2021年9月6日月曜日

パラリンピック閉会式に見る日本とフランスの温度差

  


 パラリンピックの閉会式が終わり、東京でのオリンピック・パラリンピックの日程が全て終了しました。

 今回のオリンピックは、次回のオリンピックの開催地がパリということもあり、フランスでは、いつも以上の盛り上がりを見せ、オリンピックの開会式にはじまって、閉会式、パラリンピックの開会式、閉会式まで、エッフェル塔近くの巨大スクリーンが設けられた会場に多くの人が集まりました。

 フランスでは、オリンピック開催の一週間前ほどからヘルスパス(2回のワクチン接種証明書・72時間以内のPCR検査陰性証明書・6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)の起用により、レストラン、カフェ、デパート、コマーシャルセンター、文化施設、娯楽施設、イベント会場などなど、多くの場所で入場制限が行われるようになり、このパラリンピックの閉会式の大勢の集まったイベントもヘルスパスによる入場制限が行われていました。

 日本では、この人混みを見て、ギョッとしている方も多いと思いますが、徒に無防備に人が集まっていたわけではありません。

 フランスでは、8週間連続でこのヘルスパス反対のデモが起こっていますが、実際には、このヘルスパスのおかげで、ヘルスパスさえ持っていれば、ほぼ日常の生活を送れるようになっており、現段階では、感染者も減少し始め、集中治療室の占拠率も38%(パリを含むイル・ド・フランス地域圏)まで下がり、ヘルスパスの効果が現れ始めています。

 フランスは5月の段階で、5000人を集めてのヘルスパス所持者の参加による実験コンサートなども行っており、ヘルスパスで入場制限をした場合での人が集まる危険性を検証したりもしています。

 日本では、国民が、どのような感じでこのパラリンピックの閉会式を見守っていたのかは、わかりませんが、日本の報道を見る限り、「パラリンピック閉会式に国立競技場付近が密に・・」などと書かれていたりするのを見ると、せっかくのこのイベントを思う存分に楽しめなかった状況をもどかしく思います。

 エッフェル塔の前で歓喜しているフランス人と、国立競技場の近辺に集まろうとする人を解散させようとしている日本の警備体制にすごい温度差を感じるのです。

 日本は依然として、ワクチンをした人も、していない人も同様に緊急事態宣言のもとに、自粛生活を強いられていることに疑問に感じています。日本はワクチン接種を始めるのが遅れたわりには、さすがに進み方が早く、かなりワクチン接種率も上がってきているようです。

 ワクチン接種は完璧に感染を防げるものではありませんが、かなりのリスクは軽減されることは、世界中の事例からも明らかになっているので、そろそろワクチン接種者に対しては、行動制限を軽減する方法を取るべきなのではないかと思います。

 ワクチン接種をするメリットが日常生活に反映しないのは、残念なことだと思うし、真面目な人ほど自粛して、危ない人ほど、危険な行為に走る矛盾は解消されません。

 前代未聞のパンデミック下での無観客オリンピック・パラリンピックを開催し、莫大な負債を負ったであろう日本は、他の国以上に経済を復興させることを考えなければなりません。

 とはいえ、フランスはこれまでのコロナウィルスによる犠牲者は114,905人(9月5日現在)という日本の7倍以上(フランスの人口は日本の半分なので、実際には、14倍)の甚大な被害を出しているので、大きなことは言えません。

 しかし、現在のフランスは、これまでの悲惨な状況を礎にヘルスパスという方法をかなり強行な形で押し進めたのだと思っています。

 日本もワクチン接種者には、ある程度の日常生活に戻れるようにすれば、もともと衛生観念に優れた日本人のこと、経済を復興させつつ、感染拡大を避けられると思うのです。

 ついでに言わせてもらえば、日本への入国の際も、ワクチン接種の有無に関わらず、3日間の強制隔離を含む2週間の隔離生活というのも、もう少し緩和してくれないだろうか?と思います。

 海外在住者の多くは、ワクチン接種を済ませているにも関わらず、この隔離生活のおかげで日本に帰国できない人が多いはずです。ワクチン接種済みで、しかも空港での検査結果が陰性なのに、2週間も隔離生活を送らなければならないというのは、どう考えても厳しすぎます。

 フランスにいれば、ヘルスパスで自由に生活をできるものの、何を好き好んで、バイ菌扱いされるような2週間の隔離生活という費用も時間もかかる日本に行くものか?と思ってしまうのです。

 でも、本当は、ずっと行けていない日本には、行きたいのです。

 海外在住者は、日本に行ったら、お金、使います。


ワクチン接種のメリット 日常生活への反映


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2021年9月5日日曜日

8週目のヘルスパス反対デモ シャトレのコマーシャルセンターに乱入

   

デモ隊が乱入したシャトレの巨大コマーシャルセンター


 もはや土曜日のヘルスパスのデモが近々に終わるとは誰も思っていませんが、このデモは7月17日から夏のバカンス中もずっと続き、とうとう8週連続のデモとなりました。

 フランスは何かといえば、すぐにデモが起こるので、余程の暴徒化でもしない限り、かなりの人数でさえ、それほど大ニュースにはなりません。

 このパンデミックのさなかでさえも、昨年3月の1回目の完全なロックダウン(生活必需品の買い物以外は外出禁止)の時以外は、デモ(その時々で目的は違っていたけど・・)は常に認められ続けてきました。

 ただし、デモを行うには、予め、その日時や場所(出発地やデモ行進するコース、到達地点)などを申請する必要があり、概ねその通りに行われます。

 デモ隊は、時に暴徒化して破壊行為や暴力行為に発展したりする危険もあるため、在仏日本大使館なども事前に土曜日のデモの予定を知らせてくれます。

 当然、私は、大勢の人が集まる場所は避けたいし、巻き込まれるのもゴメンなので、できるだけ、その近辺には近寄らないようにしています。

 とはいえ、狭いパリのこと、また、デモ隊は行進して場所を移動するため、例えば、今回のデモの予定は、パリ1区、2区、4区、5区、6区、11区、12区、15区、19区、20区とかなりの区域を網羅(パリは1区〜20区まであります)、もうほとんどの区がデモのコースにあたっており、あまり神経質に考えたら、外出不可能です。

 しかも、デモは必ずしも届出どおりのコースを進むわけでもなく、今回は、デモ隊の一つから一部から派生して、予定していたコースとは別の道を進み、パリ1区にあるシャトレのコマーシャルセンター(フォーラム・デ・アール)になだれ込み、コマーシャルセンターでのヘルスパス提示義務反対を叫び始め、一時、大変な緊張状態に陥りました。

 フォーラム・デ・アールは、パリの中心地(パリ1区)にある大型ショッピングセンターで、数多くのブティックを始めとして、書店、電化製品、映画館、レストランなど115軒の店舗が入っている、かつてはパリの胃袋と呼ばれていたランジス市場の跡地に建てられた巨大モールです。

 本当に行ってみるとびっくりするほど、そこへ行けば、どんなお店もあり、「あ〜このお店もある!あ!これもある!」と思います。しかも、RER(国鉄)やメトロの駅からも直結しているために、非常にアクセスも便利にできています。

 しかし、今回のデモ隊がこのコマーシャルセンターに流れ込んで、「リベルテ!リベルテ!(自由!自由!)」と騒ぎ出し、パリ警察はオーバーフローを恐れ、店舗の閉鎖を要請、CRS(Compagnies Républicaines de Sécurité・特別警備隊)やBRAV-M(Brigade de répression de l'action violente motorisée・暴力行為を抑制するための厳重な警備隊)や大型の警察車両10台が出動する大騒ぎになりました。

 


 入り口だけでも一体、いくつあるかわからないほど大きい上に、メトロやRERの駅にも直結しているこのコマーシャルセンターをデモ隊の一部が突如、コースを変更して突入したために、突如、警察、しかも、通常の警察だけではなく、イカつい様相の特別警備隊が現れて、閉鎖されるということは、想像もつかない大混乱です。

 これまでデモ隊が行進する通り沿いの店舗がシャッターを下ろさなければならないような場合もありましたが、このような巨大ショッピングモールに閉鎖の要請とは、なかなかな事態です。

 我が家はシャトレからはかなり離れているものの、家からでも聞こえる警察車両のサイレンに、今日は、どこで何が起こっているんだろうか?と思っていました。

 「自由!自由!」と叫んで、「自由」を訴える人は、結果的に「自由」を奪われる結果を招いていることに、やるせなさを感じるのです。


フランス ヘルスパス反対デモ コマーシャルセンター乱入


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2021年9月4日土曜日

「さよなら 日本の菅首相が試合を放棄」フランスでの菅首相退任の報道

   


 

 「さよなら 日本の菅首相が試合を放棄」「日本の菅首相が彼の次の出発を発表する理由」「日本の菅首相自民党総裁を辞任」これらが、フランスでの菅首相退任に関する報道のタイトルでした。

 そもそも、日本のニュースは、余程のことでない限り、フランスでは、大々的に報道されることはありませんが、さすがに首相退任のニュースは、大手新聞社では数社に及び、報道されていました。(テレビでの報道はほぼ無し)

 新聞の報道では、彼は、「コロナウィルスとの戦いと選挙運動を両立することは不可能であるため、コロナウィルス対策に専念し、総裁選には出馬しない」と発表したと伝えています。

 短い記者会見の内容に、各社、それに肉付けする形で、首相退任について説明していますが、その多くが、「パンデミック対応に失敗(ワクチン接種の遅れ、感染悪化、医療対応の不拡充などのコロナウィルス対応の失敗)と、大多数の国民の反対にも関わらず、オリンピック・パラリンピックを強行したことにより、記録的な不人気を更新し続けていた」などと伝えています。

 「日本は6月以来、コロナウィルス感染の記録的な増加に苦しんでおり、現在、約2万件の新たな症例が発生している。日本政府は集団予防接種キャンペーンの開始に遅れをとり、今年の初めから非常事態宣言を繰り返し発令していましたが、これは、本質的に拘束力のない推奨事項に基づくもので、感染を封じ込める効果が低下する一方、締め付けられ続けている国民を深刻に疲れさせ始めている。」

 「不人気記録の更新にも関わらず、当然のように総裁選に出馬すると思われていた菅首相の衝撃的な辞任の発表は、9月5日のパラリンピック閉会の2日前に行われ、47都道府県のうち、21地域で非常事態宣言下にある日本全体のコロナウィルス感染の指数関数的増加の危機的状況から国民の気を逸らす働きを果たした」となかなかの辛口の評もあります。

 「これは自民党の舞台裏でひねりを加えた哀れなパワーゲーム(同盟、裏切りなど)でもある。」

 「現在の日本には、医療崩壊の片鱗が見られる事例が続出しており、多くの感染者が、なかなか入院できずに自宅で死亡するケースが急増しており、これはワクチン接種の遅れを背景にワクチン供給の遅れ、スクリーニングの遅れが原因で、これらに対しての対策が充分に取れなかったことは、彼の失敗であった。」

 「8年間、前任の安倍首相の右腕であった菅首相は、安倍首相の遺言執行者だった。」

 ・・とまあ、こんな感じの報道が多く見られます。

 首相退陣のニュースは、その原因の追求から、日本の感染対策の失敗や、そのことにより、日本国民が現在、感染してもなかなか入院もできずに自宅療養を強いられている状況を知らしめるキャンペーンのようになってしまっている感が否めません。

 しかし、どこか吹っ切れたような菅首相の表情は印象的ですが、首相という権限を失った後に、コロナウィルス対策に専念する・・というのも、どこか、理屈に合わない気もします。

 在任中にコロナウィルス対策に専念して、成功していれば、総裁選を戦うことをせずとも自ずと結果は出てきていたであろうに・・と思うに、彼の退任の本当の理由は、他にあるような気もします。


菅首相退任


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2021年9月3日金曜日

フランスの学校の新年度の始まり フランスの新学期手当とワクチン接種と唾液検査

   


 約2ヶ月間の長い夏のバカンスも終わり、フランスの学校の新学期が2日(木)から始まりました。毎年、カレンダーにもよりますが、なぜか木曜日スタートが多いというのも、フランスの不思議なところでもあります。

 9月の新学期は、フランスでは新年度の始まりでもあり、子供を持つ親には、9月は何かと忙しい月でもあります。

 入学式や始業式などの学校でのセレモニーはなく、しれ〜っと始まるのですが、そのしれ〜っと始まる新年度の前には、学校から、必要なものを揃えるようにと毎年毎年、前もって細かいリストが送られてきます。

 教科ごとに必要なノート類(サイズから、様式、ページ数まで指定)、画用紙、筆記用具(ボールペンの色や時にはメーカーまで指定)、定規や電卓(年齢ごとに変わっていく)などなど、なかなか細かくて、フランスの学校に通ったことのなかった私にとっては、最初は見慣れない文房具、ノート類などの学用品を揃えるのは、なかなか厄介なことでした。

 これだけ、同じものを揃えるなら、いっそのこと学校で纏めて揃えてくれればいいものを学校の先生は、子供に勉強を教えることだけ・・というフランスでは、一切の余計な業務は請け負わないのです。

 それでも、業者が介入して、一切を取り仕切れば、なかなかのビジネスチャンスだとも思ったりもするのですが、不思議なことに、そんな習慣はあまり変わることがなく、夏休みが始まるとともに、スーパーマーケットには、新年度のための文房具などの学用品のコーナーができます。まあ、これもフランスの夏から秋にかけての風物詩のようなものでもあります。



 そして、学校が始まり、教科書をもらってくると、教科書は1年が終わると返還しなければならないため、教科書一冊一冊にカバーをかけるのもフランスならではです。(汚したり、破いたり、失くしたりした場合は弁償させられます)合理的と言えば、合理的なフランス、日本などは、海外に住んでいても申請しておくと、日本人の子供ならば、毎年、新しい教科書をもらうことができるので、国によって、ずいぶん違うものだ・・と思います。

 この新年度の準備のために、フランス政府からは、1人でも子供のいる家庭には、新学期手当( L'allocation de rentrée scolaire (ARS))が支払われます。

 2021年は、6〜10歳の子供1人あたり370.31ユーロ(約48,000円)、11〜14歳の子供1人あたり390.74ユーロ(約51,000円)、15〜18歳の子供1人あたり404.28ユーロ(約52,500円)が8月末に支払われます。

 このお金は、子供のための援助金ではありますが、安くあげようと思えば、安く済んでしまうものでもあり、子供にあまりお金をかけない子供がたくさんいる家庭などには、ちょっとしたボーナスのようになっていて、その使途について、問題視する向きもないわけではありませんが、細かいチェックは難しいのが現状です。

 この時期には、学校だけでなく、学校以外のお稽古事などのアクティビティの申し込みも一斉に行われるため、なかなかな出費の多い月でもあるため、大変、ありがたい制度でした。(結局、これだけではとても足りないのが普通?ですが・・)

 このお稽古事などの申し込みは、一年間を通してのものなので、パンデミック以来、「ロックダウンなどになった場合でも返金はしない」などの項目が追加されたりしています。

 昨年の秋には再び感染爆発を起こしたフランスでは、学校の衛生対策にも特別に気を配らなければないところですが、9月からの学校の授業では、もしも感染者がクラスに出た場合でも、ワクチン接種をしている子供は授業をそのまま続けることができ、ワクチン未接種の子供に関しては、当面の隔離、リモート授業に切り替わることが決定しています。

 同じクラスの中でもワクチン接種をしている子供としていない子供で、隔離措置が違ってくるわけです。致し方ないことでもありますが、なんだかここでもクラス内で不穏な空気が流れそうで、なかなか微妙ではあります。

 また、学校では、週60万回の唾液検査が実施されることになっていると同時に12歳以上のワクチン接種が可能な年齢の子供たちに対してのワクチン接種(両親の同意書が必要)の強化、学校単位でのワクチン接種なども検討されています。

 ヘルスパスの適用範囲が広がる中、教師は、ヘルスパスの提示は必要でも、ワクチン接種が義務化されている職業ではありません。世論調査によると国民の74%は、「教師もワクチン接種を義務化するべき」と感じているという結果が出ています。

 しかし、現在のフランスでは、子供を持つ親にとっても、学校再開は、それほど神経質に危険視されてはおらず、すでにヘルスパスの起用により、ほぼ日常生活が戻っている事情が反映されています。

 とはいえ、特にワクチン接種ができない12歳以下の子供などは、引き続き、心配な要素が多いことも現実です。

 フランスでの次の学校のバカンスの休みは10月23日から、(Vacances de la Toussaint ・万聖節・ハロウィン)です。それまでの2ヶ月弱、無事に学校生活が落ち着いてスタートしますように・・。


フランス新年度手当 


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2021年9月2日木曜日

日本のワクチンパスポートはフランス入国後、そのままヘルスパスにはならない

   

将来的に2次元コードを搭載予定・・???


 海外に住んでいると、時折、人伝てに、「日本から〇〇さんの親戚の子がフランスに留学する(あるいは、旅行する)から、何かの時に力になってあげてほしい・・よろしく・・」などと頼まれることがあります。

 友人・知人などが日本から来てくれるのは嬉しいことですが、旅行の場合は、街中を案内したり、メトロやバスなどの乗り方を教えたり、買い物や食事の際に多少の通訳まがいのことをする程度で、実際には、大してお力にはなれてはいません。

 しかし、留学やワーキングホリデーなどの長期滞在ともなれば、旅行ではなく、実際に生活をしていかなければならないとなると、色々なことが起こります。

 現在は、パンデミックのために、旅行者は激減しましたが、留学に関しては、フランスは、一定の手続きさえすれば、受け入れを開始しており、9月の新年度から、留学生はフランスに入国し、フランスでの学生生活を始めています。

 先日、しばらく連絡をとっていなかったパリ在住の日本人の友人に会って、「どうしてたの?」と聞いたら、日本のお姉さんの知り合いの子が9月からフランスに留学することになって、アパートを探してあげたり、必要なものを揃えてあげたり、様々な手続きを手伝ったりして、結構、忙しかった・・」そうで、学校のために必要な書類上の手続きは、大方、日本から済んでいたそうですが、一番、手こずっているのが日本のワクチンパスポートだと言うのです。

 もちろん、日本を出国し、渡航する際には、ワクチンパスポートが必要なため、ワクチン接種を済ませ、日本のワクチンパスポートは持っていたのですが、日本のワクチンパスポートには、QRコードがついていないとかで、フランス国内でのヘルスパスとして、そのまま使用することができないのです。

 現在、多くの場所でヘルスパスが求められるために、日本のワクチンパスポートをもとに、フランスでヘルスパスとして使用できるQRコードを取得するには、またさらに、手続きが必要なのだとか・・。

 日本を出発する前から頼んでいた(フランス大使館・サイトからフランスのQRコード付きのヘルスパスの申請ができますが、時間がかかるらしい)QRコードが出発時には間に合わず、フランスで再び、申請し直したようですが、学校が始まったと言うのに、まだ届かないのだそうです。

「外国人旅行者・学生向けヘルスパス・フランス大使館」

 ちょっと食事をしに行こうと思っても、QRコードチェックならば、一瞬で済むものを日本のワクチンパスポートを持って、「ワクチン接種は済んでいる、QRコードは申請中」と説明し、お店の人を説得しなければならないのだとか・・。しかも、これが、必ずしも通るとも限らないのです。

 レストラン側は、それでも商売なので、大方、納得して、通してくれるそうですが、まだまだフランスでの生活・フランス語に慣れていない留学生にとっては、なかなか厄介なことです。

 それでさえも、どこでも納得して通してくれるわけではなく、映画館、美術館などは、頑として認めてくれないところもあるようです。書類などは、偽造が簡単で、旅行者と偽って、その手の書類を認め出したら、統制が取れなくなりますから、拒否する側の気持ちもわからないではありません。ましてやいい加減なことをして、それが発覚したら、たちまちお店側(受け入れ側)は、罰金、あるいは営業停止になりかねないのです。

 現在のところ、パリの街を歩いていても、日本人の観光客らしき人を見かけることはありませんが、たとえ、日本のワクチンパスポートを持ってきても、入国はできても、観光をするためには、PCR検査を受けなければならないということになります。

 もともとQRコードを発明したのは、日本人(自動車部品メーカーのデンソー(愛知県)の開発部門)だというのに、ここぞという時(今回の場合は、ワクチンパスポート)に日本でそれが使用されていないことは、とても残念です。

 現在、日本に入国する際には、空港に到着した時点で、何重にも書類のチェックが行われているそうですが、それはそれで厳重で良いことだとは思うものの、QRコードでチェックできれば、それだけの人出も手間もかける必要はないわけです。

 どうにももどかしい日本のワクチンパスポートの現実を日本からパリにやってきた留学生から、再び思い知らされることになりました。

 現在は、フランスに旅行・出張等する人も少ないとは思いますが、フランスにおいでの方は、その辺のところ、十分ご注意下さい。

 フランスでは、現在、ヘルスパスがないと、レストランにも美術館にも、デパートにも行くことができません。


日本のワクチンパスポート フランスのヘルスパス QRコード


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2021年9月1日水曜日

フランス政府の何があっても押し通すチカラ

   


 よく、フランス人がある程度以上の人数で、口泡飛ばして話に夢中になっている様子を側から見ていると、人の話をきいているのか、いないのか? 何人もの人が同時に話していて、周囲の人が意見を差し挟んでも、平気で、同時に話し続ける、まるで「朝まで生テレビ」の討論会のようだと思うことがあります。

 要するに、議論が好きで、言いたいことを言い、自己主張をすることが美徳とされるのは、子供の頃からのフランスの教育によって培われているもので、議論とはいえ、必ずしも解決の糸口を探ることが目的でとは限りません。

 それぞれが、人の話を聞くよりも、自分が話すことが重要なので、平行線のまま会話が進むことも少なくありません。

 それは、政府と国民の関係にも同じことが言えます。

 今回のパンデミックのように、何かが起こっても、とりあえず、物申す人は多くいて、何かといえば、デモが起こって国民は声を上げますが、フランス政府は、デモは国民の当然の権利として認めながらも、現在はSNSなども使って、テレビ番組に積極的に登場して、説得を続け、その態度は、決して揺らぐことはありません。

 煮え切らない曖昧な態度は、国民の反感を買う内容の政策以上にNGです。言いたいことははっきりと言い、それが通じない人がいたとしても、あくまでもそれぞれが自己主張を続け、平行線のままでも、押し通していきます。

 民主主義、自由、連帯などのワードとともに、かなり強引に推し進めていく様子もユニークでもあります。

 フランス名物と言っても良い、時としてテロの原因になったりする風刺画などは、日頃、言いたいことをはっきり言いすぎる?フランスでは、それを楽しむ人もいれば、逆に多くの言葉で語られる以上に、怒りの着火剤になったりするのも不思議です。

 今回のヘルスパスの問題にしても、ヘルスパス起用の発表以来、7週連続でデモが起こっていますが、デモはデモとして、デモの権利は認めながらも、政府は、さして問題にもしていません。

 全国規模のデモにも動じず、最近では、そんな中でも、ヘルスパスについて、政府は堂々と勝利宣言を始めました。実際にワクチン接種が進み、効果が現れ始めた今、それに付随する問題が生じたとしても、その新しく付随して生じた問題に対しては対処していきますが、その本髄が揺らぐことはないどころか、勝利宣言をして、自画自賛も忘れません。

 結果として、事態が好転していけば良いわけで、押し通したもの勝ちになります。

 正直、私は内容にもよりますが、デモをする人の気持ちがあまり、わかりませんが、現在のヘルスパスに関して言えば、ヘルスパス反対のデモは、圧倒的に劣勢ですが、それでもデモを続ける人々は、結果的に自分たちの意見が通らず、平行線のままで、結局は、政府の方針どおりになったとしても反論をし続けることに誇りを抱いているのです。

 それは、ちょっと、辺りの一般人がこぞって議論しつつも、それぞれが言いたいことを言い合って、答えの出ない会話にそれぞれがご満悦な様子と少し似ている構図のような気もします。

 時として、政府が間違った方向に進もうとした時、また、社会で許容できないような事件が起こった時などに、黙認するのではなく、声を上げる事も必要な時もあるのではないかと、私は、フランスに来て以来、少しだけ思うようになりました。

 それは、直接的な結果には繋がらなくとも、時には意味のあることなのかもしれないとも思うのです。

 とはいえ、国の決定は大きなもので、常に結果が求められるものではありますが、揺るがずに発信を続け、国を牽引していく少々強引なチカラが、現在のパンデミックのような状況には必要不可欠であるのではないかと思っています。


フランス政府 発信力


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2021年8月31日火曜日

ヘルスパス 職場でのヘルスパス提示義務化に伴う職場内の摩擦

   


  フランスでは、今週から、ヘルスパスの提示義務が職域にまで求められるようになりました。つまり、同じ職場内で、従業員のヘルスパスをチェック・管理することが必要になったわけです。職務上以外のことで、人をチェックし合うというのは、あまり気持ちの良いものではありません。

 現在の段階では、全ての職場でというわけではなく、レストラン・カフェ、映画館、美術館などの文化・娯楽施設、スポーツ施設、一部のコマーシャルセンター・デパートなどの顧客に対してヘルスパスの提示が求められる場所においての人と接する部門で働く従業員に対してのものであり、フランスでは、約180万人がこれに該当します。

 現在、フランスのワクチン接種率は74.3%までに上昇していますから、そこまでの大問題には、発展しにくいとは思いますが、とはいえ、頑なにワクチン接種を拒否、ヘルスパスに反対する従業員を抱える企業では、少なからず、摩擦が生じています。

 元来、フランスは、労働者の権利が強く守られている国で、一旦、正規採用した場合の従業員の扱い、特に解雇に関しては、法律で強く守られており、今回のような、ヘルスパスが提示できない場合(=ワクチン接種拒否)は、給与が支払われない=解雇同然、というような図式のケースは、元来のフランスの労働者保護の観点から考えれば、かなり異例なことです。

 現在のところは、まだスタートしたばかりなので、たとえ、ヘルスパスの提示ができなかったとしても、他の部署への異動や、説得などの話し合いが持たれることが先決なので、そこまで深刻な事態は、浮上してきていません。

 しかし、国の決定とはいえ、顧客に対して行うヘルスパスのチェックと職場の中でお互いのヘルスパスをチェックし合うという図式は、職場全体の意志統一ができていない限り、職場内で不穏な空気を生み出します。

 と言っても、今回の場合は、経営者側もこれを遂行しない場合には、企業全体が営業停止になる恐れがあるため、これを回避することはできません。

 このような強制的な管理体制を敷くというのは、まことにフランスらしくない、フランス人には受け入れにくいことであるに違いありませんが、(それ故、7週間連続で反対デモも起こっている)すでに1年半以上も続いているパンデミックという異常事態ゆえ、フランス人とて、多くの人が受け入れざるを得ず、このヘルスパスに追い立てられるようにして、ここまでワクチン接種率も上がってきたのです。

 しかし、このワクチン接種の有無による不穏な対人関係は、企業内だけでなく、家族の中でも生まれ始めています。家族の集まりに際して、(誰かの誕生日パーティーや冠婚葬祭など)ワクチン接種をしていない者は参加してほしくないとか、それでも参加したい、家族に会いたいという摩擦で、家族関係にヒビが入ってしまった・・などというケースも少なくありません。

 もともと、コロナウィルスという病気は、人との接触を避けなければならないという残酷な側面を持つウィルスではありますが、ワクチンが誕生したことで、それが回避できると思いきや、そのことで、一層、凝縮した人間関係のいざこざが、また別の形で生じてしまうことに、やるせない気持ちになります。

 しかし、そこで、ちゃっかりした人もしっかり現れるのがフランスで、ワクチン接種を拒否している人が早々に医者に頼み込んで、ドクターストップ(Arrêt Maladie)の書類を書いてもらい、3ヶ月間の病気のための休職手続きをとってしまう人まで登場しています。

 医師の書いたドクターストップによる休職の場合、企業側は当人の病気についての詳しい事情について追求することはできず、この期間、少なくとも給与の半額は保障されます。つまり、ヘルスパスを提示できない場合に、無給になってしまうことを避けて、とりあえず、給与の半額が保障される方法をとるわけです。

 しかしながら、このヘルスパス提示義務の終わりが見えているわけではなく、永遠にドクターストップの書類をもらい続けて生活を続けることは不可能で、問題を先延ばしにしているに過ぎません。

 もっとも、この期間にヘルスパスの提示が必要のない転職先を探すという道もあるにはありますが・・。

 あくまでもワクチン接種は義務化したわけではないと言いながら、事実上の義務化のような状態に、「強制はできない・・しかし・・」といった曖昧な、どうにもおさまりが付きにくいモヤモヤした状況が生じています。

 そんな状況をよそに、政府側は、「フランスはヘルスパスの成功を収めた!」「他国の多くの国がフランスのヘルスパスに追随している!」と得意の自画自賛を始めています。

 たしかに、このヘルスパスがなければ、いつまでも、レストランやバー、その他の文化施設なども、閉鎖状態が続き、人々が現在のような、ほぼ日常に近いような生活を取り戻すことはできなかったかもしれないし、ここまでワクチン接種率が上がることもなかったかもしれません。

 とりあえずは、3日に1回、PCR検査を受け続ければ、ヘルスパスとして、使えるので、どうしてもヘルスパスを受け入れられない人々は、PCR検査をし続ける意外、他に道はありません。しかし、10月半ばにPCR検査が有料化すれば、それさえもあまり現実的な話ではなくなります。

 そして、実際に、経営者とヘルスパスを拒否する人々との間の話し合いが決裂し、解雇同然の状況になり始めた時、ヘルスパス反対、ワクチン接種をする人々がおとなしくそれを受け入れるのかどうかはわかりません。

 9月の半ばには、医療施設・高齢者施設勤務の従業員(医療従事者及び医療施設の職員)に対しては、ヘルスパスではなく、ワクチン接種の義務化の期限を迎えます。これは、PCR検査で乗り切ることはできません。

 フランスの感染状況は、少しずつとはいえ、減少傾向に向かい始め、概ね、フランスのヘルスパス政策は成功したかに見えていますが、万人が両手をあげてそれを歓迎しているわけではないのです。


職域によるヘルスパス提示の義務 フランス


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