2024年12月24日火曜日

一般診療26.50ユーロから30ユーロに値上げ

  


 12月22日から、一般開業医を含む複数の診察料金が値上げになりました。一般診療に関しては、これまでの26.50ユーロから30ユーロ(約5,000円)になります。

 これらの増額は、健康保険と民間医師組合が2024年から2029年までの見通しを定義するために、すでに6月に署名した新たな協定に基づくものであるとされています。この協定は、インフレを考慮したうえでの必用な医療従事者への大幅な増額も含まれています。

 しかし、多数の国民にとっては、これまでと同様に健康保険(70%)とミューチュエル(健康保険で補われない分を補償する保険)(30%)によって支払われるため、あまり影響はないと言えばないのですが、当然、この値上げに連れてミューチュエル(相互保険)の保険料も値上げになり、こちらは、保険会社により差があるものの、平均6%の値上げが予定されているようです。

 フランスでは、雇用主がこのミューチュエルを負担しなければならないことになっているため、このミューチュエルがカバーしているケースが多いと思われるのですが、それでも全体の4%は、この補完的な医療保険の恩恵を受けていないために、これらの人々に対しては、値上げがダイレクトに響く結果となり、これらの人々にとっては、医療へのアクセスが厳しくなることは避けられない状況です。

 また、値上げするのは一般診療だけでなく、一般開業医からの紹介による専門医の診察は、60ユーロに、また、児童精神科などの特定の専門分野に関しては、2回に分けて(次回の値上げは7月1日)予定されています。(54.70€→67.00€→75.00€)

 その他、婦人科医は現在の33.50ユーロから40ユーロ、老年病専門医は31.50ユーロから42ユーロ、神経内科医は51.70ユーロから57ユーロに値上がりします。

 いずれにせよ、高齢化と科学の進歩により、増え続ける国家医療費の支出は保険システムを構造的に見直さない限り崩壊すると言われる中、医療費の値上げと、この直接には、見えにくくなっているミューチュエルが補完する割合を増加させていくことが、医療の民営化の一歩であるとも言われています。

 一方、私自身、年齢を重ねていっているからか? 年に数回、様々なガンに関する検診(無料)のお勧めのような通知を頂くのですが、この予防医療という部分がどのくらい医療費の支出を軽減しているのかも知りたいところでもあります。

 また、同時に値上げはともかく、一般診療は(私の場合は)別として、専門医となると、値段云々の前に予約が取れないのが実状で、まず、診てもらうまでに数ヶ月、待たなくてはならないので、これにも、もう慣れましたが、この予約が数カ月先・・と言われるたびに、本当に重篤な病気だった場合は、死ぬな・・と思うのです。


医療費値上げ


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2024年12月23日月曜日

環境活動家 ポール・ワトソン フランスに亡命申請と国籍申請

 


 国際環境保護団体「シーシェパード」の創立者であるポール・ワトソンがグリーンランドで逮捕されたのは、今年7月21日のことでした。主に捕鯨を非難しているこの活動家には、日本からの国際手配申請を受けてインターポールの赤通知が出ていました。

 この環境活動家の身柄をグリーンランド(デンマーク)が引き渡すのかどうかは、当初は8月15日には、明らかになると言われながら、様々な方面からの賛否両論があがり、長い間、その行方が注目されていましたが、結局、デンマークは彼の身柄の引き渡しを求める日本の要請には応じませんでした。

 釈放後に彼が明らかにした内容によると、彼がグリーンランドに拘留中には、彼は4,000通以上の手紙を受け取っていたが、そのうちの3,000通はフランスからのものだったと明かしています。

 それだけ、この環境活動家に対するフランス人の関心と支持は大きく、マクロン大統領は、彼の身柄の日本への引き渡しに対して、デンマーク当局に圧力をかけていたと言われています。

 今年の10月の段階で、ポール・ワトソンは、マクロン大統領に直接宛てた書簡の中で、彼のフランスへの亡命を申請しています。彼の家族はフランスに在住しており、今回、釈放された後、すぐにフランスに到着しています。

 フランスでは、この環境活動家を支持する声が大きく、彼のグリーンランドでの逮捕は、このフランスの環境活動家たちの団結を高めたとも言われています。

 フランスに到着後の彼は、「自分は海の熱烈な擁護者であり、海のためには命を賭ける用意ができている!それだけの価値のあることだ!」としつつ、「ここまで、長期間、拘留されることは、自分にも予想外のことであったし、日本に身柄を引き渡されることも厭わない覚悟ではあったが、日本に行けば、家族に会うこともかなわなくなる、もう帰ってこれないと思った」ことも同時に明かしています。

 彼は調査捕鯨という名目で日本が捕鯨をし続けていることを非難し続けており、逆に自分の逮捕は、日本がどれほど違法行為を行っていたかを示す機会となったとも述べていますが、これは日本国民に対して何ら敵意を持っているわけではないことも付け加えています。

 ポール・ワトソンがフランス到着後にパリ・レピュブリック広場では彼の釈放を祝った集会が開かれ、そこで彼は、「フランスでのサポートは信じられないほど素晴らしかった!私をサポートしてくれるだけでなく、私の大義をサポートしてくれる多くの人々に出会えて、非常に興奮した!」と挨拶しています。

 実際にこの彼の処遇に対するデモは、かなり頻繁にパリでも行われ続けていたのは、事実で、一定数のこの種の環境活動家はフランスにはいるもので、また、その環境活動家が逮捕され、また、家族と会う権利も剥奪される日本に身柄を拘束されかねない!という事実がこの人々を団結させたというシナリオは、フランスには充分起こり得ることであったと思います。

 彼は、フランスに亡命申請と国籍申請をしているそうで、彼は現在、アメリカ、カナダの国籍を保有していますが、これにフランス国籍が追加されるかもしれません。

 釈放された74歳のポール・ワトソンは、来年もアイスランド、オーストラリア、そして日本の海に向かう準備ができていると意気揚々としています。

 日本はこの一連の動きに対して、どう反応するのか?知りたいです。


ポール・ワトソン釈放 国際手配反故


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2024年12月22日日曜日

フランスの債務 3兆3,030億ユーロの記録的な水準

  


 フランスの財政が大きな赤字を抱えていることは、もうここのところ、頻繁に話題にのぼっていたので知らない人はいないくらいの話なのですが、具体的な数字「3兆3,030億ユーロ」と聞くと、もはや数字が大きすぎて、逆にピンとこないくらいの桁違いの数字であっけにとられています。

 来年度の予算作成に600億ユーロの財政赤字を削減案の審議中に不信任になった前首相ですが、3兆3,030億ユーロの債務と600億ユーロの削減・・それでさえ、ペンディングになっているので、今後、どうするんだろう?どうなるんだろう?と心配になります。

 先週末に、複数のメディアが伝えたINSEE(国立統計経済研究所)の発表によると、フランスの公的債務は2024年第3四半期末時点で3兆3,030億ユーロという目もくらむような額に達する見通しで、この記録的な水準はフランスの経済健全性について、多くの懸念を引き起こしています。

 このフランスの債務は、GDP(国内総生産)の113.7%に相当(6月末時点では、112%だった)し、わずか3ヶ月間で710億ユーロ以上増加しています。

 2,000年初頭以来、フランスの公的債務曲線は上昇し続けており、この20年間でその額は、3倍以上にも膨れ上がり、悪いことにこのペースは近年、明らかに加速の一途を辿っています。特にマクロン大統領が就任した2017年から2024年の5年間だけでも、その額は1兆億ユーロ以上増加しています。

 この原因のひとつとして挙げられているのは、金利上昇と債務膨張による複合効果により、債務返済コスト(利息)も爆発的に増加し続けている点が指摘されています。債務返済コスト(利息)が雪だるま式に増えているというのは、憂慮すべき状況です。

 また、短期的な予算調整に加えて、何よりも必要なのは、公共支出がGDPの65%を占めると言われているフランスの社会経済モデル・構造改革とも言われています。フランスは戦後当初から、高レベルの社会保障と再分配を基盤としてきましたが、それが立ちいかなくなっているのです。

 経済成長の鈍化、極度の財政赤字、制御不能の公的債務の間で行政は苦渋の決断を迫られています。

 ただし、現在のように、すでにかなりの緊張状態にあり、不安定な政府では、この舵取りは、国会内のみならず、国民との間のコンセンサスを見つけるのは、至難の業です。

 実際にこの状況に、「今、フランスには何が必用か?」との問いに、財務省高官や財務専門家などがコメントを寄せたりもしていますが、なぜか?匿名を条件に答えており、それだけ、緊張状態であることがうかがえます。

 いずれにせよ、これを何とかしなければいけないフランス政府の課題は、財務調整を急ぎすぎると景気回復が中断され、遅すぎれば市場制裁にさらされるという状況下で微妙なバランスを保ちながら適切なペースを見つけることだと言われています。

 現在の状況は、数十年にわたる予算の変動と改革拒否の結果でもありますが、それにしても、「こんなになるまでに何とかならななかったの?」と思うばかりです。


フランス債務記録 3兆3,030億ユーロ


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2024年12月21日土曜日

モディリアーニ展 ザッキン美術館 exposition MODIGILIANI/ Musée ZADKINE

  


 美術館や博物館に行くのは、最近のちょっとした私のマイブームで、若い頃は本当に歩くのが嫌いだった私が、ここのところ、健康のためにとにかくできるだけ歩くことを心掛けていて、ふだんは、もっぱら、美味しいものを探して歩いていることが多いのですが、だんだんパリも寒くなってきて、寒い中、外を歩くのもだんだん辛くなってきて、美術館や博物館の中だったら、適温で、しかも退屈することなく、けっこう歩けるので、ここのところ・・といっても、たまに・・ですが、美術館や博物館に行くようになっています。




 といっても、そんなに美術的な見識があるわけでもなく、なんとなく、この絵好きだな・・とか、私の好きな小説家の話の中に出てくる美術館とか・・比較的、家から行き易い場所を選んで行くことが多いです。




 先日、散歩には、歩いてまわるのに、ちょうどいい大きさ?のオランジュリー美術館に行ったら、モディリアーニの絵があって、「やっぱりモディリアーニの絵は、けっこう好きだな・・」と思って、同時に、そういえば、どこかのメトロの駅に広告が出ていて、どこかでモディリアーニ展やってたな・・と思って、探して出かけました。




 美術的な評価とか、価値とか、そういったものはよくわかりませんが、単純に好きか?嫌いか?という程度ですが、好きなものを眺めて歩くのもまた、楽しいことです。



 現在、モディリアーニ展をやっているのは、パリ6区にある「ザッキン美術館(Musée ZADKINE)」モンパルナスの近くにあります。とてもこじんまりとした美術館だし、ちょっとわかりにくい場所だし、そんなにメジャーでもないし、と思いきや、平日、昼間でもけっこうな人が集まっていました。とってもいい感じの美術館です。


 モディリアーニとザッキンの友情に焦点をあてた展覧会とかで、両者の作品が上手く融合していました。

 驚いたのは、美術館というのは、それぞれにずいぶん趣が違うもので、また、この展覧会の客層は、けっこう落ち着いた感じの人が多く、それも心地よさのひとつでした。



 モディリアーニの絵は、顔と首の長い肖像画が特徴的ですが、彼自身がどんな顔をしている人なのか?どんな人だったのか?ということは全く知らなかったのですが、彼は35歳という若さで亡くなっており、彼自身の写真も展示されており、あまりに若くて、今でもどこかにいそうな感じでビックリしました。

 どんなかたちでさえ、どの程度であれ、知らなかった世界やしらなかったものを見たり、知ったりすることは楽しいことです。

 このモディリアーニ展は、2025年3月30日までやっています。




モディリアーニ展 ザッキン美術館 exposition MODIGILIANI/ Musée ZADKINE

 Musée ZADKINE 100 bis rue d'Assas 75006 Paris


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2024年12月20日金曜日

当分、無理だと諦めていたノートルダム大聖堂 あっさり入れました!

  


 12月8日に一般公開を再開したパリ・ノートルダム大聖堂は、「当分は、大混雑が予想されるため、「予約が強く推奨されます」とのことだったので、じゃあ、予約取ってみようか・・と何回かチャレンジしたのですが、結局、全然、予約がとれなくて、まあ、どこかに行ってしまうわけでもなく、まあ、少し落ち着いてからでいいや・・と諦めていました。

 ところが、X(旧Twitter)で、予約がなくても入れた!そんなに待たなくてもよかった・・などという投稿が上がり始めて、「えっ?なら、行ってみようかな?ノエルのバカンスに入ると、さすがに混むかも・・?」と急に思い立って、とりあえず出かけてみました。

 朝はあんまりお天気がよくなかったのですが、うっすら晴れ間が広がる中、久しぶりのノートルダム大聖堂。といっても、この間、オープンの前日に寄ってみたのでそんなに時間は経っていませんが、祝賀セレモニーのために囲われていたスペースは全て取り払われ、いつもの広場のような場所に戻っており、以前のように、正面入り口から入れました。

 入口の少し手前には、「予約ありの方」、「予約なしの方」という2つの通路ができていましたが、私が行った時には、どちらも数人しかいなくて、待ち時間ゼロで入れました。

 なんと、拍子抜けしたことか・・。




 正面の壁の彫刻などを仰ぎながら、いよいよ久しぶりに足を踏み入れる段になって、なんだか急に感慨が沸き起こってきて、うるうる涙があふれだしそうになり、自分でもビックリしました。



 私は別にクリスチャンでもないし、特別の思い入れがあるわけでもなかったので、自分でも意外でしたが、歳をとって涙もろくなったのかもしれませんが、「よくぞ、ご無事で・・」というか、「ご無事じゃなかったから、5年も閉まっていたのよね・・」とか、一人で心の中で思いながら、つい先日、テレビで見たノートルダム大聖堂に足を踏み入れたのでした。

 いずれにせよ、想像外な感情に思わず涙が溢れてしまうような心を揺さぶられる経験は、滅多にないことで、遥か昔の若い頃、留学したばかりのロンドンのセントポール寺院の礼拝い遭遇した時にあったことで、信仰のあるなしにかかわらず、教会というものは、不思議な力があるものだと、思いました。



 テレビの中継では、あの日は照明も特別であったためか、なんだかやけに真っ白な感じがしたのですが、そこまででもなく、でも、火災のあとは、全く感じられず、それこそ、中にある彫刻や特に奥の方にある壁画や祭壇近くの古い木造の彫り物の絵などは、「よくぞご無事で・・」という感じでした。




 ところどころに、ノートルダム再建に関わった人々を讃える展示物や全世界から寄せられた寄付への感謝などがつづられている場所も見られました。



 この中でも、おそらく今だけなのは、クレッシュ(キリストの誕生シーンを表現した模型で馬小屋の中に、赤ちゃん(イエスキリスト)とマリア様、父ヨセフ、牛、ロバ、羊飼いなどがいる模型のようなもの)の飾り物なのですが、これが、なかなか見事で、主要人物以外の登場人物がたくさんいて、おまけに、そのクレッシュが置かれている背景には、大聖堂そのものの彫り物が上手く活きるように飾られていて、なかなか見事です。

 これは、クリスマスのための飾りなので、今時期にしか見られないので、これを見たい方は、年末年始のうちに行った方がよいと思います。


 正面右側の奥には、宝物展のようなスペースがありますが、この中は有料(一般10€)です。せっかくなので、入ってみましたが、19世紀からノートルダムに保存されている宝飾品、金銀の食器類や衣類、彫刻品や礼拝堂の一部など、ついこの間、再開のセレモニーの時に司教が着用していた色鮮やかな祭服や最初にノートルダムの正面扉を叩いていた杖のようなもの?も一緒に飾ってありました。



 念のため、大聖堂そのものの入場料は無料です。

 大聖堂の中は、そんなに混雑しているという感じでもなく、私が滞在している途中に礼拝が始まりましたが、さすがに、礼拝の席はほぼ満席。とても穏やかで和やかで、ここで礼拝を受けている人々にとっては、ようやく日常が戻ってきたという静かな感じがしました。

 どうか、この本来は神聖な祈りの場である大聖堂が政治に汚されることがありませんように・・と思うのでした。

 大聖堂をゆっくり一回りして、外に出ると、さきほど私が入ったときには、なかった行列ができていました。私はとってもラッキーだったようですが、わりと列は早く動くので、けっこう並んでいるようでも、そこまで待ち時間はないのでは、せいぜい20分程度なのではないかと思います。

 サクレクール寺院などでは、けっこう厳重な荷物チェックがあるのですが、今のところ、ノートルダム大聖堂では、そんなこともやっていませんでした。


ノートルダム大聖堂


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2024年12月19日木曜日

サルコジ元大統領に懲役3年の有罪判決 

  


 フランスで元国家元首に実刑判決が出たのは、初めてのことで、このことが大きく報道されています。

 サルコジ元大統領に関しては、これまで長い間、裁判が行われてきたので、彼が法廷の場に立っているのは珍しくない話で、正直言って、まともには、実刑判決が出ることはないのでは?と思っていましたが、今回の判決はサルコジ氏が上訴したものが棄却されて刑が確定したということなので、事態はなかなか深刻な話です。

 これにより、サルコジ氏は、電子ブレスレットによる懲役1年に加えて3年間の公民権停止(選挙権、被選挙権の剥奪と公職につくことができない)が課されることになります。

 同氏の弁護士によると、「判決には、潔く従うが、この問題を欧州人権裁判所(ECHR)に付託する」とのことで、彼が欧州人権裁判所に訴えれば、フランスの国自体が責任を負うことになるだろう・・とも語っています。

 いずれにせよ、彼は、20日以内にパリの刑執行判事(JAP)に召喚され、ブレスレットが装着される日程も決定されます。ブレスレットの装着予定日には、刑務所管理局直属の監視員が自宅を訪れ、現場でシステムを調整し、装着。この瞬間から、有罪判決を受けた人物が自宅(あるいは、申請した外出先)にいない場合には、アラートが発動します。

 フランスで最も多く使用されているこのような電子ブレスレットは足首に装着するもので、収監されている96,569人のうち、15,591人に装着されています。

 しかし、サルコジ氏のような特別な人の場合は別だと思いますが、よくこの電子ブレスレットを装着しているはずの人がなにか、別の事件を起こして逮捕された時には、この人物の電子ブレスレットによる監視は作動していなかったとか、装着しているはずのものが装着されていなかったなどと言う話は、よく目にするような気がします。

 今回の有罪判決は「ポール・ビスマス事件」と呼ばれている盗聴事件とそれにかかわる弁護士と判事と汚職協定を結んだとされる事件への判決ですが、サルコジ氏は、これ以外にも数件の裁判を抱えており、2025年早々、1月6日にも出廷する予定になっているのですが、今後の裁判に関しては、彼はすでに有罪判決を受けている者として扱われるために、他の裁判への影響が考えられると言われています。

 この判決に対して、サルコジ氏は、X(旧Twitter)上で、12年間にわたる司法による嫌がらせと重大な不正義を非難。自分の責任は引き受けたいとしつつも、この決定に至った企業情勢や政治情勢には疑問を抱いており、最終的には、真実が勝利すると述べています。

 この真偽はわかりませんが、大統領職にあった者にでも有罪判決は下るという事実で、多くの政治家が襟を正してくれる手助けになってくれればと思っています。


二コラ サルコジ元大統領に有罪判決


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2024年12月18日水曜日

2030年フレンチアルプス冬季オリンピックはありか?なしか? 大幅に増額され得る大会費用に警鐘

  


 2030年の冬季オリンピック開催地が決定したのは、2024年7月24日のIOC総会、パリオリンピックの最中のことで、「え~~??また、フランスでオリンピックやるの?」と驚いた記憶があります。

 しかし、国際オリンピック委員会は、「フランスが財政赤字の可能性を補填することを約束しなければ、オリンピックは開催されない」という条件を設定しています。

 現在、莫大な赤字を抱えるフランスにとって、単純に考えれば、これは、「ふつうに無理でしょ!」と思うところですが、政府では、この2030年の冬季オリンピック開催について、意見が割れているようです。

 マクロン大統領は、2030年フレンチアルプス冬季オリンピックが決定した場において、この大会をフランスで開催させるために、「次期首相には、この予算の保証を盛り込むだけでなく、新政府でオリンピック法を交付するように求めるつもりだ!」と宣言しています。

 オリンピック法とは何なんでしょうか?

 現在、フランスの赤字が一体、どこまで膨らんでいるのか正確にはわかりませんが、前首相が掲げていた来年の予算では、600億ユーロの赤字を是正すると言っていたので、少なくとも600億ユーロは、切り詰めなければいけない状況で、結局は、首相の退陣により、現在は、宙づりになっていますが、公務員の削減(4,000人教職員削減)や健康保険自己負担拡大などの様々な予算削減案が提案されていた状況です。

 これに対して、オリンピックの予算は、20億ユーロ未満(この段階ですでに当初の計画の2倍に膨れ上がっている)に抑えるようにという通達がでているそうですが、それにしても、国民の生活を犠牲にしてまで行うべきものとも思えません。

 このオリンピックの予算問題は、IGF(財務総監察局)が作成している2種類の機密報告書の中に挙げられているもので、「2030年フレンチアルプス冬季オリンピックの会計は、大幅な赤字になることが確実視されており、現在、作成されているオリンピック組織委員会が作成している予算を大幅に上回る可能性が高く、この予算作製に関しての再調査が必用である」と警鐘を鳴らしているのです。

 それに加えて、フランス・オリンピック・スポーツ委員会会長は、夏季オリンピックに比べて、冬季オリンピックの収入は、少ないため、国家からの支援は不可欠であると述べ、チケット販売だけでも、およそ夏季の6分の1以下であることを明かしています。

 このオリンピックへのGOサインの署名は、当初、当時の首相であったガブリエル・アタル氏が行うはずでしたが、彼は現在のフランスの財政状況から鑑みて、あまりに障壁が大きすぎたために、多くの圧力がかかりましたが、サインしたくなかった・・と語っています。

 3ヶ月という短い就任期間ではありましたが、前首相のバルニエ氏は、すでにこのオリンピックについて、深く関わっており、首相退任後の今、この冬季オリンピック組織委員会のトップに据えられるのではないかと言われています。

 このIOCに対する回答、もしくは、開催を約束する署名を行う期限が7月24日(開催地が決定した日)の6ヶ月後ということで12月24日のクリスマスイブなのだそうです。

 そういえば、これに関して思い出したことがあるのですが、つい先日、首相任命にものすごく時間がかかって、なかなかどうなるのか?国民が固唾をのんでその行方を見守っていた時、首相任命の当日、マクロン大統領と、現首相のフランソワ・バイルー氏が朝から2時間近くも会談した後、実際の首相任命までのわずかな時間にマクロン大統領は、トーマス・バッハ氏(IOC会長)にレジオンドヌール勲章を授与していました。

 なぜ?このタイミングにIOC会長にレジオンドヌール勲章??と、ちょっと疑問も感じたのですが、予め決められていたスケジュールだったら、変えられないのか・・とも思っていました。しかし、この冬季オリンピック開催問題が微妙に絡んでいたとは、なかなかいやらしい感じがしました。

 そもそも夏季オリンピックであったパリ・オリンピックでさえも、成功した!とだけ、一方的に言っていますが、どれだけ国がこのために支出したのか?あの異常な警戒体制やド派手な開会式、にもかかわらず、期待していた観光客はむしろ減少という、もっともっと儲かるはずだったのに、その収支は、全体的には明らかになっていません。

 この署名の期限まであと1週間、結局、現政府はどのような答えを出すのか、楽しみというか、大いに不安でもあります。


2030年フランス冬季オリンピック


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