今回のフランスの観光客受け入れのために、国別の条件を明示したことは、フランスに旅行しようと思い、検討するに際しては、必要な情報であり、とても賢明な措置であると思います。

 日本は、単なるコロナウィルス感染問題だけでなく、オリンピック問題が余計に事を複雑にしていますが、このフランス政府が提示した地図を見ても、多くの国がまだ、危険な国だと警戒されている状況です。

 こんな状況で、東京オリンピックをやることは、正直、私には、理解できませんが、それでもなお、オリンピックを強行するのであれば、オリンピック選手団・関係者の入国に関しても、このような国別の対応を検討しても良いのではないか?と思うのです。


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2021年6月4日金曜日

緊急通報回線不通になる恐怖の一夜

  


  

 最近になって、ようやく静かになってきましたが、昨年からのパンデミック以来、ロックダウン中はもちろんのこと、家の中にいても、かなりの頻度で、救急車のサイレンが聞こえてきていました。

 とにかく、ロックダウン中は、ほとんど家にいるのですから、それだけ神経質になってもいるし、実際に家にいて、1日中、救急車のサイレンの音がほとんど途切れないというのも、それはそれでなかなかない体験でした。

 一時は、救急車のサイレンだけでなく、ヘリコプターや軍用機が飛んでいく音や姿がアパートの窓から見えていたりしていたので、その度に、ああ〜また誰かが運ばれていく・・と、ちょっと言いようのない不安にかられたりもしました。

 今や、救急車のサイレンの音の頻度で、感染状況がわかるといってもいいくらいで、ここのところ、ようやく感染が減少してきた今では、ずいぶんとサイレンの音が減ってきました。

 救急車のサイレンが途切れない状態も恐ろしい状況ですが、救急車を呼ぶことができないというのは、もっと恐ろしい状況で、そんなアクシデントが、水曜日から木曜日にかけて起こり、緊急電話回線が大幅に不通になったために、少なくとも4名の死者が出てしまうという最悪の事態にまで発展してしまいました。

 これは、オレンジ(フランステレコム)というフランスの公共通信システムのトラブルによるもので、このシステムダウンのために、緊急電話回線が繋がらないという信じられないことが起こってしまったようです。

 だいたい、救急車や警察、消防などを呼ぶということは、呼ぶ方にしてみれば、よほど差し迫った状況なわけで、それこそ一刻も早く来てもらえるようにと、かなり混乱状態にあるはずです。

 フランスの緊急電話回線は、15・17・18・112と、いくつかの番号がありますが、それが全て繋がらないとなれば、パニック状態に陥ってしまうのもわからないではありません。

 ネットなどで、落ち着いて探せば、何らかのアクセス方法は見つかると思われますが、子供の急病におろおろしてパニック状態に陥り、繋がらない電話をし続け、結局2歳の子供を死なせてしまった母親もいました。

 また、逆に実際に、同じような場面で、落ち着いてアクセス方法を探して、子供の命を救った母親もいました。

 実際には、緊急電話回線が繋がらないなどということがあってはならないのですが、この回線の不通は、フランスでも歴史的な事故です。

 ようやくフランスの集中治療室の占拠率は、50%台まで下がってきた途端に起こったこの緊急電話回線ダウン。これまで、フル稼働していたこの緊急電話回線の不通は、一応、現在は、回復していますが、未だ予断を許さない監視状態だと言います。

 もし、何かあっても、ようやく病院に行くことができるようになった・・と思い始めた途端にこれです。

 私自身は、フランスでは一度、もう20年くらい前に一度、家で夜、主人が具合が悪くなって、救急車を呼んだことがありましたが、まだ娘が小さかった頃で、救急隊が到着した際も娘を置いていくわけにも連れていくわけにもいかずに、主人が一人で運ばれて行って、不安な思いで一夜を過ごしたことがありました。

 結局は、その時は、主人の病状は深刻な状況に陥ることはなく、一週間ほどの入院ですみましたが、あの頃は、娘は、救急車を見ると「ヴォアチュー・ド・パパ(パパの車だ)!という言うようになり、小さかった娘にもかなりかなり印象的な出来事だったようです。

 しかし、不幸中の幸いと行っていいのか、これが、感染のピーク時に起こっていたら、死亡者は、こんなものではとてもすまなかっただろうと思います。

 この事故を踏まえて、フランスでは、全ての緊急電話を統合しない方法、(日本で言う警察は、110番・救急は119番というような番号の統一ではなく、違う番号にも振り分ける方法)新しい別の(地域ごとなどの)緊急電話番号を開設することを検討し始めるようです。

 本当に、次から次へと思いも寄らないことが起こります。別の地域では、大雨による洪水で家が水浸しになっているニュースが流れています。

 緊急電話は繋がらない、洪水のために水浸し・・フランスは、一応、先進国だったはずだよね・・と、思ってしまいました。

 何か異例の事態が起こった時にパニック状態に陥りやすいフランス人の中で、パニックを起こさずに、落ち着いて行動しなければ・・と、肝に命じたのでした。


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2021年6月3日木曜日

6月15日から、12歳〜18歳のティーンエイジャーにもワクチン接種開始



 フランスは、5月31日から18歳以上の全ての成人がワクチン接種が可能になっていましたが、それから半月後の6月15日からは、12歳〜18歳のティーンエイジャーもワクチン接種が可能になることをマクロン大統領が発表しました。

 重症化するリスクが低いティーンエイジャーへのワクチン接種に関しては、必要があるかどうかという議論も出ていましたが、結果的には、ティーンエイジャーが感染した場合に、無症状のままに、他の人に感染させるリスクを含んでいることから、まだ時期尚早との声が一部にはありながらも、マクロン大統領は、「これは、真の集団免疫を可能にする次のステップである」とし、ティーンエイジャーのワクチン接種に踏み切りました。

 すでに先週末の段階で、欧州医薬品庁は、アメリカの研究所であるファイザーとドイツの企業バイオンテックによって開発されたワクチンのこの年齢層(ティーンエイジャー)への使用にすでに許可を出していました。

 それから、わずか数日後のフランスの決定は、かなり迅速なものでした。

 このワクチンキャンペーンの新たなステップ開始は、「クラスや大学の閉鎖を回避し、最も弱い人々を保護するための集団免疫運動」の一部である、とオリヴィエ・ヴェラン保健相もこの措置を説明しています。

 これまで、感染者が出れば、学級閉鎖になったり、大学の講義がリモートに切り替えられたり、クラスの人数制限をするために、一週間おきの登校になっていたりした状況に孤独感に苛まれ、精神的にも病んでしまう学生が急激に増えていたことなどからも、このティーンエイジャーへのワクチン接種で解消することができます。

 ティーンエイジャーへのワクチン接種に関しては、保護者の同意が必要になるため、最初に高齢者施設でワクチン接種に際しての家族の同意書が必要だったことで、当初はワクチン接種がなかなか進まなかった経緯などもありましたが、世界中でワクチン接種の効果が見られ始めている現在では、ワクチンへの懐疑的な見方もかなり薄れてきて、依然としてアンチワクチンの態度を崩さない人も一定数いるとはいえ、以前のように、ワクチンを拒否するという人は少なくなってきているのではないかと思われます。

 また、これに加えて、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、ワクチン接種キャンペーンを遅らせないことを目的として、数日以内に、ワクチンの2回の投与間隔を延長できる措置を取ることを発表しました。

 フランスでは、これまでに(6月2日現在)2,650万人以上が少なくともワクチンの初回接種を受けており、これは、全人口の39.7%、成人人口の50.6%のワクチン接種ができているということになります。

 そして、1,140万人以上が2回のワクチン接種を済ませており、これは全人口の17.1%、成人人口の21.8%に当たります。

 フランスは、とりあえずのワクチン接種の目標を全人口の60%を目標にしているので、これで、ティーンエイジャーのワクチン接種が学校・大学単位で進んでいけば、さらに一気にワクチン接種が拡大していくことが期待できます。

 次から次へと変異種が出現し、いつまでもホッとできない状況が続いてはいますが、フランス人は、夏のバカンスに出る前になんとかワクチン接種をして、安心してバカンスに臨みたいと思う人も多く、ワクチン接種を積極的に受けようとする雰囲気が高まっています。

 また、現在は、感染状況は、順調に減少してきていますが、これでワクチン接種が拡大し、さらに感染率も低下して、フランスが安全な国だという認知が広まれば、世界中からの観光客も戻ってきてくれるのではないかと期待しています。

 いつもは、どうしてフランスは、こうなんだろう??と思うことも多いのですが、ワクチン接種に関しては、結構、頑張っています。


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2021年6月2日水曜日

トゥールーズ スクワット(アパート乗っ取られ)事件 フランスの居住権

   



 フランスでの権利の主張というのは、何においてもなかなかなもので、まず、物申す権利である「デモ」の権利は、第一回目の完全なロックダウン状態の時は、別として、それ以降のロックダウン下では、結局、デモの権利は、尊重され続けていました。

 また、しばしばデモにも発展するものでもありますが、フランスの労働者を守るための「労働者の権利」というものもかなりのもので、国自体がバカンスの権利や労働時間などについての雇用体系に関わる労働者の権利というものも(時には、行き過ぎのところも多々ありますが、)かなり厳格に守られています。

 この辺までは、まあ大目に見れば、まだ理解できないこともないのですが、フランスでの権利の中で、理解できないことの一つに居住権というものがあります。

 先月、トゥールーズに住む学生が、ロックダウン中に3カ月間、両親の住む実家にしばらく滞在している間に自分のアパートがスクワット(アパート乗っ取り)の被害にあい、自分のアパートに戻った時には、鍵が変えられていて、本人が自分のアパートに入ることができず、自分のアパートが乗っ取られて、他人が素知らぬ顔をして住んでいることを知り、愕然とし、途方に暮れるという事件が起こりました。

 彼は、留守中の3カ月間も家賃は遅れることなく払い続け、その彼が家賃を払い続けていたアパートには、知らない間に全く見ず知らずの人が住んでいたのです。

 スクワットをしようと狙っている人は、ポストなどの郵便物のたまり具合をチェックして、留守になっている家やアパートに目星をつけるのだそうです。

 考えてみれば、多くの学校や仕事がリモートワークに切り替わり、多くの人がパリから逃げ出し、同じアパートの人でも、並んでいるポストを見て、この人、ずっといないんだなぁ〜と思ったこともありました。

 彼は、警察に駆け込みましたが、警察は、自分で不法侵入者を追い出すことは、更なるトラブルを生む可能性があるとし、警察が不法侵入者を退去させるまで、それからさらに長い期間、自分のアパートを取り戻すまで待たなければなりませんでした。

 これは、彼がその時点の居住地としていた場所であったので、まだ、不法居住者を比較的、簡単に退去させることができましたが、それが、長い間、空き家として使用されていなかった家や別荘などの場合は、それが不法居住者とて、簡単に退去させることはできません。

 裁判沙汰になって、家をめちゃくちゃにされても、家を取り戻すのに、何年もかかることもあります。

 アパートの賃貸などにしても、長いこと家賃が滞納されていても、そこに住んでいる人には居住権というものが発生し、家賃を払わないからと言って、簡単に追い出すことはできません。

 私の知人にもパリにアパートを数軒持っている人がいますが、必ずアパートの賃貸には、代理店を介入させ、日本人にしか貸さないという条件を提示していると言います。

 日本の常識からいったら、このようなスクワットや家賃を滞納するなどということは、あまり考えられないことだし、日本人はアパートをきれいに使うし、あまりバカ騒ぎもしないし、礼儀正しく、きちんと家賃も支払うので、日本人に貸したがる人は多いのです。

 この居住権に関しては、全く始末の悪いもので、空き家のまま放置しておくことは、フランスでは、かなりのリスクを伴うことなのです。

 以前に、亡くなった両親が住んでいた家を放置していて、さて、家を売って処分しようとした人が、久しぶりに家に行ってみると、家はスクワットにあい、これでもかという人数の難民が住み着いていて、数年かかって家を取り戻したものの、家の中はめちゃくちゃになっており、改修工事をしなければとても売りに出すこともできないという悲惨な話がありました。

 今回のこのトゥールーズの学生にしても、「自分が家賃を払い続け、自分の居住証明があっても、一旦、スクワットされたアパートに直接、自分が介入できない意味がわからない」と語っています。

 しかし、警察の介入後、取り戻したアパートに彼はもう住む気にはなれずに、彼は、別のアパートに引っ越すことになりました。

 私は、今のところ、そこまで長期でアパートを留守にしたこともないし、ある程度、長く留守にしたとしても、ポニョ(猫)が一人で留守番しているために、毎日、ポニョの世話をしてくれる人を頼んでいて、毎日、アパートを覗いてくれているので、そのようなことはないとは思いますが、とにかく気を許して生活することはできないフランスの居住権問題でした。


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2021年6月1日火曜日

大坂なおみ 全仏オープン(ローランギャロス)トーナメント撤退発表


Naomi Osaka, la numéro 2 mondiale, a décidé de se retirer de Roland-Garros. (ROB PRANGE / SPAIN DPPI)


 昨年からのパンデミックのため、今年の全仏オープン(ローランギャロス)はどうなることやらと思っていたら、予定どおりの5月30日からスタートしていたことに、やはり、毎年の年中行事?とともに、日常が戻りつつあることが感じられ、どこか、ほっこりさせられた思いがしていました。

 今回のローランギャロスは、120回目の大会で、昨年の開催も延期の末に感染が悪化してからの開催など、色々と物議を醸してきましたが、今年は、様々な衛生管理の制限があるにせよ、フランスは、ロックダウンが解除され、今のところ順調に感染も減少しつつあり、ワクチン接種もフランスにしては、なかなかの速度で進み始めて、今週からは、18歳以上の成人は、全てワクチン接種が受けられるようになり、上向きのムードの中、始まった大会でした。

 さすがに、個人的には、現在のフランスの状況で、会場にまで行って、応援することは、ちょっと躊躇われるのですが、テレビをつければ、オンタイムで試合を見ることができるこの全仏オープンは、あまりスポーツ観戦をしない私でも、日本の選手を応援したくなる大会でもあるのです。

 昨日、「ああ〜そういえば・・ローランギャロスが始まっているんだ!」と気づいて、試合のスケジュールを確認してみたら、すでに一回戦が終わっていて、日本の錦織圭選手や大坂なおみ選手は勝ち抜いているのを確認して、「よしよし・・」と次の試合の日程などを見ていたら、急に「大坂なおみ トーナメント撤退」というニュースが入ってきてびっくりしました。

 この大会が始まる前から、彼女が試合後に行われる記者会見に応じないと発表していたことは、聞いていましたが、まさかそれがこんなことにまでなってしまうとは、思ってもみないことでした。


 彼女は、これまでも記者会見を苦痛に感じていて、全ての選手が試合に集中するため、精神衛生上、記者会見を行わないことを主張していましたが、これは大会規定に違反するため、15,000ドルの罰金を課せられることが報じられていました。

 現在、世界ランキング2位という彼女のステータスと影響力から、これまでも、彼女は、様々なことを主張し続けてきて、今回の記者会見に関しても、「現在の規則は古い、選手が試合に集中できる体制をとるべきである」と発表したのでした。

 彼女にとって、15,000ドルの罰金は大した金額ではないにせよ、大会の記者会見は、一般のマスコミとは違う大会運営の公式記者会見でもあり、この大会の大事な一部でもあるため、大会運営側も彼女の訴えを簡単に受け入れることはできません。

 それどころか、この全仏オープンだけでなく、他のグランドスラムと呼ばれる4大大会から、共同排除という脅威が逆に彼女を襲うことにまで発展してしまいました。

 彼女自身は、この彼女の発信が、「試合の内容以上に多くの人の気を逸らすものになり続けて欲しくない」として、結果的には、彼女は今回の全仏オープンのトーナメントを撤退することを発表しました。

 

 彼女は、今回の論争に関しては、「タイミングも、自分の発信の仕方ももっと明解な形にするべきで、最善のものではなかっったために、今回は、これ以上、テニス以外のことで、騒がしたくはなく、私自身が撤退することが一番だと思う。いつも私に親切にしてくれたテニスプレスに謝罪したい。しかし、人前で話すことは私の本質ではなく、それは私に計り知れない不安を引き起こします。今回の大会では、自分はナーバスになっていると感じ、マスコミを避ける方が良いと思いました。この記者会見のルールは古くなっていると思い、人々に知らせたかったので、事前に発表しました。」と語っています。

 そして、「時が来たら、ツアーの関係者と話をして、選手、マスコミ、ファンの両方の状況を改善できることを願っています。」と締めくくっています。

 彼女は、日曜日にはすでに、一回戦のパトリシアマリアティグ(63位)(6-4、7-6 [7/4])に勝利したばかりでした。

 試合に集中するために記者会見を回避したいと言っていた彼女がそのトーナメントから撤退することになってしまったことは、大変、残念なことです。

 アメリカでは、アスリートはマスコミとの取引においてより多くの自由を望んでいると彼女のコーチは彼女を擁護していますが、どちらにしても、これはプロテニスの世界、しかも記者会見も大会の主催する公式記者会見の話。ファンとしては、試合同様、選手からの話を望んでいるのも事実で、この記者会見も含めてのトータルのイベントです。

 プレス側も余計な質問をすることもあるでしょうが、必ずしもネガティブなことばかり発信するわけでもありません。多くのプレス関係者やファンの人に支えられつつ存在している大会でもあるのです。

 スポーツもメンタルを整えることが難しいものではありますが、つい先日、彼女がラケットを折ったことがバッシングされていたりして、彼女自身のメンタルが揺らいでいることが伺えます。彼女自身は、長いことうつ病に苦しんできたと告白していますが、現在も、精神的に苦しんでいる状態ならば、もっとこんな騒動にならずに記者会見を避ける方法は別にあったのではないかと思っています。

 彼女の会見に対するストレスと同様、彼女の発信することの影響力は、彼女自身はより自覚する必要があり、このタイミングだったならば、とりあえずの会見拒否の意向は、ツイッターやインスタグラムではなく、まず大会主催者に直接、伝える必要があったのではないかと思います。

 世界のトップレベルにまで登りつめた彼女は、まだまだ若いのです。こんなことで、潰れて欲しくないと心から祈っています。


大坂なおみ


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