2024年2月3日土曜日

伊東純也選手への性加害報道 所属先のスタッド・ド・ランスが公式リリース発表

 


 フランス・スタッド・ド・ランスに所属する日本人サッカー選手 伊東純也氏の性加害スキャンダルを受けて、所属先のスタッド・ド・ランスは、この事件に対する公式プレス・リリースを以下のとおり発表しています。

 「スタッド・ド・ランスは、今週水曜日に日本のメディアが伊東純也選手について行った報道と、同選手が起こした名誉毀損の告訴状に注目し、留意している」

 「日本人ストライカーの人間的資質と行動がクラブによって疑問視される必要があったことは一度もなかった。よって、彼は引き続き、スタッド・ド・フランスのメンバーとして在籍します」

 「メディアの報道を裏付ける司法調査が行われるまで、スタッド・ド・ランスは当局による調査を裏付ける情報を持っていません。 現段階でも現在に至るまで、クラブは伊東選手との団結を示している。 したがって、スタッド・ド・ランスは、疑惑の事実を明らかにする具体的な要素を待っており、関連する法的進展を細心の注意を払って追跡する予定である」

 「しかし、スタッド・ド・ランスはこのような重要なテーマを無視することはできず、この件に対して何のアクションも起こさないこと、あるいは沈黙を保つことを望んでいません」

 「クラブはここ数シーズンにわたってプロフットボールリーグと共同で実施してきた「女性に対するあらゆる形態の暴力との戦い」への取り組みを改めて表明し、すでにシーズンに向けて新たな啓発活動に取り組んでいる」と発表しています。

 日本でこのスキャンダルが報道されたのが水曜日、翌日には、伊東選手は、逆告訴し、スタッド・ド・ランスはこのようなプレスリリースを発表しています。早々に彼が逆告訴したのも、クラブへの説明と話し合いやアドバイスによるものとも思われますが、とにかく対応が早かったのには、驚き・・少し前に起こった性加害報道に対する日本の芸能事務所の反応と比べてみても、事実関係も異なるとはいえ、慣れているというか、賢明というか・・。

 実際に捜査、裁判の結果がどうなるかわかりませんが、彼がスタッド・ド・ランスに移籍したのは、2022年7月のことで、まだ彼がクラブに所属して1年半ほどです。しかしながら、「人間的資質と行動がクラブによって疑問視される必要があったことは一度もなかった」、「クラブは彼への団結の意を表している」とすぐに公式発表してくれることは、選手にとって、何よりも心強いことだと思います。

 これほどにクラブからの深い信頼を寄せられている彼が無実であることを祈るばかりです。


伊東純也性加害報道 スタッドランス フランス


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2024年2月2日金曜日

インフルエンザ流行のためにワクチン接種キャンペーン期間延長

  


 「フランスではインフルエンザの流行が本格化しており、すべての指標が急激に上昇している!」という記事を見て、「えっ?そんなに流行ってたの?」とビックリしました。

 フランス公衆衛生局が1月31日に発行した速報によると、「あらゆる指標が地域医療や病院であらゆる年齢層で急増しており、特に救急治療室に行った後の入院が急増している・・」とのことで、ちょっとギョッとさせられました。

 とはいえ、かなり地域差はあるようで、サントル・ヴァル・ド・ロワール(パリ南部・フランス中央部)が際立って増加しているそうですが、全国レベルでは46%の増加なのだそうです。

 そういえば、私もここのところ、体調がすぐれず、鼻がズルズルしていたり、だるかったり、熱っぽかったりしたのは、もしかしてインフルエンザだった?と、ちょっと心配になりました。

 「そろそろ花粉症の季節だから花粉症じゃないの?」と言う人もいたのですが、最近の私の携帯の天気予報のアプリには、「花粉はとても少ない」などという情報まで明記してくれているので、やっぱり花粉症ではなかったかもしれません。

 とはいえ、多少、だるかったり、鼻がグズグズするからといって、生活に支障があるわけでもなく、特にお医者さんにかかるわけでもなく、そのまま放置していました。

 フランス公衆衛生局の発表によると、「1月中旬には既に首都圏全域に広がっていたインフルエンザの流行がフランスでも全土に拡大している・・」とのことで、ワクチン接種キャンペーンを一ヶ月延長したそうです。 当初は1月31日までの予定でしたが、現在は2月29日までとなっています。

 それを聞いて、「あ~そういえば、私、インフルエンザのワクチン接種してたんだ・・」と思い出し、「ワクチン接種のおかげで、酷くならないでいるのかも? それにしても、そんなことも忘れている方がヤバいのかも・・」とちょっと、自分のボケ具合が恥ずかしくなりました。

 これに加えて、公衆衛生局は、急性呼吸器感染症、細気管支炎、コロナウィルスと同時感染の危険にも警鐘を鳴らし続けており、特に高齢者や虚弱体質の人とのソーシャルディスタンスをとることや、石鹸やアルコールジェルで手をよく洗うこと、マスクを着用すること、一度使用したティッシュペーパーは使わないこと(使い捨てのティッシュペーパーを使用すること)、くしゃみや咳をするときは肘をあてること・・などと推奨しています。

 それにしても、今さらまだ、「一度使用したティッシュペーパーを使わないこと・・」などと繰り返すということは、あれだけの痛い思いをした今もなお、ティッシュペーパーの二度使いをしている人がいるのだろうか? 喉元過ぎれば・・なのか・・? よっぽど、ティッシュペーパーの二度使いが身に沁み込んでいるのか? と苦笑してしまうのでした。


インフルエンザ流行


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2024年2月1日木曜日

農民たちの怒りが巻き起こす波紋

  


 いくつかの欧州の国で巻き起こっている農民の怒りがフランスの農民の間でも一大ムーブメントになり、フランス全土の農民たちが怒りの抗議行動を開始しはじめてから、2週間以上が経っています。

 農民たちは、全国各地で結集を続け、トラクターや藁の束や土などを使って、全土の主要高速道路をブロックしています。

 これまで、あまり注目されなかった農民たちの悲惨な訴え、農業に対する厳しい規制や環境問題対応やインフレ、フランスの基準を満たしていない輸入品の増加などなどにフランス国民も概ね、彼らの怒りを理解し、支持する声が多いようです。

 フランスでのデモ行動は珍しいことではないし、それが暴動に繋がったりすることも珍しくないので、それに比べて、今回の農民たちのデモ、結集は比較的、おとなしいと思っていました。

 しかし、この動きも長引くにしたがって、彼らの中にはやはり暴挙に及ぶものもあらわれはじめ、ランジス国際市場に結集していた一部?の農民たちが市場内に押し入り、そのうち79人が器物損壊で逮捕されたという話が上がってきました。

 農民たちが「パリへ!」「空港やランジス市場をブロックする!」と宣言し始めて以来、ランジス市場には、物々しく装甲車が待機、農民たちをブロックしていましたが、あくまでも、破壊や負傷がない限りは介入しない姿勢をとっていました。

 また、果物や野菜などの外国製品(輸入品)を積んだトラックもデモ参加者によって、積み荷を道路に捨てられたりすることも起こり、暴力的な行動も増えつつあるようです。

 政府はこの農民の怒りを理解し、対応しようと「非道路用ディーゼルエンジンの増税の廃止」や「農家に対する規制に対する当面の簡素化」や「有機農家に対する5,000万ユーロの緊急援助基金」、「不正な輸入品に対する取り締まり、罰則の強化」などの回答を示していますが、農民はこれでは、まったく充分ではないと、この抗議行動を続行しています。

 基本的には、農民の怒りを支持する人が多いとはいえ、これだけ長くなってくると、あちこちに影響が表れ始め、スーパーマーケットでは、輸送のための交通網が麻痺しているために欠品が少しずつ出てきているとのことで、また、ブロックされている高速道路のガソリンスタンドなどは、当然、車が通れないために、顧客が来なくなり、開店休業状態になっています。

 農民たちとて、こんなに長期間、農場を放って、高速道路で寝泊まりしているわけですから、畑や動物たちは、大丈夫なのかな?とも思いますが、追いつめられた生活をしている彼らにとっては、このままでは、農業は続けられない!という命がけの覚悟でもあり、また、せっかく世論まで味方についている今、引くに引けない状況なのかもしれません。

 しかし、農民たちの間でも意見の相違はあるようで、このデモ行動に有機農家は参加していないようです。彼らはデモを行っている農民たちの要求の多くの部分を共有しているものの、全く同じではないため、それを混同されるリスクは冒すことはできないとしています。

 彼らは有機農業確立のためのよりよい援助を求めており、これは、欧州連合の新しい共通農業政策(CAP)と農業のグリーン化というその目標にかなったことであり、環境に優しい農業を行っている農家に対する援助の確立も含まれています。

 一応、先週の段階で政府は有機農家に対する5,000万ユーロの緊急基金を提示していましたが、彼らによると、一農家あたりにして、833ユーロにしかならないということで、「これではタイヤの値段にもならない・・」とこの金額が全く不十分であると主張しています。

 農業のグリーン化などときれいごとを言っても、実際には、早々簡単にいく話ではなく、また、このインフレから、消費者のオーガニック製品離れが起こっており、売り上げは減少傾向にあるとのこと、厳しいことには変わりありません。

 有機農家は、「私たちは、古い自由主義的で輸出モデルを支持するか、水、気候、生物多様性、健康を守る製品をフランス人に食べさせることを目的とした新しいモデルを支持するか、選択を迫られる時期にある!」と語っており、たしかに、一般的な農民たちとは、また別のステージに立つ部分もあるのかもしれません。

 いずれにせよ、一大農業国であったはずのフランスの農業は、たしかに上手く回っていないことだけはたしかなようで、これを機に、フランスの農業が再構築されていくための方策を政府がしっかりとってくれたらいいなと思います。


フランス農民の怒り


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2024年1月31日水曜日

ネスレグループのミネラルウォーターは、違法精製水を販売していたという大スキャンダル

  


 ネスレといえば、スイスに拠点を置く世界最大の食品会社で、扱っている食品の種類も広範囲にわたります。

 今回、炎上中の製品はミネラルウォーターという通常、もっとも信頼されるべきもので、それだけにショッキングなことでもあります。

 実際に私も長年にわたり、買い物するのに重くて面倒であっても、子供のために、健康を気遣って、ほんのわずかでも害になるものを摂取させ続けてはいけない・・水くらいは少しは良質なものをとミネラルウォーターを買い続けてきたので、本当に裏切られたような不快な思いでいます。

 ネスレグループといえば、ミネラルウォーターだけでも、クリスタリンをはじめ、ペリエ、ヴィッテル、コントレックス、サンヨール、ヴィシー・セレスタン、さらにはシャテルドンなど約30種類のボトルウォーターを販売しています。

 今回の疑惑調査は、2020年に工場の従業員からの内部告発により、競争・消費者問題・詐欺防止総局(DGCCRF)が調査を開始し、調査の結果、ミネラルウォーターに規制に準拠しない処理を行っていることを発見。硫酸鉄と工業用 CO2 の注入、認可された基準値を下回る精密濾過、さらにはいわゆる「ミネラル」または「スプリング」水の混合も行われていたという報告書が提出されていました。

 この調査の結果、フランスのボトル入り飲料水市場の3分の1以上を握るスイスの多国籍企業ネスレは、その後、非公開の経済産業大臣との面会を要請、 2021年8月末、ネスレは準拠していない製法を使用したことを認めたと言われています。

 今回、この事実が公になったのは、ル・モンド紙とラジオフランスの取材によるもので、この問題がすぐには明らかにならなかった理由が添えられています。

 実際にネスレグループは、このミネラルウォーターの精製に関わる規制に何年も違反し続けていることを認めつつ、この内々の政府との秘密会議において、同社は、ネスレグループが使用する水源は確実に汚染が進んでいるために、こうした処理がなければミネラルウォーター工場の操業を継続することはもはや不可能だと経済産業省に対し説明しています。

 そして、この違反が発覚した後もむしろ、開き直るかたちで、これを継続できるように規制自体を改正することを求めていたようです。

 そもそもミネラルウォーターには、源泉水の純度によって、「ナチュラルミネラルーター(ペリエ、ヴィッテル、エビアンなど)」、「湧き水(クリスタリン)」、「処理によって飲料可能になっている水」とに分類され、それぞれに精製過程の規制が異なります。

 つまり、ナチュラルミネラルウォーターと湧き水には、地下水の深部から汲み上げられるため、通常は汚染や公害のリスクから保護され、「微生物学的に安全」であるという共通点があります。 したがって、非常に限られた数の精製処理のみが許可されており、 カーボンフィルターや UV フィルターなどの浄化システムの使用は厳しく禁止されています。

 ナチュラルミネラルウォーターは「本来の純粋さ」が特徴のため、精製する必要がなく、水の微生物学的特性を変えてはならないものです。

 フランス人がボトル入り飲料水の品質に非常に高い信頼を寄せているのは、この「本来の純粋さ」が「より健康的」、「より健康に良い」と信じているからに他なりません。

 しかし長年にわたり、実際にはネスレ グループのナチュラル ミネラル ウォーターには「純粋」または「天然」というものはなかったのです。

 さらに、恐ろしいのは、このネスレの要請に基づき、政府がこの規制自体を修正することによって、許可する可能性があったことが報告書から認められた・・というものです。

 実際に、詳しくミネラルウォーターの分類を知らなかった私でさえも、そのメーカーやブランドなどで信用しきっていたのは、情けないのですが、今回のようにフランスのマスコミがこの不正を暴いてくれて、ありがたいことです。

 しかし、いずれにせよ、水源が汚染されつつあるという事実は変わりないわけで、ナチュラルミネラルウォーターとして不適切な精製法がとられているのに、それを偽ってきたということで、ハッキリ言って、詐欺ですが、だからといって、水道水といえば、飲料水として、ろ過されたものでもなく、結果的には、偽のナチュラルミネラルウォーターではなく、もともと「処理によって飲料可能になっている水」として、そこまで高価ではなく売られているものが良心的なのだろうか?などとも考えてしまいます。

 いずれにせよ、これもまた、環境問題にかかわってくること、同時に問題を隠蔽して、違法な方法で製造したものを販売することや、それを政府までもがすぐに明らかにしてこなかったことは、それに輪をかけて恐ろしいことです。


ネスレ ミネラルウォーター


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2024年1月30日火曜日

RATP(パリ交通公団)2月5日から 7ヶ月間のストライキ予告

  


 RATP(パリ交通公団)労働組合が発表したプレスリリースによると、2月5日月曜日から7ヶ月間のストライキ通告を提出したことを発表しています。

 ストライキの予告には、驚かなくなっていますが、今回ばかりは、2 月 5 日月曜日から 9 月 9 日月曜日までという長期間の予告には、「ちょっと、あり得ない!」ともうため息も出ず、一瞬、息を止めている自分に気が付きました。いくらなんでも7ヶ月間という予告は度を越しています。


 彼らは、このストライキ予告の理由として、「2024年の給与措置が不十分である」としており、32時間(週)を基準とした労働時間の短縮(一般的には35時間あるいは37時間)や残業及び休日手当やボーナスの見直しなどの要求も突き付けています。

 この要求が叶わなければ、オリンピック・パラリンピックに向けてピークを迎えようとしている状況で充分に安全で快適な交通網を提供することができないとしており、明らかにオリンピック・パラリンピックを盾にした要求であることは、目に見えています。

 しかし、RATP(パリ交通公団)を利用する側から言わせていただければ、毎年、確実にチケットは値上げし、その上、オリンピック期間前後は、チケット価格がほぼ倍に値上げすることが発表されており(ただし住民、恒常的に利用している人々に関しては通常価格ということになっている)、これまでも、ストライキの他に、時折、交通網が麻痺したり、拡張工事のために度々閉鎖されたりと、この期間の分のチケット代返金してよ!などと思うくらいで、このうえ、またストライキなど・・しかも、こんな長期間なんて、いい加減にしてほしい! 給与や条件の交渉なら、周囲に迷惑かけないようにうまく話し合いをつけろ!と思います。

 現在、農民たちが様々な困難に直面し、怒りを爆発させ始め、あちこちの主要道路をブロックしたりしている中、これがいつまで続くのかはわかりませんが、この動きがダブって進行するとなると、社会機能が麻痺し始める恐れもあります。

 現在のこの同時期に進行しようとしている農民たちの騒動とRATPのストライキは、どうしても、比較して見てしまうのですが、どう考えても、RATPの方は、相対的に一般的な会社と比べてみても、(RATPには、給与・年金手当の他に職員専用に安価に利用できる住宅施設などがあったり、特別な研修休暇システムなどもある)条件は決して悪くないはずで、どうにもその理由が理解しがたいもの、農民たちの訴えについては、多くの国民も支持しているところが大きな違いです。

 オリンピックを盾にすれば、特に交通機関などの場合は、それが動かないなどという事態は絶対に避けたいであろうという一種の弱みに付け込んでいるような要求には、苦々しい気持ちしかありません。


RATP(パリ交通公団)7ヶ月のストライキ


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2024年1月29日月曜日

環境活動家によるモナリザ襲撃 今度はカボチャスープ

  


 たびたび、芸術作品が環境活動家のターゲットになるのは、もはや珍しいことではなくなりましたが、パリのルーブル美術館では、またもやモナリザが標的にされ、カボチャのスープを投げつけられました。

 もっとも、モナリザは、頑丈な保護ガラスで守られているために、絵画自体には、直接の損害はありませんが、この騒ぎと清掃のために、この部屋は約1時間ほど閉鎖されたのち、再開場されたそうです。

 現在、フランスでは、様々な状況に追いつめられた農民たちが、全国規模でデモを行っていますが、今回のモナリザ襲撃は、それに乗っかるかたちで行われた感が否めません。

 このモナリザにカボチャのスープを投げつけた2人の環境活動家は、「芸術と、健康的で持続可能な食べ物を得る権利とどちらが大切ですか?」と問いかけ、「我が国の農業システムは病んでおり、農民たちは労働中に死亡しており、フランス人の3人に1人は毎日の食事を満足にとれていません!」などとモナリザの前で訴え叫んでいます。

 たしかに、現在のフランスの農業のシステムには、問題があるようだし、農民たちが苦しい生活を送っていることは、今回の大規模デモでの彼らの説明を聞いていると、「たしかにこれは酷いな・・」と思わせられるのですが、安全な食品を!と呼びかける彼女たちがカボチャのスープという食料を無駄にするようなことをするのは、理解できないうえに、芸術作品がなぜそこで引き合いに出されるのかも全く意味がわかりません。

 たしかに環境問題は農民を苦しめている側面の一つではあるものの、彼らの苦しみは、もっと複合的なものが積もり積もったものであり、そんな時に彼らの訴えにのっかるような訴えの仕方をするのは、現在の農民の正当な怒りへの冒涜でもある気がします。

 ルーブル美術館は、入館時に荷物チェックなどもありますが、彼らはカボチャのスープをコーヒーの魔法瓶の中に隠して持ち込んだようです。

 モナリザは度々、被害に遭っており、前回は、2022年5月にクリームパイを投げつけられています。できるだけ世間の注目を集めたいがためにモナリザが選ばれているのでしょうが、数奇な運命の絵です。

 今回の彼らの抗議行動について、彼らの所属するリポスト・アリメンテールは要求書で、ルーブル美術館での行動を「持続可能な食料のための社会保障という、すべての人にとって有益な明確な要求を伴う市民抵抗運動のキックオフ」であると表明しています。

 地球環境問題はたしかに深刻な問題で、できる限りの対策をとっていく必要があるとは思いますが、このような環境活動家の抗議行動は、むしろ、本来の環境問題に対応すべき事柄に危険な雲行き怪しい空気を吹き込みかねないものでもあり、環境問題とともに、環境活動家問題が加わっているようなおかしな現象であると思います。

 だいたい、この芸術作品のためにパリを訪れる人が一体、どれだけいることか?この、あるだけでフランスに富をもたらしてくれる芸術作品をなぜ冒涜するのか?全く意味がわかりません。


モナリザ襲撃


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2024年1月28日日曜日

松本人志騒動はフランスでも報道されていた・・

  


 昨年末から日本で大騒動になっているらしいダウンタウンの松本人志さんの性加害問題については、時々、YouTubeで解説している映像などを見ていました。

 海外に出てから、ほとんど日本のテレビ番組を見ないために、知らないタレントさんが多くなってしまっている私でさえ、ダウンタウンは知っていたので、なんとなく気になって、そんな解説をしているYouTubeを目にしていました。

 何人かのユーチューバーがここぞとばかりに、次から次へと出てくる告発者の証言などを紹介しているなかに、「ついに、この話題はフランスでも報道されているようです!」という説明していて、「えっ?フランスでもやってるの? 夜のテレビのニュースでは見てないけどな・・」(私は、テレビはほとんどニュース番組くらいしか見ていないので・・)と思ったら、本当にいくつかのメディアで報道していました。

 いわゆるゴシップ紙ではなく、大手仏紙 ル・モンド、フィガロまで書いているのにはビックリ! その他、TF1(テレビフランス1)のテレビ番組やラジオフランスの番組でもやっていました。

 テレビの方は、10分強の扱いでしたが、日本での松本人志氏が大変、人気のある30年以上のキャリアを持つコメディアン、俳優、プロデューサーでもあることを説明したうえで、週刊文春の報道の内容や社会の反応など、やはり昨年、BBCの報道以来、大騒動を巻き起こしたジャニーズ事務所の性加害問題にも触れつつ、これまでこれらの問題には、口をつぐんできた日本にも、ようやく#Me Too 運動の波が巻き起こり始めていると紹介しています。

 映像は、多くのこの件に関する日本の番組の映像が切り取りで使われており、巻き沿いを食って仕事を失いたくない彼の事務所の仲間(と辛口な説明)が曖昧なコメントをしている様子や、加えて、これは過去の話でも被害者の立場にたって、きちんと扱うべきであると証言している指原莉乃さんの証言や、吐き気がすると話している上沼恵美子さんが証言している映像も併せて使われていました。

 新聞となると、もう少し広い視点での扱いで、日本の芸能事務所の在り方やマスコミについても疑問を投げかけている内容で、これらの報道に対して、テレビはこの告発報道に対して消極的であることの理由も説明しています。まさにフランスだとそれはそれで、別に騒ぎになりそうな「言論の自由」についてです。

 どうも、フランスの新聞は、この日本のマスコミの在り方については、以前の別の問題、例えば、安倍元総理の襲撃事件の際の報道についてなどについても、マスコミが機能していない問題を厳しく指摘しており、日本の言論の自由、報道の在り方については手厳しく批判的な書き方をしています。

 彼の所属する事務所「吉本興業」は約6,000人のアーティストを抱える日本のテレビ・エンターテイメント業界に大きな権力を持つ事務所であり、テレビチャンネルはこの会社に大きく依存しており、彼らなしには多くのテレビ番組が存在しなくなるために、彼らの中には、真のオメルタ(沈黙の掟)があると説明しています。

 日本の芸能事務所がこのアーティストたちを全て管理する準封建的な歪な制度であることとともに、日本のテレビはこの巨大化した権力に対しての扱いに四苦八苦している・・と。

 また、日本では、この性加害に対する告発は、非常に少なく、警察に届け出がなされる件数も年間1,300件ほどしかなく、日本の刑法が合意のない性行為を強姦と認めたのは、ほんの数カ月前のことである・・と。

 フランスでもついこの間、有名俳優ジェラール・ドパルデューの性加害問題で彼からレジョンドヌール勲章を剥奪するか否か?という問題で大騒動になったばかりです。

 しかし、フランスのマスコミは、彼に関する報道をテレビでも忖度なしに報道しています。

 #MeToo 運動は日本で軌道に乗るまでに多くの困難を伴いましたが、ここ数週間でこの運動は一気に加速していると被害者の女性が声をあげたことに対して好意的に報じています。

 他の国での報道についてはわかりませんが、ここまで有名になっては、少なくともフランスに進出しているメーカーなどは、おそらくスポンサーから外れることは間違いありません。


松本人志性加害


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