2021年8月11日水曜日

240名の医療従事者が医療崩壊を起こしているマルティニークとグアドループへ

   



 新型コロナウィルス感染が急激に悪化し、医療崩壊を起こし、真夏のバカンスシーズンというのに、完全なロックダウン状態になったマルティニークとグアドループに向けて、240名の医療従事者が出発しました。

 ワクチン接種率が極端に低いために(21%)これらの地域の感染が急激に悪化し、医療崩壊を起こし、現地の病院が受け入れ不可能な状態で、助かるはずの命が失われていく状況に陥り始め、患者の移送なども行っていましたが、到底、それでは追いつかない事態に発展し、オリヴィエ・ヴェラン保健相がマルティニークとグアドループの危機に直面し、現場の医療チームを支援するために、医療従事者の支援を全国的に連帯・協力を呼びかけたのは、8日(出発2日前)のことでした。

 「もしも、あなたが医療従事者で、救援に行くことができるならば、あなたの働いている病院やARS(Agence régionale de santé・地域保健機関)に申し出てください」

 この呼びかけにより、集まった240名の医療従事者がその2日後には、マルティニークとグアドループに向けて旅立って行ったのです。

 とかく、個人主義的で、権利ばかりを主張する利己主義に思われがちなフランス人も、いざ本当に危機的状況に陥った人に対しては、意外にも慈愛に満ち、優しく、スゴい行動力で人を助けようとするところがあり、驚かされることがありますが、そんなところは、フランス人の優しい一面でもあります。

 もちろん、全ての人が同じではありませんが、何かスイッチが入った時のパワーの凄さ、エネルギッシュな行動力には、目を見張るものがあります。

 コロナウィルスとは無関係ですが、以前、我が家が大変、危機的な状況に陥った時、周囲のフランス人の人々が本当に親身になって助けてくれた時には、フランス人の意外な一面を見た思いでした。

 昨日、マルティニークへ向けて旅立って行った人の多くは、フランス全土の多くの地域から集まっていて、「依頼を受けてすぐに決断しました。自分たちの同胞を助けるために、私は必要とされています。全く迷いはありませんでした。」と答えています。

 依頼があって2日後の出発ですから、迷っている時間はなかったはずです。

 この救援に向かった医療従事者の中には、「今こそ、自分のスキルアップができる時」と言っている人もいれば、最近、リタイアしたばかりなので、いつでも協力できる状態だった」と語る医療従事者の夫婦もいました。

 この救援隊の派遣は、一応、15日間の予定ですが、現地の状況の変化に応じて、次の救援隊も派遣する準備もしています。

 いずれにせよ、彼らのそのエネルギーのベクトルがどこに向かうのかによって、このような緊急の救援に参加したり、逆にデモになったりもするのですが、今回の救援隊の集結は、明らかにフランス人の底力、優しさが見えた危機的状況の中にもどこか暖かい気持ちにさせられる出来事でした。


マルティニーク救援隊

グアドループ救援隊


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2021年8月10日火曜日

ヘルスパス本格始動も、実は、昨年の今頃よりも事態は深刻なフランス

  


 今週からフランスは、レストラン・カフェ・病院・医療施設・長距離交通機関・一部のコマーシャルセンターで、ヘルスパスの提示が必要になりました。

 レストランやカフェの入り口では、ヘルスパスのQRコードがチェックされ、QRコードを読み込むと、ワクチン接種の証明書や生年月日などが表示されます。さほど複雑な手間ではありませんが、混雑時などには、店舗にとっては、煩雑な作業が加わることになります。

 本来は、ヘルスパスは、ワクチン接種拡大のために取られている施策ではありますが、現在のところは、PCR検査の陰性証明書でも代用できるため、薬局などの検査場の混雑を緩和するために、当初は、48時間以内の検査結果の陰性証明書が必要であったものが、72時間以内のものと緩和されています。

 その上、自分でできる簡易検査でも良いなどと、どんどんその枠が緩まっているので、その場でテストして見せるのか? なんだか、大丈夫かな?と心配になります。

 それでも、レストランなどで、紙に印刷したQRコードを持った高齢者にQRコードを携帯に読み込むのを手伝ってあげている若いウェイターのお兄さんなどもいたりして、なんだか微笑ましい場面も見られます。

 TGVの発着する大きな駅などもヘルスパスのチェックが始まり、駅ではヘルスパスのチェック済みの乗客に対しては、ブルーのブレスレットを着用してもらい、途中乗車・下車する際の再チェックの簡易化を図っています。

 それでも、実際にヘルスパスのチェックはしても、それを身分証明書と照合することまではできないため、本人確認のための抜き打ち検査に警察官が巡回し、警戒に当たっています。

 違反している者には、135ユーロの罰金が課せられるので、最初はこのシステムが定着するまでには、手惑うこともあるでしょうが、最終的には10月からはPCR検査も有料化されるので、いつまでもPCR検査で凌いでいくことも無理になり、本来のワクチン証明書のQRコード提示が大部分になれば、チェック機能も現在よりはシンプルになっていくことになると思います。

 しかし、このヘルスパスがきっちりと浸透していけば、まあまあ安心だ・・と思っていた私は、恐ろしい事実を発見してしまいました。

 現在、フランスのワクチン接種率は66.66%(2回接種済みは55.58%)まで達しているというのに、新規感染者数、重症患者数、死者数は、昨年の今頃より、ずっと多く、昨年の今頃(8月初旬)の重症患者数は、380人前後だった数字が現在は、1600人超え、死者数も昨年今頃は10人以下まで下がっていた状態だったのに現在は、50人前後が毎日亡くなっています。

 ワクチンをすれば、重症化する確率が低いとはいうものの、ワクチン接種をしていない人が感染し、重症化する確率は、極めて高くなっているということで、現在蔓延しているウィルス(デルタ変異種)が昨年のウィルスよりも数倍威力を増していることを感じずにはいられません。

 そんなことを考えていたら、感染が悪化していると言われていたマルティニークは、3週間の完全ロックダウン!!7月末の段階で夜間外出禁止などの措置が取られていましたが、日中も基本的に外出禁止。生活必需品以外の商店は営業停止。ホテルも閉鎖。半径1km以上の外出には許可証が必要になり、「観光客は帰ってください!」というのですから、大変なことです。

 この地域にバカンスに出ていた人々は、バカンス中断です。

 しかし、感染率の数値は10万人あたりの数値が1,166人と島民の100人に1人以上が感染しているという恐るべき状態で、ロックダウンともなれば、バカンスどころではないのです。

 フランス全体のワクチン接種率が66%なのに比べて、この地域は21%しか達していないため、感染拡大の速度は、もの凄い勢いで進んでいるのです。

 一部の地域とはいえ、バカンス期間中の劇的なロックダウン。

 まだまだ、ヘルスパスで安心している場合ではなさそうです。

 


ヘルスパス フランス マルティニークロックダウン


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2021年8月9日月曜日

東京オリンピックの閉会式 パリではみんなが大熱狂だった!

  


 

 東京オリンピックの開催が決定したのは、2013年のことで、「お・も・て・な・し・OMOTENASHI」が流行語のようになったのが、つい昨日のことのように思い出されます。

 翌年に日本に行った時に、滝川クリステルが行ったフランス語のスピーチを「ちょっと、この人のフランス語には、独特なアクセントがある・・」などとのたまった娘が(私には、わかりませんでしたが・・)日本で集まってくれた親戚のおばちゃんたちの前で「おもてなしスピーチ」を披露してくれたりしたこともありました。

 結果的に、周囲のおばちゃんたちには、フランス語が全く通じず、全くウケませんでしたが、日本に行って、わざわざそんなことをするほど、あの時は、東京で開催されるオリンピックを楽しみにしていました。

 すったもんだの挙句に、オリンピックが始まり、あれよあれよという間に閉会式を迎えた今は、「おもてなし」どころか、海外からどころか国内の観客もシャットアウトされ、選手でさえも、ほぼ選手村から出ることができない、一般の日本国民にとっては「おもてなし」のしようがないオリンピックでした。

 東京オリンピックの開催が決まった後に、その次のオリンピックがパリに決まった時には、私にとっては、私の人生の大部分を占める東京とパリが続いてオリンピック開催という状況に、特にオリンピックが大好きというわけではない私でさえも、なんだかすごくラッキーな感じがしたものです。

 しかし、正直、今回のオリンピックを私は、開会式の模様はライブ放送で見たものの、なんだか競技自体は見そびれ続け、競技の結果を見て、「あ〜今日は、これやっていたのか〜!」などと思うことが続いている間にあっという間に終わってしまいました。

 感染状況が日々悪化していく日本のニュースなども見ていたので、どこか、オリンピックを手放しで楽しめる気がしなかったということもあったと思います。

 閉会式の日時はわかっていたので、閉会式は見ましたが、競技内容をほとんど見ていないこともあったのか、セレモニーも開会式同様、なんとなく纏まりも見どころもなく、晴々しいはずのオリンピックの閉会式は、なんとも不完全燃焼のような感じが拭いきれず、「日本は、本当は、もっとちゃんとできるはずなのに・・」と涙ぐんでしまいました。

 オリンピックを通じて、再びコロナウィルスが、パンデミックが憎いと思いました。

 しかし、閉会式の最後にオリンピック旗が東京都知事からパリ市長の手に渡り、東京もパリもどちらのトップも女性なんだな・・などと眺めていたら、マルセイエーズ(フランス国歌)が流れ出し、2024年のパリオリンピックのプロモーションビデオに切り替わり、美しいパリの景色を見ながら、現金なことに、どこかこちらも私のホームであるような、ちょっと誇らしい気持ちになったことも、不思議な感じでした。

 この閉会式の模様をフランス人のオリンピックのメダリストを中心にトロカデロ広場に設置された巨大スクリーンに集まり熱狂しているフランス人の模様は、もはや東京オリンピックの閉会式というよりは、パリオリンピックの開会式のようでした。

  


 このトロカデロ広場での熱狂ぶりが中継されて、「めっちゃ密!」「同じ世界なのか?」「過去の映像かと思った・・」などの声が日本のネット上に上がっていたようですが、この広場に入場するには、「ヘルスパス」のコントロールがあり、これに参加できたのは、ワクチン接種者、PCR検査陰性の人だけで、コロナ禍でも日常を取り戻しつつあるフランスの象徴的な一場面でもありました。

 終いには、エッフェル塔に向けて、トリコロールカラーの噴煙をはきながら飛行機が飛んでくる様子に「まさか、これ、合成じゃなくて、本当に今、飛んでいるの?」と家の窓から、遠くに見えるエッフェル塔を見たら、本当に飛行機は、トリコロールの飛行機雲を放って飛んでいて、ちょっと感動しました。

 閉会式が終わらないうちに、フランスのTwitterのトレンドのトップは東京オリンピックではなく、#Paris2024になっていて、フランスは、早くも2024年のパリオリンピックに向けて大盛り上がりになっています。

 きっと、閉会式の行われている東京では、パリのように巨大スクリーンを設けて、皆で盛り上がることなどできない状態であろうに、パリでは、ヘルスパスのおかげで、こんな光景に誰も驚くことはありません。

 ヘルスパスに反対している人々は、なぜ、パリでこんなことが可能なのか?考えて欲しいです。そしてまた、日本もせっかくのオリンピックをもっと楽しめる方法があったのではなかったか?と考えてしまいます。

 4年毎に行われるオリンピックも東京オリンピックが一年延期されたことで、パリオリンピックは3年後です。いつまで続くパンデミックかわかりませんが、パリオリンピックの時は、普通に何のわだかまりも不安もなく楽しめるようになっていることを心の底から思います。


東京オリンピック閉会式

パリオリンピック


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2021年8月8日日曜日

4週連続のヘルスパス反対のデモ 第4波の津波 私たちは誰の治療も諦めない

   


 デモが4週連続して続いていることは、フランスでは、不思議なことではありません。

 しかし、今回は、バカンスシーズンで、本来ならば、デモは9月以降に繰り越しになるケースが多い中、やはり「ヘルスパス」「医療従事者へのワクチン接種義務化」への反発は、相当なものです。

 今回は、「ヘルスパス」が正式に決定し、実際にレストラン・カフェ・バー、交通機関等に適用されるようになる直前ということもあり、デモは先週よりもさらに拡大し、フランス全土で23万7千人の人出を記録しました。

 デモは、毎週毎週、規模が拡大し、1回目は11万4千人、2回目16万1千人、3回目20万4千人、そして今回は23万人と参加者は増加しています。

 しかし、数字が拡大しているのは、デモの参加者だけでなく、ワクチン接種の数字も拡大、同時に、感染者数、集中治療室の患者数も増加しています。

 デモに参加する人とは、反対に、マクロン大統領の「ヘルスパス」の発表以来、一時、停滞気味だったフランスのワクチン接種は、また急激に増加し始め、現在のところ、フランス人の65.69%(2回接種済は54.67%)まで上昇しています。

 にもかかわらず、デルタ変異種による感染、第4波は、地域的に「TSUNAMI」(フランスでは頻繁に「TSUNAMI」という言葉がフランス語として一気に波が押し寄せるニュアンスで使われています)を迎えており、特にマルティニーク、グアドループ、レユニオンなどの海外圏を中心にフランス本土のエクサン・プロヴァンス、オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域圏にまで及び始めています。

 フランス全体でも、7月初旬には、2,500人前後であった新規感染者数は、約1ヶ月後の現在は、10倍の25,000人前後、これは、バカンスに出るために検査数が増加していることもあるとは思いますが、実際に感染者が増加していることに違いはありません。

 それでも、ワクチン接種が徐々に増加しているために、感染者が10倍にも膨れ上がっているにもかかわらず、重症患者数は、そこまでの増加には至っていませんが、しかし、この1週間ほどで、集中治療室の患者数は、1.5倍ほどに確実に増加しています。

 津波をもろに迎えている地域では、病床が足りないために、手当が間に合わない若い患者さんが亡くなってしまったりするケースも出てしまっているようですが、そのような事例が起こらないように、地域間の患者の移送も始まっています。

 フランスは、こうしてデモが続いて、国民も黙ってはいませんが、国のトップも「ヘルスパス」「ワクチン接種の必要性」への発信を続けています。

 先日は、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、現在、「TSUNAMI」が襲いかかりつつあるエクサンプロヴァンスの病院を訪問し、オーヴェルヌ・ローヌ・アルプ地域圏が、この「TSUNAMI」の波に乗りかけていることを警告しています。

 「この地域では、この8日間でコロナウィルスのために入院した患者の数は4倍になっています。集中治療室には、以前よりも若い人が増え、その大多数の人はワクチン未接種の人です。この数字は、ワクチン接種の必要性を物語っており、ワクチンを受けたがらない人への警告でもあります。」と述べ、「ヘルスパス」は国民を守るためのものであり、国民を締め付けることが目的のものではないと語っています。

 同時に彼は、「私たちは、誰の治療も諦めない!」と強く宣言しています。

 これを聞いて、すぐに私は、菅首相の「重症患者以外の自宅療養のお願い」を思い浮かべました。

 重症化すれば、後遺症やロングコビットと言われる長期コロナ感染症の危険も高まるわけで、早期の治療は必然です。長期コロナ感染症が増加すれば、おのずとパンデミックも長期化することになります。

 現在、バカンス中のマクロン大統領も、バカンス中というのに、発信を諦めることはありません。今やマクロン大統領は、インスタグラマーのようにバカンス先から、国民からの質問に答えるという形で、毎日のようにインスタグラムやTikTokを利用して、ワクチン接種の必要性、ヘルスパスの必要性を訴え続けています。

 それでも、おそらく8月から9月にかけて、デモが収まることはないと思います。

 しかし、8月のバカンスを終え、新年度が始まり、いよいよコロナウィルスが最も拡大しやすいシーズンに入った時に、一体、現在、上昇し続けている全ての数字(ワクチン接種、デモ、感染者数、重症患者数)の中で、どの数字が突出しているかで、今後のパンデミックがどれだけ続くのかが見えてくるかもしれません。


フランスデモ ヘルスパス反対


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2021年8月7日土曜日

ワクチン接種者にボーナスを支払う会社が登場 企業がワクチン接種を奨励・サポートする動き

   


 

 養豚業界のフランスのトップグループである食肉処理工場クーペル(Breton Cooperl )は、ワクチン接種を受けた従業員に対して200ユーロ(約26,000円)の特別ボーナスを支払うことを発表しました。

 フランスで、従業員に対してワクチン接種を奨励するためのボーナスを提供する第1号の会社です。

 食肉処理工場では、パンデミック開始以来、フランスだけでなく、ドイツ、アメリカなどでも大きなクラスターが発生してきた環境でもあり、この会社では、7,400人の従業員が働いていますが、そのほとんどがブルターニュ地方を拠点とした食肉処理工場に勤務しています。

 この会社の経営陣は、「ワクチン接種を奨励する国民健康予防アプローチに積極的に参加したい」「多くの人にとって、ワクチンを接種するには、仕事、育児などへの負担が必要になるかもしれません。経済的支援を提供することにより、私たちはワクチン接種の負担を軽減することを決定します」と語っています。

 これまでの食肉処理工場でのクラスターの発生実績?から見ても、工場内の温度の問題や仕事の性質上からか、よりウィルスが活発化するリスクが検証されており、このデルタ変異種の感染力を考えると、この先も、かなりリスクの高い場所でもあり、一度、工場内で感染拡大、クラスターが発生した場合を考えれば、たちまち、工場が閉鎖を余儀なくされる危険も高く、従業員に対して、ボーナスを支払ってまでワクチン接種を奨励するのは頷けます。

 もっとも、現在拡大しているデルタデルタ変異種の感染拡大は、真夏に起こっていることであり、現在のウィルスがどの程度、気温の影響を受けるものであるのかは、わかりません。しかし、真夏でも耐性があるウィルスというだけで、これが実際に気温が低下した場合は、感染力がさらに増すということもありえないことでもありません。

 そして、また、このワクチン接種をした人への特別ボーナスについては、所得税がかからない仕組みになっているそうです。

 しかし、労働者の権利や主張にうるさいフランスでは、このボーナスに対しても、法的に可能であるか?との意見も一部、出ています。

 つまり、従業員に対して、ボーナスの支給は、従業員の勤続年数や労働貢献、報酬に応じて換算されるもので、ワクチン接種者とワクチン未接種者を差別し、未接種者を除外するためとも取られかねないボーナスを認めてよいのか?というわけのわからない意見です。しかし、いかにもフランスでは、出てきそうな差別への抗議、平等などを訴える意見でもあります。

 しかし、無料のワクチン接種を受けるだけで、自分自身、周囲の人の安全も保護することができ、その上、ボーナスまでもらえるという会社の提案に大多数の従業員は、好意的に受け取っています。

 すでにアメリカでは、このような企業がワクチン接種を受けることを奨励・サポートし、そのための報酬を支払う方法を開始しているようですが、国だけではなく、企業が従業員の安全を守るという形での支援はフランスでは、このクーベル(食肉処理工場)が先陣を切った形となりました。

 食肉処理工場というある種、特殊な場所ではありますが、どんな形にせよ、企業が職員のワクチン接種をサポートするという動きは、今後もこれに続くところが出てくるかもしれません。


ワクチン接種ボーナス 


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2021年8月6日金曜日

8月9日から、フランス・ヘルスパス本格始動が決定 フランスのヘルスパス詳細

  


 注目されていたヘルスパス(2回のワクチン接種証明書、48時間以内のPCR検査の陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)は、7月25日の段階で、国会と上院で採択されていましたが、昨日、憲法評議会の検証により、正式に8月9日から施行されることになりました。

 当日の憲法評議会の前には、抗議する人が大勢、集まっていましたが、いくらあらがおうと、法律として決定してしまったものなのですが、それでも実際に開始される8月9日直前のデモは、相当なものになりそうです。

 しかし、それ以降は、いくら騒ごうとも、これを尊重しなければ、罰せられることになり、人が集まる場所でのある程度の安全が確保される状態になるわけで、私としては、少し安心して出かけられるようになるので、大歓迎です。

 すでに7月21日の段階で、50人以上集まる文化施設、娯楽施設、スポーツジムなどでは、このヘルスパスがないと入場できなくなっていますが、8月9日からは、レストラン・カフェ・バーなどの飲食店や長距離の交通機関、病院などの医療施設、介護施設、一部のコマーシャルセンターなどに範囲が拡大されます。

【レストラン・カフェ等の飲食店】

 レストラン・カフェ・バーなどのオーナーは、顧客に有効なヘルスパスの提示が義務付けられ、テラス席に関しても同様の措置が求められます。この顧客管理が不十分な場合、オーナー(管理者)は行政当局から正式な通知を受け、最大7日間営業停止になる可能性があります。

 45日間で3回以上違反した場合、マネージャーは1年の懲役と9,000ユーロの罰金が課せられます。また、レストラン・カフェ・バーの従業員については、有効なヘルスパスを取得する義務が8月30日に設定されています。バーやレストランのあるホテル、キャンプ、ホリデークラブ利用の顧客に対してもこのヘルスパスによる管理の対象となります。

【交通機関】

 遠距離移動をする飛行機、電車、バスを利用する場合は、ヘルスパスが必要になります。国内線・国際線の飛行機、TGV、都市間を移動する列車、夜行列車などもこの対象となります。パリ郊外のTERなどの列車は、これには含まれていません。

 このチェックを簡易化するために、SNCF(フランス国鉄)は、9月までにヘルスパスを乗客のチケットに統合することを計画中です。旅行中(交通機関での移動中)、ヘルスパスの不携帯が確認された場合は、135ユーロの罰金が課せられます。また、コロナウィルスの検査で陽性となった場合は、SNCFはチケットの払い戻しをすると発表しています。

【病院・医療施設・介護施設】

 病院、医療施設、介護施設、高齢者施設の全てでヘルスパスが適用されます。患者に同伴する家族、病院への面会、定期治療のためにこれらの場所に行く人々にもヘルスパスが求められます。ただし、救急搬送や救急センターについては、ヘルスパスの対象にはなりません。

 医療従事者、病院勤務の職員は、ワクチン接種が義務付けられ、9月15日までに少なくとも1回目のワクチン接種を済ませておく必要があります。

【ショッピングセンター】

 大規模なショッピングセンターについては、基本的には、ヘルスパスの対象とはなっていません。しかし、ショッピングセンターでのヘルスパスの扱いについては、政府は地方自治体の判断に任せているので、地域によっては、感染状況により、知事の判断で、ショッピングセンターでのヘルスパスの管理を課すことがあります。


 すでに一足先にヘルスパスの提示が求められている映画館などでは、このヘルスパス提示が義務付けられて以来、顧客が激減したという例もあり、レストランなどの飲食店等でも、顧客が減少するのではないかと心配しているオーナーも少なくありません。

 また、このヘルスパスのために、PCR検査場が大混雑することも予想され、検査を行っている薬局などでも、この検査への対応にも追われています。必然的に検査数が激増すれば、新規感染者数もうなぎのぼりになるかもしれません。

 一番、厄介なのは、ヘルスパスの項目の一つである「6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書」を獲得するために、「ワクチンパーティー」などという、わざと陽性者と陰性者が集まって、コロナウィルスに感染してヘルスパスを獲得しようとする集まりなども行われていて、本来のワクチン接種拡大とは、真逆の動きをしている若者たちも登場しています。

 また、現在のところは、ワクチン接種証明書は、身分証明書の提示を求められていないこともあり、ワクチン接種証明書の貸し借り、また売買なども登場しています。

 どんな状況においても、隙間を縫うように、反抗して、違反を続ける人はいますが、とりあえず、ウィルスと共存していくための具体的な第一歩を踏み出したフランス、今後、さらに詳細な取り決めや、修正、範囲の拡大などがあるとは思いますが、とにかくロックダウンせずに、パンデミックを乗り切れる道を進み出したことは、喜ばしいことに違いありません。


フランスのヘルスパス


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2021年8月5日木曜日

フランスと日本のコロナウィルスの感染状況・対策の違い

   


 フランス暮らしも長くなって、色々なトラブルや、物事がスムーズに運ばないことも多い生活で、大抵のことは、「ここはフランスなんだから、仕方ないな・・」と諦めて腹を立てないようにするようにしてきました。

 逆に言えば、「やっぱり日本はスゴいんだな・・」と海外生活をして、あらためて気付くことも多かったし、今もそのように思うことも沢山あります。

 しかし、このところ、パンデミックが起こって以来、殊に世界でワクチン接種が始まり、その上、オリンピックという、とてつもない重荷を背負ってしまった日本の様子を見ていると、なんだか微妙です。

 開発されたばかりの新しいワクチンに対して、慎重に検討を重ねていたのもわからないではありませんが、オリンピックを開催するのならば、せめて、オリンピック開催を理由に早くにワクチン確保する術はあったであろうし、多くの国民が反対する中、このようにオリンピックを結局は、強行開催するならば、せめて、それなりの準備(ワクチン接種の拡大)をして、オリンピックに臨むべきであったはずです。

 オリンピックは、海外から、多くの外国人が入国するだけでなく、結果的に日本国民も「オリンピックだってやってるんだから・・」と若干、開放モードになり、もうやってられない!となっている人もいるかもしれません。

 これまでフランスのようなロックダウンをせずに、あれだけ感染を抑えられてきた日本が、コロナウィルス史上最悪の感染状態(日本での)に陥ってしまっているのは、デルタ変異種の威力もあるでしょうが、これまで、すでに長い間、対策をとって、改善すべき点を(感染者の受け入れる医療体制の強化など)放置し、挙句の果てには、菅首相が「重症患者でなければ、自宅待機」などと言い出すとは・・本当に酷すぎる話です。

 真面目に我慢強く行動制限していた日本国民をいいことに、日本政府の言い続ける「ご理解とご協力」ばかりに頼って感染を抑えられてきたことにも限界があります。

 かえすがえすもワクチンの開始が遅れたことは、残念ではありますが、遅くに開始したことは、百歩譲って、世界のワクチン接種の状況や方法を参考にできるという利点もあったはずなのに、予約方法なども多くの人の手を介し、また、ワクチン接種をした証明書とワクチンパスポートを別物にして、書類申請して作らなければならないという妙なやり方をして、これだけ、ワクチン接種を急いでいる状況で、なぜ、そのような手間暇がかかる方法をを取るのか?まるで意味がわかりません。

 フランスは、反対の声も上がりながらも、ヘルスパスの施行でワクチン接種をしていない人に行動制限をかける方向に進んでいるので、感染者数も増加はしていますが、これだけ好き放題にバカンスに出かけているフランスでも、これでも、ある程度は、感染を抑えられているのだと思います。

 感染者は増加しても重症患者数の増加は、第3波ほどスピードは遅く、ワクチン接種をなんとか進めることを最大目標とし、現在、フランスのコロナウィルス感染に関するサイト(国が作っている感染者追跡アプリ+コロナ関係情報+ヘルスパス)を開くと、まず一番に出てくるのは、感染者数ではなく、ワクチン接種がどれだけ進んだかというパーセンテージが出てきます。

 そして、自分の住んでいる地域と国全体の新規感染者数、集中治療室の占拠率がそれぞれ表示されます。

 日本は、特に地域ごとに対応しているということもあるのでしょうが、まず東京などの大都市の感染者数を追い続け、国全体の数字はわかりにくくなっています。

 一度、動き始めれば、コツコツとこなしていくことは、さすがの日本、1日120〜130万件のワクチン接種が進んでいるようですが、なんといってもフランスの倍も人口の多い日本でワクチン接種率が飛躍的に上昇していくのは、これまたなかなか厳しいものです。

 ましてや、現在の日本の感染増加のスピードにワクチン接種のスピードが追いついていく前にさらに悪化していけば、被害はさらに甚大なものになります。

 しかし、日本国民一人一人の感染対策の取り方は、やはり、フランスなどとは、比べ物にならないほど、優れていると思うので、結局は、国民の方々の「ご理解とご協力」に大きく依存している形になると思います。

 もう少し、効率的な方法をワクチン接種の先陣を切っていた国々を参考にして、上手く始動していれば、日本人の真面目な国民性と合わされば、鬼に金棒だったはずなのに、ひたすら苦悩している様子の日本には、憤りを感じます。

 このバカンスシーズンのフランス人のバカンスを満喫する様子を見るにつけ、彼らは実に楽しそうで、「ご理解とご協力」どころか、ヘルスパスに反対する人は、警察が催涙ガスや放水車を使って出動しなければならないほど騒ぎまくりです。

 我慢に我慢を重ねて耐えている日本人は、オリンピックに何百億円も使いながら、未だに満足にPCR検査もできずに、しかも有料、オリンピックのためにさらに自粛を強いられる生活というどうにも理解し難い状況に疑問を感じるのを通り越しています。

 オリンピックが終わっても、さらにパラリンピックが続き、どの国でも感染悪化が深刻になっている中、日本の状況は、さらに心配が続きます。

 今後もまだまだ長いこと戦っていかなければならないパンデミックに、ワクチンが進んだら進んだで、現在、フランスで揉めているヘルスパスのような問題が生じます。

 これまで私にとって、日本はいつも、誇らしい国であったので、このパンデミック・オリンピック対応を目の当たりにすると、「どうなっちゃったの?日本?」と思わずにはいられません。

 もともと何かあるたびに、大騒ぎして反発するフランス人を導くフランス政府は、もともと国民の「ご理解やご協力」に頼ることは考えておらず、数回のロックダウンに罰則・罰金まで加えて締め付けつつ、援助はかなり手厚く実行し、国民をなだめすかしながら、ここまで進んできましたが、日本は日本で、日本人の真面目さや我慢強さを政府に利用されるという最悪なシナリオにため息も出ません。

 海外にいると、「日本人は黙って我慢するからいけない!」と外国人から言われることも多く、日本人としては、それはそれで美徳と感じる部分もありながら、海外では、黙って我慢ばかりしていては、生きていけないので、海外モードに切り替えて暮らしています。

 しかし、日本で、それを同じ日本人、しかも国を動かす政府に利用される構図は、外から見ていても、我慢ならないことなのです。

 マクロン大統領は、高齢者とリスクの高い人に対しての3回目のワクチン接種を年度初め(9月)から開始することを発表しています。


フランスと日本


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