2025年6月13日金曜日

パリ・ロダン美術館は惜しみなくロダンの作品が楽しめる実はすごい美術館!

  


 パリには数多くの美術館があるけれど、いつでも行けるところにいながら、美術館というものは、そんなに頻繁に行くわけではありません。

 しかし、行ってみると、全然、気軽に行けるもので、行くたびに、「もっと、ちょくちょく来るべきだ・・うん!また、近いうちに来よう!」と思いながら、なんとなく、心が満たされた気分になって帰るのです。

 美術館に行くということが習慣になったら、よいな・・と思いつつ、結局、そこまでは行けていません。

 今回は、久しぶりにロダン美術館に行ってみたのですが、そういえば、前に来たのはいつだったかな?パンデミックの前かもしれない・・(最近、過去のことを思い出すときに、パンデミックは私の中でなにか一区切りになっていて、パンデミックの前か後?どっち?と考えるようになっています)と思いながら、たぶん5年ぶりくらいで5回目くらいです。

 ロダン美術館は個人的にはパリの美術館の中でももっとも好きな美術館のひとつで、そもそもず~っと昔にまだ私が日本に住んでいた頃に最初にパリに旅行で来た際に、まず、一番行きたかったのがロダン美術館でした。

 それは、私が彫刻が好きとか、ロダンが好き・・というよりも私の大好きな作家の井上靖氏の小説にパリが度々、登場し、その中で主人公がロダン美術館を訪れるシーンがあって、その小説の中の描写がとても素敵だったからです。

 小説の中にはロダンの「パンセ」、つまり日本語でいうところの「考える人」などが出てくるのですが、最初は、その本物のパンセが見たいと思ったのでした。当時は、私は、フランス語は全くできなくて、会社の上司の人でフランスに留学経験があって、フランスが大好きという人に「ロダン美術館はどこですか?」というフランス語を教わって行きました。

 その時の美術館のことは、あまりよく覚えていないのですが、その「ロダン美術館はどこですか?」と街行く人に尋ねてみたら、ちゃんと言葉が通じたことに感激しつつ、当然のことながら、フランス語で尋ねたので、フランス語で答えが返ってきて、何を言っているのかわからないことに初めて気が付いて、友人と大笑いした記憶があります。



 話が脱線しましたが、パリに来てからも、何回かロダン美術館には行っていますが、私の中では「ロダン美術館=お庭のバラがきれい」という頭があって、今回、行ったのも、バラの季節だし、さぞかし、お庭のバラがきれいだろうと思ったのですが、残念ながら、バラはところどころにはあったものの、盛りの頃はもう過ぎていました。



 入口を入るとすぐに荷物チェックの場所で少しだけ並びますが、これも数分のみ、比較的あっさり通れます。美術館の中に入るとチケット売り場とオーディオレンタルがあって、過ぎると現在は子どもが美術に触れて楽しむことのできるキッズスペースができています。

 私も入りたいんですけど・・と言ったら、子どものスペースなので大人はダメだと言われました。


 美術館の中には、ロダンの彫刻を中心とした作品(絵画等もあります)が約7,000点あるそうで、中には、ゴッホの絵(私が知っていたのはタンギー爺さんというもの)などもありますが、なんといっても力強いロダンの彫刻の数、大きさには、圧倒されます。




 彫刻のほとんどがケースなどには入っておらず、ほんとうに近くまで寄ってみることができます。ロダンの彫刻はもちろん小さなものもありますが、大きなものがけっこう多くて、これは、ロダンが世に出る頃にあまりの出来栄えにかたどりをしたものではないかと疑われたために、人間の実物大よりも大きな作品を作ってその作品がかたどりではないことを証明したため、それ以来の彼の作風になったという説があるそうです。




 とにかく、これだけの数の彫刻を作り出すパワーは並大抵のものではないと思われ、その作品の表情や身体、筋肉の動きなど、ひとつひとつを創りあげるのには、正気を保つのは厳しいのではないかと感じられます。



 私は美術に関して、詳しいわけではないので、なんとなく、好き・・すごい・・素敵・・きれい・・カッコいい・・とか、まるで幼稚園の子どものような感想しかないのですが、これがやはり数百年前にたしかにここにいたロダンという人が自分の手で造り上げたものがそのまま残っていると思うと、唸りたくなります。






 美術館内の広さはほどほどで、非常に見やすくて快適、しかし、私がこの美術館が好きなのは庭園です。庭園内には、カフェもあって、簡単な食事もできるようになっています。この庭園は、これまた、そこまで広すぎず、しかし、屋外だけど木陰になっているスペースに彫刻が点々と置かれていて、ベンチがたくさん置かれています。(ゴミ箱がやたらと多い)



 非常にゆったりとした空間で、友だちとおしゃべりしたりするのにもちょうどいいな・・とも思います。屋外に置かれた彫刻の数々には、ひとつひとつ説明書きがついています。



 今回は、その中のひとつの頭を抱えた大きな彫刻がやけに気に入って、しばらく側にいたい・・と思いました。頭を抱えて、なにか考え事をしている様子の彫刻ですが、頭を抱えて下を向いているのに、大きな目は見開かれているのです。

 今は、時期的なこともあるのでしょうが、幼稚園だか小学生だか小さい子どもたちが学校の遠足かなにかで来ている感じも、とても微笑ましいです。余談ですが、こちらの子どもたちは、美術館内などでも非常にお行儀が良いです。




 最後の出口の近くには、ブティックがあり、多くの美術館にあるように本や小さな彫刻、お土産類が売っていますが、なんといっても「考える人」は一番人気のようで、考える人消しゴムから、考える人鉛筆、考える人カレンダー、考える人パズルなど、考える人に埋め尽くされているのには、苦笑してしまいますが、ついつい欲しくなる気持ちもわからないではありません。

 この美術館は、大変よいロケーションでもあり、入口を入ってわりとすぐのところに有名なパンセ(考える人)があり、その向こうには、エッフェル塔、アンヴァリッドなどが見えます。また、同じ通りは、首相官邸をはじめ、多くの省庁が並んでいる通りなので、やたらと警察官が多く、治安の良さは抜群です。

 この美術館は晩年にロダンがアトリエとして使用していた場所だそうですが、こんなところにアトリエがあったなんて、すごいな・・などとも思うのです。

 現在、行列ができているという大阪万博のフランスパビリオンには、ロダンの彫刻が言っているようですが、パリのロダン美術館はほぼほぼ行列なしに入れ、山ほどのロダンの彫刻が惜しみなく置いてあります。

 子どもがけっこういたり、作品との距離も近いので、ゆったりと自由に見ることができて、堅苦しい感じは微塵もありませんので気軽に芸術に触れる(触るということではない)ことができるので、とってもおススメです。


パリ・ロダン美術館

🌟Musée Rodin  77 rue de Varenne 75007 Paris  


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2025年6月12日木曜日

15歳未満へのナイフ販売禁止とソーシャルメディア禁止

   


 先日のオート・マルヌ県ノージャン(グラン・テスト地域圏)での14歳の少年が学校職員(サーヴェイヤント=監督員?)をナイフで襲って殺してしまった事件以来、「15歳未満へのナイフ販売禁止とソーシャルメディア禁止」についての論争が起こっています。

 この事件の直後にマクロン大統領は、「15歳未満のユーザーによるソーシャルネットワークの利用禁止を急ぎたい」と発信。

 また、フランソワ・バイルー首相は、「未成年者へのナイフの販売禁止は15日以内に法令が交付される」と発表しています。

 この事件の被告となっている少年が犯行に使ったナイフは自分で購入したものではなく、家から持ち出した20㎝ほどのキッチン用ナイフだったと言われていますが、暴力行為へ魅せられていたと語っているようで、SNSの影響があったかもしれません。

 とはいえ、法律上、すでに、未成年には、あらゆる種類の軍事?攻撃用物資、弾薬、武器、ナイフなどを購入する権利はないのですが、未成年に対して販売することも禁止されています。

 また、購入だけでなく、ナイフを所持したり、持ち運んだりすることも禁止されており、未成年者であっても成人であっても、刃物と見なされるナイフを持って外出することは、禁止されているのです。

 これらのナイフ等を携帯していた場合には、正当な理由が提示できなければなりません。ピクニックに行くとか、狩猟に行くなどは、正当な理由として認められるということですが、この取り締まりをし始めたら、大変なことになります。

 なので、実際に禁止されているとはいっても、それはまったく遵守されていないということです。考えてみれば、このような禁止事項というものは、けっこうあるものかもしれません。

 つまり、これらは、非常にはっきりと鮮明な法的な禁止事項でありながら、実状は、ぼやけた法令としてしか機能していないのが現実で、それこそネットなどでの販売・購入に際しては、年齢確認等のステップがあるものの、これらは、いくらでも偽認証できてしまうわけで、これをどのように取り締まっていくのか?荷物を受け取る際に、保護者のサインが必用になるようにするとか、色々、提案はされているようですが、そもそも偽の年齢で認証を受けている場合には、該当しそうにありません。

 また、ソーシャルメディアの利用に関しても、禁止となると、色々と複雑な問題もあり、効果的に利用している場合も多いので、あながちその全てを禁止するということもまた、容易ではありません。

 フランスでは、すでに2023年の段階で、危険因子の高いメディアとして、15歳未満の子どもがTikTok、Snapchat、Instagramなどのソーシャルネットワークにアクセスすることを禁止する法律が可決されています。

 しかし、これはフランスですでに可決していながら、デジタルプラットフォームを規制する欧州法の遵守が欠如しているために、フランス国内でも施行できずにいました。

 ここのところが、マクロン大統領が「欧州全体の決定をいつまでも待てないので、2ヶ月以内にこの欧州法が前進しなければ、フランスだけでも、この禁止を施行する」と言っている所以です。

 どちらにしても、ソーシャルネットワークを全て否定はしませんが、これが、まず、なぜ?15歳未満・・と15歳なのか?なんなら、責任をとれない未成年全体に拡大してもよいのでは?と思わないでもありません。

 最近、フランスで起こっている犯罪を見ていると、大人が未成年の子どもを募って、犯罪の手先に利用したりするケースも多々あり、SNSが今まで無かった犯罪を生んでいることはたしかです。

 今回、フランス中を騒がせているこの14歳の少年は、全く反省の色も後悔もなく、また、被害者に対しての同情や謝罪の感情もないと伝えられています。人の命を奪うということに関しての重みや、それに関わる人々の痛みを感じられないというのは、どういうことなのだろうか?と思います。

 まだ14年しか生きていないのに、どうしたら、こんなになっちゃうんだろうか?と空恐ろしい気がします。やっぱり子育てって怖いし、責任重大なことです。

 このような問題を解決するのに、刃物の販売禁止とか、ソーシャルネットワークの禁止とかも必要なことなのかもしれませんが、根本的なことは、なにか別のことにあるのではないかという気がしています。


15歳未満 ナイフ販売禁止 ソーシャルメディア禁止


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2025年6月11日水曜日

学校の入り口での手荷物検査で14歳の少年がまさかのナイフで監督教員を殺傷

   


 事件は朝8時15分頃、オート・マルヌ県ノージャン(グラン・テスト地域圏)の中学校登校前の手荷物検査中に起こりました。陰惨な事件を回避するために行われていた検査の場でこのような衝撃的な事件が起こるとは、まさに、為す術がないかのようにも思えます。

 この事件の被害者となった女性は、この中学校の教員助手というか生徒を監督するサーヴェイヤントという職にありました。この学校でのサーヴェイヤントという職務、娘が学校に行っていた時に時々、耳にすることがあって、そのサーヴェイヤントってなに?と娘に聞いたことがありましたが、教師ではなく、キャンティーンや休み時間の校内などでの見回り係というか監督員のような立場の人とのことでした。

 教師ではなく、別にこのような職務というものがあることに、フランスらしいな・・と思った記憶があります。

 この女性は、元美容師さんで、クローン病を患い、健康上の理由から転職をしたばかりで、新しい人生(仕事)に大変、満足していたそうで・・まだ若干31歳の4歳の子どものママでした。

 一方、加害者の少年については、あまり、まだ詳しい情報は流れていませんが、特別に問題が見られる子どもではなく、全くのノーマークの生徒だったようで、むしろ、校内では、「いじめ対策チーム」のリーダーを務めていた少年だったということで、余計に闇深い気がします。

 とにかく、この14歳の少年は、この31歳の女性をナイフで数ヶ所刺して、結果的には殺してしまったわけで、すぐに逮捕されたものの、その衝撃は非常に大きく、大統領をはじめ、首相、教育相などが、すぐにマスコミの前に立ち、鎮痛な思いと今後の対策について、話しています。

 マクロン大統領は、この事件を受けて、「15歳以下のソーシャルメディアの使用を禁止する必要がある」と発表し、「欧州レベルでの実現を可能にするために数ヶ月間の猶予を設けるが、欧州レベルでの実現が2ヶ月以内にできなければ、フランスだけでもまず開始する」と述べています。

 このソーシャルメディアの禁止となると非常に大きなことになるとは思いますが、バイルー首相は、特に「ナイフなどの凶器の購入規制の厳格化」、「15歳以下の子どものオンラインでのナイフ購入を禁止する」ことなどを発表しています。

 これには、「すでに、子どもがこれらの凶器の購入は禁止になっているはず・・」とのことではありますが、現実にはそれが可能なままになっているのです。

 この未成年者の傷害事件についての報道を見ていると、ほぼほぼ皆、あたりまえのようにナイフを持っていることに驚かされます。それが、放課後や夜中に街にウロウロでかける少年たちだけでなく、ごくごくふつうの学校生活の中にも浸透しつつあるということが、異様なことです。

 そもそも今回のように、学校前で手荷物検査を行わなければならない事態・・その検査中にこのような陰惨な事件が起こってしまうということは、本当に悲惨な状態です。

 私は、フランスの学校については、娘が通っていた学校についてしか知らないので、このような事件を見るにつけ、あまり一般的なことは、知らなかったのだな・・と思いますが、とにかく、娘が通っていた学校(小学校から高校まで)は、大変、厳しい学校で、問題がある生徒は容赦なく、転校を促され、授業はもちろんのこと、日常生活での規律や礼儀などについても大変、厳しく、ポイント制?のようなものがあって、✖が3つ以上つくと、追い出されかねない・・それが、教師に対して、口答えしたり、怒られて、教師を睨み返しただけでも減点・・というのを聞いて、驚いたことがありました。

 特に中学校からは、授業の速度も大変速く、とにかく点取り虫の子が多かったので、そんな日常生活の些細なことで学校を追い出されるなどということは生徒たち自身にとっても考えられない感じだったと思います。

 初めて、その学校を見学に行った時は、もう学校内の空気が全く違って、凛とした感じがあり、ここなら大丈夫・・と思ったことを覚えています。

 このような様々な少年事件を見ていると、かなり厳しくしないとダメな年頃もあるのではないか?とも思うのです。

 子育ては、それぞれの子どもにとって、それぞれ違うので、何が正解かはわかりませんが、やっぱり、安全な環境に子どもをおいておきたいと思うじゃないですか・・。


荷物検査での14歳の刺殺事件


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2025年6月10日火曜日

人道支援船「マドリーン」拿捕に抗議する人々がレピュブリック広場に溢れている!

  


 私はこのガザへの人道支援船が出航したことまでは知っていたのですが、その後、この船がイスラエルによって拿捕されていたことは知りませんでした。

 昨夕、パリ・レピュブリック広場に人が溢れている・・というニュースを見て、「なんでなんで?何があったの?」と、最初はわかりませんでした。

 なにしろ、人の集まり方が尋常ではなく、パリでは度々、デモがあったりすると、その集合場所になって、レピュブリック広場に大勢の人が集まることは、決して珍しいことではないのですが、これだけの人が集まるということは、そうそうあることではありません。しかも、週明けの月曜日に・・。

 これは、この医療支援と食糧を届けるためにガザへ向かっていた船で、この船には、環境活動家のグレタ・トゥーンベリ氏、パレスチナ人自由連盟の欧州議会議員リマ・ハッサン氏、フランス人ジャーナリストを含めた12名が乗船していました。


 

 このうちの6名はフランス人であったことから、フランスでは特に大騒ぎになっているようで、もともと人道的な案件については、ことのほか、強い反応を示すフランス人・・これだけの人が集結しているのもうなずける気がします。今回のこのデモは、人道支援船の救助に加えて、そもそものガザでの大量虐殺に抗議しているものです。

 これには、早々にマクロン大統領もイスラエルに対し、「人道支援の封鎖は恥ずべき行為である」と強い非難の意を表明し、「フランス人6名の解放」を求めています。

 これに対し、イスラエル外務省は、「帆船はイスラエル沿岸に向けて安全に航行している。乗客は安全に帰国する予定である」と声明を発表しています。

 また、同省は、「この人道支援船はグレタ氏らが宣伝目的のみで、トラック1台分にも満たない支援物資でメディア挑発行為を企てた。過去2週間で1,200台以上の支援物資を積んだトラックがイスラエルからガザ地区に入り、ガザ人道財団が約1,100万食の食事をガザ地区の民間人に直接、配布している」、「船に積まれていた援助物資は、正当な人道的ルートを通じて、ガザに移送する」とも付け加えています。

 このイスラエル側の言い分が真実かどうかは、別としても、少なくとも人道支援船を拿捕し、乗組員を拉致するという控え目にいって、強引で暴力的なやり方には、疑問を感じずにはいられないところです。

 拿捕されたマドリーン号は、イスラエル海軍の船艇2隻に護衛され、その日の夕方イスラエルのアシュドッド港に入港しています。

 WHO(世界保健機構)は、先週末土曜日に発表した声明で「ガザ地区の保健医療はすでに崩壊しており、同地区(特に北部)にはすでに機能している病院はない」と発表しています。

 この人道支援船がマスコミへの広告目的であったとしても、それを拿捕したことで、一層、この騒ぎは広まった気がします。


人道支援船「マドリーン」拿捕


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2025年6月9日月曜日

娘への誕生日プレゼントに思うこと

  


 6月は娘のお誕生日の月なのですが、最近は日本とフランスと離れて生活しているために、お誕生日を共にお祝いすることもなくなりました。

 一応、当日には、お誕生日おめでとうのメッセージは送るものの、プレゼントは、ここ数年は、次回、娘がフランスに来たときか、私が日本に行ったときに、二人で一緒に旅行するのがプレゼントがわりになっています。

 小さい頃は、6月というのは、フランスの学校では学年度末ということもあって、学校の行事だったり、バレエの発表会だったり(リハーサルも含めると数日つぶれる)、お友だちのお誕生日会もやたら多い月(6月だけでなく、7月、8月生まれの子までみんな6月にお誕生日会をやる)で、とても忙しい月でした。

 その他、夏のバカンスのコロニー合宿に行くための準備(必要なものを買い揃えたり・・)などもあり、学校とお稽古事と自分の仕事だけでも、もうあっぷあっぷ状態なのに、これだけ行事が重なると、今から考えると目が回るような感じの月でした。

 それで、小さい頃のお誕生日プレゼントというものは、あんまり記憶がないのですが、とりあえず、娘の好きなコーヒー味のエクレアを歳の数だけ買ってくるというのを習慣にしていました。

 エクレアにろうそくをたててうれしそうに運んでいる娘の写真が印象的でした。

 ふだんは、あまりケーキやお菓子が大好きというわけでもないのに、なぜかこのコーヒーのエクレアだけは、なぜか我が家ではいつのまにか、娘のお誕生日ケーキとして、君臨していました。

 娘はあまり物を欲しがらない子で、大きくなってからは、それなりにあの靴が欲しいとか、たまに、そういうことはありましたが、贅沢に物を買い与えるということはなく、娘にお金を使うのは、お稽古事とか、スポーツとか、留学とか、なにかを経験させることに使うように心がけてきました。

 そんなわけで、特に夫が他界してからは、あまりに多いフランスの学校のバカンス時期は、娘はほぼほぼ、いつも、なにかスポーツをするコロニー合宿に参加し、その歳ごろに可能なあらゆるスポーツをひととおり経験し、一年のうちに何度も旅行・・という、傍からなんとなく聞けば、どんだけ優雅な生活?とカン違いされそうなスケジュールを過ごしていました。

 物はあまり買い与えてこなかったので、目に見えて残っているものはあまりありませんが、彼女自身が身に着けた目に見えないものは、ずっと彼女の中に生きている糧になっていると信じています。

 20歳になったときは、さすがに、成人の記念として、なにか一生使えるものをプレゼントしたいと思い、少し良い時計を買ってあげようか?とエルメスの時計でもどう?と提案したのですが、娘には、「エルメスあんまり好きじゃない」と却下され、なんだかよく覚えていないブランドの、しかし、彼女の好みにあった時計を買ったと記憶しています。

 今では、彼女自身も自分でしっかりと稼いでいるので、自分でもなんでも好きなものは買える生活を送っていますが、彼女は相変わらず、しまり屋で、高価なものはあまり買わずに、もっぱら、旅行したり、スポーツをすることにお金は使っているようです。

 彼女の生活の仕方を見ていると、基本的には、自分が体験することにお金を使うという小さい頃からの育ち方をそのまま続けているのだな・・と、なんだか私がしてきたことは、間違ってなかった・・健全なお金の使い方だったな・・と思うのです。

 それでも、一応は、誕生日が近付くと、「なんかほしいものある?」と聞いてみるのですが、結局、いつも、「いつもと同じ旅行がいいよ!」という答えが返ってきます。


お誕生日プレゼント


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2025年6月8日日曜日

空港職員もぐるだった! フランス・ブラジル間の大規模なコカイン密売組織

  


 今回の摘発のきっかけとなったのは、昨年末に当局が、ブラジルからのフランスへの飛行機によるコカインの輸送を特定し、特定された便がシャルルドゴール空港に到着後、貨物パレットの検査が行われ、コカインの塊45個(計50㎏)が入った箱が発見されたことが始まりでした。

 その後、1月22日にこのブラジルからのコカイン密売の大規模組織摘発に向けて、約100名の国家憲兵隊と様々な専門部隊が動員された特別チームが設けられ、着々と捜査が進められてきました。

 捜査により、セーヌ・サン・ドニを中心として活発に活動するコカイン密売ネットワークを特定、この密売組織は、空港会社の従業員や幹部数名を雇って、毎月20㎏から50㎏のコカインを輸送していたことが判明しました。

 つまりは、空港の検査員を買収して抱き込んでいたのですから、空港の通過も難なく通ってしまっていたわけです。少し前に、漁師を巻き込んで密輸の手伝いをさせていた海路でのコカイン密輸が摘発されていましたが、今回の空路の場合は空港職員を抱き込んでいました。

 いつも私が日本に帰国した際に、スーツケースいっぱいの食糧品を重量が超過しないかとドキドキしながら、荷物を持って帰ってきているのが、ホントにバカみたいです。

 今回の摘発では、当局は、フランス・ブラジル間のコカイン密売組織を壊滅させたといっていますが、これで本当に壊滅したかどうかは、別としても、この大きな摘発が彼らコカイン密売業者にとっては、重大な回路が奪われたことには、違いありません。

 この事件では、オワーズ県、パ・ド・カレー県、セーヌ・エ・マルヌ県、ヴァル・ド・マルヌ県、ヴァル・ドワーズ県、セーヌ・サン・ドニ県などイル・ド・フランス地域圏を中心に8名を逮捕しています。

 今回の逮捕劇で逮捕されているのは、8名だけですが、実際にこれに関わっている人数は、相当数にのぼるものと見られています。

 6月3日の摘発において、当局は、約50万ユーロの資産と10万ユーロを超える現金を回収。加えて当局は、拳銃と弾薬、防弾チョッキ、現金10万1,605ユーロ、高級衣料品や香水、宝石類、車5台、家屋、銀行口座を含む48万6,000ユーロ以上の犯罪資産が押収されています。

 しかし、考えてみれば、毎月、20㎏から50㎏密輸されていたというコカインは、それだけ、需要があったというわけで、しかも、これにより、彼らは莫大な資産を築き、そのうえ、拳銃や防弾チョッキまで備えているとは、恐ろしい組織です。


フランス・ブラジル間   大規模コカイン密売組織


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2025年6月7日土曜日

ヌイイ・シュル・セーヌのカフェでラビ襲撃

  


 パリ、およびパリ近郊は、全般的に治安は良いとは言えないものの、その地域によって、いかにも危険な場所とそうでない場所があります。

 その意味では、今回、事件が起こったヌイイ・シュル・セーヌは、どちらかといえば、良い地域、パリ16区のすぐ隣で、比較的富裕層が住んでいたり、名だたる有名な企業が本社を構えていたりする場所でもあるので、ちょっとこんな事件がヌイイで起こるの?と驚いたのも事実です。

 ただ、今回の襲撃事件は、単に金銭目的の強盗とか、そういうものではなく、宗教的、人種的な攻撃行為なので、場所は関係なかったのかもしれません。

 これは、ヌイイ・シュル・セーヌの広場にあるカフェに座ってふつうに会話していたラビ(ユダヤ教における宗教的指導者)が突然、襲われたもので、座っていたラビの背後から、椅子で頭を殴りつけたという暴力事件です。

 ところが、このラビは、1週間のうちに襲われたのが2度目であったということで、一度目は、ドーヴィル(パリから2時間ほどで行ける比較的近いバカンス地(海))の路上で、明らかに酔った3人に襲われ、腹部を殴られ軽傷を負っていました。この1度目の事件の犯人は、未だ追跡中とのことです。

 2回目の襲撃は、白昼堂々、カフェで・・ということだったので、この犯人はただちに身柄を拘束されています。身柄拘束された容疑者は、パレスチナ出身のOQTF(フランス領土退去命令)対象者で、ドイツへの渡航を許可する文書を持っているものの、人道的な理由から、追放が不可能な国から来ているということで、追放ができない状態にあったと言われています。

 しかし、OQTF(フランス領土退去命令)対象になっていながら、追放できない者が街に紛れているということは、おかしな話だとも思います。

 しかし、1週間に2度も襲撃にあい、おまけにいきなり頭を椅子で殴りつけられるという凶行に遭いながら、このラビは、当初は、「頭に煙突が落ちてきたかと思った・・少しトラウマが残るかもしれない・・」と言っていたものの、その後は、極めて落ち着いていて、「外傷はなく、少し頭が腫れているだけ・・神様に感謝です」といいつつも、「もし、相手が私ではなく、子どもやもっと弱い人だったら、どうなっていたかは私には想像もつかない」とも語っています。

 この事件に関して、内務大臣は即、反応し、「ユダヤ人の同胞に対して、我々は彼らとともにあると伝えたい」、「信仰を理由に人を攻撃するのは恥ずべき行為だ!」、「反ユダヤ主義はあらゆる憎悪と同様に私たちの社会にとっての致命的な毒です」と発信しています。

 また、このような事件が起こる背景として、イスラエルへの憎悪がユダヤ人に汚名を着せてしまっている一般的な状況において、今回の攻撃は、フランスのユダヤ人を有害とする風潮を示しているとも付け加えています。

 しかし、このラビは、なかなか強靭は人で、「私はこのことで、これまでの習慣を変えるつもりはなく、キッパー(ユダヤ教の民族衣装の一種の男性がかぶる帽子のようなもの)をかぶり、あごひげをはやしてパリの街を歩き続ける」と語っています。


ヌイイ ラビ襲撃


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