2023年7月7日金曜日

フランスのガン患者 約30年で2倍に増加

  


 フランス公衆衛生局、国立がん研究所の調査によると、1990年から2023年の間にフランスにおけるガン症例数が2倍に増加した(男性は98%増、女性は104%増)と発表しています。

 2023年は、まだ約半年しか過ぎていないというのに、すでに43万人以上の人が新たにガンと診断されています。

 これは、フランスの人口動態の進化(人口の増加と高齢化)や、ライフスタイルに関連したリスクの増加が関連していると言われていますが、特に生活習慣、タバコ、アルコール、偏った食事、運動不足、紫外線なども、大きな原因だと見られています。

 男性に多いのは、前立腺ガン、肺ガン、結腸直腸ガン、女性では、乳ガン、結腸直腸ガン、肺ガンの順に続いています。

 ガンは男性の死亡原因の1位、女性の死亡原因の2位(1位は循環器系疾患)、ガンによる死亡年齢の平均は男性73歳、女性75歳です。

 一方では、早期発見と治療の技術の進歩により、死亡率は減少しているとのことで、前立腺ガンの5年生存率は、93%、乳ガンは88%まで上昇しています。(ただし、肺、肝臓、食道、すい臓のガンに関しては20%以下と言われています)

 行動やライフスタイルを変えることでガンのほぼ、半数を回避できるとする学者もいます。

 フランスはかなり、力を入れて、この早期発見、早期治療を促進しようとしているようで、ここ数年、私自身の個人的な印象によれば、年齢を重ねていることもあるのでしょうが、以前よりも、多くの種類のガン検診の通知を受け取るようになった気がします。

 しかし、一般的なフランス人のガン罹患のケースとは異なるかもしれませんが、これまで数少ない私の在仏の日本人の知り合いで亡くなった人々は、全てガンが原因だったのも事実で、彼らはそれほど、高齢でもなく、やはり、海外生活はストレスも多いからかなぁ?などと、漠然と思ったりしていました。

 その中でも、最も私の身近にいた人は、大腸ガンでしたが、最初のガンが発見された時には、彼女がミューチュエル(国民健康保険をカバーする保険)に入っていないという話を聞いて、「えっ??どうするの?」と病気そのものだけでなく、治療費の心配をしたのですが、幸か不幸か?フランスではガン治療は基本的には無料(というか国が負担してくれる)とのことで、びっくりした覚えがあります。

 しかし、手術をして、5年経つか経たないかのギリギリのタイミングで再発してしまい、それからの治療は、トラブルも重なり、本当に悲惨なもので、彼女自身も、手術後にどのような状態になるのかを具体的に把握していなかったこともあり、また、結果的にとことん、ガンと闘うという治療法を選択したために、最後の最後には、この状態でよく生きている・・とお医者さんに言われる状態でも、意識ははっきりしていて、最後にお見舞いに行った時も、(たまたま彼女のお誕生日だった・・)「気分が悪いのに、食事にステーキとかが出てくるのよ・・」などと話していたのを覚えています。

 彼女が亡くなったのは、それから1~2週間後のことでした。

 日本人に多いと言われる胃ガンが男女ともにトップ3に入っていなかったりするのも、食習慣の違いも体質の違いもあるのでしょうが、日本とて、4人に1人とか6人に1人はガンに罹ると言われている今、フランス人とて、例外ではないということなのかもしれません。

 しかし、まあ、ものすごく楽観的に考えれば、検査数が増えているのも、この数字が増加している理由かもしれないし、今まで発見されなかったガンが発見されるようになり、治る可能性が高まったということかもしれません。

 私など、検査というものがものすごく億劫で敬遠しがちなのですが、進行して手が付けられない状態になることを考えれば、せっかく無料でやってくれる検査・・ちゃんとやろうかな・・と思い始めています。


フランス ガン患者数30年で2倍に増加


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2023年7月6日木曜日

暴動後、略奪品が転売サイトへ 流出  売る人はもちろん、買う人にも刑罰

  


 警察官の未成年射殺事件から1週間が過ぎて、ものすごい暴動で、一時は、どうなることかと思いましたが、どうにか、沈静化の兆しが見えてきて、マクロン大統領も「暴動のピークは過ぎたのではないか?」などと発言したものの、まだまだ、安心はできないという感じは残っていて、「そんなこと言って大丈夫かな?」とまだ心配な日が続いています。

 しかし、この全国規模に及んだ大規模な暴動による甚大な被害は、(破壊されたり、燃やされたり、略奪されたりした被害)は少なく見積もっても、2億ユーロ(約312億円)を超えるだろうと言われています。

 そんな中で、まあ、あり得るとは思っていたものの、さっそく、略奪された商品がLeboncoin(ルボンカン)や Vinted(ヴィンテッド)などの転売サイトに登場しはじめています。

 一見、やたらめったら、とにかく破壊しているようにも思えていましたが、彼らはしっかり、後に捌きやすい、儲かりそうなものを選んで略奪していたふしもあり、携帯電話、洋服、バッグ、スニーカー、アクセサリーなどなどは、さっそくこの手のサイトに登場しているのです。

 私も日頃から、これらのサイトは利用しているのですが(もっぱら、買ったまま、結局、使っていないバッグや洋服、子供の服や靴などなど、もっぱら断捨離したものを売る方ですが・・)、日々、便利に変化して、ちょっとしたお小遣い稼ぎになっています。

 これらのサイトの運営側は、盗品の販売には、常日頃から目を光らせているとしており、「不審はユーザーの行動が制限されるように構成されている」「日常の数倍も警戒を強めている」と回答しています。

 暴動後、明らかに目に見えて増えた全くの新品、未開封の商品、急いで雑な感じで同じ写真で、ろくな商品の説明もなく、同一人物からなど微塵も感じられることがないように、「明日はみなさんをルボンカンにご招待します!楽しみにしていてください!」などと、ツイートしていたり、「暴動のおかげで、半年間欲しかったバッグを破格の値段で手に入れました!」などというのもあったりで、暴動のおかげって? もう、この子たちは、どうなっちゃってるの?」と思ってしまいます。

 私はどちらかと言えば、ヴィンテッドを利用することの方が多いのですが、毎回の取り引きには、評価がつけられるようになっており、コメントも入るようになっていて、この取り引き相手がどの程度、信頼できる相手であるかの判断基準の一つになっています。

 ですから、この盗品転売のために新しくアカウントを作成した場合は、その評価が全くない状態であるはずなので、「これは!」というものを見つけても、それが盗品であったりする場合もあり得るかな?と警戒すると思うのですが、そもそも、「暴動のおかげで、欲しかったものが安く手に入った!」などといわれてみれば、ハナから、盗品を買うことに全く躊躇いがないということで、これに対しては、買い手側も盗品であることを受け入れて・・というよりも、むしろ喜んでいるため、よい評価をつけてしまうということなので、このサイトの評価の信頼性も低下することになりかねません。

 しかし、サイト運営側には、盗品を販売している疑いがある場合に通報する権限があり、 アカウントの停止やブロックも可能になっているし、事実上、プラットフォームはユーザーに対して不審なオブジェクトを報告します。

 これらのプラットフォームはこの問題を真剣に受け止めており、チームを結集しているとし、 盗品の可能性に関する情報を要求する際には「警察と緊密に連携」していると説明している。 盗品の売買(売った場合も買った場合も)には、5年の懲役と37万5,000ユーロの罰金が科せられる可能性があります。 

 ですから、しばらくの間は、これらのサイトでは、それが盗品であるかどうか、よく検討する必要があるということなのです。

 ただでさえ、ネット販売に顧客を奪われている商店は、破壊、略奪行為にあったうえ、奪われた商品が破格で出回ることで、さらに、営業妨害を被ることになっています。

 フランスでお店をやるのは、つくづくリスクが大きいと思ってしまいます。


盗品 転売サイト Vinted Leboncoin


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2023年7月5日水曜日

未成年を射殺した警察官の家族へのクラウドファンディングに150万ユーロ

  


 今回のフランスでの暴動の引き金を引いた結果となった検問拒否による警察官の未成年射殺事件の家族を支援するためのクラウドファンディングを募っているというので、私はてっきり、被害者の少年の家族へのクラウドファンディングだとばかり思っていました。

 しかし、それは、加害者となった警察官の家族を支援するクラウドファンディングで、しかも、7万5千人の寄付者を集め、しかも、それが150万ユーロにも達したというので、2度びっくりしました。

 たしかに、加害者となり、起訴された警察官の家族は、それこそ、事件以来、生きた心地がしないほどに苦しんでいるであろうし、その家族に罪はありませんが、一瞬、「えっ?そっち?」と思ってしまったことも事実です。

 また、150万ユーロという金額も、まったく普段、縁のない金額なので、まるで子供の金銭感覚と一緒で、漠然と「たくさんだな・・」と思うだけで、正直、あまりピンと来なかったのですが、日本円に換算すると、約2億3575万円にもなります。

 一方、亡くなった少年の遺族へのクラウドファンディングも存在していますが、こちらは、17万ユーロ(約2670万円)で、この金額とも比較されています。

 このクラウドファンディング(警察官の家族のための)を立ち上げたのは極右の立場をとる人物で、「任務を遂行し、高い代償を払った警察官の家族のために」と説明しています。

 その家族のために・・という意味ではわからないこともないとはいえ、コトはそんなに単純な話でもないようで、「これを支援することで、警察の連帯を示し、これだけの結果を得たということは、フランス人が警察を支持しているということである!」と警察の力を誇示し、イデオロギーの勝利のような意味の解釈に利用しているような気もします。

 このクラウドファンディングを立ち上げて以来、極右はそのアカウントを使って中継を行い、これだけの金額を集めることで、意図的殺人の罪で起訴されている警察官を「任務を遂行した(だけ)」と正当化している気がしてなりません。

 同時にこのクラウドファンディングに関しては、Twitter上で、論争が拡大しており、数万人が「#GofundmeComplice」というハッシュタグを使ってこのプラットフォームの閉鎖を呼び掛けています。

 当のプラットフォーム側は、この資金は直接、家族へと直接支払われるため、この取り組みは、利用条件に準拠していると回答していますが、同時に権力乱用とみなされる行為を扇動または助長するコンテンツを禁止するという規定もありますがこれには該当しないのでしょうか?

 しかし、被害者の家族や、被害者側の立場に立っている人々にとっては、加害者である警察官を擁護するような盛り上がりは許しがたいこと、一部の政治家たちからは、暴徒の怒りをさらに煽る行為、暴動の残り火に向かって息を吹きかけ、さらに炎の勢いを増す行為であると非難の声が上がっています。

 実際に、被害者家族の弁護士は、このクラウドファンディングを立ち上げた人物を告訴したと発表しています。


フランスの暴動とクラウドファンディング


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2023年7月4日火曜日

子育ての恐ろしさ やっぱり親の責任は大きい

  


 このところのフランスの若者たちの暴動を見ていると、あらためて、子育ての恐ろしさと親の責任の重さを感じています。

 私はそんなに強い志を持って、子供を持ったわけではなく、漠然と、「やっぱり一度くらいは、自分の子供というものがほしいし、子育てというものをしてみたい・・」と思っていただけなのです。

 ただ、私の場合の子育ては、結果的には、さんざん自分のやりたいことをやってからのことになったので、もう、しばらくの間は子供に縛られる生活になっても、やりたいことをやってきたので、まあ、子育て期間は子供中心の生活でもいいかな?という、ある程度の覚悟はありました。

 ただ、娘が生まれた瞬間に、実際の子供をて最初に思ったのは、「これは大変なことをしてしまった!」「この子がどうにか、まともに育てるというのは大変な責任だ!」ということでした。

 もちろん、その子どもの性格や素質などもあるでしょうが、親の育て方、どんな環境で育てるかによって、その子は大きく変わっていくわけで、優秀な子供に・・とかいう以前に、「ひと様に迷惑をかけたり、犯罪者になってしまったら、大変なことだ・・」と思ったのです。

 その当時、日本でも金属バット事件とか、少年犯罪も増えている時期でもあったので、親戚の教育に携わる仕事をしている叔母などに「どうしたら、そういうことを避けられる?」などと相談してみたこともあり、その時は、「とにかく、身体を動かすこと、スポーツなどをさせて、発散させることよ!・・」などと言われて、常に娘にはスポーツをする習慣をつけさせたりもしました。

 今、フランスで起こっている若者による非道極まりない暴力、破壊、略奪、放火などの暴動を見ていると、やっぱりこの子たちの親は何をしているんだろう?と思ってしまいます。

 実際に破壊・略奪・放火などが行われている時間帯が夜中の2時3時だったり、そんな状況の中、最も被害の大きい地域などは、夜間〇〇時以降は外出禁止・・特に未成年は・・などというのも、考えてみればおかしな話だとも思うのです。

 そんなこと、別に市町村に決められるまでもなく、子供がそんな時間に出歩くことを放置しているというのも、正直言って、私には意味のわからない話。でも、子供が勝手に夜中に出歩くことが、その子たち(や家族)の間では、不思議なことではない生活をしているのかもしれません。

 フランスで子育てを始めたばかりの頃、周囲にいた先輩ママさんたちから、「フランスは、クズは限りなくクズ・・学校はちゃんと選ばなければダメよ! そういう仲間ができたらおしまいよ!」、「朱に交われば赤くなる・・」、とか、「水は低い方に流れる・・」などと、さんざん、脅かされ、事実、職場の近くにあった学校のどうしようもない生徒たちの行動を見ていると、うなずけることも多く、娘は小学校から私立の学校に入れたのでした。

 子供たち同志の関係、またその学校の教育方針、しいては、その家族の子供に対する向き合い方で、なにが、あたりまえなのか?ということは、自然と身についていくもので、また、娘が通っていた学校(小学校から高校まで)というのが、「これ?フランス?」と思うくらい、なかなか厳しい学校で、学業はもちろんのこと、言葉遣いから、先生に対する態度、目上の人に対する態度など、特に小・中学校はかなり厳しかったような気がします。

 しかし、実際には、この「自由」と「権利」をやたらと主張する国で、かなり厳しめに正しいことを教えようとする姿勢は大切なことだと思ったのも事実です。

 でも、そんなことを思ったのは、娘を学校に入れて、しばらくの間だけのことで、そんな学校が私たちにとっては、「あたりまえのこと」になってしまっていて、そのあとは、それこそ、「こんなにしっかりした教育をしているのにフランスってどうしてこうなんだろう?」と思ってしまったりもしたのですが、どちらかと言えば、娘の通っていた学校の方が例外的で、ごくごく一般的な公立の学校は全く違うのだということに気が付いた瞬間もありました。

 どんな環境にあっても、頑張れる子はいるのでしょうが、その環境によって、流されてしまうことは多いのです。結局は、ここでも分断とか、格差とかいう話になってしまうのですが、フランスの場合、私立といえども、そこまで極端にお金がかかるわけでもなく、我が家とて、それほど余裕のある家庭でもなかったので、親が子供をどのような環境におくのか? 親がどのように子供を見守るのか?ということを考えれば、さほど無理難題でもないような気もするのです。

 今回の暴動を起こしている子供たち、若者たちの詳しい背景は知りませんが、親、保護者の責任は大きいと思います。若者ゆえ、暴走することもあるとはいえ、今、彼らがやっていることは、立派な犯罪です。やってよいことと悪いことの区別もつかないように育てたのは、社会というよりも、親なのです。

 これまでも、私はかなりしつこく書いてきましたが、娘に関しては、本当に学校に助けられてきたし、あの学校に入れたことは、彼女にとって、大きな人生の分岐点だったような気がしています。

 こんなことが起こる国で、一歩、間違っていたら、もしかしたら、こんなことをする子になってしまったかもしれないと思うと、今になってから、よくも無事に育ってくれた・・と、今さらのようにヒヤヒヤする思いがしているのです。


子育てと親の責任


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2023年7月3日月曜日

暴動はもう別次元に発展 標的にされ始めた市長たち

  


 今回の暴動は、警察官による未成年射殺事件がきっかけで、当初はその事件に関する怒りが沸騰していましたが、もはやその怒りは、社会へのフラストレーションをぶつける行為に変化しつつあります。

 ここ数日は、毎晩のように警察官・憲兵隊が4万5千人動員され、普通は出動することのない RAID(Recherche Assistance Intervention Dissasion)や GIGN(Groupe d’Intervention de la Gendermerie Nationale)などの警察・憲兵隊の特殊部隊まで出動し、ヘリコプターまで飛ばしながら、監視、警戒を続けています。

 結果、暴力行為は若干、減少し始めたともいわれていますが、それとて一昨日の夜には逮捕者が719人に減ったというだけで、まったく安心できる状況ではありません。

 むしろ、この怒りが当初の原因を離れて、社会への不満の鬱憤晴らしになりつつあり、標的が一部の市町村の市役所や市長たちに向けられている地域も出はじめ、これはこれで、また、さらに、すぐに、簡単には根本的な解決の糸口がみつからない問題です。

 結局のところ、いつも行きつく先は、格差社会、分断された社会が問題になるのですが、今回ばかりは、この暴動を起こしている年齢層が低く、未成年も多いところが、さらに問題を厄介にしています。

 実際に、毎日のように1,000人近く逮捕されている若者たちの正確なプロフィールは分析されていませんが、未成年の場合は、逮捕されたところで、未成年ということで、一応、調書を取られる程度で、警察の要注意人物のリストにのるくらいで、早々に帰される人がほとんどでもあるし、そもそも彼らは警察を怖がるどころか、警察車両と見れば攻撃したりするわけで、また、できれば捕まりたくないとは思ってはいても、前科がつく(警察のリストに載る)ことなど、大して気にしておらず、「どうせ、失うものなど大してないんだ・・」と思っているとしか思えないきらいがあります。

 そもそも、この未成年の、本来は「人生はこれから・・」という将来が待っているはずの、この若い暴徒たちが、こんなに若い段階で「失うものなど何もない・・」と思ってしまう社会には、たしかに問題があるのだと思いますが、だからといって、彼らの行動を正当化するものは何もありません。

 これを移民問題と片付けるのは、また別の話で、暴動を起こしている若者たちは、かつて移民としてやってきていた人々の2世、3世で、フランスで生まれ、フランスで教育を受けて育ってきたフランス人が多数なのです。なので、その分だけ、もっと問題の根は深いのです。


 しかし、社会への不満が爆発している状況で、いくつかの市庁舎や市長に対する個人攻撃も始まっているのには、本当に言葉がありません。中でも、レ・レ・ローズ(ヴァル・ド・マルヌ県)(パリ近郊)の市長は、暴動が始まって以来、市庁舎に滞在していたために、彼自身は襲撃にあうことはありませんでしたが、(この市庁舎はすでに有刺鉄線でバリケードが張られています)、自宅が襲撃され、妻と幼い子供2人が眠っている家に放火され、家が全焼してしまいました。

 また、ポントワーズ市長(ヴァル=ドワーズ)も車で移動中に襲撃を受け、火傷を負い、その他、襲撃に遭っている市長のリストは長くなるばかりです。

 マクロン大統領は、ドイツ訪問の予定をキャンセルし、この暴動に対する対策会議を招集し、対応に追われています。

 今回の暴動のきっかけは、たしかに警察官の暴挙ではありましたが、この事件が、日頃から社会から虐げられていると感じている若者たち、フランスの底辺に潜む怒りを呼び起こしてしまいました。しかし、今から考えれば、これは、いつ爆発してもおかしくなかった問題でもあったような気もしています。

 ネットをあけても、テレビをつけても陰惨な光景ばかり・・しかし、気晴らしに日曜日の午後、パリの街を歩いて、シャンゼリゼまで足をのばしたら、あの悲惨な光景とは想像もつかない平和な光景で、まるで何事もなかったように、にぎやかに「トロピカル・カーニバル」をやっていて、それこそ、違う世界みたいで、ちょっとホッとしました。



 しかし、この落差こそがフランスなのだ、同時に複雑な気もするのでした。


フランス暴動 市長襲撃


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2023年7月2日日曜日

大惨事となっているフランスの暴動とSNSの関係 

  


 今のフランスの状況は、現在のところ、ほとんど沈静化される様子はなく、日に日に、また、毎晩のように逮捕者が増加し、いたるところが破壊され、略奪行為、放火と信じがたい場面がどんどん増えていっています。木曜日の夜には917人、金曜日の夜には1,300人がこの暴動に関わり、逮捕されたそうです。

 個人的には、一昨日の夜、フランスに来たばかりの頃に住んでいたパリ郊外の地域のコマーシャルセンターがこの暴動のために全焼、全壊したというニュースを見て、愕然としました。

 7月に入り、そろそろバカンスシーズンに入り、またソルド(バーゲン)が始まった最初の週末は、本来ならば、普段は日曜日休業日にしているデパートなども特別に営業するくらい、多くの来客を期待できるかきいれ時の週末でもあります。

 しかし、フランス中の多くの都市では、この暴動による被害を恐れて、午後の早い時間には店じまいの準備を始めるどころか、ショーウィンドーにバリケードを張ったり、この暴徒たちの破壊行動に備えて営業ができなくなっています。

 商店(だけではないけれど・・)のウィンドーを壊して、中に入って強奪して、最悪、火を放つという、極悪非道な暴動をやっているのは、下手をすると12~13歳の子供まで混ざっているそうで、多くがティーンエイジャー、若者が中心で、しかも時間帯も夕方から、午前2時、3時という時間にまで及ぶので、いくら警察官が警戒しようとも、警戒しきれるものではありません。

 しかし、一方では、この暴動を起こしている若者たちのツールの一つとして、Snapchat(スナップチャット)やTikTokなどのSNSが使われていることが明らかになりつつあり、SNS上も警戒が強化され始めました。

 彼らはこのツールを暴動の人集めの呼びかけとして利用しているだけでなく、各地の暴動、破壊行為、強奪行為などをライブで、または録画動画で公開することで、その手段や方法を共有して、破壊行為、強奪行為などを模倣しあい、ついには、競いあうようなことになっているのです。

 大変、不謹慎な話で質も違うとは思うのですが、日本のスシロー事件とは、桁違いの狂暴さです。

 例えば、Snapchatでは、Snapmapといいう機能により、現在、起こっていること、公開されたコンテンツの数に応じて多かれ少なかれ赤い点で「ホット スポット」が表示され、そのポイントをタップすると、そこで起こっていることが見られるようになっています。

 もうこうなってくると、ライブのゲームのようです。警察の警戒の間をかいくぐって、器用に?破壊行動に及ぶことができるのも、彼らがこのツールを使って、警備体制の有無の連絡をとりあったりすることもできてしまうのです。

 このSnapchatやTikTokの公開映像は、多くのメディアなどもより新しいニュース映像収集のために利用したりもしているもので、必ずしも悪用されることばかりではないとも思いますが、今回ばかりは、フランス政府は、SnapchatとTikTokに対して「機密コンテンツ」を削除するよう呼び掛け、2つのソーシャルネットワークに「責任の精神」を期待すると要請を出しています。

 しかし、SnapchatとTikTokは、フランスのユーザーに関する限り、本社は英国にあるため、外国企業にはフランスの司法徴用に有利に応じる義務はありません。とはいえ、これらの会社は、今回のフランスでの暴動状況を重く受け止め、「フランス当局と常に連絡を取り合いながら、監視部隊を設置し、事前の検出によって、または当社に報告され、この種のコンテンツを見つけた場合、それらを削除し、適切な措置を講じる」と発表しています。

 このSNSの発達は、これまで考えられなかったようなことを起こし、警備している警察の側さえも一般大衆に監視されている妙な関係が生じています。

 今回の事件では、特に利用者が多すぎて、一つ一つの動画などのコンテンツを追跡することはとても困難です。

 フランス・デジタル移行省は、デジタルサービスの規制やデジタル空間の安全と規制の法案を通じて、問題を引き起こすプラットフォームを制裁するための法的手段が強化することを呼び掛け、フランス議会も木曜日、TikTok、Snapchat、Instagramなどのプラットフォームに対し、ユーザーの年齢確認と15歳未満の場合の親の同意を義務付けることを可決しています。

 今回の暴動のきっかけは、警察官が検問拒否した未成年を射殺したという、たしかに警察側に問題があると考えられる悲惨な事件でしたが、だからといって、こんな何もかもを破壊するような暴動が許されるわけはなく、このようなSNSを使った暴動の拡散には、早急に手立てを講ずる必要があります。

 さもないと、これから、たびたび、なにかきっかけがあるたびに、フランス中で破壊行為が横行することが常態化してしまいます。

 しかし、彼らはなぜ?こんなに狂暴なのでしょうか?また、窓の外ではサイレンの音が響いています。


フランスの暴動 Snapchat TikTok


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2023年7月1日土曜日

手がつけられなくなっているフランスの暴動に巻き込まれて、しばし、お店に閉じ込められた・・

  

急にお店のシャッターが閉まって、店内に閉じ込められた・・


 検問拒否のために17歳の未成年が警察に射殺された事件からもう4日経つというのに、暴動は一向におさまりそうにありません。むしろ、どんどん、酷くなっている気がします。

 中心となって暴れているのは、未成年や若者たちが中心で、とにかく暴力的で、これはもうすでに抗議ではなく、単なる破壊行動、大規模な放火、強奪行為になってきています。

 これは、フランス全土にわたるもので、とにかくその破壊の仕方が桁外れで、車やバスやトラムまで燃やすので、現在のところ、バスとトラムは全国的に21時で運行停止となっています。

 今回の暴動は、どうやら、いつもの暴動とは違うようで、もう破れかぶれというか、標的が一般の店舗から、市役所、図書館、學校、劇場など、ありとあらゆる場所に至っており、また、日常はさほど治安の悪くないと思われている場所でまで、破壊行為や放火などが起こるので、ちょっと制御不能で予測不可能、手が付けられない状態になっています。

 3日目の夜は1番で917人が逮捕されたとかで、しかも逮捕者の平均年齢は17歳というのですから、いつものデモに乗じて破壊行為を行うブラックブロックなどの破壊集団ともまた別なのか、低年齢化しているのか、はたまたその両方なのかは不明です。

 逮捕者の中には若い子だと13歳、14歳などという場合もあるそうで、夜中に未成年が、しかもこのようなご時世にでかけることを放置している親も親だと思ってしまいます。

 とにかく、この騒ぎがおさまるまでは、バス(やトラム)が21時になくなってしまうというだけでも、この日が長く、気候も良い時期に大変、迷惑な話、バスもトラムも同じですが、自分たちの生活に必要な市役所や学校や図書館などを破壊するのは、どういうことなのだか、まるで意味がわかりません。

 たまたま、昨日、パリ郊外に用事ができ、用事が思ったよりも早く済んだために、時間がぽっかり空いたので、「そういえば、ソルドが始まったんだった!」と帰りに滅多に行く機会がない郊外(といってもメトロで行ける範囲のパリから近いところ)のコマーシャルセンターにソルドを覗いてみることにしたのでした。

 何回かは行ったことがあるものの、ここのところ、かなりご無沙汰していた場所で、郊外だけあって、広くて大きいコマーシャルセンターでお店もたくさん入っているし、店内もゆったり場所がとってあるので見やすかったりもするのです。

 久しぶりの買い物で、けっこう新しいお店に変わっているんだな~とか、こんなに安いお店があるんだ!などと、ちょっと夢中になって試着を繰り返したりしながら、買い物をしていて、そろそろ帰ろうとしていた時のことです。

 急にお店が騒がしくなって、店内はソルド期間中ということもあって、結構にぎわっているというのに、急にお店のシャッターが閉まり始めて、「危険だから出ないでください!」、「大丈夫ですから、落ち着いてください!」「現在、お店の外には出られなくなりました!」とスピーカーでお店のセキュリティの人がアナウンスを始め、お店がブロック状態、店内に大勢のお客さんとともに缶詰状態になりました。

 このご時世、なんとなく、「もしかしたら、あの暴動隊?がやってきたのかな?」と、思いながら、どうにも不安な気持ちになりました。フランス人はパニックを起こすと大変なので、セキュリティの人は「落ち着いて!落ち着いて!」を繰り返すばかりで、尋ねても、理由は説明してくれません。

 中には、不安で泣き出してしまうおばさんまでいて、泣き叫んでいるおばさんを店員さんが、必死になだめています。放火が相次いでいるというものの、ちょっと放火するにしては規模が大きすぎるコマーシャルセンターゆえ、この建物全体に火をつけるのはムリな話。私は、とりあえずは店内にいれば、大事には至らないだろうと思っていました。

 しばらくすると、「こちらの出口から外に出てください・・」と言われて、お店の外に出ると、もう中央の入口(出口)は閉鎖になっていて、コマーシャルセンターからすぐ近くのメトロの駅まで閉鎖になってしまいました。

 とにかく大きなコマーシャルセンターゆえ、出入口がたくさんあって、駐車場をつたって、敷地外に出る途中、数人の警察官がティーンエイジャーらしき男の子を後ろ手に手錠をかけて、連れていくところでした。

 なぜか、その一団には、覆面をした黒装束の若い男が一緒で、「暴れている奴らがいっぱいいるんだよ・・自分は違うけど・・」と言いながら、ポケットには催涙ガス?と思われるスプレーを携帯していて、その恰好で自分は違うって、他人事みたいによく言うな・・妙な人だ・・と思いましたが、それよりも、今度は「メトロの駅が閉鎖なら、どうやって帰ろうか?」と一瞬、途方に暮れました。

 バスやタクシーに乗ろうにも、もうコマーシャルセンターの周囲は警察車両や消防車両が次々と到着する中、大渋滞が起こっており、これは車はムリ・・と判断し、次のメトロの駅まで20分近く歩くことにしました。

 バスがなくなっちゃうから、夜9時前には帰らなきゃと思っていたのに、事件に遭遇したのは、夕方5時頃のことです。

 どうやら、今回の暴動は、色々なタイプの暴動が混在しているようで、どちらにしても、警察官の射殺事件という大義名分を掲げて、ただ暴れたい、破壊したい、これを機に強奪、強盗してやろうという人も多そうで、これはどうしたら、鎮まってくれるのか?ちょっと見当がつかずに実害にも遭い、もうウンザリしています。

 ただ、今回は未成年や若者が中心ということで、SNSで集合をかけたり、また、スナップチャットなどで破壊行動の動画をあげては、その破壊ぶりを競いあったりしている動きもあるとかで、もう、あまりの愚かさに言葉もありません。このSNSの使い方もどうにか規制をしてほしいです。

 とにかく、やっとのことで家に帰りついて、家の近辺の平和ぶりにホッとさせられたのですが、この状態が続けば、もう出かけるのも億劫になってしまいそうです。

 先ほど、司法大臣がテレビのインタビュー番組で話をしていましたが、「フランス人にはたくさんの権利も認められているけれど、同時に義務もたくさんあるんだ!」、「特に未成年が暴動に参加している場合は親は子供を責任を持って指導してほしい!」「罰則も強化する!」と。

 とにかく、現在のフランスの暴動は度が過ぎます。

 4日目の夜は警察官・憲兵隊4万5千人が動員したそうです。


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「フランス全土で13万3千人超のデモで大荒れ パリ・フランス銀行まで燃やされる大惨事」