2023年12月27日水曜日

クリスマスの一家5人殺人事件の犯人は父親だった・・

  


 クリスマスの夜、パリ近郊セーヌ・エ・マルヌ県(イルドフランス)で女性1人と4人の子供、合計5人の遺体が発見され、翌日、その家族の父親が逮捕されました。

 10歳、7歳、4歳、9ヶ月の子供たちとその母親が父親に殺されたのです。しかも、クリスマスイブの夜に・・。

 この事件が公になったのは、同じアパートに住む隣人の通報によるもので、彼女は、アパートの建物の踊り場に血痕を発見して、知人を伴って、その血痕を辿ってその家族の住居に安否を確認しに行きました。ドアフォンに応答した父親は、ドアを開けずに「みんな寝ています」と言ったので、彼女は一旦、家に戻りました。

 それから少しして、彼女はその母親から、「いとこの家にいる」というメッセージを受け取りましたが、このメッセージが通常、この女性から送られてくるメッセージとは違うと感じ、アパートのブラインドが閉まったままであったことを心配し、再び、その家を訪れると、今度はドアの取っ手に血が付いているのを発見し、警察に通報しました。

 駆け付けた警察官は、玄関の鍵がかけられていたため、窓のシャッターを破ってアパート内に突入すると、悲惨な犯行現場のなかに5人の遺体を発見しました。母親と2人の娘には、多数の刺し傷が認められ、4歳の男の子と9ヶ月の赤ちゃんには、外傷は認められず、窒息死、または、溺死が疑われています。

 通報した女性はこの母親と親しくしていたといい、大晦日には一家を家に招待していたと話しており、母親はとても陽気な人で、父親は、とても、おとなしくて控え目な人だったと話しています。

 近隣住民らは警察に対し、12月24日午後11時から12月25日早朝にかけて悲鳴を聞いたと証言しており、本来ならば、クリスマスイブからクリスマス当日にかけての一家で楽しく過ごしているはずの時間帯に悲鳴とは穏やかではありません。

 アパートに設置されている監視カメラの映像から、この父親は25日の夜8時過ぎにアパートを出ていく様子が確認され、翌日、この父親は同地域の彼の実家の前で逮捕されました。

 この男性は2017年にうつ病と精神病性障害で精神病院に収容されており、一応、監視下にあったものの、その後、退院してからまもなく、2019年には、妻の肩甲骨をナイフで刺すという事件を起こしていました。

 この夫婦、最近、結婚したばかりであったようですが、14年間の長い付き合いで、この事件の際も、妻は事を大ごとにしたくない事件化したくないと、パートナーが長年うつ病に苦しんでいると説明し、精神鑑定の結果、気分変調症(慢性うつ病状態によって定義される気分障害)と精神病的病理が存在し、事件当時の識別能力が失われていたと結論づけられ、その後、事件はそれ以上の措置を講じることなく終了してしまいました。

 結果的には、彼の精神病理は改善されることもなかったために、この惨状が展開されてしまったことになったことは、とても悔やまれることです。

 この手の精神障害とも思われる夫婦間および家族間の残酷な殺害事件は、時々、事件として浮上しますが、なぜ、ナイフまで持ち出したような事件を起こした加害者を、たとえ、被害者であったパートナーが事件として扱われることを望まなかったとしても、野放しにしてしまうのかは、そのたびに疑問に感じるところでもあります。

 この男性は、逮捕後に、「愛している妻に危害を加えたかったのではなく、自分自身に危害を加えたかった・・意図的せずにやってしまったことだ・・」と語っているそうですが、事件後に、妻の携帯から隣人に妻に扮してメッセージを送って犯行をごまかそうとしていたりもしていたことから、どうにも辻褄が合わない気がします。

 検察は「15歳の未成年者の故意の殺人」と「配偶者の故意の殺人」でこの事件の司法捜査を開始しました。 一家の父親はこれらの犯罪で終身刑に直面しています。 事件を起こした時点での精神病理の鑑定により、判断力がなかったと認められた場合、彼は懲役30年に処される可能性もあります。

 家族5人殺害ともなれば、日本だったら、まずは死刑は免れようもないと思われますが、死刑制度が廃止されているフランスでは、最悪でも終身刑です。精神病により責任能力なしと判断された場合は懲役30年になる可能性もあります。

 死刑制度には、問題があるとはいえ、このような人物が刑務所に30年いて、精神状態が改善されるとも考えにくく、また、これ以上悪化した状態で世に放たれるのかと思うと、凍り付くような思いがします。


クリスマス一家5人殺人事件


<関連記事>

「数度にわたる殺害予告の末、逮捕・拘留も、釈放され、元パートナーを殺害した男」

「妻を殺して3ヶ月間ウソをつき続けた男 逮捕拘留の末、自白」

「パリのバラバラ殺人事件 真犯人は被害者の夫だった・・」

「度を超えているフランスのDV 逮捕・投獄・釈放後に元妻を焼き殺す凶暴さ」

「フランスの家庭内性暴力の犠牲者が起こした殺人事件 ヴァレリー・バコの裁判」

 

 


 


2023年12月26日火曜日

パリ市の呼びかけ クリスマスツリーのリサイクル

  


 各家庭でのノエルのデコレーションを彩るのは、やはりクリスマスツリーで、プレゼントはクリスマスツリーの下に積み上げられて置かれるという習慣があり、その演出のためにも欠かせないものの一つでもあります。

 我が家でも娘が小さい頃には、夫の指導?により、娘はプレゼントのお願いの手紙をサンタクロースに送り、どういうわけか、家族それぞれの靴をツリーの下に置き、オレンジを添えるという行事を行い、25日の朝、娘がワクワクしながら、クリスマスツリーに駆け寄っていき、嬉しそうにプレゼントを開けていくのを、私たちは、娘以上にワクワクしながら、そんな娘を見守っていました。

 そんなクリスマスツリーを買ってきて、そのデコレーションを家族で始めることから、もうクリスマスを家族で楽しむことが始まっていて、やはり、クリスマスツリーは、我が家でも、以前は、ある種、象徴的で不可欠なものでもありました。

 クリスマスシーズンが始まると、生のモミの木がスーパーマーケットの前やガレージなどで売られていて、生の木だけに、当然、しまっておけるものでもなく、クリスマス、せめて、年明けの一連のお祭りが終わると、当然、捨ててしまうもので、これは、割りばし(以前、日本やアジアの割りばしはエコロジストの標的になっていたこともありました)どころではない、大変な廃棄物問題ではないか?と思ったこともありました。

 かねてから、フランス人のゴミの捨て方には、疑問が多いところでもありますが、このクリスマスツリーなどもまた、かなり、あからさまに、我が家のアパートのふつうのゴミ収集のゴミ箱にそのまま、無残にのせられているのを毎年、見かけます。

 まれに、夏ごろになって、ツリーが捨てられているのを見かけることもあり、「えっ?今ごろ?」と驚かされることもありますが、これを見ると、なぜか「お雛さまをいつまでも片付けないとお嫁に行けない・・」などと昔、言われたなあと思い出します。

 しかし、ここ数年、パリ市はこのクリスマスツリーのリサイクルとして、今年は12月26日から1月20日まで、176ヶ所の収集場所を設け、「クリスマスツリーに第2の命を吹き込もう!」と呼びかけています。

 第2の命を吹き込む?とは、どういうことなのか?と思ったら、回収されたモミの木は、粉砕され、緑地の植物を保護する役割を果たすそうです。 粉砕されたモミの木は雑草の発生を減らし、水の蒸発を制限し、土壌の寿命を最適化する地下微生物の発達を促進するため、天然の除草剤として利用されるのだそうです。

 モミの木は、酸性であるため、堆肥としての使用には適していませが、一方、その抗発芽特性は、環境に優しい方法で雑草の増殖を制限するのに最適で、自然の除草剤として作用するのだそうです。

 私が子供の頃は、季節になると、母がどこからか鉢植えのクリスマスツリーを買ってきて、飾っていたりしたこともあったのを覚えていますが、その処理はどうしていたのか? たいていは、枯らしてしまったのだと思いますが、ある年、枯らしてしまうのが可愛そうだからと、庭に植え替えたら、青天井でどんどん大きくなり続け、ある時期には、植木屋さんにこれ以上、伸びないように止めてもらったことを記憶しています。

 一方、両親がいなくなった実家では、庭もあまり手入れしなくなったために、放っておくと雑草が際限なく生えてくるために、一時は除草剤を撒こうかとも思ったのですが、それもなんだか躊躇われ、除草シートを貼ったりしていたのですが、まさかのモミの木の木くずが除草剤がわりになるとは、今度、日本に行ったら、試してみようかと思っています。

 常日頃のフランス人のゴミの捨て方を見ていると、あまり期待できないクリスマスツリーの回収場所設置ですが、昨年は意外にも 114,247 本ものモミの木が回収されたとのことで、さすがのフランス人もクリスマスツリーだけはちょっと特別扱いなのかもしれません。


クリスマスツリーのリサイクル


<関連記事>

「ゴミの捨て方に見るフランス人のモラル フランス人には、箱を潰して捨てようとか、そういう観念はない」

「フランスのシェアハウスでいつの間にか寮長のようになっていた娘」

「パリジャンの84%は自分たちの街が汚れていると思っている でも自分たちが汚しているとは思っていない」

「年金改革問題 ストライキ続行で街中にゴミが溢れるパリ」

「パリのねずみ」




2023年12月25日月曜日

ノエルと年末年始に警察官がまさかのストライキ

  


 パリの日常では、もうすっかり見慣れてしまって、空港などはもちろんのこと、大きな駅や街中でも、きっと、初めて見たら、ギョッとするような数のイカつい警察官や、たくさんの警察車両が並んでいたりしますが、もうそんな光景にも慣れてしまって、あらためて、驚くこともなくなっていますが、考えてみたら、パリは普段から、警戒のために巡回してくださっている警察官の数は他の都市と比べても相当数にのぼるものと思われます。

 たとえば、他の地方に行っていたりして、パリに戻ってくると、あらためて、パリは本当に警察官の多い街だなぁと思います。

 しかし、私たちが、一見、一括りに見てしまう警察も国家警察やその特殊部隊、自治体の警察、憲兵隊と様々な組織で構成されていますが、このなかの自治体警察の労働組合が26,000人(フランス全国地方自治体警察官連盟(FNPMF)によると、各自治体の市長の競争によって採用された地方公務員と自治体警察官の数は20年間で倍増し、現在では2万6000人に及んでいる)に、まさかのノエルと大晦日から元旦にかけてのストライキを呼び掛けています。

 ノエルは、どちらかといえば家族で過ごす人も多いため、そこまでの緊張状態が起こることは少ないとはいえ、祝祭の日といえば、世間は少なからず興奮状態にあり、問題も起こりやすく、ましてや、大晦日の日ともなれば、圧倒的に元気な若者たちは外に出て騒ぐ者が多く、毎年、何十台もの車が燃えることでも有名な暴動じみたことが起こる日でもあり、よりにもよって、そんな日に警察がストライキとは前代未聞のことです。

 彼らはこのストライキの要求として、「自治体警察の給料は低く、国家警察はより良い社会保障を受けている」と訴え、給与水準の引き上げを求めています。また、年金についても、35年間就労して、月額1,200~1,400ユーロのみで、同じ危険にさらされながら仕事をしているのに国家警察とはえらく違う!」と。

 ストライキを呼び掛けるからには、最も効果的な(世の中を混乱させたり、迷惑をかける)タイミングを選択しようとするのは、わからないでもありませんが、こと一般市民の安全にかかわる職業では、それってありなの?という気がしないでもありません。

 しかし、今回の彼らは、最終的にはパリオリンピックという特別な切り札も持っており、ノエル、大晦日から元旦にかけて、そして、2月3日での全国の自治体での集会を予告しており、それでも改善されない場合には、「パリオリンピックの警備には携わらない!」と警告しています。

 パリオリンピックといっても、競技はパリだけで行われるわけではなく、全国規模で展開されるもので、各自治体の警察の協力は必要不可欠です。

 日頃、私が見かけるたくさんの警察官のうち、一体、自治体警察がどれほどの割合を占めているのかはわかりませんが、オリンピックともなれば、マックスの警戒体制が敷かれる予定になっているのは、明白です。

 それが崩れることは、大変なことです。

 パリは、平常時でさえ、観光客が多い場所で、観光客だけでなく、その観光客狙いの犯罪者も周囲の国々から集まってくる場所でもあります。

 ノエルと年末年始に加えて、オリンピックまで盾にしている自治体警察は、要求を叶えられるのでしょうか? 

 しかし、今後、年明け以降、オリンピックを盾にしたストライキが他にも続々と起こる可能性があるかもしれません。


自治体警察ストライキ


<関連記事>

「パリだけでも毎晩警察官2000人が動員されている! デモは日に日に過激になっています・・」

「フランス全土で350万人動員の記録的なデモ 一晩に140ヶ所で炎が立ち上るパリ」

「年金改革交付後 ストライキ・デモの次はオリンピックを盾にする動き」

「フランスは、いつも誰かが何かを訴え、戦っている フランスは、デモの国」

「日本の失われた30年に思うこと」



 

 

2023年12月24日日曜日

フランス人がノエルに使うお金 物価高にもかかわらず減少

  


 フランス人にとって、一年のメインイベントの大きな一つでもあるノエル、クリスマスのために使うお金は、平均 549ユーロ(約8万6千円)と、昨年よりも19ユーロ減少しているという調査報告が出ています。

 これは、昨年よりもかなり円安になっているため、円に換算すると多くなっているという円換算では妙なことになっていますが、現実には、インフレのためにほぼ全ての値段が上昇しているなか、減少しているということは、事実上、かなりの緊縮財政をとっていると言えます。

 この 549ユーロには、ノエルは主に家族と過ごすことが多いために帰省するための交通費や、食事、プレゼント、クリスマスツリーなどのデコレーションなど、全てが含まれた金額です。

 なかでも、プレゼントに関しては、年々ヒートアップしていた感があり、フランス人一人につき、用意するプレゼントの数は平均7つと言われており、この家族に愛情を示す愛情表現のひとつとして習慣となっているプレゼントはかなりのプレッシャーになっているという調査結果も発表されています。

 プレゼントの数を減らすのではなく、いかに安く抑えるかという点で悩ましく思っているということで、困っているとはいえ、ノエルの準備の買い物をしている人は、どこかワクワク楽しそうで、そんな中でも、しっかり予算を抑えているのは、やはり、このインフレがノエルにも大変な影響を与えていることがうかがえます。

 実際には、このプレゼントにかける割合が依然として大きく、このノエルのための全予算549ユーロ中、プレゼントにかける金額は平均 332ユーロと最も多く、(ちなみに食事には 120ユーロ)かなりをプレゼントにかけていることがわかります。

 この時期は、メトロに乗っても、大きなプレゼントの入った紙袋を下げている人が多く、恐らく、フランスでは、最も商品が売れる時期でもあり、今年は、クリスマスイブが日曜日にもかかわらず、多くの店舗は営業して(通常、日曜日は休業)、売り上げをあげることに努めています。

 昨年は、冬の間は電力供給が間に合わないかもしれないと言われつつ、イルミネーション点灯時間が制限されたりしていたこともありましたが、今年は、そんな様子はなく、キラキラのパリ。

 イルミネーションの準備も例年よりも早く始まっていて、このフランス人が最も消費する季節を盛り上げようとしていましたが、結果的には、前年よりも、クリスマスの消費はダウンの傾向にあるようです。

 昨年、フランス人がノエルの準備のために使った予算は前年よりも増加していましたが、今年は減額、ノエルはフランス人にとって家族とともに過ごす夢のような時間であると同時に、けっこう現実的でもあり、イルミネーションと消費は正比例しないようです。


フランス人のノエル、クリスマス予算


<関連記事>

「ノエルの予算 フランスの平均568ユーロは安いか高いか?」

「ノエル直前のパリのスーパーマーケット やっぱりノエルの食事はケチらない」

「フランス人のプレゼント交換」

「フランスの国会を騒がせる「フランス人のクリスマスを迎える権利」」

「ノエルの食材に和牛が君臨するパリ」



2023年12月23日土曜日

俳優ジェラール・ドパルデューのレジオンドヌール勲章剥奪とマクロン大統領の発言

  


 ジェラール・ドパルデューはフランスの有名な俳優です。彼の俳優としての多くの業績とともに、様々なスキャンダルでも有名な存在でもあります。

 彼の歩んできた道は幼少期から決して平坦なものではなく、俳優として成功をおさめてからも、税金逃れのために、ベルギーに移住したり、プーチン大統領と親交が深かったり、最近では、女優のシャルロット・アルヌールからの告訴を受け、2020年から強姦罪で起訴され、その後、女優のエレーヌ・ダラスによる2007年に遡る性的暴行行為とスペイン人ジャーナリストで作家のルース・バザによる1995年に遡る強姦行為など、現在3件の性加害問題に関する告訴状が提出されています。

 まるで、フランス版 Me too 運動のように、1人が告訴を始めたことで、その後に立て続けに告訴状が提出されたカタチになっています。しかし、彼自身はこの告発を否認しており、この事件は、まだ捜査中で、有罪判決は出ていません。

 しかし、こんな状況の中で、先日、フランステレビジョンで12月7日に発売された雑誌「Complement d’investigation」でジェラール・ドパルデューを特集した一連の内容が放送され、物議を醸しました。

 内容は、北朝鮮で馬術のデモを観戦するジェラール・ドパルデューの発言などを扱っているもので、その中での彼の少女に対する発言が性的に侮蔑的で不適切であり、女性の品位を傷つけるものであると論争を巻き起こしているのです。

 同時にこれはフランステレビジョン側が故意に映像を編集して、彼を陥れようとしているとする意見があるものの、フランステレビジョン側は、「私たちのドキュメンタリーには、同じくらい深刻で衝撃的な問題のある箇所が無数にある」と、自分たちの報道は誠実なものであると反論しています。

 そして、この論争に輪をかけたのが、別のインタビュー番組でこの件について質問を受けたマクロン大統領の彼を庇っているとも思えるような発言でした。

 ジェラール・ドパルデューは、1996年シラク大統領政権下にレジオンドヌール勲章を受章していますが、このいくつもの告訴にまつわる彼の行為や今回の騒動により、文化相はレジオンドヌール勲章(フランスの軍事、社会、文化への功労者に送られる賞)の懲戒手続きの開始を発表しています。

 この件について質問されたマクロン大統領は、文化相からの申し入れがあることは認めたものの、最終的に決定するのは大統領である自分であるとし、また、自分は彼の友人でもあり、大ファンでもあることを公言し、彼はフランスの誇りであり、現段階では推定無罪であるとし、「レジオンドヌール勲章は道徳を説くためにあるのではない」と語りました。

 さすがに強姦罪で告訴されている状態は、もうすでに道徳云々の範囲を越していると思われるのに、なぜ?マクロン大統領がこれほどまでにグレーな彼を庇うような発言をするのか?大変、奇妙な気もします。

 しかし、実際に彼が有罪判決を受けた場合は、大統領が決定するということにはなっていますが、ほぼ自動的に剥奪されるようです。

 過去にもこのレジオンドヌール勲章が剥奪された例は、実はけっこうあるようなのですが、ウェブサイトでは、この措置は匿名化されているようで、官報のページでレジオンドヌール勲章のメンバーが除外されたことがわかっても、アクセスが保護されているためにそれが誰であるのかを知ることは簡単ではないようです。

 しかし、過去にこのレジオンドヌール勲章が剥奪された例の中には、外務省の現金ボーナス問題・・なんていうのもあったりで、まったく、どこの国でも同じようなことがあるんだな・・しかも、レジオンドヌール勲章叙勲者だったとは、びっくりです。


ジェラール・ドパルデュー レジオンドヌール勲章剥奪


<関連記事>

「フランソワーズ・モレシャンのインタビュー記事」

「メルケル首相にレジオン・ドヌール勲章最高位のグランドクロワ贈呈」

「美食の街リヨン 市議会が公式レセプションでのフォアグラ使用禁止」

「俳優ピエール・パルマードの自動車事故が炙り出した薬物による転落人生」

「チャールズ国王のフランス訪問に見るフランスとイギリスの関係」




2023年12月22日金曜日

7年前に起こった日本人留学生殺人事件 容疑者に懲役28年求刑

  


 7年前、2016年12月にフランス東部ブザンソンに留学していた日本人女子学生(当時21歳)が殺害されたとされる事件の控訴審で元交際相手のチリ人の男性に対し、第一審と同じ懲役28年が求刑されました。

 今回の裁判は、13日間にもわたる控訴審で、裁判所は、このチリ人が新しい交際相手ができた彼女に対して強烈な嫉妬にかられてフランスに戻り、彼女を取り戻すか、それが叶わなければ殺そうとしていたとし、2016年12月4日から5日の夜に黒崎成美さんを計画的に殺害し、その後樹林帯に遺体を処分したとみなしました。

 彼は、この7年間の間、一貫して無実を訴え続けているうえに、遺体も発見されていないのですが、公判を通して、彼は、彼女との関係における彼の横暴な態度、嫉妬、脅迫ビデオ、フランシュ・コンテでの旅程、森や彼女の大学の寮周辺での夜間の行動などの目撃証言に加えて、 2016年12月4日の夕方、そして夜に聞こえたとされる叫び声など、彼に不利な数多くの証拠があがっていました。

 彼は、彼女に会うためにフランスにやってきたということと、彼女が行方不明になった前日の夜に彼女の大学の寮の部屋をノックしていたところを証人に見られたということは、認めたものの、「それでも、私は殺人者ではない」と主張し続けています。

 彼は、裁判中は、あまり感情を表に出さなかったと言われていますが、裁判に集中し、膝の上に置いたノートに必死でメモを取りながら、自分の弁護に積極的に取り組み、 特に収監中に看守に受けた暴行について言及したり、彼女を殺していないことを繰り返した挙句に泣き崩れて最後まで、「私は彼女を殺していない」と繰り返していたそうです。

 具体的な証拠については、詳細は不明ではありますが、彼が7年間、否認を続けていることや遺体を処分したとみなされている森からも遺体が発見されていないことは、冤罪の可能性もあり得るのではないか?とも思ってしまうところですが、彼には殺人罪で懲役28年という判決が下されたうえに、刑期が終了すれば、フランス領土への帰還も禁止されます。

 もっとも、もし、これが冤罪であったなら、頼まれたってフランスには二度と来たくないだろうと思いますが・・。

 また、裁判所は民事審理で損害賠償に関する判決も下しています。フランスでは、被害者の遺族が被告に対して、損害賠償を求めることができます。この事件に関しては、裁判長は、被告に対して、被害者の両親に6万ユーロ(約940万円)、被害者の姉妹に5万ユーロ(約785万円)、最後に被害者の最後の恋人に5千ユーロを支払うことを命じています。

 被害者の両親と姉妹に別々に支払ううえに、最後の恋人にまで支払いというのも、ちょっとビックリです。

 また、この控訴審では、被害者家族の悲しみにも注目されています。被害者側の弁護士は、遺族の訴えているありえない追悼や永遠の苦痛の他、自殺未遂を起こしたことや、被告の足跡をたどるためにチリを旅したことなども説明し、裁判の傍聴中、被害者の母親が何度も泣き崩れ、弁護士の弁論を中断しなければならなかったと言われています。

 被害者の遺族の感情は察するに余りあるところではありますが、被告側の弁護士は、この判決に対して、不服を申し立て、最高裁へ向かうことを発表しています。


日本人留学生殺人事件


<関連記事>

「フランスで最も有名な日本人留学生死去のフランスでの報道」

「娘の日本への留学・再びキャンセル 日本の国立大学は4月以降の留学生を受け付けない」

「「生きながら死んでいる」と言っていたフランスの若者を思う ワクチンで自由を勝ち取れ!」

「嫉妬による嫌がらせから起こった14歳の殺人事件 セーヌ川に捨てられた少女」

「15歳の少女をメッタ刺し、生きたまま火をつけた未成年の男子に懲役18年の判決は妥当か否か?」






2023年12月21日木曜日

移民法の改正で大騒ぎのフランス

  


 フランスの移民法については、長い間、物議を醸し続けていて、以前から、移民が犯罪を犯したりするたびに、この人物は、OQTF(公序良俗を著しく脅かす異常事態に陥った外国人に対して、フランス領土を離れる命令)が発行されていたはずだった・・などという事実が浮上してきたりと、問題視されてきました。

 今回の移民法の改正も、主には「治安に対する深刻な脅威となる外国人の排除を促進することを目的」としていますが、正直なところ、私自身も「移民」であり、とばっちりを受けるのではないか?と、あまり心穏やかに聞けるニュースではありません。

 特に、今回の改正法の中の基準の一つに、社会保障などの条件についても、外国人でもEU圏内からの場合とEU圏外からの外国人とを区別して規定していたりして、どっきりさせられます。

 一方では、内容を見ると、「フランスに長期滞在している人やフランスに個人的・家族的つながりがある人であっても、特に犯罪で法的に有罪判決を受けた外国人の国外追放が認められ、少なくとも懲役10年以上、場合によっては5年の刑が科せられることになる」とか、逆に「今までは違ったの?」と驚く内容のものもあります。

 また、排除するばかりではなく、労働力不足の業界(建設や介護など)においては、1 年間の期限付きの「不足している専門職で働く」滞在許可を創設しています。

 「不法滞在しているこの業界での労働者は、正規化を要求できるようになり、 この新しいカードは、一定の条件(フランスでの滞在期間が3年以上(不法滞在が3年以上?と思うとなんか変・・)、過去24か月のうち緊張状態にある業界で8か月の経験)のもとで自動的に発行される」などという項目には、はなから不法労働者ありきの法令で、まあ現実的といえば、現実的ですが、なんか、もやもやするところでもあります。

 これに加えて、「不法就労と闘うため、非正規な状況で労働者の雇用主に対し、関係する従業員1人当たり最大4000ユーロの行政罰金(再犯の場合は2倍)を新たに課すことになる。 この罰金は既存の刑事および行政制裁に加えられることになる」という項目も付け加えられています。

 現在のところ、賛否両論、喧々囂々としているので、今後、修正が加えられるところが出てくる可能性もないではありません。

 しかし、これだけ大騒ぎになるというのは、それだけフランスには移民が多いということでもあります。

 私にとっては、個人的には、社会保障などの改正が気になるところではあり、必死になって、この法改正されている文面を追っていたのですが、色々と改正、廃止・・などと続いている最後に、「難民・滞在許可証保持者は除外」とあり、そもそも、滞在許可証を持っていない人がどうやって社会保障をこれまで受けてこられたのだろうか?と不思議に思ったりもしました。

 毎回、といっても、10年に一度ではありますが、この滞在許可証更新のたびにドキドキし、特に前回の更新の時には、ちょうどロックダウンの時期と重なってしまったために、お役所は、大混乱となり、手続きに異常に時間がかかり、実際には、滞在許可証の期限が切れてしまって、「これでは私は不法滞在者ではないか?」と泣きそうになっていたような小心者の私には、やっぱり全面的に理解することは難しいかもしれません。

 しかし、移民の一人である私が言えることではないかもしれませんが、今回の問題も移民が膨れ上がってしまった上での問題でもあり、「最近は、日本も治安が悪くなった・・」などという声もありますが、「いやいや、まだまだ・・あまいあまい・・」と思ってしまうほど、質の悪い移民は多いわけで、容易に受け入れてしまっては、フランスみたいに大変なことになります。


フランス 移民法改正


<関連記事>

「滞在許可証更新手続きのトラブル アクセス不能なフランスのお役所」

「2023年に提案される移民法の改正案の概要 積極的な受け入れと追い出しの両刀使い」

「12歳の少女殺人事件が呼び起こす極右政党の移民叩き」

「パリの公立病院の救急治療室で起こった強姦事件」

「早朝のパリ北駅での6人刺傷事件 容疑者は、OQTF(フランス領土退去命令)の移民」