ウクライナでの戦争勃発のために、いつもよりも選挙期間が短く感じられたフランスの大統領選挙でした。
マクロン大統領が前回の大統領選挙に当選して、大統領に就任して以来、本当にこれでもかというほどの災難続きの5年間でした。黄色いベスト運動による激しいデモや暴動は長い間続き、その後もテロ、そして、パンデミック、さらにロシア侵攻によるウクライナ戦争と人の一生にこんなことが何度も起こり得るのか?というような出来事が立て続けに起こりました。
今年はフランスの大統領選挙という年の初めは、1月にはフランスでは爆発的な感染の増加を記録し、若干、それが下がり始めたと思ったら、今度はロシアとウクライナの戦争の危機。
マクロン大統領は、この大統領選挙の選挙戦の予定をこのために大幅に変更せざるを得なくなり、立候補は確実とされながらも公示直前まで立候補を表明しないままに選挙戦が開始されました。
しかし、結果的には、ウクライナ戦争の悲惨な戦況のために、選挙に関する報道は大幅にカットされ、ほぼほぼ直前までは、選挙報道は通常よりもずっと抑えられ、その間、ロシア・ウクライナ双方の間に立ち、電話会談等を続けてきたマクロン大統領の活躍が前面に表れている時期も少なからずありました。
大統領選挙投票用紙 |
マクロン大統領は立候補の公示を表明する前から、本命と言われてはきましたが、一時は、対立候補の極右マリン・ルペン氏が追い上げを見せ、最後まで結果はわからないと言われてきました。
フランスの大統領選挙当日は、日本のような出口調査の結果は公表されず、投票時間である8時から19時(都市によっては20時)までで、その間に投票状況が公表されることはありません。
そして、いきなり結果が発表されるのが、20時で、19時まで、あるいは20時まで投票が続いている段階で、どのように集計しているのかはわかりませんが、20時の段階で、各局が同時にマクロン58.40%、マリン・ルペン41.60%と公表し、マクロン大統領の再選を発表しました。
ここ2ヶ月間ほどは、ほぼウクライナ戦争に偏った報道でしたが、この日ばかりは選挙一色の報道。
結果が発表される数時間前から、マクロン大統領の支持者はエッフェル塔近くのシャン・ド・マルス広場に用意されている巨大スクリーンと舞台を見守り、結果発表とともに大歓声が上がりました。
マクロン大統領がシャン・ド・マルスに登場したのは、21時30分頃、満面の笑みを浮かべて第九のBGMとともに、夫人と手を繋いで周囲を一般市民と見られる子供や若者たちとともに歩き、その後、夫人と2人で登壇しました。
壇上に上がったマクロン大統領は、本当に数年ぶりに見る晴れやかな笑顔で、「Merci !」(ありがとう)という一言で挨拶を始めました。ここ数年、厳しい表情ばかりだったマクロン大統領の真の笑顔を久しぶりに見た気がしました。
彼は、「5年間の変遷を経て、幸せな時と困難な時、そして例外的な危機も。2022年4月24日の今日、我々の大多数は、今後5年間の我々の共和国を統率するために、私を信頼することを選択してくれました」
「より独立したフランス、より強いヨーロッパ、そして投資と深い変革を通じて、私に信頼を寄せてくれたすべてのフランス人男性、女性に感謝したいと思います」
「また、今日、多くの人々が私に投票してくれたのは、私が掲げる考えを支持するためではなく、極右を阻止するためであることも知っています。そして、この投票が今後何年にもわたって私に義務を課すものであることを自覚していることを、ここで伝えたいと思います。私は、彼らの義務感、共和国への愛着、そしてここ数週間で表明された相違への敬意を守る者です」と述べました。
このフランスの大統領選挙の模様を見るにつけ、摩擦は多々、起こるものの、国民が直接参加して、盛り立てていく様子が民主的な感じで、なんだか羨ましい気がするのでした。
マクロン大統領はこの結果により、これまでの5年間プラスさらに今後、5年間フランスの大統領を継続することになります。フランスの大統領は、2期までと決められていますから、最大の10年間のマクロン政権が続くことになります。
ウクライナ戦争も続いている現在、これからも険しい道が続きますが、2年後には、パリオリンピックなどの華やかな行事も控えています。これからの5年間がさまざまな面で上向きになってくれますように・・。
そして、その次の大統領選挙には、彼はもう出馬できないわけですから、彼にはこの5年間の間に後継者を育てるという課題が追加されています。
マクロン大統領再選 フランス大統領選挙結果
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