2021年3月23日火曜日

マルセイユでカーニバル もう気が狂ってるとしか思えない

 Plus de 6 000 personnes ont défilé lors du carnaval de La Plaine à Marseille ce dimanche, en dépit des restrictions sanitaires.


 21日の日曜日、マルセイユで6,500人もが集まるカーニバルが行われた衝撃的な映像がその日の夜から、マスコミに大々的に流され、大きな波乱を呼んでいます。

 「イカれている」という言葉がこれほど似合う画像があるでしょうか?

 マルセイユは、今回、政府の発表したロックダウンする16地域には、入ってはいないものの、決して油断できる感染状況ではなく、屋外とはいえ、この人混みで、マスクをしていない人がほとんど、その上、カーニバルということで、多くの人が仮装したり、ボディーペインティングをしているため、世紀末感を倍増させられます。

 この映像には、もうため息も出ません。

 このカーニバルは、およそ2週間ほど前からネット上などで呼びかけられていたようで、この大掛かりなカーニバルを予め防ぐことができなかったマルセイユ市に対しても、非難の声が上がっています。

 さすがにこのカーニバルの様子は、フランス国民にも大ひんしゅくを買っています。

 現在のフランスの感染状況で(新規感染者数1日平均3万人超えで、多くの地域で医療崩壊を起こし、患者をヘリで移送している状態)臆することなくこのようなカーニバルにマスクなしで参加する人がこれほどもいることがあらためて、ショックでもありました。

 これまで、幾度となく、フランスはもうダメだ・・と思いながら、一年以上を過ごしてきましたが、その度に何度かロックダウンをして、厳しい規制下の生活の中、国民の経済的、精神的な負担を少しでも軽減させつつも、なんとか感染拡大を防ぐような努力を続けている中、このような利己的な行動に走り、臆面もなく、何の悪気も躊躇いもなく、報道カメラの前に立って、自由な生活を訴える若者たちがこれほどまでに後を経たないことは、もうどんな対策をとっても、ザルで水を掬うような状態であることを実感せずにはいられません。

 カーニバルの群衆は、終いには興奮状態で、仮設遊園地のメリーゴーランドに登って雄叫びをあげ、車を燃やし始め、「これではサル以下、猿山の方が余程、統制が取れているだろう・・はっきり言って、もうイカれている・・」と思わずにはいられませんでした。

 自分の無責任な行動がどれだけの命を奪うことになるかも、未だに理解できない人たちを抑えるには、心理的な負担などとは、言っていられません。

 負担があろうとなんだろうと、もう完全なロックダウンをするしか、道はないのではないか!と怒りしかありません。

 これは、私が住んでいるパリで起こったことではありませんが、マルセイユは、ロックダウンになっていないため、このカーニバルに参加した人が、別の地域に移動して、感染をさらに拡大させ、フランス国内をさらに深刻な状況に陥れることは、いくらでも可能なのです。

 フランスは、国民を褒めることはあっても、決して叱ることをしない政府で、甘やかしてきたツケが現在のこのような結果を生んでいます。叱らずに統制を取ることができないならば、厳しい制限で縛ること以外に、フランスでの感染拡大を止める方法は、ないのではないか?と思い始めています。

 少なくとも、私は、自分を守るために、できるだけ感染回避をする生活を続けるとともに、もう1日も早く、ワクチン接種を受けたいと思っています。

 しかし、もういい加減にしてくれ!


<関連>

「フランスは、やっぱりダメだ・・と、絶望した理由 コロナウィルスは、蔓延し続ける」

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「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

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「ことごとくフランス人の習慣が裏目に出ているコロナウィルスの感染拡大 新規感染者7000人突破」

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「フェット・ド・ラ・ミュージックでまた、群衆 飲んで踊って大騒ぎのフランス人」

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2021年3月22日月曜日

並ばないフランス人が戻ってきた!

  


 昨年のロックダウン以来、フランスで見られた思わぬ好意的な現象の一つは、これまで、きちんと並んで順番を待つということが、極めて不得手だったフランス人にちゃんと並ぶという習慣ができたことでした。

 日本では、並んで順番を待つということは、当たり前のことですが、これまでフランスでは、隙をついて横入りする人がいるのは、珍しいことではありませんでした。東日本大震災の際には、震災直後の避難所の映像などが大々的にフランスでも流されましたが、非常時の皆が少しでも早く配給を受け取りたいと思うであろう避難所のような場所でさえも、日本人が争うこともなくきちんと並んでいる姿にフランス人も驚いたくらい、フランスの日常では、横入りは当たり前のことでした。

 それが昨年、急にロックダウンになった時点では、感染の恐怖もあり、スーパーマーケットなどでも入場制限があったりして、店内に入るまでに長い行列を待たなければならない日が続き、フランス人にも並ぶという習慣ができたことは、ロックダウンの思わぬ成果だと思っていました。

 ところが、最初のロックダウンから一年以上が経って、また、横入りがチラホラ見られるようになってきたことに、ちょっとガッカリするとともに、すっかり気が緩んできていることを感じているのです。

 緊張状態は、そうそう長く続くものではないことは当たり前なのですが、決して、並ぶことが習慣として植えついたわけではなかったようです。

 先日も郵便局でも、横入りする女性を見かけて、「おっ!久々に見るな・・」と思ったばかりでした。

 昨日はスーパーマーケットで、年配の女性がたくさんの商品をカゴに入れて、皆がレジに並んでいる中、ツカツカとレジの先頭に進んでいくので、「??? この人は、何をしたいんだろう?」と思っていたら、レジの人に直接、「私に先に会計させて欲しい」と申し出ている、コロナ前にもなかなか見なかった堂々たる横入りっぷり。

 あっさりと、レジの人に「ちゃんと並んでください」と言われて、諦めて、列に並ぶと思いきや、「私は、腰が痛いから、入れて・・」と言い訳しながら、列の途中に横入りしようとして、並んでいた若い女の子に「私だって、足が痛いのよ!」と断られている様子には、どっちもどっちですが、「うわ〜っ!フランスの日常が戻ってきた!」と思わされたのでした。

 終いには、その年配の女性は、列の次に並んでいた人には、高齢者カードまで提示して、頑として割り込み、順番を待っている間中、言い訳を続けていました。

 年配の女性で並んで買い物をするのが辛いのはわかるのですが、その振る舞いやもの言いや、買い物の量などやカートも持たずに買い物に来ている様子から、はなから並ばないことを前提として来ている様子があからさまで、久しぶりにうんざりしたのでした。

 現在のフランスの感染状況は、決して気を緩められる状況ではないのですが、一年が経ち、横入りが横行するくらい気が緩んでいる状況なのだろうな・・と思わされたのでした。

 パリには、さりげないおしゃれがしっくりくるような、美しい歳の取り方をしている女性も時々見かけて、素敵な歳の取り方をしているなぁ〜という人もいるのですが、それにしても、その時の高齢の女性、偽物のルイ・ヴィトンのバッグを持って、買い物に出て、横入りするために、周りの人と言い争いをして、なんという年齢の重ね方なのだ・・と、決して、あんな歳の取り方は、したくないな・・と思ったのでした。


<関連>

「コロナウィルス・ロックダウン以来、22日ぶりの買い物」

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「フランスのコロナウィルス対策・非常事態宣言 外出禁止・フランスのロックダウン」

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2021年3月21日日曜日

ロックダウンがロックダウンではなくなった 外出証明書もいらなくなったロックダウン

                                

           

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 とうとうロックダウンになってしまった・・と思っていました。

 木曜日の夜に発表されたロックダウンの知らせに、恐れおののき、パリを脱出する人でTGV(新幹線)は瞬く間に満席、道路は大渋滞になり、多くの人がロックダウンを逃れて行きました。

 しかし、実際にロックダウンの当日を迎えてみると、ロックダウンはちっともロックダウンではなく、外出許可証さえ携帯すれば、10㎞以内であれば、買い物でも散歩でも運動でもなんでも理由をつけて外出は可能なもので、天気が良かったことも手伝って、いつも問題になるセーヌ川沿いなども、なかなかな人出で、一体、この状態のどこがロックダウンだったのか?と思わざるを得ない状況でした。

 しかも、その外出許可証でさえ、「条件が複雑すぎて、わけがわからない!」という苦情が殺到し、第一日目にして、あっさり、10㎞以内の外出に関しては、外出許可証は必要ないことになり、身分証明書の提示のみで済まされることになりました。

 正直、わけがわかりません。なんだよそれ!

 営業が許可される店舗もさらに拡大され、食料品、薬局はもちろんのこと、通信機器、大型電気店、園芸用品、DIY用品、書籍、銀行、郵便局などから、美容院、花屋、靴屋、チョコレート店、不動産屋まで追加され、もはや営業禁止の店舗のみを上げた方が早そうです。

 これだけの店舗の営業許可が降りれば、当然、不公平感は高まり、これだけの店舗の営業が許可されながら、感染のリスクは同等だと思われるものの、なぜうちは営業できないのか?と訴える店舗が続出、そんな気持ちもわからないではありません。

 しかも、これまで施行されていた夜間外出禁止も18時から19時に引き伸ばされたため、外出はむしろ、しやすくなったわけで、7days/ 7 days のロックダウンとして発表されたものの、実際にはっきりと制限されたのは、30㎞以上の移動のみで、実際の外出範囲は拡大されたようなものです。

 その上、昨日は、土曜日、いつもと変わらずデモが行われ、パリのサン・ミッシェル、サンジェルマン大通りからバスティーユ広場まで、3000人〜6000人が街を練り歩くという信じられない光景が広がりました。

 イル・ド・フランスの病院はすでに満床状態で、急速に拡大するイギリス変異種の感染を抑えるためのロックダウンだったはず、ゆるゆるのロックダウンをさらにゆるゆるにしたことで、むしろ、「そんなに深刻に受け取ることでもなかったんじゃない!」というおかしな錯覚が起こりそうで、まさに国民を混乱させる逆効果。

 いくら、わかりにくいという苦情が殺到したとはいえ、その外出許可証を訂正するのでもなく、即日、撤廃してしまうという政府のぐらぐらの対応には、一体、どうしたいのかが、まるで理解できない迷走状態に陥ってしまいました。

 フランス国民の主張の強さには、つくづく閉口することも多いのですが、それにも増して、今回の政府のぐらつきは、国民の信頼を大きく失う可能性を孕んでいます。

 いみじくも、昨年のロックダウンとほぼ同じタイミングで迎えた3回目のロックダウンですが、昨年は、完全なロックダウン約2カ月間でようやく感染がおさまり始めたものの、今回の著しくゆるゆるなロックダウンと、強力な感染力を持つイギリス変異種の蔓延状態では、昨年よりもロックダウンが解除できる状態にまで達するのには、時間がかかる可能性もあります。

 しかも、望みの綱のワクチン接種もワクチンが思うように届かない上に、ワクチンの安全性をめぐって、急にワクチン接種を停止して、その3日後に再開するという不安を煽るようなことをして、ワクチン接種を躊躇う人も増えてしまいました。

 昨年末から年明けにかけて感染拡大が深刻だったイギリスやドイツなどは、ロックダウンの効果で、現在は、やっと感染状況も改善してきています。彼らのロックダウンは、こんなにゆるゆるではなかったにも関わらず、感染減少には2ヶ月近くかかっており、ドイツは、現在もロックダウン状態なのです。

 現在のフランスの感染悪化状況でこの甘々なロックダウンはあり得ません。

 何より、ワクチン問題に次いで、また二転三転するグラグラな対応の政府にこれまでにない危機感を感じているのです。


<関連>

「驚異的な数の警察・治安部隊を配置してでもデモをする権利を守るフランス」

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「日本人は、黙って我慢すると思われている」

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2021年3月20日土曜日

アストラゼネカのワクチン接種再開 首相自ら接種のデモンストレーション

 La vaccination AstraZeneca a été suspendue pendant trois jours en France.


 ヨーロッパのいくつかの国で、アストラゼネカ社のワクチンが関連している可能性がある血栓症(非定型例)の症例が確認されたことから、先週末から週明けにかけて、ヨーロッパ各国で軒並み、各国でこのワクチン接種が停止されました。

 フランスも例にもれず、急に月曜日の午後から、EMA(欧州医薬品庁)が安全性についての確認ができるまで、アストラゼネカのワクチン接種を停止しました。

 そして、木曜日の午後に、EMAは、アストラゼネカのワクチンは、現在、蔓延している新型コロナウィルス、イギリス変異種等の変異種のコロナウィルスに対しての有効性と安全性を確認したとし、問題となっている血液凝固や血栓症などの副作用との関連性は現段階では、証明されていないことを発表しました。

 これを受けて、フランスも金曜日から、イル・ド・フランス、オー・ド・フランス地域圏を始めとする16地域の3回目のロックダウンの発表と同時に、アストラゼネカ社のワクチン接種を再開することを発表しました。

 金曜日の午後には、カステックス首相自ら、マスコミを呼んで、自らがアストラゼネカのワクチン接種を受ける模様を公開し、同社のワクチンの安全性をアピールしました。

 しかし、当日になって、オリヴィエ・ヴェラン保健相が、「アストラゼネカのワクチン接種は、55歳以上の人に対して、再開します」と、再び、年齢を区切って発表したことから、再び、国民の間で不安が広がっています。

 このオリヴィエ・ヴェラン保健相の発表は、HAS(フランス高等保健機構)の勧告によるものであり、EMA(欧州医薬品庁)が55歳未満の人々における播種性血管内凝固症候群および脳血栓性静脈炎のリスク増加の可能性を特定していることが疑われています。

 まだ、開発されたばかりのワクチンに関しての安全性については、不安がつきまとうものであるのは、当然ですが、そもそもアストラゼネカのワクチンに関しては、当初は65歳以上の人には推奨しないなどと言っており、一時は危険かもしれないと接種を中断しておいて、今度は、55歳以上の人だけ・・二転三転する政府の発表に、国民は動揺するばかりです。

 ロックダウンについても、むやみにSTOP&GOを繰り返すことに対する反発が多く上がっていましたが、ワクチン接種に対するSTOP&GOも不安を煽るものであることに違いありません。

 そもそも欧州医薬品庁が、安全性を確認したとは言っても、ほんの2〜3日の間に確認し切れるものでもなく、こんなに簡単にGOサインを出すのならば、逆になぜ?ストップしたのか?と、懐疑的にもなります。

 今回のロックダウンに関しても、4週間の外出禁止としながらも、外出許可証があれば、10㎞以内であれば、時間制限なしでの買い物、散歩、スポーツのための外出もOKで、生活必需品を扱う店舗のみ営業可能の枠も、当初の食料品、薬局からどんどん広がって、通信機器、大型電気店、園芸用品、DIY用品、書籍、銀行、郵便局などから、美容院、花屋まで営業可能となり、一体、どこがロックダウンなのか?よくわかりません。

 ロックダウン発表後まもなく、これではどうしたらいいのかわからないという訴えが巻き起こっています。

 しかし、ロックダウンという言葉の衝撃は大きかったようで、発表と同時にパリを脱出するTGV(新幹線)のチケット73,000席があっという間に売り切れ、翌日には、ロックダウンを避けてパリを脱出する人で、駅も道路も大混雑という状況を生んだのです。

 政府は国民をできるだけ締め付けない方法を選んだ対策のつもりが、結局は、どうにも受け取れる緩い制限に、国民は、これでは、どうしたらわからないと迷走状態。

 しかし、1回目のロックダウンから一年、ある程度は、何がよくて、何がいけないか、どうしたら、感染を防ぐことができるかを自分で判断できるはずであり、禁止されなければ、自分の行動を規制できないことの方が疑問です。

 このパンデミックを通して、必ずしも政府が発表することは、正しいことばかりではなく、この時代、できる限り、色々な国の色々な情報を自分で得ながら、ある程度、自分で判断しながら、自分の身は自分で守らなければならないと強く思い始めています。

 3月18日の時点で、140万人の人々がすでに、アストラゼネカワクチンの初回投与を受けています。


<関連>

「アストラゼネカのワクチン使用停止が招く混乱と不信感」

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「フランスはアストラゼネカのワクチン接種は続行 アストラゼネカのワクチンの安全性への波紋」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/03/blog-post_14.html


「FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/ffp.html


2021年3月19日金曜日

フランス・3回目のロックダウンの衝撃と実質的な制限

   

            Discours de Castex : nouveau confinement, couvre-feu à 19h... Les annonces

      

 1月末頃から、いつロックダウンになるかと思っていました。その時がとうとうやってきました。毎日毎日、感染状態を気にしながら、いよいよヤバいと思っていました。

 ロックダウン発表の前日の段階で、感染状態が特に深刻なイル・ド・フランス(パリ近郊の地域)、オー・ド・フランスは、これまで以上のさらに厳しい制限が敷かれることが発表されていたので、ロックダウンもあるとは思っていました。

 しかし、ここのところの政府のやけに強気なロックダウン回避の対応に、週末のみのロックダウンかと思っていました。今年に入ってからというもの、ロックダウンは最終手段と言い続けてきたフランス政府は、とうとうその最終手段を取らなければならない状態にまでなってしまったということです。

 結局、感染状態は、想像以上に深刻で、すでに集中治療室も満床状態のイル・ド・フランスの発生率は一週間で23%も増加しており、すでに第2波のピーク時の数字を超え、イギリス変異種が感染の75%以上を占め、もう生半可な対応では済まなくなっていたのです。

 とうとう19日金曜日の夜、午前0時から、正確には20日の午前0時から4週間、イル・ド・フランス、オー・ド・フランスなどの16の地域は、最低4週間、ロックダウンされることになりました。

 いつかいつかと思ってはいたものの、実際にロックダウンとなると、やはり、ショックです。

 いみじくも、結局、昨年と同じ時期にロックダウンになってしまったわけです。

 一時は、この深刻な状況にも関わらず、4月には、レストランの営業が開始されるという噂もちらほらしていただけに、急転直下のこのロックダウンには、まだまだ先の道のりが長いことを再確認させられた形になりました。

 これで3回目のロックダウン。対象地域2000万人、23万店舗の営業がストップします。

 しかし、学校は継続され、外出証明書携帯の上、10㎞以内の明確な理由のある外出(買い物、散歩、運動)(しかも時間制限なし)は許可されます。

 よくよく考えてみれば、ロックダウンという言葉は充分に衝撃的である反面、なんだかんだと理由をつければ、かなり外出はできるわけです。

 しかも、これまで行われていた夜間外出禁止は、これまでの18時から19時に延長されます。

 昨日のカステックス首相とオリヴィエ・ヴェラン保健相の会見では、1月29日の段階で、科学評議会(Conseil scientifique)のロックダウンするべきだという警告を聞かずに進んできて、現在の状況に陥ったことは、政策の失敗だったのではないか?という質問に対しても、依然として、政府側は、失敗とは認めず、経済的、国民の心理的な負担を考えれば、決して失敗ではなかったと言い張っています。

 しかし、今年に入ってから亡くなっている27,000人以上の人の命、家族の悲嘆を考えると、これが失敗ではなかったとあっさり片付けられてしまうことには、かなり疑問が残ります。

「ウィルスと共に生きる」とスローガンを掲げながら、生きられなかった人がこんなにいるのです。

 外出したところで、生活必需品以外のお店は閉店しているわけですが、この生活必需品として認められている範囲は、想像以上に広く、食料品、薬局はもちろんのこと、本屋、通信機器、大型電気店、園芸用品店、DIY用品店、眼鏡屋、銀行、郵便局、保険屋等・・・これでは、閉店しなければならない店舗をあげた方が早いのでは?と思ってしまうくらいです。

 結局のところ、ロックダウンという衝撃的な言葉とはうらはらに、10㎞以内であれば、これらの買い物のためという理由だけでも、外出証明書さえ携帯すれば、外出し放題です。

 どんな状況になっても、全く懲りないフランス人、ロックダウンも3回目で、ウィルスの回避の仕方以上にロックダウン等の制限の網の目をかいくぐることにも慣れてきています。

 最も、あくまでもロックダウンを回避してきたフランス政府からしたら、ある程度、国民の心理的なダメージを考えて、ある程度、緩いロックダウンに変化させているとは思うものの、実質的なロックダウンの効果を考えれば、蓋を開けてみれば、これで、本当に大丈夫なのだろうか?と思う結果になりそうな気配です。

 少なくとも、昨日の首相の会見は、ここ数週間の会見とは明らかにテンションが違い、危機感は伝わってきたものの、結局のところ、いくらでもかいくぐることのできるゆるゆるなもので、結局のところ、国民の意識との乖離を感じずにはいられないのです。

 考えれば考えるほど、これは、本当にロックダウンなのだろうか?という気がしています。

 それでもやはり縛られることを嫌い、パリを逃れたい人がいっぱいで、ロックダウン発表翌日のTGVは、ギリギリのタイミングでパリを脱出したい人で、あっという間に満席になりました。


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「なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き」

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「まだロックダウンしないフランスの真意」

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「ロックダウンしないフランス政府の決断は正しかったか?」

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「ロックダウンは最終手段という姿勢は崩さないフランス カステックス首相の記者会見」

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「このままロックダウンせずに乗り切ることは可能なのか?」

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2021年3月18日木曜日

フランスは完全に第3波の波に乗った

  


 もういつロックダウンになっても仕方ない状態がずっと続いていたフランスは、これまで、あくまでもロックダウンは、最終手段であるとし、ロックダウン回避の姿勢をとってきました。

 ロックダウン回避のためにできることは、全てやると言って、人気YouTuberにまで協力を呼びかけたりしてきた政府も、結局のところ、年明けから変わったことと言えば、警備が多少、強化された程度で、今から考えると、直接、感染を減少させる追加対策は、取られていなかったような気がします。

 10月末に迎えた第2波によるロックダウン以来、レストランやバーなどは、ずっと閉店したまま、18時以降の夜間外出禁止も続いたままにも関わらず、感染は一向に減少しないどころか、イギリス変異種の拡大により、ジワジワと感染は増加してきました。

 ジワジワとはいえ、すでに年明けの段階で、1日の感染者数が2万人超えの状態でのジワジワですから、毎日2万人以上も増えている感染者から感染がさらに広がっていくのは、当然です。

 つい先日のテレビのニュース番組に長時間のインタビューに答えたカステックス首相が言っていたように、第3波を迎えつつある状態で、「フランスは、予防のためにロックダウンはしない」という対策、つまり、最悪の状態になった場合にだけロックダウンということです。

 そして、その最悪の時が来つつあります。

 最終的なロックダウンの決定をするのは、マクロン大統領ですが、マクロン大統領があくまでもロックダウン回避の方針に大きく舵取りを始めたのは、高等教育機関(大学以上)の学生からのマクロン大統領への手紙のやりとりが話題になった頃からで、この学生を始めとする若者の声の高まりが彼を動かしたような気もしています。

 これを機に、学校はとにかく継続、貧窮する学生への食事の援助(1ユーロで供給されるキャンティーンなど)も始まりました。

 医療崩壊さえ起こらなければ、ロックダウンはしないという言葉どおり、集中治療室の占拠率が90%を超えて、逼迫し始めた段階で、できる限り、集中治療室の空きを作るために、まだ少し余裕のある病院への患者の移送をすることを発表しました。

 少しずつ患者の移送が始まりはしたものの、実際のところは、リスクも伴う移送に患者や患者の家族が同意しない場合も多く、政府の算段どおりには、移送は進まず、逆にそれ以上の集中治療室に入る患者数が大きく上回り、問題となっていたイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の集中治療室の占拠率は、患者の移送を開始してすぐに、100%を超えてしまいました。

 さらに、1日の新規感染者数もこれまで2万人台に止まっていたものが、昨日(17日)には一気に38,501人までに跳ね上がり、これまで高い数字とはいえ、なんとか微増の状態で持ち堪えていた状態が、一気に第3波の波に乗ってしまった感じです。

 第2波がおさまらないまま続いているのだから、これは第3波ではないと失笑してしまうコメントを出している人もいましたが、大きな波に乗ってしまったことは間違いありません。

 失笑するコメントには、「悪いのはフランス人じゃない!マスクの性能が悪いんだ!」なんていうのもあって、ずっこけました。

 ここへきて、悪いことにアストラゼネカのワクチンの安全性をめぐって、ワクチン接種もほとんどストップしている状態で、まさに待ったなし、崖っぷちの最終手段を取らなければならない状態です。

 とはいえ、フランス全土がこの危機的な状況であるわけではなく、これまですでに週末のみのロックダウンが施行されているニース・アルプマリティーム県やダンケルクに加えて、オード・フランス、イル・ド・フランスが今後、週末のみ、あるいは、2回目のロックダウンと同様の制限(学校は継続)になることは、確実です。

 フランスの現在の感染拡大は、イギリス変異種が全感染の70%まで達して、猛威をふるっていることが、大きな原因ですが、そもそもイギリス変異種が警告されて、慌てて、イギリスとの国境を閉鎖したのが、昨年のクリスマス直前のことでした。

 あまりの急な国境閉鎖にたくさんのトラックが国境付近で足止めを食い、PCR検査をしないと入国できなくなったトラックの運転手がクリスマスどころか、トラックで数日間、寝泊まりする事態にも陥りました。

 イギリス変異種の感染の勢いと重症化から、マスクがこれまでのサージカルマスクでは充分ではなく、FFPマスクでなければイギリス変異種の感染は避けられないのではないか?などとFFPマスクについても話題にもなりました。

 しかし、年が明けてから、何回も、もうこれはヤバいのではないか?という状態でも、あくまでもロックダウンはしないという政府の姿勢から、イギリス変異種への危機感も何となく、認識が薄れてきてしまったのが現実です。

 実際に、1月半ばの段階で、Inserm (Institut national de la santé et de la recherche médicale) (国立保健医療研究所)は、イギリス変異種が本格的に拡大・急増するのは、3月半ばすぎであると発表しており、それまでに少しでも感染を減少させて、病床を空けて備えなければならない」と警告していました。

 最初のロックダウンが始まってから一年、経済的にも、国民の精神的な疲弊も考慮しつつ、ロックダウンはできる限り避け、ワクチン接種が拡大するまで、何とか凌ごうとしていたフランスですが、結果的には、さらに感染は拡大し、この拡大してしまった感染を抑えるのは、さらに長い時間がかかることになります。

 昨日の病院の現場を視察に出たマクロン大統領が、「この厳しい状況は、4月半ばまで続くだろう」と語ったことが話題になっていますが、今、すぐにロックダウンをしても、すぐに感染がおさまるものでもなく、ロックダウン後もしばらく上昇を続けて、下降し始めるのは、少なくとも2週間後、4月の半ばではとても済む状況ではありません。

 ここまで拡大した状況になると、もはや、ロックダウンする日が1日でも遅れれば、それだけ、感染は拡大し、回復するまでには、さらに時間がかかります。

 結局のところ、もっと早くロックダウンしていれば、こんなに酷いことにはならなかったのではないか?と、やっぱり思ってしまいます。

 今年に入ってからだけでも、フランスのコロナウィルスによる死亡者数は26,805人、1日平均350人が亡くなっています。

 もはやロックダウンか?というニュースとともに、世界一ワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、外出の際のマスクは義務付けられているものの、全てのお店がオープンし、ほぼ日常の生活を取り戻し始めているというニュースが流れています。

 国の対応の違いで、こんなに変わるものなのか?と楽しそうにしているイスラエルの光景をフランス人はどんな思いで見ているのだろうか?と、ちょっと切なくなりました。


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「フランスの感染がおさまらないのは政府の責任というフランス人」

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「マクロン大統領のユーチューバーとのチャレンジ企画 Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)」

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「フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙」

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「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

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「コロナウィルス変異種感染拡大によるイギリスからの入国制限が引き起こした混乱」

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「FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利」

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2021年3月17日水曜日

PCR検査で検出できないブルターニュ変異種の出現

    

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 フランス保健総局は、15日、コロナウイルスの新しい変異種がブルターニュのクラスターに出現し、少なくともこの変異種に8人が感染していることを発表しました。

 これは、2月22日に確認されたブルターニュのコートダモールの病院内のクラスターから特定された79例の感染のうち、3週間後に8例の新しい変異種が発見されたものです。この新しい変異種は典型的な新型コロナウィルスの症状を示していますが、厄介なことは、鼻咽頭サンプルによるPCR検査では陰性を示していた点です。つまり、PCR検査では、検出ができなかったわけです。

 現在の段階で発見されている、この新しい変異種の感染者は、すでに死亡しているため、この変異種の変化については、確認が容易ではありません。

 この新しい変異種の危険性(感染性や重症化のリスク)については、現在、調査が進められています。

 PCR検査で発見できなかったのは、ウィルスが上気道で検出されなかったということで、これは、ウィルスが急速に肺に移動したと考えられ、エアロゾルを介した感染経路が減少するため、伝染性が低いと考えることもできますが、一方、急激な病状悪化の可能性が高いとも言えます。

 ましてや、PCR検査で検出できないとなれば、感染の回避は困難になるため、結果として、感染性が高いことになります。

 ウィルスの突然変異は、ウィルス自体が生き残るために、時間の経過とともに変異を続ける自然なプロセスとは言うものの、これまでのPCR検査を逃れるように変異するとは、なかなかな変異ぶりです。

 この新しいブルターニュ変異体が、より感染しやすいものなのか? 免疫を逃れるものであるかどうか? より重症化するものなのか? ブルターニュで2月末に起こったクラスターの追跡が続いています。

 これまでもイギリス、南アフリカ、ブラジルなどの変異種が出現し、パンデミックを長引かせています。日本変異種も一時、話題に上がりましたが、すっかり、なりを潜めているので、新しい変異種と言えども、必ずしも脅威的な存在になるとは限りません。

 しかし、今やイギリス変異種の感染者が全体の感染者の70%以上にとってかわり、1日の新規感染者数が3万人にものぼる勢いで、医療状態も逼迫し、今にもロックダウンかもしれない現在のフランスの状況を考えると、新しい変異種の出現は、フランス国内ということもあり、見逃すことはできない、新しい変異種の出現です。

 悲観的に考えれば、現在は、亡くなっている人からしか確認されていないということは、致死率100%なわけで、それ以外は、PCR検査で検出できないのですから、発見のしようがありません。

 次から次へとトラブル続きのフランス。

 集中治療室の満床を防ぐための患者の移送も思うように進まず、頼みの綱のワクチン接種も中断したと思ったら、今度は、新しい変異種出現で、春がまた遠くなった気がしているのです。


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「アストラゼネカのワクチン使用停止が招く混乱と不信感」

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「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

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