2021年12月17日金曜日

ワクチン接種の急な予約変更 パリのワクチンセンター

 


 フランスの感染状況が日々、悪化する中、政府は、ひたすらワクチン接種、ブースター接種を呼びかけ、毎日、ものすごい勢いでワクチン接種を進めています。先日は、1日のワクチン接種が828,705件という記録を更新したと発表されていました。

 私は、先週の初めにブースター接種を済ませたのですが、娘の予約はもう少し後になっていたのが、直前になって、場所が変更され、家から少し離れたパリ市内の大きなワクチンセンターに行くハメになりました。

 「家から近いところに予約したのに〜〜!」と不満気な娘。近所の薬局では、先週末に予約なしにワクチン接種をしていたので、念のため、今週末もやらないのかどうか聞きに行ったところ、「先週は、大量にワクチンが入荷することになったから、特別にやったけど、今のところ、大量に入る予定はないので、当分は予約制で・・」「予約は、今のところ12月中は、いっぱいだけど、あなた、家、近所でしょ・・もし、余ることがあったら、連絡しようか?」と言ってくれました。

 しかし、一応、場所は変更されたとはいえ、予約が取れている娘、いつになるかわからない近所でのワクチン接種を待つのも何なので、指定された家から少し離れたワクチンセンターに行くことにしました。

 それは、パリ15区ポルト・ド・ヴェルサイユにある「パリ・エクスポ」という大きな展示会や見本市をやったりする巨大な会場で、娘が小さい頃に春や夏のコロニー(合宿)の際の集合場所で(パリ近郊の子供たちが全て同じ場所に集められており、ここからバスが出発していました)毎年、バカンスシーズンの度に、娘を送り迎えに行っていた懐かしい場所です。

 数年ぶりに行ったパリ・エクスポは当時よりも数段、きれいに洗練されていて、長い年月が経ったと感慨深い気持ちでした。

 あの頃、来ていたあの場所がこんなにきれいになって、しかし、まさかワクチンセンターになるとは・・先のことはわからないものです。

 


 入り口から中がものすごく広いことはわかっていたので、そのどこでワクチンをやっているのか? 少し不安でしたが、何のことはない、入口には、大きな看板がたっており(そりゃそうだ・・)迷うことなく、すぐにワクチンセンターの中に入りました。

 中に入ると、まず、予約があるかどうかのチェック、ワクチン接種は、30歳以上、30歳以下で区別されていました。30歳以上はモデルナ、30歳以下はファイザーと分けられているのです。  


 おそらく、急激にワクチン接種を進めるために、最初に政府は一番、簡単にできるパリ市内の薬局にワクチンを大量に配り、少し軌道に乗ってきたところで、ワクチンセンターで集約してワクチン接種を行なっていくことにしたのでしょう。(薬局からも悲鳴があがっていましたから・・)

 私は、一歩、タイミングが早かったので、30歳以上ですが、予約していたとおりにファイザーを打ってもらいましたが、今週に入ってからは、ファイザーで予約したのに、モデルナになっていた・・などという人もいて、ワクチン接種を急拡大していくにあたって、交通整理のようなことをし始めたのだと思います。

  


 ワクチンセンターの中で働いているのは、救急隊員(通称ポンピエ)で、少々、ワクチンを打ちに来ている人に対して、待機しているポンピエが多すぎる気もしましたが、大きな会場の中に、いくつものブースができていて、ブースに進む前に問診票に記入し、その後にIDカード、名前、住所、生年月日、ヘルスパスの履歴のチェックの後、ワクチン接種へ進みます。

  


 ワクチン接種は、数分で済み、すぐにQRコード入りのワクチン接種証明書が渡されます。間隔をおいて置かれて並べられた椅子で15分ほど待ち、時間が経過すると、出口で証明書にスタンプが押されて完了です。

  


 ワクチン接種をする側からしたら、一つ一つの大きな場所で、このようにスムーズにどんどんワクチン接種をしていく方が、効率はよいのだろうと思います。

 オミクロン株の影響でフランス以上の急激な感染拡大を見せているイギリスのように(1日の感染者数8万人突破)、これから、ノエル、年末年始を迎えるフランスが年明けに第6波を迎えてしまうかどうかは、このワクチン接種の拡大にかかっています。


パリのワクチンセンター


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2021年12月16日木曜日

12月は犯罪が多いパリ パリのスリの生息地

   


 パリの治安はいつも悪いのですが、12月は特に悪いことを、ついつい忘れがちになります。友人がスリにあったという話を聞いて、そういえば、今は12月だったことを思い起こすほど、12月は特に治安が悪いのです。

 12月は、多くの人がノエルを控えての買い物に出たり、ノエルのイルミネーションで彩られていたり、何となく街全体が浮き足立っている中、スリやひったくり、置き引き、万引きなどの犯罪が一段と増え、届くはずの荷物が盗まれて、なくなってしまったりすることも多いのです。

 多くの人が買い物をする季節ということは、皆がお金がほしい季節でもあり、その手の犯罪のプロには、かき入れどきでもあるのです。

 そういえば、うちの娘も昨年のクリスマスイブにTGVの中でスリの被害に遭いました。いつ取られたのかわかっていれば、取られていないので、誰にとられたのかわからないのですが、TGVに乗った時にはたしかに持っていたお財布が降りるときには、なくなっていたのです。

 モンパルナス駅で一文なしになった娘が、落胆して、「これではメトロにものれない・・」と半鳴き声で電話をかけてきた、とんでもないクリスマスイブでした。

 そんな時は、警察に駆け込んだとしても、それは、被害届を作ってもらうだけのことで、そのことによって、盗られたお財布やバッグが戻ってくるわけではありません。

 一度だけ、友人がお財布を盗られた時に、後になって警察から連絡があり、お財布が戻ってきたという奇跡的な話がありましたが、それは、例外中の例外の話で、たまたまスリをはたらいた者が現金だけ抜き取って、お財布は捨て去ったために、運良くそのお財布を拾った人が警察に届けてくれたのであって、スリが捕まったわけではありません。

 お財布を盗られた娘は中には大した現金は入っていませんでしたが、銀行のカードの差し止めやIDカード、健康保険のカードなどの再発行手続きで年末年始は奔走することになったのでした。

 見るからに、怪しいジプシーの子供たちのようなグループや、数人でアンケートを装って近づいてきたり、親しげに話しかけてきたり、わざと何かをこぼしたり、落としたりして、注意を逸らして、その間に仲間がスリを働いたりと、わりとスタンダードなスリやひったくりもたくさんありますが、最近、増えたのは、一見するとそれとは、とても思えない、かなり身なりのよい、一見、ビジネスマン風の装いで、ごくごく普通に生活しているような風を装っているスリです。

 私の知人がレストランで食事をしていた際に自分の座っていた椅子に、自分のお尻と椅子のせもたれとに挟むかたちでバッグをおいていたところ、いつのまにか、バッグをとられており、その後、状況を思い返してみると、どう考えても、トレンチコートを着たビジネスマン風の男しか、思い当たらず、周囲の人の証言からも、おそらくあの男が犯人であろうということになったのですが、それは、後になってから思い返してみれば・・という話で、気付いた時には、その男は消え去っていたのでした。

 また、スリというと、電車やバスの中が狙われやすいのは、もちろんのことですが、スーパーマーケットやデパート、マルシェなどでの買い物中も危険です。買い物中は、買い物に気を取られがちで、ついつい気が逸れていることも多いので、そこを狙われるのです。

 特に日本人は、観光客はもちろんのこと、平和で治安のよい国で生まれ育っているためにスキも多く、現金をたくさん持っていると見られていて、ターゲットにされることも多く、一時は、日本食料品店がターゲットになっていた時期もあり、日本食料品に入ると、「店内でのスリが多発していますので、お気をつけください」などという張り紙がどこのお店にも貼られていました。

 その他、最近は、皆が携帯を持っているようになったので、電車やバスの中で携帯を出すと盗られる!などということは減りましたが、それでも、新しいモデルのiPhoneなどを持っていて、特に車内のドア近くに立って携帯を見ていたりすると、ドアが閉まる直前にひったくられるなどという被害にあった同僚がいました。

 「買ってまだ数日の新品だったのに・・」と嘆いていた彼女は、必死で同僚に「ドアの近くに立って、携帯を持っていてはいけない!」と言い回っていました。

 また、車に乗っていても、決して安心はできません。車の運転中、信号で車を停車した際に、突然、男が押し入ってきて、座席においていたバッグを奪い取られた知人もいました。これは、パリ16区で起こった事なので、特に治安が悪いところではありませんが、むしろ、お金持ち目当ての計画的な犯行とも考えられます。

 車に乗る時は、車のドアはロックしておかなければなりません。なんなら、バッグは座席の上に乗せておいてはいけません。

 ブランド物のバッグを持って街中を歩いていて、後ろからバイクに乗った男にバッグをひったくられた人もいました。

 こうして思い返していると、スリやひったくりの被害にあった知人の話はいくらでも出てきます。

 私自身は、急に男が近づいてきたと思ったら、いきなりネックレスをひっちぎられたことがありました。いつも通勤に通っている場所で、視界も良く、決して治安の悪い場所ではありません。

 その時は、恐怖で声をあげることもできませんでした。

 注意していれば、避けられることもありますが、狙われたら最後、避けられないものもあります。

 私は恐怖の一件以来、特に、パリではできるだけ目立たないように、地味な服装で、ブランド物などはできるだけ身につけないように警戒して暮らしています。

 名だたるブランドものを創出しているフランスではありますが、残念なことに、そんなブランドものは、パリでは持ち歩けないというまことに残念な治安の悪さです。

 友人がスリにあった!という話を聞いてすぐに、ドンピシャのタイミングでパリの日本大使館から、「スリ、置き引き、ひったくり等の犯罪が多発しています」という注意喚起のお知らせが入りました。

 いつもなら、見過ごしてしまいそうなお知らせですが、友人がスリにあったばかり、また、そういえば、12月だった!ということもあり、再び、身の引き締まる思いがしたのでした。


パリの治安 スリ 強奪 置き引き


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2021年12月15日水曜日

医療スタッフのノエルのバカンス延期に1日200ユーロの報酬 ノエルから年末年始にかけての病院の人手不足対応 

  

 

 ノエル・年末年始が近づいてきているというのに、フランスの感染拡大は一向にとどまることを知らずに、「ピークを迎えたかもしれない・・」と言いながら、すでに長い時が経過しています。

 ピークというのは、頂点ということで、ピークを迎えるということは、その後は減少し始めるということになると思うのですが、ひょっとすると、このピークの状態がしばらく上げ止まりの状態でしばらく続くかもしれないとも言い出しています。

 先週末には、人口10万人あたりの発症率が500人を超え(501.3人)、第2波のピーク時を超え、パンデミック開始以来、最高の水準に達し、昨日は、再び、これまでの記録を更新、1日の新規感染者数が6万3千人を突破(63,405人)しました。

 その結果、入院患者数は日に日に増加し、先週の11,526人に比べ、1週間で14,050人にまで増加しています。フランスで感染が急拡大しはじめて、マクロン大統領が緊急演説を行った11月9日には、6,851人でした。1ヶ月程度で2倍の増加です。

 この勢いで入院患者数が増加し続ければ、従来ならば、ノエル・年末年始のバカンス期間に休暇を取る予定にしている病院スタッフ・医療従事者も多く、この第5波に乗って病院に送られてくる患者の対応が非常に心配されています。

 この2年近く続くパンデミックでの疲弊から、病院では、退職者・転職者が増加した上に、以前よりも採用が少なく、人手不足が高じて年度始めから閉鎖されている病床が出ています。

 今週に入って、AP-HP(Assistance publique-Hôpitaux de Paris)(パリ公立病院連合)事務局長は、このノエル・年末年始のタイミングで、運び込まれる患者の対応のために、より多くの患者を受け入れることができるよう、病院スタッフ・医療従事者に対して、この期間のバカンス休暇を延期して、この間、働いた者に対して、1日あたり200ユーロ(約2万6千円)、10日間で2,000ユーロ(約26万円)を支払うという提案をしています。

 すでにこの提案は、8地域の医療機関で発動されていますが、これはあくまでも、強制ではなく、休みを取りたい人は取り、休暇の延期に同意してもらえれば、買い取りを申し出る予定としています。

 買い取りと言っても、休暇を取り上げられるわけではなく、延期です。休暇が延期された場合、この特別手当プラス、特に子ども一人につき週50時間を上限とする家庭でのケア費用を払い戻すことにより、病院スタッフの子どものケアを促進することを示しました。

 しかし、これには、賛否両論分かれており、「背に腹はかえられない」両者が苦渋の決断を強いられています。

 フランスでは、時間貯蓄口座を認可している企業では、従業員は取得しなかった休暇や、残業、または賞与や利益分配などの報酬をこの口座に入れ、積み立てることができます。しかし、今回のAP-HPの提案では、病院の人手不足を補うために、病院スタッフの休暇を「時間貯蓄口座に入れるのではなく、直接買い戻す」ことを提案していると言います。

 2020年末、フランス政府は、すでに政令により、医療従事者がパンデミックの影響で2020年10月1日から12月31日までに休暇数に応じて算出される「補償手当」を受け取ることを許可していました。

 これは、病院が人手不足に悩む中、クリスマス休暇を犠牲にすることに同意するよう、病院スタッフから有給休暇を高値で買い取り、患者さんの流入に対応するための発表です。

 それにしても、フランス人が何よりも尊ぶノエルを高額の特別手当と引き換えにするのかどうか? お金か?ノエルか? 

 AP-HPの事務局長は、この報酬を払う価値のあることであると語っています。

 それよりも、皆が何の不安もなく、大切な家族とノエルを過ごせる日が一日も早くやってきますように・・。


病院の人手不足


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2021年12月14日火曜日

1月には、フランスにオミクロン株による第6波が来るかもしれない

   



 現在、ヨーロッパでは、イギリスとデンマークでオミクロン変異株が爆発的に増加しており、両国では、近いうちに、オミクロン株が既存のデルタ株を抑えて優勢になると見られています。

 これまでもフランスは、イギリスの1ヶ月〜2ヶ月遅れでウィルスの流行を追っているような傾向があり、現在、人口10万人あたりの発症率が500人を超えるデルタ株がほぼピークに達していると言われているフランスでは、オミクロン株による症例は、約60例検出されています。

 この周囲の国の状況から、パリの公的機関であるAP-HP(Assistance publique - Hôpitaux de Paris)の事務局長は、このオミクロン株のために「1月」には、フランスで「第6波」が起こる可能性を示唆しています。

 まだ、「第5波」の真っ只中にいるうちから、「第6波」の予告とは・・「第5波」の波が下がることなく、そのまま「第6波」・・。

 いずれにしても、イギリスとデンマークのケースから、今後数週間のうちにフランスで起こりうることを予見しているのかもしれません。

 現在、イギリスでは、オミクロン株に関連した感染者数は、2〜3日ごとに感染者数が倍増しており、これはパンデミック以来、最も速い感染率と言われています。12月13日現在、イギリスでは、1,576件のオミクロン株感染が報告されていますが、1週間前には90件でした。(なんと1週間で17.5倍です)

 オミクロン株による感染者は全体で4,700人とされていますが、実際の感染者数はもっと多い可能性があり、英健康安全庁(UKHSA)は、現在の1日あたりの感染者は約20万人に上ると推定しています。

 今回のオミクロン変異種の発生は、既存のデルタ変異種と重なっており、国内の感染者数は2021年1月以来の水準まで増加しており、毎日、平均して、5万件以上の症例が報告されています。

 現在のオミクロン株の正確な危険性や重篤な症状を引き起こす能力は、まだ解明されていませんが、たとえ、この変異種の危険性が低いことが分かったとしても、この異常な感染の速さはから、これまでよりも多くの感染者の波が病院を圧迫することを懸念しています。

 感染者数が多いので、重症度が低くても、絶対数が多くなるということです。

 残念ながら、オミクロン株は、入院が必要な症例も引き起こしており、イギリスでは、少なくとも1名の患者がオミクロン株で死亡したことが確認されています。

 緊急に会見を行ったイギリスのボリス・ジョンソン首相は、「このオミクロン株がウィルスの毒性が弱まったバージョンであるという考えは、否定しなければならないことであり、ウィルスの広がる速度が加速していることを深く認識する必要がある」と語っています。

 11月末にイギリスで検出されたオミクロンは、すでにロンドンでの感染の40%を占めており、近いうちにイギリスに蔓延するコロナウィルスの主流になる可能性があります。

 また、デンマークでは、2,471件のオミクロン株による症例が報告されています。人口580万人のこの国では、1週間前には25件だった感染者数が、12月7日には581件に急増、なんと1週間で23倍に増加しています。

 現段階では死亡率は高くはありませんが、これは、感染から死亡までの時間によるタイムラグがあることや、ウィルスに対するワクチンの有効性も考えることができます。

 オミクロン株が優勢になってきている両国では、ブースター接種を加速するという同じ戦略を選択しています。まさにオミクロン株の感染の速さとブースター接種の拡大の時間との戦いが始まっています。

 ボリス・ジョンソン首相は、イギリスの18歳以上のすべての人に予防接種を提供するという目標を1カ月前倒しし、新年までに予防接種を受けることができるように3回目の接種数を1日約100万回に倍増させることを目指しています。 

 初期のデータでは、2回の接種ではオミクロン株に対する十分な防御効果が得られないと考えられていますが、3回の接種では70~75%程度の適切な感染防御効果が得られるとされています。

 イギリスでは2,300万人以上がすでにブースター接種を受けており、これは人口の36%に相当し、英国人口の75%が少なくとも1回のワクチン接種を受けています。

 フランスでは、1,500万人(人口の22%)がブースター投与を受けており、クリスマスまでに2,000万人の達成を目指しています。フランス人の約77%が少なくとも1回のワクチンを接種しています。

 デンマーク保険当局は、40歳以上のすべての人を対象に、ブースター接種を前倒しし、2回目の接種から4ヶ月半後にワクチンの追加接種を行うことを決定しました。18~39歳の年代にも追加で接種しますが、接種から5ヶ月半後になります。

 約120万人のデンマーク人がすでに追加投与を受けており、これは人口の21%に相当します。デンマーク当局は、年明けまでにさらに150万回の投与を見込んでいます。

 また、デンマークでは、学校や大学の閉鎖、ナイトライフの縮小、テレワークの導入など、新たな規制も導入しています。

 現在のところは、このオミクロン株の何よりの脅威は、この感染の驚くべき速度のようで、イギリスのヘルスコントロールのリーダーの一人であるロンドン・インペリアルカレッジの教授は、最悪の場合、最大1万人の入院がこの変異種と関連して起こる可能性があると示唆しています。

 そして、これは、足し算ではなく掛け算の増え方である・・と。

 予備的な研究では、ワクチンを接種することで、オミクロンへの感染を防ぎきることはできないものの、重症化するリスクを減らすことができると考えられています。

 これは、ワクチンを接種していない人の方がリスクが高いということになります。忘れてはならないのは、フランスの成人人口の約9%が全くワクチンを接種していないということです。

 この9%のうち、かなりの割合の人がコロナウィルスに感染したことがありません。オミクロンは、ワクチンを接種した人にも感染する能力があるため、これほど速く流通すると、ワクチンを接種していない人もすぐに感染してしまう危険性があります。

 過去を遡れば、フランスでの最初の医療崩壊の波は、65歳以上の人の約3%にしか影響していなかったにもかかわらず、病院が飽和状態になるほどだったことは、恐ろしい現実です。

 オミクロン変異種の深刻さについてはまだ不確定要素が多く、未知の部分が大きいようですが、いずれにしても、この新種がフランスを含むほとんどの国で定着し、大規模な感染者が発生する可能性が高いと考えられているのです。

 フランスでは、このオミクロン株のモニタリングが充分にされていないだけであって、実際のオミクロン株感染者はずっと多いと考えられています。フランスは、この変異株の種類の特定以前に感染者数は十分に急激に増加しているため、結果的には、イギリスやデンマークと同じ、ブースター接種の拡大を始めています。

 気を抜けない生活は、再び年を越しそうな気配です。


フランス第6波


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2021年12月13日月曜日

ノエルまでに2000万人のブースター接種達成のために日曜も営業する薬局の混乱

  


 フランスでは、普通、一般的な場所での商店は、日曜はお休みです。レストランやカフェなどは、営業していますが、普通のお店は、日曜休みという日本人からしたら、信じられない慣習が続いています。

 それでもノエルが近づくと多くの商店は、特別に営業許可をとって、日曜日も営業しているお店が増えます。

 我が家の近所にあるコマーシャルセンターも例に漏れずに、12月に入ると、コマーシャルセンターに入っている商店はどこも営業していますが、それでも余裕で閉店しているのは、薬局です。

 数日前にこの薬局に薬をもらいに行った時に、目につきやすい位置に黄色い貼り紙が出ていて、「日曜日に3回目のワクチン接種(ブースター接種)致します!(ファイザー)予約不要」と書いてあり、びっくり!

 書いてあるにもかかわらず、お店の人に「ここで予約なしにファイザーのワクチン接種が受けれるの?」と聞きなおしてしまいました。

 この薬局が日曜日にオープンしているなんて、私がこのあたりに引っ越してきてから初めてのことです。幸いなことにというか、残念なことにというか、私は先週、すでに他でワクチン接種をやっと終了したところ・・。もしも、ここで予約なしにできたのなら、遠くまで(といっても大して遠くもない)行くことなかったのに・・と、ちょっと残念にも思ったのです。

 どうやら、この薬局では、日曜日のコマーシャルセンターの人出を見込んで、この日に集中して予約なしにワクチン接種を行う作戦だったようで、当日、薬局を覗いてみると、薬局内には、動線が敷かれ、人が待っていられるように、いくつもの椅子が用意されていました。

 ここ数ヶ月で感染悪化が急激に進み、一日平均5万人の新規感染者数を叩き出しているフランスは、この感染をなんとか抑えようと、先週、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、ノエルまでに2,000万人のフランス人が3回目のワクチン接種を受けられることを目標としていることを発表しています。

 このペースを維持するために、薬局に日曜日も営業してワクチン接種を行うように呼びかけ、少しでも多くの人が少しでも早く、確実にワクチン接種ができるように体制を整えています。

 この政府の呼びかけにより、我が家の近所の薬局も日曜日にオープンしてまで、ワクチン接種をしていたのですが、そんなことは、急に決まったことで、1ヶ月近くも前から予約をして、ワクチン接種のできるのをひたすら待っていた私には、なんとも拍子抜けした気持ちでした。

 まあ、どちらにしても無事にブースター接種を無事に済ませたので、問題はありませんが、今は、状況がどんどん変わり、しっかりニュースを見ていないと生活に支障をきたしかねません。

 しかし、このように急激な薬局でのワクチン接種の拡大にパリの薬局は、悲鳴を上げ始めています。そもそも、2回のワクチン接種率も全国的にも最も高いパリは90%以上の人が2回のワクチン接種を済ませており、2回のワクチン接種をしている人が3回目のワクチン接種には、さほど抗うこともなく、また、ノエルを少しでも安全に家族と過ごしたいという目の前に人参をぶらさげられた状態で、3回目のワクチン接種に駆け込むのは、当然のことです。

 65歳以上の高齢者の2回のワクチン接種済みのヘルスパスの期限(12月15日)も間近に迫っていることも、このブースター接種を急ぐ人で立て込む薬局の一因になっています。

 ちなみに12月15日は昨年もひと区切りの時期であり、フランスは家族とノエルを迎える権利を守るためにロックダウンが緩和されたタイミングでもありました。

 しかし、振り返ってみれば、昨年の今頃の感染者数は1万人前後、感染者数だけ見れば、現在はその5倍以上です。(ワクチン接種の効果のため、重症化している人は昨年よりも少ない)

 薬局では、この押し寄せるワクチン接種希望者に対応しきれず、人手不足に喘いでいます。政府から、提案されていた医学部の学生の応援も現在、試験期間中のために人は集まらないようです。

 ワクチン接種自体は、時間がかかるものではありませんが、それに伴う問診や、ワクチン接種後の証明書の発行など、小さな薬局で一日に大量の人数をこなすとなれば、なかなかの仕事量になります。その上、通常の業務ですから、これは大変なことです。

 12月6日の時点で、パリ警察庁は、今後15日間以内に、パリ市内に9つの追加の予防接種センターを開設すると発表していましたが、これができるまでの間も少しでもワクチン接種を進めようと薬局でのワクチン接種を開始したのです。

 ヘルスパスの施行が発表されたのが、夏のバカンス直前の7月のことで、バカンスを安心して過ごすために、フランス人は、一気にヘルスパス獲得のためにワクチン接種に走りました。

 そして、いみじくもその5ヶ月後の今がワクチン接種の有効性が落ち始めるタイミングが今度は、ノエル前という時期にあたり、今度はフランス人は、ノエルのために再びワクチン接種に走り出したのです。

 幸か不幸か、フランス人にとって、何よりも大切なバカンスとノエルがちょうどワクチン接種の有効性が低下し始める時期に当たったことは、なんだか皮肉な現実ではありますが、国民にワクチン接種を浸透させるには、絶妙なタイミングであったと思わざるを得ません。

 今後、ワクチン接種をし続けることになれば、毎年、バカンスの前とノエルの前には、薬局は、大賑わいになるのかもしれません。


日曜日の薬局でのブースター接種


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2021年12月12日日曜日

偽ヘルスパスを持っていた患者の死が警告すること

   


 新型コロナウィルスに感染した57歳の女性がパリ郊外ガルシュ(Hauts-de-Seine)のレイモン・ポアンカレ病院で死亡したことが大きく取り上げられました。

 というのも、この女性の死亡が特に取り上げられたのは、彼女が入院の際に、医者に提示していたワクチン証明書が実は偽の証明書であったことが発覚したからです。

 この女性がコロナウィルスのために入院したのは、12月初旬のことで、入院の際に彼女がヘルスパス(ワクチン2回接種の証明書)を提示したために、病院側は、ワクチン接種者用の治療法に基づいて、治療を続けていましたが、彼女の病状は、深刻かつ急速に悪化し、重度の呼吸器発作に至り、10日に死亡してしまいました。

 この病院では、既往症等の病歴のない高齢でもない女性が、ワクチンを接種したにもかかわらず、重篤な状態に陥ったのは初めてのことで、集中治療室のチームは、死亡した患者の病気の未知の可能性を追求するために様々な検査を行いましたが、それを解明することはできず、彼女の抗体レベルを調べるためにサンプルを採取したところ、ワクチンを接種していないことがわかりました。

 この事実が発覚した後、彼女の夫が、彼女が今年の8月から偽のヘルスパス(ワクチン証明書)を使用していたことを告白したのです。彼は、通報されることを恐れて、彼女が偽ヘルスパス(ワクチン証明書)を妻が使用していたことを医者には知らせておらず、結果的にそれが彼女を死に至らしめたことを深く後悔しています。

 彼女は、ワクチン接種を拒否し続けており、職場にも定期的にPCRの陰性証明書を提示しながら、仕事を続けていました。しかし、ある日、職場の同僚から、200ユーロでヘルスパスを売ってくれる人がいることを知らされ、彼女は偽ヘルスパスを購入したのでした。

 報道によれば、彼女が偽ヘルスパスを購入したのは、ニースの医師からということで、この医師は、すでにコートダジュールでは問題になっており、医師免許を剥奪されています。

 しかし、彼女は偽ヘルスパスを取得したことで、まるでワクチン接種を行って、守られているかのように、行動範囲も広がり、気持ちにも隙ができてしまったことは、容易に想像できることです。

 彼女の夫によると、彼女が感染したのは、学校で感染した13歳の息子からであると言われていますが、夫ばかりではなく、息子にまで「自分が殺してしまった」という気持ちを与え、彼女は、自分の家族にも深い心の傷を残してしまいました。

 病院によると、「彼女が入院の際に、ワクチン未接種であることを知っていたら、病気の進行リスクを減らすのに有効であることが知られている中和抗体を、早い段階で患者に投与することができたので、彼女の病状の悪化は防ぐことができたかもしれない。残念でならない。」と語っています。

 コロナウィルスによる重症患者や死亡者の大多数がワクチン未接種者であることは、すでに発表されていましたが、偽ヘルスパスを入院時に至ってまでも提示したために死亡した例は初めてのことで、偽ヘルスパスによるしっぺ返しを本人がくらった悲劇でした。

 彼女の夫は、あらためて、彼女に偽ヘルスパスを売った医師を告訴(5年の懲役と75,000ユーロの罰金)すると話していますが、このことにより、せめて偽ヘルスパスの危険に警鐘を鳴らすことに繋がってほしいと願っています。

 社会保険庁によると、現在、フランスには3万6千枚の偽ヘルスパスが流通していると言われています。

 病院では、「虚偽の証明書は、ウイルスを防ぐことができないだけでなく、人々の治療のチャンスを損なうことになります。入院時には、正直にワクチン接種をしていないことを申し出てほしい。ワクチン接種済みの人とそうでない人とは、治療法が異なり、助かる命も助からなくなってしまう」と訴えています。

 偽ヘルスパスを持ったことで、守られているような気分になってしまうかもしれませんが、それは、あくまで偽物であることに違いはありません。

 私には、ワクチン接種を拒否する人の気持ちは正直わかりませんが、ワクチン接種・ヘルスパス反対のデモの様子を見ていると、ことのほか、マスクをしていない人も多く、ワクチン接種をしないならば、せめて他の方法で十分に感染対策をしてほしいものだ・・とつくづく思います。


偽ヘルスパス


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2021年12月11日土曜日

日本の水際対策のための強制隔離が大混乱の模様

   


 パンデミック以来、私は日本に帰国していませんが、この間、一時、感染状態が少し下火になっていた時期もあったのですが、日本はオリンピックもあったりして、どうにも躊躇われたし、何より隔離期間の2週間(強制隔離も含めて)は、実際に滞在する日程プラスの2週間が必要なわけで、まず何よりもそれが、日程的にもキツいことが、一番でした。

 もちろん、長距離フライトの間の感染も気掛かりでしたが、それに加えて、往復の際に必要な検査、書類、交通手段などを考えると、いつもは必要のない高額の予算が必要で、強制隔離期間(フランスからの場合は3日間)を終えて、羽田から自宅に移動する際にも公共交通機関は使えず、専用のハイヤーを頼むか、レンタカーを借りて自分で運転して帰るかしなければなりません。

 親戚や友人に迎えに来てもらおうにも、叔父や叔母も立派な高齢者で、友人や従姉妹たちとて、高齢の親を抱える者ばかりゆえ、万が一、私がどこかのタイミングで感染していて、感染させてしまったら、取り返しがつかないので、そんなお願いも絶対にできません。

 この期間に日本に留学するつもりでいた娘は、留学する予定だった大学が地方であったために、(その地方には、フランスからの直行便がない)強制隔離の3日間を終えたら、東京の実家で残りの隔離期間を過ごすつもりで、荷物だけ送って、羽田から世田谷の家まで歩くつもりでいました。(結局、留学はキャンセルになったので、そんなことは必要なくなりましたが・・)

 「自宅での隔離期間は、絶対に親戚の人にご飯食べにおいで!」などと言われても、絶対に行っちゃだめよ!」と言い聞かせていた私に、娘は、「全然、余裕で大丈夫!」と、出前やUberで頼めるメニューに目を通したりして、「あれも、これも食べたい!」とそれなりに楽しんで、隔離期間を過ごすつもりでいました。

 しかし、現在は、オミクロン株という新たな変異種の登場と、再び、ヨーロッパを中心にした感染拡大で、隔離状況は、さらに厳しくなり、イタリア、イギリス、オランダ、スウェーデン、ドイツ、ポルトガルなどの14カ国からの入国には、6日間の強制隔離、フランス、ベルギー、スイスなど39カ国からの入国には、3日間の強制隔離が必要となり、強制隔離施設が確保できずに、成田に着いたはずなのに、強制隔離施設が福岡、仙台、ついには、那覇などの地方になったり、関東近県でも、大学の学生寮になったりと、大変なことになっているようです。

 そもそも、14カ国から入国の6日間の強制隔離、プラス39カ国から入国の3日間の強制隔離施設といったら、大変な数の宿泊施設が必要になるのは、当然のことです。

 それも、日本到着後にも、自分がどこに連れていかれるのかも知らされず、ましてや、そこから再び長距離移動して地方に連れていかれるなどとは、思いもよらないことです。

 海外からの長いフライトのうえに、羽田や成田で検査やチェックにも3〜4時間はかかるそうで、ようやく入国したと思ったら、さらに延々と待たされた挙げ句に、また国内の長距離移動では、それだけでも具合が悪くなりそうです。

 帰国後2週間は、「公共交通機関を使うな」といいつつ、隔離施設への移動には、まさか隔離者専用のチャーター便というわけでもあるまいし、一体、何のために何をやっているのか?わけがわかりません。

 また、施設にもかなり、当たり外れがあるようで、話を聞いていると、ロシアンルーレットのようです。しかも、乗ってきた飛行機に感染者がいて、6日間の強制隔離がさらに延長された・・なんていう話まであります。

 そして、3日間の強制隔離と6日間の強制隔離をどのような基準で決めているのかはわかりませんが、(初期に発表されたオミクロン株の感染者数?)、これもわけがわかりません。

 イタリアがなぜ6日間の強制隔離が必要でフランスがなぜ3日間のみでいいのか?感染状況から見ると、自慢にはなりませんが、現在はフランスの方がずっと酷い状態です。

 強制隔離も振り分けられた施設にもよるでしょうが、3日間くらいならまだしも、6日間となると、精神的にも健康維持の面でも、かなりキツそうです。

 昨年の3月から約2ヶ月間、私はフランスでほぼ完全なロックダウン状況で、ほとんど外に出られない生活を送ってきましたが、それは、自宅での話で、それでさえ、息がつまり、毎日、YouTubeを見ながら、ヨガやストレッチ、ZUMBAをやったり、ベランダで野菜を育てたりと精神的にも病まないように過ごしてきました。

 それが、たとえ6日間であろうと、決まった時間に食事の配給はあるものの、小さなホテルの一室の空間から一歩も出れずに過ごすのは、具体的な話を聞いてみると、想像以上に心身ともに病んでいく様子がわかります。

 しかし、この強制隔離に関しては全て日本国の負担。文句を言えるものではありませんが、この現状のやり方に何も説明がないのは、納得しにくいところです。「そういう決まりですから・・」でおさめてしまうのが日本なのですが、せめて説明があれば、もう少し受け入れやすいような気がします。

 イギリスなどは、この強制隔離に対しても、自己負担にしているようですが、日本もこれを自己負担にすれば、逆に国籍の区別なく留学生なども受け入れられるようになるのでは?とも思います。

 しかし、現状のような日本への一時帰国者の話を聞いていると、「とても日本へは帰れない」と思ってしまいますが、実は、もしかして?そう思わせることが目的??、いやいや、そうではないでしょうが、しかし、帰国者の話を聞けば聞くほど、日本行きは当分、無理だ・・と確信するのでした。


日本入国の際の強制隔離


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