2021年10月19日火曜日

ナイトクラブでのコロナウィルス感染状況の実験に希望者殺到

 


 17日、パリではANRS(Agence National de recherches sur le sida et les hépatites virales・エイズとウイルス性肝炎に関する国立研究機関)の支援により、AP-HP(Assistance Publique Hôpitaux de Paris)がパリの2ヶ所のナイトクラブ・ディスコでのコロナウィルス感染状況の実験を行いました。

 すでにナイトクラブは、ヘルスパスの提示義務ならびに通常の75%入場者制限という感染対策のもとに再開されることが許可されていますが、この閉鎖空間でのリスクがどの程度リスクを伴うものであるのか、また、この制限の緩和の可能性を検証する実験です。

 つまり、この実験は、閉鎖された場所でワクチン接種された者同士の間で、どの程度の感染のリスクがあるかどうかを科学的に証明するものです。

 以前に同様の実験がコンサート会場で行われたことがありましたが、今回はさらに、リスクが高く危険視されている場所・ナイトクラブでの実験です。

 この実験には、18歳から49歳までの2回のワクチン接種済みの2,200人が午後4時から11時という時間帯に参加しましたが、すでに、さらなる開放を待ちきれない若者たちでこの実験への参加をめぐって抽選が必要になるほどの希望者が集まりました。

 実験の行われたナイトクラブでは、あくまでも通常の状況に近い形で営業され、あえてマスクは着用せず、ソーシャルディスタンスを取ることもありません。コロナ以前のような環境でダンスフロアでは抱き合って踊る人、フロアからそう遠くないソファでは、ドリンクを飲み楽しみます。

 参加者は、到着時に唾液のサンプルを提出し、このサンプルは一週間後に提出する必要のある別のサンプルと比較されます。そして、ナイトクラブ内には3つの空気センサーが設置され、参加者のウィルスと空中のウィルスを照合し、クラブ内で人々が感染しているかどうかを検証します。

 同時に実験はナイトクラブでの実験に参加したグループとともに、ナイトクラブには行かなかったグループにも協力を求め、2つのグループ間で感染した人々の症例数を比較することになっています。

 この実験の主催者は、実験に臨むにあたり、「ワクチン接種を受けた人々の間では、ナイトクラブのような閉鎖され、過密な場所は危険因子はない」という仮説をたてています。

 残念ながら、この結果が明らかになるのは年末ということですが、この実験の結果が良好で、ナイトクラブでの感染のリスクが高くない場合は、現在のナイトクラブ営業の制限の見直しが可能になります。

 この実験を開催した研究者たちは、「この研究は政府と専門家に、最良の状態でのナイトクラブの長期的な営業を確実にするための科学的手段に基づいた具体的な要素を提供できるものになる」と保証しています。

 しかしながら、現在のフランスの感染状況は、ナイトクラブはさておいても、これまで減少を続けてきた感染者数が僅かずつではありますが、上昇傾向に転じている状態で、どうにも楽観的には考えづらい状況にあります。

 以前にナイトクラブの営業が許可されてまもない7月の段階でボルドーのナイトクラブでクラスターが発生したこともありました。あの時点から比べるとワクチン接種率は相当、上昇しているので、やはりワクチン接種がどの程度、このナイトクラブという閉鎖で密な空間においてもどの程度の効果があるものかということがこの実験により解明されます。

 それでも、少しでも日常を取り戻すために、科学的な検証を続けることは、具体的かつ現実的な対策を取ることが可能になり、ひたすら制限ばかりの環境で我慢をするよりは、どちらの結果になったとしても、皆が納得できるものになると思われます。

 しかし、この実験に参加したい人を抽選で選ばなければならないほど希望者がいるとは、そちらの方が私にとっては、驚きでもあったのです。


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2021年10月18日月曜日

意外に注目されないフランスのマスタードの魅力

   

マイーユのラベルを彷彿とさせる黒を基調とした洒落た店構え


 我が家のフランス人の夫は、なぜかマヨネーズを目の敵のようにしています。まぁ、体型上、ダイエットの敵であることは、言うまでもありませんが、それにしても・・と思うほど、なぜか敵視しています。

 私自身はマヨネーズは大好きなのですが、フランスのマヨネーズは概して酸味が足りず、今ひとつこれ!というマヨネーズがなく、どうにか辿り着いたマヨネーズはマスタード風味のマヨネーズ(Mayonnaise à la moutarde)というものでした。

 体型を気にしてマヨネーズを使わないにしては、他の食べ物(チーズやバターなどなど)の食べ方を見ていると、非常に矛盾を感じるのですが、食事をする上であまり必要を感じていない上にそんなものでカロリーを摂取することが許せないのかも知れません。

 その代わりと言ってはなんですが、彼はマスタードを非常に良く使います。肉や魚にはもちろんのこと、茹で野菜などにも欠かすことはありません。

 そんな彼と暮らし始めた頃は、食卓には必ずマスタードが置かれ、何にでもマスタードをつけるのを見て、「この人、変わってるな〜」くらいに思っていたのですが、よくよくフランスでの生活に慣れていくと、ビストロやカフェなどの食事の際には、マスタードが登場することがとても多く、フランス人にとって、マスタードは日本のお醤油やお味噌などのような国民的な存在であることに気付かされました。

  

フランスのスーパーのマスタードコーナー

 そうしてマスタードを食する機会が増えてみると、マスタードというものは、なかなかに味わい深いもので、日本のからしとも違い、独特な風味と酸味があり、なるほど色々な食材に合わせることができる優れた調味料であるとも言えます。

 あらためて、スーパーマーケットなどでマスタードのコーナーを見ても、そこには、膨大な種類のマスタードがあり、また国民食でもあるだけあって、比較的、安価でもあります。

 フランス人のマスタードの年間消費量は一人当たり、年間1キロとも言われ、やはりその人気・・というより彼らの食生活に根付いている底力を窺い知る事ができます。

 また、フランス料理を作る時などにも、マスタードは重用され、簡単に済ませたければ、マスタードに生クリームを加えるだけで、簡単なフランス料理のソースらしくなります。

 個人的には、エシャロットのみじん切りをバターで炒め、マスタードと生クリームを混ぜてちょっとブランデーを垂らしたりしたマスタードソースが気に入っていますが、これを手間を省いて、一気に他の食材と合わせてしまいます。

       


 私が特に気に入っているのは、フライパンにバターを敷いて、フライパンの半分で帆立貝をソテーし、残りの半分でみじん切りにしたエシャロットを炒めて、マスタードと生クリームをエシャロットと合わせて、ひと煮立ちしたら、サッと帆立貝と合わせて、ブランデーを垂らして香りづけをするという簡単で美味しい一品です。

 これは、他の肉や魚などにも応用することができ、なんちゃってフランス料理には、やはりマスタードは欠かせない存在でもあります。また、シチューなどの煮込み料理にも隠し味にマスタードを少し加えます。

 またサラダのドレッシングを作るときにもマスタードは欠かせません。シンプルにオリーブオイルとマスタード、お酢を泡立て器で混ぜ、塩・胡椒で味を整え、我が家の場合はそれにちょっとガーリックパウダーやすりおろした玉ねぎを加えます。シンプルで簡単ですが、飽きの来ない安定の美味しさです。

 恐らく、日本で一番有名なフランスのマスタードはマイーユのものではないかと思われますが、このマイーユのマスタードでさえ、フランスのスーパーマーケットでは、シンプルなものなら、一瓶2ユーロ前後=200円程度で買うことができるので、日本へのお土産としても悪くないかも知れません。(日本では高いみたい・・)

 中でも私のお気に入りは、バルサミコ入りのマスタードですが、他にもトリュフ入りのものやハーブを使ったものやパルメザンを使ったもの、蜂蜜、胡椒など様々なフレーバーのものがあります。

  

その場でマスタードを瓶に詰めてくれます


 マイーユの専門店はパリのマドレーヌ広場の一角にありますが、ここではすでに瓶詰めされたたくさんの種類のマスタードの他、マヨネーズ、ドレッシング、ピクルスなども買うことができますが、せっかくマイーユのお店に行くなら、瓶を買って、その場でマスタードを瓶詰めにしてもらうこともできるので、他では手に入らないものなので、おススメです。

 こうして考えてみると、マスタードはいつの間にか我が家の食卓にもしっかり定着しているもので、年間1キロとまではいかないものの、かなりの量を消費していることは明らかです。

 日本には、他に美味しい調味料がたくさんあり、マスタードは、日本の食卓には登場しないかも知れませんが、ひとたびマスタードの魅力に気付いたら、なかなか奥深い調味料の一つでもあります。

 フランスにいらっしゃる機会があれば、お食事の際は、ぜひ、マスタードに注目してみれば、その魅力に取り憑かれるかもしれません。


<Maille Paris>  6 Place de la Madeleine 75008 Paris


フランスのマスタード


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2021年10月17日日曜日

黄色いベスト運動シーズン2 黄色いベスト運動再開の動き

   


 フランスで黄色いベスト運動(Gilets Jaunes)が始まったのは、2018年11月のことでした。そもそもは、燃料税の増税に端を発したデモであったために、車に関連する蛍光色のベスト(フランスでは車内に蛍光色のベストを常備することが法律で義務付けられています)が安価で入手が容易であるために、この抗議運動のシンボルとして選ばれ、以来、燃料税のみならず、「生活費の高騰」、「政府の税制改革による中産階級への圧迫」、「富裕層に対する連帯税の再導入」さらには、「マクロン大統領の辞任」までもを要求するデモに発展しています。

 2018年に始まった黄色いベスト運動は、度を重ねるごとに過熱していき、街を破壊する行為が続き、一時は土曜日はまともな日常生活が送ることができないほどに、土曜日になるとデモの予定ルートになっている通りの店舗は破壊行動を恐れて、土曜日にはショーウィンドーにバリケードを張って閉店することを余儀なくされ、この黄色いベストのために、観光客も激減、経済状態に影響を及ぼすほどにヒートアップしていました。

 これはかなり長い期間続き、第二次世界大戦以後に起こったフランスのデモの中でも最も長い期間に渡るものと言われています。

 この黄色いベストがストップしたのは、2020年3月のロックダウンで、(ロックダウンになる寸前までデモは続いていました)国民はデモどころか、外出もままならなくなり、黄色いベストどころではない状況がデモを鎮めさせたのでした。

 その後、感染が少しずつ減少し、最初のロックダウンが解除されると、様々な外出制限は残っていた段階から、また別の問題が浮上し、「人種差別問題」、「グローバルセキュリティー法反対」、「年金改革反対」、「ヘルスパス反対」などのデモが途切れることなく行われ続けていましたが、2018年の黄色いベスト運動でのデモ隊の暴徒化を教訓に政府のデモに対する警戒と対策は非常に強いものになり、当時のような被害には及ぶことはありませんでした。

 本来?の「黄色いベスト運動」のデモ隊は、この3年間は、この間に行われていたデモに乗っかる形でちらほらと姿を見せる程度でした。

 しかし、3年後の現在、燃料価格の上昇から、「黄色いベスト・シーズン2(#GiletsjauneSaison2)」として、再び、デモ隊を集結する動きが高まり始めています。

 燃料価格の高騰は、フランスだけではないものの、現在、フランスのガソリン価格は1リットル1.63ユーロ(約215円)という史上最高値に達し、この「黄色いベスト・シーズン2」の再集結呼びかけの引き金になっています。

 このパンデミックにより、経済的に痛手を被った中産階級の怒りは、この3年間の間にさらに膨れ上がり、燃料価格の高騰があらゆる物価の高騰に繋がり、ここ数ヶ月の間にガスや電気の価格も相次いで上昇し、これに伴う商品の値上げも続いています。

 この底知れない国民の燻った怒りに対して、政府は国民に対する援助メカニズムへの扉は閉ざさないことを示し、政府のスポークスマン・ガブリエル・アタル氏は、「燃料価格の上昇が続く場合は、ガスと電気の場合と同様に(ガス・電気料金の上昇に伴い、これらの減税措置を行った)保護措置を検討する」と発表しました。

 「黄色いベスト運動シーズン2」を呼びかけている人々は、「黄色いベスト運動スタートから3年、我々は、新たな長期間にわたる活動を計画しており、必要に応じて、100週間は継続する。私たちは全く疲れてはいない」と、政府が広範囲にわたる社会改革を開始し、「市民への権力」を回復することを期待していると語っています。

 燃料価格の高騰はパンデミックが原因の一端となっているのですが、その肝心なパンデミックさえも終息していない段階で、再び、黄色いベスト運動の再開は感染対策な観点からも、経済的な観点からも、抑えなければならない火種です。

 フランス人にとって、デモは息をするのと同じようなもので、一種の発散の場、時にはレクリエーションではないかと思われる節もあるのですが、過熱すれば、興奮を抑えられない人々。なんとか、政府の対応でこの火種を燻っているうちに消火してくれることを切に願っています。


黄色いベスト運動シーズン2


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2021年10月16日土曜日

3回目のワクチンを拒否するとヘルスパスが無効になるかもしれない

 


 ヘルスパスの適用から一気にワクチン接種率が上昇したフランス。このおかげで、現在、感染状況も落ち着きを見せ、日常生活を取り戻しつつも安定した状況を保っています。

 しかし、1日の新規感染者数は5,000人前後から下がることはなく、引き続きウィルスが確実に存在し続けていることを示しています。そんなフランスの次なる課題は、2回目のワクチン接種から6ヶ月経過すると、その効果が減少することが多くの専門家の研究で明らかにされている今、3回目のワクチン接種をどのように浸透させていくかにあるようです。

 現在のところ、フランスでは、9月から、2回目のワクチン接種が終了して6ヶ月以上経過した65歳以上の人(特に80歳以上を優先)、重症化のリスクの高い人(腎不全、糖尿病、肥満、癌患者、心不全、高血圧、慢性肝疾患、脳卒中、重度の免疫不全などの病歴のある人)に対しては、3回目のワクチン接種が推奨され、すでに開始されています。

 今後、2回のワクチン接種後6ヶ月後に急激に効果が減少し始めると言われている現象がどの程度、感染状況、また、感染悪化の状況に影響してくるかは未知の部分であるために、3回目のワクチン接種をどうやって拡大していくか、また、どの程度、必要性があるかを国民に納得させていくのは容易なことではありません。

 先日、労働相のエリザベット・ボルネがインタビューを受け、「最近の研究ではコロナウィルスに対する免疫がワクチン2回目の投与から6ヶ月後に低下することが示されています。」「したがって、3回目の投与を行うことは絶対に必要です。」と述べています。

 また、この必要性に伴い、「3回目のワクチン接種を拒否した場合は、それ以前のヘルスパスの撤回を検討している」「これは現段階では決定事項ではないものの、あくまでもフランス国民を保護するための重要な検討事項」と述べています。

 「今日、私たちが幸いにも恩恵を受けているワクチンによる保護を継続させることは必要不可欠である」としています。

 「ヘルスパス」の起用の発表も、かなり衝撃的で、強硬的なもので、当初は少なからず反発もありましたが、結果が伴ってきたために、今では国民の大半はこの「ヘルスパス」を受け入れています。

 それが「3回目のワクチン接種をしなければ、これまでのヘルスパスが無効になる」というのもまた、なかなか強硬な手段で反発を生みそうな気もします。

 しかし、これまでヘルスパスによって、ある程度、保護された空間であった場所が、6ヶ月以上経過したワクチンの効果が薄れてきている人も同じ空間にいるということは、ヘルスパスの意味をなさなくなってしまうことになります。

 ヘルスパスの起用は国民をワクチン接種に追い立てる目的とともに、人の集う空間を少しでも保護された場所に保ち、相互に人々を保護する役割も果たしてきたのです。それが6ヶ月以上経過し、ワクチンによる保護が薄れてきた人が混ざってしまうのでは、ヘルスパスの意味がなくなってしまうのです。

 結局、ヘルスパスにより、国民を保護し続けることを考えれば、少々、残酷な気もしますが、6ヶ月以降経過したヘルスパスは無効とするというのは至極、真っ当なことなのかもしれません。

 数度にわたるロックダウン(完全ロックダウンからレストランや店舗の営業停止、外出行動範囲、時間制限など)やヘルスパス、医療従事者のワクチン接種義務化など、フランスはこれまで、感染対策に関しては、かなり強硬な手段を取り続けてきました。

 しかし、フランスは、かなり強硬な手段を取らなければ、統制の取れない国であることは、これまでの感染の経緯を見ても明らかで、彼らは危機管理能力、衛生観念、感染対策の基本的な能力が極めて低い上に、ある程度の個人個人の良識に頼ることが可能な日本と違って、自主的な自粛などはあり得ない話で、強硬的な規則がなければ、感染を抑えることは不可能なのです。

 2回のワクチン接種率が上昇したことを喜んでばかりはおられず、今度は、このワクチン接種の効力が薄れ始めていく対応をしていかなければならないのです。これを放置すれば、また、ふりだしに戻り、さらなる混乱が生じます。

 依然として、コロナウィルス対応は綱渡り状態です。

 ようやく落ち着き始めたと思ったら、今度は3回目のワクチン接種問題とそれに伴うヘルスパス問題。コロナウィルスが完全に終息するか、さらに長期に効力が持続するワクチンができない限り、永遠にこれが続くと思うとうんざりしますが、これも致し方ありません。

 私は2回目のワクチン接種が終了したのが、6月の初めだったので、このままでいくと、3回目のワクチン接種は12月になりそうです。


3回目のワクチン接種 ヘルスパス無効


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2021年10月15日金曜日

フランスでは知らない人に話しかけられる確率が高い私

  


 フランス人、特にパリジャン・パリジェンヌはツンとしていて、お高くとまっているイメージがあるかもしれません。たしかにそういう感じの人もいるにはいますし、同じフランスの中のフランス人同士でも、パリジェンヌ・パリジャンは感じが悪いと評判が悪いのも事実です。

 しかし、実際に生活していると、そうでない人も多く、あくまで私は日本(東京)と比べてのことですが、パリでは、知らない人に話しかけられることが多いのです。

 最近は、Googleのおかげで随分と減りましたが、私は実によく道を聞かれることが多かったのですが、実のところは、私は、大変な方向音痴で、特別よく知っている場所は別として、方向感覚がなく、道を説明するということが大変苦手なのです。

 最初は、「外国人の私になぜ道を聞くかな?」などと思ったりもしたのですが、フランスには、そもそも移民も多く、外国人が普通に生活しているので、外国人だからといって、よそ者だというような感覚が彼らには、あまりないのです。(もっと、別の意味での区別はあるとは思いますが・・)

 道を尋ねられやすいタイプの人というのがあるそうですが、どうやら、私はその一人のようです。

 しかし、私は、日本ではあまり知らない人に話しかけられるということはないし、日本で道を聞かれたこともほとんどありません。

 道を聞かれるだけでなく、フランスでは知らない人によく話しかけられます。

 例えば、買い物をしていて、知らないおばさんから、「それ、どうやって食べるの? 美味しい?」とか、逆に聞いてもいないのに、「これいいわよ!」と言われたり、「これは気をつけなきゃダメよ!」とか言われたりします。

 この間もバターを見ていたら、「このバターとこっちのバターはどう違うの?」(フランス人が私にバターについて聞くか?と思ったけど・・)とか、すれ違った女性に、「そのスカーフ素敵ね!どこで買ったの?」とか、骨折して矯正用の靴を履いていた時も、「うわぁ〜私と一緒!どうしたの?」とか、先日もバス停でバスを待っていたら、青年から「バス・・もうすぐ来るはずなんですけどね・・この間もね・・」などと話しかけられて、ナンパでもなかろうに・・と思ったりもしました。

 薬局で顔見知りの店員さんと話していたら、別の見知らぬ人が会話に加わってきて、話に花が咲いたり、なかなか知らない人と話す機会は少なくありません。だからと言って、それはその場限りのことなのですが、とにかく、フランス人が話好きなことに間違いはありません。

 考えてみれば、バスに乗ったりする時も、運転手さんに「ボンジュール!」と挨拶している人も少なくないし、運転手さんの方から「ボンジュール!」と言われることもあります。知らないバスの運転手さんにも気軽に挨拶する、そんな文化なのです。

 うちの母は日本でも、わりと気軽に誰とでも話をする人で、私が若かった頃には、そんな母を「ママは全くおしゃべりなんだから・・」と、ちょっと恥ずかしいような気持ちでいたのですが、まさに、私は自ら望んでというわけでもないにもかかわらず、これではまるで母のようだと現在の自分に苦笑してしまいます。

 だからと言って、私が日本に行った時には、やはり、知らない人から話しかけられることはないので、やはり文化の違いなのか?とも思います。

 自分自身がフランス語や英語を話している時と、日本語を話している時は、無意識のうちに何か自分の中で違うスイッチが入る気がすることもあります。

 それでも、やはり、フランス人が知らない人にわりと気安く話しかけることは間違いないのですが、しかし、それも誰にでもというわけでもなさそうなのです。

 先日、家のプリンターのインクが切れて、娘がインクを買いに行った時、「じゃあ、ついでにこの空っぽになったインクのボックス捨ててきて!」と頼んだのです。空のインクのボックスはどこにでも捨てられるゴミではないので、売っている場所なら専用のゴミ箱があるためです。

 娘は、その空のインクのボックスを持ってゴミ箱を探してウロウロ・・ようやくゴミ箱を見つけて捨てに行ったら、近くにいた警備のおじさんが、「ゴミ箱、探しているみたいだったから、場所を教えてあげようかと思ったけど、怖くて話しかけられなかった・・」と。

 イカつい警備のおじさんに怖がられる娘には、ちょっとウケましたが、どうやら、だれも彼もが誰にでも気安く話しかけるわけでもなさそうです。

 イカつい警備のおじさんが意外とシャイだったのか?はたまた娘がよっぽど怖い顔して歩いていたのか? 

 黙って歩いているだけで、話好きなフランス人を怖がらせる娘と、やたらと知らない人から話しかけられる母親、妙な親子です。


フランス人は話好き

 

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2021年10月14日木曜日

ワクチン未接種の医療従事者は医療従事者全体の0.6%

   


 医療従事者のワクチン接種が正式に義務化された9月15日から約1ヶ月が経過しました。

 7月からヘルスパスの起用が開始され、食事に行くにも、美術館や映画、コンサート、長距離の旅行などなど、フランスではヘルスパスがないと身動きが取れない状態になり、「義務化」という言葉は使わないものの、ワクチン接種はほぼ義務化されたようなものでしたが、医療従事者はきっぱりとワクチン接種は義務化という言葉を使って義務化されました。

 この医療従事者のワクチン接種義務化はかなり厳しい措置を伴うもので、ワクチン接種をしないと給与が支払われない状態になるというもので、ここでは、解雇という言葉は使わないものの、ワクチン接種を拒否している医療従事者は停職処分となっています。

 7月にこの法令が発表された時点では医療従事者の中でも介護の仕事に携わる人のワクチン接種率は60%程度でしたが、現在は、介護者も含めた医療従事者のワクチン接種率は99.4%にまで上昇しており、ワクチン接種をしていない者は医療従事者全体の0.6%だけとなりました。

 頑なにワクチン接種を拒否して退職までに至った者は全体の0.1%程度でかなり例外的なケースのようです。

 当初、この医療従事者のワクチン接種義務化=ワクチン接種をしていなければ仕事ができなくなる状況に反発して、多くの医療従事者が停職になったり、退職をしてしまい、医療体制に弊害が起こるのではないかとの懸念もされていましたが、これまでに病院ないし介護施設等が閉鎖されたり、業務が滞ってしまったケースはなく、結果的にここまでの数字まで上昇してきたので、今後、医療従事者のワクチン接種義務化について、これ以上は問題になることもないと思われます。

 それでも、ワクチン接種をこの段階にまで至って未だに拒否し続けている0.6%の医療従事者は全体の割合としては、少ないものの、実際の人数に換算すると約15,000人ほどの人数でもあり、停職処分にまでなっても拒否し続ける人をどう説得するのでしょうか?

 そして、彼らは拒否し続けて仕事もできずに、どうやって生きていくのでしょうか?

 大勢に影響はないものの人道的にどうなのか? 当初は、実際に医療従事者とてワクチン接種を受けるかどうかの選択の権利はあるべきだ!などの声が大きく上がっていました。

 しかし、個人の意思を尊重するべきだという声が猛然と上がり続けると思いきや、これらの依然としてワクチン接種を拒否している医療従事者がインタビューに答えていたりすると、かなり露骨に冷たい態度を示すフランス人が多いのにも、ちょっと意外な気がしたりもします。

 この背景には、医療従事者にかかわらず、国民全体の85.5%までワクチン接種率が上がっている状況があり、「医療従事者はワクチン接種を受けるのは当たり前だ!」という認識につながっているようです。

 時が経つにつれて、ワクチンに対する世論も変化してきていることを感じます。

 今回、ワクチン接種拡大のためにフランス政府が取った政策は、ヘルスパス(ワクチン接種2回接種証明書、72時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)がないと多くの場所にアクセスできないという法令や、医療従事者のワクチン接種義務化=ワクチン接種をしなければ停職(給料が支払われない)という、かなりのインパクトのあるもので、日頃のフランスならば、もっともっと反発を生み、暴動でも起こりかねないほどの強硬手段でした。

 しかし、パンデミック・数回にわたるロックダウンから、国民も、いつまでの感染の波とロックダウンを繰り返すことはできないという危機感から、どうにか事は政府の思いどおりになり、なんとか結果も伴ってきました。

 フランス政府は、0.6%のワクチン未接種の医療従事者への説得とともに、医療従事者に対しては、早めにワクチン接種を開始し始めたこともあり、3回目のワクチン接種を推奨し始めました。

 現在のところ、医療従事者への3回目のワクチン接種に関しては、義務化にするかどうかは決定されていません。


医療従事者ワクチン接種義務化


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2021年10月13日水曜日

フランス2022年1月から野菜や果物のプラスチック包装禁止

  


 フランス政府は、2022年から、現在使用されている野菜や果物のプラスチック包装を禁止することを発表しました。

 この法令により、フランスでは、ねぎ、ズッキーニ、なす、ピーマン、きゅうり、トマト、カリフラワー、ジャガイモ、人参、玉ねぎ、かぶ、りんご、梨、バナナ、オレンジ、キウィ、みかん、グレープフルーツ、メロン、パイナップル、マンゴー、柿などの青果はプラスチックの包装で販売することはできなくなります。 

 ただし、例外として、1.5㎏を超える容量の青果については、引き続きプラスチック包装で販売が可能であり、まとめて販売すると劣化リスクが高い完全に熟した果実、春頃収穫される赤い果実(いちごなど)も例外に加えられています。

 罰則・罰金がなければ規則ではないようなフランスならではで、この義務を順守しなかった場合、罰金は15,000ユーロ、1日当たり1,500ユーロの罰金が課せられる可能性があります。

 店舗にもよりますが、現在、果物と野菜の約37%がプラスチックのパッケージで販売されており、これはプラスチック消費量の45.5%にあたります。

 日頃、買い物をしていても、フランスではもともとスーパーマーケットなどの野菜なども計り売りが基本で、自分で選んだ分量の野菜を袋に入れて、専用の計りにかけて、出てくる金額とバーコードが表示されたステッカーを袋に貼り付けて買い物をするので、そこまでプラスチックを使っているとは思ってもみませんでした。

 しかし、考えてみると、自分で必要な分だけ自分で選んで買い物をする野菜や果物の他には、マッシュルームやバナナ、比較的、安くまとめて売るために、プラスチックを使用した包装もたしかにあるのです。それだけ、プラスチックについて無意識に利用していたことを今さらのように思い知らされます。

 日本へ行くと、野菜などもプラスチックで適量に仕分けされ、買い物も簡単に済むのに・・などと思っていた私は、自分の環境問題への認識不足を感じます。

 もっとも、日本はゴミの収集もフランスとは比べ物にならないくらい徹底しているので、食料品がパッケージされていたトレイなどもきれいに洗って回収されているので、日本はまた別のアプローチの仕方なのかも・・と思ったりもしますが、フランスのゴミ収集・処理の現状を見れば、日本のような回収作業はほぼ不可能なので、こういったかなり強行的な手段に出るのも致し方ないのかもしれません。

 この禁止は、使い捨てプラスチックを排除するというフランスとヨーロッパの方針の一環で、政府はこの試みにより、年間10億以上の不要なプラスチックの削減に役立つことになると見積もっています。

 フランスでは、レジ袋というものもなくなって久しく、使い捨てのプラスチック製の食器や綿棒やストローなど、いくつかの商品は販売できなくなりました。

 しかし、この措置は果物や野菜の包装に完全に終止符を打つものではありません。包装は、プラスチックに代わる解決策として、木製のものや段ボールの使用、また野菜や果物の貯蔵方法についても検討の余地があるとしています。

 それにしても、ここ1〜2年でのスーパーマーケットでの環境問題に対応する規制は、次から次へと進み、レジ袋がなくなって以来、野菜などの計り売りの際に使われていたビニール袋は全て紙袋になり、食品廃棄物を減らすために賞味期限ギリギリもしくは切れているもの、見るからに危うい野菜などが食品廃棄物防止のラベルが貼られて販売されるようになり、レシートを廃止する動きから、今度のプラスチック包装禁止の法令です。

 地球温暖化が進み、洪水などの被害が多発している中、このような環境問題への取り組みは必須で急務であるとはいえ、先日もマクドナルド・フランスのペットボトル廃止から生じたマクドナルドの水問題が沸騰したばかりですが、スーパーマーケット・食品業界が優先事項として特にターゲットになっている感じが否めないことも確かです。

 それだけ日常に直結するものであり、消費量も多いことからだと思いますが、これに対応していく業界側も悲鳴をあげています。

 変化を嫌うフランス人が変化していくことを余儀なくされている・・地球環境問題は、急務であることをひしひしと感じさせられる、ここ数年の変わり様なのです。


フランス 2022年1月からプラスチック包装禁止


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